JP5862062B2 - モータ駆動ユニット - Google Patents
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Description
このインホイールモータユニットは、電動モータを内蔵し、軸受部を介し回転自在に支持して外部に突出するよう設けた出力軸を具え、これら電動モータおよび出力軸間を遊星歯車組式の減速機により駆動結合し、上記出力軸の突出端部に車輪を直結したものである。
ところで軸受部周りにおける出力軸の大きな傾斜は、レゾルバなどのロータ回転位置検出手段にも、芯ずれなどの悪影響を及ぼし、ロータ回転位置の検出精度を低下させる。
この場合、電動モータの駆動制御が不正確になったり、最悪の場合、電動モータを駆動制御することができなくなる。
先ず、本発明の前提となるモータ駆動ユニットを説明するに、これは、
電動モータを内蔵し、軸受部を介し回転自在に支持して外部に突出するよう設けた出力軸を具え、上記電動モータの回転を上記出力軸から取り出すようにしたものである。
まず上前記電動モータのロータを、ロータ回転軸線が、上記軸受部の周りにおける上記出力軸の傾斜に連動して傾斜するよう当該出力軸に連係させる。
そして、電動モータのロータおよびステータ間におけるエアギャップを、上記出力軸の傾斜が所定以上になる時ロータがステータに摩擦接触するよう設定し、
上記出力軸の所定以上の傾斜を上前記軸受部の機能不良に起因した出力軸の傾斜量に定めたものである。
また上記した出力軸最大傾斜角の制限は、電動モータの駆動制御に資するロータ回転位置を検出するためのロータ回転位置検出手段が出力軸の傾斜で大きく芯ずれされる事態も回避することができ、当該芯ずれに伴うロータ回転位置の検出精度の低下により、電動モータの駆動制御が不正確になったり、電動モータが駆動制御不能に陥るのを防止することができる。
この摩擦接触により発生した摩擦熱による温度上昇で、例えば電動モータの停止を含む出力低下を介して、上記軸受部の異常を知らしめることができると共に、この異常で出力軸が軸受部の周りに大きく傾斜しているのに電動モータが大きな出力を発し続ける弊害を回避することができる。
<第1実施例の構成>
図1は、インホイールモータユニットとして構成した本発明の第1実施例になるモータ駆動ユニットを示す縦断側面図である。
この図において、1は、インホイールモータユニットのケース本体、2は、該ケース本体1のリヤカバーで、これらケース本体1およびリヤカバー2により、インホイールモータユニットのユニットケース3を構成する。
電動モータ4は、ケース本体1の内周に嵌合して固設した円環状のステータ6と、かかる円環状ステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配したロータ7とで構成する。
サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し出力軸9寄りに軸線方向へずらせて同心配置した固定のリングギヤ12と、これらサンギヤ11およびリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン(段付きピニオン)13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14a,14bとにより構成する。
出力軸9は、減速歯車組5から反対方向(外方)に延在させて、ケース本体1の前端(図の右側)開口より突出させ、この突出箇所において出力軸9に後述のごとく車輪15を結合する。
この入出力軸間軸受嵌合部を成すベアリング16から軸線方向に離間した入力軸8および出力軸9の箇所をそれぞれ、ボールベアリングを可とするベアリング17および複列アンギュラベアリングを可とするベアリング18でユニットケース3に軸受する。
これらベアリング18、端蓋19、およびホイールハブ21で、ユニットケース3に対する出力軸9の軸受部が構成される。
このシールアダプタ22は、上記の端蓋19と共に、ケース本体1の前端開口を塞ぐよう該ケース本体1の前端に共締めして取着する。
この段付きプラネタリピニオン13は、大径ギヤ部13aが出力軸9から遠い側に位置し、小径ギヤ部13bが出力軸9に近い側に位置するよう向きに配置する。
キャリア14は一対1組のキャリア14a,14bを同軸に対向させて構成し、これらキャリア14a,14bは、減速歯車組5の出力回転メンバとして機能させ、入力軸8に近い出力軸9の内端に一体的に設ける。
このため、キャリア14a,14bおよび段付きプラネタリピニオン13は、出力軸9の内端から入力軸8側へ張り出して出力軸9に一体化されることとなる。
ホイールハブ21に同心に、ブレーキディスク20を一体結合して設け、これらホイールハブ21およびブレーキディスク20を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト23を植設する。
車輪15の取り付けに際しては、そのホイールディスクに穿ったボルト孔にホイールボルト23が貫通するよう当該ホイールディスクをブレーキディスク22の側面に密接させ、この状態でホイールボルト23にホイールナット24を緊締螺合することにより、出力軸9に対する車輪15の取り付けを行う。
電動モータ4のステータ6に通電すると、これからの電磁力で電動モータ4のロータ7が回転駆動される。
この際、ロータ7の回転位置をレゾルバ26等のロータ回転位置センサで検出し、これにより検出したロータ回転位置に基づき電動モータ4を同期下に駆動制御する。
ロータ7の回転駆動力は入力軸8を介して減速歯車組5のサンギヤ11に伝達される。
これによりサンギヤ11は、大径ギヤ部13aを介して段付きプラネタリピニオン13を回転させるが、このとき固定のリングギヤ12が反力受けとして機能するため、段付きプラネタリピニオン13は、小径ギヤ部13bがリングギヤ12に沿って転動するような遊星運動を行う。
かかる段付きプラネタリピニオン13の遊星運動はキャリア14(14a,14b)を介して出力軸9に伝達され、出力軸9を入力軸8と同方向に回転させる。
出力軸9への回転は、これに結合したホイールハブ21およびホイールボルト23を介して車輪15に伝達され、車両を走行させることができる。
なお車両の制動に際しては、ブレーキディスク20を軸線方向両側からブレーキパッド25で挟圧することにより車輪15を摩擦制動させて所期の目的を達成し得る。
上記した型式のインホイールモータユニットにおいては、入力軸8および出力軸9の同軸突き合わせ端部をベアリング16により相互に相対回転可能に軸受嵌合させ、
この入出力軸間軸受嵌合部(ベアリング16)から軸線方向に離間した入力軸8および出力軸9の箇所をそれぞれベアリング17,18によりユニットケース3に軸受するため、
ユニットケース3に対する出力軸9の軸受部(ベアリング18、端蓋19、およびホイールハブ21)が損傷したり、劣化などによりガタが大きくなって、出力軸9が軸受部(18,19,21)の周りに大きく傾斜するようになったとき、その影響が減速歯車組5や電動モータ4に及び、減速歯車組5のギヤが噛み合い不良を生じて、歯車が損傷されたり、歯面干渉が発生することにより、急減速されることがある。
ところで軸受部(18,19,21)周りにおける出力軸9の大きな傾斜は、レゾルバ26などのロータ回転位置検出センサにも、芯ずれなどの悪影響を及ぼし、ロータ回転位置の検出精度を低下させ、電動モータ4の駆動制御が不正確になり、最悪の場合、電動モータ4を駆動制御することができなくなる。
そのため、減速歯車組5を構成する歯車のうち、相互に噛合するサンギヤ11およびピニオン大径ギヤ部13a間の軸間距離、並びに、相互に噛合するリングギヤ12およびピニオン小径ギヤ部13b間の軸間距離は、それぞれ正規の軸間距離を保つ。
例えば図2のA部におけるサンギヤ11とピニオン大径ギヤ部13aとの噛合箇所につき代表的に説明すると、図4に同符号Aを付して示すごとく、サンギヤ11とピニオン大径ギヤ部13aとが偏心により噛み合い不良を生じて、歯車が損傷されたり、歯面干渉が発生することにより、車輪15を急減速されることとなる。
本実施例は、上記した軸受部(18)の異常時もその周りにおける出力軸9の傾斜が、上記の問題を生ずるほど大きくなることのないよう制限し得るようになし、併せて、軸受部(18)の異常に伴う出力軸9の傾斜時は、電動モータ4を出力低下させたり、停止させて、当該異常を警報し得るよう、モータ駆動ユニットを以下のごとくに改良したものである。
そして、図3に示すごとく、ユニットケース3に対する出力軸9の軸受部(18)が損傷しておらず、且つ、劣化などによる大きなガタを有していない正常時に、電動モータ4のステータ6およびロータ7間のラジアルギャップCを以下のようなものであるように設定する。
而して図4につき上述した異常時は、軸受部(18)の周りにおける出力軸9の大きな傾斜に連動してロータ回転軸線(入力軸8)が大きく傾斜し、図4のA部に例示するごとく減速歯車組5のギヤが(サンギヤ11とピニオン大径ギヤ部13aとが)相互に干渉するよりも前に、つまり図4に示すよりも小さな出力軸9およびロータ回転軸線(入力軸8)の傾斜角で、ロータ7が図5のB部に示すごとくステータ6の内周に摩擦接触するようラジアルギャップCを設定し、
出力軸9およびロータ回転軸線(入力軸8)の最大傾斜角を、図4に示すよりも小さな、図5に示すごときものに制限する。
これにより出力軸9の傾斜角θは最大値を、ラジアルギャップCが0となるときの図5に示す出力軸傾斜角に制限される。
同時に電動モータ4の駆動中は、ロータ7がステータ6の内周に摩擦接触して摩擦熱を発生し、電動モータ4(モータ駆動ユニット内)を温度上昇させる。
軸受部(18)が損傷したり、劣化などによる大きなガタを持つこととなった異常時は、ロータ7がステータ6の内周に摩擦接触して摩擦熱によりステータ6(電動モータ4、モータ駆動ユニット内)を温度上昇させるため、ステータ温度Tempが摩擦熱による温度上昇分だけ嵩上げされて、図7に破線で示すごとくに時系列変化する。
しかも不可逆減磁域では、モータ温度(ステータ温度)Tempの上昇につれ電動モータ4が最大出力を図8に示すように低下された後は、温度低下によっても電動モータ4の最大出力が元に戻ることはない。
従って、モータ温度(ステータ温度)Tempが一旦Temp=170℃〜180℃まで上昇すると、電動モータ4はその後まったくモータ出力を発生し得なくなる。
上記した第1実施例によれば、軸受部(18)の異常でその周りにおける出力軸9の傾斜角θが所定値(θ1)以上になる時、電動モータ4のロータ7がステータ6の内周に摩擦接触するよう構成したため、
出力軸9の最大傾斜角を図5に示すごとく、減速歯車組5のギヤが(サンギヤ11とピニオン大径ギヤ部13aとが)相互に干渉する(図4参照)ことのない傾斜角に制限することとができる。
ロータ回転位置の検出精度を軸受部(18)の異常時も本来のままに維持することができ、ロータ回転位置の検出不正により、電動モータ4の同期駆動制御が不正確になったり、電動モータ4が駆動制御不能に陥るのを防止することができる。
軸受部(18)の異常時は、ロータ7およびステータ6の接触部からの摩擦熱によるステータ6の温度上昇(Temp≧150℃〜160℃)で、電動モータ4が不可逆減磁域に入って、出力を自動的に低下されたり、0にされることとなる。
なお、上記した第1実施例に以下の構成を追加した第2実施例のような構成にしてもよい。
この第2実施例では、上記第1実施例に、電動モータ4(詳しくはステータ6)の温度Tempを検出する図示せざる温度センサを、温度上昇検出手段として設け、
これにより検出したモータ温度(ステータ温度)Tempに基づき、図9に例示する温度領域マップを用いて、軸受部(18)の前記した異常時に以下のように電動モータ4を出力低下制御する。
軸受部(18)が正常である場合、モータ温度(ステータ温度)Tempは主にモータ出力に応じて変化し、モータ出力の大きさに比例して上昇する。
この異常時温度域は、出力軸9が軸受部(18)の異常でその周りに正常時よりも大きく傾斜する過程で、ロータ7が図5のごとくステータ6の内周に摩擦接触し、この時の摩擦熱によって上昇されるモータ温度(ステータ温度)Tempの温度域である。
かかる第2実施例の構成によれば、第1実施例の効果に加えて、以下の効果をも奏し得る。
つまり、図9に示す異常時温度域の下限設定温度を、図8の不可逆減磁域よりも低い温度(可逆減磁域の温度)としたことにより、
第1実施例において説明した電動モータ4自身の減磁による出力低下よりも先に、電動モータ4を出力低下させたり、電動モータ4の出力を0にして、運転者に早期に異常を知らせることができる上に、リンプホーム可能なモータ出力を確保して、修理工場までの自走を可能にすることができる。
なお第2実施例では、第1実施例につき前述したと同様な電動モータ4自身の減磁による出力低下と、検出したモータ温度(ステータ温度)Tempに基づく電動モータ4の出力低下制御とを併用するようにしたが、後者のモータ出力低下制御を、減磁によるモータ出力低下とは別に、単独で用いてもよいのは言うまでもない。
電動モータが、ロータおよびステータを相互に軸線方向に並べて具え、これらロータおよびステータ間のエアギャップとしてアキシャルギャップを有したものである場合も、本発明の前記した着想はそのまま適用可能であり、同様な作用効果を奏し得ること勿論である。
モータ駆動ユニット内における潤滑オイルの温度がモータ温度(ステータ温度)Tempに近似することから、モータ温度(ステータ温度)Tempの代わりに、モータ駆動ユニット内の油温を検出して、検出油温が異常時温度域の高温であるとき、電動モータ4の前記した出力低下制御を行うようにしてもよい。
いずれにしても、これら検出温度に基づき電動モータ4の出力低下制御を行う場合は、このとき別に設けた警報手段も作動させて、軸受部(18)の異常を運転者に一層確実に且つ速やかに知らせるようにするのがよい。
2 リヤカバー
3 ユニットケース
4 電動モータ
5 減速歯車組
6 ステータ
7 ロータ
8 入力軸
9 出力軸
11 サンギヤ
12 リングギヤ
13 段付きプラネタリピニオン
14 キャリア
15 車輪
16 ローラベアリング
17 ボールベアリング
18 複列アンギュラベアリング(軸受部)
19 端蓋(軸受部)
20 ブレーキディスク
21 ホイールハブ(軸受部)
23 ホイールボルト
24 ホイールナット
25 ブレーキパッド
26 レゾルバ(ロータ回転位置検出センサ)
Claims (9)
- 電動モータを内蔵し、軸受部を介し回転自在に支持して外部に突出するよう設けた出力軸を具え、前記電動モータの回転を前記出力軸から取り出すようにしたモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータのロータを、ロータ回転軸線が、前記軸受部の周りにおける前記出力軸の傾斜に連動して傾斜するよう該出力軸に連係させ、
前記電動モータのロータおよびステータ間におけるエアギャップを、前記出力軸の傾斜が所定以上になる時、ロータがステータに摩擦接触するよう設定し、
前記出力軸の所定以上の傾斜を、前記軸受部の機能不良に起因した出力軸の傾斜量に定めたことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項1に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータは、ロータおよびステータを相互に径方向内外または径方向外内に配して具え、これらロータおよびステータ間のエアギャップとしてラジアルギャップを有したものであることを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項1に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータは、ロータおよびステータを相互に軸線方向に並べて具え、これらロータおよびステータ間のエアギャップとしてアキシャルギャップを有したものであることを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータのロータがステータに摩擦接触することで発生した摩擦熱による温度上昇に応答して前記電動モータの出力を低下させるよう構成したことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項4に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記摩擦熱により前記電動モータが不可逆減磁温度域に温度上昇することで前記電動モータの出力低下を生起させるよう構成したことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項4または5に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記摩擦熱による温度上昇を検出する温度上昇検出手段を設け、
該手段により検出した温度上昇に応じ前記電動モータを出力低下制御するよう構成したことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項6に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記温度上昇検出手段は、前記電動モータの温度を検出するものであり、
該手段により検出した電動モータの温度が、電動モータの出力ごとに設定した設定モータ温度以上であるとき、前記電動モータの出力低下制御を行うよう構成したことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項6または7に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記温度上昇検出手段は、前記モータ駆動ユニット内の潤滑油温を検出するものであり、
該手段により検出した潤滑油温が、電動モータの出力ごとに設定した設定油温以上であるとき、前記電動モータの出力低下制御を行うよう構成したことを特徴とするモータ駆動ユニット。 - 請求項6〜8のいずれか1項に記載のモータ駆動ユニットにおいて、
前記電動モータの出力低下制御中であるのを警報する警報手段を設けたことを特徴とするモータ駆動ユニット。
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