JP5840326B2 - 処置具及び処置システム - Google Patents

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Description

この発明は、エネルギを用いて生体組織を処置するための処置具及び処置システムに関する。
例えば特開2001−170069号公報には、エネルギを用いて生体組織を処置するための処置具が開示されている。
例えばUS2010/042101A1には、生理食塩水等の導電性流体を供給することによって生体組織の特定部位にタンパク変性を引き起こして生体組織を接合可能な処置具が開示されている。
例えばUS2008/045944A1には、1対の電極の中央に絶縁部分を備える突出部を有し、電極同士の短絡を防止可能な処置具が開示されている。
生体組織同士を接合する際、生体組織の接合面同士を密着させる押圧力、及び、接合面に略110℃以上の温度が必要となる。温度を略110℃よりも高くすれば接合力が増す傾向となるが、生体組織は略280℃に達するまでに生体組織の分解(炭化)が急激に進むことが知られている。このため、280℃に生体組織を加熱すれば、生体組織の接合と切開とを同時に行え、接合面の機械的切開が不要になる。
特開2001−170069号公報、US2010/042101A1又はUS2008/045944A1に開示された処置具で、生体組織の保持面を仮に280℃まで上昇させることが可能であるとした場合、生体組織の分解領域(切開領域)が生体組織同士の接合面積に比べて大きくなってしまうおそれが高い。したがって、上述した処置具では、生体組織の接合と切開とを同時に行えるが、生体組織間に高い接合力を得ることが難しい。
この発明は、エネルギを用いて生体組織を処置する際に、処置対象の生体組織の接合と切開とを同時に行え、しかも、処置対象の生体組織間に高い接合力を得ることが可能な処置具及び処置システムを提供することを目的とする。
この発明の一態様に係る、生体組織にエネルギを付加してその生体組織を処置する処置具は、相対的に開閉可能で前記生体組織を保持可能な1対の保持部と、前記保持部のうちの一方の保持部に、他方の保持部に対向するように設けられ、エネルギが付加されたときに処置対象の生体組織を除去するように作用する第1作用領域と、前記第1作用領域の周囲に配置され前記第1作用領域と同時にエネルギが付加されたときに前記処置対象の生体組織を接合するように作用する第2作用領域とを有する第1エネルギ出力部と、前記保持部のうちの前記他方の保持部に前記第1エネルギ出力部に対向するように設けられ、前記保持部を閉じて前記生体組織を前記保持部間に保持したときに前記第1作用領域に対して前記第2作用領域を離間させ、前記第1作用領域との間の生体組織に付加する押圧力を前記第2作用領域との間の生体組織に付加する押圧力よりも高くし、生体組織にエネルギを付加可能な第2エネルギ出力部とを有する。
図1は、第1から第8実施形態に係る処置システムを示す概略図である。 図2は、第1から第8実施形態に係る処置システムの概略的なブロック図である。 図3Aは、第1実施形態に係る処置システムの処置具の第1処置部を示す概略的な平面図である。 図3Bは、第1実施形態に係る処置システムの処置具の処置部で処置対象の生体組織を保持した状態を示す、図3A中の3B−3B線に沿う概略的な横断面図である。 図3Cは、第1実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図4は、第1から第8実施形態に係る処置システムの処置具の変形例を示す概略図である。 図5Aは、第2実施形態に係る処置システムの処置具の処置部で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図5Bは、第2実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図6は、第3実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図7は、第4実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図8は、第5実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。 図9Aは、第6実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部を示す概略的な斜視図である。 図9Bは、第6実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の概略的な側面図である。 図9Cは、第6実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の、図9B中の9C−9C線に沿う概略的な横断面図である。 図9Dは、第6実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の、図9B中の9D−9D線に沿う概略的な横断面図である。 図9Eは、第6実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の、図9B中の9E−9E線に沿う概略的な断面図である。 図10は、第7実施形態に係る処置システムの処置具の1対の処置部の一方のエネルギ出力部を示す概略的な斜視図である。 図11は、第8実施形態に係る処置システムの処置具の1対の処置部の一方のエネルギ出力部を示す概略的な斜視図である。 図12は、第9実施形態に係る処置システムを示す概略図である。 図13は、第9実施形態に係る処置システムの処置具の処置部の第1及び第2エネルギ出力部間で処置対象の生体組織を保持した状態を示す概略的な横断面図である。
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
第1実施形態について、図1から図3Cを参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る処置システム(エネルギ処置装置)10は、処置具(エネルギ処置具)12と、処置具12にエネルギを付与するコントローラ14とを有する。コントローラ14は処置具12の後述する第1及び第2エネルギ出力部62,64(図2参照)の温度を適宜の温度に制御する。
コントローラ14には処置具12に付与する熱エネルギのON/OFFを切り替えるペダル16aを有するフットスイッチ16が接続されている。処置具12とコントローラ14との間は複数のリード線や信号線が束ねられた第1ケーブル18aにより電気的に接続されている。コントローラ14とフットスイッチ16との間は複数のリード線や信号線が束ねられた第2ケーブル18bにより電気的に接続されている。フットスイッチ16はペダル16aの操作等によりコントローラ14に信号を入力することが可能であり、コントローラ14はフットスイッチ16のペダル16aの操作等に基づいて処置具12に付与するエネルギを制御可能である。
図2に示すように、コントローラ14は、制御部(CPU)22と、エネルギ出力回路(発熱部駆動回路)24と、表示部26とを有する。エネルギ出力回路24及び表示部26は制御部22により制御される。表示部26は、コントローラ14の状態を表示したり、各種の設定をする際に用いられる。表示部26は、例えばタッチパネルが用いられることが好ましい。
なお、フットスイッチ16と制御部22とが接続され、フットスイッチ16のペダル16aが押圧されると、エネルギ出力回路24から後述する第1及び第2エネルギ出力部62,64にそれぞれエネルギが同時に出力される。
図1に示すように、処置具12は、生体組織Lを処置する処置部42と、挿入部44と、操作部46とを有する。
図3Bに示すように、処置部42は、生体組織の保持部としての開閉可能な1対のジョー(第1及び第2ジョー)52,54と、ジョー52,54に配設されたエネルギ出力部(第1及び第2エネルギ出力部)62,64とを有する。第1ジョー(第1保持部)52及び第1エネルギ出力部62は図3Aに示す第1処置部42a(図1参照)を形成し、第2ジョー(第2保持部)54及び第2エネルギ出力部64は第2処置部42b(図1参照)を形成する。なお、この実施形態では、第1及び第2処置部42a,42bは後述する長手方向Y及び幅方向X(図1、図3Aから図3C参照)により形成される面に対して対称に形成されている。
第1エネルギ出力部62は、例えば抵抗加熱ヒータ等の第1発熱部72と、第1発熱部72で発熱させた熱を生体組織に伝熱する第1伝熱板82とを有する。第2エネルギ出力部64は、例えば抵抗加熱ヒータ等の第2発熱部74と、第2発熱部74で発熱させた熱を生体組織に伝熱する第2伝熱板84とを有する。
図3Aに示すように、第1ジョー52は、先端部52a及び基端部52bにより規定される長手軸(長手方向)Yと、長手軸Yに対して直交する方向に規定される幅方向Xとを有する。第1ジョー52は、挿入部44の長手方向Yに沿った方向に長く、長手方向Yに直交する幅方向Xが長手方向Yよりも小さい、略平板状に形成されている。第2ジョー54は、第1ジョー52と対称又は略対称に形成されている。第1及び第2ジョー52,54は公知の機構により操作部46の開閉レバー46aの操作により開閉される。すなわち、開閉レバー46aが操作されると、例えば挿入部44の内部に配置されたワイヤやロッド等の公知の手段により第1及び第2ジョー52,54が図3B及び図3Cに示すZ方向に開閉される。なお、第1及び第2ジョー52,54は公知の機構により、操作部46の開閉レバー46aの操作により片方だけが動くようにしても良いし、両方が動くようにしても良い。すなわち第1及び第2ジョー52,54は相対的に開閉可能である。
第1及び第2ジョー52,54は例えばセラミックや耐熱性及び電気絶縁性を有する樹脂、更には絶縁処理された金属材等が適宜に用いられる。また、第1及び第2ジョー52,54は断熱性を有する素材が用いられることが好ましい。
エネルギ出力回路24は、処置具12の第1及び第2エネルギ出力部62,64の表面温度を制御することが可能である。具体的には、エネルギ出力回路24から第1及び第2発熱部72,74にエネルギを付加して第1及び第2発熱部72,74を発熱させ、その熱(熱エネルギ)を第1及び第2伝熱板82,84に伝熱したとき、第1及び第2伝熱板82,84の表面(生体組織保持面)の温度を制御することが可能である。そして、第1及び第2伝熱板82,84の表面を通して処置対象の生体組織L1,L2に熱(熱エネルギ)を伝熱することにより、生体組織L1,L2を脱水する。すなわち、この実施の形態に係る処置具12は、コントローラ14による制御により、第1エネルギ出力部62及び第2エネルギ出力部64から熱エネルギを出力可能である。そして、第1エネルギ出力部62及び第2エネルギ出力部64から生体組織Lに熱エネルギを作用させて生体組織Lの処置を行う。
第1及び第2発熱部72,74は複数の発熱素子(マイクロヒータ)を用いても良く、また、プレート状のヒータを用いても良い。第1及び第2発熱部72,74が複数の発熱素子であれば第1及び第2伝熱板82,84の裏面に配置あるいは埋設され、プレート状のヒータであれば第1及び第2伝熱板82,84の裏面に配置されることが好ましい。第1及び第2発熱部72,74は第1及び第2伝熱板82,84の長手方向Yや長手方向Yに直交する方向(幅方向X)に長いバー形状を有することも好適である。
第1及び第2伝熱板82,84は、例えばステンレス合金等の金属材や、例えば窒化ケイ素等のファインセラミックス等の熱伝導性が良好な素材が用いられる。図3B及び図3Cに示すように、第1及び第2伝熱板82,84同士は互いに対向し、処置対象の生体組織Lの保持面(把持面)として用いられる。
なお、図3Cは、図3B中の第1ジョー52、第1及び第2発熱部72,74を省略して示す。一方、後述する第1及び第3作用領域82a,84aを図3Bに対して詳細に示している。
図3Aから図3Cに示すように、第1エネルギ出力部62の第1伝熱板82は、その幅方向(X方向)中央の第1作用領域(保持面)82aと、第1作用領域82aの周囲(幅方向Xの端部)に配置される1対の第2作用領域(保持面)82bとを有する。すなわち、第1作用領域82aは、幅方向Xに沿って1対の第2作用領域82bに挟まれている。第1及び第2作用領域82a,82bは幅方向Xに沿って連続している。第1作用領域82aは、1対の第2作用領域82bよりも第2伝熱板84、すなわち第2エネルギ出力部64に向かって突出している。
第2伝熱板84は、その幅方向中央の第3作用領域(保持面)84aと、第3作用領域84aの周囲に配置される第4作用領域(保持面)84bとを有する。すなわち、第3作用領域84aは、幅方向Xに沿って1対の第4作用領域84bに挟まれている。第3及び第4作用領域84a,84bは幅方向Xに沿って連続している。第3作用領域84aは、1対の第4作用領域84bよりも第1伝熱板82、すなわち第1エネルギ出力部62に向かって突出している。
図3Bに示すように、この実施形態では、第1発熱部72は、幅方向中央の第1作用領域82aに配置される第1発熱体72aと、第1作用領域82aの周囲の第2作用領域82bに配置される1対の第2発熱体72bとを有する。第1発熱体72a及び1対の第2発熱体72bは長手軸Yに沿って複数組が配置されていることも好適である。ここで、第1発熱体72aは、フットスイッチ16のペダル16aが押圧された状態で、コントローラ14により、第1伝熱板82の第1作用領域82aの頂部92cの表面(把持面)が例えば時間t1(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略280℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。1対の第2発熱体72bは、フットスイッチ16のペダル16aが押圧された状態で、コントローラ14により、第1伝熱板82の第2作用領域82bの表面が例えば時間t2(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略200℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。なお、第1発熱体72a及び1対の第2発熱体72bは同時に昇温し始める。
第2発熱部74は、幅方向中央の第3作用領域84aに配置される第3発熱体74aと、第3作用領域84aの周囲の第4作用領域84bに配置される1対の第4発熱体74bとを有する。ここで、第3発熱体74aは、フットスイッチ16のペダル16aが押圧された状態で、コントローラ14により、第2伝熱板84の第3作用領域84aの頂部94cの表面(把持面)が例えば時間t1(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略280℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。1対の第4発熱体74bは、フットスイッチ16のペダル16aが押圧された状態で、コントローラ14により、第2伝熱板84の第4作用領域84bの表面が例えば時間t2(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略200℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。なお、第3発熱体74a及び1対の第4発熱体74bは同時に昇温し始める。
なお、第1から第4発熱体72a,72b,74a,74bは同時に昇温し始めることが好適である。
図3B及び図3Cに示すように、この実施形態では、第1及び第3作用領域82a,84aはそれぞれステップ状に形成されている。第1作用領域82aは幅方向Xに複数のステップ92を有する。図3Cに示すように、第1作用領域82aのステップ92は、対向する第2伝熱板84に向けられた複数の第1対向面92aと、第1対向面92aに対して直交し第2作用領域82b、すなわち、処置部42の幅方向Xの外側に向けられた複数の第1立設面92bとを有する。第1対向面92aと第1立設面92bとは隣接しており、第1立設面92bにより幅方向Xの略中央に向かうにつれて、第1対向面92aを第2伝熱板84に近づけている。特に、第1処置部42aの幅方向Xの略中央の第1作用領域82aは、その幅方向Xの略中央(第1作用領域82aの中央)で、第2伝熱板84に最も近接する頂部92cを有する。すなわち、第1作用領域82aは、第2作用領域82bよりも第2エネルギ出力部64に向かって突出している。なお、これら第1対向面92a、第1立設面92b及び頂部92cで第1作用領域82aの生体組織保持面を形成する。
ここでは、説明の便宜のため、第1対向面92aと第1立設面92bとが直交するものとして説明するが、ステップ状に形成されていれば、必ずしも第1対向面92aと第1立設面92bとが互いに直交している必要はない。
第3作用領域84aは幅方向Xに複数のステップ94を有する。第3作用領域84aのステップ94は、第1伝熱板82に向けられた第2対向面94aと、第2対向面94aに対して直交し第4作用領域84b、すなわち、処置部42の幅方向Xの外側に向けられた複数の第2立設面94bとを有する。第2対向面94aと第2立設面94bとは隣接しており、第2立設面94bにより幅方向Xの略中央に向かうにつれて、第2対向面94aを第1伝熱板82に近づけている。特に、第2処置部42bの幅方向Xの略中央の第3作用領域84aは、その幅方向Xの略中央(第3作用領域84aの略中央)で、第1伝熱板82に最も近接する頂部94cを有する。すなわち、第3作用領域84aは、第4作用領域84bよりも第1エネルギ出力部62に向かって突出している。なお、これら第2対向面94a、第2立設面94b及び頂部94cで第3作用領域84aの生体組織保持面を形成する。
ここでは、説明の便宜のため、第2対向面94aと第2立設面94bとが直交するものとして説明するが、ステップ状に形成されていれば、必ずしも第2対向面94aと第2立設面94bとが互いに直交している必要はない。
第1及び第2対向面92a,94aの幅方向Xの長さ(幅)は例えば略0.3mm程度であり、第1及び第2立設面92b,94bの高さは例えば略0.3mm程度であることが好適であるが、適宜に設定可能である。すなわち、第1及び第2対向面92a,94aの幅よりも第1及び第2立設面92b,94bの高さを大きくしても良く、第1及び第2対向面92a,94aの幅よりも第1及び第2立設面92b,94bの高さを小さくしても良い。
第2作用領域82bは、第2伝熱板84に向けられた生体組織保持面として機能する。すなわち、1対の第2作用領域82bは、生体組織をそれぞれ保持する1対の保持面として機能する。第4作用領域84bは、第1伝熱板82に向けられた生体組織保持面として機能する。すなわち、1対の第4作用領域84bは、生体組織をそれぞれ保持する1対の保持面として機能する。これら第2及び第4作用領域82b,84bは互いに平行に向かい合っていることが好適である。
第1及び第2作用領域82a,82bの幅方向Xの幅を比較した場合、第1作用領域82aの幅方向Xの幅よりも、1対の第2作用領域82bを合わせた幅方向Xの幅の方が大きいことが好適である。
次に、この実施形態に係る処置システム10の作用について説明する。
操作部46を片手で把持しながら、接合及び切断対象の生体組織L(L1,L2)に対して処置部42を対峙させる。接合及び切断対象の生体組織L(L1,L2)が管孔内にあれば、処置部42及び挿入部44を管孔内に挿入して、接合及び切断対象の生体組織L(L1,L2)に対して処置部42を対峙させる。
開閉レバー46aを操作して、1対のジョー52,54を開く。そして、ジョー52,54を閉じて、図3A及び図3Bに示すように第1及び第2伝熱板82,84間に処置対象の生体組織L1,L2を保持する。
このとき、第1エネルギ出力部62の第1伝熱板82の第1作用領域82aと、第2エネルギ出力部64の第2伝熱板84の第3作用領域84aとの間の距離は、第1エネルギ出力部62の第1伝熱板82の第2作用領域82bと、第2エネルギ出力部64の第2伝熱板84の第4作用領域84bとの間の距離よりも小さい。そして、第1及び第3作用領域82a,84aの第1及び第2対向面92a,94aは、ジョー52,54の開閉方向と同じ方向にある。このため、生体組織L1,L2の境界には、第1及び第2伝熱板82,84の表面の第1及び第2対向面92a,94a間により押圧力が加えられる。第1伝熱板82に対して、第2伝熱板84の第3作用領域84aが近接し、第4作用領域84bが第3作用領域84aよりも離間する。第2伝熱板84に対して、第1伝熱板82の第1作用領域82aが近接し、第1作用領域82aよりも第2作用領域82bが離間する。このため、特に第1作用領域82aの頂部92c及び第3作用領域84aの頂部94cとの間、及び、その近傍で生体組織L1,L2の境界に最も大きな押圧力が加えられる。このため、生体組織L1,L2を把持する把持力を、処置部42の幅方向Xの中央側ほど、幅方向外側に比べて大きくすることができる。したがって、生体組織L1,L2同士の境界は、処置部42の幅方向Xの中央側ほど、幅方向Xの外側に比べて密着している。
第2及び第4作用領域82b,84bは、ジョー52,54の開閉方向と同じ方向にある。このため、生体組織L1,L2の境界は、第1及び第2伝熱板82,84の表面の対向面92,94間により押圧力が加えられる。そして、特に第1作用領域82aの頂部92c及び第3作用領域84aの頂部94c及びその近傍で生体組織L1,L2の境界に最も大きな押圧力が加えられる。
ここで、コントローラ14は、第1及び第2エネルギ出力部62,64の間に生体組織を保持した状態で、生体組織のうち第1作用領域82aと第2エネルギ出力部64との間の生体組織を除去する温度に第1作用領域82a及び第2エネルギ出力部64を制御する。また、コントローラ14は、第1及び第2エネルギ出力部62,64の間に生体組織を保持した状態で、生体組織のうち第2作用領域82bと第2エネルギ出力部64との間の生体組織を接合する温度に第2作用領域82b及び第2エネルギ出力部64を制御する。
第1伝熱板82の第1作用領域82a、第2伝熱板84の第3作用領域84aの頂部92c,94cの表面温度は略280℃に制御される。このため、頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2の外表面は280℃に加熱される。頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2の境界は、略280℃程度まで加熱される。このため、頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2の境界は表面温度が280℃の伝熱板82,84により炭化して分解、すなわち焼灼により切開される。言い換えると、頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2は、頂部92c,94c間の生体組織自体にエネルギが入力されることにより除去される。
なお、頂部92c,94cの表面温度が略280℃に制御されるため、頂部92c,94c間に挟持された生体組織の近傍の生体組織は、表面温度が280℃の伝熱板82,84からの伝熱により炭化して分解、すなわち焼灼により切開される。言い換えると、頂部92c,94c間に挟持された生体組織の近傍の生体組織は、頂部92c,94c間の生体組織にエネルギが入力されることにより除去される。除去される範囲は入力されるエネルギの大きさや生体組織の成分等により変更される。
頂部92c,94c間に挟持された生体組織から幅方向Xに沿って離れるにつれて、互いに対向する第1及び第2対向面92a,94a間の距離が遠くなる。このため、頂部92c,94cから幅方向Xに沿って離れるにつれて、互いに対向する第1及び第2対向面92a,94aの生体組織の挟持圧力が徐々に弱められる。したがって、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94cから幅方向Xに沿って離れるにつれて、頂部92c,94c間の生体組織L1,L2よりも、生体組織L1,L2間の密着力が低下する。したがって、頂部92c,94c間に挟持された生体組織から幅方向Xに離れるにつれて、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間に挟持された生体組織の境界の温度(例えば280℃)までは、温度が上昇しない。このため、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間に挟持された生体組織から離れるにつれて、生体組織L1,L2の境界は接合される温度まで上昇するが、炭化される温度、すなわち分解する温度までは至らなくなってくる。
また、第1対向面92aと第1立設面92bとの境界部分、第1対向面92aと第2立設面94bとの境界部分は、頂部92c,94cから幅方向Xに沿って離れるにつれて生体組織に接触し難くなる。このため、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、伝熱板82,84から生体組織に直接的には熱が伝えられ難い部分が生じる。したがって、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94cから幅方向Xに離れるにつれて、生体組織が分解に至る温度まで加熱されることが防止される。
このように、頂部(幅方向中央)92c,94cから幅方向に離れるにつれて、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても生体組織L1,L2の境界部分が接合温度を超えて分解温度に到達することが防止される。したがって、頂部(幅方向中央)92c,94cから幅方向に離れた位置で、第1及び第3作用領域82a,84a間の生体組織L1,L2の境界を、接合状態(凝固状態)にすることができる。
第2及び第4作用領域82b,84bの第3及び第4対向面92,94では、頂部92c,94cから幅方向Xに離された位置で生体組織の外表面の温度を略200℃に加熱する。このとき、第2及び第4作用領域82b,84bの第3及び第4対向面92,94は互いに対向する平面状であるので、生体組織の外表面が密着し、生体組織同士の接合面は略200℃程度まで加熱される。このため、第2及び第4作用領域82b,84bは、生体組織L1,L2同士を接合に適した温度に加熱することができる。
したがって、この実施形態に係る処置システム10によれば、第1及び第3作用領域82a,84aの頂部92c,94c間及びその近傍では生体組織を分解させて、生体組織を切断したのと同様の状態に加熱することができる。一方、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間から幅方向Xに沿って離れるにつれて、また、第2及び第4作用領域82b,84b間では、生体組織同士を密着させた状態で生体組織L1,L2の境界を接合に適した温度に加熱することができる。第1及び第3作用領域82a,84aを頂部92c,94cを頂点とする階段状にすることで、生体組織の分解、すなわち切断と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。このとき、生体組織の接合領域Sを、第2及び第4作用領域82b,84b間の生体組織だけでなく、第2及び第4作用領域82b,84b間の生体組織に連続した第1及び第3作用領域82a,84a間の生体組織の一部にも拡大させることができる。したがって、幅方向Xに広い範囲に生体組織同士を接合することができる。もちろん、幅方向Xだけでなく、軸方向Yに広い範囲にも生体組織同士を接合している。このため、この実施形態に係る処置システム10によれば、生体組織同士を接合させるのに強い接合力を発揮させることができる。
なお、生体組織にエネルギを付加してその生体組織を処置する処置具12は、特に第1及び第3作用領域82a,84aの頂部92c,94c間の押圧力を、頂部92c,94cから離れた位置の押圧力、並びに、第2及び第4作用領域82b,84b間の押圧力よりも高くしている。このため、生体組織のうち特に第1及び第3作用領域82a,84aの頂部92c,94c間の切断する部位に効率的にエネルギを付加することができる。したがって、この処置具12は、処置対象の生体組織を切断するのに効率的であり、かつ、切断部の周囲の生体組織の接合面積を大きくすることができる。
なお、図3A及び図3B中、接合領域Sの一部を伝熱板82,84の幅方向Xの端部よりも外側に位置するように描いたが、接合領域Sは処置部42の幅方向Xの端部よりも内側にあることも好適である。この場合、生体組織に熱の影響を与える範囲を規定することができる。例えば、第1ジョー52の縁部を第2作用領域82bよりも第2ジョー54の縁部に近接させ、第2ジョー54の縁部を第4作用領域84bよりも第1ジョー52の縁部に近接させると、第2及び第4作用領域82b,84bのうち、幅方向Xの外側近傍の押圧力が弱められ生体組織同士の密着力を低下させることができる。このため、第1及び第2ジョー52,54の外縁よりも外側の生体組織同士の密着を防止し、接合面の範囲を第1及び第2ジョー52,54の外縁よりも内側にすることができる。
なお、この実施形態では図3Aに示すように、第1エネルギ出力部62が抵抗加熱ヒータ等の第1発熱部72(第1発熱体72a及び1対の第2発熱体72b)を用いる例について説明したが、幅方向Xに沿って異なる温度に制御可能な1つ又は複数の面状ヒータを用いても良い。
また、この実施形態では、伝熱板82,84を加熱するのにヒータ等の発熱部72,74を用いる例について説明したが、光や高周波電極等、生体組織に付加する温度を制御することが可能であれば、ヒータに限られない。これは、後述する実施形態についても同様である。また、生体組織を処置する際、発熱部72,74による熱エネルギ、光エネルギ、高周波エネルギを適宜に組み合わせても良いことはもちろんである。
なお、この実施形態では、処置具12に挿入部44を有する例について説明したが、図4に示す処置具12aのように、挿入部44は必ずしも必要ではない。
次に、第2実施形態について図5A及び図5Bを用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図5A及び図5Bに示すように、この実施形態に係る第1エネルギ出力部62の第1作用領域82aは、ステップ状ではなく、幅方向(X方向)中央の頂部92cから幅方向Xの外側の第2作用領域82bに向かって傾斜したなだらかな斜面92dとして形成されている。同様に、第2エネルギ出力部64の第3作用領域84aはステップ状ではなく、幅方向(X方向)中央の頂部94cから幅方向Xの第4作用領域84bに向かって傾斜したなだらかな斜面94dとして形成されている。
第1及び第3作用領域82a,84a間に生体組織L1,L2を把持したとき、頂部92c,94cから幅方向Xに外れた位置では、上下方向(Z方向)から掛かる圧力とは異なる方向(組織把持面に対して垂直方向)に押圧力が付加される。このとき、頂部92c,94cを除く第1及び第3作用領域82a,84a間で生体組織を保持したとき、第1実施形態で説明したように、上下方向(Z方向)から押圧力が付加されるよりも、弱い押圧力が付加される。
頂部92c,94c間の生体組織の保持力は他の部位に比べて大きい。また、生体組織を処置するとき、頂部92c,94c及びその近傍の温度は略280℃まで上昇するように制御される。したがって、頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2は表面温度が280℃の伝熱板82,84により分解、すなわち焼灼により切開される。このため、頂部92c,94c間に挟持された生体組織L1,L2はエネルギが入力されることにより除去される。
頂部92c,94c間に挟持された生体組織から幅方向Xに沿って離れるにつれて、斜面92d,94d間の距離が遠くなる。また、上述したように、生体組織L1,L2への押圧力は斜面92d,94dに垂直な方向に負荷されるため、頂部92c,94cから幅方向Xに沿って離れるにつれて生体組織の挟持圧力が徐々に弱められる。したがって、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間から幅方向Xに沿って外れた位置では、生体組織L1,L2間の密着力も低下する。したがって、頂部92c,94c間に挟持された生体組織から幅方向Xに沿って離れるにつれて、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間に挟持された生体組織の温度(例えば280℃)までは、温度が上昇し難い。このため、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても、頂部92c,94c間に挟持された生体組織から幅方向Xに沿って離れるにつれて、生体組織L1,L2間は接合されるが、分解、すなわち除去までは至らなくなってくる。
このように、頂部92c,94cから離れるにつれて、第1及び第3作用領域82a,84a間であっても生体組織が接合温度を超えて分解温度に到達することが防止される。したがって、第1及び第3作用領域82a,84a間の生体組織を、接合状態(凝固状態)にすることができる。
第2及び第4作用領域82b,84bは、第1実施形態で説明したように、生体組織L1,L2同士を接合に適した温度に加熱することができる。
第1及び第3作用領域82a,84aを頂部92c,94cを頂点とする斜面92d,94dに形成することで、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。このとき、生体組織の接合領域Sを、第2及び第4作用領域82b,84b間の生体組織だけでなく、第2及び第4作用領域82b,84b間の生体組織に連続した第1及び第3作用領域82a,84a間の生体組織の一部にも拡大させることができる。したがって、幅方向Xに広い範囲の生体組織同士を接合することができる。もちろん、軸方向Yに広い範囲に生体組織同士を接合している。このため、この実施形態に係る処置システム10によれば、生体組織同士を接合させるのに強い接合力を発揮させることができる。
次に、第3実施形態について図6を用いて説明する。この実施形態は第1及び第2実施形態の変形例であって、第1及び第2実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図6に示すように、第1エネルギ出力部62の第1作用領域82a及び第2エネルギ出力部64の第3作用領域84aは、横断面がそれぞれ略台形状に形成されている。すなわち、第1及び第3作用領域82a,84aは互いに対向する平面状部分92e,94eを有する。第2作用領域82bに対する第1作用領域82aの平面状部分92e、第4作用領域84bに対する第3作用領域84aの平面状部分94eの突出高さを適宜に調整することにより、第1及び第3作用領域82a,84a間の生体組織L1,L2の保持圧力を、第2及び第4作用領域82b,84b間(幅方向Xの中央よりも外側)に比べて高くすることができる。
なお、第1及び第3作用領域82a,84aの互いに対向する平面状部分92e,94eの幅方向Xの長さを調整することにより、切断領域を容易に調整することができる。すなわち、この実施形態に係る処置具12によれば、生体組織同士の幅方向の接合領域は第1及び第2実施形態で説明した状態よりも小さくなり得るが、第1及び第3作用領域82a,84aの幅方向Xの長さの調整(平面状部分92e,94eの幅の調整)によって、切断領域の幅方向Xの長さ及び接合領域の幅方向Xの長さを適宜に設定することができる。
したがって、第1及び第3作用領域82a,84aを平面状部分92e,94eを有する略台形状にすることで、第1及び第2実施形態で説明したのと同様に、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
次に、第4実施形態について図7を用いて説明する。この実施形態は第1から第3実施形態の変形例であって、第1から第3実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。この実施形態は特に第3実施形態の変形例である。
図7に示すように、第1エネルギ出力部62の伝熱板82は第3実施形態の伝熱板82と同様に形成されている。この実施形態では、第2エネルギ出力部64の伝熱板84の第3作用領域84aは、第4作用領域84bと面一の平面状に形成されている。このとき、第2エネルギ出力部64の伝熱板84の幅方向Xの中央は、略280℃に制御され、第2及び第4作用領域82b,84b間(幅方向Xの中央よりも外側)は略200℃に制御される。そして、第1エネルギ出力部62の伝熱板82の第1作用領域82aの、第2エネルギ出力部64の伝熱板84に向かう突出量により、生体組織を把持する際の押圧力を調整することができる。
したがって、第1作用領域82aを平面状部分92eを有する略台形状にし、第3作用領域84aを第4作用領域84bと面一の平面上に形成し、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
次に、第5実施形態について図8を用いて説明する。この実施形態は第1から第4実施形態の変形例であって、第1から第4実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。この実施形態は特に第3及び第4実施形態の変形例である。
図8に示すように、第1エネルギ出力部62の第1作用領域82aは、横断面が略三角形状に形成されている。第2エネルギ出力部64の伝熱板84の第3作用領域84aは、第4実施形態と同様に第4作用領域84bと面一の平面状に形成されている。
このため、第1エネルギ出力部62の伝熱板82の第1作用領域82aの、第2エネルギ出力部64の伝熱板84に向かう突出量により、生体組織を把持する際の押圧力を調整することができる。
ここで、第1作用領域82aの横断面は略三角形として描いたが、第1実施形態で説明した第1作用領域82aと同じ形状(図3B及び図3C参照)、又は、第2実施形態で説明した第1作用領域82aと同じ形状(図5A及び図5B参照)であることも好適である。
したがって、第1作用領域82aを頂部92cを有する略三角形状にし、第3作用領域84aを第4作用領域84bと面一の平面上に形成し、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
次に、第6実施形態について図9Aから図9Eを用いて説明する。この実施形態は第1から第5実施形態の変形例であって、第1から第5実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図9Aから図9Eに示すように、第1エネルギ出力部62の第1作用領域82aは、この実施形態では長手軸Yに沿って延出され、第2作用領域82bよりも第2エネルギ出力部64に向かって突出した帯状体102を有する。そして、第1作用領域82aは、さらに、帯状体102よりも第2エネルギ出力部64に向かって突出した複数の凸部104を有する。
図9A及び図9Cに示すように、第2エネルギ出力部64の第3作用領域84aは、長手軸Yに沿って延出され、第4作用領域84bよりも第1エネルギ出力部62に向かって突出している複数の帯状凸部112a,112b,112cを有する。複数の帯状凸部112a,112b,112cは同軸上に配置されている。隣接する帯状凸部112a,112b,112c同士の間は、第3作用領域84aは第4作用領域84bと面一である。すなわち、第3作用領域84aは、不連続部114a,114bを有する。そして、不連続部114a,114bは、第1作用領域82aの凸部104に対向し、凸部104が配設される。このため、図9Bから図9Eに示すように、1対のジョー52,54を閉じたとき、凸部104は不連続部114a,114bに収容される。
ここで、生体組織Lは、凸部104と不連続部114a,114bとの間でより高い圧力を受ける。このため、生体組織が高温化し易く、容易に切断される。一方、第2作用領域82b及び第4作用領域84bは、平面状であるので、生体組織を一定の圧力で保持して接合に寄与する。
このため、この実施形態に係る処置システム10においても、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
さらに、凸部104と不連続部114a,114bが、生体組織Lに対して“くさび状”に圧力を加えることによって、エネルギ処置中の生体組織Lのずれを防止することができる。
次に、第7実施形態について図10を用いて説明する。この実施形態は第1から第6実施形態の変形例であって、第1から第6実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図10に示すように、第1作用領域82aは、長手軸に沿って凸部122及び凹部124が順に滑らかに連続した波型に形成されている。図示しないが、第3作用領域84aは、長手軸に沿って、凸部122に対向する凹部、凹部124に対向する凸部が形成されている。このため、第1及び第3作用領域82a,84aに、生体組織を第2及び第4作用領域82b,84b間よりも生体組織を高い押圧力で保持する部分を形成して、生体組織を容易に切断することができる。
このため、この実施形態に係る処置システム10においても、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
次に、第8実施形態について図11を用いて説明する。この実施形態は第1から第7実施形態の変形例であって、第1から第7実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図11に示すように、第1作用領域82aは、この実施形態では幅方向に3列に形成されている。第1作用領域82aには、長手軸Yに沿って、複数の突起(凸部)132が配置されている。第1作用領域82aには、さらに、長手軸Yから幅方向Xにそれぞれずらして、長手軸Yに平行に、複数の突起134が配置されている。すなわち、第1作用領域82aの複数の凸部は、長手軸Yに沿って複数列に整列している。
このため、第1及び第3作用領域82a,84a間に、生体組織を第2及び第4作用領域82b,84b間よりも生体組織を高い押圧力で保持する部分を形成して、生体組織を容易に切断することができる。
このため、この実施形態に係る処置システム10においても、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。
次に、第9実施形態について図12及び図13を用いて説明する。この実施形態は第1から第8実施形態の変形例であって、第1から第8実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
図12に示すように、この実施形態に係る処置具12bは、サーキュラタイプである。処置具12bは、生体組織Lを処置する処置部242と、シャフト244と、操作部246とを有する。操作部246には、ケーブル18aを介してコントローラ14が接続されている。
シャフト244は、円筒状に形成されている。このシャフト244は、生体組織への挿入性を考慮して、適度に湾曲されている。もちろん、シャフト244が真っ直ぐに形成されていることも好適である。
シャフト244の先端には、処置部242が配設されている。処置部242は、シャフト244の先端に形成された第1処置部(本体側処置部)242aと、この第1処置部242aに離脱可能な第2処置部(離脱側処置部)242bとを備えている。
図13に示すように、第1処置部242aは、本体側保持部(第1保持部)252と、第1エネルギ出力部262とを有する。第2処置部242bは、離脱側保持部(第2保持部)254と、第2エネルギ出力部264とを有する。
本体側保持部252及び離脱側保持部254は断熱部材で形成されている。本体側保持部252は、第1エネルギ出力部262が内側に収容されるリング状に形成されている。離脱側保持部254は第2エネルギ出力部264が内側に収容されるキャップ状に形成されている。本体側保持部252は、シャフト244の先端に一体化され、中心軸Cと、中心軸Cに対して直交する径方向Rとを有する。離脱側保持部254は、中心軸Cと、中心軸Cに対して直交する径方向Rとを有する。
第1エネルギ出力部262は、例えば抵抗加熱ヒータ等の第1発熱部272と、第1発熱部272で発熱させた熱を生体組織に伝熱する第1伝熱板282とを有する。第2エネルギ出力部264は、例えば抵抗加熱ヒータ等の第2発熱部274と、第2発熱部274で発熱させた熱を生体組織に伝熱する第2伝熱板284とを有する。第1処置部242aの第1伝熱板282及び第2処置部242bの第2伝熱板284は、第1処置部242aの第1伝熱板282の中心軸Cに固定された位置決めピン242cにより、第2処置部242bの第2伝熱板284をその中心軸C上に配置された位置決め凹部242dに位置決めされた状態で連結可能である。位置決めピン242cは少なくとも280℃を超える温度に耐える耐熱性を有する樹脂材や、良熱伝導性を有する金属材が用いられる。位置決めピン242cが良熱伝導性を有する金属材で形成されていれば、第1伝熱板282から第2伝熱板284に熱を伝熱することができ、また、第2伝熱板284から第1伝熱板282に熱を伝熱することができる。
なお、フットスイッチ16のペダル16aが押圧されると、エネルギ出力回路24から第1及び第2エネルギ出力部262,264にそれぞれエネルギが同時に出力される。
第1及び第2伝熱板282,284は、例えばステンレス合金等の金属材や、例えば窒化ケイ素等のファインセラミックス等の熱伝導性が良好な素材が用いられる。図13に示すように、第1及び第2伝熱板282,284同士は互いに対向し、処置対象の生体組織Lの保持面(把持面)として用いられる。第1伝熱板282は、中心軸C及びその近傍の第1作用領域282aと、第1作用領域282aの外周(径方向外方)に配置される第2作用領域282bとを有する。第1及び第2作用領域282a,282bは径方向に連続している。第2伝熱板284は、中心軸C及びその近傍の第3作用領域284aと、第3作用領域284aの外周(径方向外方)に配置される第4作用領域284bとを有する。第3及び第4作用領域284a,284bは径方向に連続している。
この実施形態では、第1発熱部272は面状である。ここで、コントローラ14により、第1伝熱板282の第1作用領域282aの表面(把持面)が例えば時間t1(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略280℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。また、コントローラ14により、第1伝熱板282の第2作用領域282bの表面が例えば時間t2(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略200℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。
第2発熱部274は、第1発熱部272と同様に面状である。ここで、コントローラ14により、第2伝熱板284の第3作用領域284aの表面(把持面)が例えば時間t1(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略280℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。また、コントローラ14により、第2伝熱板284の第4作用領域284bの表面が例えば時間t2(例えば数十秒から数分等の任意の時間)時間t1(例えば数十秒から数分等の任意の時間)で略200℃に昇温され、その温度が維持されるように制御される。
図13に示すように、この実施形態では、第1作用領域282aは、その中心軸C上に、第2作用領域282bよりも第2伝熱板284に近接する凸部292を有する。第3作用領域284aは、その中心軸C上に、第4作用領域284bよりも第1伝熱板282に近接する凸部294を有する。凸部292,294には、第1及び第2伝熱板282,284同士を連結する位置決めピン242cが配置され、両者を連結している。なお、凸部292,294の頂部292a,294aの面積は、第2及び第4作用領域282b,284bに比べて十分に小さい。
次に、この実施形態に係る処置システム10の作用について説明する。
離脱側処置部242bの位置決め凹部242dに対して、位置決めピン242cを支持した本体側処置部242aを近接させる。そして、本体側処置部242aの位置決めピン242cの端部(本体側処置部242aに対する遠位端部)を位置決め凹部242dに嵌合して、離脱側処置部242bを本体側処置部242aに位置決めして連結する。そして、図13に示すように第1及び第2伝熱板282,284間に処置対象の生体組織L1,L2を保持する。
このとき、第1エネルギ出力部262の第1伝熱板282の第1作用領域282aと、第2エネルギ出力部264の第2伝熱板284の第3作用領域284aとの間の距離、すなわち凸部292,294間の距離は、第1エネルギ出力部262の第1伝熱板282の第2作用領域282bと、第2エネルギ出力部264の第2伝熱板284の第4作用領域284bとの間の距離よりも小さい。このため、生体組織には、特に第1及び第3作用領域282a,284aの凸部292,294間で生体組織L1,L2に最も大きな押圧力が加えられ、第2及び第4作用領域282b,284bの間の押圧力はそれよりも低い。このため、生体組織L1,L2を把持する把持力を、処置部242の中心軸Cに近接する位置ほど、径方向外側に比べて大きくすることができる。したがって、生体組織L1,L2同士は、処置部242の径方向の中心軸Cに近接する位置ほど、幅方向外側に比べて密着力が高い。
ここで、第1伝熱板282の第1作用領域282aの凸部292、第2伝熱板284の第3作用領域284aの凸部294の表面温度はそれぞれ略280℃に制御される。このため、第1及び第3作用領域282a,284a間に挟持された生体組織L1,L2の外表面は280℃に加熱される。そして、第1及び第3作用領域282a,284a間に挟持された生体組織L1,L2の境界は、略280℃程度まで加熱される。このため、第1及び第3作用領域282a,284a間に挟持された生体組織L1,L2は表面温度が280℃の伝熱板282,284により分解、すなわち焼灼により切開される。したがって、第1及び第3作用領域282a,284aは、生体組織L1,L2を、中心軸Cを中心として円形状に切断(除去)したのと同様の状態にすることができる。
第2及び第4作用領域282b,284b間は、第1及び第3作用領域282a,284aから離された位置で生体組織の外表面の温度を略200℃に加熱する。このとき、第2及び第4作用領域282b,284bは互いに対向する平面状であるので、生体組織の外表面が第2及び第4作用領域282b,284bに密着し、生体組織同士の境界は略200℃程度まで加熱される。このため、第2及び第4作用領域282b,284bは、生体組織L1,L2同士を接合に適した温度に加熱することができる。
したがって、この実施形態に係る処置システム10によれば、第1及び第3作用領域282a,284a間では生体組織を分解させて、生体組織を切断したのと同様の状態に加熱することができる。一方、第2及び第4作用領域282b,284b間では、生体組織同士を接合する状態に加熱することができる。このため、この実施形態に係る処置システム10によれば、生体組織の分解、すなわち切断(除去)と、接合とを1回のエネルギ出力で行うことができる。したがって、中心軸Cよりも外側の径方向Rに沿って、環状の広い範囲に生体組織同士を接合することができる。このため、この実施形態に係る処置システム10によれば、生体組織同士を接合させるのに強い接合力を発揮させることができる。
なお、この実施形態では、第1及び第2エネルギ出力部262,264の中心軸Cの近傍に筒状の凸部292,294を有する例について説明したが、第1実施形態で説明した階段状(図3Aから図3C参照)、第2実施形態で説明したなだらかな斜面(図5A及び図5B参照)、更には、第5実施形態で説明した円錐形(図8参照)等を適宜に用いることができる。また、本体側処置部242aに離脱側処置部242bに向かって突出する第1作用領域282aを形成し、離脱側処置部242bの伝熱板284の表面は平面であることも好適である。その反対に、離脱側処置部242bに本体側処置部242aに向かって突出する第3作用領域284aを形成し、本体側処置部242aの伝熱板282の表面は平面であることも好適である。
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。

Claims (12)

  1. 生体組織にエネルギを付加してその生体組織を処置する処置具であって、
    相対的に開閉可能で前記生体組織を保持可能な1対の保持部と、
    前記1対の保持部のうちの一方の保持部に設けられ、前記エネルギが付加されたときに処置対象の生体組織を切開するように作用する第1作用領域と、前記第1作用領域の周囲に配置され前記処置対象の生体組織を接合するように作用する第2作用領域とを有する第1エネルギ出力部と、
    前記1対の保持部のうちの他方の保持部に前記第1エネルギ出力部に対向するように設けられ、前記第1エネルギ出力部の前記第1作用領域に対向する第3作用領域と、前記第1エネルギ出力部の前記第2作用領域に対向する第4作用領域とを有し、生体組織にエネルギを付加可能な第2エネルギ出力部と
    を具備し、
    前記第1作用領域は、前記第2作用領域よりも前記第2エネルギ出力部に向かって突出し、
    前記第3作用領域は、前記第4作用領域よりも前記第1エネルギ出力部に向かって突出し、
    前記第1エネルギ出力部の前記第1作用領域及び前記第2エネルギ出力部の前記第3作用領域は、前記1対の保持部の長手方向の軸線に対して直交方向に規定される幅方向において、前記第1エネルギ出力部及び前記第2エネルギ出力部が互いに対向する複数の対向面と、前記対向面に対して立設する複数の立設面とで形成された複数のステップをそれぞれ有する、処置具。
  2. 前記第2作用領域は、前記生体組織を保持する1対の保持面を有し、
    前記第1作用領域は、前記1対の保持面の間に挟まれるように配置されている、請求項1に記載の処置具。
  3. 前記第3作用領域は前記第4作用領域と面一の不連続部を有し、
    前記第1作用領域は、前記第2エネルギ出力部の前記不連続部に向かって突出した複数の凸部を有する、請求項1に記載の処置具。
  4. 前記一方の保持部は先端部と基端部と前記先端部及び基端部により規定される長手軸を有し、
    前記第1作用領域の前記複数の凸部は、前記長手軸に沿って複数列に整列している、請求項3に記載の処置具。
  5. 前記第1作用領域及び前記第2作用領域は連続している、請求項1に記載の処置具。
  6. 前記第1及び第2エネルギ出力部は、それぞれ1又は複数のヒータを有する、請求項1に記載の処置具。
  7. 前記立設面は、前記対向面に対して直交している、請求項1に記載の処置具。
  8. 請求項1に記載の処置具と、
    前記処置具の前記第1及び第2エネルギ出力部に接続されて前記第1エネルギ出力部及び前記第2エネルギ出力部の温度を制御するコントローラと
    を具備し、
    前記第1及び第2作用領域は、それぞれ前記生体組織を保持する保持面を有し、
    前記コントローラは、前記第1及び第2エネルギ出力部の間に前記生体組織を保持した状態で、前記生体組織のうち前記第1作用領域と前記第2エネルギ出力部との間の生体組織を切開する温度に前記第1作用領域及び前記第2エネルギ出力部を制御し、前記生体組織のうち前記第2作用領域と前記第2エネルギ出力部との間の生体組織を接合する温度に前記第2作用領域及び前記第2エネルギ出力部を制御する、処置システム。
  9. 前記第1エネルギ出力部及び前記第2エネルギ出力部は前記コントローラにより熱エネルギを出力可能である、請求項8に記載の処置システム。
  10. 前記コントローラは、前記第1作用領域のうち前記生体組織と接触する表面温度を略280℃に制御し、前記第2作用領域のうち前記生体組織と接触する表面温度を略200℃に制御する、請求項8に記載の処置システム。
  11. 記コントローラは、前記第1及び第2エネルギ出力部の間に前記生体組織を保持した状態で、前記生体組織のうち前記第1作用領域と前記第3作用領域との間の生体組織を切開する温度に前記第1作用領域及び前記第3作用領域を制御し、前記生体組織のうち前記第1作用領域と前記第4作用領域との間の生体組織を接合する温度に前記第2作用領域及び前記第4作用領域を制御する、請求項8に記載の処置システム。
  12. 前記コントローラは、前記第1及び第3作用領域のうち前記生体組織と接触する表面温度を略280℃に制御し、前記第2及び第4作用領域のうち前記生体組織と接触する表面温度を略200℃に制御する、請求項11に記載の処置システム。
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