JP5856089B2 - 硫黄とカルシウムの含量が少ない二酸化チタン系気相酸化用触媒 - Google Patents

硫黄とカルシウムの含量が少ない二酸化チタン系気相酸化用触媒 Download PDF

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Description

本発明は、不活性支持体とそこに塗布された酸化バナジウムと二酸化チタンを含む触媒活性物質とからなる気相酸化用触媒と、その製造方法と、該触媒の無水フタル酸の製造への利用に関する。
多くのカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物が、芳香族炭化水素の、例えばベンゼンやキシレン、ナフタレン、トルエンまたはデュレンの固定床反応器中での接触気相酸化で工業的に製造されている。このようにして、例えば、安息香酸や無水マレイン酸、無水フタル酸(PSA)、イソフタル酸、テレフタル酸または無水ピロメリット酸を得ることができる。一般に、酸素含有ガスと酸化対象の出発原料との混合物が、触媒床の入った管の中を通過させられる。温度制御のために、これらの管は熱輸送媒体で、例えば溶融塩で囲まれている。
これらの酸化反応に有用な触媒が、ステアタイトなどの不活性支持体材料上に触媒活性物質を卵殻状に塗布した、いわゆるエッグシェル触媒であることが分っている。これらのエッグシェル触媒の触媒活性物質の触媒活性成分は、一般的には、二酸化チタンに加えて、五酸化バナジウムである。また、促進剤として触媒の活性と選択性に影響を与える多くの他の酸化物系化合物が、少量この触媒活性物質中に存在していてもよい。
用いる二酸化チタン中に含まれる不純物の影響は、すでに先行技術で検討されている。Grzybowska−Swierkoszは、市販の二酸化チタン顔料の表面の不純物が、表面に結合しているOH基の構造に影響を与えうることを示している(Appl. Catal. A: Gen. 157(1997) 263−310)。
WO2007/134849には、o−キシレンから無水フタル酸への酸化の触媒の製造するための特定の二酸化チタンの利用が述べられている。この二酸化チタンは、1000ppm未満の硫黄、300ppm未満のリン、500ppmより多くのニオビウムを含んでいる必要がある。
Garcinらは、以下の不純物:0.12質量%のスルフェート、<0.005質量%のSiO2、<0.005質量%のAl23、0.04質量%のK2O、<0.002質量%のSb23、<0.22質量%のNb25、0.02質量%のZrO2、<0.002質量%のSnO2、27ppmのFe、0.24質量%のP25、0.023質量%のCaO(164ppmのCaに相当)に特徴のあるPSA触媒用二酸化チタンを利用している(Catalysis Today 20(1994) 7−10)。
EP−A539878には、二酸化チタン中の、FeやZn、Al、Mn、Cr、Ca、Pbの副成分は、その総量(金属酸化物として)が二酸化チタンの量に対して0.5質量%以下である限り、悪さをしないことが記されている。
最大の変換率と高い選択性をもつ気相酸化用触媒に対するニーズが常に存在している。
本発明の目的は、比較的高い活性及び/又は選択性をもち、このため比較的高収率で所望の目的生成物、例えば無水フタル酸を与える気相酸化用触媒を特定することである。
本目的は、不活性支持体とその上に塗布された酸化バナジウムと二酸化チタンを含む触媒活性物質とからなる気相酸化用触媒であって、該二酸化チタンのSとして計算された硫黄化合物含量が1000ppm未満であり、Caとして計算されたカルシウム化合物含量が150ppm未満である触媒により達成される。
本発明はまた、二酸化チタンと酸化バナジウム粒子の懸濁液を不活性支持体に塗布する気相酸化用触媒の製造方法であって、該二酸化チタンのSとして計算された硫黄化合物含量が1000ppm未満であり、Caとして計算されたカルシウム化合物含量が150ppm未満である方法に関する。ある好ましい実施様態においては、少なくとも一部の二酸化チタンの塗布に先立って、水熱条件下での水性媒体との処理が行われる。
本発明で使用する二酸化チタンは、特定量の硫黄化合物とカルシウム化合物を含んでいる。TiO2の化学的不純物の含量、具体的にはSとCaとPとNbの含量は、DINISO9964−3により決定される。本方法では、含量をICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)で決定する。
異なる二酸化チタンの混合物を使用する場合、硫黄化合物とカルシウム化合物の含量は、混合物中の個々の二酸化チタンの含量の加重平均として決められる。異なる二酸化チタンの混合物の使用は、例えば、高BET表面積の二酸化チタンと低BET表面積の二酸化チタンとを特定の比率で混合してあるBET表面積の目標値にもっていくのに適当であろう。
好ましい実施様態においては、この二酸化チタンの硫黄化合物含量が、500ppm未満であり、特に400ppm未満、例えば100〜300ppmである。
好ましい実施様態においては、この二酸化チタンの、Caとして計算されたカルシウム化合物含量が100ppm未満であり、特に80ppm未満、例えば50〜75ppmである。
好ましい実施様態においては、さらにこの二酸化チタンの、Pとして計算されたリン化合物含量が1000ppm未満であり、特に500ppm未満、例えば100〜300ppmである。
好ましい実施様態においては、さらにこの二酸化チタンの、Nbとして計算されたニオビウム化合物含量が200ppmより多く、特に500ppmより多く、例えば600〜2000ppmである。
適当なTiO2材料は購入可能であり、また、製造に使用する原料中に上述のように少量の硫黄およびカルシウム不純物しか含まれないようにできるなら、当業界の熟練者により標準的な方法で製造可能である。あるいは、硫黄またはカルシウムの含量の高いTiO2材料から出発し、適当な処理により、例えばリーチングにより本発明で適当な含量とすることもできる。
適当な実施様態においては、この二酸化チタンの少なくとも一部が水熱条件下で水性媒体で処理される。本発明において、水熱条件は、温度が少なくとも80℃で、圧力が大気圧より大きい(1気圧より大きい)ことを意味するものとする。120〜500℃の温度が好ましく、180〜300℃の温度と大気圧を越える圧力、例えば密閉容器内で与えられた温度で発生する自発圧力が特に好ましい。水熱条件下での処理は、例えば15〜24時間にわたってもよいが、好ましくは30分〜6時間である。好適な水性媒体は、特に水、例えば脱塩水または再蒸留水であり、あるいは薄い酸または塩基、例えば0.1〜1Mの硝酸または1Mのアンモニア水である。次いで、この二酸化チタン材料を水性媒体から、例えば濾過により取り出し、必要なら洗浄し乾燥させる。所望ならこの処理を繰り返すことができる。
通常、この二酸化チタンはアナターゼ型で使用される。この二酸化チタンのBET表面積は、好ましくは15〜60m2/gであり、特に15〜45m2/g、より好ましくは13〜28m2/gである。用いる二酸化チタンは、単一の二酸化チタンからなっていても、二酸化チタンの混合物であってもよい。後者の場合は、BET表面積の値は、個々の二酸化チタンの寄与の加重平均として決められる。用いる二酸化チタンが、例えばBET表面積が5〜15m2/gのTiO2とBET表面積が15〜50m2/gのTiO2の混合物からなることが好ましい。
この触媒活性物質は、触媒活性物質の総量に対して1〜40質量%の、V25として計算された酸化バナジウムと、60〜99質量%の、TiO2として計算された二酸化チタンを含むことが好ましい。好ましい実施様態においては、この触媒活性物質は、さらに最大で1質量%の、Csとして計算されたセシウム化合物と、最大で1質量%の、Pとして計算されたリン化合物と、最大で10質量%の、Sb23として計算された酸化アンチモンを含んでいてもよい。全ての触媒活性物質組成の値は、例えば触媒を450℃で1時間焼成後の焼成状態での値である。
適当なバナジウム源は、特に五酸化バナジウムまたはメタバナジン酸アンモニウムである。適当なアンチモン源は、いろいろな酸化アンチモン、特に三酸化アンチモンである。一般に、平均粒度(粒度分布の最大)が0.1〜10μmである三酸化アンチモンが用いられる。第一の触媒中の酸化アンチモン源として、平均粒度が0.5〜5μm、特に1〜4μmである粒子状三酸化アンチモンを使用することが特に好ましい。有用なリン源には、特にリン酸や亜リン酸、次亜リン酸、リン酸アンモニウムまたはリン酸エステルが含まれ、特にリン酸二水素アンモニウムが含まれる。有用なセシウム源には、セシウムの酸化物または水酸化物、または熱的に酸化物に変換可能な塩、例えばカルボン酸塩、特に酢酸塩、マロン酸塩またはシュウ酸塩、炭酸塩炭酸水素塩、硫酸塩または硝酸塩である。
必要の応じて加えられるセシウムとリン添加物に加えて、促進剤として触媒の活性や選択性に影響を与える、例えば活性を低下させたり増加させたりする多くの他の酸化物系化合物が、小量この触媒活性物質中に存在することもできる。このような促進剤の例には、アルカリ金属酸化物が含まれ、特に、上記の酸化セシウムに加えて、酸化リチウムや酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化スズ、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオビウム、酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化セリウムが含まれる。
また上記の促進剤の中で、有用な添加物は、好ましくは触媒活性物質に対して0.01〜0.50質量%の量のニオビウムとタングステンの酸化物である。
用いる不活性支持体材料は、芳香族炭化水素をアルデヒド、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物に酸化するためのエッグシェル触媒の製造に好ましく使用されているいずれの先行技術の支持体材料であってもよく、具体的には石英(SiO2)、ポーセレン、酸化マグネシウム、スズジオキシド、炭化ケイ素、ルチル、アルミナ(Al23)、ケイ酸アルミニウム、ステアタイト(珪酸マグネシウム)、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸セリウムまたはこれらの支持体材料の混合物であってよい。この支持体材料は、一般的には無孔性である。支持体材料は、理想的にはまったく空孔を含むべきではないが、小数の空孔の存在は技術的に不可避であり、「無孔性」は、「技術的に不可避の量の空孔以外で無孔性」という意味であると理解される。好ましい支持体材料で特に強調すべきものは、ステアタイトと炭化ケイ素である。支持体材料の形状は、一般的には本発明の前触媒とエッグシェル触媒に極めて重要であるというわけではない。例えば、触媒支持体を、球、リング、タブレット、螺旋、管、押出物、または破砕物の形で使用できる。これらの触媒支持体の大きさは、芳香族炭化水素の気相部分酸化用のエッグシェル触媒の製造に通常使用される触媒支持体の大きさと同等である。球状で径が3〜6mmのステアタイト、あるいはリング状で外径が5〜9mmで長さが3〜8mm、壁厚が1〜2mmのステアタイトの使用が好ましい。
エッグシェル触媒の層は、TiO2とV25の懸濁液を、必要ならさらに上述の促進剤元素源を含む懸濁液を、流動化させた支持体に噴霧塗布して好ましく形成される。懸濁物質の凝集物を再分散させて均質な懸濁液を得るために、塗布前にこの懸濁液を十分な時間、例えば2〜30時間、特に12〜25時間攪拌することが好ましい。この懸濁液の固体含量は、通常20〜50質量%である。この懸濁液媒体は、一般的には水性媒体であり、例えば水そのもの、あるいは水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミドとの水性混合物である。
一般的にはこの懸濁液に、有機バインダーが、好ましくはアクリル酸/マレイン酸コポリマー、ビニルアセテート/ビニルラウレートコポリマー、ビニルアセテート/アクリレートコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマーあるいはビニルアセテート/エチレンコポリマーが、好ましくは水分散液の形で添加される。これらのバインダーは、固体含量が例えば35〜65質量%である水分散液として販売されている。このようなバインダー分散液の使用量は、一般的には懸濁液の質量に対して2〜45質量%であり、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは7〜20質量%である。
この支持体は、例えば流動床装置あるいは移動床装置中で、上昇ガス流中、特に空気中で流動化される。この装置は、通常円錐状または球状の容器からなり、この中を流動化ガスが、浸漬管を通して底からあるいは上から流される。この懸濁液が、ノズルを通して、上から、横から、あるいは底から流動床内に噴霧される。浸漬管の中央または回りに設けられた上昇管を使用することが好ましい。この上昇管中ではガス速度が大きくなり、このため支持体粒子が上向きに輸送される。外側の輪の内では、ガス速度が流動化速度より少し大きいのみである。したがって、粒子は垂直に循環して移動する。適当な移動床装置が、例えばDE−A4006935に記載されている。
通常、触媒支持体に触媒活性物質を塗布する際には、20〜500℃の塗布温度が採用され、その場合には、塗布を大気圧下または減圧下で実施できる。一般にこの塗布は、0℃〜200℃で行われ、好ましくは20〜150℃、特に60〜120℃で行われる。
この触媒活性物質は2層以上に塗布でき、その場合、例えば、内側の一層以上の層は、酸化アンチモンを最大15質量%の量で含み、外側の層は、酸化アンチモンを、50〜100%少ない量で含む。一般に、触媒の内側の層はリンを含み、外側の層はリンが少ないか、まったく含まれない。
触媒活性物質の層厚は、一般的には0.02〜0.2mmであり、好ましくは0.05〜0.15mmである。触媒中の活性物質の含量は、典型的には5〜25質量%であり、通常7〜15質量%である。
このようにして得られた前触媒を200〜500℃の温度で熱処理すると、熱分解及び/又は燃焼により、このバインダーが塗布された層から揮散する。この熱処理は、その場で気相酸化反応器中で行うことが好ましい。
本発明の触媒は、一般的には、芳香族C6−〜C10−炭化水素、例えばベンゼンやキシレン、トルエン、ナフタレンまたはデュレン(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)の、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸や無水フタル酸、安息香酸及び/又はピロメリット酸二無水物への気相酸化に好適である。
本発明の一つの実施様態は、分子状酸素と、o−キシレン、ナフタレンまたはこれらの混合物とを含むガス流を本発明の触媒と反応させる無水フタル酸の製造方法に関する。
このために、本発明で製造した触媒を、例えば溶融塩により外側から反応温度にまで温度調整されている反応管中に入れ、一般的には300〜450℃の温度、好ましくは320〜420℃、より好ましくは340〜400℃の温度で、一般的には0.1〜2.5barのゲージ圧、好ましくは0.3〜1.5barのゲージ圧で、一般的には750〜5000h-1の空間速度で、反応ガスを、得られた触媒床の上に流す。
触媒に供給される反応ガスは、一般的には、酸素に加えて、水蒸気や二酸化炭素及び/又は窒素などの適当な反応減速剤及び/又は希釈剤を含んでいてもよい分子状酸素含有ガスを、酸化対象の芳香族炭化水素に混合して得られる。この場合、この分子状酸素含有ガスは、一般的には1〜100モル%の、好ましくは2〜50モル%、より好ましくは10〜30モル%の酸素と、0〜30モル%の、好ましくは0〜10モル%の水蒸気と、0〜50モル%の、好ましくは0〜1モル%の二酸化炭素と、残りの窒素とからなっている。この反応ガスを得るためには、分子状酸素含有ガスが、一般的には30g〜150g/m3(STP)−酸化される芳香族炭化水素ガスで供給される。
異なる触媒活性をもつ及び/又はそれらの活性物質が異なる化学組成をもつ触媒を、この触媒床中で使用することが特に有利であることが明らかとなった。二個の反応ゾーンを使用する場合、第一の反応ゾーンに存在する触媒、即ち反応ガスのガス導入部に近い触媒の触媒活性が、第二の反応ゾーン中に存在する触媒、即ちガス出口に近い触媒と較べて少し低いことが好ましい。一般に、この反応は、反応ガス中に存在する芳香族炭化水素のほとんどが第一ゾーン中で最大収率で変換されるように、温度調整によりコントロールされる。3層〜5層の触媒系、特に3層と4層の触媒系の使用が好ましい。
3層触媒系の一つの好ましい実施様態においては、これらの触媒が以下の組成をもつ。
第一の最上層(層CL1)には:
全触媒に対して7〜10質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
6〜11質量%のバナジウム(V25として計算される)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、及び
100質量%までの残りの、BET表面積が10〜25m2/gのアナターゼ型二酸化チタン;
第二の、中間層(層CL2)には:
全触媒に対して7〜12質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
5〜13質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0〜0.4質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)、および
100質量%まで残りの、BET表面積が15〜25m2/gのアナターゼ型二酸化チタン;
第三の最下層(層CL3)には:
全触媒に対して8〜12質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
5〜30質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0〜0.3質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、
0.05〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)、および
100質量%まで残りのBET表面積が15〜30m2/gのアナターゼ型二酸化チタン。
4層触媒系の一つの好ましい実施様態においては、
触媒が以下の組成を持つ:
第1層(層CL1)には:
全触媒に対して7〜10質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
6〜11質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、および
100質量%まで残りのBET表面積が5〜20m2/gのアナターゼ型二酸化チタン;
第2層(層CL2)には:
全触媒に対して7〜12質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
4〜15質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)および、
100質量%まで残りのBET表面積が10〜25m2/gのアナターゼ型二酸化チタン;
第3層(層CL3)には:
全触媒に対して7〜12質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
5〜15質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0〜0.4質量%のアルカリ金属(アルカリ金属として計算)、特に酸化セシウム、
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)、および
100質量%まで残りのBET表面積が15〜25m2/gのアナターゼ型二酸化チタン;
第4層(層CL4)には:
全触媒に対して8〜12質量%の触媒活性物質で、該活性物質は以下のものを含む:
5〜30質量%のバナジウム(V25として計算)
0〜6質量%の三酸化アンチモン
0.05〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)、および
100質量%まで残りのBET表面積が15〜30m2/gのアナターゼ型二酸化チタン。
一般に、これらの触媒層CL1、CL2、CL3及び/又はCL4は、それぞれが2つ以上の層からなるようにされていてもよい。これらの中間層は、中間触媒組成を持つことが好ましい。
異なる触媒の相互に区切られた層の代わりに、連続する触媒の混合物で一つの層から次の層へ変化するゾーンを作ることで、準連続的な層変化と準均一な活性増加をもたらすこともできる。
第一触媒層の床長が、反応器中の合計触媒充填高の30〜80%を占めることが好ましい。最初の二つまたは最初の三つの触媒層の床高さは、合計触媒充填高さの60〜95%を占めることが好ましい。典型的な反応器充填高は250cm〜350cmである。これらの触媒層は、必要なら複数の反応器に分布していてもよい。
望ましいなら、例えばDE−A19807018またはDE−A2005969に記載のように、無水フタル酸の製造のための最終反応器を下流に設けることもできる。この場合に用いる触媒は、最後の層の触媒と較べてさらに高活性な触媒であることが好ましい。それぞれ異なる触媒を収めた複数の反応ゾーンを用いて本発明の触媒でPAの製造を行う場合、全ての反応ゾーンでこれらの新規のエッグシェル触媒を使用することができる。しかしながら、本発明のエッグシェル触媒を触媒床の反応ゾーンの一つのみで、例えば第一反応ゾーンで使用し、あるいは最初の二つの反応ゾーンで使用し、従来法で生産されたエッグシェル触媒を残りの反応ゾーンで使用するだけでも、一般的には、従来プロセスよりかなりの有利とすることができる。初めの一つ以上の反応ゾーンには、下流の反応ゾーンと較べてより高いホットスポット温度が存在する。ここで、出発炭化水素のほとんどが所望の酸化生成物及び/又は中間体に酸化され、本発明の触媒の長所が、特に第一ステージまたは第一及び第二ステージで現れる。本発明の触媒が、全床長(ガス流の流れ方向)の少なくとも50%で使用されることが好ましい。
本発明を、以下の実施例をもとに詳細に説明する。
触媒の調製
以下の二酸化チタンを用いた(二酸化チタンは全てアナターゼ型である):
Figure 0005856089
*二酸化チタンBは、二酸化チタンAを水熱条件下で後処理して調整した。撹拌下で358gの二酸化チタンAを1099gの水に懸濁させた。この懸濁液をオートクレーブに移し、370rpm、300℃で72時間攪拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾過ケーキを2リットルの水で洗浄し、80℃、100mbar未満の圧力下で16時間乾燥させた。二酸化チタンB中の硫黄とカルシウムの含量が、この前処理で大きく減少した。
触媒A(本発明の触媒ではない)
流動床コーター中で、1000gのステアタイト球(直径:3.5−4.5mm)を、14.3gの有機のバインダー(アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、質量比=75:25)、および13.06gの五酸化バナジウムと34.79gのシュウ酸、5.64gの三酸化アンチモン、1.029gのリン酸二水素アンモニウム、0.94gの硫酸セシウム、175.93gの水、36.28のホルムアミド、113.38gの二酸化チタンAからなる懸濁液で塗布した。このようにして調整した活性物質は、平均で、0.21質量%のリン(Pとして計算)と9.8質量%の五酸化バナジウム(V25として計算)、4.2質量%の三酸化アンチモン(Sb23として計算)、0.52質量%のセシウム(Csとして計算)、85.25質量%の二酸化チタン(TiO2として計算)を含んでいた。次いでこのようにして得た塗布後の触媒を、14.4gの有機のバインダー(アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、質量比=75:25)と6.97gの五酸化バナジウムと18.83gのシュウ酸、0.94gのセシウムスルフェート、178.74gの水、49.43gのホルムアミド、125.34gの二酸化チタンAとからなる懸濁液で塗布した。このようにして得た第二の活性物質層は、平均して、5.2質量%の五酸化バナジウム(V25として計算)と0.52質量%のセシウム(Csとして計算)、94.24質量%の二酸化チタン(TiO2として計算)を含んでいた。これら二層の合計で、総活性物質含量の8.51質量%が達成された。
触媒B(本発明の触媒)
流動床コーター中で、1000gのステアタイト球(直径:3.5−4.5mm)を、16.2gの有機のバインダー(アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、質量比=75:25)と、8.50gの五酸化バナジウムと22.64gのシュウ酸、3.68gの三酸化アンチモン、0.67gのリン酸二水素アンモニウム、0.62gの硫酸セシウム、121.33gの水、25.03gのホルムアミド、78.22gの二酸化チタンBからなる懸濁液で塗布した。このようにして調整した活性物質は、平均で、0.20質量%のリン(Pとして計算)と9.34質量%の五酸化バナジウム(V25として計算)、4.0質量%の三酸化アンチモン(Sb23として計算)、0.50質量%のセシウム(Csとして計算)、85.96質量%の二酸化チタン(TiO2として計算)を含んでいた。このようにして得た塗布後の触媒を、次いで17.8gの有機のバインダー(アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、質量比=75:25)と、4.58gの五酸化バナジウムと12.37gのシュウ酸、6.2gの硫酸セシウム、122.73gの水、33.91gのホルムアミド、85.97gの二酸化チタンBとからなる懸濁液で塗布した。このようにして得た第二の活性物質層は、平均して、5.03質量%の五酸化バナジウム(V25として計算)と0.50質量%のセシウム(Csとして計算)、94.47質量%の二酸化チタン(TiO2として計算)を含んでいた。これら二層の合計で、総活性物質含量の9.74質量%が達成された。触媒B用の活性物質の組成は、触媒Aと触媒B中で、同一の平均(二つの活性物質層の平均)数の五酸化バナジウム単一層が塗布されるように選択された。このために、使用する二酸化チタンのBET表面積の1m2当り0.15質量%の五酸化バナジウムを使用した。
触媒層CL1CGの調整(二酸化チタンCとGをもつCL1、二酸化チタン混合物のBET表面積=16.15m2/g):3.38gの炭酸セシウムと649.6gの二酸化チタンC、6.58gの二酸化チタンG、51.37gの五酸化バナジウム、13.15gの三酸化アンチモンを1877gの純水に懸濁させ、18時間攪拌して、均一分布とさせた。77.7gの有機のバインダー(ビニルアセテートとビニルラウレートのコポリマー、50質量%水分散液)をこの懸濁液に添加した。移動床装置内で、660gのこの懸濁液を、寸法が7mm×7mm×4mmであるリング状の2Kgのステアタイト(珪酸マグネシウム)に噴霧し、乾燥させた。この触媒を450℃で1時間焼成後での、ステアタイトリングに塗布されたこの活性物質は9.1%であった。活性物質組成の分析値は、7.1%のV25、1.8%のSb23、0.38%のCs、残りがTiO2であった。
触媒CL2CG(二酸化チタン混合物のBET表面積=18.25m2/g):懸濁液の組成を変えて、CL1の製造と同様にして製造した。二酸化チタンCと二酸化チタンGは、質量比が85:15で用いた。450℃で1時間触媒を焼成後での、ステアタイトリングに塗布された活性物質は8.5%であった。活性物質組成の分析値は、7.95%のV25、2.7%のSb23、0.31%のCs、残りがTiO2であった。
触媒CL3CG(二酸化チタン混合物のBET表面積=16.75m2/g):懸濁液の組成を変えて、CL1の製造と同様にして製造した。二酸化チタンCと二酸化チタンGは、質量比が95:5で用いた。450℃で1時間触媒を焼成後での、ステアタイトリングに塗布された活性物質は8.5%であった。活性物質組成の分析値は、7.1%のV25、2.4%のSb23、0.10%のCs、残りがTiO2であった。
触媒CL4CG(二酸化チタン混合物のBET表面積=23.05m2/g):懸濁液の組成を変えて、CL1の製造と同様にして製造した。二酸化チタンCと二酸化チタンGは、質量比が53:47で用いた。450℃で1時間触媒を焼成後での、ステアタイトリングに塗布された活性物質は9.1%であった。活性物質組成の分析値は、20%のV25、0.38%のP、残りがTiO2であった。
他の触媒層を上記の方法により製造した。ただし、異なる二酸化チタンを用いた。触媒層の名称は、上述の命名法に準じてつけられている。触媒層CL3DHは、組成CL3をもつ触媒層であるが、二酸化チタンDとHが使用されている。
比較例1
スクリーニング反応器中での触媒試験:長さが80cmで内径が15mmの鉄管に触媒Aを66cmまで充填した。温度調整のためにこの管を溶融塩で覆った。この管を通して上から下向きに、98.5質量%o−キシレンの形で56gのo−キシレン/m3(STP)−空気の負荷量で360l(STP)/hの空気を通過させた。反応器温度が350℃では、PA収率の75.2モル%が達成された(「PA収率」は、100%o−キシレン当りの得られた無水フタル酸のモルパーセントまたは質量%である)。
実施例2
比較例1を繰り返した。ただし、触媒Bを66cmまで鉄管に入れた。反応器温度が343℃、負荷量が56g/m3(STP)で、PA収率の80.1モル%が達成された。
比較例3〜5と実施例6
モデル管状反応器中での触媒試験:ソルトバスで冷却された内径が25mmの管形反応器中で、o−キシレンの無水フタル酸への触媒酸化を行った。長さが3.5mで内径が25mmの鉄管中に、反応器入口から反応器出口へ、130cmのCL1と、70cmのCL2、60cmのCL3、60cmのCL4を入れた。温度調整のために鉄管を溶融塩で覆った。熱電対を内蔵する外径が4mmのサーモウェルを用いて触媒温度の測定を行った。99.2質量%のo−キシレンで30〜100g/m3(STP)の負荷量で、4.0m3(STP)/hの空気を上から下向きにこの管に通した。
Figure 0005856089
用いた二酸化チタンの硫黄含量に加えてカルシウム含量が、PA収率に大きな影響を与えることが明らかとなった。

Claims (10)

  1. 不活性支持体とその上に塗布された酸化バナジウムと二酸化チタンを含む触媒活性物質とからなる気相酸化用触媒であって、該二酸化チタンのSとして計算された硫黄化合物含量が1000ppm未満であり、Caとして計算されたカルシウム化合物含量が100ppm未満であり、BET表面積が15〜60m2/gである触媒。
  2. 上記酸化チタンのSとして計算された硫黄化合物含量が500ppm未満である請求項1に記載の触媒。
  3. 上記二酸化チタンのCaとして計算されたカルシウム化合物含量が100ppm未満である請求項1又は2に記載の触媒。
  4. 上記二酸化チタンのBET表面積が15〜45m2/gである請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒
  5. 記触媒活性物質が、1〜40質量%の、V25として計算された酸化バナジウムと60〜99質量%の、TiO2として計算された二酸化チタンとを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒。
  6. 上記触媒活性物質が、最大1質量%の、Csとして計算されたセシウム化合物と、最大1質量%の、Pとして計算されたリン化合物と、最大10質量%の、Sb23として計算された酸化アンチモンを含む請求項に記載の触媒。
  7. 二酸化チタンと酸化バナジウム粒子の懸濁液が不活性支持体に塗布される気相酸化用触媒の製造方法であって、該二酸化チタンのSとして計算された硫黄化合物含量が1000ppm未満であり、Caとして計算されたカルシウム化合物含量が100ppm未満であり、BET表面積が15〜60m2/gである方法。
  8. 上記懸濁液がさらに少なくとも一種のセシウム、リン及び/又はアンチモン源を含む請求項に記載の方法。
  9. 上記二酸化チタンの少なくとも一部の塗布に先立って、水熱条件下での水性媒体での処理が行われる請求項またはに記載の方法。
  10. 分子状酸素とo−キシレン、ナフタレンまたはこれらの混合物を含むガス流を請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒に接触させる無水フタル酸の製造方法。
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