JP5866988B2 - 板金の曲げ癖矯正装置 - Google Patents
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Description
このような曲げ癖を解消するために、大きな荷重をかけて凹凸を押し潰すことも考えられるが、金属の剛性やプレス装置の能力には限界があり、曲げ癖を完全に解消することはできない。
一方、反りに代表される広範囲に曲率を持つ形状不良の対策としては、部材の表面を部分的に板厚方向に押圧することで応力の不均一を緩和し、当該形状不良を改善する方法がある(例えば、特許文献1,2参照)。
このような局所的なR形状の曲げ癖を矯正する装置として、特願2010-287617(以下、「先願」という)において出願された板金の歪み矯正装置がある。
先願における歪み矯正装置の特徴的な構成は、3つの凸状の曲げ成形部が設けられたパンチと、2つの凸状の曲げ成形部が設けられたダイとを用いて板金の両面を板厚方向に押圧することで、板金の凸状のR形状の歪みを矯正するというものであり、パンチ側の3つの曲げ成形部間に形成される成形空間にダイ側の2つの曲げ成形部が対向配置されている。そのため、先願に開示されたパンチとダイは、一般的なパンチとダイのようにストロークの最下点においてパンチとダイが被成形品を挟んで対向するという構成ではなく、最下点においてパンチとダイを押し付け合わせることで位置決めをするということができない。
ストロークの最下点におけるパンチとダイの位置決めをいかにするかが重要であるが、先願においてはこの点について詳細には開示されていない。
特に、このような構成のパンチとダイを実際のプレス成形装置に搭載して効率的に量産加工を行う際には、ストロークの最下点における位置決めが重要となる。
所定間隔で並設された3つの第1凸状部を有する第1曲げ成形部を備えたパンチと、前記第1曲げ成形部の間に形成される2つの凹状の成形空間に対向配置される2つの第2凸状部を有する第2曲げ成形部を備えたダイと、前記ダイと前記パンチの相対移動量を規制するストッパとを備えてなり、
該ストッパは、前記パンチ側に設けた第1当接部と前記ダイ側に設けた第2当接部とを有し、前記第1曲げ成形部の中央の曲げ成形部を前記板金の曲げ癖の凸部に凸側から当接可能に配置して、前記ダイと前記パンチによって前記板金の両面を板厚方向に予め設定した所定量移動させたときに、前記第1当接部と前記第2当接部とが当接することによって前記パンチと前記ダイの相対移動量を規制することを特徴とするものである。
これにより、曲げ癖矯正後に、板金の矯正前の曲げ癖の凸部両側が反り返ったり沈み込んだりするのを防止することができ、板金を適切に平らな形状に矯正することができる。
これにより、曲げ癖矯正後に、矯正前の曲げ癖とは逆方向の変形が生じるのを防止することができ、板金を適切に平らな形状に矯正することができる。
また、第1当部と第2当接部が当接することで、パンチとダイのストロークにおける最下点の位置制御を行うようにしているので、強い押圧力で押しても押し込み量が強制的に規制され、位置制御に複雑な制御を必要とせず大量生産にも適している。
本実施の形態に係る板金の曲げ癖矯正装置1は、図1に示されるようにハット断面部材51に形成された曲げ癖を矯正する装置であって、所定間隔で並設された3つの第1凸状部3a〜3cを有する第1曲げ成形部3を備えたパンチ5と、第1曲げ成形部3の間に形成される2つの凹状の成形空間3d、3eに対向配置される2つの第2凸状部9a、9bを有する第2曲げ成形部9を備えたダイ11と、ダイ11とパンチ5の相対移動量を規制するストッパ13とを備えてなるものである。
そして、ストッパ13は、パンチ5側に設けた第1当接部15とダイ11側に設けた第2当接部17とを有し、第1曲げ成形部3の中央の第1凸状部3bを板金の曲げ癖の凸部に凸側から当接可能に配置してダイ11とパンチ5によって板金の両面を板厚方向に予め設定した所定量移動させたときに第1当接部15と第2当接部17とが当接することによってパンチ5とダイ11の相対移動量を規制することを特徴とするものである。
以下、詳細に説明する。
まず、曲げ癖矯正装置1におけるパンチ5とダイ11の構造について、図2に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、パンチ5とダイ11が、矯正対象のハット断面部材51の両面を板厚方向に押圧可能に配置される。
パンチ5の第1曲げ成形部3には、3つの凸状の第1凸状部3a〜3cが幅方向(図2の左右方向)に所定間隔L1で並設されている。また、ダイ11の第2曲げ成形部9には、2つの凸状の第2凸状部9a、9bが上記幅方向に所定間隔L2で並設されている。
また、パンチ5をダイ11に最も近接させた状態で、各曲げ成形部の先端部が接触しないように構成されている。具体的には、ダイ11の第2凸状部9aは、パンチ5の第1凸状部3aと第1凸状部3bとの間に形成される凹状の成形空間3dに対向配置される。同様に、ダイ11の第2凸状部9bは、パンチ5の第1凸状部3bと第1凸状部3cとの間に形成される凹状の成形空間3eに対向配置される。そして、パンチ5をダイ11に最も近接させた状態では、ダイ11の各曲げ成形部は、対向配置された成形空間3d、3e内に位置することになる。
移動台23には、パンチ5側に向けて突出する突出片27が設けられており、この突出片27はストッパ13を構成する部材の一つである。
ストッパ13は、図1に示すように、パンチ5が固定された固定台21に設けた第1当接部15と、ダイ11が設置された移動台23の突出片27の先端に設けた第2当接部17とを有している。移動台23をパンチ5側に所定量移動させたときに第1当接部15と第2当接部17とが当接することによってパンチ5とダイ11の相対移動量が規制される。
つまり、第1当接部15と第2当接部17の相対位置によってパンチ5とダイ11が最も近接したときの相対位置が決定される。
ハット断面部材51の曲げ癖矯正を行う際には、先ず、図2に示す曲げ癖59の凸側がパンチ5と対向するように、ハット断面部材51をパンチ5とダイ11の間に配置する。
押し込み量ΔPは、ハット断面部材51の板厚をtとしたとき、第2凸状部9a及び9bの先端位置より板厚tだけ上方の位置に、第1凸状部3bの先端位置が位置した状態でΔP=0となる。すなわち、図3(a)に示すように、第1凸状部3bの先端位置が曲げ癖59の凸部の先端位置に当接している状態から、パンチ5を更に下降し、図3(b)に示す状態となったときが押し込み量ΔP=0である。また、この状態から更にパンチ5を下降し、図3(c)に示すように、第1凸状部3bの先端位置が第2凸状部9a及び9bの先端位置より板厚tだけ下方の位置となった状態が押し込み量ΔP=2tである。
このように、本実施形態では、3つの第1凸状部3a〜3cが設けられたパンチ5と、2つの第2凸状部9a、9bが設けられたダイ11とによって、ハット断面部材51の両面を板厚方向に押圧し、曲げ癖59を矯正する。このとき、曲げ癖59の凸側にパンチ5の第1凸状部3a〜3c、曲げ癖59の凹側にダイ11の第2凸状部9a、9bが配置するようにし、第1凸状部3bを曲げ癖59の凸部に凸側から当接させた状態で、ハット断面部材51の曲げ癖59に対して局所的に小変形を与える。
ここでは、図4に示す試験片31に対して、図5に示す矯正実験装置33を用いて曲げ癖を矯正する実験を行った。試験片31としては、440MPa級を超える高強度鋼板(ハイテン)を用い、図4(a)に示すようにV字状に曲げ成形した後、曲げ加工部31aをリストライクし、その結果、図4(b)に示すような曲げ癖31bが残留している部材を適用した。なお、試験片31の板厚はt[mm]とした。
図7を参照すると、本発明例では、曲げ癖が矯正されて試験片31が凹凸の無いほぼ平らな部材となっていることがわかる。
また、比較例2のように、曲げ成形部の高さの差ΔHが上記実施例と同じであっても、押し込み量ΔPが大きいと曲げ癖とは逆方向の変形が生じてしまい、やはり満足できるほど平らに矯正できない。
したがって、押し込み量ΔP及び曲げ成形部の高さの差ΔHは、ΔP=2t[mm]及びΔH=t[mm]をそれぞれ超えないように設定することが好ましい。
そこで、本実施形態では、押し込み量ΔPを0<ΔP≦2t、曲げ成形部の高さの差ΔHをΔH≦tに設定する。これにより、軟鋼と比較して著しく曲げ癖が発生しやすい高強度鋼板であっても、当該曲げ癖を適切に矯正することができる。
さらにこのとき、曲げ成形部の高さの差ΔHを板厚t以下とすると共に、押し込み量ΔPを板厚tに対して2t以下とするので、曲げ癖の凸部両側の反り上がりや沈み込み、曲げ癖とは逆方向の変形等を防止して、曲げ癖を適正に平らな形状に矯正することができる。
またさらに、機械的なストッパ13を設けており、強い押圧力で押しても押し込み量が第1当接部15と第2当接部17との当接によって強制的に規制されるようにしているので、複雑な制御を必要とせず大量生産にも適している。
3 第1曲げ形成部
3a、3b、3c 第1凸状部
3d、3e 成形空間
5 パンチ
9 第2曲げ成形部
9a、9b 第2凸状部
11 ダイ
13 ストッパ
15 第1当接部
17 第2当接部
21 固定台
23 移動台
25 傾斜面
27 突出片
31 試験片
31a 曲げ加工部
31b 曲げ癖
33 矯正実験装置
35 パンチ
37 ダイ
39 第1曲げ成形部
39a、39b、39c 第1凸状部
41 第2曲げ成形部
41a、41b 第2凸状部
43 ストッパ
51 ハット断面部材
53 底壁
55 側壁
55a 曲げ加工部
57 金型
59 曲げ癖
Claims (2)
- 板金に形成された凸状のR形状の曲げ癖を矯正する板金の曲げ癖矯正装置であって、
所定間隔で並設された3つの第1凸状部を有する第1曲げ成形部を備えたパンチと、前記第1曲げ成形部の間に形成される2つの凹状の成形空間に対向配置される2つの第2凸状部を有する第2曲げ成形部を備えたダイと、該ダイと前記パンチの相対移動量を規制するストッパとを備えてなり、
前記第1曲げ成形部のうち中央の第1凸状部を、当該中央の第1凸状部の先端位置が両端の第1凸状部の先端位置に対して突出するように設けると共に、これら中央の第1凸状部と両端の第1凸状部の先端位置の差を前記板金の板厚以下に設定し、
前記ストッパは、前記パンチ側に設けた第1当接部と前記ダイ側に設けた第2当接部とを有し、前記第1曲げ成形部の中央の曲げ成形部を前記板金の曲げ癖の凸部に凸側から当接可能に配置して、前記ダイと前記パンチによって前記板金の両面を板厚方向に予め設定した所定量移動させたときに、前記第1当接部と前記第2当接部とが当接することによって前記パンチと前記ダイの相対移動量を規制することを特徴とする板金の曲げ癖矯正装置。 - 前記第1曲げ成形部の中央の第1凸状部により、前記曲げ癖凸側を前記成形空間内への押し込む量が、前記板金の板厚の2倍以下となるように前記ストッパにおける前記第1当接部と前記第2当接部との相対位置が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の板金の曲げ癖矯正装置。
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