始めに、実施例1の跳ね上げ機構6の構成について、図1〜図9を用いて説明する。本実施例の跳ね上げ機構6は、図1に示すように、いわゆるミニバンタイプの自動車の右側のリヤシート1に適用されている。上記リヤシート1は、図2に示すように、1人掛け用の座席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなるヘッドレスト4と、を備えた構成となっている。
上述したリヤシート1は、通常、座席として使用される時には、シートクッション3がフロアF上に倒し込まれた状態にロックされており、シートバック2がシートクッション3の後部から僅かに後傾した起立姿勢にロックされた状態とされている。ヘッドレスト4は、シートバック2の上部に固定された状態とされている。より詳しくは、上述したシートクッション3は、その車両外側となる図示右側の側部箇所が、上述した跳ね上げ機構6を介してフロアF上に跳ね上げ回転可能に連結された状態とされている。
そして、シートクッション3は、その車両内側となる図示左側の底部箇所が、同底部箇所から下方側へ延びる脚板3Bを介して、その前後2箇所の下端部に設けられたフック3CによりフロアF上の各ストライカSに着脱可能に連結された状態とされている。これにより、シートクッション3は、常時は、上述した跳ね上げ機構6による車両外側に向けての跳ね上げ回転が、上述した各フック3Cと各ストライカSとの連結により規制されて、フロアF上に倒し込まれた状態に保持された状態となっている。上述したシートクッション3の跳ね上げの規制状態は、上述した各フック3Cが後述するシートバック2の前倒れ回転に伴い各ストライカSとの連結状態から外されることによって解除されるようになっている。
シートバック2は、その左右両側の下部箇所が、それぞれリクライナ5を間に介してシートクッション3の左右両側の後部箇所に連結された状態とされている。これにより、シートバック2は、常時は、上述した各リクライナ5の回転止め構造によって、その背凭れ角度が固定された状態に保持されるようになっている。上述した各リクライナ5によるシートバック2の背凭れ角度の固定状態は、シートクッション3の車両内側寄りの後部箇所に設けられた解除ストラップ3Aが後方側へ引かれる操作によって解除されるようになっている。この解除操作によって、シートバック2は、シートクッション3との間に掛着された図示しないバネの附勢力によって、シートクッション3の上面部に畳み込まれる位置まで前側に倒し込まれるようになっている。
そして、上記シートバック2の前倒れ動作によって、上述したシートクッション3の車両内側の側部箇所をフロアF上に固定している各フック3Cが、それぞれ、上記シートバック2の前倒れ動作によって操作される図示しない動作機構の作動によって各ストライカSとの連結状態から一斉に外されるよう操作されるようになっている。これによって、リヤシート1は、シートバック2をシートクッション3の上面部に折り畳んだ状態で、上述した跳ね上げ機構6を中心に車体側壁Wに向けて跳ね上げることができる状態となる。
上述したリヤシート1の車体側壁Wに向けての跳ね上げ回転は、跳ね上げ機構6に組み付けられた跳ね上げバネ6Dのバネ力によってアシストされながら行えるようになっている。また、上述したリヤシート1は、そのフロアF上からの跳ね上げ回転に伴い、シートクッション3の車両内側の底部箇所から下方側へ延びるように立設されていた脚板3Bが、シートクッション3の底面部に沿って折り畳まれるように引き込み操作されるようになっている(図1参照)。
上述した脚板3Bは、図9に示すように、上記リヤシート1が車体側壁Wの跳ね上げ位置からフロアF上に落とし込まれる動きによって、再び、シートクッション3の底部箇所から下方側へ延びるように立設された状態に戻されるようになっている。そして、上述した脚板3Bの前後2箇所の下端部に設けられた各フック3Cは、リヤシート1がフロアF上に落とし込まれる動きに伴って、フロアF上の各ストライカSに押し込まれるように操作されて、その操作力によって各ストライカSに引っ掛けられるように押し回されて、各ストライカSと連結されるようになっている(図1参照)。このように、リヤシート1は、車体側壁Wの跳ね上げ位置からフロアF上に落とし込まれる動きのみによって、フロアF上にロックされて跳ね上げが規制された状態に戻されるようになっている。
ところで、上述したリヤシート1の跳ね上げ回転は、図1及び図6に示すように、上述した跳ね上げ機構6によって、車体側壁Wと形状を重ねるほぼ垂直な角度位置まで跳ね上げられるようになっている。そして、上記リヤシート1は、上記跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、跳ね上げ機構6に設けられたロック構造10によって、それ以上の跳ね上げ回転とその逆の倒れ込み回転とがそれぞれ規制されるようにロックされるようになっている。
以下、上述した跳ね上げ機構6の具体的な構成について詳しく説明する。跳ね上げ機構6は、図3〜図6に示すように、固定部6Aと、可動部6Bと、回転軸6Cと、跳ね上げバネ6Dと、ロック構造10と、を有する構成となっている。ここで、回転軸6Cが本発明の「回転連結部」に相当する。固定部6Aは、フロアF上に図示しないボルト締結等の固定手段によって一体的に固定されて設けられている。可動部6Bは、シートクッション3の車両外側の側部箇所に、図示しないボルト締結等の固定手段によって一体的に固定されて設けられている。回転軸6Cは、上述した可動部6Bを固定部6Aに対して回転させられる状態に連結している。跳ね上げバネ6Dは、可動部6Bを固定部6Aに対して跳ね上げ方向に回転附勢する状態となるように設けられている。
より具体的に説明すると、固定部6Aは、断面L字状の形に折り曲げられた鋼板材により形成されており、その底面部がフロアF上にボルト締結されて固定された状態として設けられている。上記固定部6Aは、その前後側の各縁部も、それぞれ、車両内側に折り曲げられた形状とされている。そして、上記固定部6Aの前後側の各折り曲げられた面部の下端部も、更に前方或いは後方にそれぞれ折り曲げられて、フロアF上にボルト締結されて固定された状態とされている。
可動部6Bは、断面J字状の形に折り曲げられた鋼板材により形成されており、J字の平面部分にシートクッション3の車両外側の骨組み構造があてがわれてボルト締結により一体的に固定された状態とされている。上記可動部6Bは、そのJ字の湾曲面領域の前後側の各縁部に折り曲げられて形成された前後側の各面部が、それぞれ、上述した固定部6Aの前後側の折り曲げられた各縁部面に前後方向に形状を重ね合わされるようにセットされて、これらに貫通するように回転軸6Cが前後方向に挿通されることにより、固定部6Aに対してその前後2箇所の位置でそれぞれ回転可能に連結された状態とされている。
上記連結により、可動部6Bが固定部6Aに対して、回転軸6Cのまわりに回転することができるように連結された状態とされている。具体的には、上記可動部6Bは、図4に示すように、固定部6AのL字の開口断面に蓋をする形に垂下した初期位置と、図6に示すように、上記初期位置からほぼ水平角度の位置まで起こし上げられた跳ね上げ位置と、の間の約90度の角度範囲内を起倒回転することができるようになっている。上記可動部6Bは、上述した図4の初期位置にてシートクッション3をフロアF上に落とし込ませた状態をとるようになっている。また、上記可動部6Bは、上述した図6の跳ね上げ位置にてシートクッション3をフロアF上から車体側壁Wに向けてほぼ垂直な角度位置まで跳ね上げた状態をとるようになっている。
跳ね上げバネ6Dは、トーションバネにより構成されており、そのコイル状に巻かれた中央部が上述した回転軸6Cに巻装された状態として設けられている。そして、上記跳ね上げバネ6Dは、その一端が固定部6Aに対して弾発力の発揮方向に押し当てられ、他端が可動部6Bに対して弾発力の発揮方向に押し当てられた状態として、可動部6Bに対して常時、固定部6Aから跳ね上げる方向の附勢力をかけた状態とされている。上記附勢力により、リヤシート1をフロアF上から跳ね上げる際のアシスト力が付与されるようになっている。
次に、上記跳ね上げ機構6に設けられたロック構造10について説明する。図3及び図7に示すように、ロック構造10は、上述した固定部6Aの後側の折り曲げられた縁部面に貫通して組み付けられたロックピン11と、ロックピン11の先端側の近傍箇所に組み付けられた係止板12と、係止板12と上記固定部6Aの後側の縁部面との間に介在して設けられたロックバネ13と、ロックピン11の外周部に組み付けられたガイド14と、ロックピン11の後端部に一体的に結合された解除レバー15と、跳ね上げ機構6の可動部6Bの後側の折り曲げられた縁部面に貫通して形成されたロック孔16と、ロック孔16に隣接して設けられたストッパ17と、を有する。ここで、ロック孔16が本発明の「ロック溝」に相当し、解除レバー15が本発明の「解除部材」に相当する。
上述したロックピン11は、略丸棒形状に形成されており、上述した固定部6Aの後側の縁部面に後側から差し込まれた先の端部が、軸心部に向かって形状を先細りさせた形に形成されている。係止板12は、中空の円板形状に形成されており、上述したロックピン11の先端側近傍の外周部箇所に一体的に組み付けられている。上記係止板12は、上記ロックピン11への組み付けにより、ロックピン11の外周部全体に径方向の外側にフランジ状に張り出す張り出し面を形成して、ロックピン11が固定部6Aの後側の縁部面から後方側に脱落するのを抑止するようになっている。
ロックバネ13は、圧縮バネによって構成されており、上述したロックピン11の係止板12の後側の領域部に巻装されて、係止板12と固定部6Aの後側の縁部面との間に前後方向に挟まれて設けられた状態とされている。これにより、ロックバネ13は、図7に示すように、常時、ロックピン11(係止板12)に対して、固定部6Aの後側の縁部面から前方側に押し出す方向の附勢力をかけた状態とされている。このロックバネ13の附勢力により、ロックピン11は、可動部6Bが跳ね上げられる前の常時(図4参照)は、その先細り状の先端部が、可動部6Bの後側の縁部面の後面部に押し当てられた状態として保持されるようになっている。
ガイド14は、図7に示すように、円管状の形に形成されており、上述したロックピン11の固定部6Aの後側の縁部面より後側の領域部に嵌装されて、固定部6Aの後側の縁部面と後述する解除レバー15の結合部15Bとの間に前後方向に挟まれて設けられた状態とされている。上記ガイド14は、図7に示すように、可動部6Bが図6に示す跳ね上げ位置まで跳ね上げられた際に、ロックピン11がロックバネ13の附勢力によって可動部6Bの後側の縁部面に形成されたロック孔16内に入り込む動きを、ロックピン11と一体的とされる解除レバー15の結合部15Bを後側から当接させることで、一定の入り込み位置までに規制するものとして機能するようになっている。なお、ロックピン11の上記入り込み位置の規制は、係止板12が可動部6Bの後側の縁部面に当接することで行われるようになっていてもよい。
解除レバー15は、解除操作時に使用者によって把持される握り棒としての把持部15Aと、把持部15Aの中央部から突出して上述したロックピン11の後端部に一体的に結合される円筒状の結合部15Bと、を有するT字型のレバー形状とされている。上記解除レバー15は、上述した結合部15Bの円筒内に雌ネジが切られており、この雌ネジに螺合する形の雄ネジが切られたロックピン11の後端部に結合部15Bを螺合させることにより、ロックピン11の後端部に一体的に結合された状態とされている。そしてこれにより、解除レバー15は、図1〜図2及び図9に示すように、その把持部15Aが、跳ね上げ機構6の後部に露出した状態として設けられた状態とされている。
上記解除レバー15は、図7に示すように、上述したロックピン11と一体的に結合されていることにより、ロックピン11がロックバネ13の附勢力によって前方側に押し出される動きに伴って、ロックピン11と一体的となって前方側に押し込まれるようになっている。上記解除レバー15の前方側に押し込まれる動きは、上述した解除レバー15の結合部15Bがガイド14の後面部に当たることで係止されるようになっている。また、上記解除レバー15は、図8に示すように、上記ロックバネ13の附勢力に抗して使用者によって後方側に引っ張られることにより、これ(解除レバー15)と一体的とされたロックピン11を後方側へ引き込んでロック孔16との嵌合状態から外すようになっている。
図3〜図6に示すように、ロック孔16は、可動部6Bの後側の縁部面に前後方向に貫通した形に形成されている。上記ロック孔16は、図6〜図7に示すように、可動部6Bが跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、上述したロックピン11の先端部と前後方向に向かい合う位置まで移動して、ロックピン11の先端部の附勢による入り込み移動を許容するように形成されている。上記ロック孔16は、詳しくは、上述したロックピン11の外径よりも僅かに大きな正円が、可動部6Bの半径方向の内外に長尺状に延びた長孔形状に形成されている。ロック孔16は、このような長孔形状とされていることにより、可動部6Bと回転軸6Cと固定部6Aとの間に設定される僅かな隙間や組み付け位置の誤差などの影響により可動部6Bの跳ね上げ位置にズレが生じることがあっても、ロックピン11を半径方向の広い範囲で受け入れて回転方向の双方に当接させた状態とすることができるようになっている。
ストッパ17は、上述したロック孔16と隣接する、可動部6Bの後側の縁部面の後面部上に突出した状態として設けられている。上記ストッパ17は、図6に示すように、その突出した外周面のうち、ロック孔16と隣接する側の側面が、ロック孔16の長孔の側面形状に沿った平坦面形状に形成されている。上記ストッパ17は、可動部6Bが跳ね上げ位置まで跳ね上げられた際に、上記ロック孔16と隣接する側の平坦面が、ロックピン11の側面にあてがわれて、ロックピン11のロック孔16内への入り込み移動を案内するものとして機能するようになっている。上記ストッパ17が形成されていることにより、可動部6Bが勢い余って跳ね上げられても、ロックピン11がロック孔16を回転方向に乗り越えてしまうことがないようにストッパ17によって規制することができるようになっている。
上記構成のロック構造10は、図6〜図7に示すように、可動部6Bが跳ね上げ位置まで跳ね上げられることにより、ロックピン11がロックバネ13の附勢力によってロック孔16内に入り込んで嵌合する。これにより、ロックピン11は、可動部6Bのそれ以上の跳ね上げ方向の回転と、その逆の戻り方向の回転と、の双方向の回転を規制した状態となる。具体的には、上記ロックピン11は、可動部6Bに形成されたロック孔16に対して、その軸方向の直線移動によって、可動部6Bの跳ね上げ回転の軸方向に差し込まれて嵌合するようになっている。
このような嵌合構造とされていることにより、ロック孔16がロックピン11に対して可動部6Bの回転方向の双方向に内側面をあてがえた状態として、回転方向に少ない隙間で嵌合されるようになっている。したがって、上記ロック構造10によって、車体側壁Wに跳ね上げたリヤシート1を、跳ね上げ方向や落とし込み方向にガタ付かせることなく定位置に安定して保持することができる。
上記ロック構造10による跳ね上げ機構6の回転ロック状態は、図8〜図9に示すように、跳ね上げ機構6の後部に設けられた解除レバー15を後方側へ引っ張る操作を行うことによって解除される。具体的には、図8に示すように、解除レバー15を後方側へ引くと、解除レバー15と一体的に繋がれたロックピン11が、上述したロック孔16内への差し込み方向(前方向)とは反対方向に(後ろ方向)に真っ直ぐに引っ張られて、ロック孔16から引き抜かれる。これにより、ロックピン11による可動部6Bの回転ロック状態が解除される。したがって、図9に示すように、上記解除操作後には、リヤシート1を車体側壁WからフロアF上に落とし込んで元の着座使用状態に戻すことができる。
以上をまとめると、本実施例の跳ね上げ機構6は、次のような構成となっている。すなわち、跳ね上げ機構6は、固定部6Aと、可動部6Bと、回転連結部(回転軸6C)と、ロック構造10と、を有する。固定部6Aは、フロアFと一体的な状態に固定される。可動部6Bは、乗物用シート(リヤシート1)と一体的な状態に固定される。回転連結部(回転軸6C)は、可動部6Bを固定部6Aに対して回転させられる状態に連結する。ロック構造10は、可動部6Bの回転により可動部6Bと固定部6Aとの間で互いに相対運動する関係となる二部材のうちの一方(固定部6A)に設けられたロックピン11と、他方(可動部6B)に設けられたロック溝(ロック孔16)と、有する。ロック構造10は、可動部6Bの跳ね上げによってロックピン11が附勢によりロック溝(ロック孔16)に嵌合して可動部6Bの動きをロックする構成とされている。
このように、ロック構造10が跳ね上げ機構6の固定部6Aと可動部6Bとの間に設けられることで、ロック構造10が回転連結部(回転軸6C)に近い位置でロック作動する構成となる。これにより、乗物用シート(リヤシート1)の各構成部品間に組み付け位置や跳ね上げ位置のズレが生じても、これらのズレによる誤差がロック構造10に影響しにくくなるため、ロック構造10を安定した形でロック作動させることができる。上記ロック構造10は、可動部6Bが跳ね上げられることで、ロックピン11が附勢によってロック溝(ロック孔16)内に嵌合して可動部6Bの動きをロックする、少ない部品点数で構成される。
また、ロックピン11がロック溝(ロック孔16)に対して可動部6Bの跳ね上げ回転の軸方向に嵌合する構成とされている。このような構成となっていることにより、ロックピン11がロック溝(ロック孔16)に対して可動部6Bの回転半径方向に嵌合するような構成と比べて、ロックピン11やロック溝(ロック孔16)をストレートな形に設定しやすくなり、簡便かつガタ付きの少ないロック構造10を構成することができる。
また、ロックピン11がロックピン11をロック溝(ロック孔16)との嵌合状態から外すための解除部材(解除レバー15)と一体に構成されて、解除部材(解除レバー15)の操作によってロック溝(ロック孔16)から外されるようになっている。このように、ロックピン11を解除部材(解除レバー15)と一体に構成することで、ロックピン11の状態(ロック状態であるかそうでないか)を解除部材(解除レバー15)の状態(前方側に押し込まれているかそうでないか)によって確認できるようになると共に、これらが別体で構成されるものと比べて、係る部品点数を少なく抑えることができる。
続いて、実施例2の跳ね上げ機構6の構成について、図10〜図17を用いて説明する。本実施例では、図10に示すように、ロック構造10が、上記ロック孔16とは別に、更にロック孔16よりも細い孔形状から成る他のロック孔18を備えた構成となっている。上記他のロック孔18は、可動部6Bの後側の縁部面上に、ロック孔16と互いに円周方向に間を空けて並んで形成された構成となっている。上記他のロック孔18の設定により、可動部6Bを跳ね上げの途中位置でロックさせたり、可動部6Bを跳ね上げた位置から落とし込みの途中位置でロックさせたりすることができるようになっている。
上記可動部6Bを途中位置でロックさせる他のロック孔18は、可動部6Bの回転方向に長尺となる細長い形に形成されており、図12に示すように、可動部6Bが跳ね上げの途中位置まで跳ね上げられたり跳ね上げた位置から途中位置まで落とし込まれたりすることにより、ロックピン11と前後方向に向かい合う位置へと動かされる構成となっている。
ここで、本実施例のロック構造10は、上述したロックピン11が、上記のように可動部6Bが跳ね上げの途中位置まで跳ね上げられても、上記他のロック孔18には嵌合しない状態をとれるように切り換えが可能な構成となっている。具体的には、本実施例におけるロックピン11は、その断面形状自体は、上記他のロック孔18と嵌合可能な細長い断面形状をしたものとされているが、解除レバー15を旋回方向に回すことで、その向きを上記他のロック孔18とは嵌合しない直交向きに切り換えることができるようになっている。
より具体的には、上記ロックピン11は、図10に示すように、解除レバー15が初期位置の状態とされている時には、その細長い断面形状が可動部6Bの回転方向に長尺となる向き、すなわち他のロック孔18と同じ向き(回転方向に長尺となる向き)に向けられた状態とされるようになっている。しかし、ロックピン11は、図11に示すように、解除レバー15を上記初期位置から図示時計回り方向に回すことにより、その細長い断面形状が可動部6Bの回転中心(回転軸6C)、すなわち可動部6Bの半径方向に向けられた状態に切り換えられるようになっている。この状態では、可動部6Bが途中位置まで跳ね上げられることで、図12に示すように、上述した他のロック孔18がロックピン11と前後方向に向かい合う位置まで動かされても、ロックピン11は、他のロック孔18内には入り込めず、可動部6Bの回転はロックされない状態のまま保持されるようになっている。
したがって、図13〜図14に示すように、可動部6Bをそのまま跳ね上げ位置まで跳ね上げることにより、実施例1で示した構成と同じように、ロックピン11がロック孔16内に嵌め込まれて、可動部6Bが跳ね上げ位置にてロックされる。ここで、上記可動部6Bが跳ね上げ位置に跳ね上げられたときにロックピン11を受け入れるロック孔16は、ロックピン11が半径方向に長尺となる向き、或いは回転方向に長尺となる向きのどちらの状態とされていても、ロックピン11を嵌合させることのできる正円形状とされている。したがって、ロックピン11が上述したどちらの状態に向けられた状態とされていても、可動部6Bを跳ね上げ位置まで跳ね上げることで、ロックピン11をロック孔16内に嵌合させて、可動部6Bの回転方向の双方向の動きをロックした状態とすることができる。
上記可動部6Bの跳ね上げ位置でのロック状態は、実施例1で示した構成と同じように、解除レバー15を後方側に引っ張る操作によって解除することができる(図15参照)。そして、この解除操作後に、図16に示すように、可動部6Bを跳ね上げ位置から落とし込むことにより、解除レバー15が可動部6Bに設けられたキックカム19により押し蹴られて、ロックピン11が上記他のロック孔18と嵌合可能な向き(回転方向に長尺となる向き)に切り換えられるようになっている。上記の切り換えは、可動部6Bが他のロック孔18とロックピン11とが前後方向に向かい合う関係となる位置まで落とし込まれる前の段階で行われるようになっている。したがって、上記切り換えられた状態で、可動部6Bが途中位置まで落とし込まれることにより、図17に示すように、ロックピン11が他のロック孔18内に附勢により嵌合して可動部6Bが途中位置にロックされるようになっている。
本実施例のロック構造10は、上記のようなキックカム19によるキック構造を備えていることにより、可動部6Bを跳ね上げるときにはその途中位置でロックされなくても、落とし込むときには途中位置でロックされる構成とされている。具体的には、上記キックカム19は、支軸19Aによって可動部6Bに回転可能に連結されており、可動部6Bとの間に掛着された引張バネ19Bにより、常時は支軸19Aを中心とした図示反時計回り方向に回転附勢された状態として、可動部6Bに設置された係止ピン19Cに当たって係止された状態とされている。上記キックカム19は、図10に示すように、解除レバー15が初期位置の状態とされている時には、可動部6Bが跳ね上げられたり落とし込まれたりしても、解除レバー15とは干渉せず、解除レバー15を押し回すことのない構成とされている。
しかし、上記キックカム19は、図11に示すように、解除レバー15が上記初期位置から図示時計回り方向に回されて、ロックピン11の細長い断面の長手方向が可動部6Bの半径方向に向けられた状態、すなわち、他のロック孔18と異なる向きとされた状態とされている時(以下、この位置を「解除保持位置」とする。)には、図12及び図16に示すように、可動部6Bが跳ね上げられたり落とし込まれたりすることで、解除レバー15に設けられたキックピン15Cと干渉するようになっている。
具体的には、図12に示すように、キックカム19は、可動部6Bが跳ね上げられる動作によって、その外周面上の一部に突出して形成された突起部19Dが、解除レバー15に設けられたキックピン15Cに当てられる。しかし、キックカム19は、上記の方向からキックピン15Cに当てられるときには、可動部6Bの跳ね上げに伴って、上記突起部19Dがキックピン15Cにより押し返される格好で支軸19Aを中心に図示時計回り方向に押し回される。したがって、可動部6Bの跳ね上げ時には、上記キックカム19の押し返される回転により、上記解除レバー15が同方向に押し回されることなく定位置に保たれて、可動部6Bが途中位置でロックされることなく図13に示す跳ね上げ位置まで跳ね上げられるようになっている。
これに対して、キックカム19は、図16に示すように、可動部6Bが跳ね上げ位置から落とし込まれる時には、先ず上記と同様に突起部19Dが解除レバー15のキックピン15Cに当てられるが、そこから可動部6Bが更に落とし込まれる動きによって、突起部19Dがキックピン15Cを押し蹴って解除レバー15を初期位置へと移動させるようになっている。すなわち、キックカム19は、上記方向に突起部19Dが解除レバー15のキックピン15Cに押し当てられる時には、係止ピン19Cによる支えによって図示反時計回り方向には押し返されることなく、キックピン15を押し動かすことができるようになっている。
したがって、上記の押し蹴られる力によって、解除レバー15が図17に示す初期位置まで押し回された状態となる。ここで、上記解除レバー15は、上記図16に示す解除保持位置からキックカム19によって押し蹴られることにより、図17に示す初期位置まで回されるように、図示しないカムスイッチ等の切り換え構造を介して固定部6Aに対して上記初期位置(図10及び図17参照)と解除保持位置(図11及び図16参照)との2つの位置でしか回転止めされないように附勢がかけられた状態に連結された状態とされている。
上記解除レバー15の初期位置への切り換えにより、ロックピン11がその細長い断面の長手方向を他のロック孔18と同じ回転方向に向けた状態となる。したがって、図17に示すように、可動部6Bが途中位置まで落とし込まれることにより、ロックピン11が他のロック孔18内に附勢により嵌まり込んで、可動部6Bが途中位置にてロックされることとなる。
以上、本発明の実施形態を2つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用シートの跳ね上げ機構は、自動車のリヤシート以外のシートや、鉄道車両等の自動車以外の車両や航空機・船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、上記跳ね上げ機構は、乗物用シートをフロアに対して跳ね上げ方向に回転させられるようにするものであればよく、乗物用シートを折り畳み状態にすることなく、例えばシートバックを後側にフラットに倒し込んだ状態にして側方などへ跳ね上げるものであってもよい。また、上記跳ね上げ機構による乗物用シートの跳ね上げ方向は、前後方向や隣り合うシートに向けた横方向などであってもよい。
また、上記各実施例では、本発明の「回転連結部」に相当する構成として、可動部を固定部に対して単軸まわりに回転させられるように連結する回転軸を例示した。しかし、回転連結部は、可動部を固定部に対して回転させられる状態に連結するものであればよく、例えば、可動部を固定部に対して4節リンク機構の形で回転させられるように連結するものであってもよい。また、ロックバネの形態は、トーションバネの他、種々の形状のバネを適用することが可能である。
また、ロック構造は、可動部の回転により可動部と固定部との間で互いに相対運動する関係となる二部材のうちの一方にロックピンが設けられ、他方にロック溝が設けられる構成となっていればよい。「可動部の回転により可動部と固定部との間で互いに相対運動する関係となる二部材」とは、回転軸が可動部に一体に設けられた構成となっている場合には、回転軸或いは可動部と、固定部と、が互いに相対運動する関係となる二部材となる。また、回転軸が固定部に一体に設けられた構成となる場合には、可動部と、回転軸或いは固定部と、が互いに相対運動する関係となる二部材となる。その他、回転連結部がリンク機構で構成される場合には、可動部と固定部とリンク機構との間で相対運動する関係となる二部材が、互いに相対運動する関係となる二部材となる。
また、ロック溝は、上記二部材のうちの他方に結合されたブラケット等の他部材に形成されていてもよい。また、ロックピンは、上記二部材のうちの一方に連結されたリンク等の別の動作部材に連結されて、上記動作部材の動作に伴ってロック溝内に嵌合される構成となっているものであってもよい。
また、ロックピンのロック溝に対する嵌合方向は、可動部の跳ね上げ回転の半径方向等の軸方向以外の方向に設定されていてもよい。また、実施例2で示した他のロック溝(ロック孔)は、可動部を回転途中の複数の位置でロックさせられるように複数の位置に設けられていてもよい。また、実施例2で示した、ロックピンを他のロック溝(ロック孔)に対して嵌合可能・不能に切り換えられるようにする切り換え構造は、両者を細長い断面形状にする以外にも、両者を正円以外の嵌合形状とすることでも得ることができる。また、ロック溝は、上記各実施例で示したような貫通孔でなくてもよく、凹状の溝であってもよい。