始めに、実施例1のロック機構10の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例のロック機構10は、図1に示すように、自動車の3列目シートとして配設された車両用シート1を折り畳んで側方へ跳ね上げて収納する際に、車両用シート1をこの跳ね上げた収納位置に保持するための機構となっている。具体的には、上記ロック機構10は、車両用シート1の跳ね上げ先となる車両の側壁W上に配設されており、車両用シート1をこの側壁Wに面する収納位置まで跳ね上げた後、後述するロックピン12を動かして車両用シート1に形成された凹部Bb内に入り込ませて係合させることにより、車両用シート1を上記跳ね上げた収納位置に保持する構成となっている。以下、上述した車両用シート1及びロック機構10の各構成について、詳しく説明していく。
図2に示すように、車両用シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなるヘッドレスト4と、を有する構成となっている。シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置5を介して、シートクッション3の左右両サイドの後端部上に連結された状態とされている。これにより、シートバック2は、上記各リクライニング装置5を中心に、シートクッション3に対して背凭れ角度を前後方向に自由に調整することができる状態とされている。
上述した各リクライニング装置5は、常時は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態に保持された状態とされている。各リクライニング装置5は、車両用シート1の収納操作を行う操作者が、車両のハッチバックドアを開けた後方側に立った位置から、シートクッション3の車両内側寄りの後部箇所に設けられた解除ストラップ3Bを手で掴んで後方側に引っ張る操作を行うことにより、それらのロック状態が一斉に解除されて、シートバック2の背凭れ角度の固定状態を解除した状態に切り替えられるようになっている。
ここで、上記シートバック2とシートクッション3との間には、シートバック2に対して、常時、前方側に回転させる方向の附勢力をかけるばね(図示省略)が掛着されている。これにより、シートバック2は、上記車両用シート1に人が座っていない状態で、使用者が車両の後方側に立った位置から解除ストラップ3Bを後方側に引っ張り操作して各リクライニング装置5のロック状態を解除することにより、上記附勢力によってシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで前方側に倒し込まれるようになっている。なお、各リクライニング装置5の基本構造は、特開2011−116303号公報等の文献に開示されたものと同じ公知の構成となっているため、これらについての具体的な説明は省略することとする。
図2に示すように、シートクッション3は、その車両外側の側部が、ヒンジ機構6を介して、フロアF上の図示しないタイヤハウスの上部箇所に起倒回転可能にヒンジ連結され、車両内側の側部が、フック7AとストライカFsとの係脱構造により、フロアFに対して係脱可能に連結された状態となって設けられている。これにより、シートクッション3は、その着座使用される通常時には、上記フック7AとストライカFsとが係合された状態として、フロアF上に倒し込まれた使用位置の状態に保持され、上記フック7AとストライカFsとの係合が外されることにより、上記ヒンジ機構6を中心に、フロアF上から跳ね上げられる状態に切り替えられる構成とされている。上記シートクッション3の跳ね上げ回転は、上述したヒンジ機構6に設定された図示しないストッパ構造による係止により、シートクッション3が図1に示す起立姿勢となる収納位置までに規制されるようになっている。
上述したストライカFsは、フロアF上の前後2箇所の位置に設置されており、これらストライカFsに対して係脱する各フック7Aは、シートクッション3の底部に設けられた収納展開可能な支持板7の底部に前後に2個並んで設けられた状態とされている。上述した各フック7Aは、上述したフロアF上の各ストライカFsに向けて上方側から押し込まれるように操作されることにより、各ストライカFsに対してそれぞれ回し込まれるように操作されて掛着し、各ストライカFsに抜け止めされた状態にロックされるようになっている。各フック7Aは、上述したシートクッション3の後部箇所に設けられた解除ストラップ3Bが操作されて、シートバック2がシートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで倒し込まれることにより、この動きを拾って操作される図示しない操作ケーブルの牽引操作を介して、各ストライカFsとの係合状態から外されるように操作されるようになっている。なお、上述した各フック7Aの各ストライカFsに対する係脱構造は、特開2009−179091号公報等の文献に開示されたものと同じ公知の構成となっているため、これらについての具体的な説明は省略することとする。
すなわち、車両用シート1は、上述した解除ストラップ3Bが操作されることにより、シートバック2がシートクッション3の上面部に重なる位置まで畳み込まれると共に(図3参照)、各フック7Aによる各ストライカFsとの係合状態が外されて、上述した折畳状態でフロアF上の使用位置(図3参照)から車両の側壁Wに面する収納位置(図1参照)まで跳ね上げられる状態に切り替えられる構成とされている。したがって、上記解除ストラップ3Bの操作の後に、車両用シート1を側方へ跳ね上げることにより、車両用シート1を図1に示すように折畳姿勢とした状態で収納位置に収納した状態とすることができる。
ここで、図2に示すように、上記シートバック2の背後側の下端部には、上記車両用シート1を折畳状態にして側方へ跳ね上げる際に、取っ手として使用することのできる高い剛性及び強度を備えた横棒状の把持部Bが取り付けられている。上記把持部Bは、ストレートな円管部材により形成されており、上記シートバック2の背後側の下端部において、シート幅方向に真っ直ぐに延びるように横向きに配置された状態として、その両端部が支持具Baによってシートバック2の骨格に強固に一体的に結合された状態となって設けられている。
上記把持部Bは、シートバック2が前倒しされて車両用シート1が折畳状態とされることにより、使用者が車両のハッチバックドアを開けた後方側に立った位置から手を届かせやすい車両用シート1の後縁部に位置して、シートバック2の背面から上方側に浮いた状態として設けられるようになっている。これにより、使用者が、上記把持部Bを把持してこれを上方側に持ち上げるように操作することにより、上記折畳状態とした車両用シート1を車両の側壁Wに向けて簡便に跳ね上げ操作することができるようになっている。
図2に示すように、支持板7は、その一端(同図における上端)がシートクッション3の底部に回転可能にヒンジ連結された状態とされており、図1に示すように、シートクッション3の底部に畳み込まれた状態と、図2に示すように、シートクッション3の底部から下方に起立するように展開された状態と、の間で起倒回転することができるようになっている。上記支持板7は、シートクッション3の底部との間に掛着された図示しない捩りばね(図示省略)の附勢力によって、常時は、下方側に展開する方向に回転附勢された状態とされており、図2に示すように、シートクッション3がフロアF上に倒し込まれた使用位置にある状態では、上記ばね力によりシートクッション3の底部から真っ直ぐ下方に垂下する位置まで展開されて係止された状態とされている。
上記支持板7は、上記解除ストラップ3Bが操作されて、車両用シート1が折畳状態とされてフロアF上から側方へ跳ね上げられることにより、この動きを拾って操作される図示しない操作ケーブルの牽引操作を介して、シートクッション3の底部に向かって漸次畳み込まれていくように操作されるようになっている。上記操作構造により、支持板7は、図3に示すように、車両用シート1が折畳状態とされて車両の側壁Wに面する収納位置まで跳ね上げられて収納された状態では、シートクッション3の底部に畳み込まれてコンパクトに格納された状態に保持されるようになっている。
また、上記支持板7は、上記車両用シート1が跳ね上げられた収納位置からフロアF上の使用位置へと落とし込まれる時には、上述した図示しない操作ケーブルが弛められることにより、上述した捩りばねの附勢力によって、シートクッション3の底部から漸次下方側に展開されていくようになっている。これにより、上記支持板7は、図2に示すように、シートクッション3がフロアF上の使用位置まで落とし込まれた状態では、シートクッション3の底部から真っ直ぐ下方に展開した位置まで起こし上げられた状態となって保持されるようになっている。
次に、ロック機構10の構成について説明する。ロック機構10は、図4に示すように、鋼板をプレス加工して形成したベースブラケット11と、鋼製のロックピン12と、ロックピン12をベースブラケット11に繋ぐ可撓性のストラップ13と、から構成されている。上記ベースブラケット11は、図3に示すように、車両の側壁Wに一体的に結合されて設けられている。このベースブラケット11には、ロックピン12を不使用時に上方側から差し込んで保持しておくことのできる円筒型に巻かれた筒部11Aと、車両内方側へ張り出す平板状の天板部11Bとが、それぞれプレス加工により曲げられて形成されている。上記ベースブラケット11は、上記車両の側壁Wに対し、車両用シート1が折畳状態で上記収納位置まで跳ね上げられた状態となった時に、上記天板部11Bが前述した車両用シート1のシートバック2の背面に設けられた把持部Bの車両内側の端部を支える支持具Baを上方側から覆った状態となる位置に配設されている。
上記天板部11Bには、その中央部に、高さ方向(板厚方向)に貫通する正円状の貫通孔11Cが形成されている。この貫通孔11Cは、上記車両用シート1が折畳状態とされて収納位置まで跳ね上げられた状態となることにより、上述した車両用シート1のシートバック2の背面に設けられた把持部Bの車両内側の端部を支える支持具Baに形成された凹部Bbの直上部に位置するように配置形成されている。これにより、上記車両用シート1が収納位置まで跳ね上げられることにより、上述したベースブラケット11の天板部11Bに形成された貫通孔11Cと、車両用シート1の上記支持具Baに形成された凹部Bbとが、互いに高さ方向に並んで一直線上に連通した状態とされるようになっている。したがって、この状態から、上記貫通孔11Cの上方側からロックピン12を重力方向に落とし込んで凹部Bbまで入れ込むことにより、車両用シート1がロックピン12を介してベースブラケット11に対して係合した状態となって、そのフロアF上に落とし込まれる方向の移動が規制された状態にロックされるようになっている。
ここで、上述した把持部Bの支持具Baに形成された凹部Bbは、把持部Bの円管内に連通する貫通孔として形成されており、図5に示すように、ロックピン12を把持部Bの円管内まで深く入れ込んで係合させられるようになっている。これにより、ロックピン12を凹部Bbから外れにくい状態に係合させられるようになっている。
上述したロックピン12は、ストレートな丸棒状の形に形成されており、その上部寄りの中間箇所に、フランジ状に張り出す鍔部12Aが形成されている。これにより、上記ロックピン12は、これを上述したベースブラケット11の筒部11Aや天板部11Bに形成された貫通孔11C内に上方側から差し込むことにより、これらにある程度差し込まれたところで、鍔部12Aが筒部11Aの上面や天板部11Bの上面に当たって係止されるようになっており、筒部11Aや貫通孔11Cを貫通した脱落が防止される構成とされている。
ストラップ13は、上述したロックピン12の上端部とベースブラケット11の天板部11Bの根本側の端部との間に繋がれており、ロックピン12をベースブラケット11からフロアF上に脱落させないように吊持する機能をするものとなっている。上記ストラップ13は、ロックピン12の長さよりも長尺であり、ロックピン12の上端部とベースブラケット11の天板部11Bの根本側の端部との間を繋ぐように設けられていることから、ロックピン12を天板部11Bと筒部11Aとの間で相互に抜き差しする操作を阻害しないようになっている。
すなわち、上記ストラップ13は、そのロックピン12との接続部が、ロックピン12の鍔部12Aよりも上方側の端部箇所となっていることから、ロックピン12を天板部11Bの貫通孔11Cや筒部11A内に差し込む際に、ストラップ13が比較的真っ直ぐに伸ばされてこれらの差し込み部に干渉しにくいようになっていると共に、ロックピン12の差し込みが鍔部12Aまでに規制されていることから、ストラップ13とロックピン12との接続部が差し込みの邪魔をすることがないようになっているからである。また、ストラップ13があることにより、ロックピン12を筒部11Aや天板部11Bの貫通孔11Cから引き抜いたりする際に、思い切って引き抜いても、ストラップ13によって引き抜き後の上方側への移動が一定範囲内に規制されるようになっており、無駄な移動をなくしてロックピン12を筒部11Aと天板部11Bとの間でスムーズに移動させられるようにガイドされるようになっている。
ここで、上述したベースブラケット11の筒部11Aは、天板部11Bよりも後方側でかつ低い位置に形成されている。これにより、車両用シート1の収納操作を行う者が、車両のハッチバックドアを開けた後方側に立った位置から、ロックピン12をより手前側(後方側)の低位置にある筒部11Aに対して簡単に手を届かせて抜き差しすることができるようになっていると共に、ロックピン12を高い位置にある天板部11Bに差し込んで車両用シート1に係合させることにより、車両用シート1をより高い位置で安定して保持することができるようになっている。
このように、上記ロック機構10は、車両用シート1の跳ね上げ先となる車両の側壁W上における比較的高い後方寄りの位置に設けられているが、ロックピン12を不使用時に保持しておく筒部11Aは、使用時に差し込まれる天板部11Bよりも後方側でかつ低位置に配置された状態とされている。これにより、ロック機構10は、ロックピン12の格納時にはロックピン12を比較的手を届かせやすい後方側の低い位置に格納しておける構成でありながら、車両用シート1を収納位置にロックする使用時には、ロックピン12を高い位置にある天板部11Bに差し込んで、車両用シート1をより高い位置で安定して保持できるようにすることができる。すなわち、ロックピン12が、収納位置に跳ね上げられた車両用シート1の上方側に超えた位置(天板部11B)から下方に差し込まれる構成とされていることにより、ロックピン12にかかる車両用シート1の自重によるモーメント負荷が軽減されるため、ロックピン12によって車両用シート1を側方へ跳ね上げた収納位置により安定して保持することができる。また、図2に示すように、車両用シート1への着座使用時に、ロック機構10が着座者にとって邪魔となることがない。
このように、本実施例のロック機構10の構成によれば、車両用シート1を収納位置へ移動させた後、同移動先の位置に設けられたロックピン12を折畳状態とされた車両用シート1の凹部Bb内に入り込ませて係合させることにより、車両用シート1が収納位置に固定された状態となる。このように、車両用シート1の収納移動先の位置に車両用シート1の収納移動方向とは異なる向きに動くロックピン12を設ける簡単な構成により、車両用シート1には凹部Bbを設けるのみで、車両用シート1を収納位置にロックすることのできる構成を得ることができ、ロックのための部品構成を簡略化することができる。
詳しくは、上記車両用シート1に形成される凹部Bbは、車両用シート1に設けられた収納移動操作のための把持部B(の支持具Ba)に形成されている。このように、凹部Bbを車両用シート1の収納移動操作用に設けられる把持部Bに形成することにより、凹部Bbを増設部品に合理的に形成することができると共に、把持部Bの高い構造強度によってロックピン12を嵌め込んで安定してロックさせることのできる高い構造強度を凹部Bbに設定することができる。
続いて、実施例2のロック機構10の構成について、図6〜図7を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示したロック機構10と実質的な構成及び作用が同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明をすることとする。図6〜図7に示すように、本実施例のロック機構10は、車両用シート1を折畳状態にして収納位置に跳ね上げた際に、ロックピン12が車両用シート1の側部を覆う樹脂製のシールド8に形成された凹部8A内に差し込まれて係合される構成となっている。
ここで、車両用シート1は、その上述した各リクライニング装置5を介したシートバック2とシートクッション3との両サイドの連結部が、樹脂製のシールド8によって外側から覆われた構成となっている。上記各リクライニング装置5は、図7に示すように、シートバック2の各サイドフレーム2Aとその両外側に位置するシートクッション3の各サイドフレーム3Aとの間に位置してこれらを互いに相対回転可能な状態に連結した構成となっており、それらの内部に設けられたロック構造によりこれらの相対回転を任意の位置でロックしたり解除(許容)したりする構成となっている。各リクライニング装置5は、常時は、上記回転をロックした状態に保持されており、これらの中心部に挿通された操作軸5Aが解除操作方向に回されることにより、それぞれのロック状態が解除される構成とされている。
詳しくは、上述した各操作軸5Aは、コネクティングロッド5Bによって互いに一体的となって回転することができる状態に連結されており、図示されていない車両外側の操作軸5Aの外側の端部に連結された解除レバーが操作されることにより、車両内側の操作軸5Aもコネクティングロッド5Bを介して一斉に解除操作方向に回される構成とされている。また、上記シートバック2の各サイドフレーム2Aとシートクッション3の各サイドフレーム3Aとの間には、シートバック2に対して常時、前回転させる方向の附勢力をかけるスパイラルスプリング9がそれぞれ掛着されている。各スパイラルスプリング9は、両サイドフレーム2A,3Aの外側に位置して、各側のリクライニング装置5の中心部に挿通された各操作軸5Aが位置する中心部分には形状を持たず、外周側に近い部分において幾重にも巻かれた形状が密集した形状に形成されている。そして、上述した各スパイラルスプリング9を含む各リクライニング装置5を介したシートバック2とシートクッション3との各連結部が、樹脂製のシールド8によって、それぞれ両外側からまとめて覆い被されて外部に対して保護された状態とされている。各シールド8は、シートクッション3の両外側の後端部も被覆する縦長な形状に形成されており、シートクッション3の各サイドフレーム3Aに一体的に結合されて装着された状態とされている。
上記各シールド8のうち、図示されていない車両外側のシールド8によって覆われた内部空間には、前述した同側のリクライニング装置5の中心部に挿通された操作軸5Aの外側の端部に接続された解除レバーの一部が張り出した状態となって設けられている。しかし、図7に示すように、車両内側のシールド8によって覆われた内部空間では、同側の操作軸5Aの外側の端部には特に何も連結されておらず、空きスペース8Bとなっている。そこで、この空きスペース8Bを利用して、同側のシールド8の上記操作軸5Aと同軸線上となる位置に、シート外側から内側に向かって張り出す丸穴状に凹んだ凹部8Aが形成されている。このように、凹部8Aがシートクッション3付けのシールド8に形成された構成となっていることにより、シートバック2を前後に傾動させたりシートクッション3の上面部に畳み込んだりしても、シールド8の位置(凹部8Aの位置)は常に一定に保たれるため、車両用シート1を折畳状態で跳ね上げた時に、凹部8Aを上述したロック機構10のベースブラケット11の貫通孔11Cに対して位置ずれさせることなく、常に安定した定位置に位置合わせすることができるようになっている。
このように、本実施例のロック機構10の構成によれば、車両用シート1を収納位置へ移動させた後、同移動先の位置に設けられたロックピン12を折畳状態とされた車両用シート1の凹部8A内に入り込ませて係合させることにより、車両用シート1が収納位置に固定された状態となる。このように、車両用シート1の収納移動先の位置に車両用シート1の収納移動方向とは異なる向き(重力方向)に動くロックピン12を設ける簡単な構成により、車両用シート1には凹部8Aを設けるのみで、車両用シート1を収納位置にロックすることのできる構成を得ることができ、ロックのための部品構成を簡略化することができる。
詳しくは、上記車両用シート1に形成される凹部8Aは、車両用シート1のシートバック2とシートクッション3との連結部を側方から覆い隠す樹脂製のシールド8上に形成されている。このように、凹部8Aを樹脂製のシールド8に形成することにより、凹部8Aを部品点数を増大させることなくシールド8の樹脂成形時に併せて簡便に形成することができると共に、ロックピン12を適切な状態に嵌め込んで係合させられる構成とすることができる。
続いて、実施例3のロック機構20の構成について、図8〜図10を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例2で示したロック機構10と実質的な構成及び作用が同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明をすることとする。図8〜図9に示すように、本実施例のロック機構20は、車両の側壁Wに一体的に取り付けられた箱型のケース21内にロックピン22が収められた構成となっており、車両用シート1を折畳状態にして収納位置に跳ね上げる時には、特に何らの操作を行うことなく、ロックピン22を車両用シート1の凹部8A内に自動的に入り込ませて車両用シート1を収納位置にロックすることができる構成となっている。また、上記ロック機構20は、車両用シート1を上記収納位置にロックした状態からロックを解除する時の操作も、ケース21から露出するつまみ(鍔部22A)を上方側に引き上げるのみの簡単な操作によってロックを解除することができる簡単な操作構造となっている。以下、上述したロック機構20の具体的な構成について説明する。
ロック機構20は、図9に示すように、ケース21と、ロックピン22と、圧縮ばね23と、から成る。ケース21は、後方側の面部に開口21Aを有する箱型形状に形成されており、その内部に高さ方向に伸びるガイド軸21Bが挿通されて設けられており、底部に丸孔状に貫通した貫通孔21Cが形成された構成となっている。ロックピン22は、上記ケース21内に設けられて、鍔部22Aが上記ガイド軸21Bに通されてケース21に対して高さ方向にスライドガイドされた状態となって設けられている。更に、上記ケース21内におけるロックピン22の鍔部22Aとケース21の上面部との間には、ロックピン22を常時下方側に押し下げるように附勢する圧縮ばね23が掛着されている。この圧縮ばね23は、上記ガイド軸21Bに巻装されるように通された状態として、上記ロックピン22の鍔部22Aとケース21の上面部との間に押し挟まれた状態に設けられている。また上記ロックピン22の鍔部22Aは、その一部が、上述したケース21の開口21Aから外部に露出した状態となって設けられている。
上記構成のロック機構20は、その自由状態時には、ロックピン22が圧縮ばね23の附勢力によって、ケース21の貫通孔21Cを下方側に貫通して突き出た状態に保持された状態となっている。具体的には、ロックピン22は、その鍔部22Aがケース21の底部に押し当てられる位置にて係止された状態となっている。そして、上記状態のロックピン22に対し、車両用シート1が折畳状態とされて収納位置に向かって跳ね上げられると、ロックピン22は、そのケース21の外部に突き出た先端部が、車両用シート1のシールド8の外周面に押し当てられてケース21内に押し入れられた状態となり、その後に車両用シート1が収納位置に達してその直下に凹部8Aが位置付けられることにより、圧縮ばね23の附勢力によってこの凹部8A内にも入り込んだ状態とされるようになっている。
ここで、上述したロックピン22が車両用シート1の跳ね上げに伴うシールド8との干渉によってケース21内に押し入れられる仕組みは、ロックピン22の先端部が先細り状に丸みのついた形に形成されていることにより、この丸みのついた先端面がガイド面となって、ロックピン22がシールド8により側方から押されることによりケース21内に向かって上方側に押し入れられる仕組みとなっている。なお、上記ロックピン22の先端部の丸みのついた形状に代えて、ロックピン22の先端部に上記ガイド面と同じ機能を果たす傾斜面を形成してもよく、または、シールド8の周縁部の丸みのついた角面によってロックピン22がシールド8によって漸次ケース21内に押し入れられていく構成となっていてもよい。
したがって、上記のように圧縮ばね23の附勢力によってロックピン22が車両用シート1の凹部8A内に入り込んだ状態に保持される構成により、ロックピン22が車両振動等の作用によって不用意に凹部8Aから上方側に抜かれようとする力がかけられても、ロックピン22を凹部8A内に入り込ませた状態に安定して保持することができる。上記ロックピン22を凹部8Aから外す場合には、図10に示すように、ケース21の開口21Aから露呈するロックピン22の鍔部22A(つまみ)を上方側に引き上げればよい。これにより、ロックピン22が凹部8Aから上方側に引き出され、車両用シート1をフロアF上に落とし込むことができる状態となる。
以上、本発明の実施形態を3つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施例では、本発明の「ロック機構」に相当するものとして、車両用シート1を折畳状態にして車両の側壁Wに向けて跳ね上げた収納位置に保持するものを例示した。しかし、本発明の「ロック機構」は、車両用シートをフロア上の使用位置から移動させた収納位置にロックする用途に使用されるものであれば、上記以外の収納態様の用途にも使用することができるものである。例えば、(a)車両用シートを折畳状態にして前後方向に跳ね上げた位置に保持するもの、(b)車両用シートを折畳状態にしてフロア下に落とし込んだ位置に保持するもの、(c)車両用シートを隣り合うシートに向けて側方へ跳ね上げた状態に保持するもの、(d)車両用シートを折畳状態にして天井に跳ね上げた状態に保持するものなどが挙げられる。このような様々なタイプの収納構造に対して、本発明の「ロック機構」を収納移動先の位置に設けることにより、車両用シートに凹部を設けるだけの簡単な構成により、車両用シートを上記様々な収納位置にてロックさせることができる。また、本発明の「車両用シート」は、車両のどの列に配設されるシートであってもよい。
また、本発明の「ロック機構」の「ロックピン」は、折畳状態とされて収納位置へ移動した車両用シートに対し、その収納移動方向とは異なる向きに移動して車両用シートに形成された凹部内に入り込んで係合する構成となっていればよく、重力方向以外の方向に向けられた凹部に対して差し込まれるようになっていてもよい。例えば、実施例1(図1参照)に示した構成を例に説明すると、車両の側壁Wに面する位置に跳ね上げられた車両用シート1において、その前方向又は後ろ方向に露呈するように凹部が形成されており、これら凹部に対してロックピンが前方向或いは後ろ方向から差し込まれて係合するようになっていてもよい。または、凹部が車両用シートの下方向に露呈するように形成されていて、ロックピンが下方向から差し込まれて係合するようになっていてもよい。なお、いずれの場合にも、ロックピンを凹部内に入り込ませた位置に保持することのできるロック構造を設けて、ロックピンが凹部から不用意に外れないようにすることが好ましい。また、本発明の「ロック機構」は、車両用シートの収納移動先の位置に設けられれば良いものであり、収納移動先の周辺物(フロア、車両の側壁、或いは別のシートなど)であれば、どのような物に設けられても構わない。また、車両用シートに形成される凹部も、把持部やシールド以外の箇所に形成されていてもよいが、内部に入れ込まれたロックピンを強い力で保持可能な剛性を備えた硬い部材に形成されることが好ましい。
また、本発明の「ロック機構」について、実施例1〜3では、ロックピンをスライドにより車両用シート1の凹部内に差し込む構成を例示したが、本発明の「ロックピン」は、回転や捩り、押し込み等の操作によって凹部内に差し込まれる構成となっているものであってもよい。また、「ロックピン」は、ボルトやネジ等の他の棒状部材によって形成されたものであってもよい。また、「ロックピン」は、剛性の高いバネの端部として構成されたものであってもよい。すなわち、上記剛性の高いバネの端部(ロックピン)を車両用シートに形成された凹部内に撓ませながら入れ込むことにより、同バネの端部を高いバネ力をかけた状態で凹部に強い力で係合させるようにする構成であってもよい。
また、本発明の「把持部」は、シートクッションに設定されていてもよい。また、「把持部」の設けられる位置は、実施例3で示したような、車両用シート1における車両のハッチバックドアを開けた後方側に立った位置から手を届かせやすい後縁側の位置に限定されることなく、折畳状態とされた車両用シートの中央位置や前縁側や側縁側の位置等、他の位置に設定されていてもよい。また、「把持部」の設けられる向きも、実施例3で示したような横向き配置に限定されることなく、折畳状態とされた車両用シートに対して前後向きに配置されるものや上下向きに配置されるもの等、他の向きに配置されるものであってもよい。また、本発明の「把持部」の形状は、実施例3で示したような円筒形状のものに限定されず、角筒形状や中実棒形状やハンドル形状やノブ形状等、他の形状のものであってもよい。