JP4968104B2 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス成形品の製造方法に関し、具体的には、例えば鋼板等の金属板を素材とするプレス成形品の寸法精度の不良の一つであるひねれを、抑制又は事実上解消することができるプレス成形品の製造方法に関する。
近年、プレス成形部材、特に自動車構造部材には、地球環境問題の改善、及び衝突安全性能の向上の観点から、薄肉化及び高剛性化がさらに求められている。これらの相反する要求を満足するため、高強度鋼板の適用が拡大している。この高強度鋼板の適用を拡大するには、プレス成形品の寸法精度の不良、特にいわゆる「ひねれ」の発生を抑制する必要がある。ひねれは、パンチ及びダイスを備えるプレス金型によりブランクをプレス成形することによって凸状のパンチ成形部とその周囲の平面状のフランジとを有するプレス成形品を製造する際に、発生する。
図1は、このプレス成形品1の一例を示す説明図であり、図2はひねれが発生したプレス成形品5の一例を示す説明図である。
図1、2に示すように、プレス成形品1、5は、素材であるブランク2、6の略中央部に図示しないパンチによって凸状の立体形状に成形される部分3、7(以下「パンチ成形部」という)と、その周囲の平面状のフランジ4、8とを有する。図2において破線で示す形状がプレス成形下死点の外形形状である正規形状であるが、離型後における弾性回復現象によって実線で示されるように角度θを有するひねれが発生する。このひねれは、弾性回復現象であるので、プレス成形素材であるブランク6が高強度になるほど顕著に発生することが知られる。ひねれが発生したプレス成形品5は、製品として要求される形状精度を得られないばかりか、治具等を用いて他部品と強引に組み立てようとすると組立品自体が捻じれてしまうこともある。
特許文献1、2には、プレス成形の成形下死点において成形品の所定の位置に高エネルギービームを照射して、歪みが無い安定した加工組織とすることにより、プレス成形品のひねれを低減する発明が開示される。
また、特許文献3〜6には、ひねれの低減を目的とするものではないが、プレス成形品のパンチ成形部を局部的に加熱することにより、このパンチ成形部の近傍における、面歪みと呼ばれる極軽微な波打ち状の面欠陥の発生を抑制する発明が開示される。
特開平1−233019号公報 特開平8−10851号公報 特開昭59−150623号公報 特開昭59−229241号公報 特開昭59−229242号公報 特開昭60−99436号公報
特許文献1、2により開示された発明では、高エネルギービームを発生させる装置が単に必要になるだけでなく、成形下死点において高エネルギービームを照射するために金型の構造が複雑化することから設備費が嵩み、プレス成形品の製造コストが嵩む。また、これらの発明では、プレス成形品における高エネルギービーム照射部の組織が変化するために強度等の機械特性が変動してしまう。さらに、プレス成形品における高エネルギービーム照射部に焼跡が残存し、プレス成形品の外観品質が劣化する。
一方、特許文献3〜6により開示された発明が対象とする、パンチ成形部の近傍における極軽微な波打ち状の面欠陥である面歪みは、プレス成形品全体が捻じれる欠陥であるひねれとは全く異なる現象である。面ひずみは、パンチ成形部に作用する圧縮残留応力によってパンチ成形部に発生するものであり、面歪み発生個所を局部的に加熱して成形することによって抑制される。これに対し、ひねれは、プレス成形品のフランジに作用する圧縮残留応力とパンチ成形部に作用する引張残留応力との応力差で生じる捩れモーメントによってプレス成形品の全体にわたって発生するものであり、後述するように、この応力差を小さくするように、フランジの温度がパンチ成形部の温度より高くなるように温度差を付けて成形することによって抑制される。すなわち、ひねれと面ひずみとは、それぞれの発生メカニズムや発生領域が顕著に相違するものであるので、面歪みの抑制を図る特許文献3〜6により開示された発明に基づいても、ひねれの発生を防止することはできない。
本発明は、プレス金型で拘束されたブランクをプレス成形することによってパンチ成形部及びその周囲のフランジを有するプレス成形品を製造する際に、(i)このプレス成形によってパンチ成形部の周囲のフランジに発生する圧縮残留応力の発生部位及び引張残留応力の発生部位を予め求めておき、(ii)このプレス成形の途中又はこのプレス成形を終了した後に、プレス金型により前記のプレス成形における成形下死点で規定される形状に拘束されるプレス成形品に対して、フランジの一部である圧縮残留応力の発生部位の温度を、パンチ成形部の一部である引張残留応力の発生部位の温度よりも高くするとともにフランジの一部とパンチ成形部の一部との間に熱応力による塑性変形を発生させることができる温度差を付与し、(iii)プレス金型によるプレス成形品の拘束を開放することによって、前記の圧縮残留応力、及び引張残留応力の差により生じる捩れモーメントによってプレス成形品の全体にわたって発生する寸法精度不良であるひねれを抑制又は解消することを特徴とするプレス成形品の製造方法である。
これらの場合に、上述した温度差が、フランジの一部又は圧縮残留応力発生部位の一部に対応する、プレス成形を行われる前のブランクの一部を加熱することによって、設けられること、若しくは、プレス金型に設けた加熱手段によりプレス成形の途中又はこのプレス成形を終了した後の被成形材のフランジ又は圧縮残留応力発生部位を加熱することによって、設けられることが望ましい。
本発明により、複雑な構造を有する高価な金型を用いることなく、プレス成形品の機械特性を変動させることなく、さらにはプレス成形品に焼跡を残すことなく、プレス成形品における三次元的な寸法精度の不良であるひねれを抑制又は実質的に解消しながら、プレス成形品を製造することが可能になる。
以下、本発明に係るプレス成形品の製造方法を実施するための最良の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、本発明の原理を簡単に説明する。
上述した図1及び図2に示すように、ブランク6にパンチとダイスからなるプレス金型(いずれも図示しない)によりプレス成形を行うことにより、パンチ成形部7とその周囲のフランジ8とを有するプレス成形品5を製造すると、パンチ成形部7、フランジ8には、それぞれ引張残留応力、圧縮残留応力が発生する。この後、プレス成形品5をプレス金型から取り外してプレス金型による拘束を解放すると、圧縮残留応力及び引張残留応力により生じる捻りモーメントによってプレス成形品5の全体が捻じれる欠陥であるひねれが発生する。
この際、プレス金型でプレス成形品5を拘束しながら、プレス成形品5の圧縮残留応力発生部位8及び引張残留応力発生部位7にそれぞれ、熱応力による圧縮応力、引張応力をそれぞれ作用させて圧縮残留応力発生部位8及び引張残留応力発生部位7の双方を塑性変形させると、ひねれの程度を軽減することができる。
例えば、引張残留応力発生部位であるパンチ成形部7に比較して圧縮残留応力発生部位であるフランジ8の温度が高くなるように、例えば、内部にプレス成形時のフランジ8を加熱する手段を有するプレス金型を用いてフランジ8を加熱及び昇温することにより、フランジ8とパンチ成形部7とには温度差に伴う熱応力が発生する。この熱応力によりフランジ8とパンチ成形部7とを塑性変形させれば、ひねれの発生を抑制することができる。
本実施の形態では、ひねれが発生するプレス成形品5をプレス金型により正規形状に拘束した状態で、このプレス成形品5の所定の部位に、圧縮残留応力発生部位が高温となるとともに引張残留応力発生部位が低温となり、かつプレス成形品5に塑性変形が発生する温度差を付与することによって、プレス成形品5に塑性変形を発生させる。そして、その後に、プレス成形品5をプレス金型から取り外してプレス金型による拘束を解放すると、その直後には通常成形パネルと同等の量のひねれを生じるものの、プレス成形品5に付与される温度分布が均一となり室温まで低下するに伴って、プレス成形品5に発生する熱応力によってひねれが低減される。ここで、正規形状とは、プレス成形下死点で規定される被成形材の形状を指す。
プレス金型によりプレス成形品5を正規形状に拘束した状態でプレス成形品5に温度差を付与する理由は、正規形状に拘束しないフリーの状態で温度差を付与しても、プレス成形品5に塑性変形を生じることができないからである。このように、本発明では、図2に破線で示すようにプレス成形品5を正規形状に拘束した状態で温度差を付与して塑性変形を発生させる。このため、実際の生産現場では、生産工程数を減らしてコストを削減する観点から、プレス金型の成形下死点においてこの温度差を与えることが望ましい。そのためには、予め成形前のブランクに温度差を付与しておいてもよいし、プレス金型に組み込んだヒーター等によって温度差を付与してもよい。また生産工程数が増加することを許容する場合には、通常成形によりひねれが発生した成形パネルを、別工程において正規形状に拘束してこの温度差を与えるようにしてもよい。
この温度差は、圧縮残留応力発生部位と引張残留応力発生部位に熱応力による塑性変形を生じさせるに必要な温度差であり、材質やプレス加工条件等により影響を受ける。例えば、温度差は正規形状に拘束した時点で70℃以上である。また、ひねれを効率良く低減させるために、圧縮残留応力分布や引張残留応力分布を求める必要があるが、これらはプレス成形解析用の汎用CAEソフトを用いて応力をFEM解析することにより、容易に求めることができる。
図3(a)〜図3(c)は、パンチ9、ブランクホルダー10及びダイス11を有する一般的なプレス成形装置によりブランク12にプレス成形を行う際のひねれの発生機構を示すための説明図である。
図3(a)及び図3(b)に示すように、プレス成形の際は、まず初めにブランクホルダー10が下降してダイス11との間でブランク12を所定の力(この力をBHFという)で押さえ込み、図3(c)に示すようにこの状態で次にパンチ9が下降してブランク12にパンチ成形部を成形する。この後、パンチ9及びブランクホルダー10が上昇してプレス成形品が離型される。ひねれは、図3(c)に示す状態のブランク12に生じる残留応力が、離型によって解放されることによる弾性回復現象として発生する。
図4は、図3(c)に示す状態のブランク12に発生する残留応力分布の一例を示す説明図である。図4を参照しながら、ひねれの原因である残留応力がプレス成形によって発生するメカニズムを説明する。
パンチ9によってブランク12に凸形状が成形される際、ブランク12のパンチ成形部12aは引張応力下で変形し、逆にフランジ12bはパンチ成形部12aに材料が流入するために圧縮応力下で変形する。また、フランジ12bが完全に拘束されパンチ成形部12aに流入しない場合にも、プレス成形品12の面内では引張応力と圧縮応力とが釣り合っているため、パンチ成形部12aに生じる引張応力と同量の圧縮応力とがフランジ12bに発生する。ひねれは、パンチ成形部12aに生じる引張残留応力と、フランジ12bに生じる圧縮残留応力との差によって生じる捻りモーメントが作用することによって発生する。このため、ひねれを低減するには、この残留応力差を小さくすることが有効である。
また、ひねれ量θの大きさは、パンチ成形部12aの成形深さや、パネル寸法によるパネル剛性、さらには残留応力のバランスによって決定される。
図5は、本発明によるひねれの低減機構の説明図である。同図に示すように、本発明では、引張残留応力発生部位であるパンチ成形部12aを冷却し、又は圧縮残留応力発生部位であるフランジ12bを加熱して、フランジ12bの温度がパンチ成形部12aの温度よりも高くなるようにフランジ12bとパンチ成形部12aとに温度差を設けることにより、パンチ成形部12aに引張りの塑性変形を発生するとともにフランジ12bに圧縮の塑性変形を発生させ、その後室温に戻る過程において発生する熱応力によってプレス成形品12の残留応力を相殺することにより、ひねれを低減する。
ここで、熱応力について説明する。一般に、金属材料は温度変化により伸縮変形(ひずみ)を発生するが、このひずみが拘束されると熱応力が発生する。
図6(a)〜図6(c)は、平板13の変形状態と熱応力分布とをそれぞれ示す説明図である。
図6(a)に示すように、平板13の内部13aの温度よりその周囲13bの温度が高くなるように周囲13bを加熱する。この際、図6(b)に示すように、例えば金型などで、平板13全体を拘束してその変形を生じさせないと、位置Aには引張りの熱応力が発生し、位置Bにはこれに見合う値の圧縮の熱応力が生じ、位置A、Bの中間位置では熱応力は零となる。一方、図6(c)に示すように、平板13を拘束しないと、平板13には、熱応力に応じた捻じれ変形が発生するが、熱応力の値は零のままとなる。
このように、金属部材を変形しないように拘束した状態で加熱するとこの金属部材には熱応力が発生する。さらに、温度変化を大きくして降伏点以上の熱応力を金属部材に生じさせると、金属部材には塑性変形が発生する。
図7(a)は、ひねれが発生したプレス成形品14を正規形状に拘束した状態を示す説明図であり、図7(b)は温度差のない場合にプレス成形により発生する応力分布を示す説明図であり、図7(c)は温度差のある場合にプレス成形により発生する応力分布を示す説明図であり、さらに、図7(d)は、温度均一化したときの応力分布を示す説明図である。
金属部材をプレス成形し、プレス下死点すなわち正規形状に拘束した状態で、圧縮残留応力発生部位であるフランジ14bの温度が、引張残留応力発生部位であるパンチ成形部14aの温度よりも高くなる温度分布となるようにプレス成形品14に熱を付与し、図7(c)に示すように、熱応力により塑性変形を発生させる。この状態においては、図7(b)に示す状態と比較すると、熱応力により塑性変形領域が拡大し、残留応力差の変化は小さい。
次に、プレス成形品14に熱を付与するのを中止して常温まで冷却することにより、プレス成形品14の温度を均一化する。これにより、図7(d)に示すように、プレス成形品14に冷却に伴う熱応力が発生し、ひねれの原因である残留応力が相殺されて残留応力差が減少する。この後に、プレス成形品14の拘束を開放することにより、温度差を付与せずにプレス成形したプレス成形品14よりもひねれの程度を低減することができる。
次に、プレス成形品に熱を付与する手段を説明する。本実施の形態におけるフランジ(圧縮残留応力発生部位)の加熱は、大別すると、プレス成形前のブランクの段階で行うか、或いは、内部に加熱手段を埋め込んだ金型を用いてプレス成形中又はプレス成形後に、金型との接触により行うことができる。
(例1)プレス金型の成形下死点でプレス金型の接触により熱を与える場合
プレス金型(ダイス、ホルダー)にヒーター等の加熱手段を組み込むことによって、プレス成形品に熱を付与することができる。
図8は、プレス成形品に温度差を付与しない場合における塑性変形の発生状態を示す説明図である。
同図に示すように、プレス成形品15にはもともとプレス成形によりフランジ15bに圧縮の塑性変形領域が発生するとともにパンチ成形部15aには引張りの塑性変形領域が発生する。このため、プレス成形品15には、僅かな温度差を与えられることにより、塑性変形が発生する。
これに対し、図9は、プレス金型の成形下死点でパンチ成形部15a及びフランジ15bに温度差を付与した場合における塑性変形の発生状態を示す説明図である。
プレス金型の成形下死点でフランジの温度がパンチ成形部の温度より高くなるようにパンチ成形部15aとフランジ15bとに温度差を付与すると、図9に示すように、塑性変形領域は図8に示す場合よりも当然拡大するものの、塑性変形は弾性変形に比べてひずみ変化に対する応力変化が小さいため、パンチ成形部15aとフランジ15bの応力差の変化は小さい。
ここで、ひねれ量はパンチ成形部15aとフランジ15bの応力差に依存する傾向があるため、温度差を付与することにより塑性変形領域が拡大したとしても応力差に変化がなければ,離型直後におけるプレス成形品15のひねれ量は、通常のプレス成形におけるひねれ量と、略同等の値を示す。すなわち、離型直後には、図8に示すプレス成形品15のひねれ量と、図9に示すプレス成形品15のひねれ量とは略同等の値を示す。
図10は、離型直後のプレス成形品15を示す説明図であり、図11は常温まで冷却されて温度が均一になったプレス成形品15を示す説明図である。
図10に示すように、プレス成形品15を金型から離型した後、空冷過程において高温のフランジ15bは冷却されることにより引張りの熱応力が生じて圧縮応力が緩和され、一方、低温のパンチ成形部15aはフランジ15bから熱が移動してくることにより加熱されて圧縮の熱応力が生じ引張り応力が緩和される。このため、図11に示すように、プレス成形品15の温度が均一になると、パンチ成形部15aとフランジ15bの応力差が低減又は事実上解消され、プレス成形品15におけるひねれが低減される。
なお、通常の成形によりひねれが発生したプレス成形品を、ひねれが発生しない正規の形状に拘束した状態で、このプレス成形品に上述した温度差を与えて塑性変形を発生させることとしても、拘束を解除した後の空冷過程においてひねれを低減することが可能である。
(例2)プレス成形前のブランクのフランジとなる部分の温度が、パンチ成形部となる部分の温度よりも高くなるように、ブランクに熱を付与する場合
例1はブランクが冷間状態でプレス成形機にセットされ、それ以降に所定の部位に温度差を付与する方法であるが、プレス成形前のブランクに予め熱を加えて温度分布を付与しておいてもよい。
(例3)予めブランクに均一な温度を付与しておく場合
例2のように予めブランクに温度分布を付与することが難しい場合は、予めブランクに均一な温度を付与してプレス加工に供し、プレス加工機の内部で寸法精度の不良の原因となる引張り応力が発生する部位を、プレス金型により冷却(上記ひねれの場合はパンチとの接触により成形品のパンチ成形部を冷却)し、一方、圧縮応力が発生する部位をプレス金型に組み込んだヒーター等で保温することにより、プレス成形品に温度差を付与することができる。
本発明においてひねれを効率良く低減させるための熱付与の位置は、引張り応力又は圧縮応力が高い値を示す位置である。これらの位置は、プレス成形解析用の汎用CAEソフトを用いて応力解析を行うことにより容易に把握することができる。
なお、例1〜3では、プレス成形品のフランジを加熱することによりパンチ成形部の温度がフランジの温度よりも低くなる温度分布を付与したが、これとは異なり、例えば液体窒素等を用いた装置を用いてプレス成形品のパンチ成形部を冷却することによりパンチ成形部の温度がフランジの温度よりも低くなる温度分布を付与するようにしてもよい。
このようにして、本実施の形態により、複雑な構造を有する高価な金型を用いることなく、プレス成形品の機械特性を変動させることなく、さらにはプレス成形品に焼跡を残すことなく、プレス成形品における三次元的な寸法精度の不良であるひねれを抑制又は実質的に解消しながら、プレス成形品を製造することが可能になる。
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
図12(a)は、本実施例で用いるブランク16の寸法を示す説明図であり、図12(b)は、本実施例で製造するプレス成形品17の寸法を示す説明図である。なお、図中の寸法の単位はmmである。また、表1にはブランク16の種類A、B及びCそれぞれの降伏応力(YS)及び引張応力(TS)を示す。
Figure 0004968104
本実施例では、以下に説明する3種の試験方法1〜3により試験を行ったので、これらの試験方法1〜3について順次説明する。
(試験方法1)
予め温度差を付与したブランク16(中央部測定温度:80℃,フランジ端部測定温度150℃)を、ヒーターにより160℃に昇温したダイスを有するプレス金型を用いてプレス成形した。
図13(a)は、ブランク16の加熱部位及び温度測定ラインA、Bを示す説明図であり、図13(b)は、温度測定ラインAの温度分布の測定結果を示すグラフであり、図13(c)は、温度測定ラインBの温度分布の測定結果を示すグラフである。
本試験方法においてプレス金型をヒーターにより昇温する理由は、パンチが下死点に到達する前に、ブランクの温度差が金型による抜熱により均一化されることを防ぐためである。よって、例えば,ブランクホルダー及びパンチの稼動速度が十分に速くブランクが抜熱され温度が均一になる前に成形を完了可能なプレス加工機を用いる場合には、プレス金型を昇温する必要はない。
また、プレス金型の成形下死点における温度分布を測定することは、プレス金型の構造上不可能であるため、本試験方法1ではブランクからの離型直後の温度分布をもって下死点におけるプレス成形品の温度分布とした。
図14(a)は、ブランクからの離型直後の温度測定ラインAの温度分布の測定結果を示すグラフであり、図14(b)は、ブランクからの離型直後の温度測定ラインBの温度分布の測定結果を示すグラフである。
図13及び図14を対比することから理解されるように、プレス成形品17のフランジ17bはホルダーとの接触により抜熱し、またパンチ成形部17aもパンチとの接触により抜熱するため、いずれも僅かに温度低下する。
図15は、この方法で用いるプレス成形装置17を示す説明図である。
このプレス成形装置17は、パンチ18、ブランクホルダー19及びダイス20を有する。ダイス20には、棒状のヒーター21を挿設するための多数のヒーター投入孔22が設けられている。ヒーター投入孔22に挿設されたヒーター21によってダイス20を上述した温度分布に加熱することにより、ブランク23を所望の温度分布に加熱することができる。
(試験方法2)
この試験方法2は、予めブランクに温度差を付与しないで金型内で付与する方法である。
図16、17は、いずれも、プレス成形装置17−1の金型内でのブランク23への温度差付与状態を示す説明図である。
同図において斜線を付したホルダー19及びダイス20に図示しないヒーターを組み込んで160℃に昇温させた状態でブランク23に接触させ温度を付与する。一方、パンチ18と底当て24とをブランク23に接触させることにより、パンチ成形部となる部位を抜熱しこの部位の温度上昇を抑制する。この方法を用いてブランク23へ温度分布を付与することにより、成形後の離型直後の温度分布が図14の温度測定ラインA、Bとなるようにした。
なお、図17は成形下死点の状態であり、この状態でもホルダー19とダイス20は昇温状態である、また、底当て24はパンチ18の稼働の直前に下降させ、ブランク23から離反させた。
(試験方法3)
図18は、ひねれが発生したプレス成形品25に対して温度分布を付与することにより、発生したひねれを低減する方法を示す説明図である。
図18に示すように、ひねれが発生したプレス成形品25を再度金型17に戻し、ひねれが発生していない正規の形状に拘束した状態で、プレス成形品25に温度差を付与した。本試験方法3では、プレス成形品25の拘束及び温度付与は、上述した試験方法2で説明したプレス金型を用いて行ったが、温度差を付与したときにプレス成形品25を、ひねれが発生しない状態とすることができるのであれば、如何なる方法を用いてもよい。
ホルダー19とダイス20を160℃に昇温してプレス成形品25を拘束するとともにフランジ25bに熱を付与し、プレス成形部25aはパンチ18を接触させ抜熱した。離型直後の温度分布が図14と同じになるように、この状態でしばらく保持した。
図19は、ひねれの角度の測定方法を示す説明図である。
本実施例では、ひねれの角度は、プレス成形品26のパンチ成形部26aにおいて長手方向中心線を挟み距離290mmの位置におけるライン(イ)とライン(ロ)を、前記長手方向と直交する平面に投影した場合における、ライン(イ)及びライン(ロ)の交差角度(deg.)として、求めた。
試験方法1〜3(本発明法)、及び温度差を与えずにプレス成形を行う従来法それぞれの試験結果を、表2にまとめて示す。
Figure 0004968104
表2に示すように、温度差無し(従来法)と、本発明手法(温度差有り)について同一材質及び成形深さ条件において比較すると、全ての条件において本発明法は、ひねれ角度が小さいプレス成形品を得られたことがわかる。
プレス成形品の一例を示す説明図である。 ひねれが発生したプレス成形品の一例を示す説明図である。 図3(a)〜図3(c)は、パンチ、ブランクホルダー及びダイスを有する一般的なプレス成形装置によりブランクにプレス成形を行う際のひねれの発生機構を示すための説明図である。 図3(c)に示す状態のブランクに発生する残留応力分布の一例を示す説明図である。 本発明によるひねれの低減機構の説明図である。 図6(a)〜図6(c)は、平板の変形状態と熱応力分布とをそれぞれ示す説明図である。 図7(a)は、ひねれが発生したプレス成形品を正規形状に拘束した状態を示す説明図であり、図7(b)〜図7(d)は、プレス成形により発生する応力分布を示す説明図である。 プレス成形品に温度差を付与しない場合における成形下死点での塑性変形の発生状態を示す説明図である。 プレス金型の成形下死点でパンチ成形部及びフランジに温度差を付与した場合における塑性変形の発生状態を示す説明図である。 離型直後のプレス成形品を示す説明図である。 常温まで冷却されて温度が均一になったプレス成形品を示す説明図である。 図12(a)は、実施例で用いるブランクの寸法を示す説明図であり、図12(b)は、実施例で製造するプレス成形品の寸法を示す説明図である。 図13(a)は、ブランクの加熱部位及び温度測定ラインA、Bを示す説明図であり、図13(b)は、温度測定ラインAの温度分布の測定結果を示すグラフであり、図13(c)は、温度測定ラインBの温度分布の測定結果を示すグラフである。 図14(a)は、ブランクからの離型直後の温度測定ラインAの温度分布の測定結果を示すグラフであり、図14(b)は、ブランクからの離型直後の温度測定ラインBの温度分布の測定結果を示すグラフである。 プレス成形装置を示す説明図である。 プレス成形装置の金型内でのブランクへの温度差付与状態を示す説明図である。 プレス成形装置の金型内でのブランクへの温度差付与状態を示す説明図である。 ひねれが発生したプレス成形品に対して温度分布を付与することにより、発生したひねれを低減する方法を示す説明図である。 ひねれの角度の測定方法を示す説明図である。
符号の説明
1、5 プレス成形品
2、6 ブランク
3 パンチ成形部
4 フランジ
7 パンチ成形部(引張残留応力発生部位)
8 フランジ(圧縮残留応力発生部位)
9 パンチ
10 ブランクホルダー
11 ダイス
12 ブランク
12a パンチ成形部
12b フランジ
13 平板
13a 内部
13b 周囲
14 プレス成形品
15 プレス成形品
15a パンチ成形部
15b フランジ
16 ブランク
17 プレス成形品
17a パンチ成形部
17b フランジ
17−1 プレス成形装置
18 パンチ
19 ブランクホルダー
20 ダイス
21 ヒーター
22 ヒーター投入孔
23 ブランク
24 底当て
25 プレス成形品
25a プレス成形部
25b フランジ
26 プレス成形品
26a パンチ成形部

Claims (3)

  1. プレス金型で拘束されたブランクをプレス成形することによってパンチ成形部及びその周囲のフランジを有するプレス成形品を製造する際に、
    前記プレス成形によって前記パンチ成形部の周囲のフランジに発生する圧縮残留応力の発生部位及び引張残留応力の発生部位を予め求めておき、
    前記プレス成形の途中又は該プレス成形を終了した後に、プレス金型により前記プレス成形における成形下死点で規定される形状に拘束されるプレス成形品に対して、前記フランジの一部である前記圧縮残留応力の発生部位の温度を、前記パンチ成形部の一部である前記引張残留応力の発生部位の温度よりも高くするとともに前記フランジの一部と前記パンチ成形部の一部との間に熱応力による塑性変形を発生させることができる温度差を付与し、
    前記プレス金型による該プレス成形品の拘束を開放すること
    によって、前記圧縮残留応力、及び前記引張残留応力の差により生じる捩れモーメントによってプレス成形品の全体にわたって発生する寸法精度不良であるひねれを抑制又は解消すること
    を特徴とするプレス成形品の製造方法。
  2. 前記温度差は、前記フランジの一部又は前記圧縮残留応力発生部位の一部に対応する、前記プレス成形を行われる前の前記ブランクの一部を加熱することによって、設けられる請求項に記載のプレス成形品の製造方法。
  3. 前記温度差は、前記プレス金型に設けた加熱手段により前記プレス成形の途中又は該プレス成形を終了した後の被成形材のフランジ又は圧縮残留応力発生部位を加熱することによって、設けられる請求項に記載のプレス成形品の製造方法。
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