JP5867513B2 - プレス成形用鋼板の製造方法ならびにプレス成形部品の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
プレス成形前にブランク材を通電加熱する技術としては、例えば、以下に示す特許文献1に開示されている技術が知られており、公知となっている。
そして従来、このような方法により通電加熱されるブランク材は、矩形のものが選ばれている。これは、矩形以外の形状を有する(非矩形の)ブランク材では、通電加熱時において各部位で電流密度のばらつきが生じてしまうため、通電加熱の手法によっては、非矩形のブランク材全体を均一な温度に加熱することが困難だからである。
しかしながら従来は、非矩形のブランク材を通電加熱により均一に加熱することが難しく、非矩形のプレス成形用鋼板を生成することが困難であったため、矩形のブランク材から矩形のプレス成形用鋼板を生成して使用することが一般的となっていた。
このため従来は、プレス成形により製品を製造する場合において、材料の歩留まりを向上させることが困難であり、通電加熱の手法を採用しつつ、製品形状に対応した非矩形のプレス成形用鋼板を得ることができる技術に対するニーズが存在していた。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法において用いるブランク材について、説明をする。
尚、以下の説明では、図1(a)(b)中に示す矢印Xの方向をブランク材の長さ方向(通電方向)と規定し、また、矢印Yの方向をブランク材の幅方向と規定する(以下の説明において共通とする)。さらに、図1(a)(b)中に示す矢印Zの方向をブランク材の厚み方向と規定する(以下の説明において共通とする)。
そして、ブランク材10の長さ方向(即ち、矢印Xの方向)における両端部には、電極2・2を接触させるための部位である通電部10c・10dが形成されている。
また、ブランク材10の幅方向(即ち、矢印Yの方向)における両端部には、通電加熱方向に平行な辺部である側面部10e・10fが形成されている。
即ち、ここで言う「矩形」とは、完全な長方形および正方形のみを指す概念ではなく、ブランク材における均一な温度を得たい部位が矩形であれば、それ以外の部位(例えば、将来的に切除されてしまうような部位(余剰部))において、部分的に凸部や凹部が存在しているような形状であってもよく、このような概ね矩形である形状(略矩形)をも含む概念である。
本発明の一実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法は、ブランク材10に対して、図1および図2に示すような通電加熱装置1と、図3〜図5に示すような曲げ加工装置20を用いて、加工を施すことによって実現することができる。
図1および図2に示す如く、本発明の一実施形態に係る通電加熱方法において用いる通電加熱装置1は、プレス成形を行うための素材であるブランク材10を、プレス成形前の段階で通電加熱するための装置であり、一対の電極2・2、電源装置3等を備えている。
また、電極2・2は、電源装置3に接続されており、電源装置3、電極2・2およびブランク材10によって、一つの閉回路を形成する構成としている。
そして、電極2・2に対して、電源装置3により所定の電圧を印加することによって、ブランク材10に所定の電流値で、ブランク材10の長さ方向(X方向)電流を流すことができる(即ち、通電加熱をすることができる)構成としている。
図3および図4に示す如く、本発明の一実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法において用いる曲げ加工装置20は、ブランク材10をその板厚方向(Z方向)に対して直交する方向に応力を付与して、ブランク材10を変形させるための装置であり、複数の(本実施形態では4個の)応力付与手段21・22・23・24を備える構成としている。
曲げ加工装置20における配置部25・25上に配置されたブランク材10は、板厚方向を鉛直方向に向けた状態で保持され、表面10aおよび裏面10bが水平に保持される。
そして、ブランク材10の各辺10c・10d・10e・10fが、各応力付与手段21・22・23・24に対応する位置に配置される。
また、クランプ機構21aに図示しない押圧部材を把持させるとともに、変位機構21bの軸部を伸長させることにより、該押圧部材を通電部10cに押し当てて、ブランク材10にX方向への圧縮力を付与することも可能である。
このため、通電部10cにおける挟持する位置を変更することができる。
また、クランプ機構22aに図示しない押圧部材を把持させるとともに、該押圧部材を通電部10dに押し当てておいて、変位機構22bの軸部を伸長させることにより、ブランク材10にX方向への圧縮力を付与することも可能である。
このため、通電部10dにおける挟持する位置を変更することができる。
また、クランプ機構23aに図示しない押圧部材を把持させるとともに、該押圧部材を側面部10eに押し当てておいて、変位機構23bの軸部を伸長させることにより、ブランク材10にY方向への圧縮力を付与することも可能である。
このため、側面部10eにおける挟持する位置を変更することができる。
また、クランプ機構24aに図示しない押圧部材を把持させるとともに、該押圧部材を側面部10fに押し当てておいて、変位機構24bの軸部を伸長させることにより、ブランク材10にY方向への圧縮力を付与することも可能である。
このため、側面部10fにおける挟持する位置を変更することができる。
このような構成により、所定の温度に加熱された非矩形のプレス成形用鋼板15を得ることができる。
図5(a)に示す如く、シワ抑え手段26は、曲げ加工が行われるブランク材10を板厚方向(Z方向)に挟圧することにより、ブランク材10の表面10aおよび裏面10bに生じるシワを抑制するための手段であり、ブランク材10の表面10aに当接する第一のシワ抑え部材たる第一シワ抑え部材26aと、裏面10bに当接する第二のシワ抑え部材たる第二シワ抑え部材26bを備えている。
また、各シワ抑え部材26a・26bは、断熱性および絶縁性を有する材質(例えば、セラミック等)からなる構成としており、各シワ抑え部材26a・26bがブランク材10に当接するときに生じる温度低下を抑制する構成としている。
さらに、下側の第二シワ抑え部材26bは、曲げ加工装置20の所定位置(配置部25・25)に配置されるブランク材10の裏面10bに当接可能な位置に配置されており、ブランク材10のシワを抑制したい部位に当接する位置に配置されている。
このような構成により、シワの発生が抑えられた、より品質のよいプレス成形用鋼板15を得ることができる。
このような構成により、曲げ加工時におけるプレス成形用鋼板15の温度低下を抑制することができる。これにより、プレス成形時における加工性を確保することができる。
即ち、各シワ抑え部材26a・26bの隙間を所定の距離に保持して、曲げ加工が施される際にブランク材10に生じる起伏を一定高さ以下に抑えることによって、ブランク材10のシワを抑制することも可能である。
図6に示す如く、本発明の第一の実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法は、ブランク材10に対して通電加熱装置1により通電加熱をした後に、その通電加熱した後のブランク材10を曲げ加工装置20で曲げ加工することにより実現することができる。
通電加熱工程(STEP−101)では、通電加熱装置1を用いて、板厚方向視において矩形のブランク材10に対して通電加熱を行い、該ブランク材10の温度がマルテンサイト変態温度(Ac3)以上となるように加熱する。
そして、該ブランク材10の温度が低下しない間に、速やかに次の工程に移行する。
その曲げ加工の態様は、例えば、図8(a)に示すような態様としている。
例えば、形状αのようなプレス成形部品を得ようとする場合、従来は、図8(b)に示すような大きさである板厚方向視において矩形のブランク材30を使用していた。
本発明の第一の実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法では、ブランク材30に比して大きさが小さいブランク材10を使用する構成としている。
そして、通電加熱装置1によって、従来よりも小さい矩形のブランク材10を所定の温度まで通電加熱するとともに、曲げ加工装置20によって、ブランク材10を形状αに対応した形状に変形させて、プレス成形用鋼板15を生成する構成としている。
例えば、形状βのようなプレス成形部品を得ようとする場合、従来は、図9(b)に示すような大きさである板厚方向視において矩形のブランク材30を使用していた。
本発明の第一の実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法では、ブランク材30に比して大きさが小さいブランク材10を使用する構成としている。
そして、通電加熱装置1によって、従来よりも小さい矩形のブランク材10を所定の温度まで通電加熱するとともに、曲げ加工装置20によって、ブランク材10を形状βに対応した形状に変形させて、プレス成形用鋼板15を生成する構成としている。
例えば、形状γのようなプレス成形部品を得ようとする場合、従来は、図10(b)に示すような大きさである板厚方向視において矩形のブランク材30を使用していた。
本発明の第一の実施形態に係るプレス成形用鋼板の製造方法では、ブランク材30に比して大きさが小さいブランク材10を使用する構成としている。
そして、通電加熱装置1によって、従来よりも小さい矩形のブランク材10を所定の温度まで通電加熱するとともに、曲げ加工装置20によって、ブランク材10を形状γに対応した形状に変形させて、プレス成形用鋼板15を生成する構成としている。
このような構成により、所定の温度に加熱された非矩形のプレス成形用鋼板15を得ることができる。
このような構成により、シワの発生が抑えられた、より品質のよいプレス成形用鋼板15を得ることができる。
湾曲部形成工程(STEP−200)では、図示しないプレス装置等を用いて、図11(a)(b)に示すような幅方向の寸法がW1である矩形のブランク材17に対して長さ方向に平行な湾曲部17aを形成する。
これにより、ブランク材17の表面積を確保しつつ、ブランク材17の幅方向の寸法をW2(W1>W2)に減少させる。
通電加熱工程(STEP−201)では、通電加熱装置1を用いて、板厚方向視において矩形であるブランク材17に対して通電加熱を行い、該ブランク材17の温度がマルテンサイト変態温度(Ac3)以上となるように加熱する。
そして、該ブランク材17の温度が低下しない間に、速やかに次の工程に移行する。
ブランク材17に対して、長さ方向に直交する方向に曲げ加工を施す場合、該ブランク材17の幅方向の寸法に応じて、曲げ加工に要する応力が異なってくる。
即ち、幅方向の寸法がW2であるブランク材17の曲げ加工に要する応力は、幅方向の寸法がW1のままで曲げ加工をする場合に比して小さくなる。
このような構成により、ブランク材17に対して、より小さな応力で曲げ加工を施すことができる。これにより、曲げ加工装置20をより簡易な構成とすることができる。
図12に示す如く、本発明の一実施形態に係るプレス成形部品50を製造するための製造装置100は、ブランク材10を通電加熱するための通電加熱装置1と、該通電加熱装置1により加熱したブランク材10を曲げ加工してプレス成形用鋼板15を生成するための曲げ加工装置20と、該曲げ加工装置20により生成したプレス成形用鋼板15をプレス成形するためのプレス成形装置51と、を備える構成としている。
ブランクホルダー54は、ダイ53aとの間でプレス成形用鋼板15を挟圧して保持するための部位である。
また、ダイホルダー59は、図示しない変位装置によって、上下方向(即ち、図17中に示す矢印Aの方向)に変位可能に支持されており、また、ポンチホルダー60は、プレス成形装置51の図示しない本体フレーム等と一体的に形成され、変位不能な構成としている。
このような構成により、ダイホルダー59を上下方向に変位させることによって、ダイホルダー59に固定されるダイ53aと、ポンチホルダー60に固定されるポンチ53bの離間距離を調整することができる構成としている。
さらに、ポンチホルダー60に隣接する下方にはクッション55が配置されており、孔60a・60a・・・に挿通されたクッションピン57・57・・・の下端部がクッション55の上面部に当接している。
本発明の第一の実施形態に係るプレス成形部品の製造方法は、プレス成形部品50を本発明の一実施形態に係る製造装置100(図12参照)を用いて製造するものであり、図14に示す如く通電加熱工程(STEP−101)、曲げ加工工程(STEP−102)、プレス成形工程(STEP−300)を備えている。
また、シワ抑え手段26のシワ抑え手段26a・26bを断熱性を有する素材により構成することによって、シワ抑え手段26からの抜熱を抑制して、ブランク材10の温度低下を抑制しつつ、プレス成形用鋼板15を生成することができる。
そして、プレス成形用鋼板15をプレス成形することによって、形状αを有するプレス成形部品50を製造する構成としている。
このような構成により、シワの発生が抑えられた、より品質のよいプレス成形部品50を得ることができる。
即ち、本発明の第二の実施形態に係るプレス成形部品の製造方法は、プレス成形部品50を本発明の一実施形態に係る製造装置100(図12参照)を用いて製造するものであり、図15に示す如く、湾曲部形成工程(STEP−200)、通電加熱工程(STEP−201)、曲げ加工工程(STEP−202)、プレス成形工程(STEP−300)を備えている。
そして、このようにして生成されたプレス成形用鋼板35(図11参照)をプレス成形することによって、形状αを有するプレス成形部品50を製造する構成としている。
このような構成により、ブランク材17に対して、より小さな応力で曲げ加工を施すことができる。これにより、曲げ加工装置20をより簡易な構成とすることができる。
尚、ここではプレス成形用鋼板15から製造したプレス成形部品50を例示して説明を行うが、湾曲部を有するプレス成形用鋼板35を用いた場合も同様である。
また、プレス成形部品50の内R部50bにおいては、曲げ加工工程で一旦板厚が増大するが、プレス成形工程で板厚が減少することによって、一連の加工を施す前の(ブランク材10の状態の)板厚に略等しい板厚が確保される。
このため、プレス成形用鋼板45をプレス成形して製造される従来のプレス成形部品70では、外R部70aの板厚が、内R部70bの板厚に比して大きくなる。
15 プレス成形用鋼板
20 曲げ加工装置
50 プレス成形部品
51 プレス成形装置
100 製造装置
Claims (4)
- 板厚方向視において矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程と、
通電加熱開始後の前記矩形の鋼板部材に対して応力を付与することにより、前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程と、
を含み、
前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程において、
通電加熱後の前記矩形の鋼板部材に対して、該鋼板部材の板厚方向に直交する方向への応力を付与し、
前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程において、
前記鋼板部材を、
断熱性を有する素材からなる部材であるシワ抑え部材により板厚方向に挟圧しつつ、該鋼板部材の板厚方向に直交する方向への応力を付与する、
ことを特徴とするプレス成形用鋼板の製造方法。 - 板厚方向視において矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程と、
通電加熱開始後の前記矩形の鋼板部材に対して応力を付与することにより、前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程と、
を含み、
前記矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程の前に、
前記鋼板部材に対して、該鋼板部材の長さ方向に平行な部位であって、かつ、該鋼板部材を板厚方向に膨出させた部位である湾曲部を形成する工程を有する、
ことを特徴とするプレス成形用鋼板の製造方法。 - 板厚方向視において矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程と、
通電加熱開始後の前記矩形の鋼板部材に対して応力を付与することにより、前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程と、
応力を付与された非矩形の前記鋼板部材を板厚方向にプレス成形する工程と、
を含み、
前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程において、
前記鋼板部材を、
断熱性を有する素材からなる部材であるシワ抑え部材により板厚方向に挟圧しつつ、該鋼板部材の板厚方向に直交する方向への応力を付与する、
ことを特徴とするプレス成形部品の製造方法。 - 板厚方向視において矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程と、
通電加熱開始後の前記矩形の鋼板部材に対して応力を付与することにより、前記鋼板部材を矩形から非矩形へと変形させる工程と、
応力を付与された非矩形の前記鋼板部材を板厚方向にプレス成形する工程と、
を含み、
前記矩形の鋼板部材に対して通電加熱を行う工程の前に、
前記鋼板部材に対して、該鋼板部材の長さ方向に平行な部位であって、かつ、該鋼板部材を板厚方向に膨出させた部位である湾曲部を形成する工程を有する、
ことを特徴とするプレス成形部品の製造方法。
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