JP5833614B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は有機電界発光素子に関する。特に、発光効率が高く耐久性に優れた有機電界発光素子に関する。
有機電界発光素子(以後、有機EL素子と略記する。)は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機機能層と、これらの層を挟んだ対向電極とから構成されている。有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層において再結合し、生成した励起子からの発光及び前記励起子の少なくとも一方からエネルギー移動して生成した他の分子の励起子からの発光を利用した、発光を得るための素子である。
これまで有機EL素子は、機能を分離した積層構造を用いることにより、輝度及び素子効率が大きく改善され発展してきた。例えば、正孔輸送層と発光兼電子輸送層を積層した二層積層型素子や正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを積層した三層積層型素子や、正孔輸送層と発光層と正孔阻止層と電子輸送層とを積層した四層積層型素子がよく用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、有機EL素子の実用化には未だ多くの課題が残されている。第1に高い発光効率を達成すること、第2に高い駆動耐久性を達成することである。特に、連続駆動時の品質低下は最大の課題である。
例えば、発光層と正孔輸送層との間に0.1nm〜5nmの界面層をバリア層として設け、正孔の移動を遅くすることによって正孔と電子の移動バランスを調整して外部量子効率を高める試みが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この手段では、キャリア総体の移動は低下するので輝度が低下し、駆動電圧が増加し、また、キャリアの素子内滞留時間が長くなるために駆動耐久性が低下する問題が懸念される。
また、マルチフォトンと呼ばれる発光層と機能層を含む一つの発光ユニットを多層に積層した構成が知られている。例えば、複数の有機電界発光素子(以後、有機EL素子とも記述する。)の発光ユニットを絶縁層で隔離し、各発光ユニットにそれぞれ対向する電極を配した構成が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この構成では、発光ユニット間の絶縁層および電極が発光の取り出しを妨げるため、実質的に各発光ユニットから発光が十分に利用することができない。また、各発光ユニットが本来抱えている外部量子効率の低さを改良する手段にはならない。無機発光素子(以後、無機EL素子とも記述する。)において、同様に発光ユニットを積層し、各発光ユニットを絶縁層で隔離した構成も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この構成においても、発光ユニットが単に複数積層されているだけであって、各発光ユニットが本来抱えている外部量子効率の低さを改良する手段にはならない。
ポリマー分散型発光素子の場合は、発光層は主として単層構成であるため、発光層内に発光サイトが分散しているため、正孔および電子注入及び輸送のバランスが取りにくく、再結合効率が低下する問題があった。この改良手段として、発光層内における発光材料および電荷輸送材料の濃度を共に陽極側で低く、陰極側で高くし、陰極側の領域に集中して発光を起こさせることが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この手段はポリマー分散型発光素子に特有の課題に有効であるが、発光領域が陰極側の一部の領域のみであって、発光層全体が有効に発光に利用されず、総括的な発光効率の向上とは言えない。
また、有機EL素子を積層構造とした場合、各層間の障壁のためにキャリア注入性が低下し、駆動電圧の上昇かつ耐久性の低下の問題があった。このような各層間の障壁を低減する手段として各層が含有する正孔注入材料、電子注入材料、あるいは正孔輸送材料、電子輸送材料の各層における濃度に傾斜を設けることが提案されている(例えば、特許文献5参照。)。この構成においては、発光層における発光材料はバイポーラー性混合層から形成される発光層内の限定された領域に配置されている。この構成に置いても発光材料の配置された限定された領域のみで発光する。
有機EL素子を連続駆動したときの輝度劣化を改良する手段として、発光層のホスト材料とゲスト材料の混合比率を発光層と正孔輸送層界面でゲスト材料100%ととし、電子輸送層側のゲスト材料濃度を低くすることが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。ゲスト材料は発光材料であって、発光層の正孔輸送層界面に高濃度に発光材料を分布させることにより濃度消光が改良されると説明されている。しかしながら、この構成に置いても発光材料の配置された限定された領域のみで発光する。発光に寄与しない発光領域が残り、発光効率が低い問題は未解決のままであった。
高い外部量子効率と高い駆動耐久性とを両立させることは、実用的に有用な有機EL素子を設計する上で極めて重要な課題であり、常に改良を求められている課題であった。
サイエンス(Science),267巻,3号,1995年,1332頁 特開2003−123984号公報 特開平6−310275号公報 特開平8−162273号公報 特開2001−189193号公報 特開2002−313583号公報 特開2004−6102号公報
本発明は、発光効率が高く耐久性に優れた有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決する事を見出された。
<1> 一対の電極間に発光層を含む有機層を挟持した有機電界発光素子であって、前記発光層が少なくとも1種のホール輸送性発光材料と少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料を含有し、前記ホール輸送性発光材料の前記発光層における濃度が陽極側から陰極側に向かって減少していることを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記電子輸送性ホスト材料の前記発光層における濃度が前記陰極側から前記陽極側に向かって減少していることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度に対して0質量%以上30質量%以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における前記電子輸送性ホスト材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記電子輸送性ホスト材料の濃度に対して0質量%以上90質量%以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で10質量%以下であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記発光層中における前記電子輸送性ホスト材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域で90質量%以下であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<7> 前記ホール輸送性発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<8> 前記ホール輸送性発光材料がIr錯体であることを特徴とする<7>に記載の有機電界発光素子。
<9> 前記電子輸送性ホスト材料がBe錯体、Al錯体、Ga錯体、Zn錯体、Pt錯体、Pd錯体、又は含窒素芳香族ヘテロ環化合物であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
本発明により、発光効率が高く耐久性に優れた有機EL素子が提供される。
特に、燐光発光材料を用いて、発光効率が高く且つ高電流領域においても発光効率の低下がなく、低電流領域から高電流領域に渉ってまで高い発光効率で優れた駆動耐久性を有する有機EL素子が提供される。
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に発光層を含む有機層を挟持した有機電界発光素子であって、前記発光層が少なくとも1種のホール輸送性発光材料と少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料を含有し、前記ホール輸送性発光材料の前記発光層における濃度が陽極側から陰極側に向かって減少していることを特徴とする。
好ましくは、前記電子輸送性ホスト材料の前記発光層における濃度が前記陰極側から前記陽極側に向かって減少している。
前記ホール輸送性発光材料の濃度傾斜は、好ましくは、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度に対して0質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上20質量%以下であり、更に好ましくは0質量%以上10質量%以下である。
前記電子輸送性ホスト材料の濃度傾斜は、好ましくは前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における前記電子輸送性ホスト材料の濃度が、前記陰極側界面付近の領域における前記電子輸送性ホスト材料の濃度に対して0質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上87質量%以下であり、更に好ましくは、0質量%以上85質量%以下である。
なお、本願明細書において、「発光層の陰極側界面付近の領域」とは、発光層の陰極側界面から発光層全体の厚みの10%の厚みの領域を指すものと定義され、「発光層の陽極側界面付近の領域」とは、発光層の陽極側界面から発光層全体の厚みの10%の厚みの領域を指すものと定義される。また、その領域における濃度とは、その領域における平均濃度を指すものとして定義される。
本発明においては、「濃度傾斜」の意味するところは、総体的に濃度が減少もしくは増加していることを意味するのであって、連続的に変化しても、階段状あるいは波状に変化しても良い。あるいは、例えば、減少する濃度傾斜の場合に、層内で局部的に増加している領域があっても総体的に減少する濃度傾斜を有していれば本願の意図する範囲内である。
従来、ホール輸送性発光材料の発光層における濃度に傾斜を有しない場合、発光層の陰極面の局部領域でのみ発光し、発光層の中央部では発光しない現象があった。本発明の有機EL素子は、上記傾斜構造の発光層により発光層の全域で発光するため、発光効率の増加と駆動耐久性が顕著に改良される。本発明の発光層の構成によれば、発光層に大量のホールが注入され、注入されたホールが電子輸送層側(陰極側)に移動するにつれてホール輸送性発光材料の濃度が低下するためにホール移動速度が抑制され、発光層中央部で再結合しやすくなったためと考える。また、発光層と隣接層との界面近傍の局所部に励起子が集中することを抑えられるため、高輝度での発光効率の低下も抑えられる効果も得られる。
好ましくは、発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で10質量%以下であり、より好ましくは、7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。好ましくは、発光層中における前記電子輸送性ホスト材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域で90質量%以下であり、より好ましくは、87質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下である。
ホール輸送性発光材料もしくは電子輸送性ホスト材料の濃度がこの範囲を越えると有効な傾斜が得られず、本発明の効果が充分に得られない。
なお、「発光層の陰極側(陽極側)界面付近の領域」における各材料の濃度は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、エッチングX線光電子分光分析(XPS/ESCA)などの方法によって測定することができる。
好ましくは、前記ホール輸送性発光材料が燐光発光材料である。さらに好ましくは、ホール輸送性発光材料がIr錯体である。
好ましくは、前記電子輸送性ホスト材料がBe錯体、Al錯体、Ga錯体、Zn錯体、Pt錯体、Pd錯体、又は含窒素芳香族ヘテロ環化合物である。
1.有機EL素子構造
本発明における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層、及び発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層の少なくとも一方を有する。また、発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な態様は、陽極側から順に、少なくとも、(1)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(2)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(3)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様である。
上記正孔輸送性中間層は、発光層への正孔注入を促進する機能及び電子をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
また、上記電子輸送性中間層は、発光層への電子注入を促進する機能及び正孔をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
更に、上記正孔輸送性中間層及び上記電子輸送性中間層の少なくとも一方は、発光層で生成する励起子をブロックする機能を有することが好ましい。
上記の正孔注入促進、電子注入促進、正孔ブロック、電子ブロック、励起子ブロックといった機能を有効に発現させるためには、該正孔輸送性中間層および該電子輸送性中間層は、発光層に隣接していることが好ましい。
尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明または半透明電極、発光層、および金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明または半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、およびスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
次に、本発明の有機EL素子を構成する要素について詳細に説明する。
2.発光層
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層または正孔輸送性中間層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、電子輸送層または電子輸送性中間層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明に於ける発光層は、少なくとも1種のホール輸送性発光材料と少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料を含有し、前記ホール輸送性発光材料の前記発光層における濃度が陽極側から陰極側に向かって減少していることを特徴とする。
好ましくは、前記電子輸送性ホスト材料の前記発光層における濃度が前記陰極側から前記陽極側に向かって減少している。
本発明に於ける発光層は、さらに、他の発光材料およびホスト材料を含有しても良い。例えば、電子輸送性発光材料またはホール輸送性ホスト材料を適宜含有しても良い。
発光層中における全化合物質量に対して、発光材料の総量は、0.1質量%〜30質量%含有されるのが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜15質量%含有されることがより好ましい。発光層中におけるホスト材料の総量は、70質量%〜99.9質量%含有されるのが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から85質量%〜99質量%含有されることがより好ましい。
本発明における発光層に含有する発光材料とホスト材料としては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光性発光材料とホスト材料との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光性発光材料とホスト材料との組み合せでもよい。好ましくは、燐光発光性発光材料と電子輸送性ホスト材料との組み合せである。
(ホール輸送性発光材料)
本発明に於けるホール輸送性発光材料について説明する。
本発明の発光層に用いられるホール輸送性発光材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャル(Ip)が5.1eV以上6.4eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.2eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力(Ea)が1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このようなホール輸送性発光材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール系化合物、インドール系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアリールアルカン系化合物、アリールアミン系化合物、スチリル系化合物、スチリルアミン系化合物、チオフェン系化合物、芳香族多環縮合系化合物などのほか、金属錯体などが挙げられる。
前記金属錯体中の金属イオンは、特に限定されないが、発光効率向上、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、遷移金属イオン、希土類金属イオンであることが好ましく、より好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、オスミウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、鉛イオン、希土類金属イオン(例えば、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンなど)が好ましく、更に好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ユーロピウムイオン、カドリニウムイオン、テルビウムイオンであり、特に好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、レニウムイオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンであり、最も好ましくは、イリジウムイオンである。イリジウムイオンを有する金属錯体の中でも特に好ましくは、炭素−Ir結合、窒素−Ir結合(この場合の結合は、配位結合、イオン結合、共有結合のいずれであってもよい)を有する金属錯体である。
このようなホール輸送性発光材料の例としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。




(電子輸送性ホスト材料)
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホスト材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子輸送性ホスト材料として好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物(A)は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンである。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、及びターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、及び2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、及び4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホスト材料の例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
このような電子輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。




電子輸送層ホスト材料としては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22がより好ましく、E−3、E−4、E−8、E−9、E−21、またはE−22が更に好ましい。
(その他のホスト材料)
本発明に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)を電子輸送性ホスト材料と併用して用いることができる。
本発明の有機層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.4eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.2eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、カルバゾール、アザカルバゾール、インドール、アザインドール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
中でも、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、またはチオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にカルバゾール骨格、インドール骨格、および/または芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。



<膜厚>
発光層の膜厚としては、輝度ムラ、駆動電圧、輝度の観点から、0.03μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.06μm以上0.4μm以下であることが好ましい。発光層の膜厚が薄いと、高輝度で低い電圧での駆動が可能となるが、素子抵抗が小さくなることで、電圧低下による輝度変化の影響を受けやすくなり、輝度ムラの増加を招く結果となる。発光層の膜厚が厚いと、駆動電圧が高くなり、発光効率の低下を招き、用途を限定する原因となってしまう。
<層構成>
発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。また、発光層が積層構造である場合については、積層構造を構成する各層の膜厚は特に限定されないが、各発光層の合計膜厚が前述の範囲になるようにすることが好ましい。
3.正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、インドール誘導体、アザインドール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、および三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはフラーレンC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜200nmであるのが好ましく、5nm〜100nmであるのがより好ましく、10nm〜60nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
4.電子注入層、電子輸送層
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることが出来る。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜50nmであることが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜50nmであることが好ましく、0.5nm〜20nmであることが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子輸送層が発光層に隣接する層である場合には、耐久性向上の観点から、当該層を構成する材料としては、イオン化ポテンシャルが6.0eV以下のものが用いられる。
5.基板
本発明で使用する基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
6.電極
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
7.保護層
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
8.封止
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
9.駆動
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
10.用途
本発明の有機EL素子の用途は特に限定されないが、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明等広い分野に適用できる。
以下に、本発明の有機EL素子の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
1.有機EL素子の作製
(比較の有機EL素子1の作製)
0.5mm厚み、2.5cm角の酸化インジウム錫(ITOと略記)を100nmの厚みに蒸着したガラス基板(ジオマテック(株)製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極上に真空蒸着法にて以下の層を蒸着した。本発明の実施例における蒸着速度は特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
正孔注入層:4,4’,4”−Tris[2−naphtyl(phenyl)amino]triphenylamine(2−TNATAと略記する)及びテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQと略記する)をF4−TCNQが2−TNATAに対して1.0質量%となるように共蒸着した。厚み160nmであった。
正孔輸送層:N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPDと略記する)、厚み10nm。
発光層:ホール輸送性ホスト4,4’−di−(N−carbazole)−biphenyl(CBPと略記)及びホール輸送性燐光発光材料EA−1をEA−1がCBPに対して10質量%となるように共蒸着した。膜厚は60nmであった。
続いて、発光層の上に、下記の電子輸送層、および電子注入層を設けた。
電子輸送層:Aluminum (III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する)、厚み40nm。
電子注入層:LiF、厚み1nm。
さらに、シャドウマスクによりパターニングして陰極として厚み100nmのAlを設けた。
各層はいずれも抵抗加熱真空蒸着により設けた。
作製した積層体を、窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止した。
(比較の有機EL素子2の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層と電子輸送層の間に下記のホールブロック層を設け、それ以外は比較の有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子2を作製した。
ホールブロック層:2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する)、厚み5nm。
(比較の有機EL素子3の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。
ホール輸送性ホストCBPとホール輸送性燐光発光材料EA−1の共蒸着量を蒸着進行と共に連続的に増加させた。蒸着当初の陽極側界面ではCBPが80質量%、EA−1が20質量%の混合比で、蒸着終了段階の陰極側界面ではCBPが100質量%、EA−1が0質量%の混合比となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の総膜厚は60nmであった。陽極側界面付近の領域における各材料の濃度は、CBPが81質量%、EA−1が19質量%であり、陰極側界面付近の領域では、CBPが99質量%、EA−1が1質量%であった。
(比較の有機EL素子4の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層として下記の層を設け、それ以外は比較の有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子4を作製した。
発光層:電子輸送性ホストBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料EA−1をEA−1がBAlqに対して10質量%となるように共蒸着した。発光層の厚み60nmであった。
(比較の有機EL素子5の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層として下記の層を設け、それ以外は比較の有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子5を作製した。
発光層:電子輸送性ホストBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料EA−1をEA−1がBAlqに対して5質量%となるように共蒸着した。発光層の厚み60nmであった。
(比較の有機EL素子6の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層として下記の層を設け、それ以外は比較の有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子6を作製した。
発光層:電子輸送性ホストBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料EA−1をEA−1がBAlqに対して20質量%となるように共蒸着した。発光層の厚み60nmであった。
(本発明の有機EL素子1の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。
発光層:電子輸送性ホスト材料のBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料のEA−1の共蒸着量を蒸着進行と共に変化させた。蒸着当初の陽極側界面ではBAlqが80質量%、EA−1が20質量%の混合比率であり、蒸着終了段階の陰極側界面ではBAlqが95質量%、EA−1が5質量%の混合比率となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の総膜厚は60nmとした。陽極側界面付近の領域における各材料の濃度は、BAlqが80.75質量%、EA−1が19.25質量%であり、陰極側界面付近の領域では、BAlqが94.25質量%、EA−1が5.75質量%であった。
(本発明の有機EL素子2の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。
発光層:電子輸送性ホスト材料のBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料のEA−1の共蒸着量を蒸着進行と共に変化させた。蒸着当初の陽極側界面ではBAlqが80質量%、EA−1が20質量%の混合比率であり、蒸着終了段階の陰極側界面ではBAlqが100質量%、EA−1が0質量%の混合比率となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の総膜厚は60nmとした。陽極側界面付近の領域における各材料の濃度は、BAlqが81質量%、EA−1が19質量%であり、陰極側界面付近の領域では、BAlqが99質量%、EA−1が1質量%であった。
(本発明の有機EL素子3の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。
発光層:電子輸送性ホスト材料のBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料のEA−1の共蒸着量を蒸着進行と共に変化させた。蒸着当初の陽極側界面ではBAlqが40質量%、EA−1が60質量%の混合比率であり、蒸着終了段階の陰極側界面ではBAlqが100質量%、EA−1が0質量%の混合比率となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の総膜厚は60nmとした。陽極側界面付近の領域における各材料の濃度は、BAlqが43質量%、EA−1が57質量%であり、陰極側界面付近の領域では、BAlqが97質量%、EA−1が3質量%であった。
(本発明の有機EL素子4の作製)
比較の有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。
発光層:電子輸送性ホスト材料のBAlqおよびホール輸送性燐光発光材料のEA−1の共蒸着量を蒸着進行と共に変化させた。蒸着当初の陽極側界面ではBAlqが0質量%、EA−1が100質量%の混合比率であり、蒸着終了段階の陰極側界面ではBAlqが100質量%、EA−1が0質量%の混合比率となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の総膜厚は60nmとした。陽極側界面付近の領域における各材料の濃度は、BAlqが5質量%、EA−1が95質量%であり、陰極側界面付近の領域では、BAlqが95質量%、EA−1が5質量%であった。
実施例に用いた化合物の構造を下記に示す。


2.性能評価結果
得られた比較有機EL素子および本発明の有機EL素子を同一条件で下記の手段によって外部量子効率および駆動耐久性を測定した。
《駆動電圧》
輝度300cd/mに達する直流電圧を駆動電圧とした。
《外部量子効率の測定方法》
作製した発光素子をKEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し輝度300cd/mに発光させた。その発光スペクトルと光量をトプコン社製輝度計SR−3を用いて測定し、発光スペクトル、光量と測定時の電流から外部量子効率を計算した。
さらに、高輝度発光における発光効率の評価として、1000cd/mになるように直流電圧を印加し、この輝度での外部量子効率を測定した。
《駆動耐久性率の測定方法》
各素子を初期輝度300cd/mおよび1000cd/mで連続駆動して、輝度が半減するまでの時間を測定した。この輝度半減時間をもってして駆動耐久性の指標とした。
得られた結果を表1に示した。本発明、および比較の試料はいづれも赤色発光を示した。比較有機EL素子に対して本発明の有機EL素子1〜4はいずれも外部量子効率が高くかつ駆動耐久性に優れていた。また、比較の素子では、高輝度発光における外部量子効率が低輝度における値より大きく低下するのに対して、本発明の素子は、高輝度発光でも外部量子効率の低下率が小さく、高輝度での発光効率が優れていた。
本発明の素子の中でも有機EL素子1より素子2、素子3、素子4の順に外部量子効率、駆動耐久性共に向上することから、発光層内のホール輸送性発光材料と電子輸送性ホスト材料の濃度傾斜が大きくなるほどより効果が大きいことが判る。

実施例2
実施例1において、発光層を下記に変更し、その他は実施例1と同様にして素子を作製した。
比較の素子7:実施例1の比較の素子1に於けるEA−1をホール輸送性燐光発光材料のIridium(III)fac−tris(2−phenylpyridinato−N,C2’)(Ir(ppy)と表記)に変更し、その他は比較の素子1の発光層と同様に調製した。
比較の素子8:実施例1の比較の素子4に於けるEA−1をIr(ppy)に変更し、BAlqをE−3に変更し、その他は比較の素子4の発光層と同様に調製した。
比較の素子9:実施例1の比較の素子3に於けるEA−1をホール輸送性燐光発光材料のIr(ppy)に変更し、その他は比較の素子3の発光層と同様に調製した。
本発明の有機EL素子5:実施例1の本発明の素子2に於けるEA−1をIr(ppy)に変更し、BAlqをE−3に変更し、その他は本発明の素子2の発光層と同様に調製した。

得られた試料について、実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
本実施例の比較の素子8,9、および本発明の素子5では緑色発光が得られた。
比較有機EL素子8,9に対して本発明の有機EL素子5は、外部量子効率が高くかつ駆動耐久性に優れていた。特に、比較の素子では、高輝度発光で外部量子効率が著しく低下するのに対して、本発明の素子は、高輝度発光でも外部量子効率が僅かしか低下せず、高輝度での発光効率が優れていた。

実施例3
実施例2において、発光層を下記に変更し、その他は実施例1と同様にして素子を作製した。
本発明の有機EL素子6:本発明の素子5に於けるIr(ppy)の代わりにホール輸送性燐往発光材料Ir錯体Aを用い、E−3の代わりに電子輸送性ホストE−5を用いて、その他は本発明の素子5と同様に調製した。

得られた試料について、実施例1と同様に評価した。
本発明の素子6では、青色発光が得られ、実施例1と同様に外部量子効率が高くかつ駆動耐久性に優れていた。
実施例4
実施例1において、発光層を下記に変更し、その他は実施例1と同様にして素子を作製した。
本発明の有機EL素子7:本発明の素子6におけるIr錯体の代わりにホール輸送性燐光発光材料Ir錯体Bを用いて、その他は本発明の素子6と同様に調製した。

得られた試料について、実施例1と同様に評価した。
本発明の素子7では、青色発光が得られ、実施例1と同様に外部量子効率が高く、かつ駆動耐久性に優れていた。
実施例5
実施例1において、発光層を下記に変更し、その他は実施例1と同様にして素子を作製した。
本発明の有機EL素子8:本発明の素子2におけるホール輸送性燐光発光材料EA−1の代わりに、ホール輸送性蛍光発光材料F−1を用いて、その他は本発明の素子2と同様に調整した。

得られた試料について、実施例1と同様に評価した。
本発明の素子8では、赤色発光が得られ、実施例1と同様に外部量子効率が高く、かつ駆動耐久性に優れていた。

Claims (18)

  1. 一対の電極間に発光層を含む有機層を挟持した有機電界発光素子において、前記発光層が少なくとも1種のホール輸送性発光材料と少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料を含有し、前記ホール輸送性発光材料の前記発光層における濃度が陽極側から陰極側に向かって階段状に減少している有機電界発光素子であって、
    前記ホール輸送性発光材料の少なくとも1種と、前記電子輸送性ホスト材料の少なくとも1種は、前記発光層全域に亘って同時に存在し、前記少なくとも1種のホール輸送性発光材料と前記少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料が同時に存在する前記発光層全域において、前記少なくとも1種のホール輸送性発光材料の濃度が、陽極側から陰極側に向かって階段状に減少しており、
    前記発光層全域中の陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度の、前記発光層全域中の陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度に対する比率(前記陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度/前記陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度)が0質量%以上(1/19)×100質量%以下であることを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で7質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記ホール輸送性発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記ホール輸送性発光材料がIr錯体であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  7. 前記ホール輸送性発光材料が5.1ev以上6.4eV以下のイオン化ポテンシャルIpを有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の有機電界発光素
    子。
  8. 前記電子輸送性ホスト材料がBe錯体、Al錯体、Ga錯体、Zn錯体、Pt錯体、Pd錯体、又は含窒素芳香族ヘテロ環化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項7の
    いずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  9. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層全域中の前記陽極側界面付近の領域で20質量%以上100質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  10. 一対の電極間に発光層を含む有機層を挟持した有機電界発光素子において、前記発光層が少なくとも1種のホール輸送性発光材料と少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料を含有し、前記ホール輸送性発光材料の前記発光層における濃度が陽極側から陰極側に向かって波状に減少している有機電界発光素子であって、
    前記ホール輸送性発光材料の少なくとも1種と、前記電子輸送性ホスト材料の少なくとも1種は、前記発光層全域に亘って同時に存在し、前記少なくとも1種のホール輸送性発光材料と前記少なくとも1種の電子輸送性ホスト材料が同時に存在する前記発光層全域において、前記少なくとも1種のホール輸送性発光材料の濃度が、陽極側から陰極側に向かって波状に減少しており、
    前記発光層全域中の陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度の、前記発光層全域中の陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度に対する比(前記陰極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度/前記陽極側界面付近の領域における前記ホール輸送性発光材料の濃度)が0質量%以上(1/19)×100質量%以下であることを特徴とする有機電界発光素子。
  11. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で10質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子。
  12. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で7質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子。
  13. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域で5質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子。
  14. 前記ホール輸送性発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  15. 前記ホール輸送性発光材料がIr錯体であることを特徴とする請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  16. 前記ホール輸送性発光材料が5.1ev以上6.4eV以下のイオン化ポテンシャルIpを有することを特徴とする請求項10〜請求項15のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  17. 前記電子輸送性ホスト材料がBe錯体、Al錯体、Ga錯体、Zn錯体、Pt錯体、Pd錯体、又は含窒素芳香族ヘテロ環化合物であることを特徴とする請求項10〜請求項16のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  18. 前記発光層中における前記ホール輸送性発光材料の濃度が、前記発光層全域中の前記陽極側界面付近の領域で20質量%以上100質量%以下であることを特徴とする請求項10〜請求項17のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
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