JP5840235B2 - 銅合金線材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金線材及びその製造方法に関し、特にマグネットワイヤ用極細銅合金線材及びその製造方法に関するものである。
電子機器の発達に伴い電子部品の小型化が進み、線径が0.1mm以下の極細銅合金線(丸線)に対する需要が増えてきている。例えば、携帯電話、スマートフォンなどに使用されているマイクロスピーカ用コイルは線径が0.1mm以下の極細線(マグネットワイヤ)をコイル状に巻きつけ加工して製造されている。
この巻線加工にはターン形成が可能なだけの加工性として靭性(伸び)が必要であり、従来靭性に優れる純銅が用いられてきた。しかし、純銅は導電性に優れるが強度が低いため、コイル振動に伴う耐疲労耐性が低いという問題がある。
この問題を解決するため、導電率を殆ど下げずに引張強さを上げることのできるAg 2〜15質量%を含有する高濃度のCu−Ag合金を使用する技術が提案されている(特許文献1)。また、一般的に加工を加えた金属や合金は引張強さが上昇して伸びが低下するが、これに一定温度以上の熱処理を加えることで再び伸びが回復して強度が低下する。そこで、この熱処理の温度を軟化温度以下で行うことにより低濃度の合金でも強度と伸びを両立させる技術が提案されている(特許文献2)。また、導電率98%IACS以上のφ2.6mmの軟銅合金線に表面加工を加えることで圧縮応力を付与し、耐屈曲疲労特性を向上させる技術が提案されている(特許文献3)。
特開2009−280860号公報 特許3941304号公報 特開平05−86445号公報
しかし、マグネットワイヤの長寿命化の要求や更なる電子部品の小型化によるマグネットワイヤの極細化(線径0.08mm以下)の要求にともない、さらなる銅合金線材の耐屈曲疲労特性の向上、高強度化が求められてきている。特許文献1に記載されているように、より強度を上げるためAg含有量を増やすと、その反面、導電性が低下してしまう。さらに、Agは非常に高価であるためコストの著しい上昇を招いてしまう。また、特許文献2に記載されているような従来一般の固溶型の高導電性銅合金線材で、導電性、伸びを確保したまま更なる高強度化、耐屈曲疲労性向上を達成することは困難である。さらにまた、φ0.1mm以下の軟銅線や銅合金線材に対して特許文献3の技術を適用すべく表面加工を施そうとすると、φ0.1mm以下の軟銅線や銅合金線材は特許文献3に記載されている銅合金線材より著しく線径が小さいために、銅合金線材自体の強度が低く、加工時の荷重により断線してしまい加工そのものが困難である。
また、近時、マグネットワイヤの形状としては、丸線に限らず、角線や平角線の採用も検討されている。これらの角線や平角線の場合にも、前記丸線の線径に相当する程度に厚さが薄い線材とすることが要求されている。
本発明はかかる従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、伸び、耐屈曲疲労特性に優れた、例えばマグネットワイヤ等に好適に用いられる、銅合金線材を安価で提供することを目的とする。
本発明者らは、伸び、耐屈曲疲労特性に優れたマグネットワイヤ等に好適に用いられる銅合金線材を開発すべく種々の銅合金、その熱処理及び加工条件について鋭意検討を行った。その結果、所定の合金組成を有してなる銅合金線材に半軟化処理を施した後に、一定の軽加工率での冷間加工を線材表面部に施し、これにより線材の表面から一定の浅い範囲で所定の硬度に上げることによって、伸びと耐屈曲疲労特性に優れる銅合金線材を得ることができることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
(1)Ag、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、各々の合金成分の含有量は、Agの場合0.5〜4質量%、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrの場合、それぞれ0.05〜0.3質量%であり、残部Cuと不可避不純物からなり、線径(丸線材の場合)または線材の厚さ(角線材や平角線材の場合)が0.1mm以下である銅合金線材であって、前記線材の最表面から線径または線材の厚さに対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上であり、かつ前記線材の中心のナノインデンテーション硬さが1.45GPa未満であって、前記線材の引張強さが350MPa以上、伸びが7%以上である銅合金線材。
(2)Agを0.5〜4質量%含有してなる(1)項に記載の銅合金線材。
(3)Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を各々の含有量として0.05〜0.3質量%含有してなる(1)項に記載の銅合金線材。
(4)Ag、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、各々の合金成分の含有量は、Agの場合0.5〜4質量%、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrの場合、それぞれ0.05〜0.3質量%であり、残部Cuと不可避不純物からなる合金組成を有してなる銅合金の荒引線に冷間加工を施して、線径または線材の厚さが0.1mm以下の線材を形成する線材加工工程と、
前記線材に熱処理を施して、この熱処理後の線材が引張強さ330MPa以上、伸び10%以上を有するようにする最終熱処理工程と、
前記熱処理が施された線材に加工率3〜15%の冷間加工を施す冷間加工工程と
を有してなる銅合金線材の製造方法であって、
前記得られる銅合金線材が、線材の最表面から線径または線材の厚さに対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上であり、かつ前記線材の中心のナノインデンテーション硬さが1.45GPa未満であって、前記線材の引張強さが350MPa以上、伸びが7%以上である、銅合金線材の製造方法。
(5)前記線材加工工程において、複数の冷間加工の間に中間熱処理を行って、この中間熱処理後の線材が引張強さ330MPa以上、伸び10%以上を有するようにする(4)に記載の銅合金線材の製造方法。
ここで、本明細書において、半軟化状態とは銅合金線材の伸びが10%以上、好ましくは10%〜30%を満たす状態をいう。また、半軟化処理とは、前記半軟化状態を与える熱処理をいう。一方、軟化状態とは銅合金線材の伸びが30%を超えて回復された状態をいう。また、軟化処理とは、前記軟化状態を与える高温での熱処理をいう。
本発明において、線材とは、丸線の他に、角線や平角線を含む意味である。従って、本発明の線材とは、特に断らない限り、丸線、角線、平角線を合わせていう。ここで、線材のサイズとは、丸線(幅方向(TD)の断面が円形)であれば丸線材の線径φ(前記断面の円の直径)を、角線(幅方向の断面が正方形)であれば角線材の厚さt及び幅w(いずれも、前記断面の正方形の一辺の長さで同一である)を、平角線(幅方向の断面が長方形)であれば平角線材の厚さt(前記断面の長方形の短辺の長さ)及び幅w(前記断面の長方形の長辺の長さ)をいう。
本発明の銅合金線材は、コイル成形に必要な伸びを有しながら耐屈曲疲労特性に優れているので、例えばマグネットワイヤ用の銅合金線材として好適である。さらに、本発明の銅合金線材の製造方法は、前記性能に優れる銅合金線材を製造する方法として好適なものである。
実施例で行った屈曲疲労破断回数(繰返破断回数)を測定する試験に用いた装置を模式的に示す正面図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
[線材表面部の硬さ]
本発明の銅合金線材においては、丸線材の場合には線径または角線材や平角線材の場合には線材の厚さに対して、線材の最表面から少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上である。本発明においては、線材の最表面から線径または線材の厚さに対して最大で20%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さを、1.45GPa以上とすることができる。好ましくは、線材の最表面から線径または線材の厚さに対して15%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さを1.45GPa以上とすることである。ここで、前記特定のナノインデンテーション硬さを有する領域は、半軟化状態を与える最終の熱処理後に施される最終の(仕上げ)加工処理での加工硬化によって、その硬さとなるように形成される。本書においては、このような加工によって形成される線材表面の特定の深さ領域を「表面加工層」あるいは「線材表面部」ともいう。また、線材の中心(線材の中心(中心点))はナノインデンテーション硬さが1.45GPa未満となっており、線材全体は線材表面部のようには硬化していない。本発明において、ナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上の領域を線材の最表面から線径または線材の厚さに対して最大20%内側までとする理由は、これを超えてより深い領域(線材のより中心側)まで硬化させると、伸びを十分に確保できなくなるためである。
また、この表面加工層より中心側では、線材は前記最終の熱処理の結果としての半軟化状態のまま硬化していない。表面加工層より内側(代表的には、線材の中心)のナノインデンテーション硬さは通常1.45GPa未満であり、伸びを十分に確保するためには1.3GPa以下であることが好ましい。
ここで、ナノインデンテーション硬さとは、ナノインデンテーション法という微小領域の硬さを測定する方法で、三角錐のダイヤモンド圧子を(線材)サンプルの表面から押し込み、その時に負荷される荷重と、圧子と試料の接触投影面積とから求められる硬さをいう。ナノインデンテーション硬さと硬さの一般的な指標であるビッカース硬さの間には、例えば、ビッカース硬さ=(76.2×ナノインデンテーション硬さ)+6.3の関係が知られている(非特許文献1)。
非特許文献1:金属、Vol.78(2008)No.9、p.47
本発明の銅合金線材においては、前記線材表面部を加工硬化された表面加工層として形成し、かつ、この線材表面部におけるナノインデンテーション硬さを好ましくは1.5GPa以上とすることによって、線材の耐屈曲疲労特性をさらに向上させることができる。さらに、この所定のナノインデンテーション硬さ1.5GPa以上である表面加工層の厚さが、線材の最表面から線径または線材の厚さに対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域(最大で20%内側までの間の深さ領域、好ましくは15%内側までの間の深さ領域)であれば、銅合金線材全体の伸びも10%以上と良好な特性を発揮できるため、より優れたマグネットワイヤとすることができる。
本発明の銅合金線材においては、前記線材表面部におけるナノインデンテーション硬さを1.45GPa以上とするが、1.6GPa以上とすることがさらに好ましい。上限値には特に制限はないが、通常、1.7GPa以下とする。
[合金組成]
本発明の銅合金線材は、(i)Agを0.5〜4質量%、並びに/又は(ii)Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を各々の含有量として0.05〜0.3質量%含有し、残部はCuと不可避不純物からなる。ここで、合金添加元素の含有量について単に「%」という場合は、「質量%」の意味である。また、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の合金成分の合計含有量には特に制限はないが、銅合金線材の導電率の著しい低下を防ぐためには、Ag以外のSn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の合金成分の含有量は合計で好ましくは0.5質量%以下である。
本発明の銅合金線材においては、(i)Agを単独で含有してもよく、あるいは、(ii)Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を単独で含有してもよく、あるいは、これらの(i)Agと(ii)Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種とを両方とも含有してもよい。
これらの元素は、それぞれ固溶強化型あるいは析出強化型の元素であり、Cuにこれらの元素を添加することで導電率を大幅に低下させることなく強度を上げることができる。この添加によって、銅合金線材自体の強度が上がり、耐屈曲疲労特性が向上すると共に、線径または線材の厚さが0.1mm以下の極細線に加工した後に加熱処理(半軟化処理)を施しても、前記半軟化処理後に行って前記線材表面部を硬化する為の最終(仕上)冷間加工に耐え得るようになる。一般に耐屈曲疲労特性は引張強さに比例するが、引張強さを大きくするために加工を加えると伸びが低下しマグネットワイヤ等の極細銅合金線材へ成形することができなくなる。ここで、屈曲疲労時に銅合金線材にかかる曲げ歪は線材の外周部ほど大きく、中心に近いほど曲げ歪量は小さくなる。そのため、本発明によれば、仕上冷間加工によって線材表面の所定の深さ領域(前記線材表面部)のみ所定の硬度を有するように加工硬化することで、耐屈曲疲労特性を向上させることができる。また、線材表面部のみ加工硬化されている一方で、前記線材表面部以外の線材残部全体(つまり、線材表面部以外の、前記所定の深さよりも深い中心までの部分)は半軟化状態を維持している。この為、線材全体としての伸びを十分確保することができるので、マグネットワイヤ等の極細銅合金線材への成形が可能となる。
Agは、これらの元素の中でも特に導電率を下げずに強度を上げることができる元素であって、例えばマグネットワイヤ等に用いられる本発明に係る銅合金における必須添加元素の一例である。本発明において、Ag含有量は0.5〜4質量%とし、好ましくは0.5〜2%である。Ag含有量が少なすぎる場合、十分な強度を得ることができない。また、Ag含有量が多すぎると導電性が低下するとともにコストが高くなりすぎる。
Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素は、本発明に係る銅合金における必須添加元素の別の一例である。本発明において、これらの元素の含有量は各々の含有量として0.05〜0.3%とし、好ましくは0.05〜0.2%である。この含有量が各々の含有量として少なすぎる場合、これらの元素添加による強度上昇の効果が殆ど見込めない。また、この含有量が多すぎると導電率の低下が大きすぎるため、マグネットワイヤ等の銅合金線材として不適である。
[製造方法]
本発明の銅合金線材の製造方法について説明する。
前記のとおり、本発明の銅合金線材の形状は、丸線に限定されず、角線や平角線としても良いので、これらについて以下に説明する。
[丸線材の製造方法]
まず、本発明の銅合金丸線材の製造方法は、例えば、鋳造、中間の冷間加工、中間の熱処理(中間焼鈍)、最終の熱処理(最終焼鈍)、仕上の冷間加工の各工程をこの順に施してなる。ここで、中間焼鈍に付さなくても所望の物性を有する銅合金線材が得られる場合には、中間焼鈍は省略してもよい。
[鋳造]
Cuに、Agと及び/又はSn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素とを添加し、鋳造機内部(内壁)が好ましくは炭素製の、例えば黒鉛坩堝にて、溶解し鋳造する。溶解するときの鋳造機内部の雰囲気は、酸化物の生成を防止するために真空もしくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。鋳造方法には特に制限はなく、例えば横型連続鋳造機やUpcast法などを用いることができる。これらの連続鋳造伸線法によって、鋳造から伸線の工程を連続して行って、直径が通常φ8〜23mm程度の荒引線を鋳造する。
連続鋳造伸線法によらない場合には、鋳造によって得たビレット(鋳塊)を伸線加工に付すことによって、同様に直径が通常φ8〜23mm程度の荒引線を得る。
[冷間加工、中間焼鈍](線材加工工程)
この荒引線に冷間加工を施すことによって、直径がφ0.1mm以下の細径線に加工する。この冷間加工としては、冷間伸線することが好ましい。
この冷間加工(伸線)での加工率は、目標線径と銅合金組成、さらにはその後の熱処理や冷間加工での条件に応じて変わり、特に制限するものではないが、通常この加工率を70.0〜99.9%とする。
この冷間加工が、第一の冷間加工(伸線)と第二の冷間加工(伸線)の複数の冷間加工工程を有している場合、第一と第二の冷間加工の間に中間焼鈍(中間熱処理)を行っても良い。
中間焼鈍を行う熱処理方法としては大きく分けてバッチ式と連続式が挙げられる。バッチ式の熱処理は処理時間、コストがかかるため生産性に劣るが、温度や保持時間の制御が行い易いため特性の制御を行い易い。これに対し連続式の熱処理は伸線加工工程と連続で熱処理が行えるため生産性に優れるが、極短時間で熱処理を行う必要があるため熱処理温度と時間を正確に制御し特性を安定して実現させることが必要となる。それぞれの熱処理方法は以上のように長所と短所があるため、目的に沿った熱処理方法を選択すればよい。
バッチ式の場合は、例えば窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気の熱処理炉で、300〜600℃で30分〜2時間熱処理を行うことが好ましい。
連続式の熱処理としては、通電加熱式と雰囲気内走間熱処理式が挙げられる。通電加熱式は、伸線工程の途中に電極輪を設け、電極輪間を通過する銅合金線材に電流を流し、銅合金線材自身に発生するジュール熱によって熱処理を行う方法である。雰囲気内走間熱処理式は、伸線の途中に加熱用容器を設け、所定の温度(例えば、300〜700℃)に加熱された加熱用容器雰囲気の中に銅合金線材を通過させ熱処理を行う方法である。いずれの熱処理方法も銅合金線材の酸化を防止するために不活性ガス雰囲気下で熱処理を行うことが好ましい。これらの連続式熱処理における熱処理条件は300〜700℃で0.5〜5秒とすることが好ましい。
複数の冷間加工の間で中間焼鈍を行うことで、得られる線材の伸びを回復させることによって加工性を向上させることができる。また、中間焼鈍によりAg析出が促進され、得られる線材の強度、導電性をより高くすることができる。例えば、この中間熱処理後の銅合金線材の引張強さが330MPa以上、伸び10%以上の特性を満たすようになるような条件で行うことが好ましい。
[仕上焼鈍(最終焼鈍ともいう)](最終熱処理工程)
上記工程により所望のサイズ(線径)まで加工した銅合金線材に最終熱処理として仕上焼鈍を施す。
仕上焼鈍としてのこの熱処理は、熱処理後の銅合金線材の引張強さが330MPa以上、伸び10%以上の特性を満たすようになるような条件で行う。仕上焼鈍をこのような半軟化処理とすることで、銅合金線材自体の強度を上げて耐屈曲疲労特性を向上させると共に、熱処理後の表面への仕上冷間加工を行い易くすることができる。
仕上焼鈍を行う熱処理方法としては前記中間焼鈍と同様に、バッチ式と連続式が挙げられる。
この仕上焼鈍の際に、銅合金線材の組成や加工率によっては、最終熱処理後の線材における引張強さ、伸びが若干変化することがある。そこで、本発明においては、この最終熱処理(仕上焼鈍)によって得られる銅合金線材の引張強さが330MPa以上、伸びが10%以上となるように、仕上焼鈍における加熱温度、加熱保持時間を適宜調整する。
一般に熱処理温度が高いほど短時間で、熱処理温度が低いほど長時間で熱処理を行う。本発明においては、仕上焼鈍をバッチ式で行う場合は、300〜450℃で30分〜2時間の熱処理とすることが好ましい。一方、連続式で行う場合は、300〜700℃で0.5〜5秒の熱処理とすることが好ましい。
この最終焼鈍後に仕上げ加工を行うことで、銅合金線材の線材表面部のみでなくより中心側の銅合金線材全体の特性も若干変化させてしまう。この最終焼鈍後の仕上冷間加工によって得られる銅合金線材の最終特性が引張強さ350MPa以上、伸び7%以上となるように、上記の通り、最終焼鈍前の銅合金線材の特性を調整し、かつ、最終焼鈍条件を決定する。
[仕上冷間加工](冷間加工工程)
以上の最終熱処理した銅合金線に最終(仕上)冷間加工を施して、線材表面部のナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上となるように硬化する。本発明の銅合金線材は強度が高いため線径φまたは線材の厚さtが0.1mm以下の極細線に対しても仕上冷間加工を行うことができる。一般に耐屈曲疲労特性は引張強さに比例するが、引張強さを大きくするために加工を加えると伸びが低下しマグネットワイヤ等へ成形することができなくなる。屈曲疲労時に線にかかる曲げ歪は線の外周部ほど大きく、中心に近いほど曲げ歪量は小さくなる。そのため仕上冷間加工を行い線材表面部のみ硬くすることで耐屈曲疲労特性を向上させることができる。また、線材の線材表面部のみ硬くなっている一方で線材の中心側は半軟化状態を維持しているため、線材全体の伸びは十分確保することができ、マグネットワイヤ等の極細線材への成形も可能となる。本発明においては、仕上冷間加工に付す前に、最終製品の銅合金線材における強度350MPa以上、伸び7%以上の特性を与えるような半軟化熱処理を施しておくことによって、断線のリスクを効果的に下げることができる。この仕上冷間加工としては、伸線加工を行うが、この伸線加工の加工率は通常3〜15%、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜12%である。この仕上冷間加工の加工率が小さすぎる場合には、表面加工、強度が不十分で耐屈曲疲労特性向上の効果が不十分である場合がある。また、この仕上冷間加工の加工率が大きすぎる場合には、当該加工が線材表面部を超えて線材全体に及んでしまい、伸びを損なうとともに加工での断線のリスクが高くなる場合がある。
[平角線材の製造方法]
次に、本発明の銅合金平角線材の製造方法は、平角線加工工程を有することと、平角形状に適した仕上冷間加工とすること以外は、前記丸線材の製造方法と同様である。具体的には、本発明の平角線材の製造方法は、例えば、鋳造、中間冷間加工(冷間伸線)、平角線加工、最終熱処理(最終焼鈍)、仕上冷間加工の各工程をこの順に施してなる。必要に応じて、中間冷間加工と平角線加工の間に中間焼鈍(中間熱処理)を入れても良いことも、前記丸線材の製造方法と同様である。鋳造、冷間加工、中間焼鈍、最終焼鈍の各工程の加工・熱処理の各条件とそれらの好ましい条件も丸線材の製造方法と同様である。
[平角線加工]
平角線加工の前までは、丸線材の製造と同様にして、鋳造で得た鋳塊に冷間加工(伸線加工)を施して丸線形状の荒引線を得て、必要により中間焼鈍を施す。平角線加工としては、こうして得た丸線(荒引線)に、圧延機による冷間圧延、カセットローラーダイスによる冷間圧延、プレス、引抜加工等を施す。この平角線加工により、幅方向(TD)断面形状を長方形に加工して、平角線の形状とする。この圧延等は、通常1〜5回のパスによって行う。圧延等の際の各パスでの圧下率と合計圧下率は、特に制限されるものではなく、所望の平角線サイズが得られるように適宜設定すればよい。ここで、圧下率とは平角加工を行った時の圧延方向の厚さの変化率であり、圧延前の厚さをt、圧延後の線の厚さをtとした時、圧下率(%)は{1−(t/t)}×100で表される。例えば、この合計圧下率は、10〜90%とし、各パスでの圧下率は、10〜50%とすることができる。ここで、本発明において、平角線の断面形状には特に制限はないが、アスペクト比は通常1〜50、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜10である。アスペクト比(下記のw/tとして表わされる)とは、平角線の幅方向(TD)断面を形成する長方形の長辺に対する短辺の比である。平角線のサイズとしては、平角線材の厚さtは前記幅方向(TD)断面を形成する長方形の短辺に等しく、平角線材の幅wは前記幅方向(TD)断面を形成する長方形の長辺に等しい。平角線材の厚さは、通常0.1mm以下、好ましくは0.08mm以下、より好ましくは0.06mm以下である。平角線材の幅は、通常1mm以下、好ましくは0.7mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
[仕上冷間加工]
仕上冷間加工は、平角線材の場合、前記平角線加工と同様に行う。この仕上冷間加工によって、線材表面部のナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上となるように硬化することは。丸線材の場合と同様である。具体的には、平角線材に対する仕上冷間加工は、圧延機による冷間圧延、カセットローラーダイスによる冷間圧延とする。この加工率は通常3〜15%、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜12%である。この仕上冷間加工の加工率が小さすぎる場合には、表面加工、強度が不十分で耐屈曲疲労特性向上の効果が不十分である場合がある。また、この仕上冷間加工の加工率が大きすぎる場合には、当該加工が線材表面部を超えて線材全体に及んでしまい、伸びを損なうとともに加工での断線のリスクが高くなる場合がある。
このような加工、熱処理によって製造された平角線材は、仕上冷間加工によって厚さ方向の上下面表層で線材表面から少なくとも深さ5%までの領域(最大で線材表面から深さ20%までの領域。好ましくは線材表面から深さ15%までの領域)に、ナノインデンテーション硬さ1.45GPa以上の硬化層を表面加工層として設けられてなる。前記丸線材の場合には、線材の円周方向の表面全面に前記硬化層が表面加工層として存するのに対して、平角線材の場合には、線材の表面の厚さ方向の上下両面にそれぞれ前記硬化層が表面加工層として存する点が異なる。しかしながら、所定の浅い範囲内の線材表面部に前記硬化層を表面加工層として有する点では、丸線材と平角線材(さらには角線材)で同様である。
この平角線材を厚さ方向に巻線加工する場合、本発明による丸線材と同様に、高い伸び、屈曲疲労特性を発現することができる。ここで、平角線材を厚さ方向に巻線加工するとは、平角線材の幅wをコイルの幅として、平角線をコイル状に巻きつけることをいう。
[角線材の製造方法]
さらに、角線材を製造する場合には、前記平角線材の製造方法において、幅方向(TD)断面が正方形(w=t)となるように設定すればよい。
[線材の製造方法の別の実施形態]
本発明の銅合金線材の製造方法の別の一実施形態としては、まず鋳造によって得た荒引き線を第一の冷間加工(伸線)に付した後に、中間焼鈍によって伸びを回復して、さらに第二の冷間加工(伸線)を行って所望の線径または線材の厚さとし、最終(仕上)焼鈍によって所定の機械強度と伸びに回復しておき、その後、最終(仕上)冷間加工によって線材表面部のナノインデンテーション硬さを調整するとともに銅合金線材全体を所定の機械強度と伸びを有するように最終的に調整する、という全製造工程を挙げることができる。但し、エネルギー消費、効率の観点からは、冷間加工工程の数を少なくする方が好ましい。
これらの第一及び第二の冷間伸線加工工程での各加工率は、目標線径または線材の厚さと銅合金組成、さらには中間焼鈍及び仕上焼鈍の2回の熱処理条件に応じて変わり、特に制限するものではないが、通常、第一の冷間加工(伸線)での加工率を70.0〜99.9%とし、第二の冷間加工(伸線)での加工率を70.0〜99.9%とする。
[平角線材及び角線材の製造方法の別の実施形態]
前記の製造方法に代えて、所定の合金組成の板材または条材を製造し、これらの板または条をスリットして、所望の線幅の平角線材または角線材を得ることができる。
この製造工程として、例えば、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍、仕上冷間加工、スリット加工からなる方法がある。必要に応じて冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れても良い。スリット加工は場合によっては仕上焼鈍の前、若しくは仕上冷間加工の前に行っても良い。
以上の製造方法によって引張強さ350MPa以上、伸び7%以上の銅合金線材とする。
[線径または線材の厚さ、用途]
本発明の銅合金線材の線径または線材の厚さは0.1mm以下であり、好ましくは0.08mm以下、より好ましくは0.06mm以下である。線径または線材の厚さの下限値には特に制限はないが、現在の技術では通常0.01mm以上である。
本発明の銅合金線材の用途は、特に制限されないが、例えば、携帯電話、スマートフォンなどに使用されているスピーカコイルに用いられる極細線であるマグネットワイヤ等が挙げられる。
[他の物性]
本発明の銅合金線材の引張強さを350MPa以上としたのは、350MPa未満では伸線加工により細径化したときの強度が足りず、耐屈曲疲労特性に劣るためである。
また、本発明の銅合金線材の伸びを7%以上としたのは、7%未満では加工性に劣り、コイルを成形する際に破断等の不具合が生じてしまうためである。
以上の方法で得られた本発明の銅合金線は極細線マグネットワイヤ等の極細銅合金線材として成形可能な伸びを有しながら高い耐屈曲疲労性を示す。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[丸線材の実施例、比較例]
鋳造材は、0.5〜4質量%のAg、及び/又は、各々の含有量として0.05〜0.3質量%のSn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる表1〜3に示した種々の合金組成を有する本発明例の銅合金と、表1〜3に示した種々の合金組成を有する比較例の銅合金とを、それぞれ横型連続鋳造方法で直径φ10mmの荒引線に鋳造した。
この荒引線を冷間加工(伸線)、中間焼鈍、仕上焼鈍、仕上冷間加工(伸線)(以下の第1と第2の2回の冷間加工の合計加工率:99.984%)して、表1、表3の試験例では最終線径φ40μm、表2の試験例では表中に示した各種線径の、各丸線材サンプルを作製した。
中間焼鈍、仕上焼鈍の熱処理は、バッチ焼鈍、電流焼鈍、走間焼鈍の3パターンから選ばれるいずれかで実施し、いずれも窒素雰囲気下で行った。なお、中間焼鈍は、第1の冷間加工(伸線)と第2の冷間加工(伸線)の間に1度だけ行った。表1及び表2に示した試験例では中間焼鈍は行わなかった。また、表3に示した試験例では、中間焼鈍を行ったものと行わなかったものとがある。中間焼鈍を行った試験例における第1の冷間加工(伸線)後で中間焼鈍前の線径を、表3中の「中間焼鈍」の「線径(mm)」欄に示した。この場合の加工率は、第1の冷間加工(伸線)の加工率を70.0〜99.9%、第2の冷間加工(伸線)の加工率を70.0〜99.9%とした。
表1〜3に、本発明による銅合金丸線材と比較例の銅合金丸線材の製造条件と得られた銅合金丸線材の特性とを示す。
[平角線材の実施例、比較例]
前記丸線材と同様にして、但し、荒引線を冷間加工(伸線)後、または行った場合には中間焼鈍後、のいずれかに、平角線加工を施してから、仕上焼鈍した後に、仕上冷間加工して、平角線材サンプルを作製した。表4に示したように、中間焼鈍は行ったものと行わなかったものとがある。
平角線加工は、表4に示したように、この加工前の丸線の線径φ(mm)を、幅w(mm)×厚さt(mm)のサイズの平角線に冷間圧延によって加工した。仕上冷間加工は、表4に示した加工率とした以外は前記平角線加工と同様にして、冷間圧延によって加工した。
表4に、本発明による銅合金平角線材と比較例の銅合金平角線材の製造条件と得られた銅合金平角線材の特性とを示す。
[特性]
以上のようにして得た丸線材と平角線材のサンプルについて、各種特性を試験、評価した。
引張強さ(TS)、伸び(El)は、JIS Z2201、Z2241に従い測定した。
屈曲疲労破断回数は、屈曲疲労試験として、図1に示す装置を用いて線材の供試材が破断するまでの回数を測定した。図1に示すように、試料として線径φまたは線材の厚さtが0.04mm(40μm)の銅合金線材の試料をダイスで挟み、線材のたわみを抑えるため下端部に10gの錘(W)をつるして荷重を掛けた。平角線の場合には、線材の厚さ方向(ND)でサンプルをダイスで挟むようにセットした。試料の上端部は接続具で固定した。この状態で試料を左右に90度ずつ折り曲げて、毎分100回の速さで繰り返しの曲げを行い、破断するまでの曲げ回数をそれぞれの試料について測定した。なお、曲げ回数は図中1→2→3の一往復を一回と数え、また、2つのダイス間の間隔は、試験中に銅合金線材の試料を圧迫しないように1mmとした。破断の判定は、試料の下端部に吊るした錘が落下したときに、破断したものとした。なおダイスの曲率によって、曲げ半径(R)は2mmとした。
コイル寿命は、前記試験方法で測定した屈曲疲労破断回数で、次のように評価した。屈曲疲労試験の結果から破断回数が7000回以上のものを「◎(優)」、5000回以上で7000回未満のものを「○(良)」、3000回以上で5000回未満のものを「△(やや劣)」、3000回未満のものを「×(不良)」と評価した。
伸線性として、伸線中の断線の有無で評価した。この試験は、軟化乃至半軟化処理した銅合金線材を長さ100km仕上げ加工する試験を5回行い、1回も断線せずに伸線できたものを「○(良)」、1回断線したものを「△(やや劣)」、2回以上断線したものを「×(不良)」とした。
線材表面部及び線材中心の硬さはナノインデンター(エリオニクス社製ENT−2100)を使用して測定した。
線材の表面側に在る加工層の厚さ(μm)は、線材横断面(TD断面)の組織観察とナノインデンター試験での硬さ変化から求め、「表面加工層厚さ(μm)」とした。また、この求めた加工層の厚さ(μm)から、線材最表面から加工層の最も中心側までの厚さの線材の線径φまたは線材の厚さtに対する割合(%)を計算して求め、「表面加工層厚さ(%)」とした。
コイル成形性は、銅合金線材100kmを直径φ5mmのコイルに巻き線加工したときの断線発生頻度を試験して、1回も断線しなかったものを「○(良)」、1回断線したものを「△(やや劣)」、2回以上断線したものを「×(不良)」として評価した。
表1にCu−2%Ag合金線を最終線径0.04mm(φ40μm)となるよう加工、熱処理した本発明例の丸線材のサンプル(実施例1〜6)と比較例の丸線材のサンプル(比較例1〜7)の特性を測定、評価した結果を示す。最終熱処理(仕上焼鈍)条件を表1に示したように変更して、仕上冷間加工前の強度と伸びを種々変化させた。
Figure 0005840235
実施例1〜6に示すように、引張強さ330MPa以上、伸び10%以上となるように最終熱処理(仕上焼鈍)を施した銅合金線材に3〜15%の加工率の仕上冷間加工を加えることによって、線材表面部にナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上の加工層が形成され、耐屈曲疲労特性を向上させることができたことが分かる。また、実施例3〜5に示すように仕上冷間加工の加工率が7〜12%の場合が、より耐屈曲疲労特性向上効果が優れるため好ましい。
これに対して、比較例1のようにこの線材表面部を設ける仕上冷間加工を施していない場合や、比較例2や3に示すように仕上冷間加工での加工率が3%未満と小さすぎる場合には、加工層が全く存在しないかあるいは加工層の層厚が薄すぎるため耐屈曲疲労特性を向上させることができない。また、比較例4や5のように仕上冷間加工での加工率が15%より大と大きすぎる場合、線材表面部のみではなく、より中心側までを含めた銅合金線材全体への加工となってしまうために、耐屈曲疲労特性を向上させる表面加工層が満足に形成されず、仕上冷間加工後の銅合金線材の伸びが劣り、また、耐屈曲疲労特性を向上させることができない。
さらに、比較例6のように仕上冷間加工前の最終熱処理が不十分で伸びが10%未満の場合は仕上冷間加工後の銅合金線材の伸びが7%未満となりコイル成形性が不十分となってしまう。また、比較例7に示すように仕上冷間加工前の最終熱処理で軟化させすぎて銅合金線材の引張強さが330MPa未満であると、線材表面部の硬度が不足し、仕上焼鈍後の強度も不足する。さらには、仕上冷間加工時の断線を招いてしまう。
なお、平角線材の場合にも、前記丸線材の場合と同様の結果が得られる。
実施例7〜12、比較例8〜9では、最終熱処理(仕上焼鈍)条件を表2に示したように変更して、仕上冷間加工前の強度を種々変化させた様々な径のCu−1%Ag合金丸線材を10%の加工率で仕上冷間加工したときの伸線性について評価した結果を示す。なお、比較例10〜11では、前記Cu−1%Ag合金線に代えてCu−0.3%Ag合金丸線材とした以外は前記と同様に試験した。
伸線性については軟化乃至半軟化処理した銅合金線材を長さ100km仕上げ加工する試験を5回行い、1回も断線せずに伸線できたものを「○(良)」、1回断線したものを「△(やや劣)」、2回以上断線したものを「×(不良)」とした。
線径φ0.5mm以上の比較的太い線を伸線加工する場合は断線することなく伸線することができるが、φ0.1mm以下の線を伸線する場合、伸線加工前で仕上焼鈍後の銅合金線材の引張強さが330MPa以上であることが好ましいことが分かる。よって、本発明の製造方法で規定する製造条件によって、φ0.1mm以下の細線に対し表面加工を施して耐屈曲疲労特性を向上させることができることが分かる。
なお、平角線材の場合にも、前記丸線材の場合と同様の結果が得られる。
Figure 0005840235
表3にその他様々な合金組成の銅合金で調製した丸線材の本発明の実施例と比較例を示す。仕上冷間加工前の最終熱処理(仕上焼鈍)によって引張強さ330MPa以上、伸び10%以上の銅合金線材とすることでφ0.1mm以下で加工率3〜15%、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜12%の仕上冷間加工を施すことが可能となることが分かる。
また、この加工率3〜15%、好ましくは5〜15%、さらに好ましくは7〜12%の仕上冷間加工によって線材に所定の表面加工を施すことで、銅合金線材の耐屈曲疲労特性を向上させることができ、仕上冷間加工後の伸びが7%以上、好ましくは10%以上で十分なコイル成形性を有し、かつコイル寿命の長いマグネットワイヤ等を得ることができることが分かった。
特に、比較例と本発明の実施例との対比から、線材の最表面から線径に対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上であり、かつ、最終線材の引張強さが350MPa以上で伸びが7%以上である場合に、所望の物性が達成できることが分かる。
Figure 0005840235
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Figure 0005840235
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Figure 0005840235
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表4に、様々な合金組成の銅合金で調製した平角線材の本発明の実施例と比較例を示す。表4から、平角線材の場合にも、丸線材の場合と同様の結果が得られたことがわかる。
Figure 0005840235
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Claims (5)

  1. Ag、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、各々の合金成分の含有量は、Agの場合0.5〜4質量%、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrの場合、それぞれ0.05〜0.3質量%であり、残部Cuと不可避不純物からなり、線径または線材の厚さが0.1mm以下である銅合金線材であって、前記線材の最表面から線径または線材の厚さに対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上であり、かつ前記線材の中心のナノインデンテーション硬さが1.45GPa未満であって、前記線材の引張強さが350MPa以上、伸びが7%以上である銅合金線材。
  2. Agを0.5〜4質量%含有してなる請求項1に記載の銅合金線材。
  3. Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を各々の含有量として0.05〜0.3質量%含有してなる請求項1に記載の銅合金線材。
  4. Ag、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、各々の合金成分の含有量は、Agの場合0.5〜4質量%、Sn、Mg、Zn、In、Ni、Co、Zr及びCrの場合、それぞれ0.05〜0.3質量%であり、残部Cuと不可避不純物からなる合金組成を有してなる銅合金の荒引線に冷間加工を施して、線径または線材の厚さが0.1mm以下の線材を形成する線材加工工程と、
    前記線材に熱処理を施して、この熱処理後の線材が引張強さ330MPa以上、伸び10%以上を有するようにする最終熱処理工程と、
    前記熱処理が施された線材に加工率3〜15%の冷間加工を施す冷間加工工程と
    を有してなる銅合金線材の製造方法であって、
    前記得られる銅合金線材が、線材の最表面から線径または線材の厚さに対して少なくとも5%内側までの間の深さ領域におけるナノインデンテーション硬さが1.45GPa以上であり、かつ前記線材の中心のナノインデンテーション硬さが1.45GPa未満であって、前記線材の引張強さが350MPa以上、伸びが7%以上である、銅合金線材の製造方法。
  5. 前記線材加工工程において、複数の冷間加工の間に中間熱処理を行って、この中間熱処理後の線材が引張強さ330MPa以上、伸び10%以上を有するようにする請求項4に記載の銅合金線材の製造方法。
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