JP5839950B2 - 圧延銅箔 - Google Patents

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本発明は、銅の結晶粒子で構成された圧延銅箔に係り、特に自動車用部品等において繰返して屈曲運動が行われるフレキシブルフラットケーブル等に用いられる圧延銅箔に関する。
フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、厚みが薄く可撓性に優れる特長から、電子機器等への実装形態における自由度が高く、様々な用途に用いられている。例えば、自動車におけるエアバックシステムの構成部品であるステアリング・ロール・コネクタ(SRC)、折り畳み式携帯電話の折り曲げ部、デジタルカメラ、プリンターヘッドなどの可動部、HDD(Hard Disk Drive)やDVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disk)など、ディスク関連機器の可動部の配線等に広く用いられている。
尚、フレキシブルフラットケーブルの導体部分には、従来から広く圧延銅箔が用いられている。
ここで、特許文献1には、導体が導電率95%以上のCu濃度99.9%以上の純銅からなり、その引張強さが350MPa以上400MPa以下の範囲である平角導体が開示されている。この平角導体は85℃もしくはそれ以上の高温環境になりうる自動車などに使用され、価格低減および導体強度の維持が達成される。
また、特許文献2には、最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔であって、圧延面を基準としたX線回折極点図測定による銅結晶の{220}Cu面回折の正極点図結果で、α角度が40〜50°の範囲において、β角度の少なくとも90±5°毎に存在して4回対称性を示す結晶粒群に起因する回折ピークが存在し、さらに、前記β角度の90±10°毎に存在して4回対称性を示す別の結晶粒群に起因する回折ピークが存在する圧延銅箔が開示されている。この引用文献2は、フレキシブルプリント配線板等の可撓性配線部材に対する更なる高屈曲特性の要求に対応するために、優れた屈曲特性を有する圧延銅箔を提供するものである。
特開2009−048819号公報 特開2010−150578号公報
しかし、特許文献1のような導体は結晶粒内に軽度の加工歪が加わっているために、高温環境下の屈曲疲労時に早期に破断しやすい問題がある。
また、特許文献2は、最終の平角導体を得るまでに、条を連続して圧延させて製造することから、線引き加工された丸線を最終段階で圧延する製法に比べて高コストとなる問題を抱えている。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、繰返し屈曲変形が加えられた場合にもクラックの発生が抑制される圧延銅箔の提供を目的とする。
本発明の上記課題は下記の手段によって解決された。
<1> 銅の結晶粒子で構成された圧延銅箔であって、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下であり、前記圧延銅箔の厚みに対する、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径の比率が0.5%以上1.3%以下であり、且つ前記圧延銅箔の長手方向に直交する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が50%以上70%以下である圧延銅箔。
式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
(上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。)
<2> 丸線型の銅材圧延物である前記<1>に記載の圧延銅箔。
<3> 前記圧延銅箔の厚みが0.02mm以上0.1mm以下である前記<1>または<2>に記載の圧延銅箔。
本発明によれば、繰返し屈曲変形が加えられた場合にもクラックの発生が抑制される圧延銅箔が提供される。
本発明の実施形態に係る圧延銅箔を示す概略斜視図である。 実施例での耐屈曲性試験に用いる屈曲試験機に圧延銅箔を固定した状態を示す概略図である。
本発明に係る圧延銅箔は、銅の結晶粒子で構成され、且つ以下の要件を満たす。
・最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下
・前記圧延銅箔の厚みに対する、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径の比率が0.5%以上1.3%以下
・前記圧延銅箔の長手方向に直交する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が50%以上70%以下
式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
(上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。)
上記の通り本発明に係る圧延銅箔は、粒内歪み率が50%以上70%以下である。この粒内歪み率は、前記式(1)に示す通り、方位差0度以上15度以下の領域の面積に対する方位差1度以上15度以下の領域の面積の比率であり、粒内歪みとして認識される方位差0度以上15度以下の領域のうち、方位差が1度以上15度以下の比率が大きいことを表している。つまり、圧延銅箔を構成する結晶が粒内歪みを有していることを表している。
また上記の通り、最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下であり、且つ最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径が圧延銅箔の厚みに対する比率で0.5%以上1.3%以下であり、最表面の結晶粒子の粒子径が非常に小さい。
上記の構成を満たす本発明に係る圧延銅箔は、繰返して屈曲変形が加えられた場合であってもクラックの発生が抑制され、その結果長寿命化が達成される。
尚、最表面を構成する結晶粒子の粒子径が非常に小さいと、結晶粒界に受ける屈曲時の単位面積当たりの曲げ応力を小さくすることが可能となるため、結果的に長期にわたりクラックの発生が抑制されるものと考えられる。
−粒内歪み率−
本発明においては、圧延銅箔の長手方向に直交する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における前記式(1)により求められる粒内歪み率が50%以上70%以下である。粒内歪み率が50%未満である場合、厳密な加工条件の制御が必要となるため生産性が問題となる。一方、70%を超える場合、強度が高すぎるために柔軟性に問題が生じる。
上記粒内歪み率は、以下の方法により測定される。
圧延銅箔を長手方向に直交する方向に切断しその断面についてEBSD(electron backscatter diffraction)解析を行う。EBSD解析によって、方位差が15度を超える部分は粒界と識別し、且つ方位差が15度までのものを粒内歪みと認定すると共に、特に0度以上1度以下と判定される方位差については問題とならない程度の粒内歪みと捉える。そこで、まず方位差が0度から15度までの部分を抽出して、前記断面における方位差1度以上15度以下の領域の面積と、方位差0度以上15度以下の領域の面積を測定し、前記式(1)により粒内歪み率を求める。
この粒内歪み率の値が大きいほど、圧延銅箔において存在する粒内歪みは大きい。
−平均粒子径−
本発明においては、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下であり、且つ最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径の圧延銅箔の厚みに対する比率が0.5%以上1.3%以下である。前記平均粒子径が1.3μmを超える場合や該平均粒子径の比率が1.3%を超える場合、繰返して屈曲変形が加えられた際にクラックの発生が問題となる。一方、前記平均粒子径が0.1μm未満の場合や前記平均粒子径の比率が0.5%未満である場合、圧延銅箔は柔軟性に劣り容易に配索が行えないとの問題が生じる。
上記平均粒子径および上記平均粒子径の比率は、以下の方法により測定される。
圧延銅箔を長手方向に直交する方向に切断しその断面についてEBSD解析を行う。EBSD解析によって、方位差が15度を超える部分を粒界と識別し、結晶粒子の画像を得る。この画像において、特定の幅方向長さ(H)(少なくとも40μm以上)内における最表面を構成する結晶粒子の数(K)を求め、前記幅方向長さ(H)を前記結晶粒子の数(K)で割ることで、最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径を求める。更にこの平均粒子径の値を圧延銅箔の厚みで割ることで、圧延銅箔の厚みに対する最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径の比率が求められる。
−圧延銅箔の作製方法−
本発明に係る圧延銅箔の作製においては、丸線型の銅材を圧延によって所定の銅箔状に成形(圧延工程)することで作製することができる。
尚、前記所定の銅箔状に成形する工程では、前記圧延は多段階で行なってもよく、また圧延以外の方法を併用して成形を行なってもよい。
また、前記銅材としては、銅からなる材料に加え銅合金からなる材料を用いることができる。前記銅からなる材料および銅合金からなる材料における銅としては、例えばタフピッチ銅、無酸素銅等が挙げられる。
尚、ここで重要となるのが圧延の際の減面率を高くすることと、全ての工程において極力熱の付与を避けることである。
本発明の圧延銅箔は、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径の圧延銅箔の厚みに対する比率、および粒内歪み率が前述の範囲である。上記粒内歪み率を前記範囲に制御する方法としては、例えば前記圧延の際の減面率を高くし、つまり圧延による断面積の減少量を高くする方法が挙げられる。また、前記圧延工程や該圧延工程後において銅箔に対し熱が付与されると粒内歪みは除去される傾向があり、そのため全ての工程において極力熱の付与を避ける、即ち室温以上で加熱される工程を極力行わないことが挙げられる。更に、熱の付与を極力避けることにより、上記結晶粒子の平均粒子径の圧延銅箔の厚みに対する比率も、前記の範囲に制御される。
ここで、一例を挙げて、本発明に係る圧延銅箔の作製について詳述する。
・圧延工程
まず所定の径(例えばΦ0.30mm)を有する硬銅線(丸線型)を準備する。例えば上記Φ0.30mmの硬銅線は、それよりも径の大きい軟銅線(例えばΦ2.6mm)を伸線することで形成することができる。
次いで、前記所定の径(例えばΦ0.30mm)の硬銅線に圧延を施して、最終的な銅箔状(例えば厚さ0.080mm×幅0.8mmの箔状)に成形することで、図1に示すような圧延銅箔2が作製される。
圧延の方法としては、2つあるいは複数の回転するロールの間に前記銅線を通すことで加工する方法が挙げられる。尚、ロールの径や、パス数、潤滑剤の有無等は適宜調整される。
尚、最終的な銅箔状に成形するための圧延は2段階以上に分けて行なってもよい。
本発明に係る圧延銅箔の厚みとしては、特に限定されるものではないが、0.02mm以上0.1mm以下の範囲が好ましい。
−用途−
本発明に係る圧延銅箔は、可撓性に優れ且つ耐屈曲性に優れることから、電子機器等への実装形態における自由度が高く、フレキシブルフラットケーブル(FFC)として好適に用いられる。例えば、自動車におけるエアバックシステムの構成部品であるステアリング・ロール・コネクタ(SRC)、ルーフハーネス、ドアハーネス、フロアハーネス等として好適に用いられる。
以下に、本発明に係る圧延銅箔について、実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
まず、Φ2.6mmの軟銅線を伸線することで、Φ0.30mmの硬銅線(丸線型)を準備した。この硬銅線に、Φ100mmのロールを有する圧延機(無潤滑)を用いて圧延を施して、厚さ0.080mm×幅0.8mmの箔状に成形し、圧延銅箔を得た。
前述の方法により、最表面を構成する結晶粒子の平均粒子径、該平均粒子径の圧延銅箔の厚みに対する比率、および圧延銅箔の長手方向に直交する断面をEBSD解析した際における前述の式(1)により求められる粒内歪み率を求めた。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
前記実施例1において、前記圧延によって厚さ0.080mm×幅0.8mmの箔状に成形した後、該箔状のものに対し、ソルトバスを用いて800℃5secの条件で熱処理(焼鈍)を施し、更に熱処理(焼鈍)の後水冷によって急冷し、圧延銅箔を得た。
〔比較例2〕
前記実施例1において、Φ2.6mmの軟銅線を伸線した後、更に300℃2hの熱処理を施すことでΦ0.30mmの軟銅線(丸線型)を準備し、前記Φ0.30mmの硬銅線(丸線型)に代えて前記軟銅線を用いたこと以外は、実施例1に記載の方法により圧延銅箔を得た。
−評価:耐屈曲性試験−
図2に示す上島製作所製FPC屈曲試験機(FT−2130)を用い、試料固定板4および稼動板6に圧延銅箔2を固定し、モーター8により稼動板6を稼働させて屈曲試験を行った。尚、屈曲R:12.5mm、ストロークS:±13mm、環境温度:85℃、回転速度:900rpm、断線定義:初期抵抗値+500Ωとし、断線が確認されるまで屈曲試験を繰返した。
Figure 0005839950
2 圧延銅箔
4 試料固定板
6 稼動板
8 モーター

Claims (3)

  1. 銅の結晶粒子で構成された圧延銅箔であって、
    最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.3μm以下であり、
    前記圧延銅箔の厚みに対する、最表面を構成する前記結晶粒子の平均粒子径の比率が0.5%以上1.3%以下であり、
    且つ前記圧延銅箔の長手方向に直交する断面をEBSD(electron backscatter diffraction)解析した際における下記式(1)により求められる粒内歪み率が50%以上70%以下である圧延銅箔。
    式(1) 粒内歪み率(%)=(A)/(B)×100
    (上記式(1)において、(A)は、画像解析により方位差1度以上15度以下と識別される領域の面積を、(B)は、画像解析により方位差0度以上15度以下と識別される領域の面積を、表す。)
  2. 丸線型の銅材圧延物である請求項1に記載の圧延銅箔。
  3. 前記圧延銅箔の厚みが0.02mm以上0.1mm以下である請求項1または請求項2に記載の圧延銅箔。
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