JP5861788B2 - 抗アレルゲン性を有する化粧シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗アレルゲン性を有する化粧シートの製造方法に関する。
近年、建築物の床材、壁材などの内外装用建材には、アレルギー疾患の原因となる、ダニや花粉などのアレルゲンを除去ないし不活性化するような抗アレルゲン性のような機能性を持つことが求められている。このような抗アレルゲン性が付与された建材としては、ジルコニウム塩からなる抗アレルゲン剤を、木材の素材、合板などの木質素材などの表面に塗工した建築材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような建築材料では、抗アレルゲン剤を単に塗工処理したものであることから、剥離しやすく、耐久性が乏しいものであった。そこで、このような問題を解消するため、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子の抗アレルゲン剤を光重合性オリゴマーなどと混合した光硬化性樹脂組成物を木質系基材に塗布し、光硬化させた床材が開発されている(例えば、特許文献2参照)。また、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物を含有する硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有する床材が開発されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
特許文献2〜4で用いられる抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有するフェノール系高分子樹脂であり、抗アレルゲン性に優れるため注目されている。しかし、抗アレルゲン機能に対する要求は年々厳しくなっており、抗アレルゲン性を向上させるために、抗アレルゲン剤の配合量が多くなると、黄変するため外観不良となる、あるいは抗アレルゲン剤を含む樹脂層の耐候性や耐汚染性が低下し、長期にわたる抗アレルゲン性を発揮できないという問題があった。
特開2001−212806号公報 特開2008−239721号公報 特開2010−173115号公報 特開2010−174075号公報
本発明は、高い抗アレルゲン性を有し、かつ耐候性や耐汚染性に優れた耐久性のある化粧シート及びこれを用いた化粧板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねたところ、フェノール性水酸基を有するフェノール系高分子樹脂を抗アレルゲン剤として用い、該抗アレルゲン剤を含有し抗アレルゲン機能を有する電離放射線硬化樹脂層と、プライマー層として従来から慣用される2液硬化型ウレタン樹脂とを併用する際に、抗アレルゲン性の低下が顕著であることを見出し、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。本発明の要旨は、下記の工程を順に有する、基材シート、プライマー層、及び抗アレルゲン機能層を順に積層してなる抗アレルゲン性を有する化粧シートの製造方法である。
工程(1)基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程
工程(2)該プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の赤外線分光分析法のATRスペクトルにおける2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピーク強度と2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピーク強度とのピーク強度比を1.5〜35の範囲に調整する工程
工程(3)該プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布面上に、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程
本発明の製造方法によれば、高い抗アレルゲン性を有し、かつ耐候性や耐汚染性に優れた耐久性のある化粧シート及びこれを用いた化粧板を得ることができる。
本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧板の断面を示す模式図である。 実施例1のプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の、該組成物の塗布直後、及びピーク強度比調整後の赤外線分光分析法のATRスペクトルを示すグラフである。
[抗アレルゲン性を有する化粧シートの製造方法]
本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートの製造方法は、工程(1)基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程、工程(2)該プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の赤外線分光分析法のATRスペクトルにおける2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピーク強度と2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピーク強度とのピーク強度比を1.5〜35の範囲に調整する工程、及び工程(3)該プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布面上に、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程を順に有することを特徴とする。
≪工程(1)≫
工程(1)は、基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。
<基材シート>
本発明の製造方法で用いられる基材シートとしては、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが好ましく挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂のほか、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましく挙げられる。本発明の製造方法で得られる化粧シートを用いて床材を作製する場合には、これらの基材シートのうち、コスト及びシート柔軟性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましく、耐傷つき性といったシートとしての強度が求められる場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、求められる用途に応じて使い分けられる。
また、基材シートとしては、二つ以上の樹脂シートを積層して得られる複層構成のシートを用いることもできる。この場合、二つ以上の樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよい。上記したなかでもポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、二層構成の場合、その樹脂の組合せとしては、ポリエチレン−ポリエチレン、ポリエチレン−ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン−ポリプロピレンの組合せが好ましい。
複層構成のシートは、例えば二層構成の場合は、一方の基材シートの表面にコロナ放電処理などを施して易接着層を設け、該基材シートにベタ層及び/又は絵柄層からなる印刷層を形成し、ついで必要に応じて接着剤層を設けた後に、他方の基材シートを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得られる。これらの基材シートは、着色されたものでも、無着色のものでもよく、意匠性を向上させる観点から、いずれか一方が着色されたものであることが好ましい。
基材シートの厚さは20〜300μmが加工性、柔軟性、強度の点で通常適用され、50〜200μm程度がより好ましい。基材シートが複層構成のシートの場合、各層を構成する基材シートの厚さの合計が上記範囲内であることが好ましい。この場合、各層を構成する基材シート単独での厚さは、好ましくは20〜150μmであり、より好ましくは40〜100μmであり、これらの基材シートの厚さは同じでも異なっていてもよい。
基材シートは、上記したように、その表面がコロナ放電処理やプラズマ処理などのいわゆる易接着性処理がなされたものであってもよく、基材シートにアンカー層などの易接着層が設けられたものであってもよい。
また、本発明の製造方法で製造した化粧シートを木質基板に貼り付けて化粧板とする際の、化粧シートと木質基板との接着性向上のため、基材シートの木質基板との接着面に、厚さ1〜5μm程度のプライマー層(裏面プライマー層)を設けてもよい。プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。なお、裏面プライマー層に用いられる材料は被着材によって、適宜選択される。
<プライマー層用2液硬化型樹脂組成物>
本発明の製造方法で用いられるプライマー層用2液硬化型樹脂組成物は、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むものである。
(主剤)
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物に含まれる主剤としては、イソシアネート系硬化剤の存在により硬化するものであれば特に制限はない。主剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基を有するモノマーとの付加重合によって得られるアクリルポリオールや、公知のジオール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸、これらの酸エステルなどから選ばれる少なくとも一種との重縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、あるいは、前記のジオール類とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどとの付加重合によって得られるポリエーテルポリオールなど、官能基として水酸基を有するポリオールが好ましく挙げられる。これらは単独又は複数種を混合して使用できる。なかでも、アクリルポリオールが、プライマー層と抗アレルゲン機能層との層間密着性の観点から、特に好適である。
(イソシアネート系硬化剤)
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)=ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(ないしは脂環式)ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物が好ましく挙げられる。
また、上記のポリイソシアネート化合物のアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、弾性変性ポリイソシアネートなどのいわゆる変性ポリイソシアネートも、硬化剤として使用できる。
ここで、アダクト変性体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物と、前記各種のポリイソシアネート化合物との反応物である。
また、弾性変性ポリイソシアネートとは、前記のポリイソシアネート化合物をモノマーとして用い、これに弾性を有する活性水素含有化合物をウレタン反応させることで、NCO末端のプレポリマーとしたものである。
ポリイソシアネート化合物を弾性変性するために用いられる弾性を有する活性水素含有化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオールなどが挙げられる。
本発明においては、上記イソシアネート系硬化剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、主剤とイソシアネート系硬化剤との使用割合は、通常質量比で100:1〜100:15の範囲で選定され、好ましくは100:2〜100:10の範囲であり、より好ましくは100:2〜100:8の範囲である。主剤とイソシアネート系硬化剤との質量比が上記範囲内であると、ピーク強度比を調整しやすく、安定して高い抗アレルゲン性を有し、かつ耐候性や耐汚染性に優れた耐久性のある化粧シートが得られる。
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、フローコーター、吹きつけ法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻取り法、流し法、盛り付け法、パッチング法などの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行うことができる。該樹脂組成物の塗膜厚さは、通常0.5〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μmである。
≪工程(2)≫
工程(2)は、上記工程(1)で塗布したプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の赤外線分光分析法のATRスペクトルにおける2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピーク強度と2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピーク強度とのピーク強度比を1.5〜35の範囲に調整する工程である。本発明におけるピーク強度は、赤外線分光分析法のATRスペクトルにおけるピーク強度であり、積算回数32回、分解能4cm−1として測定したものである。
2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピークは、主剤に起因するものである(以降、2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピークを単に「主剤ピーク」と称することがある。)。また、2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピークは、イソシアネート系硬化剤に起因するものである(以降、2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピークを単に「硬化剤ピーク」と称することがある。)。図4は、実施例1におけるプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の該組成物の塗布直後及びピーク強度比調整後の赤外線分光分析法のATRスペクトルを示すものである。図4に示されるように、主剤ピーク及び硬化剤ピーク、さらにはピーク強度比調整後の硬化剤ピークの強度が主剤ピークの強度と比べて著しく小さくなっていることを確認することができる。すなわち、本発明の製造方法においては、塗布されたプライマー層用2液硬化型樹脂組成物中の未反応のイソシアネート硬化剤を一定範囲内まで減じることを要すると言い換えることができる。本発明においては、未反応のイソシアネート硬化剤を一定範囲内に減じることで、該未反応のイソシアネート硬化剤と抗アレルゲン剤が有するフェノール系水酸基との反応による抗アレルゲン性能の低下を抑制することが可能となる。このような観点から、ピーク強度比は、1.5〜35の範囲とすることが好ましい。
本発明において、ピーク強度比を所定の範囲内とする方法としては、好ましくは所定の温度条件下で放置する、すなわち養生することが挙げられる。この方法は、安定してピーク強度比を調整することができ、またコスト的にも優位である。
養生する際の温度条件は、ピーク強度比の調整の容易さ、及び養生時間の長短に影響するが、双方のバランスを考慮すると、通常常温〜80℃程度であり、好ましくは40〜60℃である。
また、養生時間は、温度条件によるが、通常20時間〜100日間程度であり、好ましくは40時間〜40日、より好ましくは40時間〜30日である。養生する期間を短くするには、上記温度条件のうち高い温度域、例えば60〜80℃程度で行えばよく、その一方でピーク強度比が大きくなって所定の範囲外とならないように留意する必要が生じる。また、ピーク強度比を安定して、かつ容易に所定範囲内とするには、上記温度条件のうち低い温度域、例えば常温〜40℃程度で行えばよく、その一方でピーク強度比を所定の範囲内とするには通常50日以上程度、好ましくは50〜125日程度、より好ましくは50〜80日という長い養生期間を要することになる。本発明においては、化粧シートを作製する状況に応じて、養生の条件を適宜選択すればよい。
また、主剤と硬化剤との反応をさらに進行・促進させる目的で、例えば後述する工程(3)の抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布及び硬化の後に、加熱乾燥などを好ましく行うことができる。
≪工程(3)≫
工程(3)は、上記工程(2)で塗布したプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗膜面上に、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程であり、本工程により抗アレルゲン機能層が形成される。該抗アレルゲン機能層は、化粧シートに抗アレルゲン性を付与し、かつ耐候性や耐汚染性に優れた耐久性を付与する層である。
<抗アレルゲン機能層用樹脂組成物(硬化性樹脂)>
本発明で用いられる硬化性樹脂は、熱あるいは電離放射線の照射により架橋、硬化する樹脂であれば特に制限はない。本発明においては、電離放射線の照射により架橋、硬化する樹脂、すなわち電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含むものである。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、汎用の2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール硬化物)などが好ましく挙げられる。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂は、慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレート系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などのオリゴマーが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
重合性オリゴマーとしては、上記したなかでもウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ラジカル重合性不飽和基を有するものである。本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、このラジカル重合性不飽和基を好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8を有する、すなわち好ましくは2〜10官能、より好ましくは2〜8官能のものである。官能基数が上記範囲内であると、優れた耐候性、耐汚染性が得られると同時に、Vカットをはじめとする各種加工に対応できる優れた加工性が得られ、また優れた抗アレルゲン性も得られる。
このウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)は、600〜5000程度のものが好ましく、より好ましくは600〜3000であり、さらに好ましくは600〜2200である。このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを後述する抗アレルゲン剤とともに用いることにより、抗アレルゲン性とともに耐候性、耐汚染性に優れたものが得られる。また、電離放射線硬化性樹脂組成物が適度なチクソ性を有するので、抗アレルゲン機能層の形成が容易となる。
本発明においては、上記した多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性若しくは多官能性ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<抗アレルゲン機能層用樹脂組成物(抗アレルゲン剤)>
本発明で用いられる抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有するもの、すなわちフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子のものであり、該フェノール性水酸基が、アレルゲン性の物質を吸着するとともに不活性化するように機能するものであれば特に制限されない。このような抗アレルゲン剤としては、分子内に複数のフェノール性水酸基、すなわちベンゼン環やナフタレン環などの芳香環に結合した水酸基を有する有機化合物であるポリフェノール化合物で構成されるもの、例えば、ポリ(4−ビニルフェノール)やポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)などのポリフェノール系の高分子が好ましく挙げられる。市販の抗アレルゲン剤としては、「マルカリンカー S‐2P(商品名)」(丸善石油化学株式会社)などを使用することができ、この抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
また、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものも好ましく挙げられる。このような態様において用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、エピカテキン、ガロタンニン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのカテキンと称される低分子量ポリフェノールや高分子量のタンニン酸などが、優れた抗アレルゲン性を有するとともに、工業的に容易にかつ安価に入手できる観点から好ましく挙げられる。ポリフェノール化合物は、上記したものを単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、タンニン酸が抗アレルゲン性の観点から好ましい。
無機固体酸は、無機物質であって、その表面に水素イオンを放出し、酸性を発現する酸点あるいは活性点を有するものである。例えば、H置換Y型ゼオライト、H置換ZSM−5型ゼオライトなどのゼオライト類、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、リン酸スズ、リン酸セリウム、リン酸チタニウムなどのリン酸化合物類、アンチモン酸のほか、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、チタニアアルミナ、チタニアジルコニアなどの複合酸化物などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、耐熱性に優れ、高い固体酸性を有する観点から、ゼオライト類、複合酸化物が好ましく、特に酸強度が強いリン酸ジルコニウムが好ましく、結晶系が層状構造を有する層状リン酸ジルコニウムが好ましい。
無機固体酸の形状は、粉末状、塊状、板状及び繊維状などが挙げられるが、取り扱いの点から粉末状であることが好ましい。粉末状の場合、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、0.02〜20μmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、取り扱いが容易であり、優れた抗アレルゲン性を得る観点からも好ましい。
本発明において、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものを抗アレルゲン剤として用いる場合、ポリフェノール化合物と無機固体酸との重量比率は、10:90〜95:5が好ましく、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは20:80〜40:60である。重量比率が上記範囲内であると、ポリフェノール化合物と無機固体酸との相乗効果により、とりわけ優れた抗アレルゲン性が得られる。このような抗アレルゲン剤は、市販品として入手も可能であり、例えば、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせた「アレリムーブ(商品名)」(東亞合成株式会社製)などが市販品として挙げられる。
抗アレルゲン剤の配合量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、3〜30質量部であり、好ましくは3〜25質量部であり、より好ましくは8〜15質量部である。本発明では、このような少ない配合量であっても、上記の2〜10官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと組み合わせることにより、優れた抗アレルゲン性が得られるとともに、優れた耐候性や耐汚染性も得られる。
<添加剤(抗アレルゲン機能層用樹脂組成物)>
また、電離放射線硬化性樹脂組成物には、本発明の化粧シートを適用するものに対して要求される特性を満たすために、さらに、紫外線吸収剤、光安定化剤、抗菌剤、耐摩耗剤、及び艶消し剤、あるいは沈降防止剤などの添加剤を含有させることができる。
紫外線吸収剤(UVA)は有害な紫外線を吸収し、本発明の化粧シートの長期耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化するものである。
本発明で用いることができる紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。また、ブリードアウトを抑制するために、必要に応じて電離放射線反応型紫外線吸収剤を用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
また、本発明で用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤であることが好ましく、電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
このような光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
また、電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤は、電離放射線硬化性樹脂として採用される2〜10官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレートなどがあげられる。
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、抗菌性を付与するために、抗菌剤を配合することができる。このような抗菌剤としては担体が無機化合物であり、当該担体に銀イオン又は銀イオンの他に銅イオン、亜鉛イオンを併用した少なくとも銀イオンを担持させたものである。無機化合物は任意のものが使用できる。例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル等の無機系吸着剤、ゼオライト、水酸化アパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイド等の無機イオン交換体等が挙げられる。これらの無機化合物は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、硬化型樹脂層表面の硬度を高め、耐傷性を向上するために、耐摩耗剤を配合することができる。このような耐摩耗剤としては、無機系と有機系の充填剤があり、無機物では、例えば、α−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。
また、有機物の充填剤では、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜100%程度とすることが透明性保持の観点から好ましい。配合量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して1〜20重量部程度の割合であることが好ましい。
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、硬化型樹脂層表面の艶消しのため、いわゆる艶消し剤(マット剤)を配合することができる。このような艶消し剤としては、種々のものが用いられ、無機質微粉末、有機フィラーなどを用いることができる。無機質微粉末としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、ケイ酸微粉末等が使用でき、有機フィラーとして、アクリル、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、尿素系樹脂などからなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラーなどが挙げられる。
艶消し剤の配合量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、4〜30質量部であり、10〜20質量部であることがより好ましい。
また、本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
なお、電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することができる。
<抗アレルゲン機能層の形成>
本発明において、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布は、硬化して形成するアレルゲン機能層の厚さが通常5〜30μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、フローコーター、吹きつけ法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻取り法、流し法、盛り付け法、パッチング法などの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、耐汚染性、耐傷性の観点から、好ましくは10〜20μmである。なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗布後に、熱風乾燥機などにより塗布膜を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
上記の抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電離放射線などを照射して架橋硬化することで、抗アレルゲン機能層が形成される。ここで、硬化に電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化型樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
[抗アレルゲン性を有する化粧シート]
本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートは、本発明の製造方法により製造されるものであり、基材シート、プライマー層及び抗アレルゲン機能層を順に有するものである。
図1及び2は、本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートの態様の一例を示す模式図である。図1に示される化粧シート10は、基材シート1の上に、プライマー層4及び抗アレルゲン機能層5を順に有している。また、図2に示される化粧シート10は、基材シート1が複層構成を有する態様であり、一方の基材シートの上に、順に印刷層2、接着剤層3が積層されており、他方の基材シートを介して、プライマー層4、及び抗アレルゲン機能層5を順に有している。ここで、基材シート1、プライマー層4及び抗アレルゲン機能層5については、上記した通りである。
≪印刷層≫
また、本発明の化粧シートは、化粧シートの意匠性を向上させる目的で、所望により印刷層2を有することができる。印刷層2は、通常基材シート1とプライマー層4との間に設けられる。また、基材シート1が上記した複層構成をとる場合、印刷層2は、通常基材シート間に設けられる。
印刷層2は、絵柄層及び/又はベタ層により構成され、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層の模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。また、ベタ層は、全面にわたって被覆する一様均一な着色を施した層であり、意匠性を向上させる効果のほか、基材あるいは化粧シートを貼り合わせる基板を隠蔽する効果も有する。意匠性の向上の観点からは、絵柄層とベタ層とを設けることが好ましい。
印刷方法としては、通常の、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などの輪転印刷、枚葉印刷のいずれをも適用できる。
また、絵柄層2の印刷に用いるインキとしては、特に制限はなく、バインダーに、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、酸化チタン、紺青、カーボンブラック、紅柄などの無機顔料やジスアゾ系顔料、イソインドリノン、ポリアゾ系顔料、キナクリドン、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、アルミニウム粉、銅粉、金属蒸着合成樹脂フィルムの微細断裁片、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔などのパール状光沢をもつ顔料などを混合したものが用いられる。
≪接着剤層3≫
接着剤層3は、上記したように基材シートが複層構成をとる場合、二つ以上の基材シートをラミネートする際に、必要に応じて設けられる層である。接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、アクリル/ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、セルロース系などが好ましく挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
≪エンボス模様≫
本発明の化粧シートは、床材や壁材などへの適用、あるいは意匠性を考慮すると、化粧シート表面に、エンボス加工によるエンボス模様(図示せず)を施すこともできる。エンボス加工は、抗アレルゲン機能層面から、エンボス板で加熱加圧することのほか、種々の方法により形成することができる。エンボス模様の形状としては、制限はないが、本発明の化粧シートが適用される建材の特性に応じて形成される。
(セパレータ)
本発明の化粧シートは、基材シートの裏面(抗アレルゲン機能層を設ける面の反対側面)に、粘着剤を介してセパレータを設けることもできる。こうした構成とすることにより、セパレータを剥がして露出した面を被貼着物に貼着することができる。
このようにして得られた化粧シートは、例えば、床材、壁材などの内装材に貼り付けて用いることができ、抗アレルゲン性に優れ、優れた耐候性と耐汚染性とを有した内装材ないし外装材を得ることができる。
[化粧板]
本発明の化粧板は、上記の本発明の化粧シートを木質基板に貼り付けてなるものである。図3は、本発明の化粧板の好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の化粧板12は、化粧シート10と木質系基板11とを接着剤を用いて貼り付けて積層したものである。
木質基板としては、木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピーなどの各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木質材などが挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
また、化粧シートと木質基板とを貼り付けるために用いる接着剤としては、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。
接着剤は、スプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布すればよい。この接着剤は、一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/mの範囲で基板表面に塗布される。
化粧シートの基板上への貼着は、通常、鏡面化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか、基板の上に接着剤を塗布し、鏡面化粧シートを貼着する等の方法による。貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
このようにして得られた本発明の化粧板は、任意切断して、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、床材、壁材などに好適に用いられる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)抗アレルゲン性
各実施例及び比較例で作製された化粧シートについて、ダニアレルゲン(「Derf2(商品名)」,和光純薬工業株式会社製)の水溶液を化粧シート上に400μl滴下して、24時間放置した後、該化粧シート上のダニアレルゲンを回収し、ダニアレルゲンの量を酵素免疫測定法(ELISA法)に準じて下記の基準で抗アレルゲン性を評価した。
○ :抗アレルゲン性が認められるもの
× :抗アレルゲン性が認められないもの
(2)層間密着性
各実施例及び比較例で作製された化粧シートについて、JIS K5400に準拠して、テープ剥離試験を100回実施して、試験後の化粧シート表面の変化について、以下の基準で評価した。
○ :剥離が全く認められなかった
△ :面積比として1/100〜5/100の剥離が認められた
× :面積比として6/100以上の剥離が認められた
(3)耐候性
各実施例及び比較例で作製された化粧シートについて、超促進耐候性試験機(「アイスーパーUVテスター(商品名)」,岩崎電気株式会社製)を用いて、20時間のUV照射及び4時間の噴水による耐候性試験を実施した後の、化粧シート表面の変化について、以下の基準で評価した。
○ :化粧シートの表面が変化しなかった
△ :化粧シートの表面が若干黄変したものの、実用上問題なかった
× :化粧シートの表面が著しく黄変した
(4)耐汚染性
JIS−K−6902に準拠し、各実施例及び比較例で作製された化粧シート表面に、事務用インキ、ブルーブラックを滴下した後、24時間後に水ふきした際の表面変化について、以下の基準にて評価した。
○ :表面の変化が生じないもの
△ :表面が若干汚染されているものの、外観を損なう程度ではないもの
× :表面が著しく汚染されているもの
(5)Vカット適正(シート柔軟性に関する項目)
各実施例および比較例で作製された化粧シートの基材シート側を、接着剤を用いて厚さ10mmのMDFに接着して積層した後、化粧シート側とは反対側に、MDFと接着剤層との界面まで達する断面V字型の溝を切削し、溝を閉じるようにして合板をL字型(断面)に折り曲げて試験し、目視にて加工部を観察し、以下の基準にて評価した。なお、加工時の温度は常温で行った。
○ :シート加工部にクラックが発生しないもの
△ :シート加工部に微小なクラックが発生するが、外観上問題のないもの
× :シート加工部にクラックが発生し、シートの白化等の外観上の明確な変化が観察されるもの
実施例1
基材シートとして、ポリオレフィン系樹脂シート(60μm透明ポリプロピレンに対し、80μmの厚みで着色ポリエチレンを押し出して形成)を用い、該基材シート上に、主剤として「EBRプライマー(商品名)」(アクリル/ウレタン共重合体,DICグラフィックス株式会社製)100質量部にイソシアネート系硬化剤として「FG−700(商品名)」(ヘキサメチレンジイソシアネート,DICグラフィックス株式会社製)5質量部添加したプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を、1.5g/mの塗布量で塗布した。これを常温(23℃)で75日間放置(養生)した後、FT−IR(「Nicolet Nexas 470(型番)」,Thermo Fisher Scientific社製)を用い、所定の測定条件(積算回数:32回,分解能:4cm−1)で赤外線分光分析法のATRスペクトルを測定し、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピーク強度と2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピーク強度とのピーク強度比が30であることを確認した。その後、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布面上に、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1000)100質量部に、ポリフェノール化合物がジルコニウム化合物に担持された抗アレルゲン剤(「アレリムーブ(商品名)」,東亞合成株式会社製,以降「ハイブリッドタイプ」と称する。)5質量部及び艶消し剤(不定形シリカ,粒径:5μm)16質量部を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布量15g/mで塗布した。次いで、加速電圧165kV、照射量50kG(5Mrad)の電子線を照射し、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を硬化させて、抗アレルゲン機能を有する化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。また、一例として実施例1の赤外線分光分析法のATRスペクトルを図4に示す。
実施例2〜46,比較例1〜33
実施例1において、ピーク強度比、硬化剤添加量、硬化性樹脂の種類、ならびに抗アレルゲン剤の種類及び添加量を第1表に示される通りとした以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表〜第9表に示した。
*1,「−」:養生を行わなかった
*2,単官能ウレタン系オリゴマー:単官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:1,重量平均分子量:800)
*3,10官能ウレタン系オリゴマー:単官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:10,重量平均分子量:1800)
*4,12官能ウレタン系オリゴマー:単官能ウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数:12,重量平均分子量:2000)
*5,ポリフェノール化合物「マルカリンカー S‐2P(商品名)」,丸善石油化学株式会社製
1.基材シート
2.印刷層
3.接着剤層
4.プライマー層
5.抗アレルゲン機能層
10.化粧シート
11.木質系基板
12.化粧板

Claims (10)

  1. 基材シート、プライマー層、及び抗アレルゲン機能層を順に有する抗アレルゲン性を有する化粧シートであって、該プライマー層が、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を用いてなる、赤外線分光分析法のATRスペクトルにおける2800〜3000cm−1で検出されるC−H伸縮振動によるピーク強度と2200〜2400cm−1で検出されるN=C=O伸縮振動によるピーク強度とのピーク強度比が1.5〜35の範囲である層であり、該抗アレルゲン機能層が、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の硬化物である化粧シート。
  2. 主剤がアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくも一種であり、イソシアネート系硬化剤が芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の化粧シート。
  3. 主剤とイソシアネート系硬化剤との使用割合が、100:1〜100:15である請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 硬化性樹脂が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 電離放射線硬化性樹脂が、官能基数2〜10のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである請求項4に記載の化粧シート。
  6. 抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物で構成されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 該ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種であり、かつ無機固体酸に担持されている請求項6に記載の化粧シート。
  8. 抗アレルゲン機能層用樹脂組成物中の抗アレルゲン剤の含有量が、硬化性樹脂100質量部に対して1〜30質量部である請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
  9. 基材シートが、ポリオレフィン樹脂シートである請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の化粧シートと木質基板とを有する化粧板。
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