JP5839279B2 - トンネル構造およびその構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル構造およびその構築方法に関するものである。
トンネルの覆工とは、トンネルの掘削面を被覆する構造体またはこの構造体を構成するものを指し、トンネル掘削に伴うトンネル周辺地山の変形や天端・側壁部の崩落の抑制や防止などの周辺地山の安定性の確保の他に、トンネル内への湧水・漏水の抑制およびトンネル内の美観の確保等を目的として構築されるものである。
図15に示すように、山岳トンネルの標準工法では、この覆工は、一次支保2と二次覆工4とに区分されている。一次支保2は、上述のトンネル掘削時の周辺地山の安定性を確保することを目的に掘削面6に施工される構造体であり、通常は吹付けコンクリート、鋼製支保工およびロックボルトで構成される。
また、二次覆工4は、一次支保2の内面側に施工される構造体であり、その他の機能を分担することが期待されるが、条件によっては、一次支保2と同様にトンネルの安定性を確保するための力学的な機能も担う場合がある。このため、二次覆工4については、ひび割れ、変形、崩壊等が生じにくく、また、漏水等による浸食や強度の低下等の少ない耐久性が要求される。
図16に示すように、この二次覆工4のコンクリートは、約10m程度のスパンごとに作製されるものであり、通常は無筋のコンクリートで構成される。二次覆工4は、アーチ状の薄いコンクリート構造体を地山と覆工型枠に挟まれた狭い空間にトンネルの内側から施工するため、コンクリート打設および締め固めにおいて厳しい施工条件となることがあり、ひび割れ、剥離剥落、巻厚不足、背面空洞、一次支保との間に設ける防水シートの損傷、コールドジョイントや表面仕上がりの不良等、さまざまな問題が発生し易い状況にある。
また、これらの問題を克服したとしても、打設後に乾燥収縮する二次覆工コンクリートが周辺から拘束されることで二次覆工コンクリートに引張応力が生じるので、二次覆工コンクリートにはこれに起因したひび割れが発生し易い状況にある。例えば、図17に示すように、二次覆工4の中央の脚部にひび割れ9が生じることがある。
この脚部のひび割れは、図15に示すように、二次覆工コンクリート4とインバートコンクリート8の打ち継ぎ目の付着により、二次覆工コンクリート4が乾燥収縮しようとする際にそれを拘束することで生じた引張応力に起因して発生するものである。
これに対し、二次覆工コンクリートのひび割れを制御するようにしたトンネル構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、二次覆工コンクリートとインバートコンクリートとの境界部にシート端部による縁切り工を設けることにより、二次覆工コンクリートのひび割れを制御している。
特開2004−116035号公報
しかしながら、上記の従来の特許文献1では、二次覆工コンクリートとインバートコンクリートとの境界部にシートを要するので、このシートに係る材料コストや施工コストが増大するおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、二次覆工コンクリートの乾燥収縮に伴うひび割れ発生を低コストで防止することができるトンネル構造およびその構築方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るトンネル構造は、インバートコンクリートと、該インバートコンクリートに支持された二次覆工コンクリートとを敷設したトンネル構造であって、前記インバートコンクリート、前記二次覆工コンクリートの少なくとも一方に、他方との間に空隙を形成する凹部を設けたことを特徴とする。
また、本発明に係るトンネル構造は、上述したトンネル構造において、前記凹部を、前記二次覆工コンクリートの脚部にトンネルの軸方向に間隔を開けて複数設けたことを特徴とする。
また、本発明に係るトンネル構造は、上述したトンネル構造において、前記凹部を、前記インバートコンクリートの側縁部にトンネルの軸方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とする。
また、本発明に係るトンネル構造は、上述したトンネル構造において、前記凹部を、トンネルの軸方向を長軸とする半楕円形状または長孔形状に形成したことを特徴とする。
また、本発明に係るトンネル構造の構築方法は、上述したトンネル構造を構築する方法であって、前記凹部を形成するための型枠部材を設置してからコンクリートを打設し、その後、前記型枠部材を撤去することを特徴とする。
また、本発明に係るトンネル構造の構築方法は、上述したトンネル構造の構築方法において、打設したコンクリートの乾燥収縮後に、前記型枠部材を撤去した後に残る凹部に硬化材を充填することを特徴とする。
本発明に係るトンネル構造は、インバートコンクリートと、インバートコンクリートに支持された二次覆工コンクリートとを敷設したトンネル構造であって、インバートコンクリート、二次覆工コンクリートの少なくとも一方に、他方との間に空隙を形成する凹部を設けたので、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートとの間の付着力による二次覆工コンクリートの乾燥収縮を拘束する影響を低減できる。これにより、二次覆工コンクリートに生じる乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、二次覆工コンクリートの脚部中央におけるひび割れを防止できる。また、ひび割れを防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリートと二次覆工コンクリートとの間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、二次覆工コンクリートの乾燥収縮に伴うひび割れを低コストで防止できるという効果を奏する。
また、本発明に係るトンネル構造の構築方法は、上述したトンネル構造を構築する方法であって、凹部を形成するための型枠部材を設置してからコンクリートを打設し、その後、型枠部材を撤去するので、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートとの間に空隙を効率的に作製することができる。また、二次覆工コンクリートとインバートコンクリートとの間の付着力による二次覆工コンクリートの乾燥収縮を拘束する影響を低減することができる。このため、二次覆工コンクリートに生じる乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、二次覆工コンクリートの脚部中央におけるひび割れの発生を防止できる。このため、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリートと二次覆工コンクリートとの間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、二次覆工コンクリートの乾燥収縮に伴うひび割れ発生を低コストで防止できるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施の形態1であるトンネル構造を示す横断面図である。 図2は、本発明の実施の形態1であるトンネル構造を示す斜視図である。 図3は、図2に示したA部拡大図である。 図4は、本発明の実施の形態1であるトンネル構造のひび割れ低減効果を検証するための解析モデルを示す模式図である。 図5は、未対策の場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。 図6は、本発明の実施の形態1のように、二次覆工コンクリートに凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。 図7は、二次覆工コンクリートに図6に示す凹部よりも小さな凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。 図8は、本発明の実施の形態2であるトンネル構造を示す横断面図である。 図9は、本発明の実施の形態2であるトンネル構造を示す斜視図である。 図10は、図9に示したB部拡大図である。 図11は、本発明の実施の形態2であるトンネル構造のひび割れ低減効果を検証するための解析モデルを示す模式図である。 図12は、未対策の場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平応力の分布を示す図である。 図13は、本発明の実施の形態2のように、インバートコンクリートに凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。 図14は、インバートコンクリートに図13に示す凹部よりも小さな凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。 図15は、一次支保および二次覆工を有するトンネルの断面図である。 図16は、3スパンからなる二次覆工コンクリートを示す斜視図である。 図17は、従来の二次覆工コンクリート中央の脚部付近に生じるひび割れを示す図である。
本発明に係るトンネル構造は、インバートコンクリートと、インバートコンクリートに支持された二次覆工コンクリートとを敷設したトンネル構造であって、インバートコンクリート、二次覆工コンクリートの少なくとも一方に、他方との間に空隙を形成する凹部を設けたものである。
以下に、本発明に係るトンネル構造およびその構築方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施の形態1]
[トンネル構造]
まず、本発明の実施の形態1であるトンネル構造について説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10は、掘削した坑道の内壁面に吹き付けられたコンクリート(一次支保18)と、掘削した坑道の底部に敷設されたインバートコンクリート12と、インバートコンクリート12に支持された二次覆工コンクリート14とを備えたものである。
本発明の実施の形態1であるトンネル構造10は、トンネルの軸方向に延びる二次覆工コンクリート14の脚部に間隔をあけて複数の凹部141を設けたこと特徴とする。凹部141は、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間の付着力による拘束を低減するためのもので、インバートコンクリート12との間に空隙16を形成する。凹部141は、二次覆工コンクリート14の脚部に、インバートコンクリート12に接する接合面から凹むように設けてある。凹部141は、トンネルの軸方向に延びる二次覆工コンクリート14の脚部側端縁を長軸とする半楕円形状に形成してある。これにより、凹部141は、トンネルの径方向に短く(低く)、トンネルの軸方向に長くなり、二次覆工コンクリート14が乾燥収縮した場合に働く力は、凹部141において分散する。なお、凹部141は、トンネルの軸方向に延びる二次覆工コンクリート14の脚部側端縁を長軸とする半楕円形状に限られるものではなく、トンネルの軸方向の延びる二次覆工コンクリート14の脚部側端縁を長軸(中心線)とする半長孔形状であってもよい。
また、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10は、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮が終了した時点で、凹部141に無収縮モルタル等の硬化材17を充填し、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間に形成された空隙16を埋める。
このように、二次覆工コンクリート14の脚部(インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との打ち継ぎ目)にインバートコンクリート12との間に空隙16を形成する凹部141を人工的に設けたことで、トンネルの脚部に生じるひび割れの要因となる、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間の付着力を制御する。これにより、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮を拘束する付着力を低減することができ、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、トンネルの脚部におけるひび割れの発生を防止できる。
また、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10によれば、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間にシートを設ける必要がないので経済的である。これにより、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴う、トンネルの脚部におけるひび割れ発生を低コストで防止できる。
[トンネル構造の構築方法]
つぎに、本発明の実施の形態1であるトンネル構造の構築方法について説明する。
本発明の実施の形態1であるトンネル構造10の構築方法は、図1および図2に示すように、敷設されたインバートコンクリート12との間に凹部141を形成するための型枠部材を設置してから二次覆工コンクリート14を打設し、その後、型枠部材を撤去するものである。
より具体的には、硬質ゴム等を用いて凹部141と同じ形状の型枠部材を事前に造っておき、セントル(二次覆工コンクリート打設のために設けるアーチ状の型枠支保工)を設置の際にこの型枠部材を凹部141を設ける位置に配置して二次覆工コンクリート14を打設する。その後、脱型時にこの型枠部材をトンネルの内空側に抜き取る。このように、型枠部材を凹部141を設ける位置に設置して、二次覆工コンクリート14を打設すれば、トンネルの軸方向に延びる二次覆工コンクリート14の脚部に凹部141を効率的に作製できる。
また、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10の構築方法は、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮が終了した時点で凹部141に無収縮モルタル等の硬化材17を充填し、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間に形成された空隙16を埋める。
このように、二次覆工コンクリート14の脚部(インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14の打ち継ぎ目)にインバートコンクリート12との間に空隙16形成する凹部141を人工的に設けたことで、トンネルの脚部に生じるひび割れの要因となる、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間の付着力を制御する。これにより、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮を拘束する付着力を低減することができ、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、トンネルの脚部におけるひび割れの発生を防止できる。
また、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10の構築方法によれば、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間にシートを設ける必要がないので経済的である。これにより、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴う、トンネルの脚部におけるひび割れを低コストで防止できる。
次に、本発明の実施の形態1であるトンネル構造による、二次覆工コンクリートひび割れ低減効果を検証するために行った数値解析について、図4〜図7を参照しながら説明する。
図4は、解析モデルを示す模式図である。図4(1)に示すように、この解析モデルは、インバートコンクリート12および二次覆工コンクリート14を平板要素として二次元モデル化したものである。図4(2)では、平板要素の側部の左側が鉛直移動可能に拘束され、下側が水平移動可能に拘束されることを解析条件としている。
図5〜図7に解析結果を示す。図5は、未対策の場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。図6は、本発明の実施の形態1のように、二次覆工コンクリートに凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。図7は、二次覆工コンクリートに図6に示す凹部よりも小さな凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。
図5に示すように、未対策の場合には、二次覆工コンクリートの脚部中央に3MPa程度の引張応力が生じる。一方、図6に示すように、二次覆工コンクリート14の脚部に凹部141を設けた場合(本発明の実施の形態1に対応)には、脚部中央に設けた凹部141の上方域に1MPa程度の引張応力が生じる。このことから、本発明の実施の形態1のように、二次覆工コンクリート14の脚部に凹部141を設けた場合には、二次覆工コンクリート14の脚部中央に生じる引張応力が未対策の場合に比べて3分の1程度に低減することがわかる。
また、図7に示すように、二次覆工コンクリート14の脚部に図6に示すよりも小さな凹部141を設けた場合には、脚部中央に設けた凹部141の上方域に1.5MPa程度の引張応力が生じる。このことから、図7に示すように、二次覆工コンクリート14の脚部に図6に示すよりも小さな凹部141を設けた場合でも、二次覆工コンクリート14の脚部中央に生じる引張応力が未対策のものに比べて2分の1程度に低減することがわかる。
解析結果からも検証されたように、二次覆工コンクリート14の脚部にインバートコンクリート12との間に空隙16を形成する凹部141を人工的に設けたことで、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴う引張応力が未対策のものの3分の1あるいは2分の1に低減できる。これにより、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10は、トンネルの脚部におけるひび割れを防止できる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10は、インバートコンクリート12と、インバートコンクリート12に支持された二次覆工コンクリート14とを敷設したトンネル構造であって、二次覆工コンクリート14に、インバートコンクリート12との間に空隙16を形成する凹部141を設けたので、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間の付着力による二次覆工コンクリート14の乾燥収縮を拘束する影響を低減することができる。このため、二次覆工コンクリート14に生じる乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、二次覆工コンクリート14の脚部におけるひび割れの発生を防止できる。また、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴うひび割れ発生を低コストで防止できる。
また、本発明の実施の形態1であるトンネル構造10の構築方法は、上述したトンネル構造10を構築する方法であって、凹部141を形成するための型枠部材を設置してから二次覆工コンクリート14を打設し、その後、型枠部材を撤去するので、二次覆工コンクリート14に凹部141を効率的に作製することができる。また、インバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間の付着力による二次覆工コンクリート14の乾燥収縮を拘束する影響を低減することができる。このため、二次覆工コンクリート14に生じる乾燥収縮に伴う引張応力を抑制し、二次覆工コンクリート14の脚部におけるひび割れの発生を防止することができる。このため、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート12と二次覆工コンクリート14との間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、二次覆工コンクリート14の乾燥収縮に伴うひび割れ発生を低コストで防止することができる。
[実施の形態2]
[トンネル構造]
まず、本発明の実施の形態2であるトンネル構造について説明する。
図8〜図10に示すように、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20は、掘削した坑道の内壁面に吹き付けられたコンクリート(一次支保28)と、掘削した坑道の底部に敷設されたインバートコンクリート22と、インバートコンクリート22に支持された二次覆工コンクリート24とを備えたものである。
本発明の実施の形態2であるトンネル構造20は、トンネルの軸方向に延びるインバートコンクリート22の側縁部に間隔をあけて複数の凹部221を設けたことを特徴とする。凹部221は、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間の付着力による拘束を低減するためのもので、二次覆工コンクリート24との間に空隙26を形成する。凹部221は、インバートコンクリート22の側縁部に、二次覆工コンクリート24に接する接合面から凹むように設けてある。凹部221は、トンネルの軸方向に延びるインバートコンクリート22の側縁を長軸とする半楕円形状に形成してある。これにより、凹部221は、トンネルの径方向に短く(浅く)、トンネルの軸方向に長くなり、二次覆工コンクリート24が乾燥収縮した場合に働く力は、凹部221において分散する。なお、凹部221は、トンネルの軸方向に延びるインバートコンクリート22の側縁を長軸とする半楕円形状に限られるものではなく、トンネルの軸方向に延びるインバートコンクリート22の側縁を長軸(中心線)とする半長孔形状であってもよい。
また、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20は、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮が終了した時点で、凹部221に無収縮モルタル等の硬化材27を充填し、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間に形成された空隙26を埋める。
このように、インバートコンクリート22の側縁部(インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との打ち継ぎ目)に二次覆工コンクリート24との間に空隙26を形成する凹部221を人工的に設けたことで、トンネルの脚部に生じるひび割れの要因となる、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間の付着力を制御する。これにより、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮を拘束する付着力を低減することができ、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、トンネルの脚部におけるひび割れの発生を防止することができる。
また、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法によれば、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間にシートを設ける必要がないので経済的である。これにより、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴う、トンネルの脚部におけるひび割れを低コストで防止できる。
[トンネル構造の構築方法]
つぎに、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法について説明する。
本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法は、凹部221を形成するための型枠部材を設置してからインバートコンクリート22、二次覆工コンクリート24を打設し、その後、型枠部材を撤去するものである。
より具体的には、硬質ゴム等を用いて凹部221と同じ形状の型枠部材を事前に造っておき、この型枠部材を凹部221を形成する位置に設置してインバートコンクリート22を打設する。つぎに、セントラル(二次覆工コンクリート打設のために設けるアーチ状の型枠支保工)を設置して二次覆工コンクリート24を打設する。その後、脱型時にこの型枠部材をトンネルの内空側に抜き取る。このように、型枠部材を所定の位置に配置して、インバートコンクリート22、二次覆工コンクリート24を打設すれば、トンネルの軸方向に延びるインバートコンクリート22の側縁部に凹部221を効率的に作製できる。
また、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法は、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮が終了した時点で凹部221に無収縮モルタル等の硬化材27を充填し、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間に形成された空隙26を埋める。
このように、インバートコンクリート22の側縁部(インバートコンクリートと二次覆工コンクリートの打ち継ぎ目)に二次覆工コンクリート24との間に空隙26を形成する凹部221を人工的に設けたことで、トンネルの脚部に生じるひび割れの要因となる、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間の付着力を制御する。これにより、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮を拘束する付着力を低減することができ、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、トンネルの脚部におけるひび割れの発生を防止できる。
また、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法によれば、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間にシートを設ける必要がないので経済的である。これにより、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴う、トンネルの脚部におけるひび割れを低コストで防止できる。
つぎに、本発明の実施の形態2であるトンネル構造による、二次覆工コンクリートひび割れ低減効果を検証するために行った数値解析について、図11〜図14を参照しながら説明する。
図11は、解析モデルを示す模式図である。図11(1)に示すように、この解析モデルは、インバートコンクリート22および二次覆工コンクリート24を平板要素として二次元モデル化したものである。図11(2)では、平板要素の側部の左側が鉛直移動可能に拘束され、下側が水平移動可能に拘束されることを解析条件としている。
図12〜図14に解析結果を示す。図12は、未対策の場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。図13は、本発明の実施の形態2のように、インバートコンクリートに凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。図14は、インバートコンクリートに図13に示す凹部よりも小さな凹部を設けた場合に、インバートコンクリートと覆工コンクリートに作用する水平方向応力の分布を示す図である。
図12に示すように、未対策の場合には、二次覆工コンクリート24の脚部中央に3MPa程度の引張応力が生じる。一方、図13に示すように、インバートコンクリート22の側縁部に凹部221を設けた場合(本発明の実施の形態2に対応)には、側縁部中央に設けた凹部221の上方域となる二次覆工コンクリート24に1MPa程度の引張応力が生じる。このことから、本発明の実施の形態2のように、インバートコンクリート22の側縁部に凹部221を設けた場合には、二次覆工コンクリート24の脚部中央に生じる引張応力が未対策の場合に比べて3分の1程度に低減することがわかる。
また、図14に示すように、インバートコンクリート22に図13に示すよりも小さな凹部221を設けた場合には、側縁部中央に設けた凹部221の上方域となる二次覆工コンクリート24に1.5MPa程度の引張応力が生じる。このことから、図14に示すように、インバートコンクリート22に図13に示すよりも小さな凹部221を設けた場合でも、二次覆工コンクリート24の脚部中央に生じる引張応力が2分の1程度に低減することがわかる。
解析結果からも検証されたように、インバートコンクリート22の側縁部に二次覆工コンクリート24との間に空隙26を形成する凹部221を人工的に設けたことで、二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴う引張応力が未対策のものの3分の1あるいは2分の1に低減できる。これにより、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20は、トンネルの脚部におけるひび割れの発生を防止できる。
以上説明したように、本発明の実施の形態2であるトンネル構造は、インバートコンクリート22と、インバートコンクリート22に支持された二次覆工コンクリート24とを敷設したトンネル構造であって、インバートコンクリート22に、二次覆工コンクリート24との間に空隙26を形成する凹部221を設けたので、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間の付着力による二次覆工コンクリート24の乾燥収縮を拘束する影響を低減することができる。このため、二次覆工コンクリート24に生じる乾燥収縮に伴う引張応力が抑制され、二次覆工コンクリート24の脚部におけるひび割れの発生を防止できる。また、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、低コストで二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴うひび割れ発生を防止できる。
また、本発明の実施の形態2であるトンネル構造20の構築方法は、上述したトンネル構造20を構築する方法であって、凹部221を形成するための型枠部材を設置してから、インバートコンクリート22、二次覆工コンクリート24を打設し、その後、型枠部材を撤去するので、インバートコンクリート22に凹部221を効率的に作製することができる。また、インバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間の付着力による二次覆工コンクリート24の乾燥収縮を拘束する影響を低減することができる。このため、二次覆工コンクリート24に生じる乾燥収縮に伴う引張応力を抑制し、二次覆工コンクリート24の脚部におけるひび割れの発生を防止できる。このため、ひび割れ発生を防止するために上記の従来技術のようにインバートコンクリート22と二次覆工コンクリート24との間にシートを設ける必要がなく経済的であることから、低コストで二次覆工コンクリート24の乾燥収縮に伴うひび割れを防止できる。
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3であるトンネル構造は、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートとの間に空隙を形成するように、インバートコンクリートと二次覆工コンクリートの両方に凹部を設けたものである。ここで、インバートコンクリートに設けた凹部、二次覆工コンクリートに設けた凹部は、一つの空隙を形成するものであってもよいし、それぞれが空隙を形成するものであってもよい。
なお、本発明の実施の形態3であるトンネル構造が、二次覆工コンクリートの脚部に生じる引張応力を低減することは、上述した本発明の実施の形態1であるトンネル構造10や本発明の実施の形態2であるトンネル構造20から明らかである。
以上のように、本発明に係るトンネル構造およびその構築方法は、二次覆工コンクリートの乾燥収縮に伴うひび割れ発生を防止するのに有用であり、特に、低コストでひび割れ発生を防止するのに適している。
10 トンネル構造
12 インバートコンクリート
14 二次覆工コンクリート
141 凹部
16 空隙
17 硬化材
18 一次支保
20 トンネル構造
22 インバートコンクリート
221 凹部
24 二次覆工コンクリート
26 空隙
27 硬化材
28 一次支保

Claims (5)

  1. インバートコンクリートと、該インバートコンクリートに支持された二次覆工コンクリートとを敷設し、前記インバートコンクリート、前記二次覆工コンクリートの少なくとも一方に、他方との間に空隙を形成する凹部を設けたトンネル構造であって、
    前記凹部を、前記二次覆工コンクリートの脚部にトンネルの軸方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とするトンネル構造。
  2. インバートコンクリートと、該インバートコンクリートに支持された二次覆工コンクリートとを敷設し、前記インバートコンクリート、前記二次覆工コンクリートの少なくとも一方に、他方との間に空隙を形成する凹部を設けたトンネル構造であって、
    前記凹部を、前記インバートコンクリートの側縁部にトンネルの軸方向に間隔をあけて複数設けたことを特徴とするトンネル構造。
  3. 前記凹部を、トンネルの軸方向を長軸とする半楕円形状または長孔形状に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル構造。
  4. 前記請求項1〜のいずれか一つに記載のトンネル構造を構築する方法であって、
    前記凹部を形成するための型枠部材を設置してからコンクリートを打設し、その後、前記型枠部材を撤去することを特徴とするトンネル構造の構築方法。
  5. 打設したコンクリートの乾燥収縮後に、前記型枠部材を撤去した後に残る凹部に硬化材を充填することを特徴とする請求項に記載のトンネル構造の構築方法。
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