以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
実施形態1の二重折板屋根構造は、図1に示されるように、タイトフレーム1上に敷設された下折板屋根2と、この下折板屋根2上に固定された支持具4と、支持具4を介して下折板屋根2の上方に葺設された上折板屋根3とを備えている。本実施形態においては、下折板屋根2が既設の折板屋根であり、この既設の折板屋根を改修するため当該下折板屋根2を覆うようにして、新設の上折板屋根3を葺き替えたものである。この二重折板屋根構造は、下折板屋根2の上方に、屋根面全面に亘って形成された間隙を介して、上折板屋根3が敷設され、上下2段となるよう構成されている。
タイトフレーム1は、母屋等の横架材Aに載設され、下折板屋根2を固定する。本実施形態のタイトフレーム1は、図1に示されるように、主体を構成するものであると共に山部10及び谷部11が連設されたタイトフレーム本体12と、このタイトフレーム本体12の山部10に取り付けられた吊子13とを備えている。
タイトフレーム本体12は、断面略U字形状の下折板材20が嵌め込まれる谷部11と、横架材Aの長手方向に沿って隣接配置された下折板材20の端縁同士が重なる部分に位置する山部10と、横架材Aへ固定的に取り付ける部分である固定部14とを備えている。タイトフレーム本体12は、山部10と谷部11とが交互に一直線上に連設されている。タイトフレーム本体12は、厚み約2.5〜3.2mmの帯状の金属板材を曲げ加工することにより形成される。本実施形態のタイトフレーム本体12の固定部14は、谷部11の裏側部分(横架材Aの上面と当接する部分)により構成されており、横架材A上に載置された状態で溶接等により固定される。なおこの固定部14は、溶接に限らず、固着具を介して固定されてもよい。
吊子13は、タイトフレーム本体12の山部10の頂部に、ボルト・ナットを介して取り付けられる。吊子13は、山部10上で重ねられた隣接する下折板材20の端部同士と共にはぜ締めされるよう構成されており、3者を同時に締結することで下折板材20を固定する。
タイトフレーム1は、横架材Aの長手方向に沿って略直線状に隣接配置されると共に、この長手方向とは直角な方向に離間して複数並設されている。横架材Aの長手方向とは直交する方向に離設されたタイトフレーム1同士は、互いに略平行となるよう配置される。なお、このタイトフレーム1の並設方向が屋根勾配方向となる。
なお横架材Aとしては、建物の母屋や梁(小梁を含む)等が上げられる。横架材Aは、例えば、H型綱やC型綱やリップ溝型綱などにより構成されている。
このタイトフレーム1上に敷設される下折板屋根2は、タイトフレーム1の長手方向に沿って配置された複数の下折板材20を互いに連結することにより構成されている。下折板屋根2は、この複数の下折板材20の端部同士をはぜ継ぎ固定することで、屋根勾配方向とは直角な方向に連続した角波形状を形成する。なおこの下折板屋根2としては、屋根勾配方向だけでなく屋根勾配方向とは直角な方向にも長い断面角波形状のルーフ材により構成されてもよい。
下折板材20は、屋根勾配方向に長い鋼板(例えば、厚み約0.6〜1.2mm)を断面略U字形状に曲げ加工することで形成される。下折板材20は、設置されるとタイトフレーム1の谷部11底面に沿う底面部21と、この底面部21における屋根勾配方向とは直角な方向の両端から上方に向けて連設された一対の立設部22と、各立設部22の突出端縁から延設されたはぜ継ぎ片23とを備えている。この立設部22は、上方ほど対向間の距離が大きくなるよう傾斜しており、タイトフレーム1の山部10の傾斜に沿った形状となっている。このような下折板材20は、底面部21と立設部22とはぜ継ぎ片23とが、曲げ加工により一体成形されている。
下折板屋根2は、上記構成の下折板材20を、屋根勾配方向とは直角な方向に順次連結することで形成される。施工者は、下折板材20を、離設されたタイトフレーム1の各谷部11に掛け渡すようにして配置する。次いで施工者は、屋根勾配方向とは直角な方向に重なる下折板材20の端縁同士を、タイトフレーム1の吊子13を介してはぜ継ぎ固定する。この後、順次、同じように下折板材20を固定してゆき、屋根面全面に亘って作業を繰り返すことで下折板屋根2を形成する。
なお、この下折板屋根2の取り付けにおいては、はぜ締めによる接合でなくてもよく、例えば、ボルト留めや嵌合方式により取り付けられてもよい。
この下折板屋根2は、施工後の状態では、図1に示されるように、タイトフレーム1の山部10と谷部11とに沿って、凸部と凹部とが繰り返し連設された形状となっている。下折板屋根2の凸部は、タイトフレーム1の山部10の傾斜に沿って形成された傾斜面部24と、この傾斜面部24の上端間に位置する上面部25と、下折板材20同士を締結することで形成されて上面部25の略中間位置から上方に向けて突出したはぜ継ぎ固定部26とを有している。この凸部は、屋根勾配方向に連続した略一様な断面形状となっており、本実施形態においては軒から棟にかけて略全長に亘って形成されている。
上面部25は、はぜ継ぎ固定部26に近づく程、上方に位置するよう漸次傾斜している。また、はぜ継ぎ固定部26は、下折板屋根2の屋根勾配方向の全長に亘って連続形成されている。なお、本実施形態のはぜ継ぎ固定部26は、角ハゼ形状となっているが、丸ハゼ形状(図12参照)やその他の形状としたものであってもよい。また下折板屋根2にルーフ材を用いた場合には、はぜ継ぎ固定部26が形成されないため、この場合、はぜ継ぎ固定部26は無くてもよい。
下折板屋根2について、錆の発生・腐食・経年劣化などにより、改修が必要となった場合、当該下折板屋根2をカバーするようにして上折板屋根3が敷設される。これにより、下折板屋根2を剥がして取り外さなくても、新設の上折板屋根3を葺設することが可能となる。具体的には、下折板屋根2上に支持具4を配置し、この支持具4上に上折板屋根3が葺設される。
支持具4は、図5,7に示されるように、タイトフレーム1に引っ掛けられた固定金具7に固定されており、タイトフレーム1に固定されることで、強固に取り付けられている。支持具4は、下折板屋根2の凸部におけるタイトフレーム1の直上に配置される。
支持具4は、図1に示されるように、支持具本体42と、上折板屋根3を固定する吊子41とにより構成されている。支持具4は、吊子41が、支持具本体42に対し、ボルトを介して着脱自在に取り付けられている。
支持具本体42は、図2に示されるように、その下部に設けられてはぜ継ぎ固定部26を両側から挟む対向部43と、タイトフレーム1に引っ掛けられた固定金具7に連結される固着部44と、吊子41を取り付けるための吊子取付部45とを備えている。また本実施形態の支持具本体42は、上折板屋根3の凸部上面を支持する支持片63をさらに備えている。
本実施形態の支持具本体42は、図2に示されるように、固着部44を有する第1の本体部5と、当該第1の本体部5に固定される第2の本体部6とにより構成されており、両者がボルトを介して一体に連結されている。
第1の本体部5は、下折板屋根2の上面部25に沿って形成され且つその突出先端がはぜ継ぎ固定部26の側方に当接する下横片部51と、この下横片部51におけるはぜ継ぎ固定部26とは反対側の端部から上方に向けて連設された立面部52と、この立面部52の上端からはぜ継ぎ固定部26側に向けて連設された上横片部53と、この上横片部53のはぜ継ぎ固定部26側の端部から上方に向けて連設されて第2の本体部6との固定部分となる固定片部54と、この固定片部54の上端から横方向に連設された吊子固定片部55とを備えている。第1の本体部5は、金属板を曲げ加工することで形成され、これら各部が一体成形されている。
下横片部51は、下折板屋根2の上面部25の傾斜に沿った形状となっており、当該上面部25に載置されるよう構成されている。下横片部51は、図2(b)に示されるように、固定金具7を挿通するための一対の切欠部56が形成されている。下横片部51は、はぜ継ぎ固定部26に当接する先端が、上方に向けて屈曲しており、第2の本体部6の下端に対向するよう配置される。
立面部52には、上横片部53と下横片部51との間の全長に亘って形成された複数のリブ57が形成されている。このリブ57は、立面部52の上下の各辺にそれぞれ切り込みを入れた上で、この切り込み間の部位を、第2の本体部6側に押し込んで折り曲げることで形成されている。
上横片部53には、固定金具7を挿通するための固着具挿通孔58が穿設されている。本実施形態の上横片部53の固着具挿通孔58は、切欠部56の直上に設けられており、切欠部56に挿通された固定金具7が下方から挿通される。
固定片部54には、固着具を挿通するための挿通孔59が穿設されている。この固着具は、第1の本体部5と第2の本体部6とを連結する。なお本実施形態の挿通孔59は、根角ボルトに対応するため、正方形状の貫通孔により構成されている。
第2の本体部6は、下折板屋根2の上面部25に沿って形成され且つその端部がはぜ継ぎ固定部26の側方に当接する横片部61と、横片部61におけるはぜ継ぎ固定部26側の端部から上方に向けて連設されて第1の本体部5の固定片部54に連結固定される縦片部62と、縦片部62の上端に連設された上述の支持片63とにより構成されている。
支持具本体42の対向部43は、支持具本体42の下端部に設けられている。本実施形態の対向部43は、第1の本体部5の下横片部51と、第2の本体部6の横片部61との各端部が対向配置されることで構成されている。本実施形態の対向部43は、はぜ継ぎ固定部26を両側から挟圧するよう構成されており、支持具4を保持するようになっている。なお本実施形態の対向部43は、第1の本体部5の固定片部54と第2の本体部6の縦片部62とを螺着する根角ボルト及びナットにより、その挟圧力を調整することができるようになっている。
固着部44は、タイトフレーム1に引掛けられた固定金具7に支持具4を固着するための部位である。固着部44は、図5に示されるように、固定金具7に連結固定されることで、支持具4をタイトフレーム1に固着する。固着部44は、第1の本体部5における下横片部51と立面部52と上横片部53とにより構成されており、断面略コ字形状に形成されている。固着部44は、上述のように、上横片部53と下横片部51との間の全長に亘るように形成されたリブ57を有している。本実施形態の固着部44は、上横片部53の上面に、固定金具7に螺合されたナット8がワッシャーを介して当接するよう構成されている。
ここで、ナット8を強く締結した場合、固着部44は、上横片部53と下横片部51とが近づく方向に塑性変形してしまうことも考えられる。ところが本実施形態の固着部44は、上横片部53と下横片部51との間に略全長に亘るリブ57を有しているため、ナット8締結時の塑性変形を防いでいる。
このような構成の支持具4は、タイトフレーム1に引っ掛けられた固定金具7を介して、下折板屋根2上に固定されている。
固定金具7は、図7に示されるように、下折板屋根2を上下に貫通する連結部71と、この連結部71の下端部から横方向に突出する突出部75とを備えている。本実施形態の固定金具7は、Uボルト70により構成されている。
連結部71は、タイトフレーム1から当該タイトフレーム1の幅方向(つまり屋根勾配方向)にずれて位置しており、下折板屋根2を貫通するが、当該タイトフレーム1を貫通しない。本実施形態の連結部71は、上下方向に長く且つ上端部にねじ部73が形成された一対の軸状部72により構成されている。本実施形態の連結部71につき、軸状部72は、各軸径が約φ10mmに形成され、軸間距離が約75mmに形成されている。これにより、軸状部72の対向間に、幅約45〜55mmのタイトフレーム1を通すことができるよう構成されている。
また連結部71は、図4に示されるように、固定金具7が落下するのを防ぐ落下防止片74を有している。この落下防止片74は、軸状部72から横方向に突出しており、下折板屋根2に穿設された貫通孔27の孔周縁に引っ掛けられるよう構成されている。
突出部75は、連結部71の下端部から横方向に突出する部分である。本実施形態の突出部75は、軸状部72の下端部から横方向に突出すると共に当該軸状部72の下端部同士を連結している。突出部75は、図7に示されるように、タイトフレーム1の山部10の裏面に当接して、固定金具7が上方へ移動するのを規制する。
固定金具7は、本実施形態では、図7等に示すようなUボルト70により構成されているが、例えば、次のようなものも使用することができる。
固定金具7としては、図8に示すように、略J字状の固定金具76であってもよい。この固定金具76は、連結部71が上下に長い一の軸状部72により構成されており、突出部75が、軸状部72の下端部から横方向に突出している。軸状部72は上端部にねじ部73を有している。この固定金具76は、突出部75の突出先端が軸状部72と同方向に向けて屈曲しており、この屈曲した先端と軸状部72との間に、タイトフレーム1が入り込むよう構成されている。
また固定金具7としては、図9に示すように、略L字状の固定金具77であってもよい。この固定金具77は、連結部71が上下に長い一の軸状部72により構成されており、突出部75が、軸状部72の下端部から横方向に突出している。この固定金具7は、突出部75の突出先端が、タイトフレーム1の幅方向の中間に位置している。このL字状の固定金具77は、図9のように、タイトフレーム1の幅方向の両側に、対照となるよう対向配置されてもよいし、タイトフレーム1の幅方向の一方側の側方だけに配置されてもよい。
このような固定金具7は、下折板屋根2の凸部にタイトフレーム1から屋根勾配方向にずれた部分で上下に貫通する貫通孔27に挿通される。本実施形態では、図3に示されるように、一対の貫通孔27が設けられており、一対の貫通孔27は、タイトフレーム1の幅方向の両外側に穿設されている。この貫通孔27は、例えば、孔の対向間の距離が15mm程度に形成され、中心間距離が75mm程度に形成される。なお、貫通孔27は、丸孔であってもよい。
この固定金具7を貫通孔27に挿通するに当たり、施工者は、固定金具7の一対の軸状部72のうち一方側の軸状部72を、一対の貫通孔27のうちの一方の貫通孔27の上方から挿入する。この後施工者は、図4に示すように、固定金具7の角度を変えながら挿入してゆき、挿入した側の軸状部72を他方の貫通孔27に、下方から上方に向けて挿入し、これにより、両方の軸状部72の上端部を下折板屋根2から突出させる。このとき固定金具7は、軸状部72が、下折板屋根2におけるタイトフレーム1からずれた部位を上下に貫通しており、突出部75が、タイトフレーム1の裏面に当接される。
この状態において、固定金具7の下折板屋根2から突出した部分に、支持具4の第1の本体部5が連結される。本実施形態では、図5に示されるように、下折板屋根2から突出したねじ部73に、第1の本体部5の固着部44の切欠部56及び固着具挿通孔58が通され、この状態でナット8が螺合される。
この後、図6に示されるように、第1の本体部5の背面に第2の本体部6を固定し、はぜ継ぎ固定部26を挟圧する。これにより、下折板屋根2上に支持具4が固定される。
下折板屋根2上に設置された支持具4には、図1に示されるように、上折板屋根3が設置される。
上折板屋根3は、屋根勾配方向とは直角な方向に並設配置された複数の上折板材30により構成されている。上折板屋根3は、この複数の上折板材30の端部同士をはぜ継ぎ固定することで、屋根勾配方向とは直角な方向に連続した角波形状を形成する。
上折板材30は、屋根勾配方向に長い鋼板(例えば、厚み約0.6〜1.2mm)を断面略U字形状に曲げ加工することで形成される。上折板材30は、底面部31と、この底面部31における屋根勾配方向とは直角な方向の両端から上方に向けて連設された一対の立設部32と、各立設部32の突出端縁から延設されたはぜ継ぎ片33とを備えている。この立設部32は、上方ほど対向間の距離が大きくなるよう傾斜している。このような上折板材30は、底面部31と立設部32とはぜ継ぎ片33とが、曲げ加工により一体成形されている。
上折板屋根3は、上記構成の上折板材30を、屋根勾配方向とは直角な方向に順次連結することで形成される。施工者は、上折板材30を、その長手方向が下折板材20の屋根勾配方向に略平行となるよう配置する。次いで、施工者は、屋根勾配方向とは直角な方向に重なる上折板材30の端縁同士を支持具4の吊子41を介してはぜ継ぎ固定する。このようにして施工者は、順次、上折板材30を固定してゆき、屋根面全面に亘って作業を繰り返すことで上折板屋根3を形成する。
このように構成された本実施形態の二重折板屋根構造は、タイトフレーム1からずれた部分で貫通する固定金具7を介して、タイトフレーム1と支持具4とが連結固定されているため、施工者は、タイトフレーム1に穿設しなくても、当該タイトフレーム1に支持具4を固定することができる。つまり施工者は、厚い金属帯材からなるタイトフレーム1への穿孔作業の必要がなく、薄い下折板屋根2に穿設するだけでよいため、タイトフレーム1と支持具4とを固定するものにおいても施工が容易である。この結果、従来の二重折板屋根構造に比べて施工性が向上し、且つ十分な強度を確保することができる。
また、本実施形態の二重折板屋根構造は、固定金具7の上端部にねじ部73が形成されているため、突出部75とナット8とで支持具4及びタイトフレーム1を挟持固定することができる。これにより、より簡単な施工ができるようになる。
また、本実施形態の固定金具7は、図7に示されるように、Uボルト70の一対の軸状部72のうち、一方の軸状部72の長さが、他方の軸状部72の長さよりも短く形成されている。この場合、施工者は、固定金具7を下折板屋根2及びタイトフレーム1に装着するに当たり、短い側の軸状部72を下折板屋根2に設けられた貫通孔27に、上方から下方に向けて挿通する。するとこの挿通された短い側の軸状部72を、他方の貫通孔27に下方から上方に向けて挿通するに当たり、挿入し易くなる。このように、Uボルト70の一対の軸状部72の長さにつき、一方の軸状部72が、他方の軸状部72よりも短く形成されたものであると、作業効率を一層向上するものとなる。
また、本実施形態の支持具4の構造は、本実施形態の構造のものに限られない。例えば、図11,12に示されるように、固着部44が平板状に形成されたものであってもよい。また、図12のように、支持具本体42の形状が、丸ハゼの形状に沿うように構成されていてもよい。また、第1の本体部5と第2の本体部6との連結が、ボルト・ナットを用いた構造でなくてもよく、図12のように、いずれかにタップを設けてナットを省いた構造であってもよい。
ところで、本実施形態の工法や従来の工法のように、既設の下折板屋根2を葺き替えるために、新たに上折板屋根3をこの下折板屋根2上に葺設する工法を用いた場合、下折板屋根2を取り外す必要がないため、短期間での施工が可能となる。このため従来の葺き替え工法によれば、例えば、工業製品を製造する工場の屋根を葺き替える場合等には、製造ラインを停止する期間を短期間とすることができ、屋根葺き替え作業に伴う生産数の低下を極力減らすことができるものである。
ところが従来の二重折板屋根構造は、支持具を取り付けるに当たり、下折板屋根2及びタイトフレーム1にドリルねじをねじ込む必要があるため、このとき生成される切削屑等が室内に散乱するのを防ぐ必要があった。このため、室内一面を養生シートで覆う必要があり、これにより、工場の製造ラインを停止する必要があった。
この点について、本実施形態の二重折板屋根の施工方法は、タイトフレーム1に穿孔する必要がないだけでなく、下折板屋根2に穿孔するに当たっても、切削屑等が発生しないよう無回転の先端工具91を備えた穴あけ装置9を使用する。以下、説明する。
本実施形態に使用する穴あけ装置9は、図10に示されるように、先端に装着される先端工具91が無回転で駆動する。この穴あけ装置9は、電動ハンマ94により構成されており、先端工具91として二股状の工具を装着する。
先端工具91は、図10に示されるように、一対の穿孔治具92と、この穿孔治具92の基端部同士を連結し且つこの一対の穿孔治具92を穴あけ装置9に固定するシャンク部93とから構成されている。先端工具91は、例えば、一対の穿孔治具92の中心間距離が75mm程度に形成され、穿孔治具92の断面の一辺の長さが15mm程度に形成されている。穿孔治具92は、先端が尖った棒形状をしており、軸方向に高速移動することで対象物(本実施形態では下折板屋根2)に孔を開ける。つまり本実施形態の先端工具91は、電動ハンマ94により軸方向にスライドするよう駆動されて、下折板屋根2に一対の貫通孔27を穿設する。
穴あけ装置9は、先端工具91を軸方向に高速移動させる電動ハンマ94により構成されており、本実施形態では、打撃エネルギーが8.3Jの小型の電動ハンマ94を使用する。これにより、厚み0.6〜1.2mmの下折板屋根2に、切削することなく穿孔することが可能となる。
このように本実施形態の二重折板屋根の施工方法は、無回転の先端工具91により穿孔する穴あけ装置9を用いて貫通孔27を穿設するものであるため、切削屑等がほとんど生じない。これにより、屋根の葺き替え作業に当たり、工場の製造ライン上に切削屑の散乱を防ぐための養生シートなどを敷く必要がなくなり、製造ラインを停止させなくても作業できるようになる。
しかも、本実施形態の穴あけ装置9は、一対の穿孔治具92を有しているため、一度に複数の孔を設けることができて作業性が向上する。しかも、タイトフレーム1のセンター線の位置さえ把握できれば、簡単に、一定間隔で所定の位置に穿孔することができ、タイトフレーム1に孔を開けないように施工できる。なお、下折板屋根2が敷設された状態でタイトフレーム1のセンター線の位置を確認するには、例えば、けらばからタイトフレーム1の位置を確認して、センター線を罫書けばよい。
次に、実施形態2について図13〜16に基づいて説明する。なお、本実施形態は実施形態1と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態の二重折板屋根構造は、支持具及び固定金具の構造が実施形態1のものとは異なっており、その他の構造は実施形態1と同じである。
本実施形態の支持具400は、図13に示されるように、支持具本体401と、この支持具本体401から分離可能な保持部80とを備えている。また支持具400は、実施形態1のものと同様、上折板屋根3を固定する吊子41を備えている(図1参照)。吊子41は、支持具本体401に対し、ボルトを介して着脱自在に取り付けられている。
支持具本体401は、下折板屋根2のはぜ継ぎ固定部26の側方の一方側に位置する第1の本体部500と、はぜ継ぎ固定部26の側方の他方側に位置する第2の本体部600とを備えている。第1の本体部500は、第2の本体部600に固着具を介して固定されている。
第1の本体部500は、図14に示されるように、吊子41が取り付けられる吊子取付片501と、この吊子取付片501の第2の本体部600側の端部から下方に向けて連設された固定片502と、固定片502の下端部から第2の本体部600側とは反対側に向けて連設された横片503と、この横片503の突出先端から下方に向けて連設された縦片504とを備えている。第1の本体部500は、金属板を曲げ加工することで形成され、各部が一体成形されている。
縦片504は、その下端部に、第2の本体部600から離れるよう屈曲したガイド片508を有している。
横片503は、固定金具700の連結部702が挿入される固着具挿通孔505を有している。固着具挿通孔505は、一対設けられており、屋根勾配方向に離間している。言い換えると固着具挿通孔505は、タイトフレーム1の長手方向とは直角な方向に離間している。
固定片502は、固着具を挿通する挿通孔506が穿設されている。この挿通孔506は、第1の本体部500と第2の本体部600とを連結するための固着具が挿通される。本実施形態の挿通孔506は、根角ボルトに対応するため、正方形状の貫通孔により構成されている。
吊子取付片501は、タイトフレーム1の長手方向とは直角な方向の両端に切欠507を有している。この切欠507は、横片503に設けられた固着具挿通孔505の上方に位置している。吊子取付片501は、切欠507により、固定金具700にナットを螺合する際に、工具に干渉しにくくなっている。
第2の本体部600は、図13に示されるように、下折板屋根2の上面部25に載置される下横片601と、下横片601の第1の本体部500側の端部から反対側に向けて屈曲形成された屈曲片602と、屈曲片602の上端からさらに上方に延設された固定用縦片603と、固定用縦片603の上端に連設された支持片604とを備えている。固定用縦片603は、第1の本体部500の固定片502と当接しており、この状態で固着具により連結される。支持片604は、実施形態1の支持具4と同様、上折板屋根3の下面に当接して、当該上折板屋根3を支持する。
保持部80は、支持具本体401とは分離可能に構成されている。保持部80は、第1の本体部500の横片503の下方に配置される。
保持部80は、図15に示されるように、下折板屋根2の上面部25に載置される一対の載置片81と、この載置片81から立設された本体支持片82と、本体支持片82間を弾性的に連結する弾性片83とを備えている。保持部80は、これら各部が薄板状の金属板により一体的に成形されている。
載置片81は、屋根法勾配方向に並ぶよう設けられている。一対の載置片81は、隙間を介して互いに離間している。また載置片81は、固定金具700の連結部702を側方から通すための切欠部84が設けられている。
切欠部84は、その開口側の角部に、縁側ほど対向する辺の間の距離が離れるよう傾斜した導入部85が設けられている。切欠部84は、その切欠奥部に、固定金具700の軸状部703が係止される係止部86が形成されている。
一対の載置片81は、一方の載置片81の切欠部84の外側の辺(本実施形態では係止部86の外側の辺)と、他方の載置片81の切欠部84の外側の辺(本実施形態では係止部86の外側の辺)との間の寸法L1が、固定金具700における軸状部72の外側間の距離L2と略同じか又はそれよりも小さく形成されている。
本体支持片82は、載置片81の第2の本体部600側とは反対側の縁部から立設されている。本体支持片82は、その上端に第1の本体部500の横片503が当接し、これにより第1の本体部500を支持する。本体支持片82は、平面視略コ字状に形成されている。
弾性片83は、本体支持片82の内側の端部同士を連結する。弾性片83は、載置片81とは略直角な面により構成されている。弾性片83は、本体支持片82を介して載置片81同士を互いに連結する。弾性片83は、弾性的に屈曲することで、屈曲部分を支点としながら両側の載置片81の切欠部84の開口を外側に向ける。これにより、一方の載置片81の切欠部84の外側の辺と、他方の載置片81の切欠部84の外側の辺との間の寸法L1が拡がる。また弾性片83は、付勢力に従って復元することで、載置片81の切欠部84を元の向きに移動させる。これにより、一方の載置片81の切欠部84の外側の辺と、他方の載置片81の切欠部84の外側の辺との間の寸法L1が復元する。
このような構成の支持具400は、組み立てられた状態では、図13に示されるように、その下部に設けられてはぜ継ぎ固定部26を両側から挟む対向部43と、固定金具700に連結される固着部44と、吊子41を取り付けるための吊子取付部45とを備える。本実施形態において対向部43は、保持部80の載置片81の第2の本体部600側の端縁と、第2の本体部600の下横片601の第1の本体部500側の端縁とにより構成される。固着部44は、第1の本体部500の横片503と保持部80とにより構成されている。吊子取付部45は、第1の本体部500の吊子取付片501により構成されている。
固定金具700は、図16に示されるように、下折板屋根2を上下に貫通する連結部702と、この連結部702の下端部から横方向に突出する突出部75とを備えている。固定金具700は、Uボルト701により構成されている。本実施形態の固定金具700は、実施形態1の固定金具700とは異なり、一対の軸状部703のそれぞれの長さが同じになるよう形成されている。さらに本実施形態の固定金具700は、落下防止片74が設けられていない。その他の構成は実施形態1の固定金具7と同一である。
このような支持具400を取り付けるには、次のようにして施工する。
まず、下折板屋根2におけるタイトフレーム1からずれた部位に貫通孔27を穿設する。このとき、実施形態1と同じように、無回転の穿孔治具92を有する穴あけ装置9を使用してもよいし、施工者がハンマにより打撃して貫通孔27を設けてもよい。
次いで、施工者は固定金具700を貫通孔27に挿入する。固定金具700を貫通孔27に挿入するに当たり、施工者は、固定金具700の一対の軸状部703のうち一方側の軸状部703を、一方の貫通孔27の上方から挿入する。この後、固定金具700の角度を変えながら挿入を続け、挿入した側の軸状部703を他方の貫通孔27に、下方から上方に向けて挿入する。これにより、両方の軸状部703の上端部を下折板屋根2から突出させる。このとき固定金具700は、軸状部703が、下折板屋根2におけるタイトフレーム1からずれた部位を上下に貫通しており、突出部75が、タイトフレーム1の裏面に当接する。
この状態で、固定金具700の下折板屋根2から突出した連結部702に、保持部80を取り付ける。このとき、弾性片83を屈曲させ、保持部80の切欠部84の開口の向きを外側に拡げながら、当該切欠部84に軸状部703を側方から挿入する。この後、弾性片83を復元させることで、保持部80の切欠部84の外側の縁部(本実施形態では係止部86)に、それぞれの軸状部703が係止される。これにより保持部80は、固定金具700を落下しないよう保持する。
この状態で、保持部80の載置片81から上方に突出した固定金具700の連結部702に、支持具本体401の固着部44を連結する。以後の施工は、実施形態1と同様であるので省略する。
このように本実施形態の支持具400は、支持具本体401の連結部702への連結による保持とは別に固定金具700を保持する保持部80を有しているため、固定金具700を貫通孔27に挿通した状態で、この固定金具700の位置を保持できる。つまり、固定金具700の連結部702を、下折板屋根2から突出した状態で保持させておくことができるため、施工者は、両手を使って、支持具本体401を連結部702に連結する作業を行なうことができる。
言い換えると、施工者は、一方の手で固定金具700を把持して、固定金具700の連結部702を下折板屋根2から突出した状態を保持しながら、他方の手で支持具本体401を取り付けるような困難な作業を行なう必要がなくなる。これにより作業者は、支持具本体401を取り付けるのに両手を用いることができ、作業効率を向上させることができる。
また本実施形態の支持具400は、保持部80が、支持具本体401の下面に当接する本体支持片82を有しており、固定金具700とナット8との螺合により、本体支持片82に支持具本体401を支持させた状態で強固に固定するため、支持具400を下折板屋根2に安定して取り付けることができる。
以上、本発明の二重折板屋根構造につき、既設の下折板屋根2に新設の上折板屋根3を葺き替える実施形態に基づいて説明したが、本発明の二重折板屋根構造は、実施形態1,2のような葺き替え工法により生成されたものでなくてもよく、例えば新築の二重屋根に適用することも可能である。
また、実施形態1,2の二重折板屋根構造では、無回転の先端工具91により穿孔する穴あけ装置9を用いて、下折板屋根2上に穿設するものであったが、本発明の二重折板屋根構造においては、無回転の先端工具91を備えた穴あけ装置9を用いなくてもよい。例えば、施工者が把持して使用するハンマによって各貫通孔を設けてもよい。
また、実施形態1,2の二重折板屋根構造では、固定金具がタイトフレームの山部の頂部の裏面に当接していたが、本発明においては、固定金具が、タイトフレームの山部の傾斜面の裏側に当接していてもよい。