以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
本実施形態のペロブスカイト機能積層膜は、単結晶基板上にエピタキシャル成長させた単層もしくは複数層から成るペロブスカイト機能膜を有し、前記ペロブスカイト機能膜の下地膜であって、エピタキシャル成長した、ジルコニア薄膜層(ZrO2)および希土類薄膜層のうち特にイットリア薄膜層(Y2O3)を含む単層もしくは複数層から成るバッファー層を備え、前記ペロブスカイト機能膜と前記バッファー層との間に、エピタキシャル成長した、単層もしくは複数層から成る下地ペロブスカイト構造膜を備え、前記下地ペロブスカイト構造膜と前記バッファー層の間に形成され、エピタキシャル成長した、Pt、Ir、Pd、Ru、Rhの少なくとも1種を主成分とする金属薄膜であって、前記単結晶基板の結晶方位の面内成分と前記ペロブスカイト機能膜の結晶方位の面内成分の回転角の差異が、1°以内であるペロブスカイト機能積層膜である。バッファ層、金属薄膜、下地ペロブスカイト構造膜およびペロブスカイト機能膜の形成方法は特に限定されず、基板上、特にSi単結晶基板上に、これらをエピタキシャル膜として形成可能な方法から適宜選択すればよい。
エピタキャル成長については、X線強度データのピーク情報から得られる。結晶性については、ロッキングカーブの半値幅が小さいこと示すことで得られる。配向性は、基板に対して、面直側はX線の2θ角度であることを示すことで得られ、基板に対して面内側はX線回折のインプレーン測定確認の値を示すことで得られる。信頼性については、膜剥がれの結果から得られる。
結晶性が良好で、単結晶基板の結晶方位の面内成分に対して、平行もしくは直交する結晶方位の面内成分を持つペロブスカイト機能膜を形成できれば、従来の機能膜では、実現が難しかったペロブスカイト機能膜の周波数特性等のデバイス特性及びその再現性向上、弾性率の安定性、積層膜間の密着性等の信頼性の向上が可能になる。
本実施形態を図を用いて説明する。図1は、本実施形態のペロブスカイト機能積層膜1の膜構成を示した図である。
(基板)
図1で、本実施形態で用いる基板2は、Si、MgO、SrTiO3、LiNbO3等の各種単結晶から選択することができるが、Si(100)単結晶表面を有する基板が最も好ましい。Si単結晶基板を用いる場合、基板と積層薄膜とは、それぞれの面内に存在する軸同士も平行となる。
(バッファ層)
図1のバッファ層31は、金属薄膜5と基板2との間に設けられる。なお、バッファ層3は、絶縁体としても機能する。
希土類元素およびアルカリ土類元素をRで表すと、バッファ層31の組成は、Zr(1−x)RxO2で表すことができる。ここで、RはScおよびYを含む希土類金属元素であり、x=0〜1.0である。x=0である酸化ジルコニウム(ZrO2)は、高温から室温にかけて立方晶から正方晶、さらに単斜晶と相転移を生じるが、希土類元素またはアルカリ土類元素の添加により立方晶は安定化する。ZrO2に希土類元素またはアルカリ土類元素を添加した酸化物は、一般に安定化ジルコニアと呼ばれる。本実施形態では、ZrO2安定化のための元素として希土類元素を用いることが好ましい。
安定化ジルコニア薄膜が含む希土類元素は、安定化ジルコニア薄膜に接する薄膜または基板の格子定数に応じ、これらと安定化ジルコニア薄膜との格子定数がマッチングするように適宜選択すればよい。
バッファ層31に用いる希土類元素は、Sc、Y、Ce、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも1種が好ましく、これらのうちから、酸化物としたときの格子定数やその他の条件に応じて適宜選択すればよい。
バッファ層31には、特性改善のために添加物を導入してもよい。例えば、AlおよびSiは、膜の抵抗率を向上させる効果がある。さらに、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属元素は、膜中において不純物による準位、すなわち、トラップ準位を形成することができ、この準位を利用することにより導電性の制御が可能になる。
バッファ層31の厚さは特に限定されず、好ましくは5〜1000nm、より好ましくは25〜100nmである。なお、バッファ層31の厚さは、バッファ層が均質なエピタキシャル膜となり、表面が平坦で、クラックが発生しないように適宜決定すればよい。
以下、安定化ジルコニアからなるバッファ層31の形成について具体的に説明する。
この製造方法を実施するにあたっては、例えばPhysical Vapor Deposition方式、以下PVD方式、すなわち、物理気相成長または物理蒸着であって、物質の表面に薄膜を形成する蒸着法のひとつで、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法による、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンプレーティング、イオンビームデポジション、スパッタリングを利用することができるが、電子ビーム蒸着装置を用いることが望ましい。電子ビーム蒸着装置は、酸化性ガス供給装置を備え、酸化性ガスは、基板の近傍でその分圧が高くされるよう工夫する事が望ましく、Zr蒸発部および希土類元素蒸発部を配置する必要がある。各蒸発部には、それぞれの蒸発源の他に、蒸発のためのエネルギーを供給するエネルギー供給装置が必要となるが、エネルギー供給装置は、電子線発生装置タイプ、抵抗加熱装置タイプのどちらでも構わない。
バッファ層31を形成する前に、単結晶Si基板2に表面処理を施すことが好ましい。基板2の表面処理は、フッ酸洗浄を含むRCA洗浄、すなわち、過酸化水素をベースに、アルカリや酸を加えた濃厚薬液を高温で使う洗浄方法を利用することが好ましい。
表面処理後、Si基板2の表面のSi結晶はSi酸化物層により被覆されて保護された状態となっている。そして、このSi酸化物層は、バッファ層31形成の際に基板表面に供給されるZr等の金属によって還元され、除去される。
次に、基板2を真空中で加熱し、Zrおよび希土類元素と、酸化性ガスとを基板表面に供給することにより、バッファ層31を形成していく。加熱温度は、良好な結晶性が得られるように適宜設定すればよい。具体的には、結晶化するためには800℃以上であることが望ましく、850℃以上であれば結晶性に優れた膜が得られる。ここで用いる酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、原子状酸素、NO2、ラジカル酸素等のいずれであってもよいが、以下の説明では、酸素を例に挙げる。
バッファ層31の形成に際しては、真空ポンプで継続的に真空槽内を排気しながら、酸素ガスを真空蒸着槽内に継続的に供給する。基板近傍における酸素分圧は、5×10-4〜0.5Torr程度であることが好ましい。酸素ガスの供給量は、好ましくは2〜60cc/分、より好ましくは4〜30cc/分であるが、酸素ガスの最適供給量は、真空槽の容積、ポンプの排気速度その他の要因により決まるので、あらかじめ適当な供給量を求めておく。
各蒸発源は、電子ビームEB1、EB2等で加熱して蒸発させ、基板2に供給する。均質な薄膜を形成するために、成膜速度は、0.002〜1.00nm/sec、特に0.005〜0.500nm/secとすることが好ましい。
希土類元素酸化物からなる薄膜やZrO2からなる薄膜についても、上記した安定化ジルコニア薄膜の場合に準じて形成すればよい。また、例えば、ZrO2薄膜上に希土類元素酸化物薄膜を形成する際に、両薄膜において同一の希土類元素を使用する場合には、ZrO2薄膜が所定の厚さに形成されたときにZrの供給を停止し、希土類元素だけを引き続いて供給することにより、連続して両薄膜を形成することができる。また、バッファ層31を傾斜組成構造とする場合には、Zrの供給量を徐々に減らし、最後にはゼロとして、希土類元素酸化物薄膜の形成に移行すればよい。
(金属薄膜)
図1において、金属薄膜5を設ける理由は、以下の通りである。本実施形態のペロブスカイト機能積層膜1を電子デバイスの構成要素として利用する場合、金属薄膜5は主に電極として機能する。金属薄膜5は、バッファー層31のc軸配向を引継ぎc軸配向にエピタキシャル成長し、又上層の下地ペロブスカイト構造膜6をc軸配向にエピタキシャル成長させその面内面方位を単結晶基板と合致させる機能を有する。
ペロブスカイト機能積層膜1の堆積速度が、合致しており単結晶膜となり得る成膜温度や成膜圧力が満たされていれば、成膜方法は、PVD方式による、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンプレーティング、イオンビームデポジション、スパッタリングや、Chemical Vapor Deposition方式、以下CVD方式、すなわち、原料ガス状物質(気体、液体、固体)としてCVD反応室に供給し、気相または基板材料表面において化学反応を起こさせ、所望の薄膜材料を基板上に堆積させる気相反応、表面反応を利用した薄膜作製装置を用いて成膜する方法であるが、これによる熱CVD、光CVD、プラズマCVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、MO−CVDでも可能である。
金属薄膜5は、Pt、Ir、Pd、RuおよびRhの少なくとも1種を主成分とすることが好ましく、これらの金属の単体またはこれらの金属を含む合金から構成されることが好ましい。また、金属薄膜5は、組成の異なる2種以上の薄膜から構成されていてもよい。また、金属薄膜5は、ペロブスカイト機能積層膜1中において応力を吸収する役割を果たすので、金属薄膜5の上に形成される薄膜のクラック発生を防ぐ効果もある。
金属薄膜5の厚さは用途により異なるが、好ましくは10〜500nm、より好ましくは50〜200nmであり、結晶性、表面性を損なわない程度に薄いことが好ましい。より具体的には、バッファー層31の界面からの表面性を整えるのには、厚さを30nm以上とすることが好ましく、50nm以上の厚さとすれば、十分な表面平坦性が得られる。また、電極として十分に機能させるためには、厚さを50〜500nmとすることが好ましい。なお、金属薄膜5の比抵抗は、好ましくは10-7〜103Ωcm、より好ましくは10-7〜10-2Ωcmである。
金属薄膜5は、積層薄膜の堆積速度が、合致しており単結晶膜となり得る成膜温度や成膜圧力が満たされていれば、成膜方法は問わない。蒸着法・スパッタ法時の基板温度は500〜750℃とすることが好ましい。基板温度が低すぎると結晶性の高い膜が得られにくく、基板温度が高すぎると膜の表面の凹凸が大きくなりやすい。
本実施形態では、金属薄膜5表面は、金属薄膜5の膜厚を調整することで平坦度は良好となり、金属薄膜5表面の基準長さ500nmでの十点平均粗さRzが、10nm以下、より好ましくは2nm以下となる。なお、このような表面粗さは、各層の表面の好ましくは80%以上の領域で実現していることが望ましい。上記表面粗さは、基板2全面にわたって各層を形成したときに、面積10cm2以上の領域にわたって平均に分布した任意の10箇所以上を測定しての値である。本明細書において、薄膜表面の例えば80%以上でRzが2nm以下であるとは、上記のように10箇所以上を測定したときにその80%以上の箇所でRzが2nm以下であることを意味する。なお、表面粗さRzは、JISB0610に規定されている。
金属薄膜Pt5の成膜開始直後は、島状結晶成長するPtが、50nm程度まで積層すると積層面内がほぼ連続膜となり、連続膜になりきらないPt表面上に大きな積層レートでPt成膜すると、島状状態から連続膜になりきらない箇所がピンホールとなり、そのピンホールが埋まりきらないまま堆積が続けられるため、結果として、結晶性も規則性が損なわれエピタキシャル成長が不十分となる。結果としてPt面の表面粗さも悪化し、Pt層の面内面方位が面内回転して、単結晶基板の面内面方位と差異が大きくなると同時に、金属薄膜の上層に積層する下地ペロブスカイト構造膜の結晶性も悪く、単結晶基板に対する下部金属薄膜上層の面内面方位の差異は大きくなる
(下地ペロブスカイト構造膜)
下地ペロブスカイト構造膜層6は、金属薄膜5とペロブスカイト機能膜7との間に設けられ、基板2とペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分を揃えるために機能する。その為、下地ペロブスカイト構造膜6は、上層に積層されるペロブスカイト機能膜7の結晶の格子定数値と下層に積層されている金属薄膜5の結晶の格子定数値の中間値に近い格子定数値を持つペロブスカイト材料を選択することが望ましい。
金属薄膜5とペロブスカイト機能膜7の間に下地ペロブスカイト構造膜を設ける理由は、金属薄膜5とペロブスカイト機能膜7を直接接合すると、金属薄膜5の結晶性の揺らぎをそのままペロブスカイト機能膜7で引き継ぐ為に、重要な機能膜側での面内面方位の回転が起こり易くなる弊害がある為である。又、ペロブスカイト機能膜7が酸化膜である為に機能膜としての特性を劣化させやすい酸素欠損が発生し易くなり、酸素欠損の増加にともない特性だけでなく信頼性をも損うこととなる。その為、下地ペロブスカイト構造膜6を金属薄膜5とペロブスカイト機能膜7との間に設ける必要がある。
下地ペロブスカイト構造膜6は、上層のペロブスカイト機能膜7及びそのペロブスカイト機能膜7を使用したデバイスの特性と特性再現性を最大限に活かされるべく材料選択される為、本実施形態の実施例では、導電性材料となるSrRuO3を選択しているが、ペロブスカイト機能膜7の材料選択によっては、まったく異なる特性を持つペロブスカイト材料を選択することも可能であり、また複数積層の下地ペロブスカイト構造積層膜6とする事も可能である。
下地ペロブスカイト構造膜6は、各種PVD方法により形成することが好ましいが、各種CVD法等を用いる事もできる。PVD法の例としては、平行平板型RFマグネトロンスパッタ法、すなわち、高周波によって生成したプラズマのスパッタリング現象を用いて電解質薄膜を作製する方法、を用いることもできる。成膜時は、プラズマダメージを回避する為、基板ステージの電位を調整する事が好ましい。スパッタ時の基板温度は400℃〜800℃とするのが好ましく、基板2温度が低すぎると結晶性の高い膜が得られにくく、基板2温度が高すぎるとエピタキシャル膜となっても表面の凹凸が大きくなりやすく、上層に積むペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分も単結晶基板2の結晶方位の面内成分と合わせることが難しくなる。
プラズマ生成ガスとしては、Ar、Ar+O2、Xe、Xe+O2、Kr、Kr+O2、N2、N2+O2、NO2を用いる事ができ、プラズマ生成ガスのO2分圧は主成分ガスに対して2%〜50%程度で使用する事が好ましい。下地ペロブスカイト構造膜6は、金属薄膜5とペロブスカイト機能膜7の格子定数差や線膨張係数による応力緩和を行うことを担っており、応力緩和は成膜温度、堆積レート、ターゲット基板間距離、成膜圧力及び酸素分圧で調整することが可能である。
(ペロブスカイト機能膜)
ペロブスカイト機能膜7は、下地ペロブスカイト構造膜6の上層に積層され機能膜として諸特性を持ち合わせ、そのペロブスカイト機能膜7を使用したデバイスのデバイス特性を意味付ける特性の根幹膜である。本実施形態に関しての実施例としては、強誘電体のPZT膜をあげているが、ペロブスカイト機能膜7としての特性は、超伝導体、誘電体、圧電体、焦電体、熱電体、他、多種の特性を持ち合わせる材料にて応用可能である。
本実施形態の単結晶基板2上に、ペロブスカイト機能膜7をエピタキシャル成長させた、単結晶基板2の結晶方位の面内成分とペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分の回転角の差異が、1°以内のペロブスカイト機能積層膜1とした場合、図4に示す様に、基板2の結晶方位の面内成分で面内の弾性率のピークを合わせ、つまり弾性率を均一に使用できる効果や、図5、表1は、熱衝撃信頼性試験を行った結果を示す。基板2からのペロブスカイト機能積層膜1の膜剥がれが低減できる事が確認できている。
ペロブスカイト機能膜7は、各種PVD法により形成することが好ましいが、各種CVD法を用いる事もできる。PVD法としては、PVD法の例としては、平行平板型RFマグネトロンスパッタ法を用いる事もできる。成膜時は、プラズマダメージを回避する為、基板ステージの電位を調整する事が好ましい。スパッタ時の基板温度は400℃〜800℃とするのが好ましく、基板温度が低すぎると結晶性の高い膜が得られにくく、基板温度が高すぎると膜の表面の凹凸が大きくなりやすい。
プラズマ生成ガスとしては、Ar、Ar+O2、Xe、Xe+O2、Kr、Kr+O2、N2、N2+O2、NO2を用いる事ができ、プラズマ生成ガスのO2分圧は主成分ガスに対して2%〜50%程度で使用する事が好ましい。ペロブスカイト機能膜7の特性が応用デバイスの特性に直接影響をもたらす事となる。ペロブスカイト機能膜7の物性上、ペロブスカイト機能膜7のキュリー点、結晶構造、線膨張係数による特性の変遷、膜応力が特性に大きくかかわっており、それらの物性値、成膜温度、堆積レート、ターゲット基板間距離、成膜圧力及び酸素分圧で微調整する事が可能である。
ペロブスカイト機能膜7には、キュリー点を持つ強誘電体や強磁性体等の材料も多く、それらの材料をエピタキシャルに成膜する場合は、キュリー点温度以上の成膜温度で行う場合も多い、その様な場合は、成膜後すぐに常温に戻さず、相転移温度で1minから300min程、基板2および積層膜の温度を維持する事で積層膜の特性及び応力やペロブスカイト機能膜7の表面粗さ等を改善する事が可能である。キュリー点を持つ材料のペロブスカイト機能膜7の多くは、相転移温度で面内方向を向くAドメインと面直方向を向くCドメインが、転位、反転する事が知られているが、相転移温度を維持する事でドメインのふるまいを緩和させる事ができる。なお、ドメインとは結晶方位が揃っている分域のことである。また、今回の場合、BドメインはAドメインと同等なのでAドメインとCドメインの話だけになっている。
また、本実施形態の効果の、単結晶基板2の結晶方位の面内成分とペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分の回転角の差異が1°以内とする為にペロブスカイト機能膜7の形成するAドメイン、Cドメインを代表とする各ドメインの積層毎の面内回転は1°以内である事が望ましい。もしくは、各ドメインの面内回転の時計周り方向の回転角と半時計周り方向の回転角の最大値の差異の絶対値が1°以内である事が好ましい。本実施形態では、他にも要素はあると考えられるが、結晶方位の面内成分の回転角は、ほぼドメインの角度と言ってもよいと考えられる。
(ペロブスカイト機能積層膜結晶性および表面性)
図1に示すペロブスカイト機能積層膜1を構成するペロブスカイト機能膜7、下地ペロブスカイト構造膜6、金属薄膜5、及びバッファー層3の結晶性は、X線回折における反射ピークのロッキングカーブの半値幅や、反射高速電子線回折像のパターンで評価することができる。また、表面性は、原子間力顕微鏡および走査型電子顕微鏡で評価することができる。
具体的には、X線回折において、(200)面または(002)面、すなわち、希土類c型構造のバッファ層では(400)面、の反射のロッキングカーブの半値幅という値があって、これがいずれも1.50°以下となる程度の結晶性を有していることが好ましい。ロッキングカーブ測定は、多結晶薄膜における結晶子の一軸性は配向分布も解析に広く使用されている。配向性が高い場合、ロッキングカーブは鋭いピーク形状を与え、そのピークの半値幅FWHM(Full Width at Half Maximum)が配向の度合を示す尺度として使用されている。
なお、ロッキングカーブは、X線を試料水平方向に対してθの角度で入射させ、対象物から反射して出てくるX線のうち、入射X線に対して2θの角度のX線を検出し、θに対するその強度変化を調べる、すなわち、入射X線源は固定して、対象物をθ動かし、検出器を2θ動かすというθ/2θ法という手法で測定される。このとき、たとえば、20°から70°のように、θを細かく変えて、その強度変化を調べると、ブラッグ(Bragg)の条件2dsinθ=nλ(λはX線の波長、dは結晶の原子面間隔、nは整数)を満たすときにX線強度が強まるので、ブラッグの式から、対象物の、面間隔がわかり、最終的には対象物の結晶構造がわかるというものである。
ロッキングカーブの半値幅FWHMという値について説明する。θ/2θ法により、対象物をθずつ検出側を2θずつ動かして測定する際に、対象物も検出側も動くので、精度に疑問が持たれる場合がある。θ/2θ法により、検出ピークが出た角度に、検出側を固定して、対象物側を、そのθの±1°〜3°くらいに動作させて、ロッキングカーブの検出ピークのゆらぎを確認する。当然ピークが鋭い方が結晶配向が揃っていることになり、ピーク強度の半分の箇所のプロファイルの角度幅、これが、ロッキングカーブの半値幅FWHMであるが、これを測定して評価する。当然FWHMが小さい程、結晶配向が揃っていることになる。
なお、ロッキングカーブの半値幅FWHMの下限値は特になく、小さいほど好ましいが、現在のところ、前記下限値は一般に0.7°程度、特に0.4°程度である。また、物質の表面状態を調べる技術の一つである反射高速電子線回折像においては、像がスポット状である場合、表面に凹凸が存在していることになり、反射高速電子線回折像が筋状や縞状のストリーク状である場合、表面が平坦であることになる。そして、いずれも場合でも、反射高速電子線回折像がシャープであれば、結晶性に優れていることになる。
結晶性が単結晶に近いかどうかの判断基準としては、一般的に、ロッキングカーブのプロファイルの裾は、形がくずれやすいので、基準値としては適切でない為、ロッキングカーブの半値幅FWHMが利用されている。X線回折を行う装置の使用するスリット幅や測定条件によるが、例えば、Si基板等の単結晶であれば通常は0.1度以下程度の非常に狭いものになる。半値幅は、プロファイルの高さの半値の箇所の値であり、実際のプロファイルの裾までの値のバラつきを考えて、測定値の2倍の値で考えると、半価幅のバラつきを考慮した最大値が1.0°にいかない値として、半値幅の値で0.5°より小さい程度の値をある程度結晶性の良い別のしきい値であると判断した。半価幅が0.7〜1.0°もしくは、1.0より大きくなってくると、単一配向とは、言い難い他の配向が観察されはじめることが多いことは確認済みである。
本実施形態のペロブスカイト機能積層膜1において、バッファ層3、金属薄膜5、下地ペロブスカイト構造膜6、ペロブスカイト機能膜7は、エピタキシャル膜である。本実施形態におけるエピタキシャル膜は、第一に、単一配向膜である必要がある。この場合の単一配向膜とは、X線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外のものの反射のピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である膜である。例えば、(k00)単一配向膜、すなわちc面単一配向膜では、膜のθ/2θ法によるX線回折で(k00)面以外の反射ピークの強度が、(k00)面反射の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。
なお、本実施形態において(k00)は、(100)や(200)などの等価な面を総称する表示である。本実施形態におけるエピタキシャル膜の第二の条件は、膜面内をx−y面とし、膜厚方向をz軸としたとき、結晶がx軸方向、y軸方向およびz軸方向に共に揃って配向していることである。このような配向は、反射高速電子線回折評価でスポット状またはストリーク状のシャープなパターンを示すことで確認できる。例えば、表面に凹凸が存在するバッファ層において結晶配向に乱れがある場合、反射高速電子線回折像はシャープなスポット状とはならず、リング状に伸びる傾向を示す。上記した二つの条件を満足すれば、エピタキシャル膜といえる。
本実施形態において、単結晶基板2の結晶方位の面内成分と、各積層膜の結晶方位の面内成分の差異は、図3で示すような、X線回折のインプレーン測定で行っている。X線回折のインプレーン測定は、X線21の入射角ωを全反射臨界角度付近の、0.2°から0.5°程の小さな角度に固定して面内回折で生じた回折線を測定する方法であり、試料表面近傍の面内格子面の回折スペクトルが高精度に得られる。
図3は、一般的な、インプレーンX線回折の測定装置の図である。図3を用いて、一般的なインプレーンX線回折について説明する。インプレーンX線回折法には、測定する格子面の方向によって、アウトオブプレーン測定と、インプレーン測定という2つの手法がある。アウトオブプレーン測定は、試料表面に対して垂直な格子面を評価する手法であるのに対して、インプレーン測定は、試料表面に対して平行な格子面を評価する手法である。
アウトオブプレーン測定では、5〜90度の角度範囲で入射X線21と検出器91を走査し、回折X線23から結晶構造の情報を得る。入射X線21は、試料深さ数十μmの比較的深い領域まで侵入できるため、薄膜由来の回折X線23の信号が弱い場合は基板の信号にうもれてしまうことがある。それに対し、インプレーン測定は、X線21の入射角ωを全反射臨界角度付近0.2〜0.5度の小さな角度に固定して測定するので、試料8へのX線21の侵入深さは数十nmであり、回折X線23の信号は、基板の影響を受けずに高精度に検出器92で検出される。薄膜試料の構造分析に力を発揮する手法である。
図3において、インプレーン測定にて、前述のブラッグ条件を、試料8として、面直にc軸をもつ立方晶単結晶基板を用いて、その基板面の(004)面に合わせて、0°から360°までの基板の面内回転軸22を回転させると、基板の回折ピークが出現する。その回折ピーク検出角度24であるθχと、回折が現れるまで試料8である基板側の面内回転軸22を面内回転動作させた角度25をφとするときの角度θχ-φを基準角度とした。本実施形態においては、θχ-φ角度測定を、各積層膜、金属薄膜5、下地ペロブスカイト構造膜6、ペロブスカイト機能膜7の層で行い、単結晶基板2の結晶方位の面内成分に対して、各々の結晶方位の面内成分の回転角度の差異を算出した。
また、X線回折インプレーン測定を行い結晶方位の面内成分の回転角度を測定する場合、検出されたインプレーン回折ピークのX線強度プロファイルの半値幅が小さいほど、結晶配向が揃っていることになるので好ましい。
(ペロブスカイト機能積層膜の産業上の利用可能性とデバイス応用)
本実施形態により、単結晶基板2とペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分の回転角の差異が1°以内になり、各積層膜の、物性上及び成膜後のばらつきが減少することにより、従来と比較し、ペロブスカイト機能膜7の、各積層膜間の面内面方位の差異による弾性率の安定性、各積層膜間の密着性等の信頼性の向上が見込まれる。
具体的な特性改善例1を図4に示す。図4は、横軸に結晶方位の面内成分の回転角、縦軸に弾性率をとったグラフである。本実施形態により、単結晶基板の結晶方位の面内成分に対して各積層膜の結晶方位の面内成分の回転角の差異が1°以内となっていることが前提となっている。そのようにすることにより、本実施形態により、単結晶基板2と金属薄膜5、下地ペロブスカイト構造膜6、ペロブスカイト機能膜7の弾性率値のプロファイルのピーク位置を合致させることが可能となり結晶方位の面内成分の選定方位によって、各積層膜の系の弾性率をコントロールすることが可能となる。
すなわち、単結晶基板の結晶方位の面内成分に対して各積層膜の結晶方位の面内成分の回転角の差異が1°以内で再現可能となるため、各積層膜間の面内面方位の差異により、物性上及び成膜後のばらつきが減少することにより、従来と比較し、ペロブスカイト機能膜7の、結晶性、配向性、および、弾性率の安定性、各積層膜間の密着性等の信頼性の向上が見込まれる。結果として、デバイス特性及びその再現性を向上させることができる。また、積層膜を応用するデバイスも同じ恩恵を受ける事ができる。
具体的な特性改善例2を図5、表1に示す。単結晶基板2面に対してペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分がふれているサンプルで膜剥がれについて信頼性試験を行った。試験内容は、熱衝撃試験であり−40℃の環境と+125℃の環境下を30minずつ1000サイクル行うものである。結果は表1に示す通りに単結晶基板2の結晶方位の面内成分に対して、金属薄膜5、下地ペロブスカイト構造膜6、ペロブスカイト機能膜7の結晶方位の面内成分の回転角度の差異レンジが0.98°の場合であれば各積層膜の膜剥がれの発生率は、0.3%以内に抑えられることを確認できた。結晶方位の面内成分の回転角度の差異を1°以内にした理由のひとつになっている。
また、単結晶基板上のエピタキシャル機能膜を応用デバイスに利用する場合、概してメンブレン構造や振動子構造の機能素子を形成する場合には、WETエッチングやドライエッチングを施し形状形成を行う。単結晶材料は、エッチング液やエッチングガスに対して異方性を持っている材料が多く、エッチング後の形成された形状も基板の結晶方位の面内成分に依存することとなる。その為、単結晶基板の結晶方位の面内成分方向に対して、おのずとエッチング形状は決まってくる事になり、特性上最善の形成を行う為には、エッチング前より単結晶基板上に積層された機能膜の結晶方位の面内成分を合わせておく必要があるが、その種のプロセスを行うデバイスに対しても良好な特性をもたらす技術である。
以下、本発明の具体的実施例を示し、本実施形態をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1において、Si(100)からなる単結晶基板2上に、ZrO2からなる第1のバッファー層3、Ptからなる金属薄膜5、SrRuO3からなる下地ペロブスカイト構造膜6、PZTからなるペロブスカイト機能膜7、がこの順で積層されたペロブスカイト機能積層膜1を、以下の手順で形成した。
まず、表面が(100)面となるように切断して鏡面研磨した、直径3インチ、厚さ400μmの円板状のSi単結晶ウエハを用意した。このウエハ表面を40%フッ化アンモニウム水溶液により、エッチング洗浄した。
次に、図10の様な蒸着装置を用い、蒸着装置の真空槽10A内に設置された回転軸40および加熱機構60を備えた基板ホルダ30に、上記単結晶基板2を図10の20の様に固定し、真空槽を10−6Torrまで油拡散ポンプにより排気した。排気後、基板を20rpmで回転させ、酸素を基板付近から10cc/分の割合で導入しつつ、900℃まで加熱した。基板温度が安定する様に設定温度到達から、5min以上、基板安定化時間を取る様にした。
次いで、バッファ層を形成する。第1のバッファー層3であるZrO2を成膜する。金属Zrを図10、90AのZr蒸発部から蒸発させて基板2の表面に供給し、前工程で形成したSi酸化物の還元と薄膜形成とを行った。なお、金属Zrの供給量は、ZrO2の膜厚に換算して25nmとした。バッファー層31は、第1のバッファー層3であるZrO2と第2のバッファー層4であるY2O3との傾斜組成構造膜である。この第2のバッファー層4であるY2O3は、希土類元素の供給は、図10、90Bの希土類元素蒸発部から蒸発させて行い、ZrO2の膜厚に換算した供給量5nmのタイミングで始め基板2の表面に供給した。
Zrの供給量は、徐々に減らし、供給量が膜厚換算で25nm以降はゼロとして、希土類元素酸化物薄膜の形成に移行した。希土類元素Yのみの供給に移行後、Y2O3薄膜に換算した供給量で15nmまで行った。このこの薄膜の最表面はY2O3薄膜で形成されており、反射高速電子線回折像は、シャープなスポット状であった。このことから、このY2O3薄膜は、結晶性が良好なエピタキシャル膜であり、かつ、表面に凹凸が存在することがわかった。蒸着装置での例を示したが、多元ターゲットを持つPVD装置や、平行平板マグネトロンスパッタ装置であれば傾斜組成構造膜を成膜することは可能である。
次に、傾斜組成構造膜となっているバッファ層31のY2O3単組成となっている表層上に厚さ200nmのPtからなる金属薄膜5を形成した。平行平板型RFマグネトロンスパッタ法で行い。基板温度設定は600〜700℃で加熱、ArもしくはAr+O2で成膜した。このPt薄膜のPt(200)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは、表2に示される様に0.36°であり、このことから、このPt金属薄膜5は、結晶性が良好なエピタキシャル膜であることがわかる。
次に、このPtの上に下地ペロブスカイト構造膜6のSrRuO3を20nm成膜した。成膜は、平行平板型RFマグネトロンスパッタ法で行い。基板温度設定は、600〜800℃で加熱、ArもしくはAr+O2で成膜した。実施例1の中では、ガスのO2分圧はArに対して5%〜25%程度が良好であった。
次に、この下地ペロブスカイト構造膜6のSrRuO3上にペロブスカイト機能膜7のPZTを50nm成膜した。成膜は、平行平板型RFマグネトロンスパッタ装置で行い。基板温度設定は、550〜750℃で加熱し、ArもしくはAr+O2で成膜した。本実施例の中では、ガスのO2分圧はArに対して2%〜10%程度が良好であった。
このようにして得られたPZTからなるペロブスカイト機能膜7/SrRuO3からなる下地ペロブスカイト構造膜6/Ptからなる金属薄膜5/バッファー層31の傾斜組成膜/単結晶基板2Si(100)から構成されるペロブスカイト機能積層膜1のX線回折チャートを、図6に示す。図6は、横軸に2θをとり、縦軸に強度を示すIntensityをとっっている。薄膜のX線回折2θデータおよびインプレーン確認データである。図3のインプレーンX線回折において、実施例1のサンプル表面に対して直交する方向に検出器を走査して、ブラッグ条件で回折されたX線を走査された角度2θと検出強度の関係で表示しているのが図6である。
図6において、実施例1の膜構成で、PZTからなるペロブスカイト機能膜7/SrRuO3からなる下地ペロブスカイト構造膜6/Ptからなる金属薄膜5/バッファー層31の傾斜組成膜、のX線強度が確かに検出されていることがわかる。
また、図6で、ペロブスカイト機能膜7が、PZT(001)とPZT(002)の2種類のピークが示されているが、これについて説明しておく。一般的に、ペロブスカイト構造というものは、Bサイト元素を中心に、酸素イオンが正8面体を、さらにその周りをAサイト元素が立方体を形成するように配置した構造である。基板面に対して、c軸方向に成長するペロブスカイト構造膜の観察では、単結晶基板面に対して、面直方向に、Aサイト間及びBサイト間の回折ピークが(001)で観察され、AサイトとBサイト間、及びBサイトとAサイト間の、回折ピークが(002)で観察される。だから、実施例1のペロブスカイト機能膜7PZT(001)は、PZT(001)とPZT(002)の2種類のピークが示されているのである。
その為、一般的に、ペロブスカイト構造のX線回折において(001)と(002)が、シャープで強度の大きい回折ピークで観察され、他の配向ピークが観察されない場合は、単結晶基板に対して、c軸単一配向膜であることが、明言できる。
表2は、図3のアウトオブプレーンX線回折において、実施例1の膜構成で、ロッキングカーブデータに基づいて、各回折でピーク観察された2θ値における、半値幅FWHMを検出した結果である。これによると、ペロブスカイト機能膜7が、PZT(001)とPZT(002)の2種類のピークが示されているのでc軸単一配向膜であることがわかる。また、ロッキングカーブの半値幅FWHMの下限値は特になく、小さいほど好ましいが、現在のところ、その下限値は一般に0.7°程度、特に0.4°程度であるのであるが、実施例1の、ペロブスカイト機能膜7、下地ペロブスカイト構造膜6、金属薄膜5の各膜の半値幅FWHMが、0.4°よりも小さいため、結晶性に優れているといえる。
積層できた基板を、図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。
表3は、実施例1のペロブスカイト機能積層膜1のSi基板2(100)の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7(PZT)、下地ペロブスカイト構造膜6(SrRuO3)、金属薄膜5(Pt)の各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。ここでいう差異の定義は、ペロブスカイト機能積層膜1のSi基板2(100)と、ペロブスカイト機能膜7(PZT)と、下地ペロブスカイト構造膜6(SrRuO3)と、金属薄膜5(Pt)の各薄膜の、結晶方位の面内成分を表す回転角を、基板を基準として、基板に対して、差をとったものである。また、表3の最下段には、Si基板2から、ペロブスカイト機能膜7(PZT)までの全積層膜の結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものである。
前述の説明のように、図3において、インプレーン測定にて、面直にc軸をもつ立方晶単結晶基板を用いて、その基板面の(004)面に合わせて、0°から360°までの基板の面内回転軸であるΦ軸を回転させると、基板の回折ピークが出現するが、その回折ピーク検出角度θχ角度と、回折が現れるまで試料である基板側の面内回転軸Φ軸を面内回転動作させた角度をφとするときの角度θχ-φを基準角度としている。さて、表3中の、X線入射軸との角度θχ−φ〔deg〕は、観察された回折角2θχから回折角θχを算出し、X線回折装置の試料台面内回転軸Φの動作回転角である各φ値から計算し算出した値である。これによると、Si基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7PZTまでの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差をとったものは、0.0110°となっており、確かに1°以内となっている。
成膜後のペロブスカイト機能積層膜1を透過型電子顕微鏡を使用して解析を行ったところ、PZTからなるペロブスカイト機能膜7は、50nm以下の非常に細かいドメインで構成されている事が判明した。又、250℃以上に加熱した透過型電子顕微鏡観察では、特に450℃以上となった時に単一ドメインとなった。解析では、粒界は認められず、ほぼ単一な結晶であった。収束電子線回折解析を行ったところ、c軸が、Si基板に対して面直になっているドメインが高い割合で存在していることがわかった。その割合は、少なくとも50%以上であった。
実施例1の膜構成であって、PZTからなるペロブスカイト機能膜7上に図示しないPt電極を蒸着し、この電極とPtからなる金属薄膜5を電極にして、容量のわかっている別のコンデンサの助けを借りて間接的に誘電体に溜まった電荷量を測定するというソーヤタワー回路を用いてP−Eヒステリシスを測定した。図9に測定したP−Eヒステリシス曲線を示す。P−Eヒステリシス曲線は、強誘電体コンデンサあるいはキャパシタの両電極間に電圧を加えて、分極量と電界の関係を調べると得られるものである。図9の横軸の外部電界Eが0のときの縦軸の分極量を残留分極、また、P−Eヒステリシス曲線が横軸の電界E軸と交わる電界を抗電界と呼ぶ。
比誘電率は、P−Eヒステリシス測定と同様な電極を用い、インピーダンスアナライザにより1kHzで測定したところ、580であった。強誘電特性の確認より、物体の角度や角速度を検出するジャイロセンサへの応用を行い、実施例1の効果から、デバイス系の振動特性の向上及び検出電圧のSignal/Noise比であるS/N比の向上が確認された。
すなわち、実施例1では、バッファー層31は傾斜組成膜であり、金属薄膜5のPt(002)及び、下地ペロブスカイト構造膜6のSrRuO3(002)、PZT(001)とPZT(002)の2種類のピークが見られることからペロブスカイト機能膜7は、単結晶基板に対して、c軸単一配向膜であり、Si基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7PZTまでの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、表2から0.0110°となっており、1°以内であり、さらに、各積層膜の膜剥がれの発生率は、表1から0.3%以内に抑えられるということがわかった。
(実施例2)
Si(100)からなる単結晶基板2上に、ZrO2からなる第1のバッファー層3、Y2O3からなる第2のバッファー層4、Ptからなる金属薄膜5、SrRuO3からなる下地ペロブスカイト構造膜6、PZTからなるペロブスカイト機能膜7、がこの順で積層されたペロブスカイト機能積層膜1を、以下の手順で形成した。
実施例1のように基板のエッチング洗浄を行い、図10の様な蒸着装置を用い、蒸着装置の真空槽10A内に設置された回転軸40および加熱機構60を備えた基板ホルダ30に、上記単結晶基板2を、図10の20の様に固定し、真空槽を10−6Torrまで油拡散ポンプにより排気した。排気後、基板を20rpmで回転させ、酸素を基板付近から10cc/分の割合で導入しつつ、900℃まで加熱した。基板温度が安定する様に設定温度到達から、5min以上、基板安定化時間を取る様にした。
次いで、第1のバッファ層3を形成する。金属Zrを図10、90AのZr蒸発部から蒸発させて基板2の表面に供給し、前工程で形成したSi酸化物の還元と薄膜形成とを行った。なお、金属Zrの供給量は、ZrO2の膜厚に換算して15nmとした。この薄膜は、X線回折においてZrO2の(002)ピークが明瞭に観察され、(001)単一配向で高結晶性のZrO2薄膜であることが確認された。また、このZrO2薄膜は、反射高速電子線回折において完全なストリークパターンを示し、表面が分子レベルで平坦であって、かつ高結晶性のエピタキシャル膜であることが確認された。
次いで、第1のバッファ層3であるZrO2薄膜を形成した単結晶基板2を基板とし、基板温度900℃、基板回転数20rpm、酸素ガス導入量10cc/分の条件で、基板表面に金属Yを供給することにより、第2のバッファ層4のY2O3薄膜を形成した。金属Yの供給量は、Y2O3に換算して20nmとした。このY2O3薄膜の反射高速電子線回折像は、シャープなスポット状であった。このことから、このY2O3薄膜は、結晶性が良好なエピタキシャル膜であり、かつ、表面に凹凸が存在することがわかった。
次に、第2のバッファ層4のY2O3薄膜上に厚さ200nmのPtからなる金属薄膜5を形成した。基板温度は700℃、基板回転数は20rpmの条件で、基板表面にPtを供給することにより、100nmを成膜を行い。100nm以降の成膜は、平行平板型RFマグネトロンスパッタ法で行い基板温度設定は600〜700℃で加熱、Arで成膜した。このPt薄膜のPt(200)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは0.19°であり、このことから、このPt金属薄膜5は、結晶性が良好なエピタキシャル膜であることがわかる。
以降の工程は実施例1と同じである。
このようにして得られたペロブスカイト機能膜7(PZT)/下地ペロブスカイト構造膜6(SrRuO3)/金属薄膜5(Pt)/第2のバッファー層4(Y2O3)/第1のバッファー層4(ZrO2)/単結晶基板2(Si)から構成されるペロブスカイト機能積層膜1のX線回折チャートを、図6に示す。図6は、横軸に2θをとり、縦軸に強度を示すIntensityをとっっている。薄膜のX線回折2θデータおよびインプレーン確認データである。図3のインプレーンX線回折において、実施例1のサンプル表面に対して直交する方向に検出器を走査して、ブラッグ条件で回折されたX線を走査された角度2θと検出強度の関係で表示しているのが図6である。
図6において、実施例2の膜構成で、ペロブスカイト機能膜7(PZT)/下地ペロブスカイト構造膜6(SrRuO3)/金属薄膜5(Pt)/第2のバッファー層4で(Y2O3)/第1のバッファー層4(ZrO2)のX線強度が確かに検出されていることがわかる。実施例1はバッファー層が単層のため、実施例2の第2のバッファー層4のY2O3が検出されないのみの違いである。ここでも、図6を使用した。
図6には、実施例1のペロブスカイト機能積層膜1を構成する各薄膜について(100)と等価な面のピークおよび(001)と等価な面のピークだけが認められ、これから、各薄膜が(100)単一配向または(001)単一配向であることがわかる。
表2において、実施例2における、Pt(200)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは0.19°、PZT(001)と(002)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは0.32°であり、実施例1よりも、配向性に優れていることが確認された。
積層できた基板を、図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。
表3は、実施例2の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のSi基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、Si基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7PZTまでの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、0.0070°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例2で解析したドメインや、P−Eヒステリシス曲線は、上記の結果から、実施例1の結果よりも優れていることは明白である。
実施例2の2層バッファ層のほうが、組成傾斜膜である単層バッファ層よりも優れた結果となった理由は、実施例1のバッファー層は、ZrO2よりY2O3を添加する安定化ジルコニアそして最後は、Y2O3のみの成膜とする組成傾斜成膜を利用しているが、ZrO2にY2O3を添加して組成傾斜膜を成膜していく成膜状態では、膜は安定化ジルコニアとなり結晶構造も安定していくのだが、逆にZrO2の成膜レートを落としていく成膜状態では、Y2O3の結晶構造の揺らぎを抑えるのが難しく、次に上層に成膜するPtの結晶配向をC軸とする為の(111)ファセット面を形成することが、ZrO2とY2O3の2層バッファーと比較した場合に難しくなる為である。
すなわち、実施例2では、実施例1に対し、バッファ層が2層となっており、傾斜組成膜よりも優れた結果となることがわかった。
(実施例3)
実施例1に対して、Ptからなる金属薄膜5上に下地ペロブスカイト構造膜6としてPb(La、Ti)O3(以下、PLTと表記)を20nmの厚さに形成して、上から順に、PZT/PLT/Pt/傾斜組成膜/Siの積層薄膜を得た。ただし、PLT、PZT形成時の基板温度は、650℃で行った。薄膜のX線回折データおよびインプレーン確認データを、前述同様に、それぞれ図7および表4、表5に示す。図7の、X線回折結果よりPLTおよびPZT薄膜はc面単一配向膜であることがわかる。傾斜組成膜というのは、ZrO2薄膜とY2O3薄膜の傾斜組成膜である。
表4において、Pt(200)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは0.22°、PZT(001)と(002)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは、それぞれ0.51°、0.65°であり、配向性に優れていることが確認された。
積層できた基板を図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。
表5は、実施例1の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のSi基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、Si基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7PZTまでの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、0.0295°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例3は、実施例1の下地ペロブスカイト構造膜6SrRuO3のかわりに、PLTを用いたものである。このような、薄膜積層構成の変更を行った理由は。SrRuO3とPLTでは、格子定数がPLTの方が近く、PZTを機能膜としてデバイス作成する場合PZTの積層膜が厚くなった場合、その膜厚と膜応力に応じてソリ量が大きくなるが、その様な厚いPZT形成が必要な場合、格子整合のし易さからPZT膜応力が軽減しやすい為である。
すなわち、実施例3では、実施例1に対し、下地ペロブスカイト構造膜6にPLTを用いても、使用可能な結果となることがわかった。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に対して、ペロブスカイト機能膜7、下地ペロブスカイト構造膜6の積層構造としてSrTiNbO3/SrTiO3をそれぞれ20nm、50nmの厚さに形成して、上から順に、SrTiNbO3/SrTiO3/Pt/傾斜組成膜/Siのペロブスカイト機能積層膜1とした。ただし、SrTiO3、SrTiNbO3、形成時の基板温度は、800℃、750℃で行った。傾斜組成膜というのは、ZrO2薄膜とY2O3薄膜の傾斜組成膜である。
薄膜のX線回折およびインプレーン確認データを、それぞれ図8に示した。図8より、X線回折よりSrTiNbO3/SrTiO3薄膜は、c面単一配向膜であることがわかる。
表6において、Pt(200)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは0.21°、SrTiNbO3(001)と(002)反射のロッキングカーブの半値幅FWHMは、それぞれ0.09°、0.25°であり、配向性に優れていることが確認された。
積層できた基板を図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。
表7は、実施例1の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のSi基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、Si基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7SrTiNbO3までの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、0.0098°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例4は、実施例1のペロブスカイト機能膜7(PZT)のかわりに、SrTiNbO3を用いたものである。このような、薄膜積層構成の変更を行い確認したことで、PZTの様な強誘電体の特性を特徴とするペロブスカイトのみならず、SrTiNbO3/SrTiO3を誘電体や熱電体の特性を特徴とする材料で同様な効果が確認できたことは、本実施形態がペロブスカイト構造を持つ機能膜において幅広く活用できることを示している。
すなわち、実施例4では、実施例1に対し、ペロブスカイト機能膜7にSrTiNbO3を用いても、使用可能な結果となることがわかった。
更に、ペロブスカイト機能膜7/下地ペロブスカイト構造膜6の積層構造として、SrTiNbO3/SrTiO3を、それぞれ2nm/2nmの厚さに成膜し、SrTiNbO3/SrTiO3それぞれ20層の多積層体として形成し、4端子低抵抗測定器、熱電特性測定器を用い、ペロブスカイト機能積層膜1の比抵抗及びゼーベック係数を測定したところ、それぞれ4.0mΩcm、800μV/Kの値を確認する事ができた。ゼーベック効果とは、電気的に異なる2種類の導体または半導体を接触させ温度差を与えたときに、導体または半導体の両端に電位差が生じる現象をいう。物質に固有の値であるゼーベック係数は、熱によって発電できる能力を示しており、単位温度差あたりに発生する電位差の単位をもっており、つまり、ゼーベック係数が大きいほど、大きな起電力を発生することができる。したがって本発明は、熱電特性を持つ酸化膜に有効である事が確認された。
(実施例5)
実施例5は、実施例1において、Si基板を、MgO単結晶基板におきかえ、MgO基板上に実施例1と同様にPtを成膜し、Ptの上にSrRuO3を20nm成膜し、SrRuO3上にPZTを50nmの厚さに形成し、上から順に、PZT/SrRuO3/Pt/傾斜組成膜/MgOの積層薄膜とした。傾斜組成膜31というのは、ZrO2薄膜とY2O3薄膜の傾斜組成膜である。
また同様に、変形例1として、MgO基板上に、実施例1と同様にPtを成膜し、Ptの上にSrTiO3を20nm成膜し、SrTiO3上にSrTiNbO3を50nmの厚さに形成し、上から順に、SrTiNbO3/SrTiO3/Pt/傾斜組成膜/MgOのペロブスカイト機能積層膜1とした。
積層できた基板を図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。表8は、実施例5と変形例1の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のMgO基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、MgO基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7までの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、実施例5では0.0210°、変形例1では0.0110°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例5は、実施例1において、Si基板を、MgO単結晶基板におきかえたものである。変形例1は、実施例5において、ペロブスカイト機能膜7/下地ペロブスカイト構造膜6の、PZT/SrRuO3をSrTiNbO3/SrTiO3におきかえたものである。このような、単結晶基板の変更を行い確認したことで、本発明の効果がSi基板のみに
限定されることなく、MgOの様に絶縁物でありSiと格子定数も結晶構造も違う基板でも幅広く活用できる事を示している。
(実施例6)
実施例6は、実施例5において、MgO基板をLiNbO3単結晶基板におきかえた構成であり、上から順に、PZT/SrRuO3/Pt/傾斜組成膜/LiNbO3のペロブスカイト機能積層膜1とした。
また同様に、変形例2として、変形例1において、MgO基板をLiNbO3におきかえた構成であり、上から順に、SrTiNbO3/SrTiO3/Pt/傾斜組成膜/LiNbO3のペロブスカイト機能積層膜1とした。
積層できた基板を図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い、基板の単結晶方位と各レイヤーの結晶方位の面内成分、すなわち、面内配向方位の測定を行った。表9は、実施例6と変形例2の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のLiNbO3基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、LiNbO3基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7までの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、実施例5では0.0490°、変形例1では0.0420°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例6は、実施例1において、Si基板を、LiNbO3単結晶基板におきかえたものである。変形例2は、実施例6において、ペロブスカイト機能膜7/下地ペロブスカイト構造膜6の、PZT/SrRuO3をSrTiNbO3/SrTiO3におきかえたものである。このような、単結晶基板をSi基板に限定せず、強誘電体特性を示し位相変調器、導波路基板、表面超音波デバイス等の基板に利用されるLiNbO3基板を利用する事でも本発明の効果が確認できた事で本発明が幅広く活用できる可能性を示すことができた。
(実施例7)
実施例7は、変形例1において、MgO基板をSrTiO3単結晶基板におきかえた構成であり、上から順に、SrTiNbO3/SrTiO3/Pt/傾斜組成膜/SrTiO3のペロブスカイト機能積層膜1とした。SrTiO3基板上に、変形例1と同様に金属薄膜5Ptを成膜し、Ptの上に下地ペロブスカイト構造膜6SrTiO3を20nm成膜し、SrTiO3上にペロブスカイト機能膜7SrTiNbO3を50nmの厚さに形成した。
積層できた基板を図3に示す様なX線回折装置でインプレーン測定を行い基板の単結晶方位の面内成分と各レイヤーの結晶方位の面内成分の回転角を測定を行った。表9は、実施例7の膜構成のペロブスカイト機能積層膜1のSrTiO3基板2(100)の単結晶方位に対する、各薄膜の、結晶方位の面内成分の回転角の差異〔deg〕を示したものである。これによると、SrTiO3基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7までの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差、すなわち、全回転角の差異をとったものは、実施例7では0.0110°となっており、確かに1°以内となっている。
実施例7は、変形例1において、MgO基板を、SrTiO3単結晶基板におきかえたものである。誘電体特性を示し、超電導薄膜用基板としても最も使われているSrTiO3単結晶基板への変更確認する事で本発明の応用利用範囲としてジョセフソン素子用、超電導量子干渉素子等への超伝導薄膜及びそのデバイスへ幅広く活用できる事を示すことができた。
すなわち、実施例5、変形例1、実施例6、変形例2、実施例7では、実施例1に対し、単結晶基板にMgOやLiNbO3、SrTiO3を用いても、ペロブスカイト機能膜7/下地ペロブスカイト構造膜6にSrTiNbO3/SrTiO3を用いても、単結晶基板2の単結晶方位に対する、ペロブスカイト機能膜7までの結晶方位の面内成分の回転角の差異のうち、最も小さいものと、最も大きいものの差をとったものは、1°以内となっているので、ペロブスカイト機能膜の結晶方位を、単結晶基板材料の結晶方位に対し平行もしくは直交する方向に成長、すなわち、エピタキシャル成長させ、その結果、結晶性、配向性、および、信頼性を著しく向上させることができるペロブスカイト機能積層膜を提供することが可能となる