以下に本発明の実施形態に係る印刷装置について説明する。
本実施形態にて説明する印刷装置は、高品位の写真印刷に用いられるフルカラーの昇華型フォトプリンタであるが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、リボンカセットを使用する昇華型または溶融転写型の種々の印刷装置に適用可能である。
はじめに、図1を参照して、本実施例に係るプリンタの構造を説明する。図1は本実施例に係るプリンタの構造を説明する要部断面図である。
本実施例に係るプリンタは、インクリボン11を収容するリボンカセット21、インクリボン11及び記録用紙12を搬送する搬送手段、及び、印刷手段などから構成され、記録用紙12の記録面12aに画像等を印刷する。
リボンカセット21には、インクリボン11が供給リール21aにロール状に巻かれて収容されており、インクリボン11の先頭端は巻き取りリール21bに巻き付けられている。インクリボン11は供給リール21a側から供給され、印刷に使用されたインクリボン11は順次巻き取りリール21bに巻き取られる。
インクリボン11は一方の面がインク面11aとなっており、インク面11aには印刷に使用されるインクとインクの位置を示すマーカが塗布印刷されている。
印刷手段は、サーマルヘッド1、ヘッドホルダ6、プラテンローラ2及びリボンガイド3などで構成される。
サーマルヘッド1には多数の発熱素子が直線状に配列されており、多数の発熱素子を選択的に発熱させ、インクリボン11のインクを昇華させ記録用紙12に転写させる事により印刷を行う。
ヘッドホルダ6の一方側にはサーマルヘッド1が固設され、他方側には回動中心を有している。ヘッドホルダ6が回動中心を中心に回動される事により、サーマルヘッド1はプラテンローラ2に押圧またはプラテンローラ2から離間可能となる。サーマルヘッド1がプラテンローラ2に押圧されている状態をヘッドダウン、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から離間されている状態をヘッドアップと記載する。
プラテンローラ2はサーマルヘッド1の下面側に回動自在に保持されている。サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間に、記録用紙12及びインクリボン11が通挿され、サーマルヘッド1がヘッドダウンされる事により、記録用紙12及びインクリボン11がプラテンローラ2に圧接される。
リボンガイド3は、巻き取りリール21bに近い側のサーマルヘッド1の側面に隣接して設けられ、インクリボン11が巻き取りリール21bに巻き取られる際に、記録用紙から引き離されたインクリボン11を巻き取りリール21b側に案内する。
搬送手段には、記録用紙12を搬送する記録用紙搬送手段と、インクリボン11を搬送するインクリボン搬送手段がある。
インクリボン搬送手段は、供給リール21aに巻かれているインクリボン11をサーマルヘッド1とプラテンローラ2の間を通過させ、のち、インクリボン11をリボンガイド3に案内させ、スリップ機構7を介して第2ステッピングモータM2で駆動された巻き取りリール21bに巻き取らせる。
インクリボン搬送経路のリボンガイド3とガイドローラ21cの中間位置には光学式の検出手段13が設けられており、インクリボン11のインク面11aに塗布印刷されたマーカMKを検出する。
記録用紙搬送手段は、記録用紙12をサーマルヘッド1とプラテンローラ2の間を通過させ、のち、記録用紙12を第1ステッピングモータM1で駆動された紙送りローラ4と圧接ローラ5の中間を通過させ、紙送りローラ4に圧接ローラ5を圧接させる事により、記録用紙12を搬送移動させる。
サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間ではインクリボン11と記録用紙12は重なった状態にあり、プラテンローラ2の上方に記録用紙12が挿通され、記録用紙12の上方にインクリボン11が挿通され、インクリボン11の上方にサーマルヘッド1が位置する。また、記録用紙12とインクリボン11は、記録用紙12の記録面12aとインクリボン11のインク面11aが対向する様に重ね合わせられる。
サーマルヘッド1がヘッドダウンされ、記録用紙12とインクリボン11がプラテンローラ2に圧接されているときは、インクリボン11は記録用紙12と共にサーマルヘッド1の下方を搬送される。
この時、インクリボン11のたるみ防止のために、第2ステッピングモータM2は、巻き取りリール21bがインクリボン11を巻き取る速度は、記録用紙12の送り速度より速くなる様な回転速度で巻き取りリール21bが回転する様に、巻き取りリール21bを回転駆動するが、第2ステッピングモータM2と巻き取りリール21bの間に設けられたスリップ機構7により、インクリボン11の巻き取り速度は規制され、インクリボン11の巻き取り速度と記録用紙12の送り速度は同一となる。
この、インクリボン11が記録用紙12と共に搬送され、インクリボン11の巻き取り速度と記録用紙12の送り速度は同一となる状態を、以降、「用紙送りモードFp」と記載する。
また、サーマルヘッド1がヘッドアップされている時は、インクリボン11は巻き取りリール21bの回転により搬送される。このサーマルヘッド1がヘッドアップされている状態では、スリップ機構7は、インクリボン11の巻き取りの負荷程度ではスリップしない様に設定されているので、第2ステッピングモータM2は所定の減速比で巻き取りリール21bを回転駆動する。
この、第2ステッピングモータM2が所定の減速比で巻き取りリール21bを回転駆動し、インクリボン11が巻き取りリール21bに巻き取られる事によりインクリボン11が搬送される状態を、以降、「リール送りモードFr」と記載する。
次に、図2を参照して、本実施例に係るプリンタのマーカ検出動作を説明する。図2は本実施形態のプリンタのインクリボン搬送経路を示す要部の斜視図である。
インクリボン搬送経路を搬送されるインクリボン11は、インク面11aとは反対側の面がサーマルヘッド1に近接する様に搬送され、リボンガイド3とガイドローラ21cで案内されながら巻き取りリール21bに巻き取られる。
リボンガイド3とガイドローラ21cの中間位置に、インクリボン11のインク面11aと対向する様に検出手段13が配置されており、リボンカセット21には、検出手段13と対向する位置に、反射板14が設けられている。
検出手段13は反射式の光学センサで、検出手段13から出射された検出光がリボンカセット21に設けられた反射板14で反射され、反射板14からの反射光が検出手段13で検出される。
マーカMKが検出手段13と反射板14の間を通過すると、検出手段13から出射された検出光、及び、反射板14で反射された反射光がマーカMKで遮断されるので、検出手段13には反射光が入光せず、これにより、検出手段13はマーカMKが通過している事を検出し、マーカMKが通過している間は検出信号が変化している。
次に、インクリボン11のインク及びマーカの構成と、インクリボン11が搬送された時の検出手段13の検出信号の変化を、図3を参照して説明する。図3はインクリボン11を説明する図で、(a)はインクリボン11の構成を示すマーカ及びインクの配置を示す図で、(b)はインクリボン11が搬送された時の検出手段13の検出信号の時間変化を示す図である。
本実施形態の昇華型フルカラープリンタのインクリボン11には各々、記録用紙12の略1枚分の大きさのイエローYP、マゼンタMP、シアンCPの3原色のインクと、オーバーコートOP等のオプションインクが、順次塗布されている。以降、この記録用紙12略1枚分の大きさに塗布されたそれぞれのインク等を「プレーン」と記載する。
図3(a)に示す様に、イエローYP、マゼンタMP、シアンCP及びオーバーコートOPの各プレーンの前には、各プレーンの位置を示すプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeがそれぞれ配置されており、先頭のプレーンのプレーンマーカMKbの前には、1枚の記録紙の印刷に使われるインク類全体の頭出し用のセットマーカMKaが配置されている。なお、1枚の記録紙の印刷に使われるイエローYP、マゼンタMP、シアンCPの3原色のインクと、オーバーコートOPの計4つのプレーンと、セットマーカMKa及び4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの一式を、以降、「インクセット」と記載する。
セットマーカMKa及び4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの各マーカは黒色等の濃色のインクで塗布印刷されている。また、各マーカの位置と幅は規定されており、プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeが検出手段13に検出されると、イエローYP、マゼンタMP、シアンCPの3原色のインクと、オーバーコートOPの各プレーンの位置が記録用紙12の印刷領域と一致する様に設定されている。
インクリボン11が、リボン搬送方向D1に搬送され、各マーカが検出手段13を通過すると、図3(b)に示す様に、各マーカが通過する毎に、検出手段13の検出信号は変化する。
<残量検出方法>
リボンカセット21を使用するプリンタでは、印刷に使用されたインクリボン11は巻き取りリール21bに巻き取られるため、巻き取りリールの外径(以降、「リボン巻き取り外径Dw」と記載する)は増加する(図1参照)。リボン巻き取り外径Dwを算出することで、印刷に使用されたインクリボン11の使用量から算出でき、これにより、インクリボン11の残量検出が可能となる。
ところで、インクリボン11が巻き取りリール21bに巻き取られる際の「インクリボン巻き取り速度」は、「リボン巻き取り外径Dw」と「巻き取りリール回転速度」により決定される。従って、「インクリボン巻き取り速度」と「巻き取りリール回転速度」を検出する事により、「リボン巻き取り外径Dw」を検出する事ができ、検出されたリボン巻き取り外径Dwからインクリボン11の残量が検出できる。
上記のうち、インクリボン巻き取り速度は、インクリボン11の各マーカMKが検出手段13を通過する時の、各マーカMKの通過速度を計測する事により検出できる。
インクリボン11に塗布印刷された各マーカMKは、その各々の幅が規定されているので、マーカMKが検出手段13を通過するのに要した時間を計測すると、インクリボン巻き取り速度と同一であるマーカ通過速度が検出できる。
また、巻き取りリール回転速度は、巻き取りリール21bを駆動する第2ステッピングモータM2の回転速度から検出できる。
以上の様に、インクリボン巻き取り速度と巻き取りリール回転速度が検出できるので、リボン巻き取り外径Dwを検出する事ができ、検出されたリボン巻き取り外径Dwからインクリボン11の残量検出が可能となる。
以上の様に、本実施例に係るプリンタでは、所定の間隔で複数のマーカMKが付されたインクリボン11を収容し、使用されたインクリボン11を巻き取る巻き取りリール21bを備えたリボンカセット21と、インクリボン11を搬送するサーマルヘッド1、プラテンローラ2、リボンガイド3などよりなるインクリボン搬送手段と、インクリボン11の搬送経路上に配備されて、マーカMKの通過を検出する検出手段13と、を有しており、マーカMKが検出手段13を通過するのに要した時間から、インクリボン11が巻き取られるリボン巻き取り外径Dwを算出し、未使用のインクリボン11の量を算出するインクリボン11残量検出手段と、を備えている。
ところで、巻き取りリール21bは第2ステッピングモータM2により駆動されており、第2ステッピングモータM2の回転速度はモータ制御回路により制御されている。従って、第2ステッピングモータM2の回転速度はモータ制御回路の制御信号から精度良く検出する事ができ、これにより、巻き取りリール21bの回転速度も精度良く検出する事ができる。
これに対し、インクリボン巻き取り速度と同一であるマーカ通過速度の検出は、検出対象であるマーカMKの塗布印刷濃度のばらつきや検出手段13の検出感度のばらつきにより、精度の良い検出が出来ない虞がある。
<マーカ検出誤差補正原理>
上記のマーカ通過速度の検出精度を低下させるばらつきのうち、検出手段13の感度ばらつきは、個々のプリンタに組み込まれた検出手段13個体の感度特性であるため、同一のプリンタでは一定値となる。従って、同じプリンタで同じ幅のマーカMKを繰り返し検出しても、検出幅は同一となり、幅検出誤差は一定となる。
また、各マーカMKのインク濃度のばらつきは、単一のリボンカセット21に収容されているインクリボン11の長さの範囲でのばらつきは比較的小さい。特に、同時に塗料が塗布される1インクセット分の1つのセットマーカMKaと4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeのインク濃度は同一と見なせるので、インク濃度のばらつきによる1インクセット分のセットマーカMKaと4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeのそれぞれの幅検出誤差は同等となる。
以上より、マーカMKの塗布印刷濃度のばらつきや検出手段13の検出感度のばらつきがあっても、個々のプリンタにて1枚の記録用紙に印刷する場合、使用する1インクセットに設けられた1つのセットマーカMKaと4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの幅を検出した時の各マーカMKの幅検出誤差は同等となる。
それゆえ、各マーカMKのうちの1つのマーカMKの幅検出誤差が検出できれば、他の4つのプレーンマーカMKの幅検出結果を補正する事が可能となる。
<マーカ検出の誤差発生理由>
つぎに、図4を参照して、マーカMKの塗布印刷濃度のばらつきや検出手段13の検出感度のばらつきにより、マーカMKの通過速度の検出精度が低下する理由を説明する。図4はインクリボン11のマーカMKが検出手段13を通過した時の、検出手段13の検出信号の時間変化を示す図で、(a)はマーカMKの印刷濃度が薄い場合、(b)はマーカMKの印刷濃度が適切である場合、(c)はマーカMKの印刷濃度が濃い場合である。なお、図4の(a)、(b)、(c)の各図において、上段はマーカMKの印刷状態を表す模式図で、下段はマーカMKが通過した時の検出信号の時間的変化の状況を強調した模式図である。
インクリボン11がインクリボン搬送手段により搬送され、セットマーカMKa及び4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの各マーカが検出手段13の前を通過すると、検出手段13は各マーカMKの通過に対応して時間的に変化する検出信号を出力する(図3(b)参照)。
検出手段13は反射式の光学式のセンサで、各マーカMKにより検出光が遮蔽されると検出信号が変化する。各マーカMKの幅は規定されているので、検出信号が変化している時間を計測すれば、各マーカMKが検出手段13を通過する速度が検出できる。
しかし、例えばインクの濃度が薄いマーカMKが検出手段13を通過した場合、図4(a)に示す様に、マーカMKの先頭端が検出手段13に到達すると、マーカMKにより遮蔽される光の量が少ないため、検出手段13の検出信号の変化は緩やかになり、検出信号が所定の閾値よりも大きくなるまでの時間が長くなる。
また、インクの濃度が薄いマーカMKの場合は、マーカMKの後方端付近が検出手段13に到達すると、マーカMKにより遮蔽される光の量が少ないため、検出手段13の検出信号の変化は緩やかになり、検出信号が所定の閾値よりも小さくなるまでの時間が長くなる。
以上より、インクの濃度が薄いマーカMKでは、検出手段13の検出信号の立ち上がり及び立ち下がりは、いずれも緩慢となる。
検出信号が所定の閾値(図4では信号変化の50%)以上である範囲をマーカMKの通過時間として検出すると、マーカMKのインクの濃度が薄い場合には、検出信号の立ち上がり、立ち下がりとも緩慢であるため、検出されたマーカMKの通過時間は、規定されたマーカMKの規定時間Twsより短い時間範囲が検出される。この、検出されたマーカMKの通過時間を、以降、「検出時間Twa」と記載する。
反対に、インクの濃度が濃いマーカMKが検出手段13を通過した場合、図4(c)に示す様に、マーカMKの先頭端が検出手段13に到達すると、マーカMKにより遮蔽される光の量が大きいため、検出手段13の検出信号は急峻に変化し、検出信号が所定の閾値よりも大きくなるまでの時間が短くなる。
また、インクの濃度が濃いマーカMKの場合は、マーカMKの後方端が検出手段13に到達すると、マーカMKにより遮蔽される光の量が多いため、検出手段13の検出信号の変化は急峻になり、検出信号が所定の閾値よりも小さくなるまでの時間が短くなる。
以上より、マーカMKのインクの濃度が濃い場合には、検出信号の立ち上がり及び立ち下がりは、いずれも急峻となるため、検出されるマーカの検出時間Twaは規定時間Twsより広く検出される。
このように、セットマーカMKa及び4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの各マーカに塗布されるインクの濃度が変化すると、検出されるマーカの検出時間Twaは変化する。
また、検出手段13の感度にばらつきがある場合も、同様にして、検出されるマーカの検出時間Twaが変化する。
例えば、検出手段13の感度が低い場合は、インクの濃度が薄いマーカMKの場合と同様に、検出手段13の検出信号の立ち上がり及び立ち下がりは緩慢となり、マーカの検出時間Twaは各マーカの規定時間Twsより狭くなる。また、検出手段13の感度が高い場合は、インクの濃度が濃いマーカMKの場合と同様に、検出手段13の検出信号の立ち上がり及び立ち下がりは急峻となり、マーカの検出時間Twaは各マーカの規定時間Twsより広くなる。
この、マーカMKの規定時間Twsとインクリボン11の送り速度から算出したマーカMKの規定幅と、マーカMKの検出時間Twaとインクリボン11の送り速度から算出したマーカの検出幅との差を、以降、「幅検出誤差」と記載する。
次に、本発明によるプリンタにおける幅検出誤差の補正方法を、図5を参照にして、説明する。図5は本発明によるプリンタにおけるインクリボン11搬送時の検出信号の変化を示す図で、(a)はインクリボン11のマーカMK及びインクの配置を示す図で、(b)は、例えば、マーカMKのインクの濃度が薄いインクリボン11が搬送された時の、インクリボン搬送方法と検出手段13の検出信号の変化を示す図である。
従来のプリンタでは巻き取りリール21bを回転させてリール送りモードFrでインクリボン11を巻き取り、セットマーカMKaが検出され、のち、最初のプレーンマーカMKbが検出されるまで、インクリボン11は巻き取りリール21bに巻き取られる。
これに対し、本発明によるプリンタでは、セットマーカMKaを検出するときは、サーマルヘッド1をヘッドダウンして記録用紙12とインクリボン11をプラテンローラ2に圧接させ、紙送りローラ4と圧接ローラ5などで構成される用紙送り機構により、記録用紙12と共にインクリボン11を搬送する、用紙送りモードFpでインクリボン11を搬送する。
なお、本発明によるプリンタでは、セットマーカMKa以外の各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeを検出するときは、インクリボン11はリール送りモードFrで搬送される。
紙送りローラ4は、第1ステッピングモータM1により駆動されており、第1ステッピングモータM1の回転速度はモータ制御回路により制御されている。従って、第1ステッピングモータM1の回転速度はモータ制御回路の制御信号から精度良く検出する事ができ、これにより、記録用紙12の送り速度は精度良く検出する事ができる。
用紙送りモードFpでは記録用紙12の送り速度とインクリボン11の送り速度は同一となるので、用紙送りモードFpでインクリボン11を搬送すれば、インクリボン11の送り速度を精度良く検出する事ができる。
セットマーカMKaの幅は規定されているので、規定されている幅と検出されたインクリボン11の送り速度から、セットマーカMKaが検出手段13を通過するのに要する基準時間Tsが算出できる。
インクリボン11を用紙送りモードFpで送り、検出手段13の検出信号の変化から求めた、セットマーカMKaが検出手段13を通過するのに要した時間を「検出時間Tms」とする。セットマーカMKaのインク濃度が適切で、かつ、検出手段13の感度も適切であれば、検出時間Tmsと基準時間Tsは同一となる。しかしながら、セットマーカMKaのインク濃度や検出手段13の感度が適切でないと、図4(a)、または図4(c)のように検出手段13の検出信号の立ち上がり、立ち下がりの傾きが変化し検出時間Twaが変動するため、図5(b)に示す様に、検出時間Tmsと基準時間Tsとは同一とはならない。なお、図5(b)には、例えば、インク濃度が薄い場合の検出手段13の検出信号の変化を記載している。
本発明によるプリンタでは、セットマーカMKaを検出するときは用紙送りモードFpでインクリボン11を搬送しているので、インクリボン11の送り速度を精度良く検出できる。このインクリボン11の送り速度と、検出手段13の検出信号の変化から求めた検出時間Tmsから、セットマーカMKaの検出幅を算出する事ができ、さらに、規定されたマーカMKaの規定時間Twsから、マーカMKaの規定幅を算出することができ、この検出幅と規定幅から幅検出誤差が算出できる。この、セットマーカMKaの規定幅Wsと算出された検出幅Waから算出された幅検出誤差を、以降、「算定幅検出誤差」と記載する。
セットマーカMKa検出時に算定幅検出誤差が算出できると、各マーカMKの幅検出誤差は同等であるので、各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの規定幅と算定幅検出誤差から、以降4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeを検出手段13が検出する時の各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeのそれぞれの検出幅が算出できる。これにより、各マーカMKa、MKb、MKc、MKd、MKeの印刷濃度のばらつき及び検出手段13の感度ばらつきによる各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの幅の検出ばらつきを補正できる。
本発明によるプリンタでは、セットマーカMKa以外の4つのプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeはリール送りモードFrにて搬送される。従って、各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKe検出時のインクリボン11の巻き取り速度は、リボン巻き取り外径Dwと巻き取りリール21bの回転速度により決定される。
上記のうち、巻き取りリール21bの回転速度は巻き取りリール21bを駆動する第2ステッピングモータM2のモータ制御回路の制御信号から精度良く検出することができる。
しかし、インクリボン11の巻き取り速度は、各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeが検出手段を通過するのに要した時間と各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの幅から検出できるが、検出されるマーカの検出幅Waは各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの印刷濃度と検出手段13の感度により変化する。
しかし、本発明によるプリンタでは、セットマーカMKa検出時に算出した算定幅検出誤差と各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの基準幅から、検出される各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの検出幅を算出する事ができるので、算出された各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの検出幅と各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeが検出手段を通過するのに要した時間の検出結果から、インクリボン11の巻き取り速度を精度良く算出する事ができ、精度のよいインクリボン残量検出が可能となる。
以上により、本発明によるプリンタでは、セットマーカMKa検出時にインクリボン11を、インクリボン11が記録用紙12と共に搬送される用紙送りモードFpで搬送し、セットマーカMKaが検出手段13を通過するのに要した時間と記録用紙12の用紙送り速度からセットマーカMKaの幅検出誤差を算出し、この算出された幅検出誤差を用いて、各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKe検出時のリボン巻き取り外径Dwの算出値を補正する事ができるので、インクリボン11の残量を精度良く検出できる。
次に、本発明によるプリンタの印刷動作の手順を、図7を参照して、説明する。図7は本発明によるプリンタの印刷動作手順を示すフローチャートである。なお、比較のために、本発明によらない従来のプリンタの印刷動作手順を、図6のフローチャートに示す。
最初に、比較のため、図6を参照にして、本発明によらない従来のプリンタの印刷動作を説明する。
図6に示す、本発明によらない従来のプリンタの印刷動作では、電源ONステップS01にてプリンタに通電されると、用紙セットステップS11にて記録用紙12が印刷正規位置にセットされる。
次にセットマーカ検出ステップS13にて、リール送りモードFrでインクリボン11が搬送され、インクリボン11は検出手段13によりセットマーカMKaが検出されるまで搬送される。
次に、プレーンマーカ検出ステップS21で、最初のプレーンマーカMKbが検出されるまでリール送りモードFrでインクリボン11を搬送し、最初のプレーンマーカMKbが検出されると、ヘッドダウンステップS22にて、サーマルヘッド1をヘッドダウンし、積層された記録用紙12とインクリボン11をプラテンローラ2に圧接する。
サーマルヘッド1がヘッドダウンされ、1プレーン印刷ステップS23にて、記録用紙12とインクリボン11がプラテンローラ2に圧接されると、サーマルヘッド1の多数の発熱素子を選択的に発熱させ、インクリボン11のインクを昇華させ記録用紙12に転写させる事により1ライン分の印刷を行う。のち、用紙送り機構で用紙送りモードFpにて、積層された記録用紙12とインクリボン11を1ライン分搬送する。この1ライン分の印刷と搬送を繰り返し、1プレーン分の印刷を行う。
1プレーン分の印刷が完了すると、ヘッドアップステップS24にて、サーマルヘッド1をヘッドアップする。
印刷すべきプレーンが残っている場合には、用紙戻しステップS26で、用紙送り機構にて記録用紙12のみを反搬送方向に搬送し、記録用紙12を印刷正規位置にセットし、のち、プレーンマーカ検出ステップS21以降を繰り返す。
また、各プレーンの印刷を繰り返し、印刷すべき全プレーンの印刷が完了した場合には、用紙排出ステップS31にて、記録用紙12を排出する。
記録用紙12の排出が完了した後、更に印刷すべきデータがある場合には、用紙セットステップS11以降を繰り返す。また、印刷すべきデータの印刷が全て完了した場合には、電源OFFステップS02にて、プリンタの電源を遮断する。
本発明によらない従来のプリンタでは、セットマーカ検出ステップS13及びプレーンマーカ検出ステップS21にて、各マーカMKが検出手段13を通過するのに要する時間を検出し、規定された各マーカMKの幅と、検出された各マーカMKの検出手段13通過時間より、インクリボン11の送り速度を算出し、別途検出された巻き取りリール21bの回転速度より、リボン巻き取り外径Dwを算出し、インクリボン11の残量を検出する。
この場合、インクリボン11の印刷濃度のバラツキや検出手段13の感度のバラツキによるマーカMKの検出幅Waの補正は行われないので、精度の良い残量検出ができない。
これに対し、本発明によるプリンタでは、図7に示す様に、用紙セットステップS11の後、以下の手順で、マーカMKの印刷濃度のバラツキや検出手段13の感度のバラツキによるインクリボン残量検出誤差の算定幅検出誤差を取得する。
本発明によるプリンタでは、用紙セットステップS11完了後、ヘッドダウンステップS12にてサーマルヘッドをヘッドダウンし、積層された記録用紙12とインクリボン11をプラテンローラ2に圧接する。
次に、セットマーカ検出ステップS13で、積層された記録用紙12とインクリボン11を用紙送りモードFpにて搬送し、セットマーカMKaが検出手段13を通過するのに要する時間を検出し、規定されたセットマーカMKaの幅と検出されたセットマーカMKaの検出手段通過時間と記録用紙12の送り速度より、算定幅検出誤差を算出する。
のち、ヘッドアップステップS14にてサーマルヘッド1をヘッドアップし、用紙戻しステップS15で用紙送り機構にて記録用紙12のみを反搬送方向に搬送し、記録用紙12を印刷正規位置にセットする。
次のプレーンマーカ検出ステップS21で、最初のプレーンマーカMKbが検出されるまでリール送りモードFrでインクリボン11を搬送し、最初のプレーンマーカMKbを検出する。
この時の、検出された最初のプレーンマーカMKbの検出手段通過時間と、規定されたプレーンマーカMKbの幅を算定幅検出誤差で補正した値より、インクリボン11の送り速度を算出し、別途検出された巻き取りリール21bの回転速度より、リボン巻き取り外径Dwを算出し、インクリボン11の残量を検出する。
これにより、本発明によるプリンタでは、インクリボン11の印刷濃度のバラツキや検出手段13の感度のバラツキによる検出誤差の補正が行われるので、インクリボン11の残量を精度良く検出できる。
なお、本発明によるプリンタの印刷動作手順では、各プレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeの何れか一つを検出時に算定幅検出誤による補正を行いインクリボン11の送り速度を算出する事を除けば、プレーンマーカ検出ステップS21以降は、本発明によらない従来のプリンタの印刷動作手順と同様であるため、詳細な記述は省略する。
以上の様に、本発明によるプリンタではインクリボン11の印刷濃度のバラツキや検出手段13の感度のバラツキによる検出誤差を補正することにより、インクリボン11の残量を精度良く検出する事ができる。
この検出誤差の補正のために追加される印刷動作手順は、用紙セットステップS11の後の、ヘッドダウンステップS12と、セットマーカ検出ステップS13の後のヘッドアップステップS14及び用紙戻しステップS15のみである。
従って、検出誤差の補正のための追加印刷動作の所要時間はごくわずかで、記録用紙への印刷時間に対する動作時間の増加の影響はほとんど無い。
また、本発明によるプリンタの、インクリボン11の印刷濃度のバラツキや検出手段13の感度のバラツキによる検出誤差の補正に使用される機能は、本発明によらない従来のプリンタが有する機能のみである。
従って、新たな検出機構の追加を行う必要がないので、部品数の増加等を回避しながら、インクリボン11の残量検出精度を改善できる。
以上のように、本発明の実施形態に係るプリンタを具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施する事が可能である。
例えば次の様に変形して実施する事ができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
本実施形態では、イエローYP、マゼンタMP、シアンCP及びオーバーコートOPの各プレーンの前にプレーンマーカMKb、MKc、MKd、MKeがそれぞれ配置されており、先頭のプレーンマーカMKbの前には、セットマーカMKaが配置されている、としたが、図8(b)に示す様な、セットマーカMKaがないインクリボン11でも、最初のプレーンマーカMKbを用紙送りモードFpで搬送し、算定幅検出誤差を取得する事により、同等の効果を得る事ができる。また、図8(c)に示す様な、プレーンマーカが無く、セットマーカMKaのみのインクリボン11でも、最初のセットマーカMKaを用紙送りモードFpで搬送して、算定幅検出誤差を取得し、以降のセットマーカMKaを取りリール送りモードFrで搬送する事により、同等の効果を得る事ができる。
また、本実施形態のインクリボン11では、図3(a)に記載の様に、イエローYP、マゼンタMP、シアンCP及びオーバーコートOPの各プレーンの幅方向に無印刷部分を設定したが、図8(a)に示す様に、幅方向の無印刷部分はなくても良い。
なお、図8はインクリボン11のインク及びマーカの構成の変形例を示す概略図である。
また、本実施形態のプリンタでは、紙送りローラ4を駆動する第1ステッピングモータM1と、スリップ機構7を介して巻き取りリール21bを駆動する第2ステッピングモータM2の2モータ構成としたが、第1ステッピングモータM1と第2ステッピングモータM2を兼用する構成としても良い。