以下、図面を参照しながら本発明に係る記録媒体搬送装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る記録媒体搬送装置を備えた画像形成装置の一例である、インクジェット式プリンター100の内部構成を示す側面断面図である。
図1に示すように、プリンター100は、プリンター本体2の内部下方に用紙収容部である給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3の内部には、記録媒体の一例である印字前のカットペーパーなどの用紙Sが所定枚数(例えば500枚程度)積載して収容されている。給紙カセット3の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット3の右側の上方には給紙装置4が配置されている。この給紙装置4により、用紙Sは図1において給紙カセット3の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3はプリンター本体2の正面側から水平に引き出して用紙Sを補充することが可能である。
プリンター本体2の右側面外部には手差し給紙トレイ5が備えられている。手差し給紙トレイ5には給紙カセット3内の用紙Sとは異なるサイズの用紙や、厚紙、OHPシート、封筒、ハガキ、送り状のように屈曲した搬送経路を通過するのが困難な記録媒体、1枚ずつ手で送り込みたい記録媒体などが載置される。手差し給紙トレイ5の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における手差し給紙トレイ5の左側には給紙装置6が配置されている。この給紙装置6により、手差し給紙トレイ5上の用紙は図1において左方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
また、プリンター100はその内部に第1用紙搬送路7を備えている。第1用紙搬送路7は、給紙カセット3に関して言えばその給紙方向である右上方に位置し、手差し給紙トレイ5に関して言えばその左方に位置する。給紙カセット3から送り出された用紙Sは第1用紙搬送路7によりプリンター本体2の側面に沿って垂直上方に、手差し給紙トレイ5から送り出された用紙は略水平左方に向けて搬送される。
用紙搬送方向に対し第1用紙搬送路7の下流端にはレジストローラー対8が備えられている。さらにレジストローラー対8の下流側直近には第1ベルト搬送部20及び記録部30が配置されている。記録部30には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の画像を形成する4つの記録ヘッド(ラインヘッド)が配置されている。給紙カセット3(または手差し給紙トレイ5)から送り出された用紙Sは第1用紙搬送路7を通ってレジストローラー対8に到達する。レジストローラー対8は用紙Sの斜め送りを矯正しつつ記録部30が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1ベルト搬送部20に向かって用紙Sを送り出す。なお、第1用紙搬送路7には用紙Sを搬送するための搬送ローラー対13aが適所に設けられている。
また、記録部30は、記録ヘッドの乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッドのインク吐出ノズルから、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下のインク吐出ノズルから、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出するパージを実行して、次の印字動作に備える。
用紙搬送方向に対し第1ベルト搬送部20の下流側(図1の左側)には第2ベルト搬送部40が配置されている。記録部30にてインク画像が記録された用紙Sは第2ベルト搬送部40へと送られ、第2ベルト搬送部40を通過する間に用紙S表面に吐出されたインクが乾燥される。
用紙搬送方向に対し第2ベルト搬送部40の下流側であってプリンター本体2の左側面近傍にはデカーラー部9が備えられている。第2ベルト搬送部40にてインクが乾燥された用紙Sはデカーラー部9へと送られ、用紙幅方向の略全域に亘って配置されるローラーと、用紙搬送方向に並ぶ複数のローラーに掛け回される無端状のベルトとのニップ部に用紙Sが挟持されることで用紙Sのカールが矯正される。
用紙搬送方向に対しデカーラー部9の下流側(図1の上方)には第2用紙搬送路10が備えられている。デカーラー部9を通過した用紙Sは両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路10から排出ローラー対60を介してプリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ11に排出される。なお、第2用紙搬送路10には、第1用紙搬送路7と同様に、用紙Sを搬送するための搬送ローラー対13bが適所に設けられている。
また、第2ベルト搬送部40の下方にはメンテナンスユニット50が配置されている。メンテナンスユニット50は、上述したパージを実行する際に記録部30の下方に移動し、記録部30に設けられた記録ヘッドのインク吐出ノズル(図示せず)から吐出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。
プリンター本体2の上部であって記録部30及び第2ベルト搬送部40の上方には両面記録を行うための反転搬送路12が備えられている。両面記録を行う場合には第一面への記録が終了して第2ベルト搬送部40及びデカーラー部9を通過した用紙Sが第2用紙搬送路10を通って反転搬送路12へと送られる。反転搬送路12へ送られた用紙Sは、続いて第二面の記録のために搬送方向が切り替えられ、プリンター本体2の上部を通過して右側に向かって送られ、第1用紙搬送路7、及びレジストローラー対8を経て第二面を上向きにした状態で再度第1ベルト搬送部20へと送られる。なお、反転搬送路12には、第1用紙搬送路7、第2用紙搬送路10と同様に、用紙Sを搬送するための搬送ローラー対13cが適所に設けられている。
図2は、第1実施形態の記録媒体搬送装置の一例である、図1における排出ローラー対60周辺の部分拡大図であり、図3は、図2における排出ローラー対60の斜視図、図4は、図2における排出ローラー対60のニップ部N付近の部分拡大図、図5は、排出ローラー対60を構成する従動側ローラー60bの側面断面図、図6は、従動側ローラー60bの外周面に形成された凹凸層61bの断面拡大図である。排出ローラー対60周辺の詳細な構成について、図1に加えて図2〜図6を用いて説明する。
図2及び図3に示すように、プリンター本体2の用紙排出口2aには駆動側ローラー60aと従動側ローラー60bとから成る排出ローラー対60が用紙幅方向(図3の左右方向)に沿って複数対(ここでは4対)配置されている。駆動側ローラー60aはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴムローラーであり、プリンター本体2に回転可能に支持されている。従動側ローラー60bは用紙排出口2aの上方のフレーム(図示せず)に支持されており、コイルバネ(付勢部材)64によって駆動側ローラー60aに所定の押圧力で圧接されている。駆動側ローラー60aの回転軸には駆動モーター80が連結されている。
用紙搬送方向(図4の右から左方向)に対し排出ローラー対60の上流側には、搬送ガイド62が第2用紙搬送路10内に突出するように配置されている。第2用紙搬送路10は上ガイド部材10aと下ガイド部材10bで形成されており、搬送ガイド62は第2用紙搬送路10の下ガイド部材10bから用紙搬送方向に上り勾配となるように(用紙搬送方向に対し上流側から下流側に向かって従動側ローラー60bに近づく方向に)傾斜している。
従動側ローラー60bは、樹脂製のローラー本体61aと、ローラー本体61aの外周面に形成され、用紙に対して多数箇所で点接触又は面接触する凹凸層61bとを有している。凹凸層61bは、ローラー本体61aの外周面に積層される接着層63と、接着層63に固着される多数の粒子65とで構成される。
図6に示すように、ローラー本体61aの表面にはプライマー層67が積層されている。プライマー層67の表面に接着層63と粒子65とがコーティングされて凹凸層61bが形成されている。プライマー層67を積層することで、ローラー本体61aの表面に接着層63と粒子65とを直接コーティングする構成に比べて粒子65の接着性が向上する。さらに、凹凸層61bの表面には接着層63よりもインクの離型性が高い離型層70がコーティングされている。
一般に、固体表面上に液体が接している状況で、液体の縁の表面に引いた接線と固体表面との成す角度を接触角といい、接触角が90°以下の状態を「濡れる」という。即ち、接触角が大きいほど撥水性は高くなる。また、撥水性が高くなるほど液体の付着量は少なくなるため、未使用の従動側ローラー60bと、所定枚数の記録媒体を搬送した後の従動側ローラー60bの重量を測定して重量変化(インク付着量)を算出し、算出されたインク付着量から撥水性を評価することもできる。
粒子65の種類としては、例えばセラミック(アルミナ、炭化珪素等)やガラスビーズ等が挙げられる。接着層63の材質としては、プライマー層67と同様のアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等が挙げられる。従動側ローラー60bの外周面に固着される粒子65の個数としては、粒子65の粒子径にもよるが、10個/mm2以上200個/mm2以下が好ましく、30個/mm2以上80個/mm2以下がさらに好ましい。
プライマー層67、接着層63にはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が用いられる。離型層70にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられる。
上述したように、接着層63、プライマー層67と離型層70は、同じ樹脂層であっても形成する目的が異なる。つまり、接着層63、プライマー層67は粒子65の接着性能を高めるための機能を主とする材料であるのに対し、離型層70は従動側ローラー60b表面の離型性を高めるための機能を主とする材料である。これらの機能は両立させることが難しく、どちらかの機能を犠牲にせざるを得ない。
ローラー本体61aに凹凸層61bを形成する方法としては、先ず、ローラー本体61aの表面にプライマー層67を塗布する。プライマー層67を形成した後、粒子65を吹き付け、粒子65の脱落を防止するために接着層63を塗布したり、接着層63と粒子65を混合したものをプライマー層67に吹き付けたりして凹凸層61bを形成する。
その後、形成された凹凸層61bの表面に離型性を高める離型層70をコーティングする。離型層70をコーティングする方法としては、ラテックス系フッ素接着剤を凹凸層61bの表面に塗布した後、高温焼成する方法や、バインダーにフッ素系樹脂を混合したものを凹凸層61bの表面に塗布する方法が挙げられる。
本実施形態では、従動側ローラー60bを構成するローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成することにより、従動側ローラー60bは用紙の画像面に対し点接触又は面接触する。これにより、従動側ローラー60bと用紙との接触面積を極力小さくすることができ、用紙の画像面から従動側ローラー60bへのインク転写防止効果が高くなる。また、実用上十分なインク転写防止効果を得るためには、凹凸層61bの層厚(≒粒子65の平均粒子径)は70μm以上200μm以下であることが好ましい。
ここで、駆動側ローラー60aには用紙Sの画像面が直接接触しないが、従動側ローラー60bと接触することによって外周面にインクが付着する。そして、駆動側ローラー60aは外周面が平滑であるため、搬送されてきた用紙Sの先端が駆動側ローラー60aに接触するとインクによる汚れが顕著になる。また、駆動側ローラー60aの外周面には広範囲に亘ってインクが付着し易いため、用紙Sの先端の同一箇所にインクが付着する。その結果、画像形成後の用紙Sを重ねて束にしたときに用紙束のエッジ部分の汚れが目立ってしまう。
そこで、本実施形態では、第2用紙搬送路10を搬送されてきた用紙Sの先端は、搬送ガイド62に沿って従動側ローラー60bに近づく方向に案内され、従動側ローラー60bの外周面に接触した後、ニップ部Nに進入するように構成されている。これにより、用紙Sの先端は、インクが広範囲に付着し易い駆動側ローラー60aに接触せずに、インクが広範囲に付着し難い従動側ローラー60bの凹凸層61bに接触した後にニップ部Nに進入するため、用紙Sの先端へのインク付着を抑制することができる。また、用紙Sの先端に接触する凹凸層61bの凸部(粒子65)が用紙S毎に異なるため、凹凸層61bに付着したインクは用紙Sの先端の異なる箇所に分散して付着する。そのため、出力された用紙を重ねて束にしたときインクによる汚れが同一箇所に重ならず、用紙束のエッジ部分の汚れが目立ちにくくなる。
また、排出ローラー対60のニップ部に進入した用紙Sは、駆動側ローラー60aからの力を受けて搬送され、従動側ローラー60bは搬送される用紙の力を受けて回転する。そのため、用紙Sの搬送性能は、主として駆動側ローラー60aの摩擦係数で決まる。一方、用紙と従動側ローラー60bの間の摩擦が小さい場合や、従動側ローラー60bと従動側ローラー60bの回転軸を保持する軸受との滑りが悪い場合、従動側ローラー60bから用紙を止める方向の力が作用してしまう。本実施形態の構成では、従動側ローラー60bを構成するローラー本体61aの外周面に凹凸層61bが形成され、摩擦係数が高くなっているため、凹凸層61bの用紙への食い込みが発生し、搬送に対して有利となる。
ところで、一般に用紙をローラー対で搬送する構成においての搬送力は、以下の式で表される。
搬送力F=単位長さ当たりの圧力(線圧)P×ローラー対が用紙を挟む長さの合計L
搬送力Fは駆動側ローラー60aまたは従動側ローラー60bの摩擦係数によっても変化するため、ローラー表面の材質を変更することで、同じ搬送力Fを確保したまま単位長さ当りの圧力P(線圧)を小さく、またローラー対が用紙を挟む長さ(ニップ部Nの幅方向長さ)の合計Lを短くすることができる。本実施形態のように、従動側ローラー60bの外周面に凹凸層61bを形成することで、線圧Pが小さくなり、従動側ローラー60bへのインク付着量を減らすことができる。また、ローラー対が用紙を挟む長さの合計Lも短くなるため、排出ローラー対60のトータルの長さも小さくすることができ、コストを安くできる。
また、凹凸層61bの表面に離型層70がコーティングされているため、仮に従動側ローラー60bの外周面にインクが付着したとしても、一旦付着したインクが乾燥して剥がれ易くなる。従って、凹凸層61bの凹部にインクが堆積して凹凸が浅くなり難いため、用紙の画像面に対する凹凸層61bの接触面積の増大を抑制し、従動側ローラー60bへのインク転写防止効果を長期間に亘って維持することができる。
従動側ローラー60bの表面形状(凹凸層61bの形状)を確認する方法としては、表面粗さ測定器(例えば、Veeco社製、WYKO VISION32等)を用いる方法が挙げられる。
図7は、本発明の第2実施形態の記録媒体搬送装置の一例である、排出ローラー対60周辺の部分拡大図であり、図8は、図7における排出ローラー対60の斜視図、図9は、図7における排出ローラー対60のニップ部N付近の部分拡大図である。本実施形態では、排出ローラー対60を構成する駆動側ローラー60a及び従動側ローラー60bの配置が第1実施形態と逆になっており、用紙の画像形成面側に駆動側ローラー60aが接触する。そして、駆動側ローラー60aを構成するローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成し、従動側ローラー60bをEPDM等のゴムローラーとしている。駆動側ローラー60aに形成される凹凸層61bの構成は、図5、図6に示した従動側ローラー60bに形成される凹凸層61bと同様である。
また、第2用紙搬送路10の下ガイド部材10bから用紙搬送方向(図9の右から左方向)に上り勾配となるように(用紙搬送方向に対し上流側から下流側に向かって駆動側ローラー60aに近づく方向に)傾斜する搬送ガイド62が設けられている。
本実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様に、同じ搬送力Fを確保したまま単位長さ当りの圧力(線圧)Pを小さく、またローラー対が用紙を挟む長さ(ニップ部Nの幅方向長さ)の合計Lを短くすることができる。その結果、線圧P、ローラー対が用紙を挟む長さの合計Lが小さくなるため、駆動側ローラー60aへのインク付着量を減らすことができ、排出ローラー対60のトータルの長さも小さくすることができる。
また本実施形態では、第1実施形態に比べて駆動側ローラー60aの摩擦係数が高くなっている。前述したように、用紙は駆動側ローラー60aから力を受けて搬送されるため、従動側ローラー60bに凹凸層61bを形成した第1実施形態の構成よりも搬送力が高くなる。言い換えれば、第1実施形態の構成と同じ搬送力Fを得るために必要な線圧Pを小さくすることができるため、用紙の搬送性能は確保しつつ、インクによる用紙の汚れ(オフセット)をより一層低減することができる。
また、第2用紙搬送路10を搬送されてきた用紙Sの先端は、搬送ガイド62に沿って駆動側ローラー60aに近づく方向に案内され、駆動側ローラー60aの外周面に接触した後、ニップ部Nに進入する。これにより、第1実施形態と同様に、用紙Sの先端が駆動側ローラー60aの凹凸層61bに接触した後にニップ部Nに進入するため、用紙Sの先端へのインク付着を抑制することができる。また、出力された用紙を重ねて束にしたときインクによる汚れが同一箇所に重ならず、用紙束のエッジ部分の汚れが目立ちにくくなる。
また、凹凸層61bの表面に離型層70がコーティングされているため、駆動側ローラー60aへのインク転写防止効果を長期間に亘って維持することができる。
その他、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態においては、本発明の記録媒体搬送部材の一例として、用紙を用紙排出トレイ11に排出する排出ローラー対60について説明したが、第2用紙搬送路10、反転搬送路12(いずれも図1参照)に配置される搬送ローラー対13b、13c等、記録部30の下流側において用紙を搬送する搬送ローラー対にも同様の構成を用いることで、搬送ローラー対へのインク転写、及び後続の用紙の画像面へのインク再転写を効果的に防止可能となる。
また、本発明はローラー対状の記録媒体搬送部材に限らず、例えば図1のデカーラー部9に示すような、ローラーと、複数のローラーに掛け回された無端状のベルトとを圧接させてニップ部を形成したベルト・ローラー式の記録媒体搬送部材において、ローラーの外周面に凹凸層61bを形成しても良い。
また、上記実施形態においては、フルカラー画像を得るためにイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクを用いたラインヘッド型のインクジェットプリンター100について説明を行ったが、別の色相の着色インクを備えたインクジェット記録装置や、色数が異なるインクジェット記録装置、或いは、記録ヘッドが記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアル型のインクジェット記録装置にも利用することができる。
また、本発明の記録媒体搬送部材は、インクジェット式の記録装置に限らず、記録媒体上に液体状のインクを吐出して画像を形成する画像形成部を備えた他の画像形成装置にも利用することができる。以下、実施例により本発明の効果について更に詳細に説明する。
排出ローラー対60の従動側ローラー60bの外周面に凹凸層61bを形成し、印字後の用紙を搬送する場合の、排出ローラー対60の圧接力(ニップ幅1mm当たりの線圧)と用紙のオフセット汚れ量との関係について調査した。図1に示したインクジェット記録式のプリンター100に、図2に示したような、駆動側ローラー60aと、ローラー外周面に凹凸層61bを形成した従動側ローラー60bとから成る排出ローラー対60を装着し、排出ローラー60の単位長さ当りの圧力(線圧)Pを変化させて印字を行った場合の用紙の汚れについて評価した。
試験方法は、粒子65として平均粒子径115μmのセラミック粒子を使用し、接着層63としてアクリル系樹脂を使用してポリアセタール製のローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成して従動側ローラー60bとした。また、凹凸層61bの表面にPFAを使用して離型層70を形成した。このようにして作製した従動側ローラー60bと、EPDM製の駆動側ローラー60aとを組み合わせて排出ローラー対60とし、記録部30(図1参照)の直後に排出ローラー対60を配置して試験機とした。
評価方法としては、駆動側ローラー60aと従動側ローラー60bとのニップ幅1mm当たりの線圧を3.6gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mmの3段階に変化させて、インク浸透性の比較的悪いA4横サイズの用紙(International Paper社製、Hammermill Tidal MP)を用い、記録部9においてイエロー、マゼンタの2色の単色ベタ画像(印字率100%)にシアンのハーフトーン画像(印字率60%)を重ねた印字率100%、インク量率260%のベタ画像を連続して10枚印字し、排出ローラー対60を通過させた。このとき、排出ローラー対60が用紙を挟む長さの合計Lは60mmであった。10枚目の用紙の、画像領域の下流側の余白部分のインクによる汚れ(オフセット)をマクベス(株)製の反射濃度計(RD918)を用いてID(イメージデンシティ)を測定し、汚れ量を評価した。結果を図10に示す。
図10から明らかなように、線圧Pが3.6gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mmのときの用紙の汚れ量(ID)は、それぞれ0.0012、0.006、0.008となり、線圧Pが高くなるほど用紙の汚れ量も増加することが確認された。
従動側ローラー60bの外周面の構成を変化させたときの、排出ローラー対60の線圧と用紙の搬送力との関係について調査した。図1に示したインクジェット記録式のプリンター100に排出ローラー対60を装着し、図2に示したように用紙の画像面が接触する従動側ローラー60bを構成するローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成した場合、及び凹凸層61bを形成しなかった場合について、それぞれ排出ローラー対60の単位長さ当りの圧力(線圧)Pを変化させて印字を行った場合の用紙の搬送力について評価した。
試験方法は、粒子65として平均粒子径190μmのセラミック粒子、若しくは平均粒子径200μmのガラスビーズを使用し、接着層63としてアクリル系樹脂を使用してアルミニウム製のローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成した。そして、凹凸層61bの表面にPFAを用いて離型層70を形成して2種類の従動側ローラー60bを作製した。また、比較対照例として、凹凸層61bを形成せずにPFAの樹脂層、若しくはポリアセタール(POM)の樹脂層を形成した従動側ローラー60bも用意した。このようにして作製した計4種類の従動側ローラー60bと、EPDM製の非印字面側ローラーとを組み合わせて排出ローラー対60とし、記録部30(図1参照)の直後に排出ローラー対60を配置して試験機とした。
用紙の搬送力は、常温、常湿環境下、搬送方向上流側から排出ローラー対60のニップ部Nに大サイズ(A4横)の用紙(普通紙)の一端を挟み、用紙の他端にプッシュプルゲージ(イマダZPSシリーズ)を連結して固定した状態で、排出ローラー対60を850mm/sで回転させたときのプッシュプルゲージのピーク値を測定した。このとき、排出ローラー対60が用紙を挟む長さの合計Lは60mmであった。結果を図11に示す。
図11において、従動側ローラー60bを構成するローラー本体61aにセラミック粒子を用いて凹凸層61bを形成した場合を◇、ガラスビーズを用いて凹凸層61bを形成した場合を○、FFAの樹脂層を形成した場合を□、POMの樹脂層を形成した場合を■で示す。
図11から明らかなように、ローラー本体61aの外周面にセラミック粒子、ガラスビーズを用いた凹凸層61bが形成された従動側ローラー60bでは、線圧Pを7.3gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mm、50gf/mmとしたときの搬送力は、それぞれ0.7kgf、1.0kgf、1.6kgf、2.8kgfであった。
これに対し、ローラー本体61aの外周面に樹脂層のみを形成した従動側ローラー60bでは、線圧Pを7.3gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mmとしたときの搬送力は、凹凸層61bが形成された従動側ローラー60bとほとんど変わらなかったが、線圧Pを50gf/mmとしたときの搬送力は、それぞれ2.4kgf、2.55kgfであり、凹凸層61bが形成された従動側ローラー60bに比べて搬送力が低下した。このことから、凹凸層61bが形成された摩擦係数が大きい従動側ローラー60bの方が搬送に有利であることが確認された。
ローラー本体61aの外周面に凹凸層61bが形成された印字面側ローラーを従動側ローラー60bとした場合と、駆動側ローラー60aとした場合とでの、排出ローラー対60の線圧と用紙の搬送力との関係について調査した。図1に示したインクジェット記録式のプリンター100に、図2に示したように、駆動側ローラー60aと、ローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成した従動側ローラー60bとから成る排出ローラー対60を装着し、用紙の画像面に従動側ローラー60bを接触させた場合、または、図7に示したように、ローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成した駆動側ローラー60aと、従動側ローラー60bとから成る排出ローラー対60を装着し、用紙の画像面に駆動側ローラー60aを接触させた場合について、それぞれ排出ローラー対60の単位長さ当りの圧力(線圧)Pを変化させて印字を行った場合の用紙の搬送力について評価した。
試験方法は、粒子65として平均粒子径190μmのセラミック粒子を使用し、接着層63としてアクリル系樹脂を使用してアルミニウム製のローラー本体61aの外周面に凹凸層61bを形成し、凹凸層61bの表面にPFAを用いて離型層70を形成して印字面側ローラーとした。このようにして作製した印字面側ローラーと、EPDM製の非印字面側ローラーとを組み合わせて排出ローラー対60とし、記録部30(図1参照)の直後に排出ローラー対60を配置して試験機とした。
用紙の搬送力の測定方法、排出ローラー対60が用紙を挟む長さの合計Lは実施例2と同様とした。結果を図12に示す。図12において、従動側ローラー60bを印字面側ローラーとし、大サイズの用紙を搬送した場合を◇、小サイズの用紙を搬送した場合を△、駆動側ローラー60aを印字面側ローラーとし、大サイズの用紙を搬送した場合を◆、小サイズの用紙を搬送した場合を▲で示す。
図12から明らかなように、凹凸層61bが形成された印字面側ローラーを駆動側ローラー60aとして画像面に接触させた場合は、線圧Pが6.25gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mmのときの小サイズ用紙の搬送力が、それぞれ0.6kgf、1.2kgf、1.7kgfであり、大サイズ用紙の搬送力が、それぞれ0.7kgf、1.0kgf、2.0kgfであった。
これに対し、凹凸層61bが形成された印字面側ローラーを従動側ローラー60bとして画像面に接触させた場合は、線圧Pが7.3gf/mm、12.5gf/mm、25gf/mmのときの小サイズ用紙の搬送力が、それぞれ0.5kgf、0.6kgf、0.9kgfであり、大サイズ用紙の搬送力が、それぞれ0.8kgf、0.9kgf、1.6kgfであった。
実施例1〜3の結果より、印字面側ローラーに凹凸層61bを形成することで、凹凸層61bを形成しない場合に比べて同じ線圧で高い搬送力が得られ、インク付着防止効果が確認された。特に、駆動側ローラー60aに凹凸層61bを形成して画像面に接触させた場合は、従動側ローラー60bに凹凸層61bを形成して画像面に接触させた場合に比べて低い線圧で高い搬送力が得られること、及び、搬送力を低下させずに高いインク付着防止効果が得られることが確認された。