JP5867784B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

この発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
下記特許文献1には、電動パワーステアリング装置として、タイロッド推力センサによってタイロッド推力を検出し、検出されたタイロッド推力を用いて電動モータを制御するものが開示されている。
また、下記特許文献2には、ステアバイワイヤ方式の操舵装置において、転舵軸に振動センサを取り付け、振動センサによって検出される振動を加味して操舵ハンドルへ加えるべき反力を求めるようにしたものが開示されている。
特開昭60−259570号公報 特開平10−310075号公報 特許第4419840号公報
この発明の目的は、転舵輪側からタイロッドに入力する逆入力振動に応じた信号を操舵部材に正確に伝達することができ、操舵感が向上する電動パワーステアリング装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、転舵輪(4)にタイロッド(15)を介して転舵のための力を伝達する転舵軸(13)を含み、操舵部材(2)の操作によって前記転舵輪を転舵する転舵機構(5)と、前記転舵軸に操舵補助力を与える電動モータ(21)と、前記タイロッドの軸力を検出するための軸力検出手段(30)と、前記軸力検出手段によって検出される軸力の時間領域信号を周波数領域信号に変換するFFT処理手段(61)と、前記FFT処理手段によって得られる周波数領域信号から、周波数が所定範囲内にあり、かつパワー密度が所定範囲内にある周波数領域信号を、前記転舵軸側から前記転舵軸に入力する逆入力振動に対応する周波数領域信号として抽出する抽出手段(62)と、前記抽出手段によって抽出された周波数領域信号に、前記電動モータと前記操舵部材との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))の逆数に比例した値(A/G(f))を乗算する乗算手段(63)と、前記乗算手段によって得られた周波数領域信号を時間領域信号に変換するIFFT処理手段(64)と、前記IFFT処理手段によって得られた時間領域信号に応じたモータトルクを前記電動モータから発生させることにより、前記転舵軸側から前記タイロッドに入力する逆入力振動を前記操舵部材に伝達させる逆入力振動伝達手段(65,53)とを含む、電動パワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この発明では、逆入力振動に対応する周波数領域信号に、電動モータと操舵部材との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))の逆数に比例した値(A/G(f))が乗算され、この乗算結果である周波数領域信号がIFFT処理手段によって時間領域信号に変換されている。そして、IFFT処理手段によって得られた時間領域信号に応じたモータトルクが電動モータから発生され、操舵部材に伝達される。操舵部材に伝達されるハンドルトルクの周波数領域信号は、前記モータトルクの周波数領域信号に、電動モータと操舵部材との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))を乗算した値となる。したがって、逆入力振動は、電動モータと操舵部材との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))の影響を受けることなく、操舵部材に伝達されることになる。これにより、逆入力振動に応じた振動が操舵部材に正確に伝達されるようになる。これにより、運転者に路面状況を正確に伝えることができるようになるので、操舵感が向上する。
請求項2記載の発明は、前記操舵部材に加えられる操舵トルクを検出するための操舵トルク検出手段(11)と、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクを用いて、前記電動モータの基本目標電流値を設定する基本目標電流値設定手段(51)とを含み、前記逆入力振動伝達手段は、前記IFFT処理手段によって得られた時間領域信号に所定の係数を乗算した値を、前記基本目標電流値に加算することによって目標電流値を演算する加算手段(65,53)と、前記加算手段によって演算される目標電流値に基づいて前記電動モータを制御する制御手段(54,55)とを含む、請求項1に記載の車両用操舵装置である。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 図2は、ECUの電気的構成を概略的に示すブロック図である。 図3は、基本目標電流値の設定例を示す模式図である。 図4Aは、軸力センサによって検出されるタイロッド軸力の時間領域信号を示す模式図である。 図4Bは、FFT処理部によって得られた周波数領域信号を示す模式図である。 図4Cは、逆入力振動抽出部によって抽出された、逆入力振動成分に対応する周波数領域信号を示す模式図である。 図4Dは、逆伝達関数乗算部によって得られた周波数領域信号を示す模式図である。 図4Eは、IFFT処理部によって得られた時間領域信号を示す模式図である。 図5は、電動モータとステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲインの近似的な特性G(f)の一例を示すグラフである。 図6は、機械系伝達関数ゲインG(f)が図5に示される特性である場合に、ゲインG(f)の逆数1/G(f)に比例した関数A/G(f)の特性の一例を表すグラフである。
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2が連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪4を転舵する転舵機構5と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構6とを備えている。
ステアリングシャフト3は、直線状に延びている。ステアリングシャフト3は、第1の自在継手7を介して中間軸8に連結されている。中間軸8は、第2の自在継手9を介して転舵機構5(具体的には、後述するピニオン軸12)に連結されている。したがって、ステアリングホイール2は、ステアリングシャフト3、第1の自在継手7、中間軸8および第2の自在継手9を介して、転舵機構5に機械的に連結されている。
ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に連結された入力軸3aと、中間軸8に連結された出力軸3bとを含む。入力軸3aと出力軸3bとは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2が回転されると、入力軸3aおよび出力軸3bは、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
ステアリングシャフト3の周囲には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸3aおよび出力軸3bの相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。トルクセンサ11の出力信号は、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)40に入力される。
転舵機構5は、ピニオン軸12と、転舵軸としてのラック軸13とを含む。ラック軸13は、車両の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸13は、車体に固定されるラックハウジング18内に図示しない複数の軸受を介して軸方向に直線往復移動可能に支持されている。ラック軸13の各端部は、それぞれ、ラックハウジング18の対応する端部から突出している。ラック軸13の各端部は、それぞれ、ボールジョイント14を介して、タイロッド15の一方の端部と連結されている。各タイロッド15の他方の端部は、それぞれ、ナックルアーム16を介して、転舵輪4に連結されている。
各ボールジョイント14は、それぞれ、筒状のベローズ17内に収容されている。各ベローズ17は、それぞれ、ラックハウジング18の端部からタイロッド15まで延びている。各ベローズ17の一端部および他端部は、それぞれ、ラックハウジング18の端部およびタイロッド15に取り付けられている。
ピニオン軸12は、第2の自在継手9を介して中間軸8に連結されている。ピニオン軸12の先端部には、ピニオン12aが連結されている。ラック軸13の軸方向の中間部には、ピニオン12aに噛み合うラック13aが形成されている。このラック13aとピニオン12aとからからなるラックアンドピニオン機構によって、ステアリングギヤが構成されている。このステアリングギヤによって、ピニオン軸12の回転がラック軸13の軸方向移動に変換される。ラック軸13を軸方向に移動させることによって、転舵輪4を転舵することができる。
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト3および中間軸8を介して、ピニオン軸12に伝達される。そして、ピニオン軸12の回転は、ステアリングギヤ12a,13aによって、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪4が転舵される。
操舵補助機構6は、操舵補助用の電動モータ21と、電動モータ21の出力トルクを転舵機構5に伝達するための減速機構22とを含む。減速機構22は、ウォーム軸23と、このウォーム軸23に噛み合うウォームホイール24とを含むウォームギヤ機構からなる。ウォーム軸23は電動モータ21によって回転駆動される。また、ウォームホイール24は、ステアリングシャフト3とは同方向に回転可能に連結されている。
電動モータ21によってウォーム軸23が回転駆動されると、ウォームホイール24が回転駆動され、ステアリングシャフト3が回転する。そして、ステアリングシャフト3の回転は、中間軸8を介してピニオン軸12に伝達される。ピニオン軸12の回転は、ラック軸13の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪4が転舵される。すなわち、電動モータ21によって、ウォーム軸23を回転駆動することによって、転舵輪4が転舵されるようになっている。
タイロッド15には、タイロッド15の軸力を検出するための軸力センサ30が取り付けられている。軸力センサ30のハーネス31は、ECU40に接続されている。軸力センサ30は、タイロッド15に転舵輪4側から入力される振動(以下、「逆入力振動」という)を検出するために設けられている。この実施形態では、軸力センサ30としては、加速度センサが用いられている。軸力センサ30として、加速度センサ以外のセンサを用いてもよい。なお、ラック軸13に軸力センサを取り付け、この軸力センサによって検出されるラック軸力をタイロッド15の軸力とみなしてもよい。
ECU40には、軸力センサ30の出力信号が入力される。また、ECU40には、車速センサ26の出力信号も入力される。ECU40は、トルクセンサ11の出力信号に基づいて演算される操舵トルクT、車速センサ26によって検出される車速V、軸力センサ30の出力信号に基づいて検出される逆入力振動等に基づいて、電動モータ21を制御する。
図2は、ECUの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
ECU40は、電動モータ21を制御するためのマイクロコンピュータ(モータ制御用マイクロコンピュータ)41と、マイクロコンピュータ41によって制御され、電動モータ21に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)42と、電動モータ21に流れるモータ電流(実電流値)Iを検出する電流検出回路43とを含んでいる。
マイクロコンピュータ41は、CPUおよびメモリ(ROM,RAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することにより、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、基本目標電流値設定部51と、逆入力振動伝達用指令値生成部(以下、「指令値生成部」という)52と、指令値加算部53と、偏差演算部54と、PI制御部55と、PWM制御部56とが含まれる。
基本目標電流値設定部51は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTと車速センサ26によって検出される車速Vとに基づいて、基本目標電流値Ioを設定する。検出操舵トルクTに対する基本目標電流値Ioの設定例は、図3に示されている。検出操舵トルクTは、例えば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、基本目標電流値Ioは、電動モータ21から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータ21から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。基本目標電流値Ioは、検出操舵トルクTの正の値に対しては正をとり、検出操舵トルクTの負の値に対しては負をとる。検出操舵トルクTが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、基本目標電流値Ioは零とされる。また、基本目標電流値Ioは、車速センサ26によって検出される車速Vが大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定されるようになっている。これにより、低速走行時には大きな操舵補助力を発生させることができ、高速走行時には操舵補助力を小さくすることができる。
タイロッド15に入力される逆入力振動のほとんどは、タイロッド15からステアリングホイール2までの動力伝達経路において摩擦等によって消滅するため、ステアリングホイール2に伝達されない。したがって、路面状況が運転者に伝達されず、操舵感が良くないという問題がある。そこで、タイロッド15に入力される逆入力振動を、ステアリングホイール2に伝達させるために、指令値生成部52が設けられている。指令値生成部52は、軸力センサ30の出力信号に基づいて逆入力振動伝達用指令値Icを生成する。指令値生成部52の詳細については、後述する。
指令値加算部53は、基本目標電流値設定部51によって設定された基本目標電流値Ioに、指令値生成部52によって生成された逆入力振動伝達用指令値Icを加算することにより、目標電流値Iを演算する。偏差演算部54は、指令値加算部53によって得られた目標電流値Iと電流検出回路43によって検出された実電流値Iとの偏差(電流偏差ΔI=I−I)を演算する。
PI制御部55は、偏差演算部54によって演算された電流偏差ΔIに対するPI演算を行うことにより、電動モータ21に流れる電流Iを目標電流値Iに導くための駆動指令値を生成する。PWM制御部56は、前記駆動指令値に対応するデューティ比のPWM制御信号を生成して、駆動回路42に供給する。これにより、駆動指令値に対応した電力が電動モータ21に供給されることになる。
偏差演算部54およびPI制御部55は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、電動モータ21に流れるモータ電流Iが、目標電流値Iに近づくように制御される。
軸力センサ30の出力信号に基づいて生成される逆入力振動伝達用指令値Icが基本目標電流値Ioに加算されることにより、電動モータ21の目標電流値Iが設定されている。このため、電動モータ21は、基本目標電流値Ioに応じたモータトルクと、逆入力振動伝達用指令値Icに応じたモータトルクとを発生する。これにより、逆入力振動伝達用指令値Icに応じたモータトルクが、電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系を経て、ステアリングホイール2に伝達されるようになる。
電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲインがG(f)であるとすると、モータトルクによってステアリングホイール2に伝達されるハンドルトルクの周波数領域信号は、モータトルクの周波数領域信号に機械系伝達関数ゲインG(f)を乗算した値となる。この実施形態では、前記機械系伝達関数ゲインG(f)は、モータトルクを入力とし、ハンドルトルクを出力とした場合の入出力の振幅比(入力振幅に対する出力振幅の比)を表わしているものとする。
機械系伝達関数ゲインG(f)は、例えば図5に示すように周波数によって異なる値をとるため、タイロッド15に入力される逆入力振動に比例した値を単に逆入力振動伝達用指令値Icとして用いると、逆入力振動の周波数成分の周波数によって、モータトルクからハンドルトルクへと伝達される振動が増減するため、逆入力振動に応じた振動がステアリングホイール2に正確に伝達されなくなる。そこで、指令値生成部52は、タイロッド15に入力される逆入力振動に応じた振動をステアリングホイール2に正確に伝達できるような逆入力振動伝達用指令値Icを生成する。以下、指令値生成部52の詳細について説明する。
指令値生成部52は、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理部61と、逆入力振動成分抽出部62と、逆伝達関数乗算部63と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)処理部64と、指令値演算部65とを備えている。
図4Aは軸力センサ30によって検出されるタイロッド軸力の時間領域信号を示す模式図である。図4BはFFT処理部61によって得られた周波数領域信号を示す模式図である。図4Cは逆入力振動抽出部62によって抽出された、逆入力振動成分に対応する周波数領域信号を示す模式図である。図4Dは、逆伝達関数乗算部63によって得られた周波数領域信号を示す模式図である。図4Eは、IFFT処理部64によって得られた時間領域信号を示す模式図である。
FFT処理部61は、図4Aに示すような軸力センサ30によって検出されるタイロッド軸力の時間領域信号を周波数領域信号に変換する。これにより、図4Bに示すような周波数領域信号が得られる。
逆入力振動成分抽出部62は、FFT処理部61によって得られた周波数領域信号から、周波数fが所定範囲内(f≦f≦f(f>f))にあり、かつパワー密度ρが所定範囲内(ρ≦f≦ρ(ρ>ρ))にある信号(図4Bに斜線で示す領域内の信号)を抽出する。これにより、図4Cに示すような逆入力振動成分に対応した周波数領域信号が抽出される。
は、FFT処理部61によって得られた周波数領域信号のうち、逆入力振動成分より周波数が低い周波数領域信号を排除するために設定された閾値であり、例えば10[Hz]に設定される。fは、FFT処理部61によって得られた周波数領域信号からノイズを除去するために設定された閾値であり、例えば100[Hz]に設定される。
ρは、FFT処理部61によって得られた周波数領域信号からノイズを除去するために設定された閾値であり、例えば10−4[V/Hz]に設定される。ρは、FFT処理部61によって得られた周波数領域信号のうち、逆入力振動成分よりパワー密度が大きい周波数領域信号を排除するために設定された閾値であり、例えば1[V/Hz]に設定される。
逆伝達関数乗算部63は、逆入力振動成分抽出部62によって抽出された、逆入力振動成分に対応する周波数領域信号に、電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲインG(f)の逆数1/G(f)に比例した関数A/G(f)を乗算する。なお、関数A/G(f)におけるA(A>0)は、タイロッド15に入力された逆入力振動をどのような大きさのハンドルトルクとしてステアリングホイール2に伝達させるかを設定するための比例定数である。関数A/G(f)を求めるためのゲインG(f)は、近似的なものであってもよい。
具体的には、逆入力振動成分抽出部62によって抽出された周波数領域信号に含まれる各周波数成分のパワー密度をρ(f)で表すと、逆伝達関数乗算部63は、各周波数成分のパワー密度ρ(f)にその周波数に対応するゲインG(f)の逆数1/G(f)に比例した値A/G(f)を乗算する。これにより、図4Dに示すような周波数領域信号が得られる。
電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲインの近似的な特性が、例えば、図5に示されるような特性を有しているとすると、機械系伝達関数ゲインG(f)の逆数1/G(f)に比例した関数A/G(f)は、例えば、図6に示されるような特性となる。なお、図4Cおよび図4Dに示されている破線の曲線は、図6に示されている関数A/G(f)を表している。
IFFT処理部64は、逆伝達関数乗算部63によって得られた周波数領域信号を時間領域信号に変換する。これにより、図4Eに実線で示すような時間領域信号が得られる。
IFFT処理部64によって求められた信号は、その振動の方向が右方向操舵に対応するタイロッド15の軸方向である場合には正をとり、その振動の方向が左方向操舵に対応するタイロッド15の軸方向である場合には負をとるものとする。
指令値演算部65は、IFFT処理部64によって求められた時間領域信号に予め設定された係数α(>0)を乗算することにより、逆入力振動伝達用指令値Icを演算する。この係数αは、例えば、次のようにして設定される。
IFFT処理部64によって求められた時間領域信号をIF[N]で表すことにする。時間領域信号IF[N]の1[N]に対して電動モータ21から発生させるべきモータトルク[Nm]の大きさを、時間領域信号IF[N]に対するモータトルク[Nm]の比β[Nm/N]として決定する。モータトルク[Nm]は、β[Nm/N]を用いて次式(1)で表される。
モータトルク[Nm]=β[Nm/N]×IF[N]…(1)
一方、モータトルク[Nm]は、電動モータ21のトルク定数[Nm/A]を用いて次式(2)で表される。
モータトルク[Nm]=トルク定数[Nm/A]×モータ電流[A]…(2)
これにより、β[Nm/N]×IF[N]に応じたモータトルク[Nm]を、電動モータ21に発生させるためのモータ電流[A]は、次式(3)で表される。
モータ電流[A]=β[Nm/N]×IF[N]/トルク定数[Nm/A]
=(β[Nm/N]/トルク定数[Nm/A])×IF[N]…(3)
そこで、前記係数αを、次式(4)により決定する。
α=β[Nm/N]/トルク定数[Nm/A]…(4)
この実施形態では、軸力センサ30によって検出されるタイロッド軸力の時間領域信号が周波数領域信号に変換される。この周波数領域信号から、タイロッド16に入力する逆入力振動成分に対応する周波数領域信号が抽出される。抽出された逆入力振動成分に対応する周波数領域信号に、ゲインG(f)の逆数1/G(f)に比例した関数A/G(f)が乗算される。得られた周波数領域信号が時間領域信号に変換され、この時間領域信号に係数αが乗算されることにより、逆入力振動伝達用指令値Icが生成される。そして、逆入力振動伝達用指令値Icに応じたモータトルクが電動モータ21から発生され、このモータトルクがステアリングホイール2に伝達される。
ステアリングホイール2に伝達されるハンドルトルクの周波数領域信号は、電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))を、モータトルクの周波数領域信号に乗算した値となる。したがって、逆入力振動は、電動モータ21とステアリングホイール2との間の機械系伝達関数ゲイン(G(f))の影響を受けることなく、ステアリングホイール2に伝達されることになる。これにより、逆入力振動に応じた振動がステアリングホイール2に正確に伝達されるようになる。これにより、運転者に路面状況を正確に伝えることができるようになるので、操舵感が向上する。
この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
4…転舵輪、5…転舵機構、13…ラック軸、15…タイロッド、18…ラックハウジング、21…電動モータ、30…軸力センサ、40…ECU、41…マイクロコンピュータ、51…基本目標電流値設定手段、52…逆入力振動推定部、61…FFT処理部、62…逆入力振動抽出部、63…逆伝達関数乗算部、64…IFFT処理部、65…指令値演算部、53…指令値加算部、54…偏差演算部、55…PI制御部

Claims (2)

  1. 転舵輪にタイロッドを介して転舵のための力を伝達する転舵軸を含み、操舵部材の操作によって前記転舵輪を転舵する転舵機構と、
    前記転舵軸に操舵補助力を与える電動モータと、
    前記タイロッドの軸力を検出するための軸力検出手段と、
    前記軸力検出手段によって検出される軸力の時間領域信号を周波数領域信号に変換するFFT処理手段と、
    前記FFT処理手段によって得られる周波数領域信号から、周波数が所定範囲内にあり、かつパワー密度が所定範囲内にある周波数領域信号を、前記転舵軸側から前記転舵軸に入力する逆入力振動に対応する周波数領域信号として抽出する抽出手段と、
    前記抽出手段によって抽出された周波数領域信号に、前記電動モータと前記操舵部材との間の機械系伝達関数ゲインの逆数に比例した値を乗算する乗算手段と、
    前記乗算手段によって得られた周波数領域信号を時間領域信号に変換するIFFT処理手段と、
    前記IFFT処理手段によって得られた時間領域信号に応じたモータトルクを前記電動モータから発生させることにより、前記転舵軸側から前記タイロッドに入力する逆入力振動を前記操舵部材に伝達させる逆入力振動伝達手段とを含む、電動パワーステアリング装置。
  2. 前記操舵部材に加えられる操舵トルクを検出するための操舵トルク検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクを用いて、前記電動モータの基本目標電流値を設定する基本目標電流値設定手段とを含み、
    前記逆入力振動伝達手段は、
    前記IFFT処理手段によって得られた時間領域信号に所定の係数を乗算した値を、前記基本目標電流値に加算することによって目標電流値を演算する加算手段と、
    前記加算手段によって演算される目標電流値に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを含む、請求項1に記載の車両用操舵装置。
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