JP5859302B2 - ミシン - Google Patents

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Description

本発明は、釜機構全体の回動動作を行うミシンに関する。
一本針ミシンと二本針ミシンとでは、それぞれの以下に示す理由により、針棒と釜機構とを針棒に平行な中心線回りに回動させる要求が存在する。
一本針ミシンの場合には、針棒を中心とする少なくとも二以上の異なる縫い方向に被縫製物を搬送する場合に、その縫い方向によって上糸が螺旋状となって縫い目が形成されるいわゆるヒッチステッチが発生する場合があり、これを防止して螺旋状とならないいわゆるパーフェクトステッチを形成するために、針棒と釜機構とを針棒を中心に回動させている。つまり、正送りと逆送りを行う場合や毎針毎に予め定められた任意の針落ち位置に運針を行う場合において、ヒッチステッチが発生しやすい縫い方向で縫いを行う場合に、縫い針から釜の剣先が上糸を捕捉する方向を適宜変えてやることにより、ヒッチステッチの発生を防止できることから、縫い針及び釜機構を回動させることが求められている。
また、二本針ミシンの場合には、二本の針棒を中心とする任意の縫い方向に被縫製物を搬送する場合に、いずれの方向に対しても縫い目の間隔を一定に維持することができるように、針棒を回動させて縫い方向に対して二本針の並び方向が垂直となるように動作制御を行う必要があるが、これら二本の針棒の回動動作に伴い、二つの釜を同様に回動させる必要がある。
そして、上述のような、針棒と釜の回動の要請に応じるために、例えば、二本の針棒を上下動可能に保持すると共にミシンフレームに対して垂直軸回りに回動可能に支持された針棒土台と、二つの釜を垂直軸回りに回動可能に支持する釜土台とを備え、布保持枠によって任意の方向に搬送される布地に対して、二本針の並び方向が縫い方向に対して常に直交する方向に並ぶように制御を行うことで予定された形状に沿って二本の縫い目を形成するミシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記従来のミシンでは、針板の下側に二つの釜を有する釜機構と、釜機構を縫い針と同一軸線を中心として釜土台を回動させる釜回動機構とを備え、二本の針棒の回動に同期して釜機構の回動が行われていた。
なお、この従来例は、二本針ミシンを例示しているが、縫い針と釜をそれぞれ一つずつ除去することで、釜回動を行う一本針ミシンを容易に実現することが可能である。
中国特許出願公開第101845718号明細書
上記従来のミシンは、回転動作を行う釜土台の外部から釜土台に搭載された釜に回動動力を伝達すると、釜土台の回動により釜の回転に回動角度分の位相のズレが発生することから、釜土台上に釜回転用のモータを搭載することで伝達系を釜土台上に納め、位相のズレの発生を防止している。
しかしながら、かかる構造を採ると、釜土台全体の重量が増大し、釜の回動駆動源として大型高出力のモータが必要となると共に、釜土台を支持する構造の強度が要求され、ミシンの大型化、大重量化を生じていた。また、釜土台の重量増加により、釜回動を高速で行うことが困難となり、高速回動での縫製を行うことができないという問題が生じていた。
また、上記従来のミシンでは、釜の回転駆動源となるモータは、釜土台の回動中心線から離れて外縁部に搭載されているので、釜土台の慣性モーメントが大きくなり、これが釜回動の高速動作をさらに阻害する要因となっていた。
また、回動を行う釜土台にモータを搭載した場合、モータへの電源供給を行うために摺動接点であるスリップリングが必要となるが、モータに適切なスリップリングは大型のものが多く、当該スリップリングを搭載することで、さらなる釜土台の大重量、大型化及び縫製の低速化が生じるという問題が生じていた。
本発明は、釜の周囲の小型軽量化を図ることをその目的とする。
また、本発明は、釜回動動作の高速化を図ることを他の目的とする。
さらに、本発明は、釜回動動作を精度良く行うことを他の目的とする。
本発明は、縫い針を保持して上下動を行う針棒と、上糸を捕捉し、回転動作により上糸を下糸に絡める釜と、前記針棒の上下動の駆動源となるミシンモータと、前記釜が上糸を捕捉するための回転の駆動源となる釜駆動モータと、前記針棒を当該針棒に平行な所定の中心線回りに回動させる針棒回動機構と、前記釜を搭載し、ミシンフレームに対して前記針棒と同じ中心線回りに回動可能に支持された釜回動台と、前記針棒の回動動作の駆動源となる針回動モータと、前記釜回動台の回動動作の駆動源となる釜回動モータとを備えるミシンにおいて、前記釜駆動モータから前記釜に動力を伝達する入力軸及び出力軸を備える差動伝達機構を備えている。
そして、本発明は、前記差動伝達機構が、前記入力軸と出力軸とが前記針棒の回動中心線上に配置されると共に、前記入力軸及び出力軸の周囲で回動を行う支持枠と、前記支持枠に回転可能に支持されると共に当該回転により前記入力軸と出力軸との間で互いの回転力を伝達する伝達体と、前記釜回動台又は前記支持枠のいずれか一方に設けられ、前記釜回動モータから回動力が入力される従動部材と、前記従動部材から入力される回動力により、前記釜回動台と前記支持枠とを前記ミシンフレームから見て同方向に回動させると共に前記釜回動台を前記支持枠の二倍の回動量で回動させる回動連動機構とを備えることを特徴とする。
なお、「釜が上糸を捕捉するための回転動作」とは、全回転即ち一定方向への連続的な回転と、半回転即ち往復回動動作とを含む意味である。つまり、ここで言う「釜」には全回転釜と半回転釜の双方が含まれる。
上記構成において、前記回動連動機構は、前記釜回動台と前記ミシンフレーム又は前記支持枠と前記ミシンフレームの各々に設けられた歯車からなる歯車機構を用いることとしても良い。
また、前記回動連動機構は、支持フレームに固定された固定歯車と、前記支持枠に固定された従動歯車と、前記釜回動台に回動可能に支持された支軸と、前記支軸に固定され、前記固定歯車に噛合う第1歯車と、前記支軸に固定され、前記従動歯車に噛合う第2歯車と、備える構成としても良い。
また、前記ミシンモータと前記釜駆動モータとを一つのモータで共用する構成としても良い。
さらに、前記針回動モータと前記釜回動モータとを一つのモータで共用する構成としても良い。
また、本発明は、上記の構成に加えて、前記ミシンは一本針ミシンであって、前記回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構を備え、前記移動機構による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるよう前記針回動モータ及び前記釜回動モータを駆動する縫い制御手段を備える構成としても良い。
また、或いは、本発明は、上記の構成に加えて、前記ミシンは二本針ミシンであって、前記釜回動台に搭載され、前記出力軸から二つの釜に回転を伝達する釜回転伝達機構と、二本の縫い針の中間に位置する前記回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構とを備え、前記移動機構による被縫製物の移動を行う際に、前記回動中心線に垂直な平面上において前記被縫製物の移動方向に直交する方向に沿って前記二本の縫い針と前記二つの釜とがそれぞれ並ぶように、前記針回動モータ及び前記釜回動モータを制御する縫い制御手段を備える構成としても良い。
上記発明は、入力軸と出力軸を通じて釜に回転動作を付与することができ、釜の向きを変える際には、釜回動台の回動が釜回動モータにより行われる。
その際、差動伝達機構は、支持枠を釜回動台と同方向に二分の一の回動角度量で回動させる。その結果、差動伝達機構の伝達体は、入力軸と出力軸との間に支持枠の回動量の二倍の位相差を付与することができ、釜の回動動作による位相差が解消される。
つまり、釜駆動モータを釜回動台に搭載することなく、釜回動台の外部から釜に回転動作を付与する場合において、釜回動台の回動による釜の回転時の位相差の発生を解消することが可能となる。
これにより、釜駆動モータを釜回動台に搭載する必要がなくなるので、釜回動台の軽量化を図ることが可能となり、釜回動モータを出力の小さい小型のものを使用することが可能となると共に、釜回動台の支持構造等も小型化することが可能となる。
また、釜回動台の慣性モーメントを低減することができ、釜の回動動作の誤差を低減することができ、精密な動作制御及び高速の釜の回動動作が可能となる。
また、釜回動台上に釜駆動モータを搭載しないで済むことから、当該釜駆動モータへの電源供給を行うためのスリップリング等の特殊な部品が不要となり、ミシン製造コストの低減を図ること及びミシンの小型化を図ることが可能となる。
さらに、釜回動モータは、従動部材を通じて釜回動台又は支持枠のいずれか一方に対して回動動作を付与し、釜回動台と支持枠の相互間は、回動連動機構により同方向に2:1の比率で回動が伝達されると共に、釜回動台と支持枠とは同一軸上で回動動作を行うように配置されている。
これに対して、比較例として、釜回動モータから釜回動台と支持枠のそれぞれにタイミングベルトを用いて上記の比率で回動動作を付与する構成と比較した場合、釜回動台に回動を伝達するタイミングベルトと、支持枠に回動を伝達するタイミングベルトとにそれぞれ異なる量で伸びが発生し得ることから、かかる構成では、釜の回動動作を行った場合に、位相ズレの補正を精度良く行えない問題が生じやすい。
一方、本発明では、釜回動台又は支持枠のいずれか一方に対して回動動作を付与し、釜回動台と支持枠の相互間は回動連動機構を介して連動するので、上記タイミングベルトを用いる場合よりも、釜回動時の位相ズレの補正を精度良く行うことが可能となる。従って、釜回動時に目飛びなどの発生を低減し、高い縫い品質の縫製を行うことが可能である。
回転伝達機構として、歯車機構を用いる構成の場合には、釜回動台と支持枠のそれぞれにタイミングベルトを用いて回動動作を付与する場合のように、各タイミングベルトの伸縮量の差による位相ズレの補正をより精度良く行うことが可能となる。
ミシンモータと釜駆動モータとを一つのモータで共用する構成とした場合には、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
また、各モータの同期制御を不要とし、制御回路等の構成をより簡易化することが可能となる。
さらに、ミシンモータと釜駆動モータとを一つのモータで共用した場合であっても、回動連動機構を有するので、例えば、ミシンの停止状態において、メンテナンスなどの際に、釜の釜回動台を回動させた場合に、針棒に上下動が伝達されず、縫い針と他の物体との接触などを防止することが可能となる。
針回動モータと釜回動モータとを一つのモータで共用する構成とした場合には、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
また、各モータの同期制御を付与とし、制御回路等の構成をより簡易化することが可能となる。
一本針ミシンにおいて、移動機構による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるよう回動モータを駆動する縫い制御手段を備えるので、任意の位置に針落ちを行う縫製において、ヒッチステッチの発生を防止することが可能となる。
二本針ミシンにおいて、移動機構による被縫製物の移動を行う際に、被縫製物の移動方向に直交する方向に沿って二本の縫い針と二つの釜とがそれぞれ並ぶように制御することができ、二本の縫い目を並行に一定の間隔を維持して形成することが可能となる。
上記実施形態には、
第一の実施形態のミシンの斜視図である。 ミシンの機構構造を概略的に図示した構成図である。 釜機構及び差動伝達機構の斜視図である。 釜機構及び差動伝達機構の針棒の中心線及びY−Z平面に沿った断面図である。 釜回動台及び支持枠の回動により釜伝達部が釜を回動させる状態説明図であり、図5(A)は釜回動台及び支持枠の回動前の状態を示し、図5(B)は釜回動台及び支持枠の回動後の状態を示す。 釜機構の平面図である。 主に釜機構のオープナー作動部を示した斜視図である。 主に釜機構のメス機構を示した斜視図である。 図9(A)は給油機構の水平方向の断面図、図9(B)は給油機構の垂直方向の断面図である。 ミシンの制御系を示すブロック図である。 X−Y平面上において、針棒の中心線から釜に向かう方向を基準とした場合にヒッチステッチが発生する縫い方向を示した説明図である。 ヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。 第二の実施形態の差動伝達機構の斜視図である。 第二の実施形態の差動伝達機構の針棒の中心線及びY−Z平面に沿った断面図である。 第三の実施形態のミシンのミシンアーム部内の構成について示した斜視図である。 第三の実施形態の針棒の周辺の構成を示した側面図である。 第三の実施形態の針棒の中心に沿った断面による針棒の周辺構造の断面図である。 第三の実施形態の位置切り替え機構及び作動部材の斜視図である 図19(A)は針棒回動台の回動動作時における針棒側差動伝達機構の小スプロケットの位置変化を示す説明図であり、図19(B)は連動歯車の位置変化を示す説明図であり、図19(C)は差動部材の位置変化を示す説明図である。 第三の実施形態の差動伝達機構及び釜機構について示した斜視図である。 第三の実施形態の差動伝達機構及び釜機構について支持フレーム及び釜土台の図示を省略した斜視図である。 第三の実施形態のミシンの制御系を示すブロック図である。 二本針縫い目の形成を行う縫製パターンの一例を示した図である。 図23に示す縫製パターンの二本針縫い目の形成を行うための縫製制御を示すフローチャートである。
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本実施形態として以下に記載するミシン100は、いわゆる電子サイクルミシンであり、縫製を行う被縫製物である布地を保持する布保持部としての保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布地に所定の縫製データに基づく縫製パターンを形成する。
図1は本発明にかかるミシン100の斜視図、図2はミシン100の機構構造を概略的に図示した構成図である。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
上記ミシン100は、縫い針11をその下端部に保持してZ軸方向に沿って上下動を行う針棒12と、ミシンモータ21を駆動源として縫い針を上下動させる針上下動機構20と、針棒12をZ軸方向に沿ったその中心線回りに回動させる針棒回動機構30と、縫い針11に通された上糸に下糸を絡める釜801を備える釜機構800と、駆動手段としての釜駆動モータ401から釜機構800に釜回転の動力を伝達する入力軸411及び出力軸412を備えると共にこれら軸間の位相差を変更調節可能とする差動伝達機構400と、布地を保持してX−Y平面に沿って任意に移動位置決めを行う移動機構としての布移動機構102と、上記各構成の動作制御を行う動作制御手段としての制御装置110と、ミシン100の各構成を支持するミシンフレーム101とを主に備えている。
[ミシンフレーム]
図1に示すように、ミシン100は、外形がX軸方向から見て略コ字状を呈するミシンフレーム101を備えている。このミシンフレーム101は、ミシン100の上部をなしY軸方向に延びるミシンアーム部101aと、ミシン100の下部をなしY軸方向に延びるミシンベッド部101bと、上下に位置するミシンアーム部101a及びミシンベッド部101bとを連結する縦胴部101cとを有している。
[布移動機構]
図1に示すように、布移動機構102は、ミシンベッド部101bの上面において被縫製物を保持する保持枠102aと、保持枠102aを昇降可能に支持する支持アーム102bと、支持アーム102bを介して保持枠102aをX軸方向に移動させるX軸モータ102c(図10参照)と、支持アーム102bを介して保持枠102aをY軸方向に移動させるY軸モータ102d(図10参照)とを備えている。
布移動機構102は、かかる構成により、保持枠102aを介して被縫製物をX−Y平面の任意の位置に移動位置決めすることができ、一針ごとに任意の位置に針落ちを行うことができ、自在な縫い目の形成が可能となっている。
[針上下動機構]
図1及び図2に示すように、針上下動機構20は、上記ミシンアーム部101a内においてY軸方向に沿った状態で回転可能に支持された上軸22と、上軸22の一端部から回転力を付与すミシンモータ21と、上軸22の他端部に設けられた針棒クランク23と、針棒クランク23の回転中心に対する偏心位置に一端部が連結されたクランクロッド24と、クランクロッド24から針棒12に上下動を伝達する針棒抱き25とを備えている。
上軸22はミシンモータ21の出力軸に直結されて回転駆動が行われ、上軸22の回転は針棒クランク23とクランクロッド24とにより上下の往復動作に変換されて針棒抱き25を介して針棒12に伝達される。
なお、針棒12は、後述する針棒回動機構30により、その中心線回りに回動動作が付与されるようになっている。このため、クランクロッド24の他端部においてY軸方向の軸線を中心に回動可能に設けられた角駒26が、針棒12を取り囲むように針棒抱き25の外周に形成された凹溝25aに嵌合され、凹溝25aの内面が角駒26を上下に挟むことでクランクロッド24と針棒抱き25との連結を図っている。これにより、針棒12と共に針棒抱き25が回動を行っても、凹溝25aの内側で角駒26が滑動して連結が外れず、針棒12の回動を許容しつつクランクロッド24からの上下動の付与を行うことが可能となっている。
[針棒回動機構]
図2に示すように、針棒回動機構30は、ミシンアーム部101aの面部側の端部の内側に装備され、針棒12を上下動可能に支持する針棒回動台31と、針棒12の回動駆動源となる針回動モータ32と、針回動モータ32から針棒回動台31に回動力を伝達する伝達機構とを備えている。
針棒回動台31は、図示しない針棒メタル(金属製軸受け)により針棒12をZ軸方向に沿って滑動可能に支持すると共に、その上下の端部においてミシンフレーム101によりZ軸回りに回動可能に支持されている。また、針棒回動台31には、前述した針棒抱き25からY軸方向に沿って延出された回り止めが挿入されるガイド溝36がZ軸方向に沿って形成されており、針棒12の上下動を許容しつつも針棒12が針棒回動台31と共にZ軸回りに回動を行うよう支持している。また、針棒12の中心線と針棒回動台31の回動中心線とは同一線上となるよう設計されている。なお、針棒12の中心線と針棒回動台31の回動中心線と後述する釜回動台130の回動中心線はいずれも同一直線上にあり、これらを統一して中心線Cというものとする。
伝達機構は、針回動モータ32の出力軸に装備された主動スプロケット33と、中心線Cと同心で針棒回動台31の上端部に固定装備された従動スプロケット34と、これらのスプロケット33,34に掛け渡されたタイミングベルト35とを備えている。これにより、針回動モータ32の駆動によって、針棒回動台31及び針棒12をその中心線C回りに任意に角度調節することを可能としている。
[釜回動台]
図3は釜回動台130、釜機構800及び差動伝達機構400の斜視図、図4は中心線C及びY−Z平面に沿った断面図である。図2乃至図4に基づいて釜回動台130について説明する。
釜回動台130は、X−Y平面に沿った上面に釜機構800を搭載する搭載板131と、搭載板131の下面に取り付けられた上部フレーム132と、上部フレーム132の下部に取り付けられた下部フレーム133とから構成され、これら搭載板131、上部フレーム132及び下部フレーム133がネジ止めにより一体化されている。
そして、釜回動台130は、その上部と下部とにおいて、ミシンフレーム101の一部をなす支持フレーム105により、軸受け134,135を介して中心線C回りに回動可能に支持されている。
[差動伝達機構]
差動伝達機構400は、釜回動台130の上面に搭載された釜機構800の釜801に対して釜駆動モータ401から回転力を付与する機能と、釜回動台130に対して釜回動モータ402から回動力を付与する機能と、当該釜801の回動による釜軸811回りの位相の変動を補正する機能を有している。
なお、上記釜801は、いわゆる全回転の水平釜であり、布載置板103の下側において中心線Cに平行な釜軸811に固定装備され、後述する釜土台804により釜軸811と共にZ軸回りに回転可能に支持されている。
差動伝達機構400は、釜機構800に対して回転力を伝達する回転力伝達部410と、釜回動台130を回動させて釜801を中心線C回りに旋回移動させる回動力伝達部420と、回動により釜801に生じる釜軸811回りの位相の変動を補正する差動機構部430と、従動スプロケット422から入力される回動力により、釜回動台130と後述する支持枠431とをミシンフレーム101の支持フレーム105から見て同方向に回動させると共に釜回動台130を支持枠431の二倍の回動量で回動させる回動連動機構としての回動連動部440とを備えている。
[差動伝達機構:回転力伝達部]
回転力伝達部410は、釜801の回転駆動源となる釜駆動モータ401と、釜駆動モータ401からのトルクが入力される入力軸411と、入力軸411から差動機構部430を介してトルクが伝達されると共に釜機構800に出力する出力軸412と、釜駆動モータ401の出力軸に装備された主動スプロケット413と、入力軸411の下端部に固定装備された従動スプロケット414と、これらのスプロケット413,414に掛け渡された内歯のタイミングベルト415と、出力軸412の上端部に固定装備された出力スプロケット416と、当該出力スプロケット416と釜機構800の入力スプロケット822との間に掛け渡された内歯のタイミングベルト417とを備えている。
釜駆動モータ401は、出力軸を下方に向けた状態で支持フレーム105に固定されており、当該出力軸には主動スプロケット413が装備されている。
上記入力軸411と出力軸412は、後述する差動機構部430の支持枠431の下部と上部とに回転可能に支持されており、これら入出力軸411,412は、いずれも中心線Cと同一線上に配置されている。
そして、入力軸411の下端部には従動スプロケット414が装備され、主動スプロケット413及びタイミングベルト415を介して釜駆動モータ401からトルクが入力される。
また、出力軸412の上端部には出力スプロケット416が装備され、タイミングベルト417を介して入力スプロケット822から釜機構800にトルクを入力する。
[差動伝達機構:回動力伝達部]
回動力伝達部420は、釜801の回動駆動源となる釜回動モータ402と、釜回動モータ402の出力軸に装備された主動スプロケット421と、釜回動台130の上部フレーム132の上部外周に固定装備された従動部材としての従動スプロケット422と、これらのスプロケット421,422に掛け渡された内歯のタイミングベルト423とを備えている。
これらの構成により、釜回動モータ402から各スプロケット421,422及びタイミングベルト423を介して、釜回動台130にトルクが入力され、釜回動台130の搭載板131の上面において、中心線Cから偏心した位置に設けられた釜801に対して、中心線C回りの回動動作が付与されるようになっている。
[差動伝達機構:差動機構部]
差動機構部430は、入力軸411の上端部と出力軸412の下端部とを対向させた状態でこれらを回転可能に支持する支持枠431と、入力軸411の上端部に固定装備された第一のかさ歯車432と、出力軸412の下端部に固定装備された第二のかさ歯車433と、互いに対向する第一と第二のかさ歯車432,433の双方に噛合する伝達かさ歯車435を備えた伝達体434とを備えている。
支持枠431は、釜回動台130により当該釜回動台130に対して中心線C回りに回動可能に支持されており、当該支持枠431と釜回動台130とは個々に中心線C回りに回動することを可能としている。
また、支持枠431の下部の中心には同心で入力軸411が軸受けを介して軸支されており、上部の中心には同心で出力軸412が軸受けを介して軸支されている。
さらに、支持枠431の上下方向における中間部が略四角形の枠状構造となっており、当該枠状部において伝達体434が回転可能に支持されている。
伝達体434は、入力軸411と出力軸412の対向端部の間を通って中心線Cに直交する線上に設けられた軸部436と、当該軸部436に固定装備された伝達かさ歯車435とからなり、軸部436は支持枠431に軸受けを介して回転可能に支持されている。
また、伝達かさ歯車435は、第一と第二のかさ歯車432,433の双方に噛合して、第一と第二のかさ歯車432,433を介して入力軸411と出力軸412との間で互いに逆回りの回転を伝達可能としている。
かかる構造により、差動機構部430はいわゆる差動歯車機構を構成している。
図5は差動機構部430の支持枠431の回動により入力軸411−出力軸412間の伝達回転量への影響を示す説明図である。
第一のかさ歯車432と第二のかさ歯車433とは、歯数が等しく、相互の回転方向は逆に伝達されるが、伝達速度比は1:1となっている。
例えば、入力軸411から出力軸412に回転が伝達されている時に、支持枠431が入力軸411及び出力軸412を中心に角度αだけ回動を行うと、伝達かさ歯車435は第一のかさ歯車432の角度αの歯数分の回転を生じ、さらに、伝達かさ歯車435は第二のかさ歯車433を角度α分だけ回転させる。さらに、支持枠431が角度αだけ回動を行っているので、第二のかさ歯車433には伝達かさ歯車435の回転分と支持枠431の回動分の合計である角度2α分の回転を生じることとなる。つまり、支持枠431の一定方向の回動により、入力軸411に対して出力軸412は支持枠431の回動方向に二倍の回動角度分の角度差が発生することとなる。
[差動伝達機構:回動連動部]
回動連動部(回動連動機構)440は、釜回動台130の回動時に支持枠431を逆方向に所定の比率で連動的に回動させるものである。
この回動連動部440は、支持フレーム105に回転不能状態で固定された固定歯車441と、釜回動台130に回動可能に支持された支軸442と、支軸442に固定され、固定歯車441に噛合う大歯車443(第1歯車)と、支軸442に固定され、従動歯車445に噛合う小歯車444(第2歯車)と、支持枠431に固定装備され、当該支持枠431と共に中心線C回りに回動を行う従動歯車445とを備えている。
固定歯車441は、中心線Cを中心とする配置で平歯車であり、大歯車443は、釜回動台130の回動時に、固定歯車441に噛合して回転しつつ当該固定歯車441の周囲を周回移動するようになっている。つまり、この回動連動部440では、固定歯車441が太陽歯車、大歯車443が遊星歯車となる遊星歯車機構を構成している。
ここで、固定歯車441と大歯車443とは、歯数が同一であり、伝達比が1:1に設定されている。また、小歯車444と従動歯車445とは、歯数が1:2であり、小歯車444の回転に対して従動歯車445には逆方向に半分の回転が伝達される。
上記大歯車443は、釜回動台130が一定方向に回動を行うと、釜回動台130と共に中心線Cを中心に周回移動することで釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じ、さらに、固定歯車441との噛合により釜回動台130に対して支軸442回りに釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じるので、合計で、釜回動台130と同じ方向に二倍の角度変化を生じる。
一方、小歯車444は、釜回動台130が一定方向に回動を行うと、釜回動台130と共に中心線Cを中心に周回移動することで釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じ、さらに、大歯車443に連動して釜回動台130に対して支軸442回りに釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じるので、小歯車444も、釜回動台130と同じ方向に二倍の角度変化を生じる。
これに対して、従動歯車445は、小歯車444が釜回動台130の回動により周回移動を行うと、釜回動台130と同じ方向にその回動角度と等しい角度変化を生じる。しかし、大歯車443が固定歯車441に噛合することで生じる回転に伴い、小歯車444が支軸442回りに回転するので、釜回動台130と逆方向に伝達比に応じて釜回動台130の回動角度の半分の回転を生じる。その結果、従動歯車445には、合計で、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度の半分の回転を生じることとなる。
つまり、この回動連動部440により、釜回動台130が回動を行うと、支持枠431に対して、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度の半分の回動動作が連動して行われるようになっている。
差動伝達機構400は、上記の構成により、釜駆動モータ401の駆動により、入力軸411に対して一定の方向に一定の回転速度で回転が入力されると、差動機構部430を介して、出力軸412には逆方向に同じ回転速度で回転が伝達される。
さらに、釜回動モータ402により釜回動台130に対して、一定の方向に一定の回動角度で回動が入力されると、回動連動部440により、支持枠431は、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の半分の回動角度で回動動作が伝達される。
支持枠431が釜回動台130の半分の回動角度で回動を行うと、差動機構部430により、入力軸411に対して出力軸412には、支持枠431と同じ方向にその回動角度の二倍の回転角度変化を生じることとなる。
つまり、入力軸411に対して出力軸412には、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度と同じ回転角度変化を付与することができる。従って、釜回動台130の回動時に、出力軸412は釜回動台130に対して角度変化を生じないこととなる。
このため、釜回動台130の上で、釜機構800の釜801が回転駆動している状態において、釜回動台130の回動を行っても、出力軸412には釜機構800の回動と同じ角度変化が付与されるので、回動動作を行う釜回動台130上の釜機構800に対して、回動動作を行わない場所に釜駆動モータ401を設置しても、釜回動台130の回動時に釜回動台130上の釜機構800に入力される回転動作に位相差が発生しない構造となっている。
上記回動連動部440の動作を回動角度を具体的に定めた簡単な例によりに説明する。
釜回動台130が反時計方向に180度回転すると、支軸442に固定された大歯車443と小歯車444は、釜回動台130と共に中心線Cを中心に反時計方向に180度回転する。さらに、固定歯車441により、大歯車443と小歯車444は、支軸442回りに反時計方向に180度回転する。
そして、小歯車444が釜回動台130と共に中心線Cを中心に反時計方向に180度回転すると、小歯車444と噛み合っている従動歯車445は、中心線Cを中心に反時計方向に180度回転する。
また、小歯車444が支軸442回りに反時計方向に180度回転すると、小歯車444と従動歯車445とは歯数が1:2のため、従動歯車445は、中心線Cを中心に時計方向に90度回転する。
この結果、従動歯車445には、反時計方向に180度の回転と、時計方向に90度の回転を合計した、反時計方向に90度の回転が生じる。
従動歯車445は支持枠431に固定されており、支持枠431も反時計方向に90度回転する。支持枠枠431が反時計方向に90度回転すると、第二のかさ歯車433は、伝達かさ歯車435の回転分(自身の時計方向に90度)と支持枠431の回転分(反時計方向に90度)の合計である、反時計方向に180度回転する。第二のかさ歯車433は出力軸412に固定されているため、出力軸412も反時計方向に180度回転する。
図2に示すように、出力軸412に固定された出力スプロケット416と、釜機構800の入力スプロケット822とは、タイミングルト417で掛け渡されている。
しかし、釜回動台130が反時計方向に180度回転すると、出力軸412も反時計方向に180度回転する。このため、釜回動台130の回転に伴い、入力スプロケット822に回転が生じないので、釜機構に位相差が発生しない。
[釜機構]
図6は釜機構800の平面図、図7、8はそれぞれ釜機構800の一部の構成を省略した図3と異なる方向から見た斜視図である。
図2〜図4、図6〜図8に示すように、釜機構800は、釜回動台130の搭載板131の上面に搭載されている。この釜機構800は、一定方向に連続的に回転を行う外釜802とボビンを格納する内釜803とからなる水平釜としての釜801と、差動伝達機構400からのトルクを外釜802に伝達するトルク伝達機構810と、釜軸811を介して外釜802を回転可能に支持する釜土台804と、当該釜土台804に設けられ、内釜803に設けられた凸部803aが嵌合して内釜803の回転を規制する回り止め805と、針棒12の上下動と同じ周期で内釜803に当接して回り止め805と内釜の凸部803aとに上糸の抜ける隙間を形成するオープナー806と、オープナー806を作動させるオープナー作動部820と、釜土台804に搭載され、下糸の切断を行うメス機構830と、釜土台804の内部に潤滑油を供給する給油機構840とを備えている。
[釜機構:釜]
釜801の内釜803は、上部が開放された有底の略筒状体であり、内底面の中心にはボビンをはめ込む軸部が立設されており、当該ボビンを格納する機能を有している。
外釜802も上部が開放された有底の略筒状体であり、その内部に内釜803を格納保持する。この外釜802は、内釜803を同心の状態を保持すると共に、当該内釜803に対して回転可能に結合されている。また、外釜802の底面の中心には、後述する釜軸811が垂下した状態で固定装備されている。そして、釜軸811は、Z軸方向に沿った状態で回転可能に釜土台804に支持され、釜土台804はネジ止めにより釜回動台130の搭載板131の上面に固定装備されている。
外釜802は、釜軸811から一定方向にトルクが入力され、針上下動の二倍の速度で回転が行われるようになっている。そして、外釜802に設けられた剣先が二回転に一回の割合で縫い針11から上糸を捕捉するようになっている。
外釜802は、内釜803の外周に取り付けられ、内釜803に摺接しつつ垂直な中心線回りに一定方向の連続的な全回転を行う。
一方、内釜803は、外釜802と供に回転を生じないように、外周上部に上方に突出した凸部803aを備え、当該凸部803aが回転方向の両側に迫る回り止め805に嵌合している。なお、嵌合部としては凸部803aのように突出する形状に限らず、例えば凹状とし、回り止め805を凸状にして嵌合させても良い。
[釜機構:オープナー作動部]
オープナー作動部820は、釜土台804を上下に貫通し、Z軸方向に並行な状態で回転可能に支持されたオープナー軸821と、オープナー軸821の下端部に固定装備された入力スプロケット822と、オープナー軸821の上端部において当該オープナー軸821の回転中心線から偏心した位置に設けられた偏心軸823と、偏心軸823に一端部が連結されたクランクロッド824と、オープナー806を保持すると共にクランクロッド824の他端部に連結された回動腕825とを備えている。
入力スプロケット822は、前述したように、差動伝達機構400の出力スプロケット416からタイミングベルト417を介してトルクが入力される。この入力スプロケット822は、出力スプロケット416よりも径が小さく、針棒12の上下動と同じ回転速度で入力スプロケット822が回転を行うように回転が増速されてトルクが入力される。
また、入力スプロケット822の近傍には図示しないテンションローラが併設されている。釜土台804は長穴を介してネジ止めにより釜回動台130の搭載板131の上面に固定装備されており、ネジを緩めることで位置調節を行い、釜801の位置調節を可能としている。この釜801の位置調節により、入力スプロケット822と出力スプロケット416との間に掛け渡されたタイミングベルト417が緩まぬよう、テンションローラがタイミングベルト417に常時押しつけられて、ベルトに張力を付与している。
回動腕825は、釜土台804の上部において、Z軸回りに回動可能に支持されており、その回動腕825の一端部がクランクロッド824の他端部に連結されている。クランクロッド824は前述したように、その一端部が偏心軸823に連結され、周回運動が付与されるので、その他端部では回動腕825をオープナー軸821の回転と同じ周期で回動させることができる。
従って、回動腕825に固定装備されたオープナー806もその先端部が回動腕825と共に往復回動を行うこととなる。オープナー806はその回動動作により、内釜803の外周上部からその半径方向外側に延出された係止突起803bに接触し、外釜802の回転時に内釜803の凸部803aと回り止め805とが密着する部位を引き離し、上糸の通過を可能としている。
[釜機構:トルク伝達機構]
トルク伝達機構810は、外釜802の底面中心に固定装備された釜回転軸としての釜軸811と、オープナー軸821の中間に固定装備された主動歯車812と、釜軸811に固定装備された従動歯車813とから構成されている。
主動歯車812と従動歯車813の歯数の比率は2:1であり、オープナー軸821から釜軸811には二倍速で回転が伝達される。つまり、釜801の外釜802は、縫い針の上下動の回数に対して二倍の速度で回転が行われる。
なお、このトルク伝達機構810では歯車機構を採用しているが、トルク伝達可能なあらゆる種類の伝達機構を用いることが可能である。例えば、ベルト機構を用いても良い。その場合、釜駆動モータ401を逆回転で駆動させるか、出力スプロケット416と入力スプロケット822との間のトルク伝達をタイミングベルト417に替えて歯車機構を用いることが望ましい。
[釜機構:給油機構]
図9(A)は給油機構840の水平方向の断面図、図9(B)は給油機構840の垂直方向の断面図である。
給油機構840は、釜土台804に設けられた潤滑油を貯留する図示しないオイルタンクと、オープナー軸821の中間位置に形成された回転部841と、釜土台804内周と回転部841の切り欠け部841aとにより形成された油供給空間としてのポンプ室844と、ポンプ室844の上部と下部に装着されるオイルシール845、846と、ポンプ室844に連通する潤滑油の導入口843と、ポンプ室844に連通する潤滑油の排出口842と、回転部841の外周に当接して往復運動を行うプランジャ847とを備えており、これらによりプランジャポンプ型の給油ポンプが構成されている。
回転部841の切り欠け部841aは、片側が楕円状に切り欠かれて形成されている。また、導入口843はチューブを介してオイルタンクに接続されている。また、排出口842は、チューブを介して釜軸811や釜レース面に接続されている。
オープナー軸821は、上方から見ると反時計方向に回転し、導入口843に負圧が発生し、その負圧によって吸引力が発生し、オイルタンク内から潤滑油が吸引される。ポンプ室内に吸引された潤滑油は、オープナー軸821の回転とプランジャ847の作用によって、釜軸や釜レース面に潤滑油を供給する。
なお、この給油機構840では、プランジャポンプを例示したが、回転駆動源を用いることができるいずれの形式のポンプを使用しても良い。
[釜機構:メス機構]
メス機構830は、固定メス831を固定保持するメス土台832と、固定メス831との協働により上糸及び下糸を切断する動メス833と、動メス833を保持するメス保持腕834と、メス保持腕834をZ軸回りに回動可能とするメス支軸835と、メス保持腕834に回動の動力を付与するカムとしての外周カム836と、メス支軸835の下端部に設けられ、外周カム836から回動の動力が入力されるメス駆動腕837と、外周カム836からメス駆動腕837への動力の入力の接続と切断とを切り替えるメス駆動用のエアシリンダ838と、エアシリンダ838の切り替え動作を伝達する伝達腕839とを備えている。
メス保持腕834は、釜801の上方で往復の回動を行い、動メス833と固定メス831とで上糸及び下糸の切断を行う。
このメス保持腕834の往復回動の動力は、メス支軸835を介してメス駆動腕837から入力される。
メス駆動腕837は、その回動端部にコロ837aを保持しており、当該コロ837aを外周カム836の外周に当接させることで、外周カム836の外周形状に応じて回動動作が入力される。
外周カム836は、オープナー軸821の下部に固定装備され、オープナー軸821と共に回転を行う。そして、その外周の一部は、回転中心からの距離が大きくなっており、当該部位からコロ837aを介してメス駆動腕837に回動動作が付与される。
このように、メス機構830は、糸切り動作の動力をオープナー軸821から得ている。
一方、オープナー軸821は、縫製中は連続して一定方向に回転を行っているので、外周カム836も同様に連続的に回転を行う。従って、メス機構830では、縫製中は、メス駆動用のエアシリンダ838を制御して、伝達腕839を介してコロ837aが外周カム836に接触しない位置まで退避させておき、縫製終了時などの糸切り実行時にエアシリンダ838を作動させてコロ837aを外周カム836に当接させて、糸切りを実行している。
[ミシンの制御系:制御装置]
図10はミシン100の制御系を示したブロック図である。ミシン100は、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置110を備えている。そして、制御装置110は、縫製における動作制御を行うためのプログラムが格納されたROM112と、演算処理の作業領域地となるRAM113と、縫製データを記憶する記憶手段としての不揮発性のデータメモリ114と、ROM112内のプログラムを実行するCPU111とを備えている。
また、CPU111は、図示しないインターフェイスを介してミシンモータ駆動回路21a、X軸モータ駆動回路102e、Y軸モータ駆動回路102f、釜駆動モータ駆動回路401a、釜回動モータ駆動回路402a、針回動モータ駆動回路32aと接続され、これらを介して、さらに、ミシンモータ21、X軸モータ102c、Y軸モータ102d、釜駆動モータ401、釜回動モータ402、針回動モータ32のそれぞれに接続され、各モータ21,102c,102d,401,402,32の駆動を制御する。
また、ミシンモータ21は、図示しないエンコーダを備えており、その検出角度がCPU111に出力される。
また、上記各モータ102c,102d,401,402,32はステッピングモータであり、これらの図示しない原点検索手段がCPU111に接続され、その出力からCPU111は各モータの原点位置を認識することができる。
さらに、CPU111は、インターフェイスを介して、釜機構800のメス駆動用エアシリンダ838を作動させる電磁弁838aの開閉を切り替える駆動回路838bと接続され、当該駆動回路838bを介して電磁弁838aの制御を行う。
データメモリ114に格納されている縫製データには、所定の縫製パターンを縫製するための一針ごとのX軸モータ102c及びY軸モータ102dの動作量が順番に記憶されており、CPU111は、縫製の際には、一針ごとにX軸モータ102c及びY軸モータ102dを駆動する動作制御を行う。
また、制御装置110は、縫製時には、ミシンモータ21と釜駆動モータ401とが、針棒12の上下動周期と釜801の回転周期とが一致するよう同期制御を実施する。このため、ミシンモータ21と釜駆動モータ401とには、それぞれ図示を省略したエンコーダが併設されている。
また、CPU111は、上記縫製データに基づく縫製制御の実行に伴い、ヒッチステッチ回避制御を実行する。図11は、X−Y平面上において、針棒の中心線Cの位置から釜801の回転中心線の位置に向かう基準線P(図2参照)の方向を基準(0°)とした場合に、ヒッチステッチが発生する縫い方向を斜線のエリアHで示した説明図である。即ち、図示のように、針棒中心線Cの位置から釜801に向かう方向に対してθ1からθ2の角度範囲内に向かって運針を行うと、ヒッチステッチが発生する。かかるヒッチステッチの発生する方向は、釜の種類やその他の諸条件により変動するので、ミシンごとに試し縫い等を行って得られた角度θ1、θ2の数値を特定しても良い。これらθ1、θ2の値は予めデータメモリ114内に登録されている。
そして、CPU111は、縫製時に縫製データの一針ごとのX軸モータ102c及びY軸モータ102dの動作量を読み込むと、当該各動作量から次の運針の縫い方向を算出し、現在の釜801の位置を基準に算出した縫い方向がθ1からθ2の角度範囲内か否かを判定する。そして、範囲内の時には、針落ちが行われる前に、θ1からθ2の角度範囲から外れる角度まで針回動モータ32及び釜回動モータ402を同期的に駆動し、針棒12及び釜土台804を中心線C回りに回動させる。また、縫い方向がθ1からθ2の角度範囲外の場合には、現在の針棒12及び釜土台804の回動位置を維持する。
上記ヒッチステッチ回避制御を縫製データの全針について実施することにより、縫製パターン全体においてヒッチステッチの発生を回避することが可能である。
即ち、この制御装置110は縫い制御手段として機能するものである。
図12は上記ヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。これに基づいてヒッチステッチ回避制御を具体的に説明する。
まず、縫製時において、CPU111は、縫製データからX軸方向及びY軸方向の移動量の読み込みと現在の釜801の中心線Cを中心とする角度の記憶の読み込みを行う(ステップS1)。
そして、中心線Cの位置と釜801の中心位置とを結ぶ基準線Pに対する縫い方向の角度θ0を算出する(ステップS3)。
さらに、CPU111は、算出した縫い方向の角度θ0がθ1からθ2の角度範囲内か否かを判定する(ステップS5)。
そして、角度範囲外の場合にはそのまま処理を終了して針落ちを行い、角度範囲内の時には、正逆いずれの方向に釜801を回動させるべきかを判定する(ステップS7)。
即ち、θ1−θ0の絶対値がθ2−θ0の絶対値よりも小さいか否かを判定し、θ1−θ0の絶対値が小さい場合には、当該値にマージンとなる角度αを加算した角度で釜801及び針棒12の正方向の回動を行う(ステップS9)。
また、θ2−θ0の絶対値が小さい場合には、当該値にマージンとなる角度αを加算した角度で釜801及び針棒12の逆方向の回動を行う(ステップS11)。
なお、マージンとなる角度αは任意に設定可能とすることが望ましく、その設定値はデータメモリ114内に記憶される。なお、このαも絶対値である。
さらに、CPU111は、次回のヒッチステッチ角度領域判定のために、回動を行った後の釜801の中心線回りの角度を記憶する。
そして、ヒッチステッチ回避制御を終了する。なお、かかる制御は、毎針の針落ちの前に実施される。
なお、上記制御にあっては、釜回動モータ402の原点検索を行った後、制御動作量を逐次記憶することにより中心線C回りの釜801の角度を常に把握することが可能であるが、釜回動台130或いは針棒回動台31に角度センサを設け、その検出により釜801の角度を取得しても良い。
[第一の実施形態の作用効果]
以上の構成により、ミシン100は、制御装置110が、布移動機構102による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるように、釜回動モータ402を駆動して、中心線C回りに釜土台804及び針棒12を回動させることにより、ヒッチステッチの発生を効果的に回避することができ、縫い全体に渡ってパーフェクトステッチを実現することで縫い品質を飛躍的に向上することが可能となる。
また、差動伝達機構400により、釜土台804を中心線C回りに回動させても縫い針11に対する釜801の位相が一定に維持されるので、釜801の剣先が適正なタイミングで縫い針11から上糸を捕捉することができ、安定した縫製を行うことが可能となる。
また、差動伝達機構400により、釜土台804上に釜801の回転駆動源となる釜駆動モータ401を搭載することなく、釜土台804の回動時における釜801に生じる位相差の発生を防止できるので、釜回動台130の軽量化を図ることが可能となり、釜回動モータ402を出力の小さい小型のものを使用することが可能となると共に、釜回動台130の支持構造等も小型化することが可能となる。
また、釜回動台130の慣性モーメントを低減することができ、釜の回動動作の誤差を低減することができ、精密な動作制御及び高速の釜801の回動動作が可能となる。従って、縫製の高速化も実現可能となる。
また、差動伝達機構の他の例として、回動連動部440を使用せずに、釜回動台130と支持枠431とに外径が1:2の従動スプロケットを個別に装備し、これらの従動スプロケットを同心で配置すると共に、釜回動モータ402からそれぞれタイミングベルトを介して回転駆動することで、釜回動台130と支持枠431とを同方向に2:1の回転角度で連動回転させることも可能である。
しかしながら、上記構成の場合には、釜回動台130に対するタイミングベルトと支持枠431に対するタイミングベルトとに個別の伸びによる誤差が発生し、これによる釜土台804の回動時に釜801に位相差が発生して剣先が適正なタイミングで上糸を捕捉できなくなる可能性を生じる。
これに対して、ミシン100では、釜回動台130と支持枠431との間に回動連動部440を設けているので、釜回動モータ402から釜回動台130又は支持枠431のいずれか一方に回転を付与すればもう一方にも回動を付与することができる。従って、二つのタイミングベルトにより釜回動台130と支持枠431とに個別に回動を付与する場合のように、二本のタイミングベルトに生じる伸びの長さの違いによる釜801の位相のズレを抑制することが可能となる。
また、ミシン100の場合、回動連動部440が釜回動台130と支持枠431と間にズレを生じさせる可能性も有するが、釜回動台130と支持枠431とは同心で近接して配置されているので、回動連動部440によるズレは十分に低減することが可能である。特に、回動連動部440を歯車機構で構成することにより、タイミングベルトの伸びに起因するズレを排除することができ、釜801の剣先がより適正なタイミングで上糸を捕捉することを可能とする。従って、釜回動時に目飛びなどの発生を低減し、高い縫い品質の縫製を行うことが可能である。
なお、上記針棒回動機構30の針回動モータ32と差動伝達機構400の釜回動モータ402とは一つのモータにより共通化を図っても良い。例えば、釜回動モータ402の動力を、ミシンフレーム101内に配設した軸、歯車機構、ベルト機構又はこれらの組み合わせからなる周知の動力伝達機構で針棒回動台31に伝達し、回動させる構成としても良い。また、逆に、針回動モータ32の動力で差動伝達機構400の釜回動台130側に周知の動力伝達機構で伝達する構成としても良い。具体的には、ミシンフレーム101に、ミシンアーム部101aからミシンベッド部101bに至るZ軸方向に沿った回転軸を設け、当該回転軸に単独のモータ(針回動モータ32又は釜回動モータ402)で回動動力を付与すると共に、当該回転軸に主動スプロケット33,421を装備する構成としても良いし、当該回転軸から主動スプロケット33,421にベルト機構や歯車機構を介して回動動作を伝達しても良い。
上述のように、針回動モータ32と釜回動モータ402とを一つのモータで共用する構成とした場合には、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。また、各モータ32,402の同期制御を不要とし、制御回路等の構成をより簡易化することが可能となる。
また、上記ミシン100では、差動伝達機構400から釜機構800の釜軸811ではなくオープナー軸821に対してトルク入力を行い、オープナー軸821からトルク伝達機構810を介して二倍に増速して釜軸811に回転を伝達している。
かかるオープナー軸821は、オープナー806を周期的に回動させるための軸であるため、針棒12の上下動と同じ周期で回転を行えばよく、釜軸811の回転速度の半分の速度で回転を行う。従って、釜駆動モータ401は釜軸811にトルクを入力する場合に比べて半分の速度で回転を行えばよく、出力が小さな小型のモータを使用することが可能となる。
また、釜軸811の半分の速度で回転を行うオープナー軸821にトルクを入力し、当該オープナー軸821から釜機構800の各構成、即ち、給油機構840,メス機構830,釜801にトルクを付与する構成としている。この場合、釜軸811にトルクを入力し、釜軸811から給油機構840,メス機構830,オープナー作動部820の各構成にトルクを付与する構成とした場合と比較して、釜801と同じ速度(針棒12の二倍速)で回転動作を行う部材が低減するので、釜機構800全体を動作させるための動力を低減することができ、この点からも釜駆動モータ401を出力の小さな小型のモータを使用することが可能となる。
また、オープナー軸821から釜機構800の給油機構840,メス機構830,釜801にトルクを付与する構成とすることで、動力を集約し、必要となる駆動源の個体数や各部への動力伝達部材の低減を図ることが可能となる。
[第一の実施形態の各部における変更例]
ミシンモータ21と差動伝達機構400の釜駆動モータ401とは一つのモータにより共通化を図っても良い。例えば、釜駆動モータ401の動力を、ミシンフレーム101内に配設した軸、歯車機構、ベルト機構又はこれらの組み合わせからなる周知の動力伝達機構で上軸22に伝達し、針棒12の上下動を行う構成としても良い。また、逆に、ミシンモータ21の動力で差動伝達機構400の入力軸411側に周知の動力伝達機構で伝達する構成としても良い。
具体的には、ミシンフレーム101に、ミシンアーム部101aからミシンベッド部101bに至るZ軸方向に沿った回転軸を設け、当該回転軸と上軸22とを傘歯歯車機構で動力伝達可能に連結し、当該回転軸にベルト機構や歯車機構で入力軸411とを動力伝達可能に連結し、釜駆動モータ401を省略する構成としても良い。
また、釜駆動モータ401から前述の回転軸に回転力を付与し、上軸22を回転駆動して、ミシンモータ21を省略する構成としても良い。
上述のように、ミシンモータ21と釜駆動モータ401とを一つのモータで共用する構成とした場合、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
また、各モータの同期制御を不要とし、制御回路等の構成をより簡易化することが可能となる。
さらに、ミシンモータ21と釜駆動モータ401とを一つのモータで共用した場合であっても、回動連動部440を有するので、例えば、ミシンの停止状態において、メンテナンスなどの際に、釜801の釜回動台130を回動させた場合に、針棒12に上下動が伝達されず、縫い針11と他の物体との接触などを防止することが可能となる。
また、上記ミシン100では、水平全回転釜からなる釜801を例示したが、全回転の垂直釜を用いても良いし、半回転の垂直釜を用いても良い。
垂直釜を用いる場合には、釜駆動モータ401から釜801に至るまでの動力伝達経路の途中(例えば釜土台804)に傘歯歯車機構などを設けて、水平方向に沿った釜軸に回転力を伝達する構成とすることが望ましい。またその場合、オープナーは不要となるので、オープナー軸を介することなく釜軸に回転力を付与することが望ましい。
また、半回転釜を用いる場合には、釜駆動モータ401から釜801に至るまでの動力伝達経路の途中(例えば釜土台804)に、全回転を往復回動に変換する周知の変換機構(例えば、偏心カム機構やクランク機構など)を設ける構成とすることが望ましい。
ミシンモータ21から歯車機構等を介して入力軸411にトルクを入力し、さらに、オープナー軸821にトルクを付与する構成とした場合には、釜軸に付与する場合のように上軸の二倍速でトルク付与を行う場合と異なり、上軸と等速でトルク付与を行えばよいので、歯車等の伝達部材の摩耗などを低減し、耐久性の向上を図ることが可能となる。
なお、上記モータの共通化や釜の種別の変更例は、基本的に、以下に示す他の実施形態又は他の変形例にも適用可能である。
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態について説明する。この第二の実施形態たるミシンは、前述したミシン100の回動力伝達部420,差動機構部430及び回動連動部440とは異なる構造を採用した回動力伝達部420A,差動機構部430A及び回動連動部440Aを有する差動伝達機構400Aを搭載したものである。
以下の説明では、差動伝達機構400Aについて差動伝達機構400と異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
図13は差動伝達機構400Aの斜視図、図14は中心線Cに沿った断面図である。
まず、回動力伝達部420Aは、前述した回動力伝達部420と異なり、釜回動台130ではなく支持枠431Aに回動力を付与する構造となっている。即ち、回動力伝達部420Aは、支持枠431Aの上部に取り付けられた従動部材としての従動スプロケット422Aに対して釜回動モータ402から回動力を付与している。
差動機構部430Aは、支持フレーム105により中心線C回りに回動可能に支持されると共に、入力軸411の上端部と出力軸412の下端部とを対向させた状態でこれらを回転可能に支持する支持枠431Aと、入力軸411の上端部に固定装備された第一の平歯車432Aと、出力軸412の下端部に固定装備された第二の平歯車433Aと、互いに対向する第一と第二の平歯車432A,433Aの各々に噛合する平歯車435A,437Aを備えた伝達体434Aとを備えている。
伝達体434Aは、Z軸方向に沿った状態で支持枠431Aに回転可能に支持された軸部436Aを有し、当該軸部436Aには、二つの平歯車435A,437Aが上下に固定装備されて同時回転可能となっている。
第一の平歯車432Aとこれに噛合する平歯車435Aは歯数の比が3:1であり、第一の平歯車432Aからの回転を平歯車435Aに対して逆方向に三倍速で伝達する。
第二の平歯車433Aとこれに噛合する平歯車437Aは歯数の比が1:1であり、平歯車437Aからの回転を第二の平歯車433Aに対して逆方向に等倍速で伝達する。
かかる構成において、例えば、入力軸411を停止させたままの状態で支持枠431Aを所定方向に回動させると、二つの平歯車435A,437Aには支持枠431Aと同じ方向に支持枠431Aの四倍の角度で回動を生じる。その結果、第二の平歯車433Aには支持枠431Aと逆方向に支持枠431Aの二倍の角度で回動が伝達される。かかる構造により、差動機構部430Aはいわゆる差動歯車機構を構成している。
上記第二の平歯車433Aの角度変化を詳細に説明する。
第二の平歯車433Aには、支持枠431A同じ方向にその回転角度と等しい角度変化が生じる。それに加えて、第二の平歯車433Aには、平歯車437Aの軸部436A回りの3倍速により、支持枠431Aと逆方向に3倍速の角度変化が生じる。この二つの角度変化を合算すると、第二の平歯車433Aには、支持枠431Aと逆方向に支持枠431Aの二倍の角度で回動が伝達される。
従って、釜回動台130を回動させた場合に、入力軸411から出力軸412への伝達回転に位相の変化を生じさせないためには、支持枠431Aを釜回動台130と逆方向に釜回動台130の半分の角度で回動させれば良い。
上記の前提に基づいて、回動連動部(回動連動機構)440Aは、支持枠431Aを釜回動台130と逆方向に釜回動台130の半分の角度で回動させる機能を有している。換言すると、回動連動部440Aは、支持枠431Aに釜回動モータ402から回動が付与されると、支持枠431Aとは逆方向に二倍の回動角度で釜回動台130を連動回動させる。
即ち、回動連動部440Aは、支持フレーム105に回転可能な状態で支持された三つの遊星歯車441Aと、釜回動台130に同心で固定装備された外歯の従動歯車443Aと、支持枠431Aに同心で固定装備された内歯の主動歯車445Aとを備えている。
従動歯車443Aは釜回動台130の下部に同心で固定され、当該釜回動台130と共に中心線C回りに回動を行う。
主動歯車445Aは支持枠431Aの上部に同心で固定され、当該支持枠431Aと共に中心線C回りに回動を行う。
そして、外歯の従動歯車443Aは内歯の主動歯車445Aの内側に同心で配置され、これらの歯車443A,445Aの間に遊星歯車441Aが双方に噛合した状態で配置されている。
そして、内歯の主動歯車445Aと外歯の従動歯車443Aは歯数の比率が2:1であり、支持枠431Aに釜回動モータ402から回動が付与されると、支持枠431Aとは逆方向に二倍の回動角度で釜回動台130に回動が伝達される。
これにより、回動連動部440Aは、差動機構部430Aとの協働により、釜回動台130の回動時において、入力軸411から出力軸412に回転が伝達されている場合に、回転の位相のズレを防止することが可能となっている。
なお、回動連動部440Aの遊星歯車441Aは支持フレーム105に支持されているため、太陽歯車である従動歯車443Aの周囲の周回移動を行わないが、従動歯車443Aからの視点で見ると、相対的に遊星歯車441Aが従動歯車443Aの周囲を周回移動しているため、回動連動部440Aは、実質的に遊星歯車機構を構成していると言うことができる。
以上の構成からなる差動伝達機構400Aも、差動伝達機構400と同様の効果を得ることが可能である。
[第三の実施形態]
第三の実施形態たるミシン100Bについて図15から図24に基づいて説明する。
以下の説明では、ミシン100Bについてミシン100と異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
このミシン100Bはいわゆる二本針ミシンである。二本針ミシンでは、針棒を中心とする任意の縫い方向に被縫製物を搬送する場合に、いずれの方向に対しても縫い目の間隔を一定に維持することができるように、針棒を回動させて縫い方向に対する二本針の並び方向を一定に維持し、これに対応するための二つの釜の回動動作が行われている。なお、二本針ミシンの場合も、前述した一本針ミシンであるミシン100と同様に、針棒及び釜を所定の中心線C回りに回動させる必要があるが、二本針ミシンの場合には、上述のように、二本の縫い目の間隔を一定に維持することを目的として行うものであり、ヒッチステッチの発生を解消するために行うものではない。
図15はミシンアーム部101a内の構成について示した斜視図、図16は二本の針棒12B,12Bの周辺の構成を示した側面図である。
なお、前述したミシン100では縫い針11を通過する鉛直上下方向に沿った直線を針棒12B及び釜801の回動の中心線Cとしたが、このミシン100Bでは、二本並んだ縫い針11,11の丁度中間を通過する鉛直上下方向に沿った直線を二本の針棒12B及び二つの釜801の回動の中心線Cとする。
上記ミシン100Bは、各々が縫い針11をその下端部に保持してZ軸方向に沿って上下動を行う二本の針棒12B,12Bと、ミシンモータ21を駆動源として縫い針を上下動させる針上下動機構20Bと、二本の針棒12B,12Bを上下動可能に支持する針棒回動台31Bを介して二本の針棒12B,12BをZ軸方向に沿った中心線C回りに回動させる針棒回動機構30Bと、二本の針棒12B,12Bを保持して針上下動機構20Bによる上下動動作を伝達するラッチ機構50Bと、ラッチ機構50Bの保持状態が解除された針棒12Bを保持するストッパ機構90Bと、ラッチ機構50Bによる各々の針棒12B,12Bの保持状態と解除状態を切り換える作動部材16Bと、作動部材16Bの位置切り替えを行う位置切り替え機構60Bと、各縫い針11,11に通された上糸に下糸を絡める二つの釜801,801を備える釜機構800Bと、釜駆動モータ401から釜801,801に動力を伝達する差動伝達機構400Bと、布地を保持してX−Y平面に沿って任意に移動位置決めを行う移動機構としての布移動機構102と、ミシンフレーム101と、各構成制御する制御装置110B(図22参照)とを主に備えている。
上述のように、二本針ミシンでは、二本の針棒12B,12Bの内、任意の針棒12Bが針落ちしないように選択的に上方で保持するためのラッチ機構50Bとストッパ機構90Bが必須であり、さらに、これらによる針棒12B,12Bの保持状態と解除状態を切り換えるための位置切り替え機構60B等が必要となる。また、二つの釜801に回転及び回動を行うための構成が必要である点が、主に前述したミシン100と異なっている。
[針上下動機構]
図15及び図16に示すように、針上下動機構20Bは、上軸22と、ミシンモータ21と、針棒クランク23と、クランクロッド24と、ラッチ機構50Bを介して針棒12B,12Bに連結された針棒抱き25Bと、針棒抱き25BをZ軸回りに回動可能に保持する環状部材26Bとを備えている。
針棒12B,12Bを支持する針棒回動台31Bは、ミシンフレーム101によってZ軸回りに回動可能に支持されており、クランクロッド24から針棒12B,12Bに対してZ軸回りの回動を許容しつつ、上下動動作を伝える必要がある。
このため、針棒抱き25Bは、略リング状に形成され、その中央開口部に針棒12B,12B、ラッチ機構50B及び針棒回動台31Bを挿通させると共に、その内側には、針棒12B,12Bを保持するラッチ機構50Bの両側に連結されるY軸方向に沿った二本の支軸251B,251Bを擁している。この支軸251B,251Bにより、針棒抱き25Bはラッチ機構50Bを介して針棒12B,12Bと一体となって上下動を行うことができる。
そして、針棒抱き25Bは、その外周面上に凹溝252Bが全周に渡って形成されており、この凹溝252Bには、環状部材26Bが嵌合し、当該凹溝252Bに沿って針棒12Bが滑動可能となっている。この環状部材26Bは半円状である。環状部材26Bの直径方向の一端部がクランクロッド24の下端部に対してY軸回りに回動可能に連結され、他端部には矩形の角駒261BがY軸回りに回動可能に装備されている。また、クランクロッド24の下端部における環状部材26Bの反対側にも角駒241BがY軸回りに回動可能に装備されている。そして、これらの角駒241B,261Bは、ミシンフレーム101内に形成されたZ軸方向に沿った図示しないガイド溝に嵌合し、環状部材26B及び針棒抱き25Bが水平の向きを維持したまま上下動動作がガイドされる。なお、環状部材26Bは、平面視で半円状であるが、全周に渡るリング状に形成しても良い。
この構造により、クランクロッド24の下端部おける上下動動作は、環状部材26B、針棒抱き25B、ラッチ機構50Bを介して二本の針棒12B,12Bに伝達されると共に、針棒回動台31BにおけるZ軸回りの回動動作を許容することが可能となっている。
[針棒回動台]
針棒回動台31Bは、図15及び図16に示すように、その上部311Bと下部312Bとがブロック状に形成されると共に当該上部と下部とをZ軸方向に沿った二つの側壁部313B,314Bが連結している。
そして、上部311Bと下部312Bは、いずれも二本の針棒12B,12Bを挿通する貫通穴がZ軸方向に沿って貫通形成されると共に、これらがミシンフレーム101により回動可能に支持されている。そして、この針棒回動台31Bの回動中心線Cは、Z軸方向に平行であり、また、上方から見て、二本の針棒12B,12Bのほぼ中間を通過するように設計されている。
また、側壁部313Bには、Z軸方向に沿った長穴315Bが形成されており、前述した針棒抱き25Bとラッチ機構50Bとを連結する一方の支軸251Bが挿通されている。
[ラッチ機構]
図17は一方の針棒12Bの中心に沿った断面による針棒12Bの周辺構造の断面図である。
図示のように、前述した針棒12Bは、Z軸方向に沿った溝部121Bが形成されており、当該溝部121Bの下部にはラッチ機構50Bが針棒12Bを保持するための係合穴122Bが形成され、溝部121Bの上部にはストッパ機構90Bが針棒12Bを保持するための係合穴123Bが形成されている。また、溝部121Bの内部には、ストッパ機構90Bによる針棒保持状態をラッチ機構50Bによる針棒保持状態に切り替えるための揺動板124Bが揺動可能に設けられている。
ラッチ機構50Bは、二本の針棒12B,12Bを挿通する二つの挿通穴がZ軸方向に形成された保持体51Bと、保持体51Bの正面から各挿通穴まで貫通した円形の支持穴に挿入される二つのラッチ部材52Bと、各ラッチ部材52Bをそれぞれ個別に進退移動させる二つの従動リンク53Bと、各従動リンク53Bを介して各ラッチ部材52Bに対して前進方向の移動力を個別に付与する二つの押圧バネ54Bと、各ラッチ部材52Bを後退した状態(退避位置)でそれぞれ係止する二つの係止爪55Bと、各係止爪55Bが係止を行う方向にそれぞれ押圧する二つの押圧バネ56Bと、各係止爪55Bによる係止を解除する操作を外部から入力可能な解除ピン57Bとを備えている。
保持体51Bの二つの挿通穴はX軸方向に沿って形成され、略円柱状のラッチ部材52BをX軸方向に沿って滑動可能に支持している。
このラッチ部材52Bの後端部は、従動リンク53Bに連結されており、従動リンク53Bは押圧バネ54Bによりラッチ部材52Bを針棒12B側に押圧している。ラッチ部材52Bは、その先端部が針棒12Bの係合穴122Bに挿入可能な形状に形成されており、押圧バネ54Bの押圧力がラッチ部材52Bと針棒12Bの係合穴122Bとの係合状態を維持し、ラッチ機構50Bによる針棒12Bの保持力となっている。
また、従動リンク53Bの上端部は下方に押圧されるとラッチ部材52Bを後退させることができ、ラッチ機構50Bによる針棒12Bの保持状態を解除することができる。
また、上記ラッチ部材52Bの後退時には、押圧バネ56Bにより常時上方に押圧されている係止爪55Bがラッチ部材52Bの先端部を係止して、当該ラッチ部材52Bの前進移動を規制する。なお、二つの係止爪55Bはいずれも、解除ピン57Bにより下方に押圧されることでラッチ部材52Bの係止状態を解除することが可能となっている。
従動リンク53Bの上端部は、針棒12Bの上下動において、その上死点に達する際に、針棒回動台31Bの上部311BにおいてY軸方向にスライド可能に支持されている、図15に示す作動部材16Bの突起161B(図17に示す)に衝突することで押圧することができる。即ち、作動部材16Bは、3ポジションの位置切り替えが可能なソレノイド61BによりY軸方向への移動が可能となっており、一方の針棒12Bの保持状態を解除する従動リンク53Bに衝突する位置P1と他方の針棒12Bの保持状態を解除する従動リンク53Bに衝突する位置P3と解除ピン57Bに衝突する位置P2とに位置を切り替える制御が行われる。作動部材16Bは、針棒回動台31B上で位置切り替え動作を行うことによってラッチ機構50Bによる各々の針棒の保持状態を解除する。
これにより、ラッチ機構50Bにおける二本の針棒12B,12Bに対する保持と解除とを個別に行うことを可能としている。
[ストッパ機構]
ストッパ機構90Bは、針棒回動台31Bの上部311Bにおいて当該針棒回動台31の正面から針棒12Bの挿通穴まで貫通した二つの円形の挿通穴に挿入される二つのストッパ部材91Bと、各ストッパ部材91Bをそれぞれ個別に針棒12B側へ押圧する二つの押圧バネ92Bと、各押圧バネ92Bを後方で支持すると共にストッパ部材91Bの挿通穴を覆い塞ぐカバー体93Bとを備えている。
各ストッパ部材91Bの挿通穴はいずれもX軸方向に沿って形成され、略円柱状のストッパ部材91BをX軸方向に沿って滑動可能に支持している。
ストッパ部材91Bの先端部は、針棒12Bの係合穴123Bに挿入可能な形状に形成されており、押圧バネ92Bの押圧力がストッパ部材91Bと針棒12Bの係合穴123Bとの係合状態を維持し、ストッパ機構90Bによる針棒12Bの保持力となっている。
但し、ストッパ部材91Bの押圧バネ92Bは、ラッチ部材52Bの押圧バネ54Bよりも十分に押圧力が小さく設定されており、ラッチ部材52Bの解除状態にない限りは、揺動板124Bによってラッチ部材52Bに押し負けてしまい、ストッパ機構90Bによる針棒12Bの保持は行われない。つまり、ストッパ機構90Bは、従動リンク53Bが作動部材16Bの突起161Bに衝突して、ラッチ機構50Bが保持を解除した針棒12Bについてのみ保持を行うようになっている。
[針棒回動機構]
針棒回動機構30Bは、図15及び図16に示すように、前述した針棒回動台31Bと、針回動モータ32と、主動スプロケット33と、針棒回動台31Bの上端部に固定装備された従動スプロケット34と、タイミングベルト35とを備えている。そして、針回動モータ32が駆動を行うと、主動スプロケット33、タイミングベルト35及び従動スプロケット34を通じて針棒回動台31Bをその回動中心線C回りに回動させることが可能となっている。
[位置切り替え機構]
図18は位置切り替え機構60B及び作動部材16Bの斜視図である。
位置切り替え機構60Bは、ミシンフレーム101内部に固定装備されたアクチュエータとしてのソレノイド61Bから回動を行う、針棒回動台31Bに搭載された作動部材16Bに対して位置切り替え動作を伝達付与するための機構である。
この位置切り替え機構60Bは、3ポジションで停止可能なソレノイド61Bと、ソレノイド61Bのプランジャに装備されたラック部材62Bと、ソレノイド61Bからラック部材62Bを通じて作動部材16Bに位置切り替え動作を伝達する針棒側差動伝達機構63Bとを備えている。
ソレノイド61Bは三位置で選択的に停止するよう制御可能であり、各停止位置は前述した作動部材16Bの切り替え位置P1〜P3に対応している。
ラック部材62Bは、ソレノイド61BによりY軸方向に沿って進退移動が可能であり、当該進退移動方向に沿ってラック歯が形成されている。
針棒側差動伝達機構(差動伝達機構)63Bは、アクチュエータとしてのソレノイド61Bからラック部材62Bを介して回動動作が入力される入力部材としての入力歯車631Bと、回動動作により作動部材16Bに位置切り替え動作を付与する出力部材としての出力歯車632Bと、入力歯車631Bと出力歯車632Bとの間で回転力を反転して伝達する伝達体64Bと、伝達体64Bを針棒回動台31Bの回動中心線C回りに周回移動を行うように支持する回動支持体65B(図16に示す)とを備えている。
そして、上記入力歯車631B、出力歯車632B及び回動支持体65Bは、いずれも針棒回動台31Bの上端部に形成された軸状部316Bにより回動中心線C回りに回動可能に支持されている。なお、入力歯車631Bは、上側の第1歯車部631Baと下側の第2歯車部631Bbを有し、各歯車部631Ba,631Bbは歯形が異なるが、一体化して形成されている。第1歯車部631Baにはラック部材62Bが噛み合い、第2歯車部631Bb(入力スプロケット)には、後述するベルト644Bが掛け渡される。
入力歯車631Bは、前述した従動スプロケット34Bの下側に位置し、その外周面に形成された上側の第1歯車部631Baが前述したラック部材62Bに噛合している。なお、この入力歯車631Bは、針棒回動台31Bとは分離して回動を行うことが可能である。
図16に示す回動支持体65Bは、伝達体64BをZ軸回りに回転可能に支持する支持板651Bと、支持板651Bの上面に固定されると共に前述した針回動モータ32Bにより回動が入力されるスプロケット652B(図18では図示略)とを備えている。
支持板651Bは円形であって、入力歯車631Bの下側に位置しており、針棒回動台31Bの軸状部316Bに回転可能に支持されている。
また、前述した伝達体64Bは、Z軸方向に沿った回転軸641Bと、回転軸641Bの上端部に固定された小スプロケット642Bと、回転軸641Bの下端部に固定された連動歯車643Bとを備えている。
支持板651Bは、伝達体64Bの回転軸641Bを回転可能に支持すると共に、その上面側に小スプロケット642Bを配置し、その下面側に連動歯車643Bを配置している。そして、支持板651Bの上面側において、小スプロケット642Bと、入力歯車631Bの第2歯車部631Bbとにベルト644Bが掛け渡されており、小スプロケット642Bと入力歯車631Bとは、同じ回転方向に連動回転を行うようになっている。そして、小スプロケット642Bが回転を行うと、回転軸641Bで連結された連動歯車643Bも同方向に同じ角度量で回転を行う。
スプロケット652Bはその中央部に開口部を備えて入力歯車631Bを遊挿している。
また、スプロケット652Bは、支持板651Bの上面に図示しないネジにより固定されている。なお、前述した小スプロケット642Bは、支持板651Bの上面に形成された凹部の内側に配置されており、スプロケット652Bの下側で入力歯車631Bの第2歯車部631Bbとベルト644Bで連結されている。
また、このスプロケット652Bは、針棒回動機構30Bの針回動モータ32に設けられた主動スプロケット333とタイミングベルト653Bで連結されている。
即ち、針回動モータ32Bは、その駆動時において、針棒回動台31Bを回動させる従動スプロケット34Bと回動支持体65Bを回動させるスプロケット652Bとを同時に回動させる。なお、回動支持体65Bが針回動モータ32Bから入力される回転角度量は、針棒回動台31Bが入力される回転角度量のちょうど1/2となるように、従動スプロケット34Bとスプロケット652Bの有効径が設定されている。また、これらの回動方向は、同じ方向に設定されている。すなわち、針回動モータ32Bは、針棒回動台31Bへの回動動作入力時に、針棒回動台31Bへの回動角度の半分の回動角度を回動支持体65Bに入力する。
このように、スプロケット652Bが針回動モータ32から回動が付与されることにより、支持板651Bが支持する伝達体64Bを回動中心線C回りに周回移動させることが可能となっている。
出力歯車632Bは、支持板651Bの下側に位置し、伝達体64Bの連動歯車643Bと噛合している。また、入力歯車631Bと小スプロケット642Bの有効径の比率と、出力歯車632Bと連動歯車643Bの有効径の比率とは一致するように設計されている。
これにより、回動支持体65Bを回転させない状態において、入力歯車631Bに所定角度の回転が入力されると、出力歯車632Bは、逆回転方向に同じ角度だけ回転を行うようになっている。
また、図18に示すように、前述した作動部材16Bは、その上部片面にラック歯が形成されており、出力歯車632Bと噛合している。また、作動部材16Bは、針棒回動台31Bの上部311Bの溝部311Baに支持され、出力歯車632Bの外接円の接線方向に沿って摺動可能である。
ソレノイド61Bは3ポジションでラック部材62Bを停止させることができ、ラック部材62Bが各位置で停止した時に、作動部材16Bの突起部161Bを前述したP1〜P3の各位置に停止させる必要がある。
一方、作動部材16Bは、縫製時に回動動作が行われる針棒回動台31Bに搭載されているが、当該作動部材16Bの位置切り替えを行うための駆動源であるソレノイド61Bは、ミシンフレーム101に固定されている。従って、針棒回動台31Bの回動動作が行われると、ラック部材62Bと噛合する入力歯車631Bは、針棒回動台31と共に回動することができず、その結果、針棒回動台31Bと入力歯車631Bとの間で相対的に回動動作が行われることとなる。
針棒側差動伝達機構63Bは、針棒回動台31Bの回動動作によって当該針棒回動台31Bと入力歯車631Bとの間に相対的な回動角度差が生じても、針棒回動台31Bに対する作動部材16Bの位置を一定に維持することができる。
以下、図19(A)〜図19(C)に基づいて針棒回動台31Bの回動動作時における針棒側差動伝達機構63Bの作動状態を説明する。
ここでは、ソレノイド61Bが停止した状態で針棒回動台31Bが時計方向に180°の回動を行った場合を例示する。
まず、図19(A)に示すように、針棒回動台31Bが針回動モータ32Bにより時計方向に180°回動を付与されると、スプロケット652Bを通じて回動支持体65Bには同方向に90°回動が付与される。これにより、小スプロケット642Bは時計方向に90°周回移動を行う。この時、小スプロケット642Bは、停止状態の入力歯車631Bと、ベルト644Bにより連結されているので、小スプロケット642B自身が反時計方向に(入力歯車631Bの径/小スプロケットの径)×90°の回転が行われる。
これにより、図19(B)に示すように、連動歯車643Bは小スプロケット642Bと同じ周回移動と回転を行う。その結果、連動歯車643Bに噛合する出力歯車632Bは、連動歯車643Bの周回移動分の時計方向の回転(=90°)と、連動歯車643Bの回転による時計方向の回転(=90°)とが付与され、出力歯車632Bは、時計方向に180°回動を行うこととなる。
つまり、針棒回動台31Bを基準とした場合、入力歯車631Bは針棒回動台31Bに対して相対的に反時計方向に180°回動した状態となるが、出力歯車632Bは針棒回動台31Bに対して回動を生じていない状態となる。
その結果、図19(C)に示すように、出力歯車632Bと作動部材16Bとの相対的な角度変化も生じないので、針棒回動台31B上において作動部材16Bは移動を行わず、その突起部161Bは定位置を維持することができる。
なお、針棒回動台31Bの回動動作中にソレノイド61Bが動作して入力歯車631Bを回動させた場合も、上述と同様のことがいえるので、ソレノイド61Bの作動位置に応じて適正な位置に作動部材16Bの突起部161Bを位置決めすることが可能である。
[釜機構]
図20は差動伝達機構400B及び釜機構800Bの斜視図、図201は支持フレーム105や後述する釜土台804,804の図示を省略した斜視図である。
図20及び図21に示すように、釜機構800Bは、釜801、釜土台804、回り止め805、オープナー806、トルク伝達機構810、オープナー作動部820、メス機構830、給油機構840(図20,図21では図示略)からなるユニットを二組有しており、これらのユニットは、釜回動台130の搭載板131の上面において、中心線Cを挟んで対称に載置装備されている。
各釜801,801は,同方向に回転を行い、二本の縫い針11,11の各々から上糸を捕捉可能な間隔で配置されている。
[差動伝達機構]
差動伝達機構400Bは、回転力伝達部410Bが二つの釜801,801のそれぞれに回転のトルクを伝達する二つの入力スプロケット822のそれぞれにトルクを入力可能に構成されており、それ以外の構成である回動力伝達部420,差動機構部430及び回動連動部440については差動伝達機構400と同一構成となっている。
従って、ここでは、回転力伝達部410Bのみついて説明する。
回転力伝達部410Bは、釜駆動モータ401と主動スプロケット413と従動スプロケット414とタイミングベルト415と入力軸411と出力軸412と出力スプロケット416とを備えている。
さらに、回転力伝達部410Bは、搭載板131上において回転可能に支持された二つの入力スプロケット822にその内面に形成された歯が噛合すると共に出力スプロケット416にその外面に形成された歯が噛合する両面に歯が形成されたタイミングベルト417Bと、当該タイミングベルト417Bに張力を付与するテンションローラ418Bとを備えている。
この両歯のタイミングベルト417Bは、出力スプロケット416が回転を行うと、各入力スプロケット822に対して逆方向に回転を伝達する。従って、前述した回転力伝達部410の釜駆動モータ401とは逆回転で釜駆動モータ401を駆動させる必要がある。
[ミシンの縫製動作]
図22はミシン100Bの制御系を示すブロック図である。このミシン100Bの制御装置110Bは、縫製パターンに従って二本針縫い目の形成を行う縫い制御を実行する縫い制御手段として機能するものであり、CPU111Bに対して図示しないインターフェイス及び駆動回路61Baを介して針棒12B,12Bの切替を行うソレノイド61Bが接続されている点が前述したミシン100の制御系と異なっている。
図23の縫製パターンに従って二本針縫い目の形成を行う縫製動作について図24のフローチャートに基づいて説明する。
まず、前提として、ミシン100Bの制御装置110Bは、そのデータメモリ114Bに一方の縫い針11の縫製パターンを示す位置座標のデータを保有しており、当該位置座標データから毎針の針落ち位置へ一方の縫い針11を針落ちさせるためのX軸モータ102c及びY軸モータ102dの駆動動作量を算出する(ステップS21)。
さらに、毎針のX軸モータ102c及びY軸モータ102dの駆動動作量のデータから毎針の縫いの進行方向を求め、進行方向に直交する方向に針棒12B,12B及び釜801,801が並ぶようにそれぞれの旋回角度を演算する(ステップS23)。
そして、ミシンモータ21を駆動して縫いを開始し、一針毎にX軸モータ102c及びY軸モータ102dを駆動させて所定の縫い方向に縫いを進行させると共に、一針ごとに針棒12B,12B及び釜801,801が予定された向きに並ぶように各針回動モータ32及び釜回動モータ402を制御する(ステップS25)。
また、現在の縫い位置が縫製パターンの定められた頂点A1〜A4のいずれかである場合には(ステップS27)、内側の縫いを行う針棒12Bのラッチ機構50Bによる保持を解除するようソレノイド61Bのポジションを制御する(ステップS29)。
これにより外側となる針棒12Bのみが縫製を行う(ステップS31)。即ち、途中で各針回動モータ32及び釜回動モータ402を駆動して90°旋回し片針で角部の縫い目を形成し、その後、保持を解除していた針棒12Bのラッチ機構50Bによる保持を再開するようソレノイド61Bのポジションを制御する(ステップS33)。
そして、縫製パターンにおける最終針に到達したか判定し(ステップS35)、最終針まで縫製を行った場合には、全てのモータの駆動を停止させて縫いを終了させる。また、まだ最終針に達していない場合には、ステップS25に戻って、縫いを継続する。
[第三の実施の形態の効果]
上記ミシン100Bは、差動伝達機構400Bが前述した差動伝達機構400と同様に作用し、これにより,二本の針棒12B,12Bの回動時に、釜801,801を同期的に回動させると共に、釜土台804上に釜801の回転駆動源となる釜駆動モータ401を搭載することなく、釜土台804の回動時における各釜801に生じる位相差の発生を防止できるので、釜回動台130の軽量化を図ることが可能となり、釜回動モータ402を出力の小さい小型のものを使用することが可能となると共に、釜回動台130の支持構造等も小型化することが可能となる。
また、釜回動台130の慣性モーメントを低減することができ、釜の回動動作の誤差を低減することができ、精密な動作制御及び高速の釜801の回動動作が可能となる。従って、二本縫い目の形成を行う縫製の高速化,高精度化を実現可能となる。
また、上記ミシン100Bは、上述のように、ソレノイド61Bから作動部材16Bに位置切り替え動作を伝達する針棒側差動伝達機構63Bが、入力歯車631Bと出力歯車632Bとの間で回転力を反転して伝達する伝達体64Bを支持する回動支持体65Bが針棒回動台31Bの回動時に当該針棒回動台31Bの半分の角度で回動を行うので、ラック部材62Bに噛合する入力歯車631Bが針棒回動台31と共に回動を行わずに、相互間で回動角度差が発生した場合でも、出力歯車632B側では、伝達体64Bにより針棒回動台31Bと同方向に同じ回動角度で回動させることができる。従って、針棒回動台31Bに搭載された作動部材16Bは、針棒回動台31Bの回動により位置ズレを生じることがない。
このため、ソレノイド61B及び針回動モータ32を針棒回動台31Bに搭載しなくとも、作動部材16Bを正しい位置にキープすることができ、針棒12Bの保持と解除を正しく実行することが可能となる。
そして、これにより、針棒回動台31Bの旋回重量の軽減を図ることができ、旋回動作を行う針回動モータ32を大型化することなく、高速動作が可能となり、縫製の高速化を実現することが可能となる。針棒回動台31Bの旋回重量の軽減を図ることができ、針棒回動台31Bの慣性モーメントを低減でき、精度の高い縫製を実現することが可能となる。
また、針棒回動台31B上にソレノイドを搭載しないで済むことから、当該ソレノイドへの電源供給を行うためのスリップリング等の特殊な部品が不要となり、ミシン製造コストの低減を図ること及びミシンの小型化を図ることが可能となる。
[請求項との対応]
上記第一から第三の実施形態には、縫い針を保持して上下動を行う針棒12、12Bと、上糸を捕捉し、回転動作により上糸を下糸に絡める釜801と、針棒の上下動の駆動源となるミシンモータ21と、釜が上糸を捕捉するための回転の駆動源となる釜駆動モータ401と、針棒を当該針棒に平行な所定の中心線回りに回動させる針棒回動機構30、30Bと、釜を搭載し、ミシンフレーム101に対して前記針棒と同じ中心線回りに回動可能に支持された釜回動台130と、針棒の回動動作の駆動源となる針回動モータ32、32Bと、釜回動台の回動動作の駆動源となる釜回動モータ402とを備えるミシンにおいて、釜駆動モータから釜に動力を伝達する入力軸411及び出力軸412を備える差動伝達機構400、400A、400Bを備え、差動伝達機構は、入力軸と出力軸とが針棒の回動中心線上に配置されると共に、入力軸及び出力軸の周囲で回動を行う支持枠431と、支持枠に回転可能に支持されると共に当該回転により前記入力軸と出力軸との間で互いの回転力を伝達する伝達体434、434Aと、釜回動台又は前記支持枠のいずれか一方に設けられ、前記釜回動モータから回動力が入力される従動部材422、422Aと、従動部材から入力される回動力により、釜回動台と支持枠とを前記ミシンフレームから見て同方向に回動させると共に前記釜回動台130を前記支持枠431の二倍の回動量で回動させる回動連動機構440、440Aとを備えるものが記載されている。
また、上記実施形態には、回動連動機構は、釜回動台とミシンフレーム又は支持枠とミシンフレームの各々に設けられた歯車からなる歯車機構を用いることが記載されている。
また、上記実施形態には、回動連動機構は、支持フレームに固定された固定歯車441と、支持枠に固定された従動歯車445と、釜回動台に回動可能に支持された支軸442と、支軸に固定され、固定歯車に噛合う第1歯車443と、支軸に固定され、従動歯車に噛合う第2歯車444と、を備えることが記載されている。
また、上記の実施形態には、ミシンモータと釜駆動モータとを一つのモータで共用することが記載されている。
この構成によれば、ミシンモータと釜駆動モータとを一つのモータで共用する構成とした場合には、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
また、上記の実施形態には、針回動モータと釜回動モータとを一つのモータで共用することが記載されている。
この構成によれば、針回動モータと釜回動モータとを一つのモータで共用する構成とした場合には、モータの点数を低減し、ミシンの生産性の向上を図ることが可能となる。
また、各モータの同期制御を付与とし、制御回路等の構成をより簡易化することが可能となる。
また、上記の実施形態には、ミシン100は一本針ミシンであって、
回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構102を備え、移動機構による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるよう前記針回動モータ(32、32B)及び前記釜回動モータ402を駆動する縫い制御手段(110、110B)を備えるものが記載されている。この構成によれば、一本針ミシンにおいて、移動機構による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるよう回動モータを駆動する縫い制御手段を備えるので、任意の位置に針落ちを行う縫製において、ヒッチステッチの発生を防止することが可能となる。
また、上記の実施形態には、ミシンは二本針ミシン100Bであって、回動台に搭載され、出力軸から二つの釜に回転を伝達する釜回転伝達機構(420、420A)と、二本の縫い針の中間に位置する回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構102とを備え、移動機構による被縫製物の移動を行う際に、回動中心線に垂直な平面上において被縫製物の移動方向に直交する方向に沿って二本の縫い針と前記二つの釜とがそれぞれ並ぶように、針回動モータ(32、32B)及び釜回動モータ402を制御する縫い制御手段(110、110B)を備えているものが記載されている。
上記構成によれば、二本針ミシンにおいて、移動機構による被縫製物の移動を行う際に、被縫製物の移動方向に直交する方向に沿って二本の縫い針と二つの釜とがそれぞれ並ぶように制御することができ、二本の縫い目を並行に一定の間隔を維持して形成することが可能となる。
11 針
12,12B 針棒
20,20B 針上下動機構
21 ミシンモータ
30,30B 針棒回動機構
31,31B 針棒回動台
32,32B 針回動モータ
100 ミシン(一本針ミシン)
100B ミシン(二本針ミシン)
101 ミシンフレーム
102 布移動機構(移動機構)
102a 保持枠
102c X軸モータ
102d Y軸モータ
103 布載置板(針板)
105 支持フレーム
110,110B 制御装置(縫い制御手段)
130 釜回動台
400,400A,400B 差動伝達機構
401 釜駆動モータ
402 釜回動モータ
410,410B 回転力伝達部
411 入力軸
412 出力軸
420 回動力伝達部
420A 回動力伝達部(釜回転伝達機構)
421 主動スプロケット
422,422A 従動スプロケット(従動部材)
430,430A 差動機構部
431,431A 支持枠
432 歯車
432A 平歯車
433 歯車
433A 平歯車
434,434A 伝達体
435 歯車
435A 平歯車
436,436A 軸部
437A 平歯車
440,440A 回動連動部(回動連動機構)
441 固定歯車
441A 遊星歯車
442 支軸
443 大歯車
443A 従動歯車(太陽歯車)
444 小歯車
445 従動歯車
445A 主動歯車
800,800B 釜機構
801 釜
803a 凸部
803b 係止突起
804 釜土台
806 オープナー
810 トルク伝達機構(伝達機構)
811 釜軸(釜回転軸)
812 主動歯車
813 従動歯車
820 オープナー作動部
821 オープナー軸
830 メス機構
831 固定メス
832 メス土台
833 動メス
836 外周カム(カム)
837a コロ
841 回転体(作動体)
844 プランジャ
C 中心線

Claims (7)

  1. 縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
    上糸を捕捉し、回転動作により上糸を下糸に絡める釜と、
    前記針棒の上下動の駆動源となるミシンモータと、
    前記釜が上糸を捕捉するための回転の駆動源となる釜駆動モータと、
    前記針棒を当該針棒に平行な所定の中心線回りに回動させる針棒回動機構と、
    前記釜を搭載し、ミシンフレームに対して前記針棒と同じ中心線回りに回動可能に支持された釜回動台と、
    前記針棒の回動動作の駆動源となる針回動モータと、
    前記釜回動台の回動動作の駆動源となる釜回動モータとを備えるミシンにおいて、
    前記釜駆動モータから前記釜に動力を伝達する入力軸及び出力軸を備える差動伝達機構を備え、
    前記差動伝達機構は、
    前記入力軸と出力軸とが前記針棒の回動中心線上に配置されると共に、前記入力軸及び出力軸の周囲で回動を行う支持枠と、
    前記支持枠に回転可能に支持されると共に当該回転により前記入力軸と出力軸との間で互いの回転力を伝達する伝達体と、
    前記釜回動台又は前記支持枠のいずれか一方に設けられ、前記釜回動モータから回動力が入力される従動部材と、
    前記従動部材から入力される回動力により、前記釜回動台と前記支持枠とを前記ミシンフレームから見て同方向に回動させると共に前記釜回動台を前記支持枠の二倍の回動量で回動させる回動連動機構とを備えることを特徴とするミシン。
  2. 前記回動連動機構は、前記釜回動台と前記ミシンフレーム又は前記支持枠と前記ミシンフレームの各々に設けられた歯車からなる歯車機構を用いることを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 前記回動連動機構は、
    支持フレームに固定された固定歯車と、
    前記支持枠に固定された従動歯車と、
    前記釜回動台に回動可能に支持された支軸と、
    前記支軸に固定され、前記固定歯車に噛合う第1歯車と、
    前記支軸に固定され、前記従動歯車に噛合う第2歯車と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のミシン。
  4. 前記ミシンモータと前記釜駆動モータとを一つのモータで共用することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。
  5. 前記針回動モータと前記釜回動モータとを一つのモータで共用することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシン。
  6. 前記ミシンは一本針ミシンであって、
    前記回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構を備え、
    前記移動機構による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるよう前記針回動モータ及び前記釜回動モータを駆動する縫い制御手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシン。
  7. 前記ミシンは二本針ミシンであって、
    前記釜回動台に搭載され、前記出力軸から二つの釜に回転を伝達する釜回転伝達機構と、
    二本の縫い針の中間に位置する前記回動中心線に垂直な平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構とを備え、
    前記移動機構による被縫製物の移動を行う際に、前記回動中心線に垂直な平面上において前記被縫製物の移動方向に直交する方向に沿って前記二本の縫い針と前記二つの釜とがそれぞれ並ぶように、前記針回動モータ及び前記釜回動モータを制御する縫い制御手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシン。
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