JP2006281881A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィードバック制御のゲインを上げることなく、据え切りや低速走行時の応答性を向上させた電動パワーステアリング装置を供する。
【解決手段】目標操舵トルク演算処理手段40により、舵角検出手段55により検出された舵角θと車速センサ25により検出された車速vに基づいて演算された目標操舵トルクTmとトルクセンサ20により検出された操舵トルクTとの差ΔTに基づいてフィードバック制御量Dfbを演算するフィードバック制御量演算手段51と、前記目標操舵トルクTmと車速vに基づいてフィードフォワード制御量Dffを演算するフィードフォワード制御量演算手段52と、フィードバック制御量演算手段51が算出したフィードバック制御量Dfbにフィードフォワード制御量演算手段52が算出したフィードフォワード制御量Dffを加算して算出されたモータ制御量Dに基づいてアシストモータMを駆動するモータ駆動手段26とを備えた電動パワーステアリング装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車に搭載されステアリング操舵力を電動モータにより補助する電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置の操舵トルク制御は、基本的にステアリングホイールを操舵したときに、ステアリングシャフトに加わる操舵トルクに応じた補助力をモータから操舵機構に与え、操舵力を補助するものである。
例えば、特許文献1に開示された電動パワーステアリング装置では、ステアリングの舵角と車速に基づいて目標操舵トルクを推定し、同目標操舵トルクと検出された操舵トルクとの偏差に基づいてモータのフィードバック制御を行っている。
特開2002−120743号公報
このフィードバック制御において、モータ出力に対する要求される操舵トルクのゲインが大きく、音や振動の発生を抑えるために、そのフィードバック制御における目標操舵トルクのゲインをあまり高く設定できない。
そのため、据え切りや低速走行時のようにアシスト量が多く必要な状態において応答性が悪くなる場合がある。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、フィードバック制御のゲインを上げることなく、据え切りや低速走行時の応答性を向上させた電動パワーステアリング装置を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、アシストモータの駆動力がステアリング操舵力を補助する電動パワーステアリング装置において、操舵トルクを検出するトルクセンサと、車速を検出する車速センサと、舵角を検出する舵角検出手段と、前記舵角検出手段により検出された舵角と前記車速センサにより検出された車速に基づいて目標操舵トルクを導出する目標操舵トルク演算処理手段と、前記目標操舵トルク演算手段により演算された目標操舵トルクと前記トルクセンサにより検出された操舵トルクとの差に基づいてフィードバック制御量を演算するフィードバック制御量演算手段と、前記目標操舵トルク演算手段により演算された目標操舵トルクと前記車速センサにより検出された車速に基づいてフィードフォワード制御量を演算するフィードフォワード制御量演算手段と、前記フィードバック制御量演算手段が算出したフィードバック制御量に前記フィードフォワード制御量演算手段が算出したフィードフォワード制御量を加算してモータ制御量を演算するモータ制御量演算手段と、前記モータ制御量演算手段により算出されたモータ制御量に基づいて前記アシストモータを駆動するモータ駆動手段とを備えた電動パワーステアリング装置とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記フィードフォワード制御量演算手段が、予め車速ごとに決められた目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を記憶するフィードフォワード制御量記憶手段を備え、前記車速に対応した目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を選択し、選択された同目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係から前記目標操舵トルクに基づいてフィードフォワード制御量を抽出することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の電動パワーステアリング装置において、前記目標操舵トルク演算処理手段は、舵角またはモータ回転角の角速度を検出する角速度検出手段と、前記舵角検出手段により検出された舵角と前記車速センサにより検出された車速に基づいてセルフアライニングトルクを演算するセルフアライニングトルク演算手段と、前記角速度検出手段により検出された角速度と前記車速センサにより検出された車速に基づいてステアリングのフリクショントルクを演算するフリクショントルク演算手段とを備え、前記セルフアライニングトルク演算手段により演算されたセルフアライニングトルクに前記フリクショントルク演算手段により演算されたフリクショントルクを加算して目標操舵トルクを演算することを特徴とする。
請求項1記載の電動パワーステアリング装置によれば、目標操舵トルクと操舵トルクとの差に基づいてフィードバック制御量演算手段により演算されたフィードバック制御量に、目標操舵トルクと車速に基づいてフィードフォワード制御量演算手段により演算されたフィードフォワード制御量を加算してモータ制御量としているので、フィードバック制御のゲインを上げることなく、フィードフォワード制御が補って据え切りや低速走行時のようにアシスト量が多く必要な状態における応答性を向上させることができる。
また、フィードフォワード制御で補う分だけフィードバック制御のゲインを低く設定できるため、音や振動の発生を抑制することができる。
請求項2記載の電動パワーステアリング装置によれば、フィードフォワード制御量演算手段が、予め車速ごとに決められた目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を記憶するフィードフォワード制御量記憶手段を備え、車速に対応して選択された目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係から目標操舵トルクに基づいてフィードフォワード制御量を抽出するので、フィードフォワードの最適制御量を容易に、かつ速やかに算出することができる。
請求項3記載の電動パワーステアリング装置によれば、舵角と車速に基づいて演算されたセルフアライニングトルクに、角速度と車速に基づいて演算されたフリクショントルクを加算して目標操舵トルクとするので、特に低車速で小さくなるセルフアライニングトルクを補うようにフリクショントルクが加算され、路面に対するタイヤの摩擦などの影響をカバーして常に安定した操舵フィーリングを実現することができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図11に基づいて説明する。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置1の全体の概略後面図を図1に示す。
電動パワーステアリング装置1は、車両の左右方向(図1における左右方向に一致)に指向した略円筒状のラックハウジング2内にラック軸3が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
ラックハウジング2の両端開口から突出したラック軸3の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッドが連結され、ラック軸3の移動によりタイロッドが動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
ラックハウジング2の右端部にステアリングギヤボックス4が設けられている。
ステアリングギヤボックス4には、ステアリングホイール(図示せず)が一体に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸5が軸受を介して回動自在に軸支されており、図2に示すように入力軸5はステアリングギヤボックス4内でトーションバー6を介して相対的なねじり可能に操舵ピニオン軸7と連結されている。
この操舵ピニオン軸7のはす歯7aがラック軸3のラック歯3aと噛合している。
したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸5に伝達された操舵力は、トーションバー6を介して操舵ピニオン軸7を回動して操舵ピニオン軸7のはす歯7aとラック歯3aの噛合によりラック軸3を左右軸方向に摺動させる。
ラック軸3は、ラックガイドスプリング8に付勢されたラックガイド9により背後から押圧されている。
ステアリングギヤボックス4の上部にはアシストモータMが取り付けられ、アシストモータMの駆動力を減速して操舵ピニオン軸7に伝達するウオーム減速機構10がステアリングギヤボックス4内に構成されている。
ウオーム減速機構10は、操舵ピニオン軸7の上部に嵌着されたウオームホイール11にアシストモータMの駆動軸に同軸に連結されたウオーム12が噛合して構成されている。
アシストモータMの駆動力をこのウオーム減速機構10を介して操舵ピニオン軸7に作用させて操舵を補助する。
なお、アシストモータMには、その回転駆動軸の回転を直接検出するロータリエンコーダ、レゾルバなどの回転角センサ27が設けられている。
ウオーム減速機構10のさらに上方に操舵トルクセンサ20が設けられている。
トーションバー6の捩れをコア21の軸方向の移動に変換し、コア21の移動をコイル22,23のインダクタンス変化に変えて操舵トルクTを検出している。
なお、トーションバー6の捩れを光学的に検出するトルクセンサでもよい。
以上のようなアシストモータMをコンピュータにより駆動制御して操舵力を補助する操舵トルク制御装置30の概略ブロック図を図3に示す。
操舵トルク制御装置30は、PWM制御信号(デューティ信号等)をモータ駆動回路26に出力し、モータ駆動回路26がPWM制御信号に従ってアシストモータMを駆動する。
なお、アシストモータMには、その回転駆動軸の回転を直接検出するロータリエンコーダ、レゾルバなどの回転角センサ27が設けられている。
そして、操舵トルク制御装置30は、舵角検出手段55と角速度演算手段56を備えており、回転角センサ27が検出したモータ回転数nに基づき舵角検出手段55が舵角θを検出し、角速度演算手段56が同舵角θを時間微分してステアリングの角速度ωを演算している。
なお、舵角θは、別途舵角センサを備えて、直接舵角センサにより求めてもよい。
操舵トルク制御装置30には、前記操舵トルクセンサ20が検出する操舵トルクTのほかに、車速センサ25により検出される車速vが入力される。
操舵トルク制御装置30は、主として目標操舵トルク演算処理手段40とフィードバック制御量演算手段51およびフィードフォワード制御量演算手段52を備えている。
まず、目標操舵トルク演算処理手段40について図4ないし図9に基づいて説明する。
図4は、目標操舵トルク演算処理手段40の概略ブロック図であり、同図4に示すように、目標操舵トルク演算処理手段40は、セルフアライニングトルク演算手段41とフリクショントルク演算手段45の2つの演算手段からなる。
セルフアライニングトルク演算手段41は、セルフアライニングベーストルク抽出手段42とセルフアライニングトルク乗算係数抽出手段43とを備える。
セルフアライニングベーストルク抽出手段42は、基準車速における舵角に対するセルフアライニングベーストルクの関係を記憶するセルフアライニングベーストルク(SABT)記憶手段42aから舵角θに基づいてセルフアライニングベーストルクTsbを抽出する。
セルフアライニングベーストルク記憶手段42aが記憶する基準車速Voにおける舵角θに対するセルフアライニングベーストルクTsbの関係マップを、図5の座標に示す。
図5において、横軸の舵角θは、正の値が右舵角(θ>0)、負の値が左舵角(θ<0)を示す。
ここに、縦軸のセルフアライニングベーストルクTsbは、正の値が右方向トルク(Tsb>0)、負の値が左方向トルク(Tsb<0)であって、実際のセルフアライニングトルク(走向車輪が路面から受けるトルクであり、走向車輪を直進姿勢に復元するように働く力)の反力として示している。
したがって、例えば右舵角θ(>0)が大きくなれば、実際とは反対方向の右方向のセルフアライニングベーストルクTsb(>0)が大きくなる。
セルフアライニングトルク演算手段41が備えるもう一つのセルフアライニングトルク乗算係数抽出手段43は、車速に対するセルフアライニングトルク乗算係数を記憶するセルフアライニングトルク(SAT)乗算係数記憶手段43aから車速vに基づいてセルフアライニングトルク乗算係数ksを抽出する。
セルフアライニングトルク乗算係数記憶手段43aが記憶する車速vに対するセルフアライニングトルク乗算係数ksの関係マップを、図6の座標に示す。
図6において、車速vの増加に従いセルフアライニングトルク乗算係数ksの値は上昇している。
基準車速Voのとき、セルフアライニングトルク乗算係数ks=1.0である。
セルフアライニングトルク演算手段41は、セルフアライニングベーストルク抽出手段42が舵角θに基づいて抽出したセルフアライニングベーストルクTsbに、セルフアライニングトルク乗算係数抽出手段43が車速vに基づいて抽出したセルフアライニングトルク乗算係数ksを、乗算手段44により乗算して、セルフアライニングトルクTsを算出する。
なお、このセルフアライニングトルクTsは、実際のセルフアライニングトルクの反力としてのセルフアライニングトルクである。
セルフアライニングベーストルクTsbにセルフアライニングトルク乗算係数ksを乗算することにより、セルフアライニングトルクTsは、車速vが基準車速Voより小さくなる程セルフアライニングベーストルクTsbが減少し、基準車速Voより大きくなる程増幅する。
一方、フリクショントルク演算手段45は、フリクションベーストルク抽出手段46とフリクショントルク乗算係数抽出手段47とを備える。
フリクションベーストルク抽出手段46は、停車時における角速度に対するフリクションベーストルクの関係を記憶するフリクションベーストルク(FBT)記憶手段46aから角速度ωに基づいてフリクションベーストルクTfbを抽出する。
フリクションベーストルク記憶手段46aが記憶する停車時(車速v=0)における角速度ωに対するフリクションベーストルクTfbの関係マップを、図7の座標に示す。
図7において、横軸の角速度ωは、正の値が右方向の角速度(ω>0)、負の値が左方向の角速度(ω<0)を示す。
縦軸のフリクションベーストルクTfbは、正の値が右方向トルク(Tfb>0)、負の値が左方向トルク(Tfb<0)であって、実際のタイヤ等の摩擦相当の反力として示している。
したがって、例えば右方向の角速度ω(>0)が大きくなれば、実際とは反対方向の右方向のフリクションベーストルクTfb(>0)が大きくなり、前記セルフアライニングベーストルクTsbに比べ低いトルクで略一定になる。
フリクショントルク演算手段45が備えるもう一つのフリクショントルク乗算係数抽出手段47は、車速に対するフリクショントルク乗算係数を記憶するフリクショントルク(FT)乗算係数記憶手段47aをから車速vに基づいてフリクショントルク乗算係数kfを抽出する。
フリクショントルク乗算係数記憶手段47aが記憶する車速vに対するフリクショントルク乗算係数kfの関係マップを、図8の座標に示す。
図8において、車速v=0(停車時)のとき、フリクショントルク乗算係数kfの値は、1.0を示し、車速vが停車時から高くなるに従いフリクショントルク乗算係数kfの値は減少し、約20km/hを過ぎる辺りから略一定の値(約0.5)となっている。
フリクショントルク演算手段45は、フリクションベーストルク抽出手段46が角速度ωに基づいて抽出したフリクションベーストルクTfbに、フリクショントルク乗算係数抽出手段47が車速vに基づいて抽出したフリクショントルク乗算係数kfを、乗算手段48により乗算して、フリクショントルクTfを算出する。
なお、このフリクショントルクTfは、実際のフリクショントルクの反力としてのフリクショントルクである。
フリクションベーストルクTfbにフリクショントルク乗算係数kfを乗算することにより、フリクショントルクTfは、車速vが約20km/hまではフリクションベーストルクTfbが徐々に減少し、約20km/hを過ぎると略半減する状態が継続する。
セルフアライニングトルク演算手段41により算出されたセルフアライニングトルクTsと、フリクショントルク演算手段45により算出されたフリクショントルクTfとは、加算手段49により加算されて目標操舵トルクTmが算出される。
セルフアライニングトルクTsは、特に低車速で小さくなるが、フリクショントルクTfは低車速でこれを補うように比較的大きい値を示すので、セルフアライニングトルクTsにフリクショントルクTfが加算されることで、低車速で大きく現出する路面に対するタイヤの摩擦などの影響を補うことができる。
以上の目標操舵トルクTmが算出されるまでの処理手順を、図9にフローチャートで示す。
まず、舵角検出手段55が検出した操舵角θを読込み(ステップ1)、角速度演算手段56により角速度ωを算出し(ステップ2)、車速センサ25により検出した車速vを読込む(ステップ3)。
次いで、セルフアライニングベーストルク抽出手段42により舵角θに基づきセルフアライニングベーストルクTsbを抽出し(ステップ4)、セルフアライニングトルク乗算係数抽出手段43により車速vに基づきセルフアライニングトルク乗算係数ksを抽出し(ステップ5)、セルフアライニングベーストルクTsbにセルフアライニングトルク乗算係数ksを乗算してセルフアライニングトルクTsを算出する(ステップ6)。
次に、フリクションベーストルク抽出手段46により角速度ωに基づいてフリクションベーストルクTfbを抽出し(ステップ7)、フリクショントルク乗算係数抽出手段47により車速vに基づきフリクショントルク乗算係数kfを抽出し(ステップ8)、フリクションベーストルクTfbにフリクショントルク乗算係数kfを乗算してフリクショントルクTfを算出する(ステップ9)。
そして、ステップ10において、セルフアライニングトルクTsにフリクショントルクTfを加算して目標操舵トルクTmを算出する。
以上の各ステップの処理が繰り返し実行される。
こうして算出された目標操舵トルクTmは、図3を参照して、減算手段50により前記操舵トルクセンサ20が検出した操舵トルクTとの偏差ΔT(=Tm−T)が算出され、フィードバック制御量演算手段51に入力される。
フィードバック制御量演算手段51は、PI(比例・積分)制御手段とPWM制御信号発生手段とからなり、PI制御手段が偏差ΔTから偏差ΔTを0にして目標操舵トルクTmを得るためにP(比例)動作とI(積分)動作を組み合わせてフィードバックの最適制御量を演算し、同最適制御量をPWM制御信号発生手段がPWM制御のデューティのフィードバックデューティDfbに変換して出力する。
一方、フィードフォワード制御量演算手段52は、車速ごとの目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を記憶するフィードフォワード(FF)制御量記憶手段52aを備えている。
フィードフォワード制御量記憶手段52aが記憶する車速vごとの目標操舵トルクTmに対するフィードフォワード制御量Dff(PWM制御のフィードフォワードデューティDff)の関係マップ(Tm−Dffマップ)を、図10の座標に示す。
図10において、目標操舵トルクTmを横軸に、フィードフォワードデューティDffを縦軸にとっており、目標操舵トルクTmに対するフィードフォワードデューティDffの増加率は、0から徐々に大きくなり、その後小さくなって0に近づく。
この目標操舵トルクTmに対するフィードフォワードデューティDffの関係は、車速ごとに予め決められており、車速が高くなる程フィードフォワードデューティDffは低い値を示す。
すなわち、同じ目標操舵トルクTmであっても低車速ほどフィードフォワード制御としてアシストモータMを駆動するフィードフォワードデューティDff(モータトルク)を大きくして、アシストモータMのモータトルクを大きくし、低車速での応答性を良くし、逆に高車速ほどフィードフォワード制御としてアシストモータMを駆動するフィードフォワードデューティDff(モータトルク)を小さくして、運転者の操舵感が重くなるように制御している。
なお、目標操舵トルクTmに対するフィードフォワードデューティDffの関係は、1次関数や2次関数として設定してもよく、フィードフォワードによる過大出力を抑制するリミットを設けることも可能である。
こうしてフィードフォワード制御量演算手段52により算出されたフィードフォワードデューティDffは、前記フィードバック制御量演算手段51により算出されたフィードバックデューティDfbに、加算手段(モータ制御量演算手段)53により加算され、最終的にアシストモータMを制御するPMWのデューティDが求められる。
以上のモータ制御量の演算処理の手順を、図11にフローチャートで示す。
まず、車速センサ25により検出された車速v(目標操舵トルクTmの演算に用いたと同じ車速v)を読込み(ステップ21)、操舵トルクセンサ20により検出された操舵トルクTを読込み(ステップ22)、目標操舵トルク演算処理手段40により算出された目標操舵トルクTmを読込む(ステップ23)。
そして、ステップ24で目標操舵トルクTmと操舵トルクTとの偏差ΔT(=Tm−T)に基づきフィードバック制御量演算手段51によりフィードバック制御量Dfb(フィードバックデューティDfb)が算出される。
次いで、車速vに対応する目標操舵トルクTmに対するフィードフォワード制御量Dff(フィードフォワードデューティDff)の関係マップ(Tm−Dffマップ)を選択し(ステップ25)、選択したTm−Dffマップから目標操舵トルクTmに基づきフィードフォワードデューティDffを抽出する(ステップ26)。
そして、ステップ27でフィードバックデューティDfbにフィードフォワードデューティDffが加算されてモータ制御量D(PMW制御信号のデューティD)が求められる。
このPMW制御信号のデューティDは、モータ駆動回路26に出力され、モータ駆動回路26は、PWM制御信号のデューティに従った電流をアシストモータMに供給してアシストモータMを駆動して操舵力を補助する。
以上のように、本操舵トルク制御装置30は、目標操舵トルクTmと操舵トルクTとの偏差ΔTに基づいて演算されたフィードバック制御量Dfbに、目標操舵トルクTmと車速vに基づいて演算されたフィードフォワード制御量Dffを加算してモータ制御量Dとしているので、フィードバック制御のゲインを上げることなく、フィードフォワード制御が補って据え切りや低速走行時のようにアシスト量が多く必要な状態における応答性を向上させることができる。
また、フィードフォワード制御で補う分だけフィードバック制御のゲインを低く設定できるため、音や振動の発生を抑制することができる。
さらに、本操舵トルク制御装置30は、目標操舵トルク演算処理手段40がセルフアライニングトルク演算手段41により算出されたセルフアライニングトルクTsにフリクショントルク演算手段45により算出されたフリクショントルクTfを加算して目標操舵トルクTmを求めているので、特に低車速で小さくなるセルフアライニングトルクTsをフリクショントルクTfが補い、低車速で大きく現出する路面に対するタイヤの摩擦などの影響をカバーして常に安定した操舵フィーリングを実現することができる。
本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の全体の概略後面図である。 ステアリングギヤボックス内の構造を示す断面図である。 操舵トルク制御装置の概略ブロック図である。 目標操舵トルク演算処理手段の概略ブロック図である。 基準車速における舵角θに対するセルフアライニングベーストルクTsbの関係マップを座標で示す図である。 車速vに対するセルフアライニングトルク乗算係数ksの関係マップを座標で示す図である。 停車時における角速度ωに対するフリクションベーストルクTfbの関係マップを座標で示す図である。 車速vに対するフリクショントルク乗算係数kfの関係マップを座標で示す図である。 目標操舵トルクの算出処理手順を示すフローチャートである。 車速vごとの目標操舵トルクTmに対するフィードフォワード制御量Dffの関係マップを座標で示す図である。 モータ制御量の演算処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
M…アシストモータ、1…電動パワーステアリング装置、2…ラックハウジング、3…ラック軸、4…ステアリングギヤボックス、5…入力軸、6…トーションバー、7…操舵ピニオン軸、8…ラックガイドスプリング、9…ラックガイド、10…ウオーム減速機構、11…ウオームホイール、12…ウオーム、20…操舵トルクセンサ、21…コア、22,23…コイル、25…車速センサ、26…モータ駆動回路、27…回転角センサ、
30…操舵トルク制御装置、
40…目標操舵トルク演算処理手段、41…セルフアライニングトルク演算手段、42…セルフアライニングベーストルク抽出手段、42a…セルフアライニングベーストルク記憶手段、43…セルフアライニングトルク乗算係数抽出手段、43a…セルフアライニングトルク乗算係数記憶手段、44…乗算手段、45…フリクショントルク演算手段、46…フリクションベーストルク抽出手段、46a…フリクションベーストルク記憶手段、47…フリクショントルク乗算係数抽出手段、47a…フリクショントルク乗算係数記憶手段、48…乗算手段、49…加算手段、
50…減算手段、51…フィードバック制御量演算手段、52…フィードフォワード制御量演算手段、52a…フィードフォワード制御量記憶手段、53…加算手段、55…舵角検出手段、56…角速度演算手段。


Claims (3)

  1. アシストモータの駆動力がステアリング操舵力を補助する電動パワーステアリング装置において、
    操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    車速を検出する車速センサと、
    舵角を検出する舵角検出手段と、
    前記舵角検出手段により検出された舵角と前記車速センサにより検出された車速に基づいて目標操舵トルクを導出する目標操舵トルク演算処理手段と、
    前記目標操舵トルク演算手段により演算された目標操舵トルクと前記トルクセンサにより検出された操舵トルクとの差に基づいてフィードバック制御量を演算するフィードバック制御量演算手段と、
    前記目標操舵トルク演算手段により演算された目標操舵トルクと前記車速センサにより検出された車速に基づいてフィードフォワード制御量を演算するフィードフォワード制御量演算手段と、
    前記フィードバック制御量演算手段が算出したフィードバック制御量に前記フィードフォワード制御量演算手段が算出したフィードフォワード制御量を加算してモータ制御量を演算するモータ制御量演算手段と、
    前記モータ制御量演算手段により算出されたモータ制御量に基づいて前記アシストモータを駆動するモータ駆動手段とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記フィードフォワード制御量演算手段が、
    予め車速ごとに決められた目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を記憶するフィードフォワード制御量記憶手段を備え、
    前記車速に対応した目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係を選択し、選択された同目標操舵トルクに対するフィードフォワード制御量の関係から前記目標操舵トルクに基づいてフィードフォワード制御量を抽出することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記目標操舵トルク演算処理手段は、
    舵角またはモータ回転角の角速度を検出する角速度検出手段と、
    前記舵角検出手段により検出された舵角と前記車速センサにより検出された車速に基づいてセルフアライニングトルクを演算するセルフアライニングトルク演算手段と、
    前記角速度検出手段により検出された角速度と前記車速センサにより検出された車速に基づいてステアリングのフリクショントルクを演算するフリクショントルク演算手段とを備え、
    前記セルフアライニングトルク演算手段により演算されたセルフアライニングトルクに前記フリクショントルク演算手段により演算されたフリクショントルクを加算して目標操舵トルクを演算することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動パワーステアリング装置。


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