JP5842572B2 - リチウムイオン二次電池システム及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池システム及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池システム、及びリチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極および負極の間を、非水電解液中のリチウムイオンが移動することで充放電可能な二次電池である。リチウムイオン二次電池は、高温の状態で放置すると電池容量が低下するという性質がある。
特許文献1には、リチウムイオン二次電池を高温で放置した場合であっても、電池容量が低下することを抑制することができるリチウムイオン二次電池に関する技術が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の温度(電池温度)が40〜50℃に達した際に、電池電圧が2.5〜3.5Vとなるように放電を行なうことでリチウムイオン二次電池の電池容量が低下することを抑制している。
特開2003−217687号公報
特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の電池容量が低下することを抑制するために、電池温度が40〜50℃に達した際に、電池電圧が2.5〜3.5Vとなるように放電を行なっている。しかしながら、電池電圧が2.5〜3.5Vとなるように放電を行なったとしても、リチウムイオン二次電池を高温で放置すると負極活物質の表面に皮膜が形成されるため電池容量が低下するという問題がある。
上記課題に鑑み本発明の目的は、リチウムイオン二次電池を高温で放置した場合であっても電池容量の低下を抑制することができるリチウムイオン二次電池システムおよびリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することである。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは、リチウムイオン二次電池と、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する充放電制御部と、を備えるリチウムイオン二次電池システムであって、前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置されることを示す高温放置モードに設定された場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下としてもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは更に、前記リチウムイオン二次電池の温度を測定する温度センサを備え、前記充放電制御部は、前記温度センサで測定された温度が40℃以上となった場合に前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下としてもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施する前に前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の温度が40℃以上となる期間が30日以上続く場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下としてもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法は、リチウムイオン二次電池を組み立て、前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施する前に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電した後に前記リチウムイオン二次電池を出荷し、前記出荷後に、前記コンディショニング処理を実施してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池を出荷してもよい。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記出荷後に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電してもよい。
本発明により、リチウムイオン二次電池を高温で放置した場合であっても電池容量の低下を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池システムおよびリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの一例を示すブロック図である。 実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの他の例を示すブロック図である。 リチウムイオン二次電池の充電状態(SOC)と負極電位との関係を示すグラフである。 実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。 実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。 負極電位と容量維持率の関係を示すグラフである(初期充電時に負極電位を所定の電位に設定した場合)。 負極電位と容量維持率の関係を示すグラフである(初期充電後に負極電位を所定の電位に設定した場合)。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムを示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム10は、リチウムイオン二次電池11、充放電制御部12、および設定部13を有する。
リチウムイオン二次電池11は、所定の負荷(不図示)に電力を供給することができる。リチウムイオン二次電池11は、単一のリチウムイオン二次電池でもよく、また複数のリチウムイオン二次電池を電気的に接続することで構成された組電池であってもよい。
リチウムイオン二次電池11は、正極活物質を担持した正電極板、負極活物質を担持した負電極板、正電極板および負電極板の間に介在するセパレータ、および非水電解液を備える。リチウムイオン二次電池11は、例えば帯状の正電極板と帯状の負電極板とを帯状のセパレータを介して捲回した捲回状の電極体を備えるものや、複数の正電極板と複数の負電極板とを、セパレータを介して交互に積層した積層状の電極体を備えるものなどが挙げられる。
正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)およびこれらの混合物等を用いることができる。そして、アルミニウム等の正極集電体に正極活物質を塗布して乾燥することによって正電極板を作製することができる。負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えば、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いることができる。そして、銅等の負極集電体に負極活物質を塗布して乾燥することによって負電極板を作製することができる。
非水電解液の非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。また、非水電解液の支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。セパレータとしては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜等を用いることができる。
充放電制御部12は、リチウムイオン二次電池11の充電および放電を制御する。充放電制御部12には、リチウムイオン二次電池11の負極電位14、および設定部13から出力された設定信号15が供給される。充放電制御部12がリチウムイオン二次電池11を充電する際は、所定の充電電流をリチウムイオン二次電池11に供給する。充放電制御部12は、リチウムイオン二次電池11の充電に必要な電力を外部電源(不図示)から取得してもよい。また、充放電制御部12は、例えば抵抗素子を備えており、この抵抗素子に電流を流して電力を熱に変換することでリチウムイオン二次電池11の放電を実施することができる。
設定部13は、充放電制御部12の動作モードを設定するための設定信号15を充放電制御部12に出力する。例えば、充放電制御部12の動作モードには、通常モードと高温放置モードとがある。通常モードは、充放電制御部12が通常の動作に基づきリチウムイオン二次電池11の充電および放電を実施するモードである。また、高温放置モードは、リチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合に設定されるモードである。高温放置モードに設定された場合、充放電制御部12は、リチウムイオン二次電池11の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように制御する。なお、所定の期間は例えば30日以上の期間であり、設定部13は、リチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で30日以上放置される場合に高温放置モードに設定することができる。
例えば、設定部13は入力手段(不図示)を備えており、この入力手段を用いてユーザが動作モードを入力することで、充放電制御部12の動作モードを設定することができる。つまり、ユーザは、リチウムイオン二次電池11を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、入力手段を用いて高温放置モードに設定することができる。
また、図2に示すように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム10'は、リチウムイオン二次電池11の温度を測定する温度センサ16を備えていてもよい。この場合、温度センサ16はリチウムイオン二次電池11の温度を測定し、測定した温度情報17を設定部13に出力する。そして、設定部13は、リチウムイオン二次電池11の温度が40℃以上となった場合、充放電制御部12に高温放置モードの設定信号15を出力することで、充放電制御部12の動作モードを高温放置モードに設定することができる。
図3は、リチウムイオン二次電池11の充電状態と負極電位との関係を示すグラフである。図3の横軸はリチウムイオン二次電池11の充電状態SOC(State of Charge)を示し、縦軸はリチウムイオン二次電池11の負極電位を示す。リチウムイオン二次電池11の負極電位は、リチウムイオン二次電池の正電極板と負電極板との間に参照電極(Liの参照電極)を設け、参照電極に対する負電極板の電位を測定することで求めることができる。
リチウムイオン二次電池11を組み立てた直後(つまり、初期充電を実施していない状態)では、図3に示すように負極電位は3.6V程度となる。その後、リチウムイオン二次電池11の初期充電を実施すると、負極電位が徐々に低下しSOCが上昇する(つまり、正極電位と負極電位の電位差が大きくなる)。図3に示すように、負極電位が2.8〜4.0Vの領域では、高温で放置した際に、負極集電体に用いた銅が溶出する。また、負極電位が1.55〜2.4Vの領域では、高温で放置した際に、負極活物質の表面にSEI(Solid Electrolyte Interface:固体電解質界面)皮膜が形成される。負極活物質の表面にSEI皮膜が形成されると、リチウムイオン二次電池11の電池容量が低下する。
また、図3に示すように、リチウムイオン二次電池11の電池使用領域は、負極電位が0.05〜1.35Vの領域である。なお、図3に示すグラフでは、負極電位が電池使用領域の上限である1.35VのときにSOC=0%としている。
そして、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム10では、リチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、リチウムイオン二次電池11の負極電位を2.4V以上2.8V以下としている。図3に示すように、負極電位が2.4〜2.8Vの領域は、SEI皮膜形成領域よりも負極電位が高く、銅溶出領域よりも負極電位が低い領域である。よって、負極電位を2.4〜2.8Vとすることで、負極活物質の表面にSEI皮膜が形成されることを抑制することができ、また、負極集電体である銅が溶出することを抑制することができる。したがって、リチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で所定の期間放置された場合であっても、リチウムイオン二次電池11の電池容量が低下することを抑制することができる。
ここで、負極電位2.4〜2.8Vは、電池電圧0.8V〜1.2Vに対応しており、負極電位2.4〜2.8Vの領域は電池使用領域とは異なった領域である。つまり、特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の電池温度が40〜50℃に達した際に、電池電圧が2.5〜3.5Vとなるように放電を行なっていた。しかし、電池電圧が2.5〜3.5Vの領域は、図3に示す電池使用領域に含まれており、負極電位2.4〜2.8V(電池電圧0.8V〜1.2V)の領域とは異なる領域である。
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム10の動作(使用方法)の一例について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。まず、図1、図2に示すようなリチウムイオン二次電池システム10を構成する(ステップS11)。そして、コンディショニング処理(初期充電)を実施する前にリチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合(ステップS12:Yes)、充放電制御部12は初期充電時に負極電位が2.4〜2.8Vとなるように充電し、その後、リチウムイオン二次電池11を放置する(ステップS13)。ステップS13では、初期充電時に負極電位を2.4〜2.8Vとすることから、図3に示す矢印21の方向、つまり負極電位3.6Vから負極電位2.4〜2.8Vの領域へと負極電位が変化する。そして、リチウムイオン二次電池11の放置期間が終了した後、充放電制御部12はコンディショニング処理を実施する(ステップS14)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。ここで、コンディショニング処理とはリチウムイオン二次電池11の充電および放電を所定の回数繰り返す処理である。
一方、コンディショニング処理(初期充電)の前にリチウムイオン二次電池11が40℃以上の状態で所定の期間放置されない場合(ステップS12:No)、充放電制御部12はコンディショニング処理を実施する(ステップS15)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。
コンディショニング処理を実施した後、リチウムイオン二次電池11を使用する(ステップS16)。そして、リチウムイオン二次電池11の使用を中断して、リチウムイオン二次電池11を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合(ステップS17:Yes)、充放電制御部12は負極電位が2.4〜2.8Vとなるように3時間以上かけてCCCV放電を実施し、その後、リチウムイオン二次電池11を放置する(ステップS18)。ステップS18では、初期充電後に負極電位を2.4〜2.8Vとすることから、図3に示す矢印22の方向、つまり電池使用領域から負極電位2.4〜2.8Vの領域へと負極電位が変化する。そして、リチウムイオン二次電池11の放置期間が終了した後、充放電制御部12は、リチウムイオン二次電池11の負極電位が電池使用領域となるように充電する(ステップS19)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。その後、再びリチウムイオン二次電池11を使用する(ステップS16)。以降、ステップS16〜ステップS19の動作が繰り返される。
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。以下で説明するリチウムイオン二次電池の製造方法では、地域Aでリチウムイオン二次電池を製造し、その後、リチウムイオン二次電池を地域Bに出荷し、地域Bにおいてリチウムイオン二次電池を車体に取り付ける場合について説明する。
まず、リチウムイオン二次電池を組み立てる(ステップS21)。リチウムイオン二次電池は、例えば、帯状の正電極板と帯状の負電極板とを帯状のセパレータを介して捲回した捲回状の電極体を、非水電解液と共に所定の容器に収容することで組み立てることができる。この時点では、リチウムイオン二次電池の充電は実施されていない。
そして、組み立てられたリチウムイオン二次電池を出荷する地域Bにおいて、リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合(ステップS22:Yes)、リチウムイオン二次電池の初期充電時に、負極電位が2.4〜2.8Vとなるように充電する(ステップS23)。ステップS23では、初期充電時に負極電位を2.4〜2.8Vとすることから、図3に示す矢印21の方向、つまり負極電位3.6Vから負極電位2.4〜2.8Vの領域へと負極電位が変化する。なお、リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で放置するか否かの判断は、例えば、リチウムイオン二次電池の出荷地域Bの気温が40℃以上であるか否かに基づいて判断してもよい。
そして、負極電位が2.4〜2.8Vとなるように充電された後、リチウムイオン二次電池を地域Bに出荷する(ステップS24)。出荷されたリチウムイオン二次電池は、出荷地域Bでコンディショニング処理される(ステップS25)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。その後、コンディショニング処理された後のリチウムイオン二次電池を車体に取り付ける(ステップS26)。
一方、出荷地域Bにおいてリチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置しない場合(ステップS22:No)、地域Aでリチウムイオン二次電池のコンディショニング処理を実施する(ステップS27)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。そして、コンディショニング処理された後のリチウムイオン二次電池を地域Bに出荷する(ステップS28)。その後、出荷地域Bにおいて、リチウムイオン二次電池を車体に取り付ける(ステップS29)。
なお、リチウムイオン二次電池を車体に取り付けた後(ステップS26、ステップS29)の動作については、図4のステップS16〜S19の動作と同様である。つまり、リチウムイオン二次電池を車体に取り付けた後、リチウムイオン二次電池を使用する(ステップS16)。そして、リチウムイオン二次電池の使用を中断して、リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合(ステップS17:Yes)、負極電位が2.4〜2.8Vとなるように3時間以上かけてCCCV放電を実施し、その後、リチウムイオン二次電池を放置する(ステップS18)。ステップS18では、初期充電後に負極電位を2.4〜2.8Vとすることから、図3に示す矢印22の方向、つまり電池使用領域から負極電位2.4〜2.8Vの領域へと負極電位が変化する。そして、リチウムイオン二次電池の放置期間が終了した後、リチウムイオン二次電池の負極電位が電池使用領域となるように充電する(ステップS19)。このとき、負極電位は0.05〜1.0V程度(電池電圧は2.5〜4.0V程度)となる。その後、再びリチウムイオン二次電池を使用する(ステップS16)。以降、ステップS16〜ステップS19の動作が繰り返される。
以上で説明したように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムでは、リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下としている。図3に示すように、負極電位が2.4〜2.8Vの領域は、SEI皮膜形成領域よりも負極電位が高く、銅溶出領域よりも負極電位が低い領域である。よって、負極電位を2.4〜2.8Vとすることで、負極活物質の表面にSEI皮膜が形成されることを抑制することができ、また、負極集電体である銅の溶出を抑制することができる。したがって、リチウムイオン二次電池を高温で長時間放置した場合であっても、リチウムイオン二次電池の電池容量が低下することを抑制することができる。
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、リチウムイオン二次電池を高温で放置した場合であっても電池容量の低下を抑制することが可能なリチウムイオン二次電池システムおよびリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。以下で説明する実施例では、負極電位を所定の電位とした後、60℃の環境下で1ヶ月間放置した際のリチウムイオン二次電池の容量維持率を示す。試験に用いたリチウムイオン二次電池は下記のようにして作製した。
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3を、導電材としてアセチレンブラック(AB)を、バインダーとしてPVDFを、それぞれの質量比が90:8:2となるように調整した。そして、調整したこれらの材料をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液と混合して混練した。そして、混練後の正極合剤を厚さ15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に帯状に塗布して乾燥することにより、正極集電体の両面に正極合剤層が設けられた正極シートを作製した。正極合剤の塗布量は、両面合わせて約11.8mg/cm(固形分基準)となるように調節した。乾燥後、正極合剤層の密度が約2.3g/cmとなるようにプレスした。
また、負極活物質としての天然黒鉛粉末と、SBRと、CMCとを、これらの材料の質量比が98.6:0.7:0.7となるように水に分散させて負極合剤を調製した。この負極合剤を厚さ10μmの長尺状の銅箔(負極集電体)の両面に塗布して乾燥することにより、負極集電体の両面に負極合剤層が設けられた負極シートを作製した。負極合剤の塗布量は、両面合わせて約7.5mg/cm(固形分基準)となるように調節した。乾燥後、負極合剤層の密度が約1.0g/cm〜1.4g/cmとなるようにプレスした。
上記のようにして作製した正極シートおよび負極シートを2枚のセパレータ(多孔質ポリエチレン製の単層構造のものを使用した。)を介して積層して捲回し、その捲回体を側面方向から押しつぶして扁平状の捲回電極体を作製した。この捲回電極体を非水電解液とともに箱型の電池容器に収容し、電池容器の開口部を気密に封口した。
非水電解液としては、ECとEMCとDMCとを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを約1mol/kgの濃度で含有させたものを使用した。このようにしてリチウム二次電池を組み立てた。
また、容量維持率の測定は次のようにして行なった。放置前の放電容量を放電容量A、放置後の放電容量を放電容量Bとして、下記の式を用いて容量維持率を求めた。
容量維持率(%)=(放電容量B/放電容量A)×100
なお、放電容量Aおよび放電容量Bは、次のようにして算出した。まず、20℃の温度環境下で、各リチウムイオン二次電池について電流密度0.2mA/cmの定電流で、電池電圧が上限電圧値4.2Vから下限電圧値3.0Vに至るまで放電を行なった。このときの放電電気量(mAh)を、各リチウム二次電池内の正極活物質の質量(g)で除して、放電容量Aおよび放電容量Bを算出した。
図6に、負極電位と容量維持率との関係を示す。図6に示す試験結果は、初期充電時に負極電位を所定の電位に設定した場合、つまり、図3のグラフの矢印21の方向に負極電位を変化させることで負極電位を所定の電位に設定した場合の試験結果である。
サンプルAでは、初期充電時に負極電位を0.16Vとした。負極電位0.16Vは電池電圧3.7Vに対応しており、電池電圧3.7Vはリチウムイオン二次電池の使用電圧の中心である。サンプルBでは、初期充電時に負極電位を0.65Vとした。負極電位0.65Vは電池電圧3.0Vに対応しており、電池電圧3.0Vはリチウムイオン二次電池の使用電圧の下限である。サンプルCでは、初期充電時に負極電位を1.13Vとした。負極電位1.13Vは電池電圧2.5Vに対応しており、電池電圧2.5Vは特許文献1にかかる技術において高温保存時に設定される電圧である。サンプルDでは、初期充電時に負極電位を2.61Vとした。負極電位2.61Vは電池電圧1.0Vに対応しており、この負極電位は本発明の効果が得られる領域の電位である。
図6に示すように、容量維持率は、サンプルAでは約93%、サンプルBでは約96%、サンプルCでは約98%、サンプルDでは約99.9%となった。よって、初期充電時に負極電位を2.61VとしたサンプルDにおいて容量維持率が最も高くなった。これは、初期充電時に負極電位を2.61Vとした後にリチウムイオン二次電池を放置することで、負極活物質の表面にSEI皮膜が形成されることを抑制することができたためと考えられる。
図7に、負極電位と容量維持率との関係を示す。図7に示す試験結果は、初期充電後に負極電位を所定の電位に設定した場合、つまり、図3のグラフの矢印22の方向に負極電位を変化させることで負極電位を所定の電位に設定した場合の試験結果である。
サンプルEでは、電池電圧4.0VからCCCV放電を実施して電池電圧3.7Vとし、その後、電池電圧3.7Vを3時間維持することで、負極電位を0.16Vとした。電池電圧3.7Vはリチウムイオン二次電池の使用電圧の中心である。サンプルFでは、電池電圧4.0VからCCCV放電を実施して電池電圧3.0Vとし、その後、電池電圧3.0Vを3時間維持することで、負極電位を0.65Vとした。電池電圧3.0Vはリチウムイオン二次電池の使用電圧の下限である。サンプルGでは、電池電圧4.0VからCCCV放電を実施して電池電圧2.5Vとし、その後、電池電圧2.5Vを3時間維持することで、負極電位を1.13Vとした。電池電圧2.5Vは特許文献1にかかる技術において高温保存時に設定される電圧である。サンプルHでは、電池電圧4.0VからCCCV放電を実施して電池電圧1.0Vとし、その後、電池電圧1.0Vを3時間維持することで、負極電位を2.61Vとした。負極電位2.61Vは本発明の効果が得られる領域の電位である。
図7に示すように、容量維持率は、サンプルEでは約93%、サンプルFでは約95%、サンプルGでは約98%、サンプルHでは約99.5%となった。よって、負極電位を2.61VとしたサンプルHにおいて容量維持率が最も高くなった。これは、負極電位を2.61Vとした後にリチウムイオン二次電池を放置することで、負極活物質の表面にSEI皮膜が形成されることを抑制することができたためと考えられる。
なお、図6に示した試験結果と図7に示した試験結果とでは、試験結果に大きな違いはなかった。よって、初期充電時に負極電位を2.4〜2.8Vとした場合(図3の矢印21参照)と、初期充電後に負極電位を2.4〜2.8Vとした場合(図3の矢印22参照)とでは、効果に差がないことがわかった。
以上、本発明を上記実施形態および実施例に即して説明したが、上記実施形態および実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
10、10' リチウムイオン二次電池システム
11 リチウムイオン二次電池
12 充放電制御部
13 設定部
14 負極電位
15 設定信号
16 温度センサ
17 温度情報

Claims (12)

  1. 正極活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含む正極と、負極活物質である黒鉛を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオンを含む非水電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池と、
    前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する充放電制御部と、を備えるリチウムイオン二次電池システムであって、
    前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする、
    リチウムイオン二次電池システム。
  2. 前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置されることを示す高温放置モードに設定された場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする、
    請求項1に記載のリチウムイオン二次電池システム。
  3. 前記リチウムイオン二次電池システムは更に、前記リチウムイオン二次電池の温度を測定する温度センサを備え、
    前記充放電制御部は、前記温度センサで測定された温度が40℃以上となった場合に前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする、
    請求項1に記載のリチウムイオン二次電池システム。
  4. 前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施する前に前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
  5. 前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池が40℃以上の状態で所定の期間放置される場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
  6. 前記充放電制御部は、前記リチウムイオン二次電池の温度が40℃以上となる期間が30日以上続く場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
  7. 正極活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含む正極と、負極活物質である黒鉛を含む負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、リチウムイオンを含む非水電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池を組み立て、
    前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位を2.4V以上2.8V以下とする、
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  8. 前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施する前に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電する、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  9. 前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように充電した後に前記リチウムイオン二次電池を出荷し、
    前記出荷後に、前記コンディショニング処理を実施する、
    請求項8に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  10. 前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電する、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  11. 前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すコンディショニング処理を実施した後に前記リチウムイオン二次電池を出荷する、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  12. 前記出荷後に前記リチウムイオン二次電池を40℃以上の状態で所定の期間放置する場合、前記リチウムイオン二次電池の負極電位が2.4V以上2.8V以下となるように放電する、
    請求項11に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
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