JP5853007B2 - 変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
シンクロ機構には、動力伝達ギヤのクラッチギヤ側にハブに隣接するように軸方向に突出形成された外向きのコーン面と、このコーン面の外周に当接される内向きのコーン面及びスリーブの内歯と噛み合い可能な外歯を有し、外向きのコーン面の外周に相対回転可能に配設されたシンクロリングとを有するものがある。
かかる電気自動車において、モータ効率を向上させるべく、電動モータに変速機を組み合わせた技術が提案されている。
しかしながら、車両の停止時には、シンクロリングへのスリーブによる押圧が解除されたにもかかわらず、シンクロリングのコーン面が動力伝達ギヤのコーン面に引きずられ或いは引っ掛かり、これらの係合が完全には解放されない場合がある。この場合、コーン面どうしの周方向一部が係合していれば、軸に対してシンクロリングが傾斜してしまう。つまり、変速機が中立状態であるときに、シンクロリングが正常な姿勢とならないおそれがある。
このため、発進時に、中立状態から動力伝達状態に移行する際、即ち、発進時の変速段を達成する際に、スリーブの内歯がシンクロリングの外歯に噛み合うことができず、変速段を達成することができなくなってしまうおそれがある。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
(3)前記制御手段は、前記正転制御を実施した後に、前記電動モータに前記第2所定トルクよりも低い第4所定トルクを指示する基準制御を実施し、前記基準制御の実施中に、前記噛み合い式クラッチ機構を駆動するアクチュエータの駆動力を低下させることが好ましい。
本発明の変速機の制御装置は、電気自動車に搭載された変速機を制御する。ここでいう電気自動車とは、走行駆動源として少なくとも電動モータを備えた車両を意味する。このため、電気自動車には、電動モータのみを走行駆動源として搭載した車両(EV)や電動モータ及びエンジンの双方を走行駆動源として搭載した車両(HEV)などが含まれる。なお、本実施形態では、電動モータのみを走行駆動源として搭載した車両を例に挙げて説明する。
〔1−1.駆動系ユニット〕
まず、車両の駆動系ユニットの構成を説明する。図1に示すように、この駆動系ユニットは、車両の走行駆動源である電動モータ1と、電動モータ1の出力軸と一体に連結された入力回転軸(以下、「入力軸」という)2Aからの入力を変速して出力回転軸(以下、「回転軸」という)42に出力する変速機2と、変速機2の回転軸42からの入力を所定の変速比で減速する減速機構6と、図示省略する駆動輪に減速機構6からの入力を出力する差動機構7と、を備えている。
以下、変速機2の各機構について、バリエータ3,副変速機4及び直結ギヤ機構20の順に各構成を説明する。
バリエータ3は、回転軸33を有する固定プーリ31と可動プーリ32とからなるプライマリプーリ30Pと、回転軸36を有する固定プーリ34と可動プーリ35とからなるセカンダリプーリ30Sと、プライマリプーリ30P及びセカンダリプーリ30Sのそれぞれに形成されたV溝に巻き掛けられたベルト37とを備えている。プライマリプーリ30Pの固定プーリ31の回転軸33は、入力軸2Aと相対回転可能に配置されている。
また、セカンダリプーリ30Sには推力発生機構9が付設されている。このセカンダリプーリ30Sは、推力発生機構9によりそのV溝の溝幅及び推力が調整される。
以下、機械式反力機構80B,電動アクチュエータ80A及び推力発生機構9の順に各構成の詳細を説明する。
次にセカンダリプーリ30Sに装備されている推力発生機構9を説明する。この推力発生機構9には、上記したようにトルクカム機構を採用している。
副変速機構4は、常時噛み合い型平行軸式歯車変速機構である。この副変速機構4は、複数の変速段(ここでは、ハイ,ローの2段)を有し、互いに平行に配置された回転軸41,42が設けられている。
一方の回転軸41は、セカンダリプーリ30Sの回転軸36と一体回転するとともに同軸に設けられている。この回転軸41には、これに対して相対回転可能な二つのギヤ43,44がそれぞれ設けられている。また、他方の回転軸42には、これに固設され一体回転する二つのギヤ45,46がそれぞれ設けられている。
副変速機4には、1速ギヤ段及び2速ギヤ段を選択的に切り替えるために3ポジション式の噛み合い式クラッチ機構5Bが装備されていている。
以下、噛み合い式クラッチ機構5Bの詳細な構成を説明する。なお、図2ではギヤ44の周辺構成を拡大して示している。
また、噛み合い式クラッチ機構5Bは、クラッチハブ55を基準にクラッチギヤ47側とクラッチギヤ48側との双方に、シンクロ機構10Bが設けられている。
クラッチギヤ47,48のクラッチハブ55側には、コーン面47b,48bが突設されている。これらのコーン面47b,48bはそれぞれ、回転軸41と同芯の円錐台における側面に沿った形状に設けられている。さらに、クラッチハブ55とクラッチギヤ47との間(軸方向中間位置)には、シンクロリング(シンクロ部材)13が設けられている。シンクロリング13は、スリーブ56の内歯56aと噛合しうる外歯13aが設けられるとともに、クラッチギヤ47のコーン面47bと係合しうるコーン面13bが設けられている。このコーン面13bは、クラッチギヤ47のコーン面47bに対応する形状にとなっている。また、シンクロリング13は、回転軸41の軸方向に対して直交する方向に沿って設けられている。
同様に、スリーブ56が2速ポジションにスライド駆動されれば、噛み合い式クラッチ機構5Bが係合され、ギヤ機構40Aを介した動力伝達状態が達成される。
一方、スリーブ56がニュートラルポジションに位置すれば、噛み合い式クラッチ機構5Bが解放され、回転軸41とギヤ機構40A,40Bとの動力伝達が遮断される中立状態が達成される。
直結ギヤ機構20は、入力軸2Aと相対回転可能に配置された入力ギヤ21を備え、この入力ギヤ21が副変速機構4の複数の変速歯車の1つ(ここでは、1速ギヤ段の出力側歯車であるギヤ45)と噛合して駆動連結されている。なお、入力軸2Aとギヤ45が設けられた回転軸42とは互いに平行に設けられており、また、入力ギヤとギヤ45とは、その歯数がほぼ同一となるように設定されており、変速比が1.0又は略1.0となるように設定されている。
スリーブ52は、ニュートラルポジション(N)と、バリエータ3を経由する動力伝達経路を設定するCVTポジション(C)と、直結ギヤ機構20を経由する動力伝達経路を設定する直結ポジション(D)との各ポジションを有し、各ポジション間を、シフトフォーク53によってスライド駆動される。
なお、スリーブ52がニュートラルポジション(N)に位置すれば、噛み合い式クラッチ機構5Aが解放され、中立状態が達成される。
減速機構6は、副変速機構4の回転軸42に一体回転するように固設されたギヤ61と、回転軸42と平行な回転軸65に一体回転するように固設されるとともにギヤ61と噛合するギヤ62と、回転軸65に一体回転するように固設されたギヤ63と、差動機構7の入力ギヤであるギヤ63と噛合するギヤ64とから構成される。ギヤ61とギヤ62との間でそのギヤ比に応じて減速され、さらに、ギヤ63とギヤ64との間でそのギヤ比に応じて減速される。
差動機構7は、図示省略する駆動輪の差動を許容しながら減速機構6のギヤ64からの入力を各駆動輪(図示略)に出力するものである。この差動機構7では、左右のサイドギヤに接続された車軸7L,7Rに図示しない駆動輪がそれぞれ結合されている。
この車両には、電気自動車にかかる広汎なシステムをEVECU110及び変速機(副変速機構付きCVT)2の要部を制御するCVTECU(制御手段)100を備えている。各ECUは、それぞれメモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。CVTECU100は、電動モータ1、変速機構8の電動アクチュエータ80Aを構成する変速用モータ81及び電動アクチュエータ50A,50Bの作動等をEVECU110からの指令又は情報や他のセンサ類からの情報に基づいて制御する。
CVTECU100は、変速機2を中立状態から動力伝達状態に移行させる際に、電動モータ1に指示するトルク(以下、「指示トルク」という)Tを制御するモータトルク制御を実施する。以下、モータトルク制御について詳細に説明する。
モータトルク制御の開始条件は、変速機2を中立状態から動力伝達状態へ移行するときに成立する。
変速機2が中立状態であるのは、下記の(A1)及び(A2)の少なくとも何れかが満たされたときである。
(A1)噛み合い式クラッチ機構5Bが解放されていること。
(A2)噛み合い式クラッチ機構5Aが解放されていること。
上記(A2)は、噛み合い式クラッチ機構5Aのスリーブ52がニュートラルポジションに位置することと同義である。
(B1)噛み合い式クラッチ機構5Bが係合していること。
(B2)噛み合い式クラッチ機構5Aが係合していること。
上記(B2)は、噛み合い式クラッチ機構5Aのスリーブ52がCVTポジション又は直結ポジションに位置することと同義である。
なお、スリーブ52,56が何れのポジションに位置しているかは、例えばスリーブ52,56を移動させるシフトフォーク53,58の移動量を検出するセンサの検出情報に基づいて判定することができる。
モータトルク制御は、図3に示すように、電動モータ1への指示トルクTを変化させるものである。ここでは、制御開始からの経過時間によって、大きさ(高さ)の異なる4つの所定トルクTP1,TP2,TP3,TP4を指示トルクTに設定するものを説明する。
つまり、モータトルク制御は、モータトルク制御の開始条件が成立した際に、はじめの所定期間において高い指示トルクTを電動モータ1に設定するものである。
第1フェーズでは、モータトルク制御の開始条件が成立した時点(t=0)から第1所定時間tP1が経過するまでの期間にわたって、指示トルクTが第1所定トルクTP1に設定される。
第1所定トルクTP1は、上記のように第2所定トルクTP2よりも高く設定されており、軸2A,41に対して傾斜することで噛み合い式クラッチ機構5A,5Bにおける電動モータ1側の部材に接触するシンクロリング11,12,13,14を弾き飛ばすことができるような大きさのトルクとして予め実験的又は経験的に設定されている。第1所定トルクTP1が指示トルクTに設定されると、電動モータ1は正転方向のトルクを作用させる。
なお、CVTECU100は、第1フェーズにおいて、電動アクチュエータ50A,50Bの作動を制御しない。言い換えれば、第1フェーズにおいて、電動アクチュエータ50A,50Bは作動されず、噛み合い式クラッチ機構5A,5Bは解放されている。
第2フェーズでは、第1所定時間tP1の経過してから第2所定時間tP2が経過するまでの期間にわたって、指示トルクTが第2所定トルクTP2に設定される。
第2所定トルクTP2は、上記のように第1所定トルクTP2よりも低く設定されており、噛み合い式クラッチ機構5A,5Bにおけるシンクロリング11,12,13,14とスリーブ52,56の内歯52a,56a及びクラッチギヤ22,38,47,48の位相のずれを調整するため、予め実験的又は経験的に設定されたトルクである。第2所定トルクTP2が指示トルクTに設定されると、電動モータ1は正転方向のトルクを作用させる。
第3フェーズでは、第2所定時間tP2の経過してから第3所定時間tP3が経過するまでの期間にわたって、指示トルクTが第3所定トルクTP3に設定される。
第3所定トルクTP3は、上記のように第2所定トルクTP2及び第4所定トルクTP4よりも低く設定される。この第3所定トルクTP3は、指示トルクTに設定されると電動モータ1が逆転方向のトルクを作用させるような大きさに予め実験的又は経験的に設定されている。
第4フェーズでは、第3所定時間tP3の経過後に第4所定時間tP4が経過するまでの期間にわたって、指示トルクTが第4所定トルクTP4に設定される。
第4所定トルクTP4は、上記のように第2所定トルクTP2よりも低く且つ第3所定トルクTP3よりも高く設定される。この第4所定トルクTP4は、指示トルクTに設定されると電動モータ1が正転方向及び逆転方向の何れのトルクも作用させない又は略作用させないような大きさに予め実験的又は経験的に設定されている。
このように、CVTECU100は、正転制御及び逆転制御を実施した後に、電動モータ1に第2所定トルクTP2よりも低い第4所定トルクTP4を指示する制御(以下、「基準制御」という)を実施する。
次に、図4のフローチャートを用いて、CVTECU100により実施される制御手順について説明する。このフローチャートは、モータトルク制御の開始条件が成立すると開始(スタート)する。また、フローチャート中の各ステップは、CVTECU100のハードウェアに割り当てられた各機能がソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することで実施される。
ステップS10では、電動モータ1への指示トルクTを第1所定トルクTP1に設定する。そしてステップS15へ移行する。このステップS15では、第1所定時間tP1が経過したか否かを判定する。第1所定時間tP1が経過していればステップS20へ移行し、そうでなければステップS10へ再び移行する。これらのステップS10及びS15は、モータトルク制御の第1フェーズに対応している。
ステップS22では、電動モータ1への指示トルクTを第2所定トルクTP2に設定する。そして、ステップS22へ移行する。
ステップS26では、電動アクチュエータ50A,50Bの作動を開始させる。つまり、ステップS26では、噛み合い式クラッチ機構5A,5Bの解放から係合への移行が開始される。そして、ステップS28へ移行する
これらのステップS20,S22,S24,S26及びS28は、モータトルク制御の第2フェーズに対応している。
本実施形態の変速機の制御装置は、上述のように構成されるので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
噛み合い式クラッチ機構5A,5Bを係合から解放へと移行させる際には、シンクロリング11,12,13,14への押圧が解除されたにもかかわらず、図2に二点鎖線で示すように、シンクロリング11,12,13,14がクラッチギヤ22,47,48又は外歯38に引きずられ或いは引っ掛かり、軸2A,41に対してシンクロリング11,12,13,14が傾斜してしまう場合がある。
また、CVTECU100は、正転制御を実施した後に、電動モータ1に第2所定トルクTP2よりも低い第3所定トルクTP3を指示して逆転方向のトルクを作用させる逆転制御を実施するため、スリーブ52,56とシンクロリング11,12,13,14との間にバックラッシュが形成され、スリーブ52,56とシンクロリング11,12,13,14とを円滑に噛合させることができる。延いては、変速性能の向上に寄与する。
第1所定時間tP1が短時間に設定されれば、変速動作の開始時間の遅れを抑制することができ、ドライバビリティを確保することができる。また、電力消費量の上昇を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、上述した一実施形態及び変形例の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、モータトルク制御において逆転制御が実施されるものを示したが、この逆転制御は省いてもよい。つまり、第3フェーズを省略してモータトルク制御を実施してもよい。
例えば、上記の実施形態では、噛み合い式クラッチ機構5A,5Bに、3ポジション式のものが採用されており装置構成を簡素化しているが、これらの何れかまたは両方に、2ポジション式の噛み合い式クラッチ機構を2つ組み合わせて使用することもできる。
また、機械式反力機構としては、実施形態に示した端面カム機構に限定されないが、端面カム機構の場合、トルク容量の大きい機構をコンパクトに構成することができる。
2 変速機
2A 変速機入力軸
3 ベルト式無段変速機構(バリエータ)
4 副変速機構(変速機構)
5A,5B 噛み合い式クラッチ機構
6 減速機構
7 差動装置
8 変速機構
9 推力発生機構(機械式反力機構)
10A,10B シンクロ機構
11,12,13,14 シンクロリング(シンクロ部材)
20 直結ギヤ機構
21 入力ギヤ
22 クラッチギヤ(クラッチ用ギヤ部)
30P プライマリプーリ
30S セカンダリプーリ
31,34 固定プーリ
32,35 可動プーリ
36 回転軸
37 ベルト
38 外歯
40A,40B ギヤ機構
41,42 回転軸
43,44,45,46 ギヤ
47,48 クラッチギヤ(クラッチ用ギヤ部)
50A,50B 切替用電動アクチュエータ
51,55 クラッチハブ
52,56 クラッチスリーブ
57 キー部材
57a スプリング
58 シフトフォーク
80A 電動アクチュエータ
80B 機械式反力機構
81 変速用モータ
82 ウォームギヤ機構
83 可動カム部材
84 固定カム部材
100 CVTECU(制御手段)
110 EVECU
Claims (3)
- 車両に装備され、常時噛み合い型のギヤ機構とシンクロ部材付きのシンクロ機構を備えた噛み合い式クラッチ機構とを有し、前記噛み合い式クラッチ機構の解放による前記ギヤ機構の中立状態と前記噛み合い式クラッチ機構の係合による前記ギヤ機構による動力伝達状態とが選択的に達成される変速機構と、
前記変速機構に伝達される動力を出力する電動モータと、
前記車両の停止状態で前記噛み合い式クラッチ機構を解放から係合へと移行させる際に、はじめの所定期間には前記電動モータに第1所定トルクを指示して正転方向のトルクを作用させ、前記所定期間の経過後には前記電動モータに前記第1所定トルクよりも低い第2所定トルクを指示して正転方向のトルクを作用させる正転制御を実施する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記所定期間の経過後に前記噛み合い式クラッチ機構の解放から係合への移行を開始する
ことを特徴とする、変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記正転制御を実施した後に、前記電動モータに前記第2所定トルクよりも低い第3所定トルクを指示して逆転方向のトルクを作用させる逆転制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1記載の変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記正転制御を実施した後に、前記電動モータに前記第2所定トルクよりも低い第4所定トルクを指示する基準制御を実施し、前記基準制御の実施中に、前記噛み合い式クラッチ機構を駆動するアクチュエータの駆動力を低下させる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の変速機の制御装置。
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