JP5842691B2 - ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させたロドコッカス属細菌 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌に関する。
(a)配列番号1または3記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1または3記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号1記載の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列からなり、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
本発明に係るヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌(以下、「本発明のロドコッカス属細菌」ということがある)は、前述した通りヌクレアーゼ活性を有するロドコッカス属細菌において、ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化したロドコッカス属細菌である。
本発明で用いられるロドコッカス属細菌は、ヌクレアーゼ活性を有するロドコッカス属細菌(対象微生物)であって、ヌクレアーゼを産生し、その活性を示す限り、特に限定はされない。例えば、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)およびロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinivorans)、ロドコッカス オパカス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス ジョスティ(Rhodococcus jostii)、ロドコッカス エクイ(Rhodococcus equi)等が好ましく挙げられる。特に好ましくはロドコッカス ロドクロウスである。
ロドコッカス オパカスとしては、例えばロドコッカス オパカスB4が好ましく挙げられる。
ロドコッカス ジョスティとしては、例えばロドコッカス ジョスティRHA1が好ましく挙げられる。
ロドコッカス エクイとしては、例えばロドコッカス エクイATCC33737が好ましく挙げられる。
本発明において欠失または不活性化するヌクレアーゼ遺伝子としては、特に限定されないが、形質転換の対象となるロドコッカス属細菌が有するヌクレアーゼ遺伝子のオーソログ、またはそのヌクレアーゼの認識するDNA配列と同じDNA配列を認識するヌクレアーゼの遺伝子が好ましい。
本発明に係るロドコッカス属細菌は、上述したようなヌクレアーゼ遺伝子のうち1つが欠失または不活性化されたものであっても良いし、複数のヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたものであってもよい。
2.1.ヌクレアーゼ遺伝子の欠失または不活性化
本発明のロドコッカス属細菌は、本来有するヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたものである。ここで、遺伝子(標的遺伝子)の欠失または不活性化とは、当該遺伝子がコードするタンパク質のヌクレアーゼ活性の一部または全部を失わせるような、対象微生物のゲノムDNAにコードされるヌクレアーゼ遺伝子の一部または全部の欠失、置換、付加;プロモーター配列の一部または全部が欠失、置換、付加;発現調節に関連する遺伝子の一部または全部が欠失、置換、付加等が挙げられる。これらの欠失、置換、付加等された領域は単独でもよいし複数を組み合わせたものでもよい。
以下にヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化する方法の一例として、接合伝達による遺伝子破壊法について図1を参照して説明する。本方法はすなわち、ドナー微生物からヌクレアーゼ活性を有するレシピエント微生物(ロドコッカス属細菌)への接合伝達を利用した形質転換方法を用いることを含む、ヌクレアーゼ遺伝子の欠失または不活性化方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含むものである。
(b)ドナー微生物として、下記(i)〜(v):
(i)レシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子(標的遺伝子)とその周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該耐性遺伝子を欠失または不活性化させた配列、
(ii)当該ドナー微生物において機能する接合伝達開始領域、
(iii)当該ドナー微生物において機能する複製開始領域、
(iv)レシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子、および、
(v)レシピエント微生物に対する致死遺伝子
を含む、遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する工程;
(c)工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行うことにより、当該レシピエント微生物の形質転換体を作製する工程;並びに
(d)工程(c)で作製された形質転換体を、前述致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養する工程。
工程(a)では、接合伝達に供するレシピエント微生物として、接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性を強化したロドコッカス属細菌を作製する。「薬剤への耐性を強化する」とは、レシピエント微生物が薬剤耐性を有していない場合には、薬剤耐性を付与することをいい、レシピエント微生物が薬剤耐性の乏しい場合には、当該耐性をより強くすることをいう。
工程(b)では、接合伝達に供するドナー微生物として、所定の遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する。遺伝子改変用プラスミド、すなわちレシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子を改変するためのプラスミドDNAとしては、前述の(i)〜(v)の構成(遺伝子・塩基配列)を含むものを用いる。
工程(c)では、工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行う。通常は、ドナー微生物およびレシピエント微生物のそれぞれの細胞懸濁液を混合し、適当なプレート培地(LB培地等)上に均一に広げて、両微生物の接合を行わせる。
工程(d)では、工程(c)で作製されたレシピエント微生物の形質転換体(形質転換微生物)を、前述遺伝子改変用プラスミド由来の致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養(継代培養)する。致死遺伝子が機能し得る培養条件としては、限定はされないが、例えば致死遺伝子がsacB遺伝子の場合は、スクロース含有培地を用いた培養が好ましく挙げられる。
本発明のロドコッカス属細菌に導入するためのプラスミドは、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌で複製増殖可能なDNA領域を有するプラスミドであれば良い。
RrhJ1I欠失用プラスミド、RrhJ1II欠失用プラスミドの作製
(1)接合伝達プラスミドベクター(pK19mobsacB1)の作製
pDNR−1r(Clontech社製)中のsacB遺伝子を、NspV切断サイトを付加したプライマーSAC−01(配列番号5)およびSAC−02(配列番号6)を使用したPCRにより増幅し、約1.9kbのsacB遺伝子断片を得た。増幅条件は以下の通りである。
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
SAC−01(配列番号5) 1μl
SAC−02(配列番号6) 1μl
pDNR−1r(Clontech社製)(100倍希釈) 1μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
SAC−01:GGTTCGAATACCTGCCGTTCACTATTATTTAGTG(配列番号5)
SAC−02:GGTTCGAATCGGCATTTTCTTTTGCGTTTTTATTTG(配列番号6)
sacBのNspV切断断片とpK19mobのNspV切断断片を、DNA ligation kit<Mighty mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結した。反応条件は以下の通りである。
ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
sacB/NspV切断断片 4μl
pK19mob/NspV切断断片 1μl
総量 10μl
16℃,1時間
大腸菌JM109株をLB培地1mlに接種し、37℃で5時間好気的に前培養した。次に、前培養液0.4mlをSOB培地40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)に加え、18℃で20時間培養した。得られた培養物を遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0),200mM KCl,10mM CaCl2,40mM MnCl2)を13ml加え、0℃で10分間放置し、再度遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)して上清を除いた。得られた大腸菌菌体を冷TF溶液3.2mlに懸濁し、0.22mlのジメチルスルホキシドを加え、0℃で10分間放置した後、液体窒素を用いて凍結したものをコンピテントセルとした。
ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株を100mlのMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K2HPO4,0.2%KH2PO4,pH7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。
RrhJ1I遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。
鋳型DNA(J1株ゲノムDNA) 1μl
プライマーJ05(配列番号7) 1μl
プライマーJ06(配列番号8) 1μl
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
J05:ctcaaggcaaaggtctctcacc(配列番号7)
J06:actgcacacccaatgccgcgttcctggctg(配列番号8)
J07:cgcggcattgggtgtgcagtggtgagggaa(配列番号9)
J08:gaacgccgtagtccgatgcg(配列番号10)
鋳型DNA1(J05とJ06の増幅産物) 0.5μl
鋳型DNA2(J07とJ08の増幅産物) 0.5μl
プライマーJ05(配列番号7) 1 μl
プライマーJ08(配列番号10) 1 μl
滅菌水 22 μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25 μl
総量 50 μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
プラスミドpUC118/ΔR 20μl
XbaI(タカラバイオ社製) 1μl
HindIII(タカラバイオ社製) 1μl
10×M Buffer(酵素に添付) 5μl
10×BSA(酵素に添付) 5μl
滅菌水 18μl
総量 50μl
プラスミドpK19mobsacB1 5μl
XbaI(タカラバイオ社製) 0.5μl
HindIII(タカラバイオ社製) 0.5μl
10×M Buffer(酵素に添付) 2μl
10×BSA(酵素に添付) 2μl
滅菌水 10μl
総量 20μl
37℃,2.5時間
次に回収したΔR断片とベクターpK19mobsacB1/XbaI−HindIIIを連結した。
Ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
ΔR/XbaI−HindIII 4μl
pK19mobsacB1/XbaI−HindIII 1μl
総量 10μl
16℃,1時間
RrhJ1II遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。
鋳型DNA(J1株ゲノムDNA) 1μl
プライマーJM56(配列番号11) 1μl
プライマーJM57(配列番号12) 1μl
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
総量 50μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
JM56:GGtctagaCTTCTGCCAGGGCTACTCCG(配列番号11)
JM57:GCactagtGCCGAACTCGTACTCGATCG(配列番号12)
JM58:GCactagtTCGACGTCCTCGAGGAATCC(配列番号13)
JM59:GCaagcttGCTTCGGACTGACGTCCGAC(配列番号14)
鋳型DNA1(JM56とJM57の増幅産物) 0.5μl
鋳型DNA2(JM58とJM59の増幅産物) 0.5μl
プライマーJM56(配列番号11) 1 μl
プライマーJM59(配列番号14) 1 μl
滅菌水 22 μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25 μl
総量 50 μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
薬剤耐性を有するJ1株の作製
接合伝達に使用するドナーは、遺伝子欠失株のセレクションに薬剤耐性が必要である。そこで、種々の薬剤耐性株の取得を試み、クロラムフェニコール耐性を有するJ1株の変異株を下記の方法で取得した。
接合伝達によるRrhJ1I遺伝子の欠失
(1)ドナーの調製
乾熱滅菌した試験管に大腸菌S17−1λpirのコンピテントセル20μlにプラスミドpK19ΔR 1μlを加え、氷上で30分静置した。42℃で30秒ヒートショック後、SOC培地を180μl添加し、37℃で1時間振とう培養を行った。その後、LB Kmプレートに塗布し、37℃で一晩静置した。
J1−Cm株をMYKプレートにストリークし、30℃で2日生育させた。生育したコロニーを実施例3(1)と同様の方法で回収、洗浄し、レシピエントとなる菌体懸濁液を調製した。
実施例3(1)で調製したドナー溶液と、(2)で調製したレシピエント溶液を100μlずつ混合し、抗生物質を含まないMYKプレートに塗布し、30℃で一晩静置した。
接合伝達により得られた組換菌#R1は、ゲノム上のRrhJ1I遺伝子の領域に相同組換えによりプラスミドが挿入されているが、RrhJ1I遺伝子を欠失するには2段階の相同組換えが必要である。そこで次に、sacB遺伝子を利用した選抜を実施した。
鋳型DNA(ゲノムDNA) 0.5μl
プライマーJ05(配列番号7) 0.2μl
プライマーJ08(配列番号10) 0.2μl
滅菌水 4.1μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 5 μl
総量 10 μl
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
形質転換効率の評価
(1)ΔRrhJ1I−1株およびJ1株の培養・コンピテントセルの作製
MYKG培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%マルツエキス、0.2%KH2PO4,0.2%K2HPO4,1%グルコース)をΦ24mm×165mm試験管に10mlずつ分注し、各試験管にΔRrhJ1I−1株および対照とするJ1株のコロニーをそれぞれ植菌した。30℃,350rpmで1日培養した後、得られた培養液各3mlをMYKG−20%Sucrose培地(500ml三角フラスコ中の100ml)に植菌し、30℃、230rpmで20時間培養した。得られた培養液を全量50ml容のチューブに移し、遠心分離(5000rpm,10分間、4℃)により各菌体を回収した。回収した各菌体を10mlのElectroporation Buffer(2mM K2HPO4,10%スクロース、pH8.3;以降EBと省略することがある)で2回洗浄した後、菌濃度が同一となるように、それぞれEBに懸濁し、−80℃で凍結してコンピテントセルとした。
形質転換効率を評価するために使用するプラスミドpK4(図3)を下記の方法で調製した。大腸菌SCS110株(Stratagene社製)およびJM109株のコンピテントセルは実施例1(1)に記載の方法で調製した。
実施例4(1)にて調製したコンピテントセル10μlに対してプラスミドpK4を2μl加え、氷上で20分間放置した。続いて、当該コンピテントセルの全量をギャップ1mmのエレクトロポレーション用キュベットに移し、印加条件1.5kV,400Ω,25μFにてエレクトロポレーションした。その後、氷上で10分間放置し、続いて37℃で10分間放置した。キュベットにMYK液体培地0.5mlを加えてよく混和し、懸濁液を全量Φ10×105mmワッセルマン試験管に移して30℃,180rpmで一晩振盪し、復帰培養を行った。復帰培養後の培養液全量をMYK寒天培地(10mg/lカナマイシン含有)に塗布し、30℃で3日間培養した。寒天培地上に出現したコロニー数を数えて算出した形質転換効率を表1に示す。
形質転換効率=出現コロニー数÷[添加DNA(プラスミド)量[μg]]
接合伝達によるRrhJ1II遺伝子の欠失
[実施例1](4)で調製したRrhJ1II欠失用プラスミドpK19ΔRrhJ1IIを使用し、[実施例3](1)〜(4)と同様の手順で接合伝達・RrhJ1II遺伝子欠失を行った。
最終的に14個のコロニーからRrhJ1II遺伝子欠失株が4個得られた。得られたRrhJ1II遺伝子欠失株をΔRrhJ1II−1〜4と命名した。
接合伝達による、ΔRrhJ1I株からのRrhJ1II遺伝子の欠失
[実施例1](4)で調製したRrhJ1II欠失用プラスミドpK19ΔRrhJ1IIと、レシピエントとしてΔRrhJ1I−1株を使用し、[実施例3](1)〜(4)と同様の手順で接合伝達・RrhJ1II遺伝子欠失を行った。
最終的に14個のコロニーからRrhJ1II遺伝子欠失株が3個得られた。得られたRrhJ1II遺伝子欠失株をΔRrhJ1IΔRrhJ1II−1〜3と命名した。
形質転換効率の評価
[実施例5][実施例6]で作製したΔRrhJ1II−1株,ΔRrhJ1IΔRrhJ1II−1株を使用し、[実施例4](1)〜(3)と同様の手順でこれら2株の形質転換効率を評価した。[実施例4](3)に記載の式に従って算出した各株の形質転換効率を表2に示す。
J1菌染色体DNAの調製
ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株を100mlのMYKG培地中、30℃にて72時間振盪培養した。
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子のPCR
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子をPCRで増幅するためのプライマーを以下の方法で設計した。
鋳型DNA(J1菌染色体DNA,参考例1) 1μl
10×Ex Buffer(タカラバイオ社) 10μl
150μMプライマーDG−01(配列番号15) 1μl
150μMプライマーDG−02(配列番号16) 1μl
2.5mM dNTP 8μl
DMSO 10μl
滅菌水 18μl
ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社) 1μl
総量 50μl
94℃:30秒、65℃:30秒および72℃:1分の反応を30サイクル
DG−01:5’−GA(T/C)CCIGCIACITCIGCICGIATG−3’(配列番号15)
DG−02:5’−CCAIACICGIACIACIGTCCA−3’(配列番号16)
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子のクローニング
(1)ゲノミックサザンハイブリダイゼーション
ApaLI,BamHI,ClaI,Eco52I,EcoT14I,KpnI,MluI,NcoI,NotI,PvuI,SacI,XbaI,XhoIそれぞれで消化したJ1菌ゲノムDNAに対し、後述の方法で調製したRrhJ1IIのプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、Eco52Iで消化した断片から、約1.2kbの単一シグナルが得られた。
参考例2で調製したPCR産物をGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて精製した。精製したPCR産物に対してAlkPhos Direct Labeling kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、添付のマニュアルにしたがってラベリングを行い、RrhJ1IIのプローブとした。
J1菌ゲノムDNAを制限酵素Eco52Iで分解して0.7%アガロースゲル電気泳動で分離し、ゲルからGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を使用して約1.2kbの断片を回収した。得られた断片は、pBluescriptII SK(+)ベクター(Stratagene社製)にDNA ligation kit<Mighty mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結した。反応条件は以下の通りである。
ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
J1菌ゲノムDNA/Eco52I切断断片 4μl
pBluescriptII SK(+)/Eco52I切断断片 1μl
総量 10μl
16℃,1時間
大腸菌JM109株をLB培地1mlに接種し、37℃で5時間好気的に前培養した。
次に、前培養液0.4mlをSOB培地40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)に加え、18℃で20時間培養した。得られた培養物を遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0),200mM KCl,10mM CaCl2,40mM MnCl2)を13ml加え、0℃で10分間放置し、再度遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)して上清を除いた。得られた大腸菌菌体を冷TF溶液3.2mlに懸濁し、0.22mlのジメチルスルホキシドを加え、0℃で10分間放置した後、液体窒素を用いて凍結したものをコンピテントセルとした。
大腸菌組換体によるRrhJ1IIヌクレアーゼの生産
(1)RrhJ1IIヌクレアーゼ発現プラスミドの構築
RrhJ1IIヌクレアーゼを得るために、実施例1で得られたJ1菌染色体DNAを鋳型として使用し、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。この際、RrhJ1IIヌクレアーゼをHis−tag融合タンパクとして発現させるため、RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子上流にSD配列とHis−tag配列を付加した。
鋳型DNA(J1菌染色体DNA) 1μl
2×PCR Buffer KOD FX(東洋紡) 25μl
10μMプライマーN(配列番号19) 1.5μl
10μMプライマーC(配列番号20) 1.5μl
2mM dNTP 10μl
KOD FX DNAポリメラーゼ(東洋紡) 1μl
総量 50μl
N:5'−AGTGAATTCCTTTAAGAAGGAGATATACCATGCATCATCATCATCATCACATGGCGTCGTCGGAT−3'(配列番号19)
C:5'−GCCAAGCTTTCACCCCCGCGCCGGTTT−3'(配列番号20)
(1)で作製したRrhJ1IIヌクレアーゼ発現ベクターを含む大腸菌組換体(JM109/pRR01)を、100μg/mlアンピシリンを含むLB液体培地10mlで37℃,5時間培養した後、1mlを100μg/mlアンピシリン、1mM IPTGを含むLB液体培地100ml×1本に植菌し、37℃,18時間培養した。培養液を遠心分離によって回収し、回収した菌体を破砕用緩衝液(組成 20mM Sodium Phosphate,0.5M NaCl,20mM イミダゾール、10% グリセロール、pH7.4)に懸濁した後4℃で10分間超音波による破砕を行った。破砕液を遠心分離し、得られた上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液をHis−tag精製カラム(His Trap HP:GE Healthcare)を用いて精製した。精製タンパク質はElution Buffer(0.5M NaCl,0.5M イミダゾール、20mM Sodium Phosphate,10%グリセロール、pH7.4)にて溶出し、2つのフラクションに分画してフラクション1,フラクション2とした。
(2)で調製した精製酵素を用いて、RrhJ1IIヌクレアーゼ活性を調べた。活性は片方の鎖の5'末端にビオチン標識を持ち、配列内にT/Gミスマッチを1箇所持つ二本鎖オリゴDNAを種々用いてそのニッキング活性を測定した。
1.5μM基質DNA 2μl
100mM Tris−HCl(pH7.5) 2μl
100mM MgCl2 2μl
1mg/ml BSA 2μl
総量 20μl
配列番号6:プライマーSAC−02
配列番号7:プライマーJ05
配列番号8:プライマーJ06
配列番号9:プライマーJ07
配列番号10:プライマーJ08
配列番号11:プライマーJM56
配列番号12:プライマーJM57
配列番号13:プライマーJM58
配列番号14:プライマーJM59
配列番号15:プライマーDG−01
配列番号16:プライマーDG−02
配列番号19:プライマーN
配列番号20:プライマーC
Claims (6)
- ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させたロドコッカス属細菌であって、
前記ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)であり、欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するRrhJ1I制限酵素もしくはそのオーソログ、および/または配列番号3に示される塩基配列を有するRrhJ1IIヌクレアーゼもしくはそのオーソログである、前記ロドコッカス属細菌。 - 欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、以下の(a)〜(c)に示される塩基配列を有するDNAからなる、請求項1に記載のロドコッカス属細菌。
(a)配列番号1または3記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1または3記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号1記載の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列からなり、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA - ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株またはその変異株である、請求項1または2に記載のロドコッカス属細菌。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のロドコッカス属細菌を形質転換して得られる形質転換体。
- ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌を作製し、該ロドコッカス属細菌を形質転換することを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換体の製造方法であって、
前記ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)であり、欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するRrhJ1I制限酵素もしくはそのオーソログ、および/または配列番号3に示される塩基配列を有するRrhJ1IIヌクレアーゼもしくはそのオーソログである、前記方法。 - ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させることを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換効率を向上させる方法であって、
前記ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)であり、欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するRrhJ1I制限酵素もしくはそのオーソログ、および/または配列番号3に示される塩基配列を有するRrhJ1IIヌクレアーゼもしくはそのオーソログである、前記方法。
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