以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明説明を主目的とするものであり、適宜、簡略化されている。
説明の便宜上、主要図面に軸AXを図示した。軸AXは、例えば、雌スナップの受入部の深さ方向/雄スナップのポストの延在方向/雄スナップのポストの挿入方向に一致する。軸AXは、後述のリング体と回転体の積層方向にも一致する。説明の便宜上、各形態の説明に際しては、原則的に一貫して軸AXに沿う方向を上下方向として説明し、軸AXに対して直交する方向を半径方向として説明する。半径方向に沿って軸AXに近接する方向を内側と呼び、半径方向に沿って軸AXから離間する方向を外側と呼ぶ。軸AXの周りの方向を周方向と呼ぶ。後述の説明から明らかなように、雄スナップのポストが雌スナップの受入部に挿入されるとき、弾性体(リング体40、リング回転体70)が半径方向に一致する方向に変形する。弾性体(リング体40、リング回転体70)が変形する方向を変形方向と定義すると、後述の実施形態においては、変形方向が半径方向に一致していることが分かる。
<第1実施形態>
図1乃至図11を参照して第1実施形態について説明する。図1は、スナップボタンの概略的な断面図である。図2は、雌スナップの概略的な上面図及び断面図である。図3は、組立前の雌スナップの概略的な分解断面図である。図4は、雄スナップの概略的な上面図及び断面図である。図5は、図6に示す一点鎖線X5−X5における雌スナップの概略的な水平断面図であり、回転角度範囲の規制構造を示す。図6は、図5に示す一点鎖線X6−X6における雌スナップの概略的な部分断面図である。図7は、図1の一点鎖線X7−X7における弱スナップ状態の雌スナップの概略的な水平断面図である。図8は、図1の一点鎖線X7−X7における強スナップ状態の雌スナップの概略的な水平断面図である。図9は、雄及び雌スナップの嵌め合わせ過程を示す概略的な断面図である。図10は、雄及び雌スナップの嵌め合わせ過程を示す概略的な部分拡大断面図である。図11は、強スナップ状態のスナップボタンを示す概略的な断面図である。
図1に示すように、スナップボタン200は、生地230に対して固定された雌スナップボタン210(以下、単に雌スナップ210とも言う)及び雄スナップボタン220(以下、単に雄スナップ220とも言う)を有する。雌スナップ210の受入部P210に対して雄スナップ220のポスト105を差し込むことにより、ポスト105が受入部P210により保持されて雌スナップ210と雄スナップ220とが上下に連結する。受入部P210からポスト105を引き抜くことにより、雌スナップ210と雄スナップ220が上下に分離する。なお、生地230は、例えば、天然繊維、化学繊維(例えば、ポリエステル系又はナイロン系の繊維)等の糸が平面的に織り込まれた織物であるが、これに限らず、不職布、天然/合成皮、フェルト、プラスチック等の樹脂材料からなるシートであっても良い。生地230を単にシートと呼ぶこともある。
図1乃至図3に示すように、雌スナップ210は、缶体(第2部材)10、取付体20、カバー30、リング体(第1部材、環状部材)40、及び回転体50を有する。雌スナップ210は、図2に示すように上面視円盤状の部材である。缶体10、取付体20、及びカバー30は、リング体40及び回転体50の保持及びこれらの生地への取付を行う枠部材であり、各々、任意の方法により金属等の平板を成形することで製造される。なお、缶体10、取付体20、及びカバー30から成る枠部材は、外周部分において生地230を上下から挟みこむと共に、内周部分においてリング体40及び回転体50を収容する。リング体40と回転体50は、軸AX周りに一緒に回転可能な態様で積層されており、これらの積層方向は、軸AXに一致する。
回転体50とリング体40とは、構造的に嵌め合わされており、軸AX周りに一緒に回転する。具体的には、図1に示すように、リング体40は、その上面に係合凸部40yを有し、回転体50は、その下面に係合凹部50yを有する。係合凸部40yは上方へ延在し、係合凹部50yは上方へ窪んでいる。係合凸部40yと係合凹部50yとが嵌め合うことにより、回転体50に付与された回転力がリング体40へと伝達し、回転体50を介してリング体40を回転させることができる。リング体40と回転体50とを別体とすることにより、両者の各機能に応じて最適な材料を選ぶことができる。しかしながら、この点は、必ずしも必須のものではなく、リング体40と回転体50とを一体化しても良い。
雄スナップ220のポスト105を受け入れる受入部P210は、リング体40と回転体50の積層によって、リング体40の内周側面と回転体50の凹部P56の内面とが連続することにより構成される。受入部P210の受け口(リング体40の受け口)の最小径W40は、ポスト105の最大径W105未満である。従って、受入部P210内へのポスト105の進入を許容するためには、リング体40が半径方向外側へ変形し、リング体40の受け口の径W40が拡大することが必要である。そして、受入部P210は、受け口を通った後のポスト105を収容可能な大きさを有している。
図1に示すように、缶体10は、リング体40及び回転体50を収容する収容部材であり、取付体20により生地230に対して固定される。リング体40と回転体50とが缶体10により収容された状態で缶体10が上方からカバー30により閉じられる。なお、缶体10、取付体20、カバー30は、例示的には、真鍮、銅合金、ステンレス、アルミニウムなど、塑性変形する金属材料から構成される。リング体40は、任意の程度の弾性を具備し、例示的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂等の材料から構成される。回転体50は、所望の強度を有する上記の合成樹脂や、上記の金属等の材料から構成される。
図2を参照して缶体10、取付体20、及びカバー30の詳細構成について説明する。図2の下部分に示すように、缶体10は、底部11、筒部12、及び湾曲部13を有する。底部11の中心には開口P10が設けられており(図3参照)、底部11が環状に構成される。底部11上にはリング体40が載置される。筒部12は、底部11の外周端から軸AXに沿って延在して立ち上がり、リング体40を周囲する周壁部を成す。湾曲部13は、自身の先端が筒部12の外周面を臨むまで筒部12の先端が半径方向外側及び下方へ湾曲された部分であり、取付体20に対して係合する係合部である。
取付体20は、押え部21、筒部22、及び湾曲部23を有する。押え部21は、筒部22の下端から半径方向外側へ延在し、生地230を下方から押し付ける。筒部22は、押え部21の内周端から軸AXに沿って延在して立ち上がり、缶体10の筒部12と共にリング体40を周囲する周壁部を成す。湾曲部23は、自身の先端が筒部22の外周面を臨むまで筒部22の上端が半径方向外側から下方へ湾曲された部分であり、缶体10に対して係合する係合部である。
例えば、筒部22の先端を缶体10の湾曲部13内に挿入し、湾曲部13の面から受ける圧力によって湾曲させることにより、湾曲部23が形成される(図3も併せて参照)。取付体20の押え部21にはパンチ孔24が設けられ、押え部21には、生地230に対して食い込む部分25が形成される。このように生地230に対して取付体20を食い込ませることにより、生地230に対する取付体20の固定を十分なものとすることができる。
カバー30は、平板部31、及び外周側部32を有する。平板部31の中心には開口P30が設けられており(図3参照)、平板部31が環状に構成される。平板部31の開口端は、リング体40と回転体50を缶体10内に閉じ込めるための位置規制部である。外周側部32は、平板部31の外周から軸AXに沿って下方へ延在する。外周側部32の下端部分は、内側へ傾斜するように曲げられている。カバー30の外周側部32の下端部分の曲げにより、缶体10に対してカバー30が固定され、これと同時に、回転体50、リング体40がカバー30の平板部31により缶体10内に閉じ込められる。カバー30の外周側部32の下端部分は、生地230を上方から押し付ける部分でもあり、これにより、生地230は、カバー30の外周側部32の下端部分と取付体20の押え部21との間で上下から好適に挟み込まれる。
図1及び図2に示すように、リング体40は、樹脂、金属等の平板部材の中心に開口P40が設けられた弾性体である。図2の下部分に示すように、リング体40の本体部分であるリング本体42の下面には、環状凸部43が設けられる。環状凸部43が缶体10の開口P10内に配置され、これにより、缶体10とリング体40間の位置決めが容易になる。リング本体42の開口P40の直径に相当する開口径(開口幅)は拡大可能であり、これにより、受入部P210へのポスト105の挿入/受入部P210からのポスト105の引き抜きが許容される。なお、本実施形態においては、後述の説明から明らかになるように、雌スナップ210は、リング本体42の開口形状の変形が制限される状態と制限されない状態を持ち、各状態が周方向におけるリング体40と缶体10の相対位置に応じて決定される。
図2の下部分に示すように、リング体40の内周側面41の下部41pが半径方向内側へ弧状に膨出し、リング体40の内周側面41の上部41qが半径方向外側へ弧状に窪んでいる。リング体40の内周側面41が波状に構成されることに応じて、リング体40の内径が上下方向において変動する。端的には、リング体40の内径が下方から上方へ向かって次第に狭くなり、その後、次第に広くなる。
回転体50は、上面に凹部P55が設けられ、下面に凹部P56が設けられた円盤状部材であり、軸AX周りに受動回転する受動回転部である。回転体50は、樹脂、金属等の平板部材であり、好適には、リング体40とは異なる材料から構成される。凹部P55は、上面視矩形状であり、マイナスドライバー等の工具が差し込まれる部分である。凹部P56は、下面視円形状であってポスト105を部分的に受け入れる部分であり、底面56pと内周側面56qとを有する。底面56pは平坦面であり、内周側面56qは、軸AXに沿って延在する面である。内周側面56qは、半径方向内側へ緩慢に傾斜しながら底面56pに接続する。なお、凹部P55の上面視形状を「+」状として、プラスドライバーに合致可能としても良い。
回転体50の外側肉厚W50a<内側肉厚W50bの関係が成立する。これに応じて回転体50の上側の外周縁には段差部52が設けられる。段差部52は、平坦面を有し、平坦面上にカバー30の平板部31の内周端部が配置される。リング体40と回転体50の積層体は、カバー30の平板部31と缶体10の底部11との間で上下から位置規制される。回転体50の肉厚W50bの部分は、凹部P56により薄肉化され、また、凹部P55により更に部分的に薄肉化される。
図1及び図4を参照して雄スナップ220の構成について説明する。図1及び図4に示すように、雄スナップ220は、雌スナップ210の受入部P210に受け入れられて保持されるポスト105を有する。図1に示すように、ポスト105は、首部105a及び頭部105bを有する。頭部105bは、首部105aよりも幅広に構成されている。頭部105bの外周側面は、外側へ弧状に隆起しており、これにより、雌スナップ210の受入部P210からのポスト105の離脱が規制される。なお、雌スナップ210の受入部P210へポスト105が差し込まれることは、頭部105bがリング体40の開口P40の開口径を広げることにより許容される。
なお、後述の説明から明らかなように、雌スナップ210の受入部P210が雄スナップ220のポスト105を保持する保持力(以下、単に保持力と呼ぶ場合がある)は、受入部P210を周囲する周方向におけるリング体40と缶体10間の相対位置に応じて決定される。これにより、簡素な構成にて上述の保持力を調整することができる。製造時のみならず、製造後に上述の保持力を調整することもでき、広範な分野にて有用性/利便性を高めることができる。
なお、保持力は、雌スナップ210と雄スナップとが係合した状態で、それらが互いに離間(離脱)するように力が加わった際に、その係合が外れる力のことであり、ここでは、係合状態を保持する力であるので保持力と言う。そして、この保持力は、係合した状態で使用されるが、係合させようとする状態でももちろん影響する。つまり、保持力が強いと、係合状態を保持する力が強いが、係合させようとするときにおいては、係合させる際の力が、保持力が弱い場合に比べて必要である。このことから、保持力を、雄スナップおよび雌スナップの係合・離脱に必要な力として係合力と言うこともできる。
図1及び図4に示すように、雄スナップ220は、任意の方法により形状出しされた板状部材110、120から構成される。図4の下部分に示すように、板状部材110は、ベース111、及びポスト内壁部112を有する。ベース111は、生地230を押し付ける部分であり、環状に構成され、軸AXを周囲する。ポスト内壁部112は、軸AXに沿って延在しかつ両端が解放した筒状部分である。ポスト内壁部112は、生地230を貫通する部分である。ポスト内壁部112の上端は、外側へ弧状に湾曲されており、この部分が板状部材120に係合する。外側へ弧状に湾曲した部分を湾曲部113と呼ぶ。
板状部材120は、ベース121、及びポスト外壁部122を有する。ベース121は、生地230を押し付ける部分であり、環状に構成され、軸AXを囲む。ポスト外壁部122は、下端が解放し上端が閉じた部分であり、その上端の外周縁が半径方向外側へ弧状に湾曲し、その部分が板状部材110に係合する。半径方向外側へ弧状に湾曲した部分を湾曲部123と呼ぶ。ポスト内壁部112の湾曲部113とポスト外壁部122の湾曲部123とが係合することにより、板状部材110と板状部材120が互いに係止される。
生地230は、ベース111とベース121により上下から挟み込まれる。ベース111及びベース121により生地230が挟み込まれた状態で雄スナップ220がプレス処理され、ベース111に複数の凹部115が設けられ、ベース121に複数の凸部125が設けられる。これにより、生地230に雄スナップ220を強固に取り付けることができる。なお、図4の上部分に示すように、雄スナップ220は、軸AX周りに対称的に6か所でプレス処理されている。
図5及び図6を参照して回転体50の回転範囲を規制する構造について説明する。図5は、図6に示す一点鎖線X5−X5での回転体50と缶体10の断面構成を示し、図6は、図5の一点鎖線X6−X6における雌スナップ210の断面構成を示す。図5に示すように、回転体50の外周側面には、周方向の所定範囲に連続した溝部55が設けられ、溝部55の周方向の延在範囲が停止端55a、55bにより規定されている。缶体10の筒部12には、溝部55内に配置され、かつ溝部55の停止端55a、55bの衝突が予定されている停止部12pが設けられている。図5に示すとき、停止端55bが停止部12pに衝突しており、これにより、回転体50の更なる時計回りの回転が禁止される。回転体50の反時計周りの回転は、停止端55aが停止部12pに衝突することにより禁止される。このように回転体50の回転範囲を制限することにより、回転体50が停止する2つの停止位置(回転停止位置)を設定することができ、各停止位置に対応付けて雌スナップ210の受入部P210の保持力を調整することができる(この点は、後述の説明からより明らかになる)。
図6に示すように、リング体40の外周側面にも、回転体50と同様の溝が設けられている。リング体40と回転体50とは一緒に回転するものであるため、回転体50と同様、リング体40の回転範囲も制限することが望ましい。なお、停止部12pは、必ずしも缶体10の筒部12自体である必要はなく、別の部材であっても良い。リング体40及び回転体50の回転範囲を規制する具体的な態様は任意であり、上述のように缶体10を活用してリング体40及び回転体50の回転範囲を制限することの他、カバー30を活用して回転体50の回転範囲を制限しても良い。
図7及び図8を参照して周方向におけるリング体40と缶体10の相対位置に応じて受入部P210がポスト105を保持する力が調整される仕組みについて説明する。図7及び図8は、図1のX7−X7におけるリング体40、缶体10、及び取付体20の水平断面図である。適宜、図9乃至図11も併せて参照して説明する。
図7に示すように、リング体40は、互いに異なる直径R40、R41を有し、直径R40>直径R41を満足する。直径R40に対応する部分を被接触部(実施形態の説明では、被押圧部と呼ぶ)40mと呼ぶ。被押圧部40mは、図7に示すように、半径方向外側に突出した突出部40m1、40m2である。突出部40m1、40m2は、周方向において180度間隔で設けられ、かつ互いに逆側へ突出している。
図7に示すように、缶体10は、互いに異なる内径R10、R11を有し、内径R10<直径R11を満足する。内径R10に対応する部分を接触部(実施形態の説明では、押圧部と呼ぶ)10mと呼ぶ。押圧部10mは、図7に示すように、半径方向内側に突出部10m1、10m2である。突出部10m1、10m2は、筒部12が半径方向内側へ凹み、同方向に突出した部分である。突出部10m1、10m2は、周方向において180度間隔で設けられている。
図7に示すとき、リング体40の被押圧部40mと缶体10の押圧部10mとが対面していなく、リング体40の半径方向外側への変形が制限されていない。この状態を、便宜上、「弱スナップ状態」と呼ぶ。他方、図8に示すとき、リング体40の被押圧部40mと缶体10の押圧部10mとが対面しており、リング体40の半径方向外側への変形が制限されている。この状態を、便宜上、「強スナップ状態」と呼ぶ。「強スナップ状態」は「弱スナップ状態」に比べて差し込み、または抜き出すことが容易でない状態である。図7と図8に示す各状態は、例えば、回転体50の時計周りの停止位置と回転体50の反時計周りの停止位置とに対応する(図5及びこれに関する説明を参照)。つまり、雌スナップ210にポスト105が係合する際、開口P40の直径がポスト105の頭部105bの直径より小さいため、開口P40の直径を拡大するようにポスト105がリング体40を弾性変形させる。頭部105bが開口P40を通った後、リング体40が弾性復帰して開口P40が元の直径に戻り、首部105aに係合する。なお、首部105aの直径は、頭部105bの直径より小さく、かつ開口P40の最小直径よりも小さい、と良い。「強スナップ状態」では、開口P40の直径が拡大することが抑制されるため、頭部105bが開口P40を通ることが「弱スナップ状態」に比べて困難となる。
なお、リング体40の被押圧部40mと缶体10の押圧部10mとが対面しているとき、被押圧部40mと押圧部10mとを接触させるか否かは任意である。なお、両者を接触させる場合、リング体40の開口形状を、例えば正円から楕円形へと変形させることができ、楕円形の短軸の長さ寸法は、正円の直径より小さいため、より強い保持力を確保することができる。保持力が強い場合、雌スナップ210からの雄スナップ220の離脱が付加的に規制される。保持力が弱い場合、雌スナップ210からの雄スナップ220の離脱が付加的に規制されない。弱スナップ状態を非ロック状態と呼び、強スナップ状態をロック状態と呼んでも良いことは当業者には自明である。
図7に例示される「弱スナップ状態」のとき、半径方向外側へのリング体40の変形が制限されていないため、雌スナップ210の受入部P210に雄スナップ220のポスト105を差し込むこと、また雌スナップ210の受入部P210から雄スナップ220のポスト105を抜き出すことは困難ではない。
図9及び図10に示すように、リング体40の開口P40にポスト105の頭部105bが下方から圧入されるとき、半径方向外側へのリング体40の変形によって、その開口P40の開口径が初期の開口径から拡大する。リング体40の被押圧部40mと缶体10の筒部12の内周側面との間にはクリアランスが存在し、これにより、リング体40の変形が許容され、缶体10により許容される開口P40の拡大の程度が大きく確保される。リング体40の開口P40にポスト105の頭部105bを上方から圧入する場合、つまり、雌スナップ210と雄スナップ220を分離する場合も同様である。なお、リング体40は、ポスト105から半径方向外側へ押されなくなると、元の形状に復帰し、開口P40の開口径が、拡大した開口径から初期の開口径に復帰する。
図8に例示される「強スナップ状態」のとき、リング体40の被押圧部40mと缶体10の押圧部10mとが対面しており、リング体40の変形が制限された状態にあり、つまり、「弱スナップ状態」と比較して、缶体10により許容されるリング体40の変形の程度が小さく、また、缶体10により許容されるリング体40の開口P40の拡大の程度が小さい。従って、雌スナップ210の受入部P210からポスト105を抜き出すことは容易ではなく、同様に、雌スナップ210の受入部P210にポスト105を差し込むことは容易ではない。なお、容易ではないということは、程度の問題であり、不可能であることを意味しない。
図11に示すように、リング体40の開口P40にポスト105の頭部105bを上方から圧入する場合、リング体40の被押圧部40mが半径方向外側へ移動するが、缶体10の押圧部10mにより半径方向内側へ押し戻され、結果として半径方向外側へのリング体40の変形が制限され、リング体40の開口P40の開口径の拡大が制限され、缶体10により許容される開口P40の最大開口幅が小さい。リング体40の開口P40にポスト105の頭部105bを下方から圧入する場合も同様である。
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、周方向におけるリング体40の被押圧部40mと缶体10の押圧部10mの相対位置に応じて、缶体10により許容されるリング体40の開口P40の拡大の程度を調整可能であり、雌スナップ210の受入部P210が雄スナップ220のポスト105を保持する保持力を調整することができる。リング体40の変形を制限する具体的態様は任意である。しかしながら、本実施形態のように、リング体40を周囲する周壁部を有する筒部12を活用することにより、簡素な構成にてリング体40の変形を制限することができる。
また、上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、任意のタイミングで上述の保持力を調整することができる。端的には、雌スナップ210の製造後であっても、回転体50へ回転力を供給することによりリング体40を回転することができる。例えば、図7に示す角度位置にあるリング体40を図8に示す角度位置まで回転させる。これにより、弱スナップ状態から強スナップ状態へと変えることができる。したがって、弱スナップ状態にて、雌スナップ210と雄スナップ220とを係合した後、強スナップ状態へと変えることで、容易に抜き出すことをできなくできる。これは、一例ではあるが、防犯対策に使用できる。なお、雌スナップ210の受入部P210が雄スナップ220のポスト105を保持する保持力は、必ずしも2段階に限られるべきものではなく、2段階以上であっても良い。
スナップボタン200の製造方法は、上述の説明に照らせば当業者には明らかであろう。補足的に説明すれば、雌スナップ210は、例えば、次の手順で製造される。まず、生地230に開口を設け、その開口に取付体20を挿入する。次に、取付体20と缶体10とを一体化し、缶体10内にリング体40と回転体50とを積層配置し、カバー30により缶体10を上方から閉じ、カバー30の外周側部32の下端を曲げる。雄スナップは、例えば、次の手順で製造される。生地230に開口を開け、図1に示す形状の板状部材110を差し込む。次に、図1に示す形状の板状部材120を板状部材110に対して係合させる。その後、上述のパンチ処理により雄スナップ220を生地230に対して強固に固定する。スナップボタン200の製造手順は、製造に用いる機械/工具等に大きく依存する。
<第2実施形態>
図12を参照して第2実施形態について説明する。本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、リング体40の主面(上面又は下面)には、半径方向に延びる6つの溝41zが対称配置されている。これにより、リング体40の変形が促進され、保持力の増大を図ることができる。より詳細には、溝41zをリング体40の主面に設けることによって、被押圧部40mが缶体10の押圧部10mにより半径方向内側へと押圧されたとき、リング体40に変形が生じやすくなり、リング体40の開口P40の開口形状が簡易に変形する。例えば、開口P40の開口形状が、正円から楕円へと変形する。これにより、雌スナップ210の受入部P210が雄スナップ220のポスト105を保持する保持力を増大させることが可能になり、より十分な保持力の範囲を確保することができる。なお、本実施形態の場合にも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
図13を参照して第3実施形態について説明する。本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、リング体40は、直径R40と直径R41の中間値である直径R42を有し、リング体40の被押圧部の突出量が、周方向において段階的に変化する。この場合、雌スナップ210の受入部P210が雄スナップ220のポスト105を保持する保持力を3段階とすることができ、これにより、保持力の微妙な調整が可能になる。なお、保持力の調整段数は3段階に限られるべきものではなく、3段階以上としても良い。本実施形態の場合にも、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図13(a)に示すように、リング体40は、直径R42に対応した第1被接触部(実施形態の説明では、第1被押圧部と呼ぶ)40m5、40m6を更に有する。図13(b)に示すように、リング体40の第1被押圧部40m5、40m6と缶体10の接触部(実施形態の説明では、押圧部と呼ぶ)10mとが対面するとき、リング体40の半径方向外側への変形が小さく制限される。つまり、この図13(b)においては、リング体40が半径方向外側に変形する際に、最初はリング体40の外周と押圧部10mとの隙間分、変形しやすく、その後、押圧部10mと接触すると、それ以上の変形が制限されるため、図13(a)よりも保持力が強くなる。図13(c)に示すように、直径R40に対応したリング体40の第2被接触部(実施形態の説明では、第2被押圧部と呼ぶ)40m1、40m2と缶体10の押圧部10mとが対面しかつ接触するとき、押圧力によりリング体40の開口P40の開口形状が正円から楕円へと変化し、リング体40の開口P40の開口径の最小値がより小さくなる。図13(c)のとき、缶体10によるリング体40の挟み込みにより、リング体40がロックされており、回転体50を回転する操作者にもその状態が把握可能である。
図13(a)に示すとき、上述の保持力が最も弱い。図13(b)に示すとき、上述の保持力が図13(a)と図13(c)の場合の中間の値となる。図13(c)の示すとき、上述の保持力が最も強い。このように多段階的な保持力を提供可能とすることで、スナップボタンの利便性を向上することができ、またその用途の拡大も見込むことができる。
<第4実施形態>
図14を参照して第4実施形態について説明する。本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、リング体40が楕円状であり、同様に、缶体10(筒部12)も楕円状である。図14(a)乃至(c)に示すように、リング体40を反時計回りに30度、90度と段階的に回転させると、図14(a)に示すように缶体10に対して非接触であったリング体が、図14(b)に示すように缶体10(筒部12)に接触し、そして、図14(c)に示すように缶体10(筒部12)により挟み込まれる。図14(a)〜(c)は、図13(a)〜(c)に対応する。このような態様でリング体40の半径方向外側への変形を抑制する場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図14(a)に示すように、リング体40は、異なる直径R43及び直径R44を有し、直径R43>直径R44の関係を満足する。なお、直径R43は、リング体40の直径の最大値であり、直径R44は、リング体40の直径の最小値である。リング体40は、直径R43に対応して被押圧部40mを有する。ただし、この実施形態にあっては、リング体40および缶体10が楕円状であるため、被押圧部40mは直径R43以外でも、直径R44より大きい箇所で、缶体10の内側に接触する箇所とすることもできる。
図14(c)に示すように、缶体10(筒部12)は、異なる内径R13及び直径R14を有し、内径R13>内径R14の関係を満足する。なお、内径R13は、缶体10(筒部12)の内径の最大値であり、内径R14は、缶体10(筒部12)の内径の最小値である。缶体10は、内径R13に対応して押圧部10mを有する。図14(c)に示すとき、筒部12の内周面によりリング体40の外周側面が挟み込まれている。また、リング体40の被押圧部40mは、缶体10の押圧部10mにより押圧されている。
<第5実施形態>
図15乃至図19を参照して第5実施形態について説明する。本実施形態においては、上述の実施形態とは異なり、リング体40と回転体50を機能的/構造的に一体化した単一部材のリング回転体70を用いる。これにより、上述の実施形態と同様の効果に加えて、雌スナップ210の厚みを抑制することができ、また、部品点数も少なくすることができる。更に、本実施形態においては、上述の実施形態とは異なる構成の雌スナップ210及び雄スナップ220を用いる。この場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図15に示すように、雌スナップ210は、下部取付保持枠(第2部材)60、上部取付保持枠65、及びリング回転体(第1部材)70を有する。第1実施形態で説明した場合と同様、下部取付保持枠60と上部取付保持枠65が雌スナップ210の枠部材を構成し、この枠部材内にリング回転体70が収容される。なお、2つの取付保持枠は、図15において、その係合筒部62、67の位置から、符号60を内側取付保持枠、符号65を外側取付保持枠と言うこともできる。
図15に示すように、下部取付保持枠60は、ベース61、及び係合筒部62を有する。係合筒部62が、リング回転体70の下半分を周囲する周壁部を成す。係合筒部62の上端には、半径方向外側へ突出した鍔部63が設けられている。ベース61の内端部上には、リング回転体70が載置される。ベース61の外端部上には、生地230がある。図15に示すように、上部取付保持枠65は、ベース66及び係合筒部67を有する。係合筒部67が、下部取付保持枠60の係合筒部62と共にリング回転体70の下半分を周囲する周壁部を成す。係合筒部67の下端には、半径方向内側へと突出したフック68が設けられている。ベース66の内端部の下方には、リング回転体70がある。ベース61の外端部の下方には、生地230がある。鍔部63とフック68の係合により、下部取付保持枠60、65の係合が確保される。
生地230に設けられた開口に下部取付保持枠60を配置し、下部取付保持枠60内にリング回転体70を配置し、その後、下部取付保持枠60に対して上部取付保持枠65を嵌め合わすことにより雌スナップ210を組み立てると良い。代替的に、生地230に設けられた開口に下部取付保持枠60を配置し、下部取付保持枠60に対して上部取付保持枠65を嵌め合わした後、下部取付保持枠60と上部取付保持枠65により区画された空間へリング回転体70を配置しても良い。
図15に示すとき、下部取付保持枠60と上部取付保持枠65によって生地230が上下から挟み込まれている。これにより、生地230に対する雌スナップ210の固定が確保される。図15に示すとき、下部取付保持枠60に収容されたリング回転体70が上部取付保持枠65により位置規制され、これにより、下部取付保持枠60と上部取付保持枠65との間でリング回転体70が軸AX周りに回転可能に保持される。なお、雌部材210が取り付けられる生地230は、例えば、車の座席に設けられる足置きマット等の厚手の素材である。
図15に示すようにリング回転体70は、雄スナップ220のポスト105を受け入れる受入部P70を下面に有し、マイナスドライバー等の工具が嵌め合わされる凹部P71を上面に有する。リング回転体70の外周面には、半径方向外側へ同程度に突出したリング部72とリング部73が設けられている。リング部72は、第1実施形態で説明したリング本体に相当する。周方向におけるリング部72と下部取付保持枠60の相対位置に応じて上述の保持力を調整することができる。リング部73は、第1実施形態で説明した回転体50の外側肉厚W50aの部分に相当し、上部取付保持枠65の下方に配され、上部取付保持枠65により上方への変位が規制される。
雄スナップ220は、第1実施形態と同様、ポスト105を有し、かつ生地230に対して固定される。第1実施形態とは異なり、雄スナップ220は、取付体130及びポスト体140から構成される。取付体130によりポスト体140が生地230に対して固定される。
取付体130は、ベース131及び貫通筒部132を有する。ベース131は、軸AXを周囲する環状部分であり、生地230を下方から押し付ける。貫通筒部132は、ベース131の中心に設けられた円筒部分であり、生地230を貫通する。生地230を貫通した後、貫通筒部132の先端が曲げ加工され、これにより、貫通筒部132の上端には半径方向外側へ湾曲した湾曲部133が設けられる。湾曲部133によりポスト体140が生地230に対して押し込まれ、これにより、取付体130とポスト体140とにより生地230が好適に上下から挟み込まれる。
ポスト体140は、ベース141及び円筒部142を有する。ベース141は、軸AXを周囲する環状部分であり、生地230を上方から押し付ける。円筒部142は、ベース141の中心に設けられた円筒部分であり、雌スナップ210の受入部P70により受け入れられる。円筒部142の上端部分には、その外周面が半径方向外側へ弧状に膨出した膨出部143が設けられている。膨出部143は、第1実施形態のポスト105の頭部105bに相当する。円筒部142の外周面が半径方向外側へ膨出していない部分は、第1実施形態のポスト105の首部105aに相当する。
図16に示すように、上部取付保持枠65のベース66の上面には、「ON」、「OFF」といった指標が印刷/刻印等の任意の方法により設けられており、これにより、上述の保持力を外部から即時に把握することができる。なお、上部取付保持枠65のベース66の上面に設けられる指標は、アルファベット等の文字に限らず、図形、凸凹構造等であっても良い。指標は、金型成形、レーザーマーキング、熱加工、着色等の任意の手段により上部取付保持枠65に設けられる。
図17を参照して周方向におけるリング回転体70と下部取付保持枠60の相対位置に応じて受入部P70によるポスト105の保持力が調整される仕組みについて説明する。図17は、図15のX17−X17におけるリング回転体70、下部取付保持枠60、及び生地230の断面図である。
リング回転体70は、第1実施形態と同様、互いに異なる直径R70、R71を有し、直径R70>直径R71を満足する。直径R70に対応する部分を被押圧部70mと呼ぶ。被押圧部70mは、図17に示すように、半径方向外側へ突出部70m1、70m2である。
下部取付保持枠60の係合筒部62は、互いに異なる内径R60、R61を有し、内径R60<直径R61を満足する。内径R60に対応する部分を押圧部60mと呼ぶ。押圧部60mは、図17に示すように、半径方向外側へ突出した突出部60m1、60m2である。突出部60m1、60m2は、係合筒部62の内周側面が半径方向内側へ膨出した部分である。
図17に示すとき、リング回転体70の被押圧部70mと下部取付保持枠60の押圧部60mとが対面していなく、弱スナップ状態にある。他方、第1実施形態の図8と同様に、リング回転体70の被押圧部40mと下部取付保持枠60の押圧部60mとを対面させることで、強スナップ状態とすることができる。
図17に示すように、リング回転体70の被押圧部70mの周方向中央には、半径方向外側へ更に突出した凸部70m5が設けられる。他方、下部取付保持枠60の係合筒部62の押圧部60mの周方向中央には、半径方向外側へ窪んだ凹部60m5が設けられる。凹部60m5に対して凸部70m5が嵌め込まれることにより、操作者に対してロック感覚を与えることができる。また、その程度を強めることにより、リング回転体70の回転がより十分に規制される。
図18及び図19は、雌スナップ210の受入部P70へ雄スナップ220のポスト105が差し込まれた後、上述のようにリング回転体70が下部取付保持枠60によりロックされた状態を示す。図18及び図19に示すとき、リング回転体70の被押圧部70mと下部取付保持枠60の係合筒部62の押圧部60mとが対面しており、リング回転体70の変形が制限された状態にある。従って、雌スナップ210の受入部P70からポスト105を抜き出すことは容易ではなく、同様に、雌スナップ210の受入部P70にポスト105を差し込むことは容易ではない。リング回転体70の受入部P70からポスト105を抜き出そうとしても、リング回転体70の被押圧部70mが係合筒部62の押圧部60mにより半径方向内側へ押され、半径方向外側へのリング回転体70の変形が制限される。
<第6実施形態>
図20及び図21を参照して第6実施形態について説明する。上述の実施形態では、固定部材(図1に示す缶体10、図15に示す下部取付保持枠60)に押圧部を設け、回転部材(図1に示すリング体40、図15に示すリング回転体70)に被押圧部を設ける。他方、本実施形態においては、回転部材に押圧部を設け、固定部材に被押圧部を設ける。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図20に雌スナップ210の上面図及び断面図を示す。図20の下部分に示すように、回転体(第2部材)50は、リング体40上に配置されている。回転体50は、第1実施形態とは異なり、リング体40の外周側面の横に配された一組の接触片(本説明では、押圧片と呼ぶ)57を有する。押圧片57は、回転体50の下面の外周部分から、下方に突出した部分である。一組の押圧片57は、図21に示すように、周方向に180度間隔にて設けられている。なお、押圧片57は、上述と同様の押圧部50mを構成する。
図20に示すように、回転体50の上部58には、把持部80が取り付けられている。把持部80を把持し、これを時計周り又は反時計回りに回転することにより、回転体50を軸AX周りに回転させることができる。なお、本例では、回転体50が受けた回転力は、リング体40へ伝達されない。リング体40は、缶体10内に任意の方法で固定されている。
図20に示すように、回転体50の上部58は、カバー30よりも上方へ凸状に膨出している。回転体50の上部58の外周側面には、一組の凹部59が設けられている。把持部80は、輪体が半分に切断された形状を有し、その切断箇所近傍の内周面には、半径方向内側へ突出した一組の凸部85が設けられている。回転体50の凹部59に把持部80の凸部85を嵌め合わせることにより、回転体50に対して把持部80が装着される。なお、把持部80の本体には、肉厚部81と肉薄部82とが設けられており、肉厚部81と肉薄部82の境界がカバー30の外周縁のライン上に設定されている(図20の上部分参照)。これにより、把持部80が起立状態から伏した状態へ倒れたとき、カバー30上に把持部80を弱固定することができる。
図21を参照して上述の保持力を調整する点について説明する。図21(a)に示すとき、リング体40の被押圧部40mと回転体50の押圧片57とが対面していなく、リング体40の半径方向外側への変形が制限されていない。他方、図21(b)に示すとき、リング体40の被押圧部40mと回転体50の押圧片57とが対面しており、リング体40の半径方向外側への変形が制限されている。なお、図21(a)に示すように、缶体10の内径R10とし、押圧片57間の径をR50としたとき、R10>R50を満足する。
<第7実施形態>
図22乃至図28を参照して第7実施形態について説明する。上述の実施形態では、周方向における押圧部と被押圧部の相対位置を任意に変更することができる。他方、本実施形態においては、雌スナップの製造時、周方向における押圧部と被押圧部の相対位置を設定/固定し、リング体の半径方向外側への変形が制限された強スナップタイプとリング体の半径方向外側への変形が制限されていない弱スナップタイプを別々に製造する。このような場合であっても、製造後における強弱調整機能が失われるに留まり、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態においては、上述の実施形態における強弱調整機能が、スナップタイプの選定により置き換えられている、とも言える。強スナップタイプでは、雌スナップ210と雄スナップ220の連結/連結解除に、より強い力が必要になる。本実施形態では、上述の実施形態とは異なる構成の雌スナップ210を採用する。このような場合であっても、上述の実施形態で説明した利点が失われることはない。
図22及び図23を参照して雌スナップ210の構成について説明する。図22に示すように、雌スナップ210は、保持枠(第2部材)91、及び取付部材92を有する。保持枠91は、円筒部材が任意の方法で形状出しされた部材であり、底部91a、筒部91b、及び押え部91cを有する。底部91aには四角状の開口が設けられ、この開口周りにリング体40が任意の方法で固定される。筒部91bは、軸AXに沿って延在する部分である。押え部91cは、筒部91bの上端から半径方向内側へ延在し、軸AX上に開口を有する。押え部91cは、生地への取付状態において、生地230の下面に当接し、上方を押し付ける。そして、雄スナップ220のポスト105を受け入れる受入部P91を有し、その受入部P91内で底部91a寄りにリング体40が位置する。
図22に示すように、取付部材92は、取付板93及び化粧板94を有する。取付板93は、ベース93a、及びシャンク93bを有する。ベース93aは、軸AXを周囲する環状部分であり、軸AX方向において異なる高さ位置にある内周及び外周領域を有する。ベース93aの内周領域が、生地230に上に配置され、生地230を下方へ押圧する。シャンク93bは、軸AXに沿って延在し、かつ生地230を貫通する円筒部分である。シャンク93bの下端が半径方向外側へ湾曲され、これにより、シャンク93bの下端には湾曲部93cが設けられる。湾曲部93cが押え部91cの内端に係合することにより、保持枠91と取付部材92とが上下に連結し、両者の間に生地230が挟み込まれ、生地230に対して雌スナップ210が固定される。
図22に示すように、化粧板94は、被覆部94a及び湾曲部94bを有する。被覆部94aは、取付板93上に配された円盤状部分であり、これにより、取付板93のシャンク93bの貫通孔が被覆される。湾曲部94bは、取付板93の外周端部が下方かつ半径方向内側へ円を描くように湾曲した部分である。湾曲部94bの端部と被覆部94aの下面との間でベース93aの外周端が挟み込まれることにより、化粧板94が取付板93に対して取り付けられる。上述の実施形態と同様、図23に示すように雌スナップ210と雄スナップ220と上下に連結する。
冒頭で述べたように、本実施形態においては、雌スナップ210の製造時、周方向における押圧部と被押圧部の相対位置を設定/固定し、リング体40の半径方向外側への変形が制限された強スナップタイプとリング体40の半径方向外側への変形が制限されていない弱スナップタイプを別々に製造する。この点について図24乃至図28を参照して更に詳述する。図24及び図25は、押圧部と被押圧部とが対面配置されていないタイプを示す。図26乃至図28は、押圧部と被押圧部が対面配置されているタイプを示す。なお、図25及び図27は、図22における一点鎖線X25−X25間の断面構成を示す。
なお、本例においては、保持枠91の筒部91bが、半径方向内側へ周方向の所定範囲で窪む窪み97により押圧部91mが設けられている。リング体40に被押圧部40mが設けられる点は第1実施形態と同様である。
図24に示すようにリング体40の下面にマーク95が設けられている弱スナップタイプでは、図25に示すように被押圧部40mと押圧部91mとが対面配置されておらず、リング体40の半径方向外側への変形が制限されていない。図24に示すように、保持枠91は、四角形の開口96aを有し、リング体40の下面にはその開口96aに入る環状凸部43を有する。この実施形態にあっては、環状凸部43は、円形よりも四角形に近い。そして、この環状凸部43には三角形状のマーク95が配置されている。
図26に示すようにマーク95が図24の位置と異なる強スナップタイプでは、図27に示すように被押圧部40mと押圧部91mとが対面配置されており、リング体40の半径方向外側への変形が制限されている。図28に図27の一点鎖線X28−X28における雌スナップ210の断面図を示す。図28に示すように、リング体40の被押圧部40mと保持枠91の筒部91bの押圧部91mとが対面配置されており、リング体40の半径方向外側への変形が制限されている。
図24に示す弱スナップタイプと図26に示す強スナップタイプの判別は簡単である。図24に示すように、雌スナップ210の筒部91の外周には180度間隔で設けられた2つの窪み97が設けられている。2つの窪み97を親指と人差し指で挟み込むように持って雌スナップ210のリング体40を正面視すると、看者を基準として、マーク95が手前左又は奥手右に向く場合、図24に示す弱スナップタイプであることが分かる。同様に雌スナップ210のリング体40を正面視したとき、看者を基準として、マーク95が奥手左又は手前右に向く場合、図26に示す強スナップタイプであることが分かる。なお、図24及び図26に示すように、周方向における各窪み97の中心を結ぶ二点鎖線で示された鏡面99を仮想すると、図24に示すリング体40のマーク95と図26に示すリング体40のマーク95とは鏡像対称になる。
<第8実施形態>
図29乃至図32を参照して第8実施形態について説明する。上述の実施形態では、リング体が単一の環状の弾性材料から構成されていた。他方、本実施形態では、リング体を複数の部材に分割し、リング体の変形がリング体を構成する各部材の配置間隔の変更により達成される。この場合においても、リング体は、バネ等の弾性部材の活用により、元形状へ復帰可能であり、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。リング体の構成部材に金属材を活用すれば、その強度を高め、スナップボタンの耐久性を向上させることができる。本実施形態では、リング体を2つに分割し、両者を弾性部材の板バネで連結している。しかしながら、リング体の分割数は任意であり、3以上に分割しても良い。分割した各部分を弾性的に接続する具体的態様は任意であり、必ずしも、後述の板バネに限定されるものではない。
なお、周方向における押圧部10mと被押圧部40mの相対位置に応じて、換言すれば周方向における缶体10に対するリング体40の回動に応じて、缶体10により許容されるリング体40の変形の程度が変化する点、及び缶体10により許容されるリング体40の開口P40の拡大の程度が変化する点は上述の実施形態と同様である。
図29は、図30の一点鎖線X29−X29における断面図である。図30は、図29の一点鎖線X30−X30における雌スナップの概略的な水平断面図である。図31は、図29の一点鎖線X31−X31における雌スナップの概略的な断面図である。図32は、図30に示す位置から90度回転した状態の雌スナップの概略的な水平断面図である。図30は、第1実施形態の図7の場合に相当する。図32は、第1実施形態の図8の場合に相当する。
図29乃至図32に示すように、リング体40は、環状部材が2分割されたU字部45p、及びU字部45qを含み、これらのU字部45p、45qが板バネ47、48により連結して構成される。U字部45p、45qは、図30に示すように、上面視してU字状の部分であり、U字に窪んだ部分が互いに向き合うように対向配置される。U字部45pの2つの端部には、夫々、ポストの挿通方向に貫通する貫通孔46a、46bが設けられる。U字部45qの2つの端部には、夫々、ポストの挿通方向に貫通する貫通孔46c、46dが設けられる。これらの貫通口は、離間したU字部同士を弾性的に連結する板バネの挿入固定のために設けられている。板バネ47、48は、図31から把握されるように、U字状に構成され、2つの挿入端を具備する。典型的には、板バネは、金属製であるが、これに限らず樹脂製にもできる。
別部材である2つのU字部45p、45qを互いに向き合うように対向配置することにより、リング体40の開口P40が確定され、この開口P40へ雄スナップのポストが挿入され、リング体40とポストが係合する。雄スナップのポストの挿入・係合に関しては、リング体(第1部材)が環状部材であることは、好ましい一例であるに過ぎない。
例えば、第1部材が、軸AXを対称軸として対向する別々の部材(板バネ等により一体化されていないもの)から構成されていても良い。この場合、各部材の配置方向において、各部材間の寸法(間隔)が、通常は同方向における頭部の寸法よりも小さく、係合時(ポストの挿入を許容する際)に、頭部の同寸法よりも大きくなり、また、頭部の通過後に各部材間の間隔が通常の間隔に戻り、これにより、頭部の通過及び係合が許容される。なお、軸AXを中心に複数の部材を配置するとは、例えば、対向する2つの部材、もしくは周方向の120°に1つ配置される3つの部材や、周方向の72°に1つ配置される5つの部材などがある。つまり、雄部材のポスト部の周方向に少なくとも1つ以上配置され、軸AXから離間する方向で、その部材の外側に同軸上に第2部材が配置される。個々の部材を元位置へ復帰させる具体的な態様は任意であり、例示的には、バネ等の弾性部材の活用が挙げられる。
図30に示すように、板バネ47の2つの挿入端は、夫々、貫通孔46a、46cに挿入される。板バネ48の2つの挿入端は、夫々、貫通孔46b、46dに挿入される。これにより、U字部45pとU字部45qとが、受け部P210の深さ方向に直交する平面において弾性的に連結する。雄スナップ220のポスト105が雌スナップ210の受け部P210へ挿入されるとき、U字部45pとU字部45qは、各々、半径方向外側へと変位することができ、両者間の幅の拡大を確保することができる。雄スナップ220のポスト105による押圧が無くなると、板バネ47、48の形状の復帰に応じて、U字部45pとU字部45qが半径方向内側へと変位し、両者間の幅が初期値に戻る。
本実施形態においては、U字部45p、45qが金属製であり、両者が弾性的に結合される。金属製のU字部は、雄スナップ220のポスト105の繰り返しの圧接にも十分に耐えることができ、これにより、雌スナップ210の耐久性が向上する。更に、図32に示す状態のとき、樹脂製の場合と比較してU字部に生じる変形量が制限されるため、雌スナップ210と雄スナップ220が上下に連結した状態で両者を分離することは困難になる。雄スナップ220のポスト105からU字部が半径方向外側への圧力を受けたとしても、U字部45p、45qの間隔が拡大することは制限されている。本実施形態においては、リング体40の回転により図30に示す状態から図32に示す状態とすることで、強固に雌スナップ210と雄スナップ220の連結をロックすることができる。
<第9実施形態>
図33乃至図39を参照して第9実施形態について説明する。図33は、雌スナップの概略的な上面図及び断面図であり、図33の紙面上部に上面図を示し、図33の紙面下部に同図に示した上面図のX33−X33に沿う断面図を示す。図34は、雌スナップのリング体の概略的な上面図及び断面図であり、図34の紙面上部に上面図を示し、図34の紙面下部に同図に示した上面図のX34−X34に沿う断面図を示す。図35は、雌スナップの板バネの概略的な斜視図である。図36は、図33の断面図の一点鎖線X36−X36における非ロック状態の雌スナップの概略的な水平断面図であり、(a)においてU字部の合体状態を模式的に示し、(b)においてU字部の分離状態を模式的に示す。図37は、スナップボタンの概略的な断面図であり、雌スナップが非ロック状態にある。図38は、図33の断面図の一点鎖線X36−X36におけるロック状態の雌スナップの概略的な水平断面図である。図39は、図38の一点鎖線X39−X39におけるロック状態の雌スナップの概略的な垂直断面図である。
本実施形態においては、第8実施形態とは異なり、リング体40の2分割により生じたU字部45に対する付勢をリング体40と缶体10間の周方向に延びる板バネ49により確保する。このような場合であっても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。板バネ49の長さ調整により、適切なバネ力を簡便に確保可能であり、また十分な大きさのバネ力を確保しやすい。なお、バネ力の増大により雌スナップ210の係合力を増大することができる。バネ力の増大により雌スナップ210の繰り返し使用に対する耐性も高めることが期待できる。
なお、本例においては、図36に示すように、各板バネ49は、周方向において180度間隔で設けられる2つの突出部10m1、10m2の間に位置している。各板バネ49は、回転体50の回動に連動して周方向に変位し、図38に示すように、2つの突出部10m1、10m2よりも半径方向内側に配される。
本実施形態においては、図34に示すように、U字部45p、45qが板バネにより連結したものではなく、U字部45p、45qが両者間の遊嵌により緩く結合しているに留まる。第8実施形態と比較してU字部45p、45q同士を連結する必要がないため、雌スナップ210の組立の簡素化を図ることができる。
なお、周方向における押圧部と被押圧部の相対位置に応じて、換言すれば周方向における缶体10に対するリング体40の回動に応じて、缶体10により許容されるリング体40の変形の程度が変化する点、及び缶体10により許容されるリング体40の開口P40の拡大の程度が変化する点は上述の実施形態と同様である。
図33及び図34に示すように缶体10内に配置されるリング体40が一組のU字部45p、45qから構成される。U字部45pの一端の端面には凸状嵌合部45p1が設けられ、U字部45pの他端の端面には凹状被嵌合部45p2が設けられ、U字部45pの両端間の中央の中央部上面には挿入突起45p5が突出して設けられる。挿入突起45p5は、リング体40上に配置される回転体50の底面の凹状の被挿入部500pに挿入される。U字部45qの構成は、U字部45pと同様であり、重複説明は省略する。なお、U字部45qの凸状嵌合部45q1、凹状被嵌合部45q2、挿入突起45q5が、U字部45pの凸状嵌合部45p1、凹状被嵌合部45p2、挿入突起45p5に対応する。
U字部45pの凸状嵌合部45p1がU字部45qの凹状被嵌合部45q2に緩く嵌合し、U字部45qの凸部45q1がU字部45pの凹部45p2に緩く嵌合し、これにより、U字部45pとU字部45q同士の間隔の拡大及び縮小、換言すれば、リング体40の開口P40の開口幅の拡大及び縮小が確保される。
図33及び図35に示すように缶体10内には上述の一組のU字部45p、45qに対応して一組の板バネ49p、49qが設けられる。図35に示すように、板バネ49pは、初期姿勢が平坦の一定厚の金属板である。板バネ49pは、長尺な平板部49p5と、平板部49p5の両端の中央において突出して設けられた挿入片49p6を有する。板バネ49qの構成は、板バネ49pと同様であり、重複説明は省略する。
図36も追加的に参照して説明する。板バネ49pが、U字部45pと缶体10の間に配置され、その平板部49p5がU字部45pの外周側面と缶体10の内周側面との間で弧状に湾曲するように強いられ、板バネ49pの平板部45p5には直線状の初期形状に復帰するバネ力が付与される。板バネ49qについても同様に、U字部45qと缶体10の間に配置されて、板バネ49pのバネ力に等しいバネ力が付与される。U字部45の半径方向内側への付勢源として板バネを活用する場合、リング体40と缶体10の間の周方向に連続した空間を利用することができ、板バネのより十分な長さを確保しやすく、つまりより十分なバネ力を確保するのに適する。
図36(a)に示すように、板バネ49qの平板部49q5には、その各端部が半径方向外側へ変位するバネ力が与えられる。板バネ49qの平板部49q5の各端部が缶体10の内周側面を押圧することに応じてU字部45qが半径方向内側へ付勢される。同様にして、板バネ45pのバネ力に応じてU字部45pが半径方向内側へ付勢される。このようにしてU字部45pとU字部45qの閉じ、両者の配置間隔が最小の初期状態が確保及び維持される。
板バネ49pの挿入片49p6は、U字部45pの挿入突起45p5と共に回転体50の底面の凹状の被挿入部500pに挿入される。板バネ49qの挿入片49q6は、U字部45qの挿入突起45q5と共に回転体50の底面の凹状の被挿入部500qに挿入される。回転体50の回転に応じて一組のU字部と一組の板バネが軸AX回りに回動する。回転体50との関係において各U字部と各板バネが個別に取り付け可能であり組立容易である。
図36(a)に示すとき、図33に示すように、板バネ49p、49qと缶体10の間には十分な幅W320のクリアランスが確保され、U字部45pとU字部45qの配置間隔の拡大が許容される。なお、上述のクリアランスは、板バネ49p、49qの両端部が缶体10の内周側面に接触し、板バネ49p、49qの平板部45p5に直線状の初期形状に復帰するバネ力が付与されるため生じる。
図36(b)は、雄スナップ220のポスト105が雌スナップ220の受け部P210に挿脱される過程を模式的に示す。各板バネ49から各U字部45が受ける付勢力に勝る押圧力がポスト105から各U字部45に与えられるものとする。この挿脱過程において、U字部45pがポスト105により半径方向外側へ押され、U字部45qがポスト105により半径方向外側へ押され、U字部45pとU字部45qの間隔が広がり、開口P40の開口幅が拡大する。缶体10により許容される開口P40の拡大の程度が大きいと言える。
図36(b)に示す時、板バネ49p、49qと缶体10の間には上述のクリアランスが無くなり、リング体40の開口P40の開口幅が最大になり、缶体10の剛性により開口幅の更なる拡大は阻止される。図36(b)は瞬間的態様を模式的に示したに過ぎないものであるため、同図に示すように、U字部45pの凸状嵌合部45p1がU字部45qの凹状被嵌合部45q2から完全に脱する必要はない。
開口P40には、一組のU字部45p、45qが並ぶ方向の寸法の第1開口幅W401と、これに直交する方向の寸法の第2開口幅W402が設定される。第1開口幅W401は、各U字部45p、45qが環状に連結するとき、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも狭く、各U字部45p、45qが離間した状態では、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも広くなる。他方、第2開口幅W402は、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも僅かに大きく設定される。第1開口幅W401の拡大に応じてポスト105の開口P40の通過が許容され、第1開口幅W401の縮小に応じてポスト105と雌スナップ210間の係合が確保される。なお、各U字部45p、45qが環状に連結した時の開口P40の開口形状は、U字部45p、45qの並び方向に幅広の楕円形状である。
図37に示すように雌スナップ210に雄スナップ220がスナップインした後においては、各U字部45p、45qが各板バネ49p、49qにより半径方向内側へ付勢され、これにより、ポスト105が環状に連結したU字部45p、45qにより挟み込まれ、ポスト105が雌スナップ210に係合する。上述の第1開口幅W401は、板バネ49の弾性により、ポスト105の頭部105bの最大直径よりも広い開口幅から狭い開口幅へ復帰する。板バネ49によりU字部45の半径方向内側への変位に応じて、リング体40の開口P40の開口幅が、図36(b)の拡大した開口幅から図36(a)の初期開口幅へ減少する。
なお、図37に示す状態において、雌スナップ210から雄スナップ220を引き抜くと、ポスト105による各U字部45の半径方向外側への押圧力が各板バネ49のバネ力に勝り、U字部45p、45q間の間隔が拡大し、つまり、リング体40の開口P40が拡大し、リング体40の開口P40を介したポスト105の一時的通過が許容される。
上述の実施形態と同様、雌スナップ210の係合力は、回転体50の回動により調整可能である。図33に示した回転体50を図33の紙面を正面視して時計回りに90°回転すると、雌スナップ210が、図36に示した非ロック状態から図38に示したロック状態になる。
図38に示す時、缶体10の一組の押圧部10mの間において板バネ49p、U字部45p、U字部45q、及び板バネ49qが一組の押圧部10mにより挟まれて、各U字部45p、45qの半径方向外側への変位、U字部45p、45qの配置間隔の拡大、及びリング体40の開口の拡大が全く若しくは殆ど許容されない状態になる。つまり、缶体10の押圧部10mと板バネ49p、49qが接触し、その接触面と反対面側にU字部45p、45qが接触する。板バネ49p、49qと押圧部10mとの接触によって、一組のU字部45p、45qにより囲まれて形成される開口P40が拡大する程度が抑制される。
板バネ49にバネ力を付与するための板バネ49p、49qと缶体10の接触位置と、開口P40が拡大する程度を抑制するための板バネ49p、49qと缶体10の接触位置とは異なる位置にて確保される。板バネ49にバネ力を付与するための缶体10に対する板バネ49の接触位置は、板バネ49p、49qの両端部にある。缶体10側については、周方向における押圧部10mの両隣の缶体10の内側面にある。開口P40が拡大する程度を抑制するための缶体10に対する板バネ49の接触位置は、板バネ49p、49qの中央付近にある。缶体10側については、押圧部10mの内側面にある。一組のU字部45p、45qが互いに離間する方向に対して平行で、かつ開口P40の中心を通る仮想線が板バネ49p、49qと交差する位置が、板バネ49p、49qの両端間の中央付近にあり、これにより、開口P40の拡大の程度を好適に抑制することができる。
図38に示す時、缶体10により許容されるU字部45p、45qの半径方向外側への変位が実質的にゼロである。従って、雄スナップ220のポスト105を雌スナップ210の受け部P210に圧入しても係合し得ない。図38に示す場合、板バネ49の厚み分だけ押圧部10mの突出高さを低くすることができる。
本例においては、リング体40に設けられる被押圧部40m1は、板バネ49pの平板部49p5の長手方向中央部である。リング体40に設けられる被押圧部40m2は、板バネ49qの平板部49q5の長手方向中央部である。
図39に模式的に示すように雌スナップ210に雄スナップ220のポスト105がスナップインしているとき、板バネ49p、49qと缶体10の間にはクリアランスが全く又は殆ど無く、仮に雌スナップ210の受け部P210からポスト105を引き抜こうとしても、U字部45p、45qが半径方向外側へ全く若しくは殆ど変位できず、これにより、雌スナップ210と雄スナップ220の脱着が阻止される。本実施形態においては、雌スナップボタンの係合力に顕著な強弱を付与することができ、雄スナップのポストのロック状態と非ロック状態の間で顕著な係合力の差を付与することができる。缶体10、U字部45p、45q、板バネ49p、49qが金属製であるため、雌スナップ210の強固な係合力を確保できる。
雌スナップ210の組立は、例えば、回転体50にU字部45p、45q、板バネ49p、49qを挿入により嵌合し、これを缶体10内に配置し、カバー30で閉じることにより達成可能である。
<第10実施形態>
図40乃至図42を参照して第10実施形態について説明する。図40は、雌スナップの概略的な水平断面図である。図41は、雌スナップのリング体の概略的な上面図及び断面図であり、図41の紙面上部に上面図を示し、図42の紙面下部に同図に示した上面図のX41−X41に沿う断面図を示す。図42は、雌スナップの概略的な水平断面図であり、同図(a)において非ロック状態を示し、同図(b)においてロック状態を示す。本実施形態においては、第9実施形態とは異なり、回転体50に対して板バネ49を係合しない代わりに、リング体40に対して板バネ49を連行するための連行構造を設ける。このような場合であっても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図40乃至図42に示すように、板バネ49pの初期形状がC字状であり、板バネ49pの両端が押し広げられた態様にてU字部45pと缶体10の間に配置される。この場合、板バネ49pには板バネ49pの両端間の間隔を狭くするバネ力が付与されており、これに応じてU字部45pが半径方向内側へ付勢される。板バネ49q、U字部45qについても同様の説明が当てはまる。
図40及び図41に示すように、U字部45pの両端には第9実施形態で示したような凸及び凹状嵌合部が設けられていなく、U字45pの両端の各端面が平坦に構成される。U字部45qも同様に構成される。缶体10内においては板バネ49p、49qによる半径方向内側への付勢によりU字部45p、45q同士が隣り合う状態が維持されるため、U字部45p、45q同士を嵌合等により連結することは必須ではない。
図41に示すように、U字部45p、45qの各端部には、各端部の外周側面上から半径方向外側へ膨出して凹状の窪み45p7を形成する膨出部45p6が設けられ、これにより、U字部45p、45qの回転力を板バネ49p、49qに伝達することができ、U字部45p、45qの周方向変位に応じて板バネ49p、49qを周方向に変位させることができる。U字部45の一端及び他端側に設けられる一組の膨出部45p6により、リング体40の回動に応じて板バネ49を連行するための連行構造が構成される。
図42(a)は、U字部45pとU字部45qの配置間隔が拡大可能な非ロック状態において、不図示の雄スナップ220のポスト105によりU字部45pとU字部45qの配置間隔が拡大した状態を示す。図42(b)は、図42(a)に示した位置から90°リング体40が時計回りに回動され、U字部45pとU字部45qの配置間隔が拡大不能なロック状態を示す。
図42(a)及び図42(b)の対比から明らかなように、リング体40が時計回りに回動すると、U字部45pの変位に同調して板バネ49pも変位する。U字部45q、板バネ49qについても同様である。図42(b)に示すとき、缶体10の一組の押圧部10mの間において板バネ49p、U字部45p、U字部45q、及び板バネ49qが一組の押圧部10mにより挟まれ、U字部45pとU字部45qの配置間隔の拡大や、リング体40の開口P40の拡大が全く又は殆ど許容されない状態になる。
雌スナップ210の組立は、例えば、回転体50にU字部45p、45qを挿入により嵌合し、これを缶体10内に配置し、板バネ49を缶体10内に任意の手順及び任意の態様で配置し、カバー30で閉じることにより達成可能である。
<第11実施形態>
図43及び図44を参照して第11実施形態について説明する。図43は、雌スナップの概略的な水平断面図であり、(a)においてU字部の合体状態を模式的に示し、(b)においてU字部の分離状態を模式的に示す。図44は、雌スナップの概略的な水平断面図であり、ロック状態の雌スナップを示す。本実施形態においては、第9及び第10実施形態とは異なり、回転体50/リング体40の回動に関わらず、板バネ49p、49qが変位しない。このような場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図43及び図44の対比から分かるように、リング体40が回動してもリング体40と缶体10の間の板バネ49の位置は不変である。第9実施形態においては板バネ49を回転体50に係合させ、第10実施形態においてはリング体40に板バネ49を連行するための構造を持たせたが、本実施形態においては、板バネ49は、U字部45と缶体10と間に挟まれているだけであり、板バネ49pの構成の簡素化や雌スナップ210の組立の簡素化を図ることができる。図43及び図45に示すように、板バネ49は、周方向において180度間隔で設けられる2つの突出部10m1、10m2の間に位置しており、板バネ49が周方向へ移動することを防止する。
図43(a)及び図43(b)に示す非ロック状態においては、雌スナップ210の缶体10内において各U字部45p、45qが半径方向外側へ変位可能であり、U字部45p、45qの配置間隔が拡大可能、かつリング体40の開口P40が拡大可能である。図44に示すロック状態においては、缶体10の一組の押圧部10mの間においてU字部45pとU字部45qが一組の押圧部10mにより挟まれて、U字部45pとU字部45qの配置間隔の拡大、及びリング体40の開口P40の拡大が全く若しくは殆ど許容されない状態になる。図44に示すとき、押圧部10m1がU字部45qの両端間の中央部の外側面を押圧し、同中央部が被押圧部40m1となる。押圧部10m2がU字部45pの両端間の中央部の外側面を押圧し、同中央部が被押圧部40m2となる。
<第12実施形態>
図45を参照して第12実施形態について説明する。図12は、雌スナップに含まれるリング体の概略的な水平断面図であり、各U字部に対して板バネが一体的に設けられた場合を示す。本実施形態では、第9乃至第11実施形態とは異なり、U字部45p、45qに対して板バネ49p、49qが一体的に設けられている。このような場合であっても第9乃至第11実施形態と同様の効果を得ることができる。U字部と板バネの一体性は、例えば、U字部を樹脂製とし、板バネを金属製とし、両者をインサート成形にて一体成形することにより達成可能であるが、これに限られるべきものではない。
図45に示すように缶体10内にU字部45pと板バネ49pの一体品と、U字部45pと板バネ49pの一体品が横並びに配置される。板バネ49p、49qには、第9実施形態と同様に弧状に反った状態から平板状に復帰するバネ力が付与されており、これにより、各一体品が半径方向内側へ付勢される。
U字部45pの一端の凸部45p9とU字部45qの他端の凸部45q9が半径方向の外側と内側に隣り合い、U字部45pの他端の凸部45p9’とU字部45qの一端の凸部45q9’が半径方向の内側と外側に隣り合う。このような態様でのU字部45pとU字部45q間の嵌合により両部材が缶体10内において位置規制される。図29乃至図45に示す実施形態は、一組のU字部45p、45qを備え、そのU字部45p、45qにより囲まれる開口P40が形成されているが、3つ以上に分割されたU字部であってもよい。
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。雄スナップ及び雌スナップの具体的構成は任意である。リング体、リング回転体等の具体的な構成及び材料は任意である。押圧部/被押圧部を回転部材/固定部材のいずれに設けるかは任意である。リング体の分割により生じるU字部を付勢する具体的な態様は任意であり、また、付勢源は板バネに限定されるべきものではない。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。