リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、エネルギー密度が高いことから、携帯電話に代表されるモバイル機器用の電源として広く普及している。非水電解質電池は、今後、電力貯蔵用、電気自動車用及びハイブリッド自動車用等の用途への展開が見込まれている。
非水電解質電池用の正極活物質としては数多くのものが知られている。なかでも、LiCoO2は、充放電特性とエネルギー密度に優れることからコンシューマ分野のモバイル機器電池用正極活物質として広く用いられている。パソコン、携帯電話などのコンシューマ用途に用いられる非水電解質電池の期待寿命は2〜5年程度であり、現時点では、LiCoO2は、市場要求に答えるのに十分なエネルギー密度と寿命性能を備えた非水電解質電池用の正極活物質であるといえる。
近年、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車といった自動車分野に非水電解質電池を適用することが検討されており、一部、実用化している。これらの自動車用電池は、自動車の走行性能を確保するため、エネルギー密度、入出力特性、寿命性能及び安全性を高いレベルで達成することが求められている。特に、プラグインハイブリッド自動車用においては、電池のSOCが高い領域では、電気自動車のように、電動走行用電源として使用されると共に、電池のSOCが50%以下の比較的低い領域では、ハイブリッド自動車のように、エンジンのアシスト用電源として使用される。従って、プラグインハイブリッド自動車用電池は、電動走行に必要な高いエネルギー密度が求められるだけでなく、低SOC領域において優れた入出力特性を備えることが求められている。
さらに、プラグインハイブリッド自動車用電池は、電気自動車用電池に比べて、使用されるSOCの範囲が広いうえ、高い電池寿命性能が求められている。即ち、コンシューマ用電池は、2〜5年程度の寿命が期待されているのに対し、プラグインハイブリッド自動車用電池は、自動車の車体寿命に相当する10年以上の寿命が要求されている。
非水電解質電池の寿命は、その使用方法に大きく影響される。プラグインハイブリッド自動車用電池は、上記したように、使用されるSOCの範囲が広いことに加え、深い充放電が繰り返し行われることから、期待される電池寿命を確保するための技術的課題は極めて厳しい。また、低SOC領域において求められる入出力特性は、寿命末期の電池であってもなお、維持していることが求められている。
非水電解質電池の寿命を支配する因子としては、速度論的劣化因子と平衡論的劣化因子がある。簡単に説明すれば、前者は電池の内部抵抗増大による出力性能低下や電池容量低下に関し、後者は副反応による有効リチウム量の低下や活物質の不活性化による電池容量の低下に関する。いずれの因子においても、その劣化原因の多くは正極に起因すると考えられている。
特許文献1には、出力低下を抑制し、優れたサイクル特性および熱安定性を有する二次電池とするために、パーフルオロエタンジスルホン酸二リチウムの層を表面に有するLiCoO2を用いる技術が開示されている。
特許文献2には、高安全性と長寿命を両立したリチウム二次電池を得るために、LixNiaMnbCocO2(0<x<1.2,a+b+c=1)のMnやNiの一部をAlやSi等で置換する技術が開示されている。
特許文献3には、高容量、長寿命及び安全性を確保するために、LiCoO2の表面にアルミニウム及びリンを含む酸化物コート層を形成する技術が開示されている。
特許文献4には、「複雑な電子回路を使用することなく充電状態を容易に検知することができる非水電解液二次電池を提供する」(段落0006)ことを目的として、「リチウムイオンを挿入離脱可能な正極と負極とを備えた非水電解液二次電池において、前記正極は2種以上の正極活物質を含み、かつ、前記非水電解液二次電池を充放電したときの電池残容量と電池電圧との関係を表す充放電曲線が、前記電池残容量を横軸にとり前記電池電圧を縦軸にとったときに前記電池電圧が略フラットとなり前記電池残容量の変化に対する前記電池電圧の変化の小さい2つ以上のフラット部を有し、前記フラット部間には、前記フラット部より前記電池残容量の変化に対する前記電池電圧の変化の大きいスロープ部が介在していることを特徴とする。」(段落0007)という発明が開示されている。また、「この場合において、正極活物質が、オリビン結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物と、層状結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物及びスピネル結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物の少なくとも一方とを含んでいてもよい。このとき、オリビン結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物を化学式Li1+yM1−yPO4(Mは、Mn、Co、Ni、Cr、Al、Mg、Feから選択される1種以上の遷移金属元素である。)で表される化合物及び化学式Li1+yM1−yPO4で表される化合物に炭素を担持させた化合物の少なくとも1種とし、層状結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物を化学式Li1+xM1−xO2で表される化合物とし、スピネル結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物を化学式Li1+xM2−xO4で表される化合物としてもよい。」(段落0009)との記載がある。また、実施例として、「化学式LiCo0.33Mn0.33Ni0.34O2で表される層状結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物と、化学式LiFePO4で表されるオリビン結晶構造を有するリチウム含有遷移金属複合酸化物に重量比で10%の炭素を担持させた化合物とを2:1の重量比で混合した混合系正極活物質を使用しラミネートフィルム外装電池1を作製した。」(段落0033)との記載があり、このラミネートフィルム外装電池を用いると、「電池残容量に余力がある段階で電池の充電状態を検知することができるので、機器を直ちに停止させずにすむ。すなわち、精度の低い電圧検出でも充電状態を検知しやすく、検知した後でも機器の動作を確保することができる。」(段落0037)と記載されている。
特許文献5には、「本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極の容量は、リチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和で表され、正極は、リチウムおよび鉄(Fe)を含み、かつオリビン構造を有するリン酸化物よりなる第一正極活物質を含有するものである。」(段落0008)という発明が開示されており、「また、正極に、更に、リチウム,ニッケル,第一元素および酸素(O)を含み、第一元素は、鉄,コバルト(Co),マンガン(Mn),銅(Cu),亜鉛(Zn),アルミニウム(Al),スズ(Sn),ホウ素(B),ガリウム(Ga),クロム(Cr),バナジウム(V),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)からなる群のうちの少なくとも1種であり、ニッケルおよび第一元素におけるニッケルの割合が50mol%以上である第二正極活物質を含有するようにし、第一正極活物質と第二正極活物質との質量比による割合(第一正極活物質:第二正極活物質)を、30:70から90:10の範囲内とするようにすれば、熱安定性をより向上させることができると共に、容量を高くすることもできる。」(段落0010)こと、また「第一正極活物質の含有量は、全正極活物質に対して、30質量%以上90質量%以下の範囲内であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下の範囲内であればより好ましい。第一正極活物質の含有量が少ないと、熱安定性を向上させる効果が十分ではなく、含有量が多いと、容量が低下してしまうからである。」(段落0023)ことが記載されている。特許文献2の実施例には、「正極21と負極22との対向面において、正極と負極材料との容量比が120:100となるようにし、負極22の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和で表されるようにした。」(段落0070)、た二次電池において、第一活物質としてLiFePO4を、第二活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2又はLiNi0.5Co0.3Mn0.2O2を用いた場合、「第一正極活物質の割合が多くなり、第二正極活物質の割合が少なくなるに伴い、釘さし試験において良好な結果が得られた。また、第二正極活物質の割合が多くなり、第一正極活物質の割合が少なくなるに伴い、放電容量が大きくなった。更に、第一正極活物質と第二正極活物質との質量比による割合(第一正極活物質:第二正極活物質)を30:70から90:10の範囲内とした各実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分で表される、いわゆるリチウムイオン二次電池とした比較例1−3よりも高い放電容量が得られた。」(段落0093)ことが示されている。
特許文献6には、「電気化学的活物質が、I)リチウムと、Mg、Al、B、Ti、Si、Zr、Fe、Zn、およびCuから選択された1種の元素によって置換されてもいる、NiおよびCoから選択された少なくとも1種の遷移金属との複合酸化物と、II)リン、リチウム、および少なくとも1種の遷移金属からの一般式LitM2 zPO4(式中、0≦t≦3、およびz=1または2)の複合酸化物との混合物を含むこと、ならびにリン、リチウム、および少なくとも1種の遷移金属からの前記複合酸化物の含有量が前記混合物の重量の1%から50%の範囲にあることを特徴とする、液状電解質および正極用の前記電気化学的活物質を含むリチウム充電式電気化学的電池を提供する。」(段落0005)という発明が開示されており、「リン、リチウム、および遷移金属の前記複合酸化物は、LiFePO4、LiVPO4F、およびLi3Fe2PO4から選択されることが好ましい。」(段落0013)との記載がある。また、実施例として、LiFePO4とLiNi0.80Co0.15Al0.05O2を20:80の割合で含有する電気化学電池が記載され、該電気化学電池は、LiFePO4を単独で、又は、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2を単独で用いた場合から予想されるよりも高い可逆容量を示すこと、また酷使的過充電試験を行った際に、「リチウム電池に本発明の活物質を使用すると、従来技術の電池と比べて、放出されるガスの総量を約2分の1にすることができる。」(段落0043)と記載されている。
特許文献7には、「優れた過放電性能を有し、充放電時に連続的な電位変化を示す非水電解質二次電池を提供する」(段落0009)ことを目的として、「正極活物質が、LiCoO2と、LiMnO2と、一般式LiFe1−xMxPO4(但し、0≦x≦0.13、MはMg、Co、Ni、Mn、Znから選ばれる少なくとも一種の金属)で表される化合物とを含有し、正極活物質に対して、LiCoO2の割合が50重量%以上80重量%以下であり、LiMnO2の割合が10重量%以上30重量%以下であり、LiFe1−xMxPO4の割合が10重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。」(段落0010)という発明が開示されている。また、実施例には、LiCoO2と、LiMnO2と、LiFePO4と、を重量比70:20:10から50:20:30の範囲で混合した正極活物質を用いた非水電解質二次電池が示され、「LiCoO2と、LiMnO2と、LiFePO4との3成分系では、約3.6Vと、約3.3Vと、約2.5Vに平坦領域を有する、4Vから2.5Vまで連続的な放電曲線を示した。」(段落0069)ことが示されている。
特許文献8には、「層状岩塩構造のLiCoO2、LiNiO2やスピネル構造のLiMn2O4等を正極活物質に用いた二次電池は、その充電状態(SOC)によって、入力密度および出力密度が変化するという問題があった。」(段落0004)という課題を解決するために、「リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた正極と、負極と、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液とを備えてなるリチウム二次電池であって、SOC50%における出力密度および入力密度がそれぞれ1500W/kg以上であり、かつ、SOCが25%以上80%以下の範囲における出力密度の変化率および入力密度の変化率がそれぞれ20%以下であることを特徴とする。」(段落0007)という発明が開示されている。また、「二次電池の正極活物質として用いるリチウム遷移金属複合酸化物は、特に限定されるものではない。入力密度や出力密度が高く、それらがSOCに依存しない二次電池を構成し得るものを採用すればよい。例えば、組成式LiMePO4で表され、その結晶構造はオリビン構造を有するものを用いることが好適である。」(段落0014)、「この場合、組成式LiMePO4において、Meは2価の遷移金属から選ばれる少なくとも1種であり、例えば、Fe、Mn、Ni、Co、Mg等が挙げられる。なかでも、資源的に豊富で安価であり、環境負荷も小さいという理由から、MeをFeとすることが望ましい。」(段落0015)との記載がある。また、実施例には、炭素物質微粒子を複合化したLiFe0.85Mn0.15PO4を正極活物質としたものを#3の二次電池、「LiNiO2を正極活物質としたものを#5の二次電池、LiMn2O4を正極活物質としたものを#6の二次電池とした。」(段落0061)場合に、「#5および#6の二次電池は、#3の二次電池と比較して、SOCによって出力密度が大幅に変化した。」(段落0062)ことが示され、「このように、オリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた本発明の二次電池は、出力密度、入力密度がともに高く、かつSOCによる入出力密度の変化の少ない二次電池であることが確認できた。」(段落0064)と記載されている。
特許文献9には、第1の活物質としてLiNi1/4Mn1/4Co1/2O2やLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を用い、第2の活物質であるLiFePO4と、質量比90:10や質量比92:8で混合した電池が記載されている。
以下に、本発明の実施の形態を例示するが、本発明は、これらの記述に限定されるものではない。
本発明に係る非水電解質電池の正極を備える非水電解質電池は、前記正極と、負極と、電解質塩及び非水溶媒を含有する非水電解質とを備えるものである。さらに、本発明の非水電解質電池は、正極と負極との間にセパレータが備えられ得る。また、これらの構成物を包装する外装体が備えられ得る。また、本発明に係る非水電解質電池の態様としては、特に限定されるものではなく、例えば、正極、負極及び単層又は複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、さらに、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池などが挙げられる。
一般式LiaNixMnyCozO2(x>0、y>0、z>0、x+y+z=1、1.2≧a≧0.8)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物からなる第一活物質は、これを構成するLi、Ni、Mn又はCoの一部が、本発明の効果を損なわない範囲で、Fe、Al、Cr、Mg、V、Ti等の金属元素で置換されていてもよく、また酸素の一部がF、Sなどで置換されていてもよい。また、|x−y|≦0.05であるものが、熱的安定性及び充放電サイクル性能に優れる点で好ましい。前記第一活物質としては、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi1/6Mn1/6Co2/3O2、LiNi1/4Mn1/4Co1/2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2等が挙げられる。なかでも、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi1/4Mn1/4Co1/2O2、が好ましい。
前記第一活物質より卑な放電電位領域を有し、リン酸遷移金属リチウム化合物からなる第二活物質を構成する遷移金属としては、主に、Fe、Mn、V等であるが、それ以外の遷移金属あるいは典型元素を含んでいてもよい。また、リチウム又は遷移金属の一部が、本発明の効果を損なわない範囲で、Co、Al、Cr、Mg、Mn、Ni、Ti等の金属元素で置換されていてもよい。また、リン酸(PO4)部分は、微量の(BO3)、(WO4)、(MoO4)、(SiO4)等の他のアニオンが固溶していてもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。代表的な例として、オリビン構造をもつLiFePO4や、ナシコン構造をもつLi3V2(PO4)3などの材料が挙げられる。Li3V2(PO4)3は、約130mAh/gの容量が得られるため好ましい。LiFePO4は、その放電電位領域が前記第一活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物の放電電位領域に比べて十分低く、約160mAh/gの容量が得られることから、本発明の効果がより顕著に得られるため、極めて好ましい。
本発明に係る第一活物質や第二活物質の合成方法については、特に限定されるものではない。具体的には、固相法、液相法、ゾル−ゲル法、水熱法等が挙げられるが、本発明の要件である結晶子径0.2μm以下を達成するためには、ゾル−ゲル法、水熱法が好ましい。
また、本発明に係る、リン酸遷移金属リチウム化合物からなる第二活物質は、電子伝導性を補う目的で活物質粒子表面にカーボンを被覆することが好ましい。このような被覆方法としては、メカニカルアロイング法、CVD法、スプレードライ法、水熱反応法などが知られている。
前記第二活物質は、一般に電気抵抗が大きく、本発明の目的とするところの出力特性を得るためには、結晶子径が小さく、またその表面に炭素被覆をおこなう必要がある。このため、前記第二活物質の結晶子径は0.2μm以下とすることが必要であり、0.15μm以下とすることが好ましく、0.10μm以下とすることがより好ましい。さらに、スプレードライ法等を用いて炭素源を付与した後、焼成すること等の方法により、約10nm以下の程度の均一な炭素被覆を施すことが好ましい。前記第二活物質の結晶子径を小さくすることで、固相内の電子の伝導経路長やLiイオンの拡散経路長を短くすることができる。なお、結晶子径は、エックス線回折測定により求めたピークの半値幅から算出することができる。LiFePO4の場合、具体的には、結晶構造を斜方晶Pmnbに帰属したときの(011)面のピークの半値幅に基づき、シェラーの式を適用して算出する。
正極には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、他の正極材料を混合して用いることができる。他の正極材料としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。遷移金属酸化物としては、マンガン酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、ニッケル酸化物、バナジウム酸化物、遷移金属硫化物としては、モリブデン硫化物、チタン硫化物等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルマンガン複合酸化物等が挙げられる。さらに、ジスルフィド,ポリピロール,ポリアニリン,ポリパラスチレン,ポリアセチレン,ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る非水電解質電池に含有される非水電解質を構成する有機溶媒は、限定されるものではなく、一般に非水電解質電池に供される非水電解質に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフランまたはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサランまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機溶媒は、任意の割合で混合して用いることができる。
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li2B10Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO2)2,LiN(C2F5SO2)2,LiN(CF3SO2)(C4F9SO2),LiC(CF3SO2)3,LiC(C2F5SO2)3,(CH3)4NBF4,(CH3)4NBr,(C2H5)4NClO4,(C2H5)4NI,(C3H7)4NBr,(n−C4H9)4、NClO4,(n−C4H9)4NI,(C2H5)4N−maleate,(C2H5)4N−benzoate,(C2H5)4N−phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiPF6又はLiBF4と、LiN(C2F5SO2)2のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より好ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、さらに好ましくは、0.8mol/l〜2.0mol/lである。
本発明に係る非水電解質電池に含まれる非水電解質は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記有機溶媒とリチウム塩以外の化合物を任意の量で含有させることができる。このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤等が挙げられる。
上記化合物は2種以上を併用して用いてもかまわない。負極被膜形成剤と正極保護剤との併用や、過充電防止剤と負極被膜形成剤と正極保護剤との併用が特に好ましい。
非水系電解質中におけるこれらのその他の化合物の含有割合は特に限定はないが、非水系電解質全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、安全性をより向上させたり、高温保存後の寿命性能を向上させたりすることができる。
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ニッケルメッキ鋼、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも特にアルミニウムが好ましい。
本発明の非水電解質電池に用いる負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、チタン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム遷移金属複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。
負極の集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、クロムメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
本発明に係る非水電解質電池における正極と負極との容量のバランスについては、負極の充電電気量が正極の充電電気量の1.05倍以上1.50倍未満となるように設計することが好ましい。充電時に正極から放出されるLi量を負極が受けきれずに負極上でLiが析出する危険性を回避するために、負極の充電電気量は正極の充電電気量の1.05倍以上が好ましい。負極の充電電気量が多すぎると、利用されない負極が増え、その結果、重量エネルギー密度・体積エネルギー密度が低下するため、負極の充電電気量は正極の充電電気量の1.50倍未満が好ましい。したがって、負極の充電電気量は正極の充電電気量の1.05倍〜1.50倍未満が好ましく、1.05〜1.30倍がより好ましく、1.10〜1.20倍がさらに好ましい。
セパレータとして、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
その他の電池の構成要素としては、正負極に用いられる導電剤及び/又は結着剤、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
本発明に係る非水電解質電池用正極を用いたプラグインハイブリッド自動車用非水電解質電池は、その走行に必要となる電気量を考慮して、単電池の容量が10Ah以上となるように設計することが好ましい。特にプラグインハイブリッド自動車用非水電解質電池は、その容量が10Ah以上20Ah以下であるものとすることが好ましい。
本発明に係る電池を搭載したプラグインハイブリット自動車は、直接コンセントから充電できるタイプのハイブリッド自動車である。即ち、プラグインハイブリット自動車は、家電製品と同様に、家庭用電源等からプラグを利用して直接電力を供給し充電し、そのエネルギーを使って電動走行するが、電池の容量不足時にはハイブリッド自動車と同様に、エンジンを用いて走行する。本発明に係る電池を搭載したプラグインハイブリッド自動車は、非水電解質電池が低いSOC状態となっていても、優れた出力特性が得られるため、エネルギー効率が高く、走行時のCO2(二酸化炭素)排出量を抑制することができる。特に本発明に係る電池を搭載したプラグインハイブリット自動車は、長期間の使用後も電池が一定の出力を維持するため、電池性能劣化後においてもエンジン走行のアシストが可能であり、従来の電池を搭載したプラグインハイブリッド自動車と比較して燃費を改善できる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、第一活物質は、反応晶析法によりNi、Mn及びCoを含有する水酸化物前駆体を作製した後、水酸化リチウムと混合して焼成する方法により合成した。また、第二活物質として、炭素被覆したLiFePO4を用いた。炭素被覆したLiFePO4粒子はつぎのように合成した。まず、LiOH・H2O及び(NH4)2HPO4を窒素バブリングしたイオン交換水中に溶解した。前記溶液に、アスコルビン酸及びFeSO4・7H2Oが溶解している水溶液を添加することによって、前駆体溶液を得た。前記前駆体溶液中は、Li:P:Feのモル比が2:1:1となるように調製した。なお、すべての作業は、Fe2+のFe3+への酸化を防ぐために、全て窒素雰囲気下で行った。次に、前記前駆体溶液を耐圧反応容器に投入し、窒素ガスを導入して密閉した後に、170℃、12hの水熱合成を行った。最後に、生成物を濾別し、充分に洗浄した後に、100℃、1hの減圧乾燥を行った。得られたLiFePO4粒子にポリビニルアルコールを混合し、700℃で1h、窒素雰囲気下で熱処理することによって、炭素被覆したLiFePO4粒子を得た。エックス線回折の測定結果から求めた結晶子径は0.0995μmであった。また、示差熱分析(TG)によって求めたカーボンコート量は、第二活物質全体の1.1質量%を占めていることがわかった。また、カーボンコートの厚みは7nmであった。
(実施例1)
(正極の作製)
第一活物質として、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を用いた。前記第一活物質と前記第二活物質とを質量比90:10で混合した。この混合物を実施例1における正極活物質とした。前記正極活物質と、導電剤であるアセチレンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、正極活物質:アセチレンブラック:PVdF=88:7:5の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする正極ペーストを調整した。該正極ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させてNMPを除去した。正極の塗布質量は13mg/cm2となるように調製した。該正極を120℃に加熱したローラープレス機により加圧成型して正極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このときの極板の空孔率は35%であった。このようにして作製した正極を正極aとする。
(負極の作製)
負極活物質であるグラファイトと、結着剤であるPVdFとを、グラファイト:PVdF=94:6の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする負極ペーストを調整した。該負極ペーストを、厚み10μmの銅箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させてNMPを除去した。負極の塗布質量は、6.8mg/cm2となるように調整した。該負極を120℃に加熱したローラープレス機により加圧成型して負極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このときの極板の空孔率は35%であった。このようにして作製した負極を負極aとする。
(非水電解質の作製)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1:1の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/lの濃度で溶解させ、非水電解質を作製した。該非水電解質中の水分量は50ppm未満とした。
(非水電解質電池の作製)
実施例に係る電池の模式図を図2に示す。セパレータはポリエチレン製微多孔膜を用い、前記セパレータ(13)が正極a(11)と負極a(12)との間に位置するようにして、上記正極、負極及びセパレータを扁平形状に巻回して発電要素(14)を作製した。ここで、正極及び負極は、巻回軸線に沿って互いに離れる方向にずらして巻回されている。即ち、発電要素(14)の軸線方向両端部のうちの一方はセパレータ(13)から正極を構成する金属箔がはみ出し、発電要素(14)の軸線方向両端部のうちの他方は負極を構成する金属箔がはみ出している。アルミニウム製の正極集電板を、正極を構成する金属箔の、セパレータからはみ出した部分に、発電要素に対して厚み方向にまたがるような位置(15)に配置した後、金属箔と溶接した。負極側も同様に、銅製の負極集電板を、負極を構成する金属箔の、セパレータからはみ出した部分に、発電要素に対して厚み方向にまたがるような位置(16)に配置した後、金属箔と溶接した。このとき、集電板から最も離れた活物質までの距離(17)は、発電要素の幅方向の長さとなり、この距離は10cm以内であった。このようにして作製した正極、負極、セパレータからなる発電要素(14)に正負極集電板を溶接したものをアルミニウム製の角型電槽缶に収納し、正負極端子を取り付けた。この容器内部に非水電解質を注入したのちに封口して、非水電解質電池を作製した。この電池を本発明電池Aとする。
(実施例2)
第一活物質としてLiNi1/4Mn1/4Co1/2O2を用い、前記第一活物質と前記第二活物質とを質量比90:10で混合した活物質混合物を正極活物質として用いたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Bを作製した。
(実施例3)
第一活物質としてLiNi1/4Mn1/4Co1/2O2を用い、前記第一活物質と前記第二活物質とを質量比92:8で混合した活物質混合物を正極活物質として用いたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Cを作製した。
(比較例1)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を単独で正極活物質として用いたこと、及び、正極活物質:アセチレンブラック:PVdF=90:5:5の質量比で含有する正極ペーストを調整したことを除いては実施例1と同様にして、比較電池Dを作製した。
(比較例2)
第一活物質と前記第二活物質とを質量比80:20で混合した活物質の混合物を正極活物質として用いたことを除いては実施例1と同様にして、比較電池Eを作製した。
<容量確認試験>
上記した全ての本発明電池及び比較電池について、容量確認試験を行った。即ち、充電電流1CA、充電電圧4.2V、総充電時間3時間の定電流定電圧充電、及び、放電電流1CA、終止電圧2.0Vの定電流放電からなる3サイクルの充放電を行った。一例として、実施例1の本発明電池Aの充放電カーブを図3に示す。
<出力試験>
前記容量確認試験に引き続き、全ての本発明電池及び比較電池について、SOC30%及びSOC50%における出力性能試験を実施した。なお、SOC30%及びSOC50%における電池電圧は、それぞれ、3.60V及び3.68Vである。
<保存試験>
前記出力試験に引き続き、全ての本発明電池及び比較電池について、SOC90%まで充電した後、25℃の恒温槽にて400日間静置した。400日経過後、再び、前記容量確認試験及び前記出力試験を行った。
なお、各SOCにおける出力性能試験は次の手順で行った。まず、供試電池を、充電電流1CA、充電電圧3.60V、総充電時間2時間の定電流定電圧充電により、SOC30%の充電状態とした。その後、放電電流1CAにて30秒間放電したのち、直前の放電電流と同じ電流値で30秒間充電した。次に、放電電流値を3CA、5CA及び10CAに変更したこと以外は同様にして、前記放電及び充電をおこなった。それぞれの放電電流における10秒後の電圧と、そのときの放電電流値とをプロットしてV−I特性を描画した。そのV−I特性において、最小二乗法で直線近似をおこなった後、放電終止電圧に対応する最大出力電流値を算出し、さらに、前記最大出力電流値と前記放電終止電圧とを乗算することによってSOC30%出力を求めた。なお、前記放電終止電圧は2.0Vとした。
充電電圧を3.68Vとし、SOC50%の充電状態としたことを除いては、前記出力試験と同様にしてSOC50%出力を求めた。
400日の保存試験後の各SOCでの出力を初期状態におけるそれぞれのSOCでの出力で除して100を乗ずることによって、出力維持率(%)を算出した。
以上の結果を表1に示す。
表1に示されるように、400日の保存試験後の容量は、全ての実施例及び比較例において、93%以上の高い値を示していることがわかる。
SOC50%での出力維持率に着目すると、比較電池D(比較例1)の電池の出力維持率は約70%であるのに対して、本発明電池A、B、C及び比較電池E(実施例1、2、3及び比較例2)の電池の出力維持率は約85%以上と高く、保存後の出力値も650W以上と高いことがわかる。
一方、SOC30%での出力維持率に着目すると、本発明電池A、B及びC(実施例1、2及び3)では、SOC50%での出力値における維持率と比較して大幅に高い値を示し、保存後の出力値も530W以上を維持している。これに対して、比較電池D(比較例1)では、出力維持率が低く、比較電池E(比較例2)では、保存後の出力値が450Wと低いだけでなく、初期の出力値も低い。
本発明電池A(実施例1)について、保存日数を種々変化させて同様の保存試験を行ったので、その結果を図4に示す。図4からわかるように、SOC50%における出力維持率は、250日付近まではほぼ直線的に低下しているが、その後は安定していることがわかる。さらに、このことを詳細に検討するために、種々のSOCにおいて同様の出力試験及び保存試験を行ったので、その結果を図5に示す。図5から、SOCが50%以下の比較的低い領域において、保存試験を行っても、初期の出力性能を維持していることがわかる。これは、本発明電池では、劣化が小さいことを特徴とするLiFePO4の挙動が現れたことによるものと考えられる。すなわち、図1に模式図を示すように、電池が新しいうちは、図中直線で示す第一の活物質の劣化挙動を反映して出力性能は直線的に低下するが、電池の劣化が進行した時点では、図中破線で示す第二の活物質劣化挙動にサポートされることから、電池の劣化が進行しても出力の低下は緩和され、初期の出力が維持されたものと推察される。また、比較例2については、LiFePO4を添加しているものの、その添加量が多いことによって、低SOCにおける初期および長期間使用後の十分な出力が確保できないという問題が生じた。
以上のことから、本発明によれば、長期間の使用においても優れた出力特性を維持する非水電解質電池を提供できることがわかった。