以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、同一又は相当する要素については、全図を通じて同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。
[ロボットの全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るロボット1の全体構成を示す斜視図である。図1に示すロボット1は、垂直多関節型6軸ロボットである。ロボット1は、アーム部2と、アーム部2の先端部に連結された手首部3と、アーム部2及び手首部3を駆動する複数のモータと、各モータに動力及び信号を供給するモータ用ケーブル4(図2参照)とを備えている。
手首部3の先端部には、所要作業を行うためのエンドエフェクタ8が取外し可能に装着される。エンドエフェクタ8には、例えば、スポット溶接作業を行うためのスポット溶接ガン、アーク溶接作業を行うためのアーク溶接トーチ、塗装作業を行うための塗装ガン、ピッキング作業を行うための把持具又は吸着具など、様々なエフェクタを適用することができる。また、ロボット1には、エンドエフェクタ8に電力、動力、信号及び材料(例えば塗料や接着剤)の少なくともいずれかを供給するためのエフェクタ用ケーブル9が取り付けられる。スポット溶接ガン又はアーク溶接トーチがエンドエフェクタ8に適用される場合、エフェクタ用ケーブル9には、ガン又はトーチに電力を供給するための電気ケーブルなど複数本のケーブルが含まれる。このため、エフェクタ用ケーブル9は、これら複数本のケーブルを束ねて成る。
アーム部2は、基台10、基端アーム11、中間アーム12及び先端アーム13を有している。基台10は、作業現場に据え付けられる。基端アーム11は、基台10の上面側に連結され、基台10に対して第1腕軸線A1周りに回転する。第1腕軸線A1は、基台10が水平面上に適正に設置されたときに鉛直方向に延在する。中間アーム12は、長尺に形成され、その基端部にて基端アーム11に連結され、基端アーム11に対して第2腕軸線A2周りに回転する。第2腕軸線A2は、第1腕軸線A1に対して垂直な方向に延在する。先端アーム13は、中間アーム12の先端部に連結され、中間アーム12に対して第3腕軸線A3周りに回転する。第3腕軸線A3は、第2腕軸線A2と平行に延在している。先端アーム13はアーム部2の先端部を成し、手首部3は先端アーム13に連結されている。
手首部3は、第1可動部14、第2可動部15及び第3可動部16を有している。第1可動部14は、長尺に形成され、その基端部にて先端アーム13に連結され、先端アーム13に対して第1手首軸線S周りに回転する。第2可動部15は、第1可動部14の先端部に連結され、第1可動部14に対して第2手首軸線B周りに回転する。第3可動部16は、第2可動部15に連結され、第2可動部15に対して第3手首軸線T周りに回転する。第3可動部16は手首部3の先端部を成し、エンドエフェクタ8は第3可動部16に装着されて固定される。
第1手首軸線Sは、第3腕軸線A3に対して垂直な方向であって第1可動部14の長手方向に延在している。第1手首軸線Sの向きは、基端アーム11の第1腕軸線A1周りの回転位置、中間アーム12の第2腕軸線A2周りの回転位置及び先端アーム13の第3腕軸線A3周りの回転位置に応じて変化する。第1手首軸線Sの向きが変化すると、手首部3及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
第2手首軸線Bは、第1手首軸線Sに対して垂直な方向に延在している。第2手首軸線Bの向きは、基端アーム11、中間アーム12及び先端アーム13の回転位置、第1可動部14の第1手首軸線S周りの回転位置に応じて変化する。第2手首軸線Bの向きが変化すると、第2可動部15、第3可動部16及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
第3手首軸線Tは、第2手首軸線Bに対して垂直な方向に延在している。第3手首軸線Tの向きは、基端アーム11、中間アーム12、先端アーム13及び第1可動部14の回転位置、第2可動部15の第2手首軸線B周りの回転位置に応じて変化する。第3手首軸線Tの向きが変化すると、第3可動部16及びエンドエフェクタ8の姿勢が変化する。
以降、図1に示されたロボット1の姿勢を「基準姿勢」と称す。アーム部2及び手首部3を構成している部分11〜16が所定の基準回転位置に位置していれば、ロボット1の姿勢が基準姿勢となる。図1に示すように、基準姿勢では、3つの手首軸線S,B,Tが水平に向けられ、第3手首軸線Tが第1手首軸線Sと同一直線上に位置し、第2手首軸線Bが第1手首軸線S及び第3手首軸線Tに垂直に交差する。部分11〜16は、基準回転位置から正方向にも逆方向にも回転可能である。基準回転位置からの回転により、ロボット1の姿勢は基準姿勢から変化する。
複数のモータには、基端アーム11を第1腕軸線A1周りに回転させる第1アームモータ21と、中間アーム12を第2腕軸線A2周りに回転させる第2アームモータ22と、先端アーム13を第3腕軸線A3周りに回転させる第3アームモータ23とが含まれる。更に、複数のモータには、第1可動部14を第1手首軸線S周りに回転させる第1手首モータ24と、第2可動部15を第2手首軸線B周りに回転させる第2手首モータ25と、第3可動部16を第3手首軸線T周りに回転させる第3手首モータ26とが含まれる。これら6つのモータ21〜26は、例えばブラシレスサーボモータである。
第2及び第3手首モータ25,26は、第1可動部14に取り付けられる。他のモータ21〜24の配置は特に限定されない。例えば、第3アームモータ23及び第1手首モータ24は、先端アーム13に取り付けられる。
第1、第2及び第3アームモータ21〜23が動作すると、エンドエフェクタ8は、手首部3と共に、第1、第2及び第3腕軸線A1〜A3周りに回転する。第1手首モータ24が動作すると、エンドエフェクタ8は、手首部3と共に、先端アーム13に対して旋回するようにして第1手首軸線S周りに回転する。第2手首モータ25が動作すると、エンドエフェクタ8は、第2及び第3可動部15,16と共に、第1可動部14に対して屈曲するようにして第2手首軸線B周りに回転する。第3手首モータ26が動作すると、エンドエフェクタ8は、第3可動部16と共に、第2可動部15に対して捻られるようにして第3手首軸線T周りに回転する。これにより、アーム部2及び手首部3が姿勢を変えながら、エンドエフェクタ8が所望の経路に沿って移動する。
[先端アーム及び手首部の外部構造]
図2(a)は、外筒部36が取り外された先端アーム13及び手首部3の外観を示す斜視図、図2(b)は、外筒部36が取り付けられた先端アーム13及び手首部3の外観を示す斜視図である。図2(a)及び図2(b)に示されたロボット1の姿勢も、図1と同様にして基準姿勢である。なお、図2(a)及び図2(b)では、エンドエフェクタ8及びエフェクタ用ケーブル9の図示を省略する。以降、アーム部2に近い側を「基端側」、エンドエフェクタ8に近い側を「先端側」と称する場合がある。
図2(a)に示すように、先端アーム13は、モータ収容部31、手首受け部32及びモータステー部33を有している。先端アーム13には、第3アームモータ23及び第1手首モータ24が取り付けられる。
モータ収容部31は、両端が開放された略円筒状に形成されている。第3アームモータ23は、モータ収容部31の開口を介してモータ収容部31内に収容される。モータ収容部31の中心軸線は、第3腕軸線A3と一致する。手首受け部32は、先端側が開放されて基端側が閉鎖された略円筒状に形成されている。手首部3は、手首受け部32の先端側に形成された円形状の開口を介し、手首受け部32に受容される。手首受け部32はモータ収容部31の外周側に配置され、手首受け部32の中心軸線はモータ収容部31の中心軸線に垂直な方向に延在し且つ第1手首軸線Sと一致する。すなわち、第1手首軸線Sは、第3腕軸線A3とねじれの位置の関係にある。モータステー部33は、手首受け部32の基端部に設けられている。第1手首モータ24は、モータステー部33から基端側に突出するようにしてモータステー部33に取り付けられている。第1手首モータ24の出力軸は、手首受け部32の中心軸線と平行である。モータステー部33は、第1手首軸線Sの延在方向において、モータ収容部31の中心軸線よりも先端側に配置される。このため、第1手首モータ24は、第3アームモータ23の半径方向に見て第3アームモータ23と部分的に重なるようにして配置される。
このように、第3腕軸線A3と第1手首軸線Sとがねじれの位置の関係にあるので、先端アーム13の構造が第1手首軸線Sの延在方向に小型化する。第1手首モータ24の出力軸が第1手首軸線Sからオフセットされているので、第1手首モータ24が第1手首軸線S上に配置される他の部品(特に、エフェクタ用ケーブル9)と干渉するのを避けることができる。第1手首モータ24の出力軸は、第1手首軸線Sと平行であるので、第1手首モータ24の回転を減速して手首部3に伝達するための動力伝達機構81(図3参照)に、例えば平歯車列などの平行軸式減速機構を適用することができるようになり、先端アーム13の構造が全体として小型化及び簡素化する。
第1可動部14は、筒部41、大径筒部42、一対の第1梁部43及び第2梁部44、ブリッジ部45を有している。筒部41は、中空の円筒状に形成され、その基端部にて手首受け部32に受容される。大径筒部42は、筒部41よりも大径を有した中空円筒状に形成されている。大径筒部42は、その基端部にて筒部41の先端部と結合されている。筒部41は、先端アーム13に対して回転可能に連結され、筒部41の中心軸線は、手首受け部32の中心軸線と一致する。大径筒部42の中心軸線は、筒部41の中心軸線と一致する。つまり、筒部41及び大径筒部42の中心軸線は、第1手首軸線Sと一致する。第1梁部43及び第2梁部44は、大径筒部42の先端部から、第1手首軸線Sと略平行に延在しており、第1手首軸線Sと垂直な方向に向き合っている。第1梁部43及び第2梁部44の先端部同士の間には、第2可動部15が挟み込まれる。第2可動部15の回転中心となる第2手首軸線Bは、第1梁部43及び第2梁部44が向き合う方向に延在している。
第2可動部15は、一対の第1フランジ部51及び第2フランジ部52と、ディスク部53とを有している。ディスク部53は、円環状に形成されている。第1フランジ部51及び第2フランジ部52は、ディスク部53の外周部から基端側に向けて略平行に延在している。第1フランジ部51は、第1梁部43の内面に接触し、第2フランジ部52は、第2梁部44の内面に接触している。第1フランジ部51及び第2フランジ部52は、第1梁部43及び第2梁部44と同様、第2手首軸線Bの延在方向に向き合っている。ディスク部53の中心軸線は、第3手首軸線Tと一致する。第1フランジ部51、第2フランジ部52及びディスク部53は、第2手首軸線B及び第3手首軸線Tと垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)から見て略U字状を呈している。
第3可動部16は、基部61及びアタッチメント部62を有している。基部61は、ディスク部53の外径と略同径を有する円筒状に形成され、ディスク部53の先端部に連結されている。アタッチメント部62は、円盤状に形成され、基部61に結合されている。エンドエフェクタ8は、アタッチメント部62の円形状の先端面に装着されて固定される。基部61の中心軸線及びアタッチメント部62の中心軸線は、ディスク部53の中心軸線すなわち、第3手首軸線Tと一致する。アタッチメント部62には、第3手首軸線T上に貫通孔63が形成されている。
第1可動部14のブリッジ部45は、第1梁部43及び第2梁部44の長手方向における中間部同士の間を接続している。このため、第1梁部43、第2梁部44及びブリッジ部45は、第1手首軸線Sとも第2手首軸線Bとも垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)から見て略H字状を呈している。このようなブリッジ部45が設けられたことにより、第1可動部14の強度が高くなり、第1可動部14は、第2可動部15、第3可動部16及びエンドエフェクタ8を良好に支持することができるようになる。
[ケーブル挿通部,第2及び第3手首モータ]
ブリッジ部45が設けられたことにより、第1可動部14は、ブリッジ部45よりも基端側に、大径筒部42、第1梁部43及び第2梁部44により囲まれた基端スペースを有する。また、第1可動部14は、ブリッジ部45よりも先端側に、第1梁部43、第2梁部44及び第2可動部15により囲まれた先端スペース49を有する。
そして、先端アーム13及び手首部3には、エフェクタ用ケーブル9(図1,図3及び図4参照)が挿通されるケーブル挿通部70が設けられている。ケーブル挿通部70は、先端アーム13及び第1可動部14には第1手首軸線S上に位置するようにして設けられ、第3可動部16には第3手首軸線T上に位置するようにして設けられている。第1可動部14において、ケーブル挿通部70は、筒部41の内部、大径筒部42の内部、基端スペース、ブリッジ部45及び先端スペース49に亘って、第1可動部14の長手方向に沿って設けられている。ケーブル挿通部70は、先端スペース49から、第1フランジ部51及び第2フランジ部52の間の空隙、ディスク部53の内側及び貫通孔63へと連続する。
基端スペースは、第1手首軸線S上に位置するケーブル挿通部70によって、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)に分けられる。ここで、二分された基端スペースのうち、基準姿勢で鉛直方向上側に位置するものを第1基端スペース47とし、基準姿勢で鉛直方向下側に位置するものを第2基端スペース48とする。第3手首モータ26は、第1基端スペース47に配置され、第2手首モータ25は、第2基端スペース48に配置される。このように、第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、第1手首軸線Sと垂直な方向に互いに重なり合うように、且つ、当該方向においてケーブル挿通部70を挟むようにして第1手首部14に取り付けられる。
エフェクタ用ケーブル9が、第1可動部14の回転中心となる第1手首軸線S上に位置するケーブル挿通部70に挿通されるので、エフェクタ用ケーブル9が手首部3の動作に連れて大きく振れ回ったり、作業スペース周辺の構造体やワークと干渉したりするのを良好に抑制することができる。第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、ケーブル挿通部70を挟むようにして第1可動部14に取り付けられているので、第1可動部14が回転するときに第1可動部14の重量バランスを保つことができる。ケーブル挿通部70のより詳細な構成については、先端アーム13及び手首部3の内部構造についての説明と併せて後述する。
第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、各々の出力軸が第1手首軸線Sと垂直な方向であって第2手首軸線Bと平行な方向(基準姿勢では水平方向)に延在するようにして配置されている。換言すれば、第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、各々の出力軸が第1可動部14の長手方向に垂直な方向に延在するようにして配置されている。したがって、第1可動部14に第2手首モータ25及び第3手首モータ26を取り付けながらも、第1可動部14の長手方向の寸法を短くすることができる。
第1梁部43の基端部及び第2梁部44の基端部は、第1手首軸線Sにも第2手首軸線Bにも垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)においてズレて配置されている。第1梁部43の基端部は、第1手首軸線Sよりも第1基端スペース47側(基準姿勢では上側)に配置されており、第2梁部44の基端部は、第1手首軸線Sよりも第2基端スペース48側(基準姿勢では下側)に配置されている。例えば、第1梁部43及び第2梁部44を第1手首軸線S周りに180度回転対称に配置した場合、このような構造が実現される。
すると、第1基端スペース47は、第2手首軸線Bと平行な方向のうち一側では第1梁部43で覆われる一方、他側では第2梁部44で覆われずに開放される。このため、出力軸が第2手首軸線Bと平行な方向に延在するようにして第3手首モータ26を第1基端スペース47に配置する場合に、第3手首モータ26のハウジングを、第2梁部44の内面よりも他側へとはみ出すようにして配置することができる。逆に言えば、第1梁部43と第2梁部44の間隔を、手首モータ25,26の出力軸の軸線方向の寸法よりも短くすることができる。第2基端スペース48、第1梁部43、第2梁部44及び第2手首モータ25の間の関係も、これと同様である。したがって、第1可動部14の長手方向の寸法が短くなるようにして第1可動部14に第2及び第3手首モータ25,26を取り付けながら、第1可動部14の第2手首軸線B方向の寸法を短くすることができる。また、モータ25,26が配置されるスペース47,48が、モータ25,26の出力軸の軸線方向のうち何れか一方の側で開放されるので、第2手首モータ25及び第3手首モータ26の第1手首部14に対する取付け及び取外しを簡便に行うことができ、第2手首モータ25及び第3手首モータ26を簡便に組立及び整備することができるようになる。
第2手首モータ25の出力軸は、第2手首軸線Bと平行に配置される。このため、第2手首モータ25の回転を、回転軸線の向きを変えずに第2可動部15に伝達することができる。このため、第2手首モータ25から第2可動部15に動力を伝達するための動力伝達機構82(図3参照)を簡素化可能になる。第3手首モータ26の出力軸は、第3手首軸線Sと垂直な方向に配置されている。このため、第3手首モータ26から第3可動部16に動力を伝達するための動力伝達機構83(図3参照)は、回転軸線の向きを90度変える機構を備えていればよい。そして、第2手首モータ25及び第3手首モータ26が第1可動部14に取り付けられているので、例えば先端アーム13のようにアーム部2を構成する部分10〜13に取り付けられた場合と比べ、動力伝達機構82,83(図3参照)を小型化することができる。
第1基端スペース47は第1梁部43で覆われ、第2基端スペース48は第2梁部44で覆われるが、第1梁部43は、第1サイドカバー71で覆われ、第2梁部44は、第2サイドカバー72で覆われている。第3手首モータ26は、第1梁部43の内面に取り付けられ、第3手首モータ26の出力軸は、第1梁部43と第1サイドカバー71とにより囲まれた第1サイドスペース73(図3参照)内に配置される。この第1サイドスペース73内には、第3手首モータ26の回転を第3手首軸線Tに伝達するための動力伝達機構83(図3参照)が収容される。第2手首モータ25は、第2梁部44の内面に取り付けられ、第2手首モータ25の出力軸は、第2梁部44と第2サイドカバー72とにより囲まれた第2サイドスペース74(図3参照)内に配置される。この第2サイドスペース74(図3参照)内には、第2手首モータ25の回転を第2手首軸線Bに伝達するための動力伝達機構82(図3参照)が収容される。
このように、一対の第1梁部43及び第2梁部44は、単に第1可動部14のフレームメンバとしての機能だけでなく、第2手首モータ25及び第3手首モータ26をそれぞれ取り付けるためのステー、動力伝達機構82,83を個別に収容するためのハウジングメンバとしての機能も有する。これにより、2つの動力伝達機構82,83は、第1手首軸線Sと垂直な方向に離れるようにして、また、第1手首軸線Sを当該垂直な方向において挟むようにして配置される。このため、第1可動部14が回転するときに第1可動部14の重量バランスを保つことができる。さらに、第1サイドカバー71を取り外せば第3手首モータ26に対応した動力伝達機構83を整備することができ、第2サイドカバー72を取り外せば第2手首モータ25に対応した動力伝達機構82を整備することができるようになる。このように、一方の動力伝達機構を整備するときに他方の動力伝達機構が邪魔にならないので、ロボット1の整備を簡便に行うことができる。
[モータ用ケーブル]
第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、筒部41よりも先端側に配置され、第1手首部14の長手方向の略中央部に配置されている。一方、第2手首モータ25及び第3手首モータ26に電力等を供給するためのモータ用ケーブル4は、基台10(図1参照)から延在する。このため、モータ用ケーブル4は、先端アーム13及び第1手首部14の基端部(すなわち、筒部41及び大径筒部42)を順次経由して、第2手首モータ25及び第3手首モータ26へと接続されることとなる。第1手首部14は、先端アーム13に対し相対的に回転し得るので、モータ用ケーブル4は、第1手首部14が相対回転しても断線しないように、第1手首部14の基端部周辺において、いわゆるU字処理を用いて取り回されている。
先端アーム13は、手首受け部32の外周面に、モータ用ケーブル4を先端アーム13の内部から外部に引き出すためのケーブル引出部35を有している。ケーブル引出部35は、モータ用ケーブル4を外部に引き出すための開口を有しており、この開口は、第1手首軸線Sの延在方向の先端側に向けられている。このため、モータ用ケーブル4は、ケーブル引出部35から第1手首軸線Sの延在方向の先端側に向けて引き出される。
そして、モータ用ケーブル4は、固定クランプ76及び可動クランプ77により拘束され、且つ、固定クランプ76及び可動クランプ77の間において筒部41の外周面に沿って延在する。固定クランプ76は、先端アーム13に対して固定され、筒部41の外周面に近接対向して配置される。可動クランプ77は、筒部41に対して固定され、筒部41の外周面上に配置される。固定クランプ76と可動クランプ77とは、第1手首軸線Sの延在方向において離れて配置されている。
モータ用ケーブル4は、固定クランプ76と可動クランプ77との間において弛み部4aを有している。弛み部4aは、固定クランプ76と可動クランプ77との間を最短で結んだ場合の距離よりも長寸を有し、そのため、筒部41の外周面上で略U字を描くようにして延在しうる。弛み部4aは、筒部41の外周面に沿って延在している。なお、モータ用ケーブル4は、可動クランプ77よりも先端側においては、大径筒部42の内部又は外部で第1手首軸線Sに沿って延在し、最終的に第2手首モータ25及び第3手首モータ26それぞれに接続される。
第1可動部14が先端アーム13に対して相対的に回転すると、固定クランプ76の位置は変わらないが、可動クランプ77の位置は第1手首軸線S周りに回転変位する。これにより、固定クランプ76と可動クランプ77との間の距離が変化する。一方、モータ用ケーブル4は、固定クランプ76と可動クランプ77との間に弛み部4aを有しており、固定クランプ76と可動クランプ77との間の距離が長くなると、弛み部4aにおける弛みが解消されていく。この弛みの解消により、モータ用ケーブル4に過大な張力が作用するのを避けることができ、モータ用ケーブル4の断線を良好に抑制することができる。固定クランプ76と可動クランプ77との間の距離が短くなっていく場合は、弛み部4aの弛みが増していく。なお、弛み部4aを設けたことにより、モータ用ケーブル4は、固定クランプ76よりも基端側において、第1可動部14の回転に関わらず先端アーム13に対する姿勢が殆ど変わらず、可動クランプ77よりも先端側において、第1可動部14の回転に関わらず第1可動部14に対する姿勢が変わらない。このため、モータ用ケーブル4が先端アーム13又は第1可動部14に絡まることもない。
仮に、弛み部4aが固定側である先端アーム13又は該先端アーム13に対して固定された部材の外周面に沿って配置されていれば、第1可動部14が回転したときに弛み部4aが当該外周面上を摺動することになるので、モータ用ケーブル4が擦れにより損傷するおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、弛み部4aが、可動側である第1可動部14の外周面に沿って配置されている。このため、第1可動部14が回転したときに、弛み部4aは、第1可動部14と共回りしながらその弛みを解消又は増幅する。したがって、前述のような弛み部4aの摺動及びこれに伴うモータ用ケーブル4の損傷を良好に抑制することができる。
なお、固定クランプ76は筒部41の外周面基端部に近接し、可動クランプ77は筒部41の外周面先端部上に配置されており、これにより2つのクランプ76,77の第1手首軸線S方向における距離が極力大きくなっている。したがって、弛み部4aの長さを極力長くすることができ、第1可動部14の回転変位量が大きくても、モータ用ケーブル4に過大な張力が作用するのを避けることができる。また、基準姿勢において、固定クランプ76と可動クランプ77とが、第1手首軸線S方向に並ぶようにして配置されている。つまり、基準姿勢において、固定クランプ76の第1手首軸線S周りの位相が、可動クランプ77のものと略一致している。そして、この基準姿勢において弛み部4aが略U字を描くようにして筒部41の外周面上で延在する。したがって、第1可動部14が基準回転位置から正方向及び逆方向のいずれの方向に回転しても、モータ用ケーブル4に過大な張力が作用するのを避けることができる。
筒部41は、手首受け部32及び大径筒部42と比べて小径であり、手首受け部32、筒部41及び大径筒部42が全体としてダンベル状の段付き円筒を成している。図2(b)に示すように、先端アーム13には、このような筒部41を外囲する略円筒状の外筒部36が取り付けられる。外筒部36は、両端部が開放されており、その基端部において手首受け部32の先端側外周面により支持され、その先端部において大径筒部42の基端側外周面により支持される。
外筒部36の基端部には、半径方向外周側に突出するようにしてケーブル導入部37が設けられている。ケーブル導入部37は、外筒部36が手首受け部32及び大径筒部42に支持されると、先端アーム13のケーブル引出部35に接続される。ケーブル導入部37は、外筒部36の内周面に開口している。この外筒部36の内周面と筒部41の外周面との間には、閉じたケーブル収容空間78(図3参照)が略円環状に形成される。固定クランプ76は、このようにケーブル収容空間78を成す外筒部36の内周面上に設けられ、前述のとおり筒部41の外周面に近接して配置される。可動クランプ77も、このケーブル収容空間78内に収容される。
すると、モータ用ケーブル4は、先端アーム13のケーブル引出部35から、ケーブル導入部37を介してケーブル収容空間78の内部へ導入されていき、固定クランプ76により拘束される。弛み部4aは、ケーブル収容空間78内に配置され、外筒部36により外囲される。したがって、モータ用ケーブル4は、外部に露出することなくアーム部2側から第2及び第3手首モータ25,26へと延在する。このように、外筒部36を設けたことにより、可動側となる筒部41の外周面上でU字処理するという構造を実現しながら、エフェクタ用ケーブル9だけでなくモータ用ケーブル4をもロボット1の外部構造体から良好に保護することができる。
前述のとおり、エフェクタ用ケーブル9は、第1手首部14において、第1手首軸線Sに沿って設けられる。したがって、エフェクタ用ケーブル9が挿通されるスペースと、モータ用ケーブル4の弛み部4aが配置されるスペースとが、筒部41の周壁を介して第1手首軸線Sの直交方向に区画されることとなる。エフェクタ用ケーブル9がスポット溶接ガン用であれば、エフェクタ用ケーブル9は一般にモータ用ケーブル4よりも大径となる。このため、エフェクタ用ケーブル9は、モータ用ケーブル4と比べ、捩られたときに断線するおそれが低い。本実施形態では、筒部41の周壁で区画された2つのスペースのうち、エフェクタ用ケーブル9が中心寄りのスペースで取り回され、モータ用ケーブル4が外周寄りのスペースでU字処理を用いて取り回される。これにより、モータ用ケーブル4の断線を良好に抑制することができると共に、エフェクタ用ケーブル9の弛みを小さくすることができる。弛みが小さくなれば、エフェクタ用ケーブル9の全長が短くなり、エフェクタ用ケーブル9の重量が小さくなる。
[先端アーム及び手首部の内部構造]
図3及び図4は、基準姿勢での先端アーム13及び手首部3の断面図である。図3においては、3つの手首軸線S,B,Tが図示された断面上で延在している。図4においては、第1手首軸線S及び第3手首軸線Tが図示された断面上で延在する一方、第2手首軸線Bが当該断面に直交している。なお、図3及び図4では、エンドエフェクタ8の図示を省略している。
(エフェクタ用ケーブルの導入)
図3に示すように、先端アーム13の内部には、第1手首モータ24の回転を手首部3に伝達する第1動力伝達機構81が収容されている。また、手首受け部32の中央部には、円筒管91が設けられている。円筒管91の中心軸線は、手首受け部32の中心軸線上に位置している。円筒管91は、第1手首モータ24の動作に基づいては回転しない。
手首部3の基端側には、第1手首モータ24の回転を入力する旋回軸40が設けられている。旋回軸40は、円筒管91に外嵌されて円筒管91と同心に配置され、円筒管91に対して相対的に回転可能である。第1動力伝達機構81は、第1手首モータ24の出力軸と一体に回転する駆動歯車81aと、駆動歯車81aと噛合する従動歯車81bとを有し、従動歯車81bは旋回軸40と同心に配置され且つ旋回軸40と結合されている。駆動歯車81a及び従動歯車81bは平歯車であり、従動歯車81bは駆動歯車81aよりも大径を有する。第1手首モータ24が動作すると、第1手首モータ24の出力軸の回転が、第1動力伝達機構81により減速されて旋回軸40に伝達される。これにより、手首部3が、旋回軸40の中心軸線周りに回転する。
この旋回軸40の中心軸線が、第1手首軸線Sとなる。手首受け部32の中心軸線、円筒管91の中心軸線、筒部41の中心軸線及び大径筒部42の中心軸線は、この旋回軸40の中心軸線と一致するようにして配置されている。
エフェクタ用ケーブル9は、先端アーム13の外部から手首受け部32の内部に導入されるようになっている。前述のとおり、手首受け部32の基端側には、第1手首モータ24が取り付けられている。第1手首モータ24は、第1手首軸線Sからオフセットして配置され且つ第1手首軸線Sと平行に配置されている。本実施形態では、第1手首モータ24の出力軸は、第1手首軸線Sから第3腕軸線A3の延在方向の一側に離れるようにして配置されている。すると、手首受け部32の基端側では、第1手首軸線Sから見て第3腕軸線A3の延在方向の他側にスペースが確保される。エフェクタ用ケーブル9は、当該スペースを有効に活用して、第1手首軸線Sから第3腕軸線A3の延在方向の他側に離れた位置において、手首受け部32の内部へと導入される(図1参照)。
このように、第1手首モータ24を第1手首軸線Sからオフセットして配置したことにより、第1動力伝達機構81を簡易な構造によって実現することができ、エフェクタ用ケーブル9を導入するスペースを確保することができ、導入されたエフェクタ用ケーブル9と第1動力伝達機構81との干渉を良好に抑制することができる。また、第1手首モータ24が第1手首軸線Sからオフセットされていても、エフェクタ用ケーブル9がそのカウンタウェイトとして機能し、先端アーム13の第3腕軸線A3方向における重量バランスが保たれる。
(ケーブル挿通部:先端アーム〜大径筒部)
円筒管91は、両端とも開放されている。円筒管91の基端側の開口は、先端アーム13の内部に配置されている。円筒管91の先端部には、筒部41の基端部が外嵌している。このため、円筒管91の先端側の開口は筒部41の内部空間と緊密に連通し、また、筒部41は円筒管91よりも大きい内径を有する。筒部41の内部空間は、大径筒部42の内部空間と連通している。大径筒部42は筒部41よりも大きい内径を有している。
エフェクタ用ケーブル9は、円筒管91よりも基端側において手首受け部32の内部に導入された後、円筒管91の基端側の開口を介して円筒管91の内部に導入される。円筒管91よりも基端側で導入されるので、エフェクタ用ケーブル9を先端アーム13の内部で無理に曲げなくても、エフェクタ用ケーブル9を円筒管91の内部に導入することができる。エフェクタ用ケーブル9は、円筒管91の内部を通過した後、筒部41の内部空間及び大径筒部42の内部空間に順次導入される。このように、エフェクタ用ケーブル9は、第1手首軸線Sに沿って延在するようにして手首部3に取り付けられる。手首部3の内部に導入される前に、固定側となる円筒管91の内部に導入される。このため、手首部3が動作したときに、エフェクタ用ケーブル9が可動側となる手首部3の内部で振れ回るのを良好に抑制することができる。
(ケーブル挿通部:大径筒部〜ガイド孔)
次に、エフェクタ用ケーブル9は、第1手首軸線Sに沿って基端スペース、ブリッジ部45及び先端スペース49を通り抜けていくこととなる。ブリッジ部45は、第1手首軸線Sの延在方向に貫通孔が形成されている。貫通孔は略円形の断面を有し、貫通孔の中心軸線は第1手首軸線S上に位置している。
貫通孔の内部には、ガイド部材92が挿し込まれている。ガイド部材92は、全体としてラッパ状に形成されている。より具体的には、ガイド部材92は、両端が開口した筒状に形成され、内側にガイド孔93を有している。ガイド孔93は、基端部において比較的小型の断面を有し、先端部において比較的大型の断面を有している。
ガイド部材92の長手方向は、ガイド孔93の中心軸線の延在方向であり、ガイド孔93の中心軸線は第1手首軸線Sと一致するようにして配置される。ガイド部材の先端部は、ブリッジ部45の先端側の端面に係止及び締結されている。よって、ガイド孔93の先端側は、先端スペース49と連通している。ガイド部材92の長手方向の寸法は、ブリッジ部45の貫通孔の中心軸線方向の長さよりも長いので、ガイド部材92の基端部はブリッジ部45から基端スペース内に突出する。ガイド部材92の基端側の開口は、大径筒部42の内部空間に配置され、ガイド孔93の基端側は大径筒部42の内部空間と連通している。
エフェクタ用ケーブル9は、大径筒部42の内部空間に導入された後、ガイド部材92の基端側の開口を介してガイド孔93に導入される。エフェクタ用ケーブル9は、ガイド孔93を通過した後、ガイド部材92の先端側の開口を介して先端スペース49に導入される。このように、ガイド部材92及びそのガイド孔93は、第1手首軸線S上に位置するようにして第1可動部14に設けられてエフェクタ用ケーブル9が挿通されるケーブル挿通部70を構成している。
ケーブル挿通部70は、基端スペースを、第2手首モータ25が配置される第1基端スペース47と、第3手首モータ26が配置される第2基端スペース48とに二分している。したがって、ガイド部材92は、単にケーブル挿通部70を構成しているだけでなく、エフェクタ用ケーブル9が挿通されるガイド孔93を、第2手首モータ25が配置される第1基端スペース47及び第3手首モータ26が配置される第2基端スペース48から物理的に分離する。第2手首モータ25は、このガイド部材92の外面に設置されている。第3手首モータ26は、ガイド部材92の外面であって、第2手首モータ25が取り付けられている側とは第1手首軸線S周りに略180度離れた部分に設置されている。このように、ガイド部材92は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26を取り付けるためのモータステーとしての機能を有する。
このように、基端スペース内にガイド部材92が設けられていることにより、第2手首モータ25及び第3手首モータ26を安定的に設置することができるようになる。また、エフェクタ用ケーブル9が第2手首モータ25又は第3手首モータ26と干渉するのを良好に抑制することもできる。このモータの安定設置及びケーブルの干渉抑制のため、例えば、ガイド部材92の先端部は、第2手首モータ25の出力軸及び第3手首モータ26の出力軸よりも、第1手首軸線S方向における基端側へと突出していることが好ましい。また、ガイド部材92は、第1梁部43及び第2梁部44を接続するブリッジ部45に設けられ、第1梁部43及び第2梁部44の間に配置される一方、この第1梁部43により形成される第1サイドスペース73内に第3動力伝達機構83が収容され、第2梁部44により形成される第2サイドスペース74内に第2動力伝達機構82が収容される。このため、エフェクタ用ケーブル9は、第2動力伝達機構82及び第3動力伝達機構83と干渉することもない。
そして、ガイド部材92は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれている箇所において、第2手首軸線Bの延在方向に長寸である。第2手首軸線Bの延在方向は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26の出力軸の軸線方向でもある。このため、第2手首モータ25及び第3手首モータ26を効果的に安定支持することができるようになる。
逆に言えば、ガイド部材92は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれている箇所において、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向(基準姿勢では鉛直方向)に短寸となっている。ガイド孔93は、当該垂直な方向において、定常状態におけるエフェクタ用ケーブル9を挿通させるために必要とされるだけの小さい寸法を有している。このため、第2手首モータ25及び第3手首モータ26が、エフェクタ用ケーブル9及びガイド部材92、ガイド孔93及びエフェクタ用ケーブル9を第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向において挟むようにして配置しつつも、第2手首モータ25及び第3手首モータ26を当該垂直な方向に極力密集させることができる。これにより、手首部3が第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に大型化するのを良好に抑制することができる。
ガイド孔93は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれる部分において、第2手首軸線Bの延在方向に長寸で、第1手首軸線S及び第2手首軸線Sに垂直な方向に短寸であればよいので、当該部分における断面は、長方形状であっても略楕円状であってもよい。このようなガイド孔93に挿通されたエフェクタ用ケーブル9は、第1可動部14及び第3可動部16が、前述した基準回転位置に位置していれば、捩られずに定常状態となる。第1可動部14又は第3可動部16が基準回転位置から回転すると、エフェクタ用ケーブル9が捩られる。前述のとおり、エフェクタ用ケーブル9は、複数本のケーブルを束にして成るので、捩りにより、エフェクタ用ケーブル9は全体の断面が楕円状に変形する。つまり、エフェクタ用ケーブル9は、ある方向に縮径して収縮するが、別の方向に拡径して膨張する。ガイド孔93は、第2手首軸線Bの延在方向に長寸であるので、エフェクタ用ケーブル9が捩れて楕円状になっても、このような膨張に対応することができ、エフェクタ用ケーブル9がガイド部材92の内面により圧迫されるのを良好に抑制することができる。
(ケーブル挿通部:ガイド孔〜第3可動部)
ガイド孔93の先端部は、基端部と比べて、先端側に向かうに従ってより顕著に拡径している。特に、ガイド孔93は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれている部分から先端側に向かって拡開している。ガイド孔93は、第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれている部分において第2手首軸線Bの延在方向に長寸である一方、この部分よりも先端側では、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向の寸法の拡大率が、第2手首軸線Bの延在方向の寸法の拡大率よりも大きい。このため、ガイド孔93は、先端部において略真円形状の断面を有している。
ここで、第2可動部15及び第3可動部16の内部構造について簡単に説明する。第2フランジ部52は、第1フランジ部51よりもディスク部53からの突出長さが大きい。第2フランジ部52の内部には、第2手首モータ25の回転を入力する屈曲軸50が設けられている。第2手首モータ25の回転が屈曲軸50に入力されると、屈曲軸50は、自身の中心軸線周りに回転する。この屈曲軸50の中心軸線が第2手首軸線Bとなる。屈曲軸50が回転すると、第2可動部15の全体、第3可動部16及びエンドエフェクタ8が第2手首軸線B周りに回転する。第1フランジ部51は、第1梁部43に回転可能に支持されているので、屈曲軸50が第2手首軸線Bの延在方向において偏在していても、第2可動部15の全体が円滑に回転する。なお、第2動力伝達機構82は、例えば、第2手首モータ25の出力軸と屈曲軸50との間に設けられたベルト伝動機構によって構成される。前述したが、第2手首モータ25の出力軸の軸線方向が、第2手首軸線Bと平行であるので、単一のベルト伝動機構を設けるだけで、第2手首モータ25の回転を屈曲軸50及び第2可動部15に伝達可能になる。
第2可動部15のディスク部53の中央部及び第3可動部16の基部61の中央部には、円筒管94が挿し込まれている。円筒管94は第3可動部16に対して固定され、第2可動部15は、円筒管94に対して相対的に回転可能になっている。ディスク部53の内部には、第3手首モータ26の回転を入力する捩り軸60が設けられている。捩り軸60は、円筒管94に外嵌されて円筒管94と同心に配置され、円筒管94に対して相対的に回転可能である。捩り軸60は、第3可動部16の基部61と結合されている。捩り軸60に第3手首モータ26の回転が入力されると、捩り軸60は自身の中心軸線周りに回転し、これに伴い第3可動部16及びエンドエフェクタ8が捩り軸60の中心軸線周りに回転する。この捩り軸60の中心軸線が第3手首軸線Tとなる。
第3動力伝達機構83は、ベルト伝動機構83a、プライマリ軸83b、傘歯車列83c、セカンダリ軸83d及び平歯車列83eを有している。プライマリ軸83bは、第2手首軸線Bの延在方向(すなわち、第3手首モータ26の出力軸の軸線方向)と平行に延在し、第1サイドスペース73の内部及び第1フランジ部51の内部に配置されている。セカンダリ軸83dは、第3手首軸線Tの延在方向(すなわち、捩り軸60の中心軸線方向)と平行に延在しており、第1フランジ部51の内部及びディスク部53の内部に配置されている。なお、セカンダリ軸83dは、ディスク部53の内部において、円筒管94及び捩り軸60よりも外周側に配置されている。ベルト伝動機構83aは、第1サイドスペース73の内部に収容され、第3手首モータ26の出力軸の回転をプライマリ軸83bに伝達する。傘歯車列83cは、第1フランジ部51の内部に収容され、プライマリ軸83bの回転をセカンダリ軸83dに伝達する。平歯車列83eは、ディスク部53の内部に収容され、セカンダリ軸83dの回転を捩り軸60に伝達する。
円筒管94は、両端とも開放されている。円筒管94の基端側の開口は、第1フランジ部51及び第2フランジ部52の間に配置されている。円筒管94の先端側の開口は、第3可動部16のアタッチメント部62に形成されている貫通孔63と連通している。
エフェクタ用ケーブル9は、ガイド孔93から抜け出して先端スペース49に導入された後、第1フランジ部51及び第2フランジ部52の間のスペースを通過していく。次に、円筒管94の基端側の開口を介し、円筒管94の内部及び貫通孔63の内部に順次導入される。エフェクタ用ケーブル9は、円筒管94及び貫通孔63を通過した後、貫通孔63から引き出され、エンドエフェクタ8に接続される。このようにして、エフェクタ用ケーブル9は、ガイド孔93から抜け出した後は、第3手首軸線Tに沿って延在する。
基準姿勢では、第1手首軸線S及び第3手首軸線Tが同一直線上に位置する。このため、基準姿勢では、エフェクタ用ケーブル9は、定常状態であり、且つ、ガイド孔93から貫通孔63まで第1手首軸線S及び第3手首軸線Tに沿って直線的に延在する。すると、エフェクタ用ケーブル9は、ガイド孔93の中心部を通過する。
基準姿勢から第1可動部14及び/又は第3可動部16が回転すると、エフェクタ用ケーブル9は、直線的に延在する状態を維持し、第1可動部14及び/又は第3可動部16の回転に連れて捩られる。基準姿勢から第2可動部15のみが回転すると、第3手首軸線Tが第1手首軸線Sに対して傾斜する。これにより、エフェクタ用ケーブル9は、第2手首軸線Bが通過する位置周辺で屈曲する。
ここで、ガイド部材92の先端側の開口から第1手首軸線Sと第2手首軸線Bとが交差する位置までの第1手首軸線Sの延在方向における距離をD1、第3手首軸線Tと第2手首軸線Bとが交差する位置から円筒管94の基端側の開口までの第3手首軸線Tの延在方向における距離をD2とする。なお、第1手首軸線Sと第2手首軸線Bとが交差する位置と、第2手首軸線Bと第3手首軸線Tとが交差する位置とは、第2手首軸線B及び第3手首軸線Tの向きに関わらず一致する。本実施形態に係る手首部3においては、D1のD2に対する比(D1/D2)が、1よりも大きく、より限定的に言えば2以上である。
上記比(D1/D2)が1よりも大きい場合、第1フランジ部51及び第2フランジ部52の長さを極力短くすることができ、第2可動部15が、第3可動部16及びエンドエフェクタ8を良好に支持することができるようになる。一方、上記比(D1/D2)が1よりも大きい場合において、第2手首軸線Bが第1手首軸線Sと交差する位置でエフェクタ用ケーブル9が屈曲すると、当該交差する位置から円筒管94の基端側の開口までの距離が短いため、エフェクタ用ケーブル9の曲げがきつくなる。このため、エフェクタ用ケーブル9の屈曲位置は、曲げを緩めるように、第2手首軸線Bが通過する位置よりも基端側にシフトしようとし、また、第3可動部16が屈曲する方向とは反対側に向かって隆起しようとする。上記比(D1/D2)が大きくなるほど、このような傾向がより顕著に現れる。
そこで、ガイド部材92の先端側の開口は、円筒管94の基端側の開口よりも大きくなるように形成されている。更に、エフェクタ用ケーブル9は、先端スペース49、ガイド孔93の先端部においては拘束されていない。替わりに、エフェクタ用ケーブル9は、ガイド孔93の第2手首モータ25及び第3手首モータ26により挟まれている部分において、第1手首軸線S及び第2手首軸線Bに垂直な方向に拘束されている。
したがって、上記比(D1/D2)が1よりも大きい値であり、エフェクタ用ケーブル9の屈曲位置へのシフトやエフェクタ用ケーブル9の隆起が生じようとするときに、大径のガイド孔93によって当該シフト及び隆起を許容することができる。そして、エフェクタ用ケーブル9がガイド部材92の先端部に引っ掛かって急激に折り曲げられることも抑制することができる。したがって、上記比(D1/D2)を大きい値にしながらも、エフェクタ用ケーブル9の断線を良好に抑制することができる。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記構成のものに限定されず、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、第2手首モータ25及び第3手首モータ26は、先端スペース49に配置されていてもよい。本実施形態のように基端スペースにモータ25,26が配置された場合、第1可動部14の重心を長手方向において極力基端側に位置させることができ、第1可動部14の基端部に作用する負荷を軽減可能になる。また、先端側では、第2可動部15を第2手首軸線Bの延在方向に挟む構造を実現するため、第1梁部43及び第2梁部44が対向している必要があるが、基端側では、必ずしも完全に対向させる必要はないため、前述のようにモータ25,26の端部を露出させる構造が容易に実現される。