以下、図面を参照しつつ本発明の基準光源に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は一実施形態に係る光計測装置を示す斜視図、図2は図1のII−II線に沿っての概略断面図、図3は光計測装置において扉部が開状態のときを示す一部断面側面図である。なお、下記の「前」「後」「左」「右」の語は、図面の状態に基づいており便宜的なものである。また、下記の「上」「下」の語は、光計測装置の使用時における鉛直方向上下方向に対応している。
図1,2に示すように、本実施形態の光計測装置100は、例えば藻類等の生長阻害試験に用いられる遅延発光計測装置であって、計測対象である培養容器2中の藻類試料(光合成サンプル)4で発せされる遅延発光(以下、単に「遅延発光」という)を計測する。ここでの光計測装置100は、フィールド(屋外)に持ち出して使用可能な可搬型のものとされている。光計測装置100は、箱状の外観形状を呈しており、例えば高さ170mm、奥行き135mm、幅110mmとされている。培養容器2としては、例えば、直径25mmで長さが85mmのガラス製の試験管型容器が通常用いられる。
この光計測装置100は、その外囲を構成する箱状の筐体10と、筐体10内を開閉するための扉部20と、培養容器2を載置し保持するホルダ30と、藻類試料4の遅延発光を検出する光電子増倍管(Photomultiplier Tube、以下「PMT」と称す)40と、を概略具備している。
筐体10は、その内部に前側ケース11及び後側ケース12を有し、その内部が前後に画設されるように構成されている。前側ケース11は、扉部20及びホルダ30を少なくとも収容するものであり、筐体10内の前端部において前方へ開口するよう設けられている。後側ケース12は、PMT40を少なくとも収容するものであり、筐体10内において前側ケース11の後方に隣接するよう設けられている。前側ケース11及び後側ケース12は、筐体10に対して分離壁19を介して固定されており、筐体10の振動が直接伝わらないようになっている。また、前側ケース11及び後側ケース12は、互いに遮光されていると共に、後述の窓部54のみを介して通光されるよう構成されている。
また、筐体10の上部には、光計測装置100を操作及び制御するためコントローラ13が設けられている。コントローラ13は、使用者に操作される操作部としてのスイッチ13aと、動作状況等を表示するモニタ13bと、を含んで構成されている(図1参照)。一方、筐体10の下部には、光計測装置100に電力を供給するためのバッテリ等を含む電源部14が設けられている。
図3に示すように、扉部20は、その上部が前方(手前)へ倒れるように開口する開き扉であり、筐体10の前側に設けられている。具体的には、扉部20は、筐体10の下部前方にて左右方向に沿って延在するよう設けられた回動軸Gを介して筐体10に取り付けられ、当該回動軸G回りに所定角度範囲で回動可能とされている、この扉部20は、中空構造を呈しており、内部空間21を有している。内部空間21内には、藻類試料4に励起光を照射するLED22が実装されたLED基板23が配置されている。ホルダ30は、例えば樹脂で形成され、扉部20において当該扉部20が閉状態のときにおける後側に固定されている。これにより、扉部20は、ホルダ30で培養容器2を保持したまま開閉可能となっている。
図2に示すように、PMT40は、マルチアルカリ光電面を有する光検出部である。ここでのPMT40は、微小電力高圧電源及び高インピーダンス分圧器を採用しており、発生回路に流れる電流に予め制限が加えられていると共に、チャージ量が低減されている。これにより、PMT40では、過大光が入射された場合でもその損傷を抑えることが可能となっている。
このPMT40は、遅延発光を受光する受光面41aを含む略円柱状外形の本体部41と、本体部41に電気的に接続されたブリーダ回路基板42と、を含んでいる。本体部41の外面において受光面41aを除く領域は、電気絶縁性を有する黒色の熱収縮チューブ(絶縁材)43により被覆されている。ブリーダ回路基板42は、ブリーダ回路が搭載された基板であり、分圧器を構成する。このブリーダ回路基板42は、本体部41の上方に位置し、本体部41における上端部の複数のピンに半田付けで接合されることにより本体部41に接続されている。
次に、前述のPMT40の周辺構造について詳細に説明する。
図4(a)〜(c)はPMTの正面図、右側面図及び背面図であり、図5(a),(b)はPMTの平面図及び底面図であり、図6(a),(b)は磁気シールドケースの正面図及び右側面図であり、図7(a),(b)は磁気シールドケースの平面図及び底面図であり、図8はPMTケースを後方下側から見た斜視図である。図2に示すように、光計測装置100は、磁気シールドケース(第1のケース)44及びPMTケース(第2のケース)45を後側ケース12内に備えている。
磁気シールドケース44は、PMT40を収容し保持するものであり、円柱状外形を呈している。この磁気シールドケース44は、磁気シールド性を有しており、その内部に地磁気の影響が及ぶのを抑制する。磁気シールドケース44においてPMT40の受光面41aに対応する位置には、遅延発光を通過させるためのアパーチャ44aが形成されている。
PMTケース45は、磁気シールドケース44を収容し保持するものであり、直方体状外形を呈している。つまり、PMTケース45は、磁気シールドケース44と協働してPMT45を多段に収容する。このPMTケース45の下部には、下方に突出するように延在するフランジ45aが設けられている。PMTケース45において受光面41aに対応する位置には、磁気シールドケース44と同様に、アパーチャ45bが形成されている。
ここで、図2,4,5に示すように、PMT40は、当該PMT40と磁気シールドケース44との間に設けられた複数(ここでは、8つ)の弾性部材(第1の弾性部材)46を介して、磁気シールドケース44に弾性的に保持されている。弾性部材46は、衝撃を吸収する衝撃吸収材であり、片面に感圧接着剤が設けられた矩形チップ状を呈している。ここでの弾性部材46は、PMT40との接触面積ができる限り小さく、且つ、軸方向に長尺で周方向に短尺の形状とされている。弾性部材46は、例えばシールドケース44に接する1箇所の接触面積を短辺2mm×長辺10mmとした場合でも、十分な保持力を発揮することができる。弾性部材46としては、例えばアルファゲル(登録商標、株式会社タイカ製)を用いることができる。
これら弾性部材46は、熱収縮チューブ43の外表面における所定位置に複数貼着されて固定されている。これにより、弾性部材46が磁気シールドケース44の内面に当接されながらPMT40が磁気シールドケース44に収容され、PMT40が磁気シールドケース44に弾性的に多点で支持されて保持されることになる。また、弾性部材46は、PMT40を介して互いに対向しないように配置されている。換言すると、複数の弾性部材46は、一の弾性部材46が荷重を受ける方向上に他の弾性部材46が位置しないように配置されている。
具体的には、弾性部材46は、熱収縮チューブ43の外周面において、上下方向及び周方向に異なる間隔で互いにズレた複数位置にそれぞれに設けられている。また、弾性部材46は、熱収縮チューブ43の下面において、互いに離間して並ぶ複数位置にそれぞれに設けられている。さらにまた、弾性部材46は、ブリーダ回路基板42の上面において前側に設けられている。
図2,6,7に示すように、磁気シールドケース44は、当該磁気シールドケース44とPMTケース45との間に設けられた複数(ここでは、9つ)の弾性部材(第2の弾性部材)47を介して、PMTケース45に弾性的に保持されている。弾性部材47は、上記弾性部材46と同様に矩形チップ状を呈しており、弾性部材47としては、上記弾性部材46と同様なものを用いることができる。
これら弾性部材47は、具体的には、磁気シールドケース44の外表面における所定位置に複数貼着されて固定されている。これにより、弾性部材46がPMTケース45の内面に当接されながら磁気シールドケース44がPMTケース45に収容され、磁気シールドケース44がPMTケース45に弾性的に多点で支持されて保持されることになる。
また、弾性部材47は、磁気シールドケース44を介して互いに対向しないように配置されている。換言すると、複数の弾性部材47は、一の弾性部材47が荷重を受ける方向上に他の弾性部材47が位置しないように配置されている。具体的には、磁気シールドケース44の外周面において上下方向及び周方向に異なる間隔で互いにズレた複数位置に、弾性部材47がそれぞれ配置されている。また、磁気シールドケース44の下面中央位置に、弾性部材47が配置されている。
また、複数の弾性部材47は、磁気シールドケース44の外表面において複数の弾性部材46に対応する位置とは異なる位置に、それぞれ設けられている。すなわち、図9に示すように、弾性部材46と弾性部材47とは、磁気シールドケース44及びPMTケース45に対し、その厚さ方向に沿った方向から見て互いに重ならないように配置されている。換言すると、弾性部材46,47は、弾性部材46が荷重を受ける方向上に弾性部材47が位置しないように互いにズレて配置されている。
図2に戻り、PMTケース45の前側(遅延発光の入射側)には、フロントブロック(ブロック部)50が隣接するように立設されている。フロントブロック50は、上下方向及び左右方向に延在するブロック体であり、後側ケース12内に配置されている。このフロントブロック50は、後側ケース12の前側内面に当接するように当該後側ケース12に固定されている。
このフロントブロック50は、その後面にPMTケース45の前面を当接させ、当該PMTケース45を複数のスペーサS1により固定する。これにより、PMTケース45は、フロントブロック50に片持ち状に取り付けられ、筐体10との間に隙間が形成されるように筐体10内に配置される(つまり、筐体10内で浮いた状態で固定される)。
また、フロントブロック50においてPMT40の受光面41aに対応する位置には、シャッタ51、バンドパスフィルタ(フィルタ)52及びレンズ53が、遅延発光の光路の上流から下流に向かってこの順で設けられている。シャッタ51は、その前方に配される窓部54の閉鎖及び開放を選択的に行う。窓部54は、遅延発光を前側ケース11から後側ケース12へと通過させるものであり、前側ケース11及び後側ケース12の間に取り付けられている。
このシャッタ51には、扉部20の開閉に応じて作動するリミットスイッチ(不図示)が接続されている。これにより、シャッタ51は、扉部20が閉状態のときにOFFとなって窓部54を開放する一方、扉部20が開状態のときにONとなって窓部54を閉鎖する。バンドパスフィルタ52は、入射される遅延発光の所定波長域のみを選択的に透過させるものであり、装置内の他の部材が励起されて発光した励起光を遮断する。バンドパスフィルタ52は、シャッタ51の後方に設けられている。レンズ53は、PMT40の受光面41aに向けて遅延発光を集光させるものであり、バンドパスフィルタ52の後方に設けられている。
他方、図2,8に示すように、PMTケース45の後側には、制御基板60がPMTケース45に対して離間するように配置されている。制御基板60は、PMT40を制御するための基板であり、後側ケース12内で上下方向及び左右方向に延在している。制御基板60は、複数のスペーサS1を介してフロントブロック50に取り付けられて固定されている。この制御基板60は、複数(ここでは、4本)のリードピン49を介してPMT40のブリーダ回路基板42に電気的に接続されている。
リードピン49は、ブリーダ回路基板42の後側に接合されており、磁気シールドケース44及びPMTケース45を貫通するように後方に向かって延びている。このリードピン49は、剛性を有する剛性部材としての機能を有している。このように構成されたリードピン49は、制御基板60に接続することにより、ブリーダ回路基板42と制御基板60とを電気的に導通させると共に、PMT40の変位を規制して位置決めする。
また、制御基板60には、PMT40からの信号を出力するための信号出力用基板62がピン63を介して電気的に接続されている。信号出力用基板62は、後側ケース12の後側で制御基板60と平行に延在している。信号出力用基板62の後面下部には、外部コネクタ64が筐体10外へ露出するように突設されている。
次に、前述の扉部20の周辺構造について詳細に説明する。なお、以下においては、扉部20が閉状態のときを基準に説明する。
図10は光計測装置の扉部周辺を示す断面図であり、図11は伝熱パッドを示す正面図であり、図12はホルダを示す平面図である。図10に示すように、扉部20は、外壁部24、遮熱板25及び窓部26を有しており、少なくともこれらにより上記内部空間21が形成されている。そして、上述したように、内部空間21内には、LED基板23が配置されている。LED基板23としては、熱伝導率が高く、且つ外表面に光を反射する白のレジストコートが施された基板が用いられている。
このLED基板23は、上下方向及び左右方向に沿って延び、その後面側において中央部には、砲弾型のLED22が複数設置されている。複数のLED22は、赤色の励起光を出射する第1のLEDと,第1のLEDによる励起光とは異なる赤色の励起光を出射する第2のLEDと、白色の励起光を出射する第3のLEDと、を含んでいる。ここでは、円周状に第1及び第2のLEDが互い違いに配置され、その内側に第3のLEDが配置されている。これらのLED22は、PMT40の受光面41aに対向するように配置されており、その出射方向上に受光面41aが位置するよう構成されている。
このLED基板23は、その前面側が外壁部24に伝熱パッド(伝熱部材)27を介して熱的に接続されている。つまり、LED基板23の前面に伝熱パッド27が積層するよう当接され、この伝熱パッド27の前面に外壁部24が当接されている。外壁部24は、筐体10の前壁を構成するものであり、上下方向及び前後方向に沿って延在している。ここでの外壁部24は、積層板構造とされており、前側に位置し且つ筐体10の上端側から下端側まで延びる外板24aと、外板24aの後側に積層され且つLED基板23に当接される外板24bと、を含んでいる。
図11に示すように、伝熱パッド27は、高い熱伝導性を有するゲル状のシート部材である。ここでの伝熱パッド27は、高物理強度及び柔軟性を有し、EPDM(エチレンプロビレンゴム)を母材とした非シリコーン材で形成されている。伝熱パッド27としては、例えばクールプロバイド(登録商標、北川工業株式会社製)を用いることができる。この伝熱パッド27の中央部には、LED22のリード線22sとの干渉を避けるための貫通孔27aが形成されている。また、伝熱パッド27の厚さは、LED22のリード線22sにおける基板23からの突出長さよりも大きくされ、ここでは2mmとされている。
図10に戻り、扉部20の内部空間21内においてLED基板23の後側には、LED基板23の熱を放熱させるための放熱板28が設けられている。放熱板28は、LED基板23に対し離間して並ぶように配置されている。この放熱板28は、扉部20に固定されている。具体的には、放熱板28は、スペーサS2を介してホルダ30に固定されていると共に、遮熱板25に固定されている。また、放熱板28は、スペーサS3を介してLED基板23を固定し保持しながら、当該LED基板23を外壁部24側に押圧している。つまり、LED基板23は、放熱板28に取り付けられていると共に、当該放熱板28により外壁部24に押圧されている。
遮熱板25は、LED基板23及び放熱板28からの熱を遮熱するものであり、例えばステンレスで形成されている。この遮熱板25は、LED基板23及び放熱板28の上方側を囲うように延在すると共に、上方に行くに従って外壁部24側に傾斜する傾斜部25aを後側に有している。具体的には、遮熱板25は、左右方向から見て、外壁部24の上端部から後方へ延びた後に下方へ曲がり、後方へ傾斜しながら下方へ延び、そして、下方へ真っ直ぐ伸びている。
窓部26は、LED22から出射された励起光を藻類試料4に向けて通過させるものであり、LED22の後方に対向するように遮熱板25の下端部に取り付けられている。この窓部26には、藻類試料4に対する励起光の照射をカットするためのシャッタ29が取り付けられている。シャッタ29は、内部空間21内においてLED22と窓部26との間に設けられており、当該窓部26の閉鎖及び開放を選択的に行う。
また、上述したように、扉部20の後側には、ホルダ30が固定されている。ホルダ30は、培養容器2を直立姿勢で扉部20の後方に隣接するよう載置し保持するものであり、略ブロック状の外形を呈している。図10,12に示すように、このホルダ30には、培養容器2を挿入して保持するためのものとして、当該培養容器2の外形に応じた形状(ここでは上方視円形)の凹部から成る培養容器保持部31が形成されている。また、培養容器保持部31において左右方向に対向する部分には、PMT40のキャリブレーション用の基準光源を挿入して保持するためのものとして、基準光源の外形に応じた形状(ここでは、上方視矩形)の凹部から成る基準光源保持部32が形成されている。
培養容器保持部31内の底部は、左右方向における中央部が突出するように構成されている。これにより、培養容器保持部31内においては、培養容器2の下端が当接される当接面31aを有する凸部31bが左右方向の中央部に形成されると共に、凸部31bにより画設された空間としてのタンク部31cが形成される。タンク部32cは、例えば、培養容器2の破損等により培養容器保持部31内に進入した水を、その内部に一時的に貯留する。
また、ホルダ30の後端には、所定長だけ上方に突出するフランジ板34が設けられている。フランジ板34は、上下方向及び左右方向に沿って延在している。このフランジ板34は、培養容器2を培養容器保持部31内へ挿入するのをガイドするガイド機能と、扉部20が開状態のときに外部に対し光が窓部54ひいてはPMT40に入らないよう遮光する遮光機能(図3参照)と、を有している。また、ホルダ30の内部には、保持された培養容器2を介して互いに対向するように、培養容器2の吸光度計としてLED35及びホトダイオード36が設置されている。
以上のように構成された光計測装置100は、例えば屋外に持ち出され、藻類試料4を入手したその場所で簡易かつ素早く使用される。すなわち、フィールドにおいて引き手80が掴まれて扉部20が開けられ、培養容器2がホルダ30に設置されて扉部20を閉じられ、始動される。これにより、LED22から励起光が出射され、この励起光が窓部26を介して藻類試料4に照射され、遅延発光が生じる。生じた遅延発光は、窓部54、バンドパスフィルタ52及びレンズ53を介してPMT40の受光面41aに入射され、PMT40で検出される。そして、検出された遅延発光に応じた出力信号が外部コネクタ64から出力される。
ここで、一般的にPMT40は、衝撃に弱く、感度特性が温度に依存し易く、過大光が入射すると損傷してしまうおそれがある。よって、光計測装置100においては、PMT40に対する耐衝撃性の向上、効果的な放熱、PMT40への過大光入射の抑制が要求される。特に、光計測装置100は、上記のようにバッテリ駆動に対応し可搬されるものとなっており、屋外に持ち出して使用可能であることから、かかる要求は顕著となる。
この点、光計測装置100では、上述したように、PMT40が複数の弾性部材46により磁気シールドケース44に多点で弾性保持され、磁気シールドケース44が複数の弾性部材47によりPMTケース45に多点で弾性保持されている。これにより、PMT40の保持性能を維持しつつ、耐振性を高めることができる。そして、当該PMTケース45は、筐体10との間に隙間が形成されるように配置され、筐体10内であたかも浮いているような状態で筐体10に固定されている。そのため、外部から筐体10に力(衝撃や振動)が加わったとしても、当該力がPMTケース45ひいてはPMT40へ直接伝わらないようになっている。
すなわち、本実施形態の光計測装置100では、外部からの衝撃がPMT40に及ばないように、PMT40と筐体10との間に幾重ものケースや板状部材及び隙間を設けてこれらを部分的に接合している。そして、PMT40とそれを覆う各ケース44,45との接合に複数の弾性部材46,47を設けている。従って、本実施形態によれば、外部からの衝撃がPMT40へ及ぶのを低減させることが可能となり、PMT40に対する耐衝撃性の向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、上述したように、磁気シールドケース44の周囲において弾性部材46に対応する位置とは異なる位置に、弾性部材47が設けられている。この構成により、PMTケース45及び磁気シールドケース44間の力の伝播経路と磁気シールドケース44及びPMT40間の力の伝播経路が互いにズレることから、PMTケース45から磁気シールドケース44に伝播する力がPMT40に伝播し難くなり、PMT40の耐振性を一層高めることができる。
また、本実施形態では、上述したように、複数の弾性部材46がPMT40を介して互いに対向しないように配置され、複数の弾性部材47が磁気シールドケース44を介して互いに対向しないように配置されている。この構成により、加わる力が分散するようにPMT40及び磁気シールドケース44を弾性保持でき、PMT40の耐振性を一層高めることができる。
また、本実施形態では、上述したように、PMT40の受光面41a以外が熱収縮チューブ43で覆われている。よって、PMT40を外部のアース電位と絶縁し、そのカソード電位を保つことができ、PMT40の動作を安定化することが可能となる。また、本実施形態では、磁気シールドケース44が有する磁気シールド性により、PMT40への地磁気の悪影響を抑制することができる。
また、本実施形態では、上述したように、PMTケース45がフロントブロック50に片持ち状に取り付けられており、この構成により、筐体10からPMTケース45へ力が直接伝わらないようにする上記作用効果を好適に発揮することができる。
また、本実施形態では、上述したように、PMT40のブリーダ回路基板42に接合された複数のリードピン49が、フロントブロック50に取り付けられた制御基板60に接続されている。よって、複数のリードピンを利用し、PMT40の変位を規制して位置決めすることが可能となる。その結果、PMT40の受光面41aとアパーチャ44aとアパーチャ45bとの間の互いの位置関係を保つことができる。
また、本実施形態では、上述したように、発熱源であるブリーダ回路基板42が本体部41より上方に位置するようにPMT40が配置されており、ブリーダ回路基板42が筐体10内の上部に配置されている。よって、ブリーダ回路基板42からの熱が熱対流によって本体部41や他の部位に与える悪影響を抑制することができる。
ところで、近年の光計測装置では、高い動作安定性が望まることから、発生する熱が動作に及ぶ悪影響を抑制するため、放熱性を高めて外部へ速やかに放熱させることが求められている。特に、繰り返し使用する場合、熱を速やかに外部へ放出する必要がある。また、小型化する場合、外部表面積が減ることから内部に熱がこもり易い。さらに、微弱光を扱う場合、外部に開口する通気孔を開けて放熱することは難しい。さらに、上述したように外部の衝撃をPMT40に伝わりにくくすると、熱も外部へ放出されにくくなる(熱が回り道をすることになる)。
この点、本実施形態のLED基板23は、上述したように、扉部20の内部空間21内に配置され、筐体10の外壁を構成する外壁部24に伝熱パッド27を介して熱的に接続されている。よって、LED基板23で生じた熱を、伝熱パッド27を介して外壁部24へ伝熱させて外部へと積極的に放熱させることができる。その結果、扉部20の外壁部24を放熱器として機能させ、光計測装置100の放熱性を高めることが可能となる。
また、このように放熱性を高めることができると、培養容器2及びPMT40への熱的な影響を軽減できることができ、よって、LED22、培養容器2及びPMT40間の距離を狭め、装置全体の形状を小型化することが可能となる。その結果、遅延発光の検出効率も向上し、ひいては動作消費電力も抑制することができる。そして、この電力抑制分だけ発熱量が減るため、これによっても、内部温度上昇が抑えられて長時間の安定動作が可能となる。
また、本実施形態では、上述したように、扉部20の内部空間21内に放熱板28を備え、LED基板23が放熱板28に取り付けられていると共に、当該放熱板28によりLED基板23が外壁部24に押圧されている。よって、LED基板23で生じた熱を外壁部24へ好適に伝熱させることができる。加えて、LED基板23が放熱板28を介して扉部20に固定されることになるため、LED基板23を放熱板28で放熱させた上で扉部20に固定することが可能となる。
また、本実施形態では、上述したように、扉部20は上部が筐体外側へ倒れるように開口する開き扉とされ、この扉部20の後側にホルダ30が一体的に設けられている。よって、例えば手が大きい使用者であっても、培養容器2を筐体10に容易に設置し、及び筐体10から容易に取り出すことができる。さらに、広い開口スペースを有して扉部20を開くことができることから、筐体10内により多くの外気を導入することができるため、筐体10内の熱を帯びた各部材を外気に一層接触させて効果的に放熱及び冷却することができる。
また、本実施形態では、上述したように、LED基板23の上方側を囲う遮熱板25が設けられているため、LED基板23からの熱が培養容器2側へ熱対流するのを好適に抑制することができる。つまり、扉部20は、培養容器2側(後側)へは遮熱しつつ外部(前側)へ放熱する構造とすることができる。
そして、上述したように、この遮熱板25の後側には、上方に行くに従って前側に傾斜する傾斜部25aが形成されている。これにより、培養容器2をホルダ30に容易に出し入れすることができる。また、当該出入れの際に培養容器2が破損しても、その水が傾斜部25aを伝わってホルダ30の下部のタンク部31cに貯留されることになる。加えて、この傾斜部25aによって、遮熱板25はホルダ30に保持された培養容器2に対して離間するため、遮熱板25で培養容器2を直接熱してしまうことも抑制できる。
また、本実施形態では、図10に示すように、扉部20内の下方側から上方側へと空気を通気させることができ、LED基板23を一層放熱させることが可能となる。
また、扉部20を開状態においては、扉部20の外表面における前側と後側とに外気が接触されることになるため、空気で扉部20を冷却する効果(空冷効果)を顕著に発揮させることができる。
また、本実施形態では、上述したように、ホルダ30の後端に設けられたフランジ板34により、培養容器2をホルダ30に設置するのをガイドすることができる。加えて、当該フランジ板34により、扉部20が開状態のときに外部光に対しPMT40を好適に遮光することができ、例えば動作中に扉部20が不用意に開けられたとしても、PMT40に及ぶダメージを抑制することができる。
また、本実施形態では、上述したように、筐体10内が前側ケース11及び後側ケース12で分けられている。これにより、前側ケース11及び後側ケース12を暗箱として機能させ、外部光に対する筐体10内の遮光性を一層向上させることができる。
また、本実施形態では、上述したように、筐体10内において発熱源となる制御基板60が直立姿勢で他の部位から離れて配置されている。よって、制御基板60に沿って流れる空気の通気性を高めてその放熱性を向上させることが可能となる。さらに、制御基板60の上に他の部位が配置されていないことから、制御基板60からの熱が熱対流によって他の部位に与える悪影響を抑制することができる。
また、上述したように、LED22からの励起光の光路上において培養容器2の上流側で且つシャッタ29の下流側に保護窓26が設けられているため、シャッタ29を保護できると共に、例えば培養容器2の破損時にその水が扉部20の内部空間21へ進入するのを抑制できる。同様に、遅延発光の光路上において培養容器2の下流側で且つシャッタ51の上流側に窓部54が設けられているため、シャッタ51を保護できると共に、例えば培養容器2の破損時にその水が後側ケース12内へ進入するのを抑制できる。
なお、上述したように、PMTケース45が筐体10内で浮くように構成されることから、筐体10内に水が進入した場合でも、PMT40が水に浸かるのを防止することができる。ちなみに、藻類を用いた化学物質生態リスク評価の効率化手法は、世界的に需要が拡大していく分野とされており、藻類を対象とした生態毒性評価に好適な本実施形態は特に有効なものといえる。
図13(a)は、暗電流時におけるPMTの信号レベルの時間変化を示すグラフであり、図13(b)は、基準光源をホルダ30に設置して基準光を出射したときにおけるPMTの信号レベルの時間変化を示す図である。なお、暗電流時は、PMT40に光が入射しない状態時を意味している。基準光源から出射する基準光は、遅延発光と同程度な微弱光である。
図13に示すように、信号レベルは、計測中に扉部20を開状態にすると変化するが、再びドアを閉状態とするとすぐに元のレベルに戻っている。これにより、本実施形態では、過大光が筐体10に入ってしまった場合でも、その前後(扉部20を開ける前後)で生じる信号レベルの変化を抑制することができ、PMT40に及ぶダメージを低減できることがわかる。
図14は、光計測装置の温度特性を示すグラフである。図中の温度特性は、筐体10内における制御基板60上部の温度の時間変化を示している。また、図中の温度特性は、下記ルーチンを繰り返して実施したときの温度変化を示している。図14に示すように、本実施形態によれば、発熱量が高いLED22から白色の励起光を照射したときには昇温するが(例えば、図中の破線丸枠参照)、すぐ元の温度に戻っており、放熱性能が高いことがわかる。
・無励起状態として60秒間計測し、暗電流時において5秒間計測
・赤色の励起光を1秒間照射後に60秒間計測し、暗電流時において5秒間計測
・赤色の励起光を5秒間照射後に60秒間計測し、暗電流時において5秒間計測
・白色の励起光を30秒間照射後に60秒間計測し、暗電流時において5秒間計測
・白色の励起光を60秒間照射後に60秒間計測し、暗電流時において5秒間計測
また、本実施形態では、PMT40はサイドオン型とされており、PMT40内に電極を支えるためのタイト(セラミック製のスペーサ)が形成されている。よって、PMT40では、横方向(PMT40の軸方向に対する直交方向)の衝撃を受けると、PMT40の上部側を支点として当該タイトがハンマヘッドのように揺動してしまい、容器を内部から破損してしまうおそれがある。そこで、本実施形態においては、上述したように、横方向に対して変形量を大きくして衝撃吸収能力を高めるため、できるだけPMT40の横方向保持力を弱めるべく、衝撃吸収材46を横方向(周方向)に短尺形状としている。一方、軸方向の力に対しては、光学系で遅延発光を集光しているために受光面41aとレンズ53等の位置関係を保持する必要があることから、軸方向保持力を高めるべく衝撃吸収材46を軸方向に長尺形状としている。
なお、ブリーダ回路基板42の上面前側に設けられた弾性部材46については、横方向に長尺とされているが、これは、次の理由による。つまり、当該弾性部材46は、PMT40のステム部(支点部分)であるためである。また、当該弾性部材46は、振動等が複数のリードピン49へのストレスとなるのを防ぐためにリードピン49から距離を離して配置されていることから、これら複数のリードピン49の配列方向にも合わせるためである。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
例えば、上記実施形態では、屋外に持ち出して使用する場合を例にして説明したが、実験室等の屋内での使用(ラボユース)も勿論可能である。つまり、本発明は、様々な環境雰囲気下において簡単に操作でき且つ問題なく動作させることができる。
また、上記実施形態は、藻類試料4に励起光を照射するLED22を備えているが、本発明は光源を備えない光計測装置に適用することも可能である。また、上記扉部20及びホルダ30としては、そのタイプや構成は上記に限定されず、様々のものを用いることができる。また、上記実施形態では、LED22として砲弾型LEDを用いているが、表面実装型LEDを用いてもよい。この場合、LED基板23の裏面(前面)にまでリードが出ないため、LED基板23及び扉部20間の距離を小さくでき、これにより、効率的な放熱が可能となる。さらにこの場合、LED基板23の裏面にリードが出ないことから、その部分にも伝熱パッド27を付けることができ、また、実装も容易になる。加えて、部品高も小さくなるため、LED基板23ひいては扉部20を薄くすることが可能となる。その結果、LED22を藻類試料(光合成サンプル)4に接近でき、その分LED22の効率を良好にできる。