JP5838826B2 - パターン構造体の製造方法とナノインプリントリソグラフィ方法およびインプリント装置 - Google Patents
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Description
上述のような問題は、ナノインプリントによる所望部位へのベタ薄膜からなるパターン構造体の製造、例えば、多層膜や表面コーティングなどの膜形成での膜厚制御においても、同様に、重大な支障を来すものである。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、高精度の膜厚・寸法制御が可能なパターン構造体の製造方法と高い精度での微細加工が可能なナノインプリントリソグラフィ方法、これらを可能とするインプリント装置とを提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記環境に供給された前記気体の圧力を、対応する光硬化性樹脂成分の前記環境の温度における飽和蒸気圧未満とするような構成とした。
本発明の他の態様として、前記環境に供給する気体は、前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の気体とキャリアガスとの混合気体であるような構成、あるいは、前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分のみからなる気体であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記環境に供給する前記気体は、前記光硬化性樹脂の前記環境の温度における飽和蒸気圧が最も高い成分の気体を少なくとも含有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記高圧状態は、設定した圧力において前記液滴に含まれる成分の中で最も沸点が低く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であるような構成とした。
本発明の他の態様として、冷却して低温状態とすることにより前記環境を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記低温状態は、設定した温度において前記液滴に含まれる成分の中で最も蒸気圧が高く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であるような構成とした。
本発明の他の態様として、高圧低温状態とすることにより前記環境を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記高圧低温状態は、設定した圧力において前記液滴に含まれる成分の中で最も沸点が低く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持され、かつ、設定した温度において前記液滴に含まれる成分の中で最も蒸気圧が高く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記環境制御部は、前記液滴の環境に供給された前記気体の圧力を、対応する光硬化性樹脂成分の前記環境の温度における飽和蒸気圧未満とする分圧制御部を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記気体供給部は、前記光硬化性樹脂に含有される所望の成分の気体とキャリアガスとの混合気体を前記液滴の環境に供給するような構成、あるいは、前記光硬化性樹脂に含有される所望の成分の気体のみを前記液滴の環境に供給するような構成とした。
本発明の他の態様として、さらに、少なくとも前記モールド保持部、前記基材保持部、および、前記液滴供給部を内部に収納するチャンバーを備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記環境制御部は、前記チャンバー内部の圧力調整機構を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記環境制御部は、前記チャンバー内部の温度調整機構を有するような構成とした。
[パターン構造体の製造方法]
本発明のパターン構造体の製造方法は、液滴供給工程、接触工程、硬化工程、離型工程を有しており、図1は、本発明のパターン構造体の製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
本発明では、まず、液滴供給工程で、インプリント用の基材1上の所望の領域に光硬化性樹脂の液滴5を供給する(図1(A))。
基材1は適宜選択することができ、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、金属基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。また、例えば、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が形成されたものであってもよい。
また、光硬化性樹脂を液滴5として滴下する手段としては、ディスペンサやインクジェット装置等を挙げることができる。
このため、本発明では、基材1上に供給された液滴5を、光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境(以下、「揮発抑制環境」とも記す)下に置くようにする。本発明では、液滴5の液量と組成とを意図した範囲内に維持することが重要であり、これが担保される範囲内での液滴5の揮発は許容される。したがって、揮発抑制環境は、少なくとも許容される範囲まで揮発を抑制できる環境である。このような揮発抑制環境は、少なくとも液滴供給工程と、後述する接触工程まで維持することが好ましい。
尚、光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境については、後述する。
本発明では、次に、接触工程にて、凹凸構造を備えたモールド11と基材1を近接させて、このモールド11と基材1との間に液滴5を展開して光硬化性樹脂層6を形成する(図1(B))。
図示例では、モールド11の面11aは、凹部12を有する凹凸構造領域Aと、凹部12が形成されていない非凹凸構造領域Bからなっている。このようなモールド11の材質は適宜選択することができるが、光硬化性樹脂層6を硬化させるための照射光が透過可能な透明基材を用いて形成することができ、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。モールド11の厚みは凹凸構造の形状、材料強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。また、モールド11は、凹凸構造領域Aが非凹凸構造領域Bに対して凸構造となっている、いわゆるメサ構造であってもよい。
上述のように、本発明では、基材1上に供給された液滴5を、光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境下に置くことにより、液滴5の液量を意図した範囲内に維持することができ、液滴5と基材1およびモールド11との接触面積を意図した大きさとし、意図した膜厚分布をもつ連続した光硬化性樹脂層6を形成することができる。
次いで、硬化工程で、モールド11側から光照射を行い、光硬化性樹脂層6を硬化させて、モールド11の凹凸構造が転写された転写樹脂層7とする(図1(C))。この硬化工程では、基材1が光を透過する材料であれば、基材1側から光照射を行ってもよく、また、基材1とモールド11の両側から光照射を行ってもよい。
次に、離型工程にて、転写樹脂層7とモールド11を引き離して、転写樹脂層7であるパターン構造体21を基材1上に位置させた状態とする(図1(D))。
ここで、光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境(揮発抑制環境)について説明する。
このような揮発抑制環境は、例えば、(I)光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の気体を供給すること、(II)高圧状態とすること、(III)低温状態とすること、により形成することができる。また、気体は、高圧あるいは低温となるに従い液体となりやすく、装置による都合を除けば、圧力と温度は対等なパラメータであり、したがって、上記のうち、(II)と(III)を併用して揮発抑制環境を形成してもよい。
この場合の気体は、上述のように、(1)最も揮発しやすい成分、したがって、その環境の温度における飽和蒸気圧が最も高い成分の気体、(2)揮発による減少で、意図した組成範囲から外れるおそれが最も大きい成分の気体、上記の(1)の成分や(2)の成分を除く他の成分の気体、上記の(1)の成分または(2)の成分を含む2以上の成分の気体、光硬化性樹脂に含有される全成分の気体とすることができる。
また、環境を形成するために供給する気体は、光硬化性樹脂に含有される所望の成分のみからなる気体であってもよい。この場合、例えば、所望の成分の組成物を加熱して揮発させた気体を供給して揮発抑制環境を形成することができる。あるいは、少なくとも液滴供給工程から接触工程までをチャンバー内で実施可能とし、予めチャンバー内を減圧して大気を排除し、その後、所望の成分の気体を供給して揮発抑制環境を形成することができる。さらに、その他の気体を別途チャンバーに送り込み、チャンバー内部の圧力が適正となるように調整してもよい。
尚、気体中の所望の成分の圧力(分圧)は、マスフィルターを用いた計測器等により測定することができる。
高圧下では沸点が上昇し、1気圧での沸点を大きく超える温度でも液相を維持することが可能となる。本発明では、高圧状態とすることにより、揮発抑制環境を形成する。このような揮発抑制環境を形成するために、少なくとも液滴供給工程から接触工程までをチャンバー内で実施可能とし、このチャンバー内を高圧状態とする。チャンバー内の高圧状態としては、例えば、光硬化性樹脂に含有される成分の中で1気圧における沸点が最も低い成分に着目し、この成分の揮発が防止、あるいは、抑制される程度の圧力に設定することが最も容易である。また、各成分の蒸気圧曲線に着目し、設定する圧力において揮発しやすい成分の順位が変化していないことを確認することが、より好ましい。このように考えると、各成分の蒸気圧曲線に着目しながら圧力を上げ、その圧力において最も沸点が低い、つまり蒸気圧が高い成分の揮発が防止、あるいは、抑制される程度の圧力となるように設定することができる。
本発明では、低温状態とすることにより、飽和蒸気圧を低下させ揮発量を減少させて、揮発抑制環境を形成してもよい。このような揮発抑制環境を形成するためには、少なくとも液滴供給工程から接触工程までをチャンバー内で実施可能とし、このチャンバー内を低温状態とする。また、基材1上の液滴5に、光硬化性樹脂との結合が生じ難いガス、例えば、炭酸ガス、窒素ガス等のガスを、光硬化性樹脂の性能、特性に影響を生じない程度に吹き付けることにより、液滴5の周囲に低温状態の環境を形成することもできる。さらに、基材1を保持する部材を介して基材1を予め低温状態とし、供給される光硬化性樹脂の液滴5を所望の低温状態としてもよい。このような低温状態としては、例えば、光硬化性樹脂に含有される成分の中で25℃における飽和蒸気圧が最も高い成分に着目し、この成分の飽和蒸気圧が低下して揮発が防止、あるいは、抑制される程度の温度に設定することが最も容易である。また、各成分の蒸気圧曲線に着目し、設定する温度において揮発しやすい成分の順位が変化していないことを確認することが、より好ましい。このように考えると、各成分の蒸気圧曲線に着目しながら温度を下げ、その温度において最も蒸気圧が高い成分の揮発が防止、あるいは、抑制される程度の温度となるように設定することができる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、液滴供給工程において、モールド11に光硬化性樹脂の液滴5を供給してもよい。
また、モールドが凹凸構造を有しておらず、基材と対向して光硬化性樹脂層を形成する面が平面であってもよい。このようなモールドを用いることにより、本発明では、高い精度で厚みを制御されたベタ薄膜のパターン構造体を製造することが可能となる。
図2は、本発明のナノインプリントリソグラフィ方法の一実施形態を説明するための工程図である。
本発明では、まず、所望のモールドを使用し、上述の本発明のパターン構造体の製造方法により、被加工体としての基材31上にパターン構造体41を形成する(図2(A))。
基材31としては、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、金属基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板等、特に制限はない。また、例えば、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等の所望のパターン構造物が形成されたものであってもよい。
形成されたパターン構造体41は、使用したモールドの凹凸構造が反転した凹凸構造を有するものであり、図示例では、パターン構造体41は複数の凹部41aを有し、この凹部41a内には残膜41bが存在している。本発明のナノインプリントリソグラフィ方法では、パターン構造体41を形成するための光硬化性樹脂を3〜30pL、特にナノスケールの微細なパターンを転写する場合のように3〜18pL程度の微量な液滴として供給する場合であっても、パターン構造体41を高い精度で形成することができるとともに、残膜41bの厚み制御が可能である。
次いで、エッチングマスク41Mを介して基材31にエッチング加工を行い(図2(C))、その後、エッチングマスク41Mを除去することにより、ナノインプリントリソグラフィ方法により微細な凹部31aが形成された基材31が得られる(図2(D))。基材31のエッチング加工は、例えば、フッ素系ガス、塩素系ガス等を用いたドライエッチングとすることができる。
この実施形態で、被加工体としての基材61は、被加工面にハードマスク71を有しており、所望のモールドを用いて上述の本発明のパターン構造体の製造方法により、基材61のハードマスク71上にパターン構造体81を形成する(図3(A))。ハードマスク71の形成は、基材61とのエッチング選択性を利用したドライエッチングが可能な材料を用いて、スパッタリング法等により行うことができる。ハードマスク71の材料としては、例えば、クロム、モリブデン、チタン、タンタル、ジルコニウム、タングステン等の金属、これらの金属の合金、酸化クロム、酸化チタン等の金属酸化物、窒化クロム、窒化チタン等の金属窒化物、ガリウム砒素等の金属間化合物等を挙げることができる。他にも、シリコンやその酸窒化物、更には、光硬化性樹脂とは異なる組成の樹脂等も適宜選択することができる。また、ハードマスク71の厚みは、基材61のドライエッチング条件と、ドライエッチング時のエッチング選択比(基材61のエッチング速度/ハードマスク71のエッチング速度)を考慮して設定することができ、例えば、1〜500nmの範囲で適宜設定することができる。
尚、上述の図2および図3に示したような実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述の例では、残膜81bの除去によるエッチングマスク81Mの作製と、ハードマスクパターン71Mの作製とを、一連のドライエッチングで行っているが、それぞれを異なる条件のドライエッチングで行ってもよい。また、エッチングマスク81Mが基材61のエッチング条件に耐えうるのであれば、あるいは、ハードマスクを介してエッチングすることが良好な凹凸構造を形成するための必須要件ではないのであれば、ハードマスク71は必ずしも必要ではなく、この場合、図2に示した実施形態とすることができる。
図4は、本発明のインプリント装置の一実施形態を示す構成図である。図4において、インプリント装置101は、モールド11を保持するためのモールド保持部102と、基材1を保持するための基材保持部103と、基材1上に光硬化性樹脂の液滴5を供給するための液滴供給部105と、モールド保持部102と基材保持部103とを離接可能とする転写機構部107と、基材1上に供給された液滴5の環境を、光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境(以下、「揮発抑制環境」とも記す)とする環境制御部111と、を備えている。
インプリント装置101を構成するモールド保持部102は、凹凸構造領域を有する面11aを基板保持部103方向に向けてモールド11を保持するものである。このモールド保持部102は、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構等によりモールド11を保持するものであり、保持機構には特に制限はない。
インプリント装置101を構成する基材保持部103は、インプリント用の基材1を保持するものであり、例えば、吸引による保持機構、機械挟持による保持機構等により基材1を保持可能とされている。図示例では、基材保持部103はモールド保持部102の下方に位置している。
インプリント装置101を構成する転写機構部107は、図示例では、基材保持部103に配設されている昇降部材108と、この昇降部材108を矢印Z方向に昇降可能な駆動装置109を備えており、モールド保持部102に対して基材保持部103を離接可能としている。
上記のインプリント装置101では、気体供給用のノズル116aの狭窄や閉塞を防止して気体を安定して供給するために、ノズル116aに温度調整機構、加圧機構等を設けてもよい。
また、本発明のインプリント装置はチャンバーを備えていてもよい。図5は、このようなインプリント装置の例を示す構成図であり、上述の図4に示されるインプリント装置101のモールド保持部102、基材保持部103、液滴供給部105、転写機構部107、および、環境制御部111を内部に収納するチャンバー120を備えている。このようなチャンバー120を備えることにより、チャンバー120内での揮発抑制環境の形成において気密性の確保が容易となり、揮発抑制環境が安定したものとなる。図示例は、インプリント装置の全体をチャンバー120で覆う構造であるが、少なくとも液滴5が滴下される部分と、気体が供給される部分とが同一のチャンバー内にあればよく、例えば、転写機構部107や環境制御部111の全てをチャンバーで覆うことは必須ではない。
インプリント装置201における環境制御部211は、チャンバー220内部の圧力調整機構231を有している。この圧力調整機構231は、チャンバー220の一方の開口220Aに弁226を備えたパイプ224を介して接続されたコンプレッサー232と、チャンバー220の他方の開口220Bに接続された弁227付きのパイプ225とを有している。
尚、図7に示される例では、インプリント装置の全体をチャンバー220で覆う構造であるが、少なくとも液滴5が滴下される部分がチャンバー内にあればよく、例えば、転写機構部207の全てをチャンバーで覆うことは必須ではない。
インプリント装置301における環境制御部311は、チャンバー320内部の温度調整機構331を有している。この圧力調整機構331は、チャンバー320の一方の開口320Aにパイプ333を介して連通された冷却装置332を有し、この冷却装置は、チャンバー320の他方の開口部320Bにパイプ334を介して連通されている。
上述のインプリント装置の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
[実施例1]
ベンジルアクリレート(蒸気圧:25℃において9.66×10-3kPa)をインクジェットにより滴下した後の揮発性を下記のように計測した。
まず、インクジェット装置にて、ベンジルアクリレートの液滴(1滴あたり6pL)を5滴、シリコン基板上の同一箇所に滴下し、シリコン基板上にて30pLの液滴となるようにした。尚、使用したシリコン基板は、その表面の濡れによる液滴形状への影響を低減するために、オプツールDSX(ダイキン工業製)を塗布した。これにより、フッ素による撥水作用でベンジルアクリレートの接触角はおよそ80°で一定となった。シリコン基板に対するベンジルアクリレートの接触角は、温度25℃、湿度30%、大気圧下でマイクロシリンジから液滴(液量1.0μL)を滴下して3秒後に接触角測定器(協和界面科学(株)製 CA−Z型)を用いて測定した。
インクジェット装置にてベンジルアクリレートの液滴を滴下する環境を密閉し、この密閉環境に予めベンジルアクリレートを揮発させて充填し、その後、上記のようにインクジェットを実施した。ベンジルアクリレートの揮発方法は、ベンジルアクリレートを入れたビーカーへ超音波を加える方法を採用し、揮発したベンジルアクリレートの気液平衡が崩れて液滴が生じることがない状態で環境Aを設定した。この環境Aで液滴の大きさの推移を計測した結果、滴下直後の液滴ピクセル数を100としたときの30秒後、60秒後、120秒後の液滴ピクセル数は99、94、77であった。
環境Bとして、温度23℃、湿度50%に制御したクリーンルーム内の環境を設定した。この環境Bで液滴の大きさの推移を計測した結果、滴下直後の液滴ピクセル数を100としたときの30秒後、60秒後の液滴ピクセル数は51、16であり、約120秒以内に液滴は揮発してシリコン基板上から消失した。
上記の環境A、環境Bでの揮発性の計測結果から、環境Aが揮発抑制環境としての効果を奏することが確認された。
ベンジルアクリレート(蒸気圧:25℃において9.66×10-3kPa)とイソボニルアクリレート(蒸気圧:25℃において4.03×10-3kPa)との1:1混合液体を使用した他は、実施例1と同様にして、2種の環境A、環境Bで揮発性を計測した。
但し、環境Aでは、充填する気体として、ベンジルアクリレートとイソボニルアクリレートの一方のみを選択する場合、蒸気圧から考えればベンジルアクリレートを選択することが揮発・充填のしやすさという点において容易であり、実施のうえでも好ましいことが理解できる。そこで、確認のために検証実験を行った。この検証実験では、ベンジルアクリレートとイソボニルアクリレートの混合液体50mLを、温度23℃、湿度50%に制御した環境に放置し、時間の経過共にGC−MSにて成分比率を検査した。その結果、調製直後は混合液体におけるベンジルアクリレートとイソボニルアクリレートの比率が1:1であったが、2日後に混合液体を計測した結果、イソボニルアクリレートの比率が60%を超えていることを確認した。このことから、ベンジルアクリレートの揮発性が高いことが確認され、密閉環境下において雰囲気に充填する気体をベンジルアクリレートとした。尚、先にも述べたように、装置の構成上において困難でなければベンジルアクリレートとイソボニルアクリレートとを揮発させても構わないし、イソボニルアクリレートを選択しても構わない。あくまで本実施例では、揮発を制御する環境Aを準備することがより容易であり、好ましい例を提示するものである。
環境Aで液滴の大きさの推移を計測した結果、滴下直後の液滴ピクセル数を100としたときの30秒後、60秒後、120秒後の液滴ピクセル数は99、98、86であった。
(環境Bでの揮発性の計測)
環境Bで液滴の大きさの推移を計測した結果、滴下直後の液滴ピクセル数を100としたときの30秒後、60秒後、120秒後の液滴ピクセル数は59、34、28であり、液滴が揮発しシリコン基板上から消失することは無かったものの、急速に揮発することが確認された。
上記の環境A、環境Bでの揮発性の計測結果から、環境Aが揮発抑制環境としての効果を奏することが確認された。
5…液滴
6…光硬化性樹脂層
7…転写樹脂層
11…モールド
21,41,81…パターン構造体
31,61…基材(被加工体)
41M,81M…エッチングマスク
71…ハードマスク
71…ハードマスクパターン
101,201,301…インプリント装置
102,202,302…モールド保持部
103,203,303…基材保持部
105,205,305…液滴供給部
107,207,307…転写機構部
111,211,311…環境制御部
Claims (22)
- 基材上または凹凸構造を備えたモールド上の所望の領域に光硬化性樹脂の液滴を供給する液滴供給工程と、
前記モールドと前記基材を近接させて、前記モールドと前記基材との間に前記液滴を展開して光硬化性樹脂層を形成する接触工程と、
光照射を行い前記光硬化性樹脂層の所望領域を硬化させて前記凹凸構造が転写された転写樹脂層とする硬化工程と、
前記転写樹脂層と前記モールドを引き離して、前記転写樹脂層であるパターン構造体を前記基材上に位置させた状態とする離型工程と、を有し、
少なくとも前記液滴供給工程と前記接触工程では、前記基材上または前記モールド上に供給された液滴を、前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制するために予め形成した環境下に置き、前記液滴間における濡れ広がりの差を抑制することを特徴とするパターン構造体の製造方法。 - 前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の気体を供給して前記環境を形成することを特徴とする請求項1に記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記環境に供給された前記気体の圧力を、対応する光硬化性樹脂成分の前記環境の温度における飽和蒸気圧未満とすることを特徴とする請求項2に記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記環境に供給する気体は、前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の気体とキャリアガスとの混合気体であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記環境に供給する気体は、前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分のみからなる気体であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記環境に供給する前記気体は、前記光硬化性樹脂の前記環境の温度における飽和蒸気圧が最も高い成分の気体を少なくとも含有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法。
- 昇圧して高圧状態とすることにより前記環境を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記高圧状態は、設定した圧力において前記液滴に含まれる成分の中で最も沸点が低く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であることを特徴とする請求項7に記載のパターン構造体の製造方法。
- 冷却して低温状態とすることにより前記環境を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記低温状態は、設定した温度において前記液滴に含まれる成分の中で最も蒸気圧が高く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であることを特徴とする請求項9に記載のパターン構造体の製造方法。
- 高圧低温状態とすることにより前記環境を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法。
- 前記高圧低温状態は、設定した圧力において前記液滴に含まれる成分の中で最も沸点が低く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持され、かつ、設定した温度において前記液滴に含まれる成分の中で最も蒸気圧が高く揮発しやすい成分が前記液滴中に維持される状態であることを特徴とする請求項11に記載のパターン構造体の製造方法。
- 基材上に、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法によりパターン構造体を形成する工程と、
前記パターン構造体の残膜を除去してエッチングマスクとする工程と、
前記エッチングマスクを介して前記基材に対してエッチング加工を行う工程と、を有することを特徴とするナノインプリントリソグラフィ方法。 - 基材上に位置するハードマスク上に、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のパターン構造体の製造方法によりパターン構造体を形成する工程と、
前記パターン構造体の残膜を除去してエッチングマスクとし、該エッチングマスクを介して前記ハードマスクにエッチング処理を施してハードマスクパターンを作製する工程と、
前記ハードマスクパターンを介して前記基材に対してエッチング加工を行う工程と、を有することを特徴とするナノインプリントリソグラフィ方法。 - モールドを保持するためのモールド保持部と、基材を保持するための基材保持部と、基材上に光硬化性樹脂の液滴を供給するための液滴供給部と、前記モールド保持部と前記基材保持部とを離接可能とする転写機構部と、前記基材上に供給される液滴の環境を、予め前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の揮発を抑制する環境とする環境制御部と、を備えることを特徴とするインプリント装置。
- 前記環境制御部は、気体供給部を有し、該気体供給部から前記光硬化性樹脂に含有される成分の少なくとも1つの成分の気体を前記液滴の環境に供給することを特徴とする請求項15に記載のインプリント装置。
- 前記環境制御部は、前記液滴の環境に供給された前記気体の圧力を、対応する光硬化性樹脂成分の前記環境の温度における飽和蒸気圧未満とする分圧制御部を備えることを特徴とする請求項15または請求項16に記載のインプリント装置。
- 前記気体供給部は、前記光硬化性樹脂に含有される所望の成分の気体とキャリアガスとの混合気体を前記液滴の環境に供給することを特徴とする請求項16または請求項17に記載のインプリント装置。
- 前記気体供給部は、前記光硬化性樹脂に含有される所望の成分の気体のみを前記液滴の環境に供給することを特徴とする請求項16または請求項17に記載のインプリント装置。
- さらに、少なくとも前記モールド保持部、前記基材保持部、および、前記液滴供給部を内部に収納するチャンバーを備えることを特徴とする請求項15乃至請求項19のいずれかに記載のインプリント装置。
- 前記環境制御部は、前記チャンバー内部の圧力調整機構を有することを特徴とする請求項20に記載のインプリント装置。
- 前記環境制御部は、前記チャンバー内部の温度調整機構を有することを特徴とする請求項20に記載のインプリント装置。
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