JP2017224410A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池の入出力性能に優れるとともに、電池膨れが抑制された非水電解液二次電池を提供する。【解決手段】正極、負極、及び非水電解液を備え、前記正極の正極活物質が、α−NaFeO2構造を有し、Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1より大きく、前記遷移金属(Me)が、少なくともMn及びNiを含み、Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記非水電解液が、フッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルを主溶媒として含み、前記フッ素化環状カーボネートの百分率が20体積%以下である非水電解液二次電池。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液二次電池に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器の電源として用いられてきたが、近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源としても用いられている。
非水電解液二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、非水溶媒及びリチウム塩を含有する非水電解液とを備えている。
前記正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、前記負極活物質としては黒鉛に代表される炭素材料が、前記非水電解液としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネートとジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主構成成分とする非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を溶解したものが広く知られている。
正極活物質として、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物であって、LiMeO(MeはNi,Co,Mn等の遷移金属)と表記される活物質が検討され、LiCoOを用いた非水電解液二次電池が広く実用化されてきた。しかし、LiCoOの放電容量は120〜130mAh/g程度である。前記Meとして、地球資源として豊富なMnを用いることが望まれている。しかし、MeとしてMnを含有させた活物質は、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5を超える場合には、充電をするとスピネル型へと構造変化が起こり、結晶構造が維持できないため、充放電サイクル性能が著しく劣るという問題があった。
そこで、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.5以下であり、充放電サイクル性能の点でも優れる活物質(以下「LiMeO型」活物質ともいう)が種々提案され、一部実用化されている。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物であるLiNi1/2Mn1/2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3を含有する正極活物質は150〜180mAh/gの放電容量を有する。
上記の「LiMeO型」活物質に対し、遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比Li/Meが1より大きい、いわゆる「リチウム過剰型」活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極が知られている。このような活物質は、Li1+αMe1−α(α>0)と表記することができる。ここで、遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比であるLi/Meは、(1+α)/(1−α)であるから、例えば、Li/Meが1.5のとき、α=0.2である。
また、種々の目的で、非水電解液にフッ素化カーボネートやフッ素化鎖状カルボン酸エステルを含有させた発明も知られている。
特許文献1には、「非水系溶媒に電解質のリチウム塩が含有され、上記の非水系溶媒に、下記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルと、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準として+1.0〜3.0Vの範囲で分解される被膜形成化合物とを含む二次電池用非水電解液。‥」(請求項1)について記載されている。
そして、「正極活物質として、コバルト酸リチウムLiCoO2にAlとMgとがそれぞれ1.0mol%固溶されると共にその固溶体の粒子表面にZrが0.05mol%付与されたもの」(段落[0031])を用い、非水電解液の非水系溶媒として、「被膜形成化合物の4−フルオロエチレンカーボネート(4−FEC)」と、「フッ素化鎖状カルボン酸エステルであるCF3CH2COOCH3」とが体積比で2:8、1:9、3:7の混合溶媒(段落[0035]、[0038]、[0041]、[0042]、表1の実施例1〜4)、4−FEC:CF3CH2COOCH3:DMCが2:4:4の混合溶媒(段落[0043]、同表の実施例5)、及び4−FEC:CF3CH2COOCH3:CH3CH2COOCH3が2:4:4の混合溶媒(段落[0044]、同表の実施例6)を用いた非水電解液二次電池が記載されており、この電池を4.2Vになるまで充電すること(段落[0052])が示されている。
特許文献2には、正極活物質として、空間群P63mcに属する結晶構造のリチウム含有遷移金属酸化物を用い(段落[0045]〜[0048]、[0052]〜[0054])、非水電解質として、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とが、体積比で25:75、10:90、50:50の割合の混合溶媒(段落[0050]、[0055]、[0056])、及びFEC:FMP:MECが体積比で25:65:10の割合の混合溶媒(段落[0057])を用いた非水電解質液二次電池について記載されている(表1 A1〜A5参照)。
特許文献3には、正極活物質として「LiNi0.33Co0.33Mn0.332」(段落[0036])を用いて正極を作製し、「4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、トランス−4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFBC)と、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)とを体積比で10:15:75となるように調整し、この溶媒にLiPFを1.0mol/lとなるように加えて非水電解質を作製した」(段落[0038])電解液を用いた非水電解質二次電池(実施例1;表1のA1)、「FEMCに代えて3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)を用いた以外は、実施例1と同様」(段落[0040])にして非水電解質を作製した非水電解質二次電池(実施例2;表1のA2)、及び「非水電解質溶媒として、表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様」(段落[0044])(FEC:FMP=25:75)にして作製した非水電解質二次電池(表1のX7)等が示されている。
特許文献4には、「Li1.2Mn0.54Ni0.13Co0.132(以下、「第1正極活物質」とする)と、LiNi0.5Co0.2Mn0.32(以下、「第2正極活物質」とする)を重量比で1:1となるように混合したもの」(段落[0048])を正極活物質に用い、「4−フルオロエチレンカーボネートと、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルとを体積比で1:3となるように調整し、この溶媒にLiPF6を1.0mol/lとなるように加え」た(段落[0050])非水電解質を用いて作製した非水電解質二次電池について記載されている。
また、「第2正極活物質は、少なくともNiを有し、Liを除く金属元素のモル総量に対するNiの割合が50モル%以上であり、層状構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物である。」(段落[0019])、「第1正極活物質と第2正極活物質とが共存する場合にのみ、特異的に金属溶出が抑制され、サイクル特性が改善される。」(段落[0022])と記載されている。
特開2009−289414号公報 特開2014−110122号公報 特開2015−111549号公報 特開2015−128044号公報
特許文献1〜3には、4−フルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」という。)及び3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(以下、「FMP」という。)を含む非水電解液を用いた非水電解液二次電池について記載されているが、いずれの特許文献にも、正極活物質として、「リチウム過剰型」活物質を用いることは具体的に示されていない。
特許文献4には、正極活物質として、「リチウム過剰型」である第1正極活物質と、第2正極活物質を含み、FECとEMPを含む非水電解液を用いた非水電解液二次電池について記載されており、第2正極活物質のNiの含有割合を50モル%以上と特定することによりサイクル特性を改善することが記載されている。
本発明は、入出力性能が優れ、電池膨れが抑制された非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
本発明の一側面に係る非水電解液二次電池は、正極、負極、及び非水電解液を備え、前記正極の正極活物質が、α−NaFeO型結晶構造を有し、Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1より大きく、前記遷移金属(Me)が、少なくともMn及びNiを含み、Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記非水電解液が、フッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルを主溶媒として含み、前記フッ素化環状カーボネートとフッ素化鎖状カルボン酸エステルの体積の和に対する前記フッ素化環状カーボネートの百分率が20体積%以下である。
本発明によれば、入出力性能が優れ、電池膨れが抑制された非水電解液二次電池を提供することができる。
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図 本発明の一態様に係る非水電解液二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
図1に、本発明の一態様に係る非水電解液二次電池である矩形状の非水電解液二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解液二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明においては、正極活物質と、非水電解液との組み合わせに特徴を有する。
<正極活物質>
(「リチウム過剰型」活物質)
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池を構成する正極に用いる正極活物質は、α−NaFeO構造を有し、モル比で、Li/Me>1、Mn/Me≧0.5(但し、Meは、少なくともMn及びNiを含む遷移金属)であるリチウム遷移金属複合酸化物を含む。上記リチウム遷移金属複合酸化物は、Li1+αMe1−α(α>0)で表される「リチウム過剰型」活物質であり、Meが、少なくともMn及びNiを含み、Coを任意に含む場合、一般式Li1+α(CoNiMn1−α、但し、(1+α)/(1−α)>1、a+b+c=1、a≧0、b>0、c≧0.5で表わされる。
「リチウム過剰型」活物質は、「LiMeO型」活物質に比べて高容量であり、例えば4.4V(vs.Li/Li)以上の比較的貴な正極電位で使用することができる。
「リチウム過剰型」活物質の(1+α)/(1−α)、すなわちモル比Li/Meは、α−NaFeO構造の安定性を保ち、高容量と高率放電性能を得るために1.1以上1.6以下であることが好ましく、1.15以上1.45以下であることがより好ましい。
また、遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.5以上とする。「LiMO型」活物質では、モル比Mn/Meを0.5以上にした場合、充電をするとスピネル型へと構造変化が起こり、α−NaFeO構造に帰属される構造を有さないものとなり、非水電解液二次電池用活物質として問題があったのに対し、「リチウム過剰型」活物質では、モル比Mn/Meを0.5以上にして充電をした場合でも、α−NaFeO構造を維持できるものであるから、モル比Mn/Meが0.5以上という構成は、「リチウム過剰型」活物質を特徴付けるものである。Mn/Meが0.60以上であると、放電容量を大きくできるため好ましく、0.72以下であると、放電容量が大きくできるとともに、初期効率が優れる。したがって、放電容量が大きく、初期効率が優れた非水電解質二次電池を得るために、Mn/Meは0.60以上0.72以下であることが好ましい。
前記遷移金属元素は、任意成分としてCoを含んでよい。Coは初期効率を向上させる効果がある。しかし、Coが多すぎると結晶子の成長が進み、比表面積が小さくなりすぎる傾向がある。また、希少資源であることからコスト高である。したがって、遷移金属中のCoのモル比Co/Meは、0.15以下であることが好ましい。
「リチウム過剰型」活物質としては、例えば、Li1.13Co0.11Ni0.17Mn0.59(Li/Me=1.3、Mn/Me=0.68)、Li1.11Co0.11Ni0.18Mn0.60(Li/Me=1.25、Mn/Me=0.67)、Li1.15Co0.11Ni0.17Mn0.57(Li/Me=1.35、Mn/Me=0.67)、Li1.17Co0.10Ni0.17Mn0.56(Li/Me=1.4、Mn/Me=0.67)、Li1.05Co0.12Ni0.19Mn0.64(Li/Me=1.1、Mn/Me=0.67)、Li1.07Co0.12Ni0.18Mn0.63(Li/Me=1.15、Mn/Me=0.68)、Li1.09Co0.11Ni0.18Mn0.62(Li/Me=1.2、Mn/Me=0.68)、Li1.09Ni0.41Mn0.50(Li/Me=1.2、Mn/Me=0.55)等のリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
本発明の一態様に係る正極活物質は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記リチウム遷移金属複合酸化物がNa等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe,Zn等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有してもよい。例えば、Naの含有により、放電容量を向上させることができる。
(正極活物質の製造方法)
本発明の一態様に係る正極活物質を製造する方法について説明する。
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池に用いる活物質は、活物質を構成する金属元素(Li、Mn、Ni等)を目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料又は前駆体を調製し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を製造するにあたり、Li,Mn,Ni,Coのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめMn,Ni,Coを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはNi,Coに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnなど)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。
共沈前駆体を作製するにあたって、Mn,Ni,CoのうちMnは酸化されやすく、Mn,Ni,Coが2価の状態で均一に分布した共沈前駆体を作製することが容易ではないため、Mn,Ni,Coの原子レベルでの均一な混合は不十分なものとなりやすい。特に本発明の組成範囲においては、Mn比率が高いので、水溶液中の溶存酸素を除去することが特に重要である。溶存酸素を除去する方法としては、酸素を含まないガスをバブリングする態様が含まれる。酸素を含まないガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素(CO)等を用いることができる。
溶液中で少なくともMn及びNiを含有する化合物を共沈させて前駆体を製造する工程におけるpHは、限定されない。タップ密度を大きくする態様のためには、前記共沈前駆体を共沈水酸化物前駆体として作製する場合、pHを10〜14に制御し、前記共沈前駆体を共沈炭酸塩前駆体として作製する場合、pHを7.5〜11に制御することが好ましい。
本発明の一態様に係る正極活物質は、前記共沈前駆体とLi化合物とを混合した後、焼成することにより作製される態様であることが好ましい。Li化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等を用いることで好適に製造することができる。Li化合物の量については、前述のとおり、焼成中にLi化合物の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向があり、可逆容量に影響を与える。また、活物質から酸素が放出される焼成温度に至らずとも、900℃を超えると1次粒子が大きく成長することによる結晶化現象が見られ、充放電反応中における活物質中のLi移動に不利な状態になりがちである。したがって、焼結温度は900℃以下であることが好ましい。一方、十分に結晶化させることにより、結晶粒界の抵抗を軽減し、円滑なリチウムイオン輸送を促すためには、焼成温度は少なくとも800℃以上とすることが好ましい。
したがって、本発明の一態様に係る正極活物質を作製する焼成温度は、800℃以上900℃以下であることが好ましい。
(その他の正極活物質)
本発明の一態様に係る正極は、本発明の効果を損なわない範囲で、正極活物質として、「リチウム過剰型」活物質以外のリチウム遷移金属化合物が混合されていてもよい。「リチウム過剰型」活物質以外のリチウム遷移金属化合物としては、限定されない。例えば、α−NaFeO構造を有し、LiMeO(Meは、遷移金属であり、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0以上0.5以下である)で表されるリチウム遷移金属酸化物(いわゆる「LiMeO」型活物質)、スピネル型結晶構造を有するLiMn,LiNiαMn(2−α)等、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO,LiMnPO,LiNiPO,LiCoPO,Li(PO,LiMnSiO,LiCoPOF等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。
上記「LiMeO」型活物質は、熱的安定性の観点から、Meに対するNiのモル比Ni/Meが0.5未満であるものが好ましい。例えば、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O等の「LiMeO」型活物質は、α−NaFeO構造を安定化し、高率放電性能に優れるとともに、例えば4.4V以上の比較的貴な正極電位で使用できるので、「リチウム過剰型」活物質と併用することが好ましい。
「LiMeO」型活物質は、公知の製法により製造することができる。「LiMeO」型活物質又はこれを製造するための前駆体は、「固相法」で作製してもよく、Mn含有量が多い場合は、前述と同様の「共沈法」を採用することが好ましい。
<非水電解液>
本発明の一態様に係る非水電解液は、非水溶媒と前記非水溶媒に溶解した電解質塩とを含むものであって、前記非水溶媒がフッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルを主溶媒として含む。
フッ素化環状カーボネートの例としては、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネート等を挙げることができる。中でも、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)を用いることが好ましい。
フッ素化鎖状カルボン酸エステルの例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル等の水素の少なくとも一部がフッ素で置換されたものを挙げることができる。中でも、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)を用いることが好ましい。
当該非水電解液は、特に、通常使用時の充電終止電圧における正極電位が比較的貴となる充電条件が採用される非水電解液二次電池や、比較的貴な電位となり得る正極活物質を含む正極を備えた非水電解液二次電池に適用した場合に、非水溶媒等の酸化分解の抑制能を効果的に発揮することができる。通常使用時の充電終止電圧における正極電位が比較的貴となる充電条件とは、例えば、通常使用時の充電終止電圧における正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる充電条件である。ここで、通常使用時とは、当該非水電解液二次電池について推奨され、又は指定される充電条件を採用して当該非水電解液二次電池を使用する場合であり、当該非水電解液二次電池のための充電器が用意されている場合は、その充電器を適用して当該非水電解液二次電池を使用する場合をいう。また、比較的貴な電位となり得る正極活物質とは、例えば、4.4V(vs.Li/Li)以上の特定の電位となり得る正極活物質であり、4.4V(vs.Li/Li)以上の特定の電位に至って可逆的なリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質である。「リチウム過剰型」活物質はそのような正極活物質の一種である。
非水溶媒に占めるフッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルの含有量の和は、特に、非水電解液二次電池の正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる貴な電圧で使用される態様において、充放電サイクル性能を優れたものとするためには、大きい方が好ましい。主溶媒であるフッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルの含有量の和は、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることがさらに好ましい。
また、非水溶媒中のフッ素化環状カーボネートは、負極についても、安定な被膜を形成することにより、充放電サイクル性能を向上させることができる。主溶媒に占めるフッ素化環状カーボネートの割合が5体積%以上であれば、被膜形成が可能である。しかし、主溶媒に占めるフッ素化環状カーボネートの割合が20体積%を超えると、ガス発生による電池厚み増加が著しくなるとともに、粘度が上昇する。ガス発生による電池厚み増加を抑制し、非水電解液の粘度を高めないため、主溶媒に占めるフッ素化環状カーボネートの割合を主溶媒の20質量%以下とする。主溶媒に占めるフッ素化環状カーボネートの割合は、主溶媒の15体積%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
フッ素化鎖状カルボン酸エステルは、耐酸化性が高く、比較的貴な電位においても分解し難いので、充放電サイクル性能を向上させる。フッ素化鎖状カルボン酸エステルの割合は、主溶媒の80体積%以上とする。85体積%以上とすることが好ましく、90体積%以上とすることがより好ましい。
本発明の一態様は、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステル以外の少量の非水溶媒を含有してもよい。他の非水溶媒としては、一般に非水電解液二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。主溶媒以外の非水溶媒は、20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることがさらに好ましい。
本発明の一態様に係る非水電解液は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に非水電解液二次電池に使用される添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等を単独で又は二種以上混合して非水電解質に加えることができる。
非水溶媒中のこれらの化合物の含有割合は特に限定はないが、非水溶媒全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、安全性をより向上させたり、高温保存後の容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。
本発明の一態様に係る非水電解液に含有される電解質塩としては、限定されるものではなく、一般に非水電解液二次電池に用いられる電解質塩を用いることができる。例えば、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
非水電解液における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電性能を有する非水電解液二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、1.0mol/l〜2.0mol/lがより好ましい。
<負極活物質>
本発明の一態様に係る負極に使用する負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであればよく、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上で使用可能な「リチウム過剰型」活物質を含む正極と組み合わせて、高電圧で使用できるものが好ましい。一般に非水電解液二次電池の負極活物質に使用される炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属及び当該金属の化合物等が使用できる。炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料が安全性の点から好ましく、黒鉛、又は黒鉛と難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)等の非晶質炭素とSi系物質(SiO等のSiを構成元素に含む物質)との混合物等が好ましい。
負極活物質に含まれるSi系物質は、初期充放電時において「リチウム過剰型」活物質に起因する不可逆容量に相当するリチウムを吸蔵させる効果があるので、負極の体積エネルギー密度を大きくできるとともに、非晶質炭素は、Si系物質の充放電に伴う体積変化を抑制し、負極の電位低下を抑制できるので、深充電時の負極へのリチウム電析を抑制することができる。従って、体積あたりのエネルギー密度が高く、充放電サイクル性能に優れた非水電解質二次電池を提供できる。
<正極、負極>
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池の正極及び負極は、上記の正極活物質及び正極活物質を主要構成成分とし、その他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有してもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVdF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料を用いることができる。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
本発明の一態様に係る正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極活物質)、及びその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
正極集電体及び負極集電体の材質としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも銅が加工し易さとコストの点から好ましい。
<セパレータ>
セパレータとしては、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。中でもポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
<非水電解液二次電池>
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池は、正極と負極の間にセパレータを介した電極群を電池ケースに収納し、電池ケース内に非水電解液を注入することにより組み立てられる。
その形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本発明の一態様は、上記の非水電解液二次電池を複数備える蓄電装置として実現してもよい。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解液二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
<初期AC抵抗の測定>
本願明細書において、初期AC抵抗の測定は次の条件で行う。測定は、注液、及び初期充放電を経た、工場出荷状態の非水電解液電池を対象とする。測定に先立ち、通常使用時の条件にて充電末状態とする。次に、0.1CmAの電流で端子間の閉回路電圧が通常使用時に到達することが予定されている電圧まで定電流放電を行った後、開回路とし、2h以上放置する。以上の操作によって、非水電解液電池を放電末状態とする。1kHzの交流(AC)を印加する方式のインピーダンスメータを用いて正負極端子間の抵抗値を測定し、これを「初期AC抵抗(Ω)」とする。過充電された非水電解液電池や過放電された非水電解液電池を測定対象としてはならない。
<電池厚みの測定>
本願明細書において、電池膨れの程度を評価するための、電池厚みの測定は次の条件で行う。測定は、注液、及び初期充放電を経た、工場出荷状態の非水電解液電池を対象とする。あらかじめ、以下の操作を行う前に、ノギスを用いて電池容器の厚みを測定しておく。次に、通常使用時の条件にて充電末状態とし、開回路状態とし、45℃の恒温槽中に150日間保存する。次に、25℃にて、1.0CmAの電流で端子間の閉回路電圧が通常使用時に到達することが予定されている電圧まで定電流放電を行った後、開回路とし、2h以上放置する。次に、通常使用時の条件にて充電末状態とし、2h以上放置する。次に、再度、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、再び、25℃にて、1.0CmAの電流で端子間の閉回路電圧が通常使用時に到達することが予定されている電圧まで定電流放電を行った後、開回路とする。ノギスを用いて電池容器の厚みを測定する。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<正極活物質>
α−NaFeO型結晶構造を有し、Li1.17Co0.10Ni0.17Mn0.56(Li/Me=1.4、Mn/Me=0.67)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(以下、「LR」ともいう。)を正極活物質として用いた。
<非水電解液>
FEC及びFMPをFEC:FMP=10:90の体積比で混合した非水溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2mol/Lの濃度で含有させ、実施例1に係る非水電解液を調製した。
<負極活物質>
黒鉛を負極活物質として用いた。
<正極、負極>
質量比で、正極活物質:ポリフッ化ビニリデン(PVdF):アセチレンブラック(AB)=94:1.5:4.5の割合(固形物換算)で含み、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極ペーストを作製し、該正極ペーストを厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔集電体の両面に塗布した。塗布量は、単位電極面積あたりの片面の正極活物質が17mg/cmとなるように調整した。これをローラープレス機により加圧して正極活物質層を成型した後、100℃で14時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去し、正極板を作製した。
質量比で、黒鉛:スチレン−ブタジエン・ゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=97:2:1の割合(固形分換算)で含み、水を溶剤とする負極ペーストを作製し、厚さ10μmの帯状の銅箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して負極活物質層を成型した後、100℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして負極板を作製した。
<非水電解液二次電池の組立>
ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して前記正極板と前記負極板を積層し、扁平形状に巻回して、図1に示すような電極群2を作製し、アルミニウム製の電池容器3に収納し、正負極端子4,5を取り付けた。厚み5.17mmの電池容器3内部に、前記非水電解液を注入したのちに封口した。このようにして実施例1に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例1−1)
α−NaFeO型結晶構造を有し、LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(以下、「NCM」ともいう。)を比較例1−1に係る正極活物質として用いた。
FEC及びEMCをFEC:EMC=10:90の体積比で混合した非水溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2mol/Lの濃度で含有させ、比較例1−1に係る非水電解液を調製した。
それ以外は実施例1と同様にして比較例1−1に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例1−2)
比較例1−1に係る非水電解液に代えて、実施例1に係る非水電解液を用いた以外は比較例1−1と同様にして、比較例1−2に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
(比較例1−3)
実施例1に係る非水電解液に代えて、比較例1−1に係る非水電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1−3に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
<初期充放電工程>
上記のようにして組み立てた非水電解液二次電池について、温度25℃にて、2サイクルの初期充放電工程に供した。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。ここで、負極に黒鉛を用いた場合、正極電位(vs.Li/Li)の値は端子間電圧の値に対して約0.05〜0.1V大きいものとなることがわかっている。
1サイクル目の充電は、電流0.2CmA、電圧4.35V、8時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流0.2CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。2サイクル目の充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。このようにして、非水電解液二次電池を作製した。
<初期AC抵抗の測定>
上記の手順に従って、初期AC抵抗を測定した。
電解液の非水溶媒がFEC:EMC=10:90の混合溶媒である比較例1−1、及び比較例1−3の場合の初期AC抵抗の値をそれぞれ100%とし、FEC:FMP=10:90の混合溶媒である比較例1−2、実施例1の場合の初期AC抵抗比をそれぞれ求めた。
<電池厚みの測定>
上記の手順に従って、電池膨れの程度を評価するための、電池厚みの測定を行った。但し、充電は、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電終止電圧は2.75Vとした。
結果を表1に示す。

比較例1−1と比較例1−2の電池を比較することにより、「LiMeO型」活物質であるNCMを正極活物質として用いた場合、非水電解液の溶媒をFEC:EMC=10:90の混合溶媒からFEC:FMP=10:90の混合溶媒に変更すると、初期AC抵抗が増加すること、すなわち、電池の入出力性能が低下することがわかる。
これに対して、比較例1−3と実施例1の電池を比較することにより、「リチウム過剰型」活物質であるLRを正極活物質として用いた場合、非水電解液の溶媒をFEC:EMC=10:90の混合溶媒からFEC:FMP=10:90の混合溶媒に変更すると、初期AC抵抗が低減し、入出力性能が向上することがわかる。
すなわち、FECとFMPを含む電解液は「リチウム過剰型」活物質と組み合わせる場合に、特異的に初期AC抵抗を低減し、入出力性能を向上するという効果を奏することがわかる。
次に、FECとFMPとの体積比について検討した。
(実施例2−1,2−2,比較例2−1,2−2)
FECとFMPの体積比を、それぞれ、5:95、20:80、25:75、30:70とした非水溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
FEC:EMC=10:90の溶媒を用いた場合(比較例1−3)の初期AC抵抗の値を100%とし、実施例2−1,2−2及び比較例2−1,2−2のそれぞれの初期AC抵抗比、及び電池の厚みを測定した結果を、実施例1、比較例1−3の結果と合わせて示す。
初期AC抵抗比に着目すると、FECの割合が高いほど初期AC抵抗が小さく、入出力性能が高くなる傾向があることがわかる。しかし、FECの割合が高いと充電保存時のガス発生を生じやすく、電池厚みが大きくなる。
したがって、入出力性能が高く、電池膨れが抑制された電池を得るために、フッ素化環状カーボネートとフッ素化鎖状カルボン酸エステルの体積の和に対するフッ素化環状カーボネートの百分率を20体積%以下とする。なお、非水電解液の溶媒がFEC:EMC=10:90である比較例1−3の電池では、電池膨れの程度は実施例1の電池と大差ないが、初期AC抵抗が大きく、入出力性能については、実施例1の電池に及ばない。
さらに、正極活物質が「リチウム過剰型」活物質と「LiMeO型」活物質とを含む場合について、検討した。
(実施例3,4、比較例3,4)
正極には、「リチウム過剰型」活物質である上記LRと、「LiMeO型」活物質である上記NCMとを60:40の質量比で混合したものを正極活物質として用いた。
負極には、黒鉛、非晶質炭素であるハードカーボン(クレハ製 カーボトロンP)、及び1粒子中にSiとSiOが分散し、表面にカーボンをコートしたSiO粉末(信越化学製)を89.1:9.9:1.0の質量比で混合したものを負極活物質として用いた。負極活物質中のSiの元素比率は、0.6である。
前記正極と負極を用い、FECとEMPを5:95の体積比で混合した非水溶媒、及びFECとEMCを5:95の体積比で混合した非水溶媒に、それぞれ、電解質塩としてLiPFを1.2mol/Lの濃度で含有させた非水電解液を用いて、実施例3、及び比較例3に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
また、前記の非水電解液に対して、さらに2質量%のプロペンスルトン(PRS)、及び1質量%のジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)を添加した非水電解液を用いた以外は実施例3、及び比較例3と同様にして、実施例4、及び比較例4に係る非水電解液二次電池を組み立てた。
表3に、実施例3,4の初期AC抵抗比について、それぞれ比較例3,4の初期AC抵抗値を100%として示す。なお、HCはハードカーボンを表す。

表3より、「リチウム過剰型」活物質以外のリチウム遷移金属複合酸化物が混合された正極活物質を用いた場合や、負極活物質の構成が異なる場合でも、フッ素化環状カーボネートとフッ素化鎖状カルボン酸エステルを主溶媒として含み、前記フッ素化環状カーボネートと前記フッ素化鎖状カルボン酸エステルの体積の和に対する前記フッ素化環状カーボネートの百分率が20体積%以下である非水電解液を用いることによって、入出力性能に優れるとともに、電池膨れが抑制された非水電解液二次電池が得られることがわかる。
本発明に係る非水電解液二次電池は、電池の入出力性能が優れているとともに、電池膨れが抑制されているので、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの自動車用電源として有用である。
1 非水電解液二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 正極、負極、及び非水電解液を備え、
    前記正極の正極活物質が、α−NaFeO型結晶構造を有し、Liと遷移金属(Me)のモル比(Li/Me)が1より大きく、前記遷移金属(Me)が、少なくともMn及びNiを含み、Mnと遷移金属(Me)のモル比(Mn/Me)が0.5以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記非水電解液が、フッ素化環状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルを主溶媒として含み、前記フッ素化環状カーボネートと前記フッ素化鎖状カルボン酸エステルの体積の和に対する前記フッ素化環状カーボネートの百分率が20体積%以下である、
    非水電解液二次電池。
  2. 前記フッ素化環状カーボネートと前記フッ素化鎖状カルボン酸エステルの体積の和に対する前記フッ素化環状カーボネートの百分率が5体積%以上である請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記正極活物質が、さらに、α−NaFeO構造を有し、LiMeO(Meは、遷移金属であり、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0以上0.5以下である)で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 通常使用時の充電終止電圧における正極電位が、4.4V(vs.Li/Li)以上となる請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
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