以下、本発明に係るエンジンおよびエンジンシステムの実施形態について図1から図24を参照して詳細に説明する。なお、図1から図24において、同一または類似の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるエンジン1を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態におけるエンジン1は、V字型に配置された2つのシリンダ10,20を備えている。すなわち、エンジン1は、斜め方向(X方向およびZ方向に斜交する方向)に延びる第1のシリンダ10と、第1のシリンダ10が延びる方向に斜交する方向(X方向およびZ方向に斜交する方向)に延びる第2のシリンダ20とを有している。
第1のシリンダ10は第1のシリンダヘッド11を上部に有しており、この第1のシリンダヘッド11には吸気口12と第1の連絡口13とが形成されている。同様に、第2のシリンダ20は第2のシリンダヘッド21を上部に有しており、この第2のシリンダヘッド21には第2の連絡口22と排気口23とが形成されている。第1のシリンダ10の第1の連絡口13と第2のシリンダ20の第2の連絡口22は、連絡路60により接続されている。
第1のシリンダ10の内部には、第1のシリンダ10の軸方向(第1の軸方向)に沿って第1のシリンダ10内を摺動可能な第1のピストン14が収容されている。第1のピストン14は、第1のシリンダヘッド11の下面の形状に対応した形状のピストン面14Aを有しており、このピストン面14Aと第1のシリンダヘッド11との間に、第1のピストン14の摺動により容積が変化する第1のチャンバC1が形成される。
第2のシリンダ20の内部には、第2のシリンダ20の軸方向(第2の軸方向)に沿って第2のシリンダ20内を摺動可能な第2のピストン24が収容されている。第2のピストン24は、第2のシリンダヘッド21の下面の形状に対応した形状のピストン面24Aを有しており、このピストン面24Aと第2のシリンダヘッド21との間に、第2のピストン14の摺動により容積が変化する第2のチャンバC2が形成される。
第1のシリンダ10および第2のシリンダ20はクランクケース30に接続されており、第1のピストン14および第2のピストン24の下方には、クランクシャフト40が配置されるクランク室C3が形成されている。
第1のピストン14は、第1のコネクティングロッド15によってクランクシャフト40に連結されており、第2のピストン24は、第2のコネクティングロッド25によって第1のコネクティングロッド15のボス部(後述する)に連結されている。なお、図1において、第1のコネクティングロッド15および第2のコネクティングロッド25は模式的に示されている。
図2は、クランクシャフト40を示す斜視図である。図2に示すように、クランクシャフト40は、Y方向(図1参照)に延びる主軸41と、主軸41と平行に延びる円筒状のクランクピン42と、主軸41とクランクピン42とを接続するクランクアーム43と、ピストン14,24およびコネクティングロッド15,25の振動により生ずる慣性力を軽減するためのバランスウェイト44とを有している。
図3は、第1のコネクティングロッド15を示す斜視図である。図3に示すように、第1のコネクティングロッド15は、Y方向(図1参照)に延びる貫通孔16Aが形成された第1の連結部16と、Y方向に延びる貫通孔17Aが形成された第2の連結部17と、第2の連結部17からY方向に突出する円筒状のボス部18とを有している。
図1に示すように、第1のピストン14の下部には、Y方向に延びる円筒状のピストンピン14Bが設けられており、このピストンピン14Bが第1のコネクティングロッド15の第1の連結部16の貫通孔16Aに挿通される。これにより、第1のコネクティングロッド15の第1の連結部16は、ピストンピン14Bに対して回転自在な状態で第1のピストン14に連結される。また、第1のコネクティングロッド15の第2の連結部17の貫通孔17Aには、クランクシャフト40のクランクピン42が挿通される。これにより、第1のコネクティングロッド15の第2の連結部17は、クランクピン42に対して回転自在な状態でクランクシャフト40に連結される。
ここで、図3に示すように、第1のコネクティングロッド15のボス部18の外周面を規定する円は、クランクピン42が挿通される貫通孔17Aの内周面を規定する円に対して偏心しており、ボス部18の中心がクランクピン42の中心よりもクランクシャフト40の主軸41の半径方向において外側に位置するように構成されている。
図4は、第2のコネクティングロッド25を示す斜視図である。図4に示すように、第2のコネクティングロッド25は、Y方向(図1参照)に延びる貫通孔26Aが形成された第1の連結部26と、Y方向に延びる貫通孔27Aが形成された第2の連結部27とを有している。
図1に示すように、第2のピストン24の下部には、Y方向に延びる円筒状のピストンピン24Bが設けられており、このピストンピン24Bが第2のコネクティングロッド25の第1の連結部26の貫通孔26Aに挿通される。これにより、第2のコネクティングロッド25の第1の連結部26は、ピストンピン24Bに対して回転自在な状態で第2のピストン24に連結される。また、第2のコネクティングロッド25の第2の連結部27の貫通孔27Aには、第1のコネクティングロッド15のボス部18が挿通される。これにより、第2のコネクティングロッド25の第2の連結部27は、ボス部18に対して回転自在な状態で第1のコネクティングロッド15に連結される。
図5は、コネクティングロッド15,25の分解斜視図である。図5に示すように、第1のコネクティングロッド15は、2つの部材15A,15Bに分割されており、これらの部材15A,15Bはボルト19により互いに結合される。これらの部材15A,15Bが互いに結合されると、貫通孔17Aとともに第2の連結部17およびボス部18が形成される(図3参照)。
上述のように形成される貫通孔17Aの内部にクランクシャフト40のクランクピン42が収容されるように、第1のコネクティングロッド15の2つの部材15A,15Bがクランクピン42を両側から挟むようにして連結される。これにより、第1のコネクティングロッド15の第2の連結部17は、クランクピン42に対して回転自在な状態でクランクシャフト40に連結される。
同様に、第2のコネクティングロッド25は、図5に示すように、2つの部材25A,25Bからなっており、これらの部材25A,25Bはボルト29により互いに結合される。これらの部材25A,25Bが互いに結合されると、貫通孔27Aとともに第2の連結部27が形成される(図4参照)。
図5に示すように、上述のように形成される貫通孔27Aの内部に第1のコネクティングロッド15のボス部18が収容されるように、第2のコネクティングロッド25の2つの部材25A,25Bがボス部18を両側から挟むようにして連結される。これにより、第2のコネクティングロッド25の第2の連結部27は、ボス部18に対して回転自在な状態で第1のコネクティングロッド15に連結される。
図1に戻って、吸気口12の上部には、連通孔50Aを通じて吸気口12を開閉するロータリバルブ(第1のロータリバルブ)50が配置されている。このロータリバルブ50は、クランクシャフト40の主軸42の回転に同期して回転するように構成されており、クランクシャフト40の主軸42が1回転するとロータリバルブ50が180°回転するように構成されている。本実施形態では、第1のピストン14が上死点から下死点に下降する間、連通孔50Aの少なくとも一部が吸気口12に対して開口するようになっており、この間ロータリバルブ50が開くように構成されている。このように、ロータリバルブ50は、吸気口12を通じて給気室80から第1のチャンバC1に気体を導入する第1の弁機構として機能する。
また、第1の連絡口13の上部には、第1の連絡口13を開閉するチェック弁51が配置されている。図1に示すように、チェック弁51は、第1の連絡口13を塞ぐことが可能な弁体51Aと、弁体51Aを第1の連絡口13に向けて付勢するスプリング51Bとを備えている。このような構成により、第1のシリンダ10内の第1のチャンバC1の圧力が連絡路60内の圧力よりも高くなると、スプリング51Bに抗して弁体51Aが押し上げられ、チェック弁51が開くようになっている。
第2の連絡口22の上部には、連通孔52Aを通じて第2の連絡口22を開閉するロータリバルブ(第2のロータリバルブ)52が設けられている。このロータリバルブ52は、クランクシャフト40の主軸42の回転に同期して回転するように構成されており、クランクシャフト40の主軸42が1回転するとロータリバルブ52が180°回転するように構成されている。本実施形態では、第2のピストン24が上死点から下死点に下降する間の所定の期間に連通孔52Aの少なくとも一部が第2の連絡口22に対して開口するようになっており、この間ロータリバルブ52が開くように構成されている。このように、チェック弁51、連絡路60、およびロータリバルブ52は、第1の連絡口13および第2の連絡口22を通じて第1のチャンバC1内の気体を第2のチャンバC2に導入する第2の弁機構として機能する。
排気口23の上部には、連通孔53Aを通じて排気口23を開閉するロータリバルブ(第3のロータリバルブ)53が設けられている。このロータリバルブ53は、クランクシャフト40の主軸42の回転に同期して回転するように構成されており、クランクシャフト40の主軸42が1回転するとロータリバルブ53が180°回転するように構成されている。本実施形態では、第2のピストン24が下死点から上死点に上昇する間、連通孔53Aの少なくとも一部が排気口23に対して開口するようになっており、この間ロータリバルブ53が開くように構成されている。このように、ロータリバルブ53は、排気口23を通じて第2のチャンバC2から気体を排出する第3の弁機構として機能する。
次に、図6から図8を参照して、本実施形態におけるエンジン1のサイクルについて説明する。図6は、上から下に時系列に沿ってエンジン1の状態を模式的に示した図である。図7は第1のピストン14の位置とロータリバルブ50およびチェック弁51の開閉の関係を示す模式図であり、図8は第2のピストン24の位置とロータリバルブ52およびロータリバルブ53の開閉の関係を示す模式図である。なお、図6から図8において各バルブの開閉や燃焼のタイミングは模式的に示されている。
まず、第1のピストン14が上死点にあるとき(S1点)、ロータリバルブ50が開き始める。これによりロータリバルブ50の連通孔50Aを通じて給気室80から空気が第1のシリンダ10の第1のチャンバC1内に導入される(吸気行程)。第1のピストン14が下死点に至ると(S2点)、ロータリバルブ50が閉じ、吸気行程が終了する。本実施形態では、このロータリバルブ50が閉じた時点でインジェクタ(図示せず)から第1のチャンバC1内に燃料が噴射され、第1のチャンバC1内に混合気が形成される。
その後、第1のピストン14は上昇し始め、第1のチャンバC1内の混合気を圧縮する(圧縮行程)。第1のチャンバC1内の混合気が圧縮される過程で、ロータリバルブ52が開き始めると、連絡路60内の圧力が低下し、第1のチャンバC1内の圧力が連絡路60内の圧力よりも高くなる。これによりチェック弁51が開き(S3点)、第1のチャンバC1内の混合気が連絡路60に導入され、ロータリバルブ52の連通孔52Aを通じて第2のシリンダ20の第2のチャンバC2内に導入される。
そして、ロータリバルブ52が閉じた時点でスパークプラグ(図示せず)により混合気に着火され、混合気が燃焼し膨張する。膨張した混合気の圧力により第2のピストン24は下方に押され、この第2のピストン24に対する力は、第2のコネクティングロッド25および第1のコネクティングロッド15のボス部253を介してクランクシャフト40の主軸41回りのトルクに変換される。これによりクランクシャフト40の主軸41が回転する。
第2のピストン24が下死点付近に至ると(S4点)、ロータリバルブ53が開き始める。その後、第2のピストン24は慣性力によって上昇し始め、燃焼した混合気がロータリバルブ53の連通孔53Aを通じて外部に排気される(排気行程)。そして、第2のピストン24が上死点付近に至ると(S5点)、ロータリバルブ53が閉じ、排気行程が終了する。
このように、本実施形態におけるエンジン1では、第1のピストン14による圧縮の力を第2のピストン24を押し下げる力、すなわちクランクシャフト40の主軸41を回転させる力に利用することができるため、一般的な4ストロークエンジンとは異なり、ポンピングロスがなく、混合気の1回の燃焼につきクランクシャフト40の主軸41を1回転させることができる。したがって、一般的な4ストロークエンジンに比べて効率の高いエンジンを実現することができる。
ここで、図1は、第2のシリンダ20内の第2のチャンバC2で混合気が燃焼し膨張する瞬間、すなわち第2のコネクティングロッド25に加わる力が最大となる瞬間を示している。本実施形態では、この瞬間に第2のコネクティングロッド25に加わる力を最大限クランクシャフト40の主軸41に伝達するように構成している。すなわち、図1に示すように、第2のコネクティングロッド25に加わる力が最大となる瞬間に、第2のコネクティングロッド25の第1の連結部26の中心(すなわちピストンピン24Bの中心P1)と第2の連結部27の中心(すなわち第1のコネクティングロッド15のボス部18の中心P2)とを結ぶ線と、クランクシャフト40の主軸41の中心P3と第2のコネクティングロッド25の第2の連結部27の中心(すなわち第1のコネクティングロッド15のボス部18の中心P2)とを結ぶ線とが垂直に交わるように構成されている。したがって、第2のコネクティングロッド25に加わる力を最大限主軸41周りのトルクに変換することができ、主軸41の出力を最大にすることができる。
また、図1に示すように、第1のコネクティングロッド15のボス部18の中心P2(第2のコネクティングロッド25の第2の連結部27の中心)が、クランクシャフト40のクランクピン42の中心P4(第1のコネクティングロッド15の第2の連結部17の中心)よりもクランクシャフト40の主軸41の半径方向において外側に位置しているため、第2のコネクティングロッド25に加わる力をより大きなトルクに変換することができる。
また、本実施形態においては、第2のコネクティングロッド25の力をより確実にクランクシャフト40に伝達するために、第2のコネクティングロッド25が連結される第1のコネクティングロッド15のボス部18を支持する支持機構がクランクシャフト40に設けられている。図9は、この支持機構70を示す模式図である。
図9に示すように、支持機構70は、圧力流体(例えばオイル)が流れる流路71が内部に形成された枠体72と、第1のコネクティングロッド15のボス部18の外周面に当接するフォロア73と、フォロア73をボス部18に向けて付勢するスプリング74と、流路71内に配置された弁体75と、弁体75に連結されたスライダ76と、流路71の圧力流体に抗して弁体75を付勢するスプリング77と、スライダ76を支持する支持プレート78とを備えている。
図9に示すように、枠体72には、圧力流体が注入される注入口72Aと、この圧力流体が排出される排出口72Bとが形成されている。枠体72の内部には、フォロア73が一方向に摺動可能な状態で収容されている。フォロア73には、それぞれフォロア73を貫通する第1の流路孔73Aと第2の流路孔73Bとが形成されている。第1の流路孔73Aは注入口72Aに対応しており、第2の流路孔73Bは排出口72Bに対応している。また、枠体72の内部には、弁体75が一方向に移動可能な状態で収容されており、この弁体75に連結されたスライダ76も弁体とともに移動可能となっている。
図9に示すように、フォロア73は、スプリング74の力により第1のコネクティングロッド15のボス部18の外周面に当接するようになっている。上述したように、ボス部18の中心P2はクランクピン42の中心P4から偏心した位置にあるが、ボス部18自体は、クランクピン42の中心P4周りに回転するため、ボス部18の外周面はフォロア73に対するカム面として機能する。このため、ボス部18の回転に伴ってフォロア73が図9の矢印の方向に沿って移動することとなる。
図9に示す状態では、フォロア73の第1の流路孔73Aが枠体72の注入口72Aに連通しており、圧力流体が流路71内に注入される。一方で、フォロア73の第2の流路孔73Bは枠体72の排出口72Bと連通していないため、流路71内に注入された圧力流体は、スプリング77の力に抗して弁体75を矢印Aの方向に押圧する。これに伴い、弁体75に連結されたスライダ76が矢印Bの方向に移動し、その支持面76Aでボス部18を支持する。このスライダ76がボス部18を支持するときは、第2のコネクティングロッド25に加わる力Fが最大となるとき、すなわち図1に示す状態のときである。したがって、このような支持機構70により、第2のコネクティングロッド25に加わる力が最大となるときに、この力を確実にクランクシャフト40に伝達することができ、エンジン1の出力を最大限にすることができる。
図9に示す状態からボス部18が180度回転すると、図10に示す状態になる。この図10に示す状態では、ボス部18がスプリング74の力に抗してフォロア73を矢印Cの方向に押圧している。このとき、フォロア73の第1の流路孔73Aと枠体72の注入口72Aとの連通が遮断されるとともに、フォロア73の第2の流路孔73Bが枠体72の排出口72Bに連通する。したがって、枠体72の流路71内の流体が排出口72Bから流出し、流路71内の流体の圧力が下がるため、弁体75はスプリング77の力により矢印Dの方向に移動する。これに伴い、弁体75に連結されたスライダ76も矢印Eの方向に移動する。
ところで、図1に示すように、本実施形態におけるロータリバルブ50の外側には、ロータリバルブ50とは独立して回転可能なスロットルスリーブ90が設けられている。このスロットルスリーブ90は、エンジン1のスロットルと連動して回転するものである。スロットルスリーブ90には、ロータリバルブ50の連通孔50Aよりも幅の広い連通孔が形成されており、スロットルスリーブ90が回転することにより吸気口12の開口面積が変化するようになっている。換言すれば、スロットルスリーブ90はエンジン1のスロットルバルブの役割を有しており、図1はフルスロットルの状態を示している。
例えば、スロットルスリーブ90を図1の矢印Gの方向に回転させると、吸気口12の開口面積が増加する。これにより、ロータリバルブ50の連通孔50Aが吸気口12と連通している時間が長くなる。図11は、このときのエンジン1のサイクルを模式的に示した図である。図11に示すように、ロータリバルブ50の連通孔50Aが吸気口12と連通している時間が長くなり、第1のピストン14が下死点から上死点に向かって移動しているときもロータリバルブ50が開いた状態となる。このため、第1のチャンバC1内の気体は第1のピストン14によって十分に圧縮されず、第1のチャンバC1内の気体の圧力はチェック弁51の開く圧力に達しない。この結果、チェック弁51は開かず、吸気口12を通じて第1のチャンバC1内に導入された気体は、第1のピストン14の上昇に伴って吸気口12を通じて給気室80に戻ることになる。図1に示すように、給気室80には、外気が循環される冷却槽81が設けられており、吸気口12を通じて戻った気体は冷却槽81により冷却される。そして、第1のピストン14の下降に伴って再び第1のチャンバC1に導入される(循環運転)。
ここで、図1に示すエンジン1を複数台設置し、例えばアイドリング時など大きな出力が要求されていないときに、複数台のうちのいくつかのエンジンについては図11に示す循環運転(空気の熱膨張運転)をさせることが好ましい。この場合には、循環運転をしているエンジンの第2のシリンダ20には混合気が導入されることがなく、また燃焼も行われないので、燃費を飛躍的に向上させることができる。なお、複数のエンジン1を設置した例については第2の実施形態にて詳述する。
また、本実施形態のエンジン1によれば、スパークプラグの点火のタイミングを変化させて燃焼膨張のタイミングを調整することにより、圧縮比を容易に変えることができる。
図12は、本発明の第2の実施形態におけるエンジンシステム100を示す模式図である。図12に示すように、このエンジンシステム100は、並列に連結された3つのエンジン1−1,1−2,1−3と、ターボチャージャー102と、インタークーラー103とを備えている。
それぞれのエンジン1−1,1−2,1−3の構造は、上述した第1の実施形態にて説明したエンジン1と基本的に同一である。本実施形態では、3つのエンジンを設けた例について説明するが、エンジンの数はこれに限られるものではない。また、以下では、エンジン1−1,1−2,1−3の要素のうち、第1の実施形態のエンジン1に対応する要素については、第1の実施形態と同一の符号の後にそれぞれ対応する識別子「−1」、「−2」、および「−3」を付加して説明することとし、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。なお、クランクシャフト40および主軸41(図2参照)は、エンジン1−1,1−2,1−3で共通で用いられる要素である。
ターボチャージャー102は、圧縮機102Aと、圧縮機102Aと同軸に連結されたタービン102Bと、圧縮機102Aおよびタービン102Bを収容したハウジング102Cとを有している。エンジン1−1,1−2,1−3からの排気によりタービン102Bが高速回転されることで、圧縮機102Aが高速回転し、吸入した空気を圧縮してインタークーラー103に供給するようになっている。
インタークーラー103は、圧縮機102Aの圧縮により温度が上昇した空気を冷却するものである。インタークーラー103の排出口には、吸気管104が接続されている。この吸気管104は、それぞれのエンジン1−1,1−2,1−3の吸気口12−1,12−2,12−3に接続された分岐管104A−1,104A−2,104A−3を有している。
また、ターボチャージャー102のタービン102Bの吸気口には排気管105が接続されている。この排気管105は、それぞれのエンジン1−1,1−2,1−3の排気口23−1,23−2,23−3に接続された分岐管105A−1,105A−2,105A−3を有している。
ターボチャージャー102のタービン102Bの排気口には排気管106が接続されている。この排気管106は、分岐管105A−1,105A−2,105A−3を内部に収容する排気チャンバ106Aを有している。
図13は、本実施形態におけるエンジン1−1,1−2,1−3の(第1の)ロータリバルブ50−1,50−2,50−3およびスロットルスリーブ90−1,90−2,90−3を示す分解斜視図である。図13に示すように、本実施形態では、1本の軸体110に3つの連通孔50A−1,50A−2,50A−3を形成し、3つのロータリバルブ50−1,50−2,50−3を1本の軸体110で構成している。この軸体110は、クランクシャフト40−1の回転に同期して回転するようになっている。
連通孔50A−1,50A−2,50A−3は、エンジン1−1,1−2,1−3の吸気口12−1,12−2,12−3にそれぞれ対応して形成されている。本実施形態におけるエンジン1−1,1−2,1−3のサイクルの位相はそれぞれ120度ずれており、連通孔50A−1,50A−2,50A−3も軸体110の軸心周りに120度の間隔で形成されている。
ところで、本実施形態の3つのエンジン1−1,1−2,1−3は、運転中に燃焼行程を行う第1のグループ(エンジン1−1)と、運転中に燃焼工程を選択的に行う第2のグループ(エンジン1−2,1−3)とに分けられている。これに対応して、図13に示すように、第1のグループのエンジン1−1のスロットルスリーブ90−1は第1の円筒部112Aにより構成され、第2のグループのエンジン1−2,1−3のスロットルスリーブ90−2,90−3は第2の円筒部112Bにより構成されている。これら第1の円筒部112Aおよび第2の円筒部112Bの内部に軸体110が挿入される。
図13に示すように、第1の円筒部112Aには、アクセルペダルと連動して回転する第1のスロットルコントロールアーム114Aが取り付けられている。アクセルペダルを踏み込むと、第1のスロットルコントロールアーム114Aを介してスロットルスリーブ90−1が回転し、エンジン1−1の吸気口12−1の開口面積が変化するようになっている。
また、第2の円筒部112Bには、第2のスロットルコントロールアーム114Bが取り付けられており、この第2のスロットルコントロールアーム114Bは、第1のスロットルコントロールアーム114Aに設けられたサーボモータ116の駆動により第1のスロットルコントロールアーム114Aに対して相対的に回転するようになっている。
図13に示すように、第1の円筒部112Aには、取付アーム118を介して環状プレート120が取り付けられている。この環状プレート120には、スロットルスリーブ90−1,90−2,90−3の開口部に対応して120度の間隔で3つのシグナルジェネレータ122が設けられている。軸体110の端部には、オイルシール124を介してリラクタ126が取り付けられており、軸体110とともにリラクタ126が回転するようになっている。このリラクタ126がシグナルジェネレータ122の近傍を通過すると、シグナルジェネレータ122が検出信号を生成する。これにより、スロットルスリーブ90−1,90−2,90−3に対する軸体110の回転角度が検出される。
また、取付アーム118にはギア118Aが形成されており、このギア118Aと噛合する可変抵抗128により、取付アーム118(すなわち第1の円筒部112A)の位置が検出され、この位置に基づいて吸入する空気の量を確実に算出することができる。これにより、この吸入空気量に見合った燃料を供給することで理想空燃比を確実に実現することができる。
次に、このような構成のロータリバルブ50−1,50−2,50−3を用いたエンジン1−1,1−2,1−3の運転について説明する。本実施形態におけるエンジンシステム100では、アクセル(スロットル開度)の状態に応じて第1のスロットルコントロールアーム114Aおよび第2のスロットルコントロールアーム114Bを介して第1のグループのエンジン1−1のスロットルスリーブ90−1および第2のグループのエンジン1−2,1−3のスロットルスリーブ90−2,90−3の回転が制御され、第1のグループのエンジン1−1と第2のグループのエンジン1−2,1−3のロータリバルブ50−1,50−2,50−3の開度が調整される。すなわち、アクセル(スロットル開度)の状態に応じて最も効率が良くなるように、第1のグループのエンジン1−1と第2のグループのエンジン1−2,1−3のロータリバルブ50−1,50−2,50−3の開度を制御することができる。
図14(a)から図14(e)は、エンジンシステム100の第1のグループのエンジン1−1内の第1のピストン14−1の位置とバルブ50−1,51−1の開閉の関係を示す模式図である。図14(a)はエンジンシステム100がフルスロットルの状態にあるとき、図14(b)はスロットル開度が3/4の状態にあるとき、図14(c)はスロットル開度が1/2の状態にあるとき、図14(d)はスロットル開度が1/4の状態にあるとき、図14(e)はアイドリングの状態にあるときを示している。
図15(a)から図15(e)は、エンジンシステム100の第2のグループのエンジン1−2(または1−3)内の第1のピストン14−2(または14−3)の位置とバルブ50−2,51−2(または50−3,51−3)の開閉の関係を示す模式図である。図15(a)はエンジンシステム100がフルスロットルの状態にあるとき、図15(b)はスロットル開度が3/4の状態にあるとき、図15(c)はスロットル開度が1/2の状態にあるとき、図15(d)はスロットル開度が1/4の状態にあるとき、図15(e)はアイドリングの状態にあるときを示している。
図14(a)に示すように、エンジンシステム100がフルスロットルの状態にあるとき、第1のグループのエンジン1−1のロータリバルブ50−1は、第1のピストン14−1が下死点に至るまで開き、ロータリバルブ50−1が閉じた時点でインジェクタから燃料が噴射される。図14(b)から図14(e)に示すように、スロットルが小さくなるとロータリバルブ50−1は下死点を越えて開き続け、スロットル開度が小さくなるにつれロータリバルブ50−1の開いている時間が長くなる。
一方、第2のグループのエンジン1−2(および1−3)については、エンジンシステム100がフルスロットルの状態にあるとき、図15(a)に示すように、ロータリバルブ50−2(または50−3)は、第1のピストン14−2(または14−3)が下死点に至るまで開き、ロータリバルブ50−2(または50−3)が閉じた時点でインジェクタから燃料が噴射される。これは第1のグループのエンジン1−1と同様である。また、図15(b)に示すように、エンジンシステム100のスロットル開度が3/4の状態にあるときも第1のグループのエンジン1−1と同様に、ロータリバルブ50−2(または50−3)は下死点を越えて開き続け、ロータリバルブ50−2(または50−3)が閉じた時点でインジェクタから燃料が噴射される。
図15(c)に示すように、スロットル開度が1/2になると、ロータリバルブ50−2(または50−3)は第1のピストン14−2(または14−3)が下死点に至ったときに閉じるが、このときにはインジェクタからの燃料の噴射が行われない。図15(d)に示すように、これはスロットル開度が1/4になった場合も同様である。図15(e)に示すように、エンジンシステム100がアイドリング状態になると、ロータリバルブ50−2(または50−3)は下死点を越えて開き続けるが、この場合にもインジェクタからの燃料の噴射は行われない。
このように、スロットル開度が低下した場合に、第2のグループのエンジン1−2,1−3においては燃料の噴射ないし燃焼が行われないので、燃料の消費を抑え低燃費を実現することができる。すなわち、第1のグループのエンジン1−1では運転中に常に燃焼工程を行うようにし、第2のグループのエンジン1−2,1−3ではスロットル開度が低下した場合には燃焼工程を行わず、スロットル開度が大きい場合に選択的に燃焼工程を行うこととすれば、燃料の消費を最小限にすることができる。
また、このような動作を行う第2のグループのエンジン1−2,1−3をエンジンブレーキに利用することも可能である。図12に示すように、このエンジンシステム100の吸気管104内には、第1のグループのエンジン1−1の分岐管104A−1と第2のグループのエンジン1−2,1−3の分岐管104A−2,104A−3との間を閉止可能なエンジンブレーキバルブ107が設けられている。このエンジンブレーキバルブ107は、エンジンブレーキ制御装置108に接続されており、このエンジンブレーキ制御装置108により開閉されるようになっている。エンジンブレーキ制御装置108によりエンジンブレーキバルブ107の開度を調整することで、第2のグループのエンジン1−2,1−3の吸気口12−2,12−3への空気の供給量を調整することができる。
上述のように第2のグループのエンジン1−2および1−3において燃料の噴射ないし燃焼を行っていないときに(図15(c)、図15(d)、および図15(e)の状態)、エンジンブレーキバルブ107を閉じれば、エンジン1−2,1−3の吸気口12−2,12−3へ空気が供給されなくなるので、エンジン1−2,1−3の第2のチャンバに負圧が生じ、クランクシャフト40の主軸41に対してエンジンブレーキをかけることができる。
次に、本実施形態におけるエンジン1−1の(第2の)ロータリバルブ52−1について説明する。図16は、ロータリバルブ52−1を示す分解斜視図である。なお、エンジン1−2,1−3のロータリバルブ52−2,52−3もロータリバルブ52−1と同一の構造であるため、ここでは説明を省略する。
図16に示すように、ロータリバルブ52−1は、クランクシャフト40−1の回転に同期して回転するバルブシャフト130と、スプラグ132と、スリーブ134と、バルブシャフト130の外周面に固定されるピン135とを含んでいる。バルブシャフト130には連通孔130Aが形成されており、この連通孔130Aに対応してスリーブ134には連通孔134Aが形成されている。また、バルブシャフト130には、スプラグ132を収容するためのスプラグホール130Bが形成されている。また、スリーブ134には、スプラグ132に対応して切り欠き134Bと、ピン135に対応して周方向に延びる長孔134Cとが形成されている。ピン135は長孔134C内で移動可能となっており、これによりバルブシャフト130に対するスリーブ134の回転が一定範囲に制限される。
図17はロータリバルブ52−1の縦断面図、図18はスプラグ132を示す平面図である。図16から図18に示すように、スプラグ132は、バルブシャフト130に取り付けられる軸132Aと、ボルトによりバルブシャフト130に固定される固定部132Bと、軸132Aを中心として回動する可動部132Cとを備えている。図17および図18に示すように、スプラグ132の可動部132Cには、スプリング受け孔132Dが形成されており、スプラグ132の可動部132Cとバルブシャフト130との間にはスプリング136が配置されている。これにより、スプラグ132の可動部132Cはバルブシャフト130の径方向外側に付勢される。
図19はロータリバルブ52−1の開状態を模式的に示す斜視図、図20は閉状態を模式的に示す斜視図である。また、図21は、スプラグ132と(第2の)シリンダヘッド21−1との関係を示す模式図である。図19に示すように、ロータリバルブ52−1の開状態(バルブシャフト130の連通孔130A、スリーブ134の連通孔134A、および第2の連絡口22−1が連通した状態)では、スプラグ132の可動部132Cがスプリング136によりバルブシャフト130の径方向外側に付勢され、スリーブ134の切り欠き134Bに係合する。
図21に示すように、シリンダヘッド21−1には、スプラグ132の可動部132Cの一部Pに係合するカム面21A−1が形成されており、スプラグ132の可動部132Cはこのカム面21−1に追従して径方向に移動するようになっている。本実施形態では、図20に示すように、ロータリバルブ52−1の閉じた状態でスプラグ132の可動部132Cが径方向内側に沈むように可動部132Cの一部Pがカム面21A−1に係合するようになっている。
図22は、ロータリバルブ52−1とシリンダヘッド21−1との関係を示す模式図である。図22に示すように、ロータリバルブ52−1のスリーブ134の外周面とシリンダヘッド21−1との間には複数のシール部材137が設けられている。
ロータリバルブ52−1が閉じた状態では、カム面21A−1との係合によりスプラグ132の可動部132Cが径方向内側に沈んでおり、バルブシャフト130に取り付けられたピン135(図16参照)がスリーブ134の長孔134C(図16参照)の一端に係合しつつ、バルブシャフト130がスリーブ134に先行して回転する(図20の状態)。そして、スリーブ134の連通孔134Aが第2の連絡口22−1に連通する位置に至ると、連絡路60内の圧力により連通孔134Aの側壁が回転方向に押され、スリーブ134が瞬間的に回転する。これにより、バルブシャフト130の連通孔130A、スリーブ134の連通孔134A、および第2の連絡口22−1が瞬時に全開の状態で連通する。このとき、スプラグ132の可動部132Cはスリーブ134の切り欠き134Bの下方に移動し、スプリング136により径方向外側に移動する。
ロータリバルブ52−1は、スプラグ132の可動部132Cとスリーブ134の切り欠き134Bとが係合したまま回転を続け、やがて第2の連絡口22−1が連通孔130Aおよび連通孔134Aと連通しなくなるまで回転し、閉状態となる。閉状態となった後、スプラグ132の可動部132Cがカム面21−1(図21参照)に当接し、回転に伴いスプラグ132の可動部132Cが径方向内側に沈む。このとき、バルブシャフト130が回転しても、スリーブ134はシール部材137との摩擦抵抗によりバルブシャフト130と一緒には回転せず、バルブシャフト130に取り付けられたピン135(図16参照)がスリーブ134の長孔134C(図16参照)の一端に係合するまでその場所に留まる。その後、ピン135が長孔134Cの一端に係合すると、スリーブ134がバルブシャフト130とともに回転し始め、上述した動作を繰り返す。
このように、本実施形態におけるエンジン1−1のロータリバルブ52−1によれば、瞬時に開状態とすることができるので、ロータリバルブ52−1の連通孔130Aを大きくすることができ、短時間で大量の混合気を効率よく送ることが可能となる。
次に、本実施形態におけるエンジン1−1のロータリバルブ53−1について説明する。図23は、ロータリバルブ53−1を示す分解斜視図である。なお、エンジン1−2,1−3のロータリバルブ53−2,53−3もロータリバルブ53−1と同一の構造であるため、ここでは説明を省略する。
図23に示すように、ロータリバルブ53−1は、取付部140と、可動部141と、バルブシャフト142とを有している。バルブシャフト142は、クランクシャフト40−1の回転に同期して回転する。取付部140の先端部には2つの取付孔140Aが形成されている。また、取付部140の先端には可動部141が取り付けられる。この可動部141には、径方向に貫通する連通孔141Aと、軸方向に貫通する2つの円弧孔141Bとが形成されている。これらの円弧孔141Bは取付部140の取付孔140Aに対応して設けられる。さらに、可動部141の先端には、脚部142Aを有するバルブシャフト142が設けられる。この脚部142Aは、可動部141の円弧孔141Bを通って取付部140の取付孔140Aに圧入され、取付部140と可動部141とバルブシャフト142とが一体となる。このような構成により、可動部141は、バルブシャフト142の脚部142Aが円弧孔141Bに係合する範囲内で回転するようになっている。
なお、図23に示すように、取付部140にはオイル孔140Bおよび140Cが形成されており、バルブシャフト142にはオイル孔142Bが形成されている。このオイル孔140Bはオイル孔140Cと連通しており、オイル孔140Cは、取付部140と可動部141との間の隙間を介して円弧孔141Bに連通している。また、円弧孔141Bは、可動部141とバルブシャフト142との間の隙間を介してバルブシャフト142に設けられたオイル孔(図示せず)に連通している。このバルブシャフト142に設けられたオイル孔はオイル孔142Bに連通している。これらのオイル孔にはオイルが注入されており、これらのオイル孔および取付部140、可動部141、およびバルブシャフト142の隙間から出たオイルは、ロータリバルブ53−1を冷却した後、オイルパンに戻される。なお、バルブシャフト142の脚部142Aと可動部141の円弧孔141Bとの間のクリアランスを極小さくすれば、可動部141の瞬間的な回転による衝撃を円弧孔141Bに存在するオイルにより緩衝することができ、衝撃音を抑えることができる。
図24は、ロータリバルブ53−1の可動部141とシリンダヘッド21−1との関係を示す模式図である。図24に示すように、ロータリバルブ53−1の可動部141の外周面とシリンダヘッド21−1との間には複数のシール部材143が設けられている。このシール部材143と可動部141との間の摩擦抵抗、およびバルブシャフト142の脚部142Aと可動部141の円弧孔141Bとの係合により、取付部140およびバルブシャフト142が可動部141に先行して回転し、可動部141の連通孔141Aが排気口23−1に連通するときに、可動部141が瞬時に回転し、可動部141の連通孔141Aと排気口23−1とが瞬時に全開の状態で連通するようになっている。このように、燃焼行程の下死点の数度前でロータリバルブ53−1が全開となるので、排気抵抗が大幅に減少する。
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。