JP5838804B2 - 溶銑運搬容器の保熱方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炉から出銑された溶銑を受銑する溶銑運搬容器から熱が放散することを防止して溶銑運搬容器の熱を保つ保熱方法に関する。
混銑車、溶銑鍋等の溶銑運搬容器は、製鋼工場等で、その溶銑運搬容器に収容されている溶銑を排出する。その後には、溶銑運搬容器は、溶銑を収容していない状態(「空容器状態」という)となる。ここで、空容器状態とは、溶銑を収容していない状態であって、溶銑を受銑している状態及び、溶銑を排出している状態を含まないものとする。溶銑運搬容器は、空容器状態で、高炉から溶銑を受銑するための受銑位置まで移動しかつ待機する。溶銑運搬容器は、この受銑位置で高温の溶銑(第1の溶銑)を受銑して、その内部に溶銑を収容する。溶銑を収容した状態の溶銑運搬容器は、脱燐処理や脱硫処理、除滓などの、溶銑に対する溶銑予備処理が行われる予備処理位置に移動する。次いで、この予備処理位置で、溶銑運搬容器内の溶銑に対して溶銑予備処理が行われる。溶銑予備処理が行われた後の溶銑運搬容器は、予備処理位置から、転炉などの次工程の設備に溶銑を排出する溶銑排出位置まで移動する。この溶銑排出位置で、溶銑予備処理後の溶銑が、この溶銑運搬容器から転炉などの次工程の設備に排出されて、溶銑運搬容器は再び空容器状態となる。再び、空容器状態の溶銑運搬容器が、受銑位置まで移動して、高炉から溶銑(第2の溶銑)を受銑することになる。このようにして、同じ溶銑運搬容器で溶銑の受銑と溶銑の予備処理と溶銑の排出とが繰り返される。
溶銑運搬容器で高炉から溶銑を受銑してから、この溶銑を次工程の設備に排出するまでの間には、溶銑運搬容器の内部には高温の溶銑が収容されているため、溶銑運搬容器の温度は比較的高く保たれている。一方で、溶銑を排出した後には、溶銑運搬容器が空容器状態となり、溶銑運搬容器の温度は急激に低下してしまう。次いで、この温度が低下した溶銑運搬容器で高温の溶銑を受銑すると、溶銑運搬容器の温度は急激に上昇する。このように、溶銑運搬容器は、いわゆる熱衝撃を繰り返し受ける。この繰り返される熱衝撃に起因して、溶銑運搬容器の内部の材料、例えば、耐火物などには、熱応力が発生し、その材料の亀裂や破損が生じやすくなる。その結果、溶銑運搬容器の耐用性が低下する。
更には、受銑する直前のときの空容器状態である溶銑運搬容器の温度が低い場合には、高炉で受銑した後の溶銑の熱を溶銑運搬容器が奪ってしまい、溶銑の温度が低下してしまう。温度が低下してしまった溶銑に対して、溶銑予備処理である脱硫処理を行うと、脱硫効率が低下する。脱硫効率を向上させるためには、溶銑の温度を再び上昇させる必要がある。このためには、溶銑を再び加熱する必要がある。この溶銑の加熱のために燃料が別途必要となるため、脱硫処理のためのコストが更に増加することになる。
したがって、溶銑運搬容器の耐用性を向上させかつ溶銑予備処理の効率を向上させるために、空容器状態である溶銑運搬容器の内部の熱が放散することに起因する、溶銑運搬容器の温度低下を防止することが望ましい。そこで、溶銑運搬容器から熱が放散することを防止して内部の温度を保温する(「保熱」という)技術が種々検討されている。特に、溶銑鍋は混銑車と比較して開口部が広いことから、溶銑鍋の外周面から放熱する熱量よりも開口部から放熱する熱量の方が大きいために、開口部に蓋を掛ける事が効果的である。
例えば、特許文献1には、溶銑鍋に蓋を被せて溶銑を保熱する技術が開示されている。特許文献1における蓋の利用は、溶銑鍋に収容した溶銑の温度低下を抑えることを対象にしており、この溶銑鍋が空容器状態の間における放熱低減を考慮していない。加えて、仮に、特許文献1の発明で、空容器状態の溶銑鍋に蓋を被せたとしても、この溶銑鍋は、溶銑を受銑するために、蓋を外した状態で高炉の下のいわゆる受銑位置で待機する必要がある。このため、待機時間中及び受銑位置で溶銑鍋に溶銑を受銑している間には、溶銑鍋からの放熱量が大きくなってしまう。この待機時間を極力少なくすることは放熱低減に効果的である。しかしながら、溶銑鍋は、通常、トラブル回避のため受銑前の20分程度前から受銑位置に待機している。通常、この溶銑鍋が、溶銑を排出してから受銑位置まで移動して受銑するまで60分間かかる。この60分間の3分の1である20分程度の間は、この溶銑鍋に蓋が無く、この溶銑鍋からの放熱量が大きいという問題が生じる。
特公平2−006807号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、空容器状態の溶銑運搬容器及び高炉からの溶銑の受銑中の溶銑運搬容器について、その開口部からの放熱量を低減するために、その溶銑運搬容器に蓋を装着した状態で、受銑を行うことを可能とする放熱防止蓋を用いて、溶銑運搬容器の受銑位置での待機時間中及び受銑中に、溶銑運搬容器の放熱量を低減することを可能とする溶銑運搬容器の保熱方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)高炉から溶銑を受銑する溶銑運搬容器の開口部上に載置される放熱防止蓋であって、放熱防止蓋には、前記高炉から前記溶銑を受銑するときに、該溶銑が通過するための貫通穴が、前記放熱防止蓋の厚み方向に形成されており、前記貫通穴の短径dが前記開口部の内径dより小さいことを特徴とする溶銑運搬容器の放熱防止蓋。
(2)前記溶銑運搬容器が溶銑鍋であることを特徴とする上記(1)に記載の溶銑運搬容器の放熱防止蓋。
(3)前記放熱防止蓋の材質が鉄であり、前記開口部に面する、前記放熱防止蓋の面には耐火物が設けられていることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の溶銑運搬容器の放熱防止蓋。
(4)前記放熱防止蓋の上面には、突起物が形成されており、この突起物は、前記溶銑運搬容器から前記放熱防止蓋を外すための蓋取外し部材が前記突起物に係合することを可能とする形状であることを特徴とする上記(1)ないし上記(3)のいずれか1つに記載の溶銑運搬容器の放熱防止蓋。
(5)溶銑運搬容器に収容される第1の溶銑を、この溶銑運搬容器から排出した後に、上記(1)ないし上記(4)のいずれか1つに記載の溶銑運搬容器の放熱防止蓋を前記溶銑運搬容器の開口部上に載置し、次いで、高炉から溶銑を受銑するための受銑位置に、前記溶銑運搬容器を配置し、前記放熱防止蓋が前記開口部上に載置された状態で、前記溶銑運搬容器内に、前記貫通穴を通じて前記高炉から第2の溶銑を受銑することを特徴とする溶銑運搬容器の保熱方法。
(6)前記第2の溶銑を前記溶銑運搬容器で受銑してから予備処理工程を行う直前までの間、前記放熱防止蓋が、前記開口部に載置された状態としておくことを特徴とする上記(5)に記載の溶銑運搬容器の保熱方法。
(7)上記(1)ないし上記(4)のいずれか1つに記載の溶銑運搬容器の放熱防止蓋が、その開口部上に載置された溶銑運搬容器。
本発明によって、溶銑運搬容器の開口部に放熱防止蓋を載置した状態で、その放熱防止蓋の厚み方向に形成される貫通穴を通じて、溶銑運搬容器の内部に高炉から溶銑を受銑する。開口部中の、大気に開放している部分における熱の移動抵抗は低い。放熱防止蓋が溶銑運搬容器の開口部に載置されれば、その溶銑運搬容器は、その開口部全体に対する、大気に開放する部分の割合が少ない状態となり、この状態で、溶銑を受銑することが可能となる。ひいては、受銑位置での待機中及び受銑中の溶銑運搬容器内からの放熱量を低減することが可能となる。
加えて、受銑位置にて溶銑運搬容器の保熱が可能になるので、従来の蓋着脱装置を用いて開口部に蓋を着脱する保熱技術に比べて、受銑位置における溶銑運搬容器の温度低下が大幅に減少し、これにより、溶銑運搬容器に収容される溶銑の温度低下を防ぐことができる。ひいては、溶銑予備処理における燃料消費量の削減、生産性の向上のみならず、熱衝撃を低減して、溶銑運搬容器の耐用性の向上も達成することができる。
本発明の放熱防止蓋と、この放熱防止蓋が載置される溶銑運搬容器とを示す概略斜視図である。 高炉からの溶銑を受銑している、本発明の放熱防止蓋が載置された溶銑運搬容器の概略断面図である。 溶銑運搬容器から、クレーンによる放熱防止蓋の着脱を示す概略側面図である。 実施例の本発明例と比較例1とにおける、受銑終了してから溶銑鍋が予備処理位置に到着するまでの経過時間と溶銑の温度低下との関係を示すグラフである。 実施例の本発明例と比較例2とにおける、蓋装着時間率と溶銑の温度低下との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の放熱防止蓋と、この放熱防止蓋が載置される溶銑運搬容器とを示す概略斜視図である。図2は、高炉からの溶銑を受銑している、本発明の放熱防止蓋が載置された溶銑運搬容器の概略断面図である。図1に示すように、放熱防止蓋1は円形の平板状である。放熱防止蓋1は、放熱防止蓋本体2からなり、この放熱防止蓋本体2の下側の面には、保温性を高めるために熱伝導率が小さい耐火物3が設けられていることが好ましい。放熱防止蓋1には、放熱防止蓋本体2と耐火物3との厚み方向を貫通している貫通穴4が形成されている。厚み方向とは、溶銑運搬容器に載置されたときの放熱防止蓋1の上面から下面または下面から上面に向かう方向である。図1では、貫通穴4を画成する放熱防止蓋本体2の内壁2aの面が、放熱防止蓋1の上面に対して直交している。本発明は、この形態に限られず、内壁2aの面が、放熱防止蓋1の上面に対して傾斜するように、貫通穴4を形成してもよい。
図1及び図2に示すように、溶銑運搬容器5は、開口部6と容器本体8とを有しており、溶銑運搬容器5は台車7に設置されている。この開口部6を通じて、溶銑9が溶銑運搬容器5の内部に収容される。放熱防止蓋1の下面に設けられている耐火物3は、この開口部6に面している。耐火物3によって、溶銑運搬容器5に収容される溶銑9からの熱に起因して生じる放熱防止蓋1中の熱応力が抑えられる。また、放熱防止蓋本体2が、溶銑9からの熱移動の抵抗となっているが、耐火物3もまた、溶銑9からの熱移動の抵抗となっている。なお、溶銑運搬容器5は溶銑鍋であることが好ましいが、これに限られず、溶銑運搬容器5は混銑車であってもよい。
溶銑運搬容器5は、高炉11から、概ね1470〜1520℃である高温の溶銑9を受銑する。台車7は、レール12の上に配置されており、このレール12は、高炉11から溶銑9を受銑するための受銑位置と、溶銑9に対する溶銑予備処理が行われる予備処理位置と、転炉などの次工程の設備に溶銑を排出する溶銑排出位置とを接続している。溶銑運搬容器5は、このレール12上を移動して、受銑位置と予備処理位置と溶銑排出位置との間を往来する。
高炉11は、図示しない炉本体と出銑口とを有している。この出銑口から、炉本体で得られる溶銑9が出銑される。出銑口の下流には、図示しない溶銑樋が設置されており、溶銑9が溶銑樋を流れる。溶銑9が流れる方向における溶銑樋の先端部下方には、溶銑運搬容器5に溶銑9を送るための傾注樋13が設置されている。この傾注樋13を通じて、受銑位置に配置される溶銑運搬容器5に溶銑9が注入される。
溶銑運搬容器5が、少なくとも、受銑位置で溶銑9を受銑する時には、放熱防止蓋1は、溶銑運搬容器5の開口部6の上に載置されている。開口部6に放熱防止蓋1が載置されている状態で、溶銑9が、放熱防止蓋1の貫通穴4を通過して、傾注樋13から溶銑運搬容器5内へ注入される。受銑位置では、傾注樋13からの溶銑9がその貫通穴4を通過するように、放熱防止蓋1は開口部6の上に載置されている。貫通穴4は、高炉11から溶銑9を受銑するときに、この溶銑9が通過するための穴である。
この開口部6からの放熱を効率的に抑えるために、開口部6における開口部分が大気に開放されないように、放熱防止蓋1が開口部6の上に載置されている。放熱防止蓋1が上部に載置されている部分であって、開口部6の一部分の熱移動抵抗は、大気に開放されている部分の熱移動抵抗より大きい。このため、開口部6において、大気に開放されていない部分の面積が多いほど、溶銑運搬容器5からの放熱を抑えることができる。
本発明では、上方から視たときの、放熱防止蓋1及び開口部6の形状は、特に限定されず、例えば、円形であっても楕円形であってもよい。放熱防止蓋1のその形状が楕円形であれば、放熱防止蓋1の長径Dとは、上方から視たときの、放熱防止蓋1の端の一点から他の一点を結ぶ最大となる長さである。放熱防止蓋1のその形状が円形であれば、放熱防止蓋1の長径Dは直径となる。上方から視たときの、放熱防止蓋1及び開口部6の両方がいかなる形状であっても、放熱防止蓋1が開口部6の上に載置されるためには、放熱防止蓋1の長径Dが開口部6の内径dより大きい(すなわちD>d)必要があり、上方から視た、放熱防止蓋1の少なくとも一部分の幅は開口部6の幅より大きくなっている。このようにして、放熱防止蓋1は、開口部6の上に載置される。
貫通穴4の短径dは、溶銑運搬容器5の開口部6の内径dより小さい。ここで、貫通穴4の短径dとは、貫通穴4の形状に関わりなく、上方から放熱防止蓋1を視たときの貫通穴4の最小の幅である。開口部6の内径dとは、開口部6の形状に関わりなく、上方から溶銑運搬容器5を視たときの開口部6の内壁の最大の幅である。上方から放熱防止蓋1を視たときに、貫通穴4の形状が円形であれば、貫通穴4の短径dは貫通穴4の直径となる。開口部6の場合も同様である。貫通穴4の短径dが開口部6の内径d以上である場合には、放熱防止蓋1が開口部6の上に載置されたとしても、開口部6の大部分が大気に開放されることになる。このため、放熱防止蓋1によって、溶銑運搬容器5からの放熱を抑えにくい。
図1に示す貫通穴4を画成する空間は円柱状であり、放熱防止蓋1を上側から視ると、貫通穴4は円形である。しかしながら、本発明では、貫通穴4を画成する空間は、この形状に限られず、楕円形柱や直方体であってもよく、放熱防止蓋1の上側から視ると、貫通穴4は、楕円や長方形などの多角形であってもよい。貫通穴4の空間がいずれの形状であっても、貫通穴4の短径dとは、貫通穴4の空間の水平面に沿った、貫通穴4を画成する内壁2aの一端から他の一端の最小となる長さを意味する。
図1に示す溶銑運搬容器5の内部空間も円柱状である。しかしながら、本発明ではこの形状に限られず、溶銑運搬容器5の内部空間は、楕円形柱であってもよい。開口部6の内径dとは、溶銑運搬容器5の開口の水平面に沿った、容器本体8の内壁の一端から他の一端の最大となる長さを意味する。溶銑運搬容器5の上側から視て、開口部6が円形である場合には、開口部6の内径dとは、その円の直径である。
溶銑運搬容器5が受銑位置で溶銑9を収容した後に、溶銑運搬容器5は、放熱防止蓋1が開口部6上に載置された状態で予備処理位置へ移動する。図3は、溶銑運搬容器から、クレーンによる放熱防止蓋の着脱を示す概略側面図である。クレーン15は、フック(蓋取外し部材)16を有している。溶銑運搬容器5が予備処理位置に到着すると、クレーン15(蓋取外し装置)を用いて、放熱防止蓋1を溶銑運搬容器5から取り外す。次いで、溶銑運搬容器5内の溶銑9に対して、脱燐や脱硫などの溶銑予備処理が行われる。
図1では、説明のため図示を省略したが、図2及び図3に示すように、放熱防止蓋1は突起物14を有しており、放熱防止蓋1の上面に突起物14が形成されていることが好ましい。図2及び図3に示すように、突起物14は、吊り取手の形状をしており、この吊り取手の部分にフック16が係合している。このように、溶銑運搬容器5から放熱防止蓋1を外すために、突起物14は、このフック16がこの突起物14に係合することを可能とする形状を有していることが好ましい。この突起物14及び蓋取外し部材は、この形態に限られず、例えば、突起物14が、釦形状をしており、蓋取外し部材は、その釦を掴む機構及び形状を有しており、蓋取外し部材が、釦形状の突起物14に係合してもよい。
放熱防止蓋1の放熱防止蓋本体2の材質は鉄であることが好ましい。放熱防止蓋本体2の材質が鉄であれば、例えば、図示しないリフティングマグネットをクレーン15に設けて、このリフティングマグネットを利用して着脱することも可能となる。
溶銑運搬容器5内の溶銑9に対する溶銑予備処理が終了した後に、溶銑運搬容器5は、溶銑排出位置に移動する。この溶銑排出位置で、転炉などの、次工程の処理設備に溶銑9(第1の溶銑)を排出して、溶銑運搬容器5を空容器状態にする。空容器状態であっても、溶銑9を排出した直後では、高温の溶銑9の熱が溶銑運搬容器5に残留しており、溶銑運搬容器5の内面の温度は、概ね800〜1100℃である。次いで、クレーン15を用いて、開口部6を覆うように溶銑運搬容器5の開口部6上に放熱防止蓋1を載置する。これにより、溶銑運搬容器5に残留している熱が、開口部6を通じて移動しにくくなる。このため、溶銑運搬容器5が、溶銑9がその内部に収容されている状態から空容器状態になったときであっても、溶銑運搬容器5の温度の低下が抑えられる。
放熱防止蓋1が開口部6の上に載置された状態で溶銑運搬容器5を、受銑位置に移動して待機する(配置する)。次いで、溶銑運搬容器5は、受銑位置にて、放熱防止蓋1の貫通穴4を通じて溶銑9(第2の溶銑)をその内部に受銑する。受銑の後に、溶銑運搬容器5は、予備処理位置に移動する。溶銑9を受銑してから予備処理工程を行う直前までの間、放熱防止蓋1は、開口部6の上に載置された状態であることが好ましい。開口部6からの放熱を防ぐためである。この後は、前述したように、溶銑運搬容器5は、このレール12上を移動して、受銑位置と予備処理位置と溶銑排出位置との間を往来し、かつ、溶銑9の受銑、溶銑予備処理及び溶銑9の排出を繰り返す。
開口部6からの放熱防止のためには、溶銑を収容した状態と空容器状態との両方において、可能な限り長い時間放熱防止蓋1を開口部6の上に載置することが好ましい。例えば、放熱防止蓋1の載置位置や貫通穴の形成される位置が、高炉設備に適合しない場合には、高炉受銑時に放熱防止蓋を外して受銑しても良いが、受銑の直前まで放熱防止蓋1を開口部6の上に載置することや、受銑後に放熱防止蓋1を開口部6の上に再び載置することがより好ましい。
上記の実施形態では、溶銑運搬容器5が空容器状態であるときに、溶銑9の受銑及び排出を行ったが、この実施形態に限らず、溶銑の受銑前に、鉄スクラップが装入されている溶銑運搬容器5に、放熱防止蓋1を載置しても、放熱防止蓋1の放熱防止の効果は得られる。
溶銑運搬容器を保熱するために、図1及び図2に示す放熱防止蓋1を作製し、溶銑運搬容器5として溶銑鍋を用意した。用意した溶銑鍋と作製した放熱防止蓋1の各寸法を表1に示す。
Figure 0005838804
放熱防止蓋1の上面から視て、放熱防止蓋1の形状は円形である。放熱防止蓋1の、円形状の上面の中心に、円形の貫通穴4を形成した。溶銑鍋の上方から視て、開口部6の形状も円形である。放熱防止蓋1の長径D及び貫通穴4の短径dは、放熱防止蓋1の形状及び貫通穴4の形状がともに円形であるので、直径D及び直径dといえる。表1に示すように、放熱防止蓋1の長径(直径)Dは、溶銑鍋の開口部6の外径に対して0.2m大きい。貫通穴4の短径(直径)dは、溶銑鍋の開口部6の内径dより小さい。内径dから算出される、水平面に沿った開口部6の断面積は15.9mである。直径dから算出される、水平面に沿った貫通穴4の面積は1.8mである。放熱防止蓋1を設置することで、理論上、開口部6の大気に開放される部分を約88.9%低減することができる。その結果、放熱を低減することが期待される。
また、放熱防止蓋本体2の材質を鉄とした。放熱防止蓋本体2からの放熱を低減するために、開口部6に面する放熱防止蓋本体2の面には、耐火物3を施工した。耐火物3はシャモット質キャスタブルを利用した。耐火物3の熱伝導率は、2W/(m・K)である。溶銑鍋で受銑する溶銑量は300tとした。
まず、空容器状態の溶銑鍋に高炉11から、1500℃の溶銑9を収容し、540分経過後溶銑排出位置で、溶銑9を排出して、この溶銑鍋を空容器状態とした。放熱防止蓋1の上面から視て、この溶銑鍋の中央と放熱防止蓋1の中央が合うように、放熱防止蓋1を溶銑9の排出から5分以内に、開口部6上に載置した。溶銑鍋の開口部6の上に放熱防止蓋1を載置した状態で、高炉11から溶銑9を受銑するために溶銑鍋を受銑位置に移動し待機させた。次いで、溶銑9が貫通穴4を通過するように、溶銑鍋の内部に溶銑9を注入した。溶銑9を収容した溶銑鍋を予備処理位置に移動させた。放熱防止蓋1を溶銑鍋から取り外し、溶銑鍋に収容される溶銑9に対して溶銑予備処理を行った。溶銑予備処理の後に、溶銑鍋を溶銑排出位置に移動させ、溶銑鍋から溶銑を排出して、溶銑鍋を空容器状態とした。この空容器状態の溶銑鍋の開口部5上に放熱防止蓋1を載置して、再び、放熱防止蓋1が載置された溶銑鍋を受銑位置へ移動して、溶銑9を受銑した。予備処理位置における、溶銑鍋から放熱防止蓋1を取り外す及び溶銑鍋に放熱防止蓋1を載置するのに、それぞれ5分以内で行った。放熱防止蓋1の載置及びから取外しは、リフティングマグネットを用いた。
以上の条件で、放熱防止蓋1を用いて、溶銑鍋で溶銑9を受銑して、この溶銑鍋で溶銑9に対して溶銑予備処理を行い、溶銑9を排出し、再び溶銑9を受銑する操業を本発明例とする。溶銑9の受銑、溶銑予備処理、排出の各処理の時間や移動時間を変更して、溶銑9の受銑、溶銑予備処理、排出からなる操業を複数回行ったが、溶銑9の排出終了後から受銑開始までの時間は50〜70分とし、受銑位置で待機する時間は20〜30分とし、受銑する時間は30〜50分とした。溶銑鍋の空容器状態が続く時間は、50〜70分の間である。受銑終了後から溶銑9の排出終了までの時間は400〜440分とした。
一方で、本発明例と比較するために、放熱防止蓋1を用いないで、本発明例と同じ寸法を有する溶銑鍋で溶銑9を受銑して、この溶銑鍋で溶銑9に対して予備処理し、溶銑9を排出し、再び溶銑9を受銑する以外は、本発明例の条件と同様である(比較例1)。
また、溶銑鍋から溶銑9を排出した後に、放熱防止蓋1を溶銑鍋に載置し、溶銑鍋を受銑位置へ移動して、受銑位置に到着すると直ぐに、放熱防止蓋1を外した。次いで、受銑終了後、放熱防止蓋1を溶銑鍋に再び載置し、予備処理位置まで移動した。このような条件以外は、本発明例の条件と同様にして、溶銑9の受銑、溶銑予備処理、排出からなる操業を複数回行った(比較例2)。各操業で、溶銑9の受銑、溶銑予備処理、排出の各処理の時間や移動時間を変更したが、本発明例と同様の条件と時間とで、各操業を行った。
<本発明例と比較例との比較及び評価>
本発明例と比較例1とを比較したグラフを図4に示す。このグラフの横軸の「経過時間(分)」は、受銑終了してから、溶銑鍋が予備処理位置に到着するまでの経過時間を意味する。このグラフの縦軸の「溶銑の温度低下(℃)」は、受銑終了直後の溶銑鍋に収容される溶銑の温度と、予備処理位置到着直後の溶銑鍋に収容される溶銑の温度との差の絶対値を示す。溶銑鍋に収容される溶銑9の温度は、消耗型熱電対で測定し、その差の絶対値を温度の低下量とした。
溶銑の排出が終了してから受銑直前までの時間中、溶銑鍋は空容器状態である。図4によれば、本発明例では、受銑終了直後から、溶銑鍋が予備処理位置に到着するまでの溶銑鍋に収容される溶銑の温度低下は、20〜30℃であったのに対して、比較例1では、概ね100℃を超えていることが確認できた。
図4から理解されるように、本発明例では、溶銑鍋に放熱防止蓋1を載置しているため、放熱防止蓋1を用いない比較例1の場合と比べて、受銑終了直後からの予備処理位置到着直後までの、溶銑鍋に収容される溶銑の温度低下が抑えられていることが明らかである。このことから、空容器状態の溶銑運搬容器が、高炉から受銑した溶銑から奪う熱量が抑えられていると推測することができ、受銑位置での溶銑運搬容器の温度低下が抑えられると推測される。
本発明例と比較例2とを比較したグラフを図5に示す。このグラフの横軸の「蓋装着時間率(%)」は、溶銑の排出から受銑直前までの時間に対する、溶銑の排出から受銑直前までの間の放熱防止蓋1が開口部6に載置されていた時間の割合を百分率で表した値を意味する。このグラフの縦軸の「溶銑の温度低下(℃)」は、受銑終了直後の溶銑鍋に収容される溶銑の温度と、予備処理位置到着直後の溶銑鍋に収容される溶銑の温度との差の絶対値を示す。
図5によれば、比較例2では、放熱防止蓋1が載置されていない状態で溶銑鍋が受銑の待機する場合があることから、蓋装着時間率が最大で60%程度であり、受銑終了直後からの予備処理位置到着直後までの、溶銑鍋に収容される溶銑の温度低下は約50℃であった。一方、本発明例では、蓋を掛けたまま受銑待機できることから、空鍋時の蓋装着時間率は100%であり、この場合の溶銑の温度低下は約32℃であった。
比較例2と比べると、本発明例では、受銑終了直後からの予備処理位置到着直後までの、溶銑鍋に収容される溶銑の温度低下が抑えられていることが明らかである。このことから、本発明によって、受銑中における、溶銑運搬容器に収容される溶銑の温度低下を防ぐことを可能なことが明らかである。また、受銑終了直後からの予備処理位置到着直後までの、溶銑鍋に収容される溶銑の温度低下が抑えられていることから、空容器状態の溶銑運搬容器が、高炉から受銑した溶銑から奪う熱量が抑えられていると推測することができ、受銑位置での待機中及び受銑中の溶銑運搬容器の温度低下が抑えられると推測される。このため、本発明によって、待機中及び受銑中の溶銑運搬容器内からの放熱量が低減されていると推測される。
1 放熱防止蓋
2 放熱防止蓋本体
2a 内壁
3 耐火物
4 貫通穴
5 溶銑運搬容器
6 開口部
7 台車
8 容器本体
9 溶銑
11 高炉
12 レール
13 傾注樋
14 突起物
15 クレーン
16 フック

Claims (2)

  1. 高炉から溶銑を受銑する溶銑運搬容器に収容される第1の溶銑を、この溶銑運搬容器から排出した後に、
    前記溶銑運搬容器の円形または楕円形の開口部上に載置され、高炉から溶銑を受銑するときに該溶銑が通過するための貫通穴が放熱防止蓋の厚み方向に形成された放熱防止蓋であって、該放熱防止蓋を上方から視たときの前記貫通穴の形状が円形、楕円形、長方形のいずれかであり、且つ、前記放熱防止蓋を上方から視たときの前記貫通穴の最小の幅が前記溶銑運搬容器を上方から視たときの前記開口部の内壁の最大の幅より小さくなるように形成された放熱防止蓋を前記溶銑運搬容器の開口部上に載置し、
    次いで、高炉から溶銑を受銑するための受銑位置に、前記溶銑運搬容器を配置し、
    前記放熱防止蓋が前記開口部上に載置された状態で、前記溶銑運搬容器内に、前記貫通穴を通じて前記高炉から第2の溶銑を受銑することを特徴とする溶銑運搬容器の保熱方法。
  2. 前記第2の溶銑を前記溶銑運搬容器で受銑してから予備処理工程を行う直前までの間、前記放熱防止蓋が、前記開口部に載置された状態としておくことを特徴とする請求項に記載の溶銑運搬容器の保熱方法。
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