JP4855286B2 - 有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はフルカラ−ディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源やプリンタ−等の光源アレイ等に有効に利用できる有機電界発光素子(以下、有機EL素子と呼ぶ場合がある。)およびその製造方法に関する。
有機EL素子は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機層と、有機層を挟んだ対向電極とから構成されている。有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子からの発光、及び前記励起子からエネルギー移動して生成した他の分子の励起子からの発光の少なくとも一方を利用した、発光を得るための素子である。
これまで有機EL素子は、機能を分離した積層構造を用いることにより、輝度及び素子効率が大きく改善され発展してきた。例えば、正孔輸送層と発光兼電子輸送層を積層した二層積層型素子や正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを積層した三層積層型素子や、正孔輸送層と発光層と正孔阻止層と電子輸送層とを積層した四層積層型素子がよく用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、有機EL素子の実用化には未だ多くの課題が残されている。課題の1つとして、異物による電流リークによって発光品質が低下する現象がある。
このような現象に対して、例えば、素子を作製後に素子全体を加熱して素子表面あるいは内部にゴミなどの異物があった場合に有機材料が溶融あるいは軟化してそれらを包み込み素子リークを防止する試みが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、有機ELをモノカラーおよびマルチカラーのエリアカラーパネルに応用する試みが為されている。マルチカラー方式として、3色独立画素方式、カラーフィルター方式、および色変換方式などの方式が知られている。3色独立画素方式は3色の各色に対応した発色を示す素子を画素として用いるものであり、3色の画素を数100μm程度微細なピッチで基板上に配置しなければならないが、発光した光をそのまま利用するため利用効率が高く高輝度の鮮明な画像を得ることが可能である。しかしながら高精度で微細は3色の画素を基板上に配置することは極めて難しく、特に大画面になると益々難しい。カラーフィルタ方式は、白色発光した光を3色のカラーフィルターを通して3色に色を分離する。
従って、発光した光の約1/3しか利用されないので利用効率が低く、輝度が低下する。
色変換方式は、主発光層で全面に青色発光させた後に積層された副発光層に3色に色変換する方式であって、この場合も利用効率が低下すること、および多層の複雑な積層構造体を作製する製造上の困難性があった。
サイエンス(Science),267巻,3号,1995年,1332頁 特開2005−5149号公報
本発明は、マルチカラー有機電界発光素子および製造適性に優れた有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決する事を見出された。
<1> 発光平面内に少なくとも2つの異なる発光色の発光領域を有する有機電界発光素子の製造方法であって、基板上に第1の電極、少なくとも、ホスト材料A及びドーパントAを含む発光層Aと前記ホスト材料Aよりもガラス転移温度が高いホスト材料B及びドーパントBを含む発光層Bとを積層した構造を含む有機層、および第2の電極を積層した積層体を形成後、前記ホスト材料Aのガラス転移温度より高く、前記ホスト材料Bのガラス転移温度より低い温度で部分的に前記発光層Aを加熱変性することにより前記加熱した部分では前記発光層Bの発光領域を形成し、前記加熱しなかった部分では前記発光層Aの発光領域を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
<2> 前記発光層Aおよび前記発光層Bとの間にドーパントを実質的に含有しない有機層を形成することを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子の製造方法。
<3> サーマルヘッドにより加熱することを特徴とする<1>または<2>に記載の有機電界発光素子の製造方法。
<4> レーザー照射により加熱することを特徴とする<1>または<2>に記載の有機電界発光素子の製造方法。
本発明により、マルチカラー有機電界発光素子および製造適性に優れた有機電界発光素子の製造方法が提供される。
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に、少なくとも発光層を含む有機層を挟持してなる有機電界発光素子であって、該有機電界発光素子の発光平面内に少なくとも2つの異なる発光色の発光領域を有し、その一つが第1の発光色で発光する第1の発光領域であり、もう一つが第2の発光色で発光する第2の発光領域であって、該第2の発光領域が前記第1の発光領域と同一の組成を有し、加熱によって該第2の発光領域に変性されてなる有機電界発光素子である。
好ましくは、前記発光層が少なくとも2つの積層を有し、第1の発光層が前記加熱により変性される発光層であり、第2の発光層が前記加熱により変性されない発光層である。
好ましくは、前記第1の発光層のホスト材料のガラス転移温度が前記加熱温度より低く、前記第2の発光層のホスト材料のガラス転移温度が前記加熱温度より高い。
本発明によれば、平面上に複数の異なるカラーの画素を加熱によって形成することが出来る。従来の微細パターンを蒸着によって作製したり、塗布方式によって塗り分ける方式に比べて極めて容易にマルチカラー有機EL素子を作製することが出来る。
好ましくは、前記第1の発光層および前記第2の発光層がドーパントを含有し、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間にドーパントを実質的に含有しない有機層を有する。これによって、第1の発光層と第2の発光層の発光は混色することなく分離して発光することが出来る。
本発明においては同様に第3の発光層を設けることも可能である。
好ましくは、一方の電極側に少なくとも1つの光反射面を有し、前記第1の発光層と前記第2の発光層が互いに異なる波長の発光波長を有し、該短波の発光層が該長波の発光層と該光反射面との間に配される。
本発明の有機EL素子は、基板上に第1の電極、少なくとも発光層を含む有機層、および第2の電極を積層した積層体を形成後、前記発光層のホスト材料のガラス転移温度より高い温度で部分的に加熱変性することにより該発光領域の一方を形成する製造方法によって製造される。
好ましくは、第1発光層を前記変性温度より低いガラス転移温度のホスト材料を含有する層とし、第2発光層を前記変性温度より高いガラス転移温度のホスト材料を含有する層とし、前記第1発光層のみを加熱変性する製造方法を用いることが出来る。
好ましくは、加熱方式としてサーマルヘッド、またはレーザー照射を用いることが出来る。
本発明の製造方法によれば、例えばサーマルヘッドのサイズを微少にし、あるいはレーザーを絞ることによって高精細のパターンを容易に製造することが可能である。
次に、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
(構成)
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に少なくとも1層の発光層を有する。
発光素子の性質上、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
本発明における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間に正孔輸送性中間層、及び発光層と電子輸送層の少なくとも一方との間に、電子輸送性中間層を有する。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な態様は、陽極側から順に、少なくとも、(1)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様、(2)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様、(3)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様である。
上記正孔輸送性中間層は、発光層への正孔注入を促進する機能、及び電子をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
また、上記電子輸送性中間層は、発光層への電子注入を促進する機能、及び正孔をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
更に、上記正孔輸送性中間層、及び上記電子輸送性中間層の少なくとも一方は、発光層で生成する励起子をブロックする機能を有することが好ましい。
上記の正孔注入促進、電子注入促進、正孔ブロック、電子ブロック、励起子ブロックといった機能を有効に発現させるためには、該正孔輸送性中間層および該電子輸送性中間層は、発光層に隣接していることが好ましい。
尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
次に、本発明の発光素子を構成する要素について、詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも一層の発光層を含む有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔注入層、正孔輸送層、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、および電子注入層等の各層が挙げられる。
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入され得た正孔を障壁する機能のいずれかを有している層である。
本発明の有機EL素子の電子注入層および/または電子輸送層は、低電圧化、駆動耐久性向上の観点から電子供与性ドーパントを含有することが好ましい。
電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。
金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、同2003−68468、同2003−229278、同2004−342614号公報等に記載の材料を用いることができる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。該使用量が、電子輸送層材料に対して0.1質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、99質量%を超えると電子輸送能力が損なわれるため好ましくない。
電子注入層、電子輸送層の材料としては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記発光層に隣接したキャリア輸送層が電子輸送層であるとき、該電子輸送層のEa(ETL)は前記発光層中に含有されるドーパントのEa(D)より大きいことが駆動耐久性の点で好ましい。
該Ea(ETL)は、後述するEaの測定方法と同様の方法により測定した値を用いる。
また、電子輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から10-5cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が好ましく、10-4cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-3cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が特に好ましい。
また、該電子輸送層のキャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性の観点から好ましい。該キャリア移動度は、前記正孔輸送層の測定方法と同様に行った。
本発明における発光素子のキャリア移動度において、正孔輸送層、電子輸送層、及び発光層におけるキャリア移動度としては、(電子輸送層≧正孔輸送層)>発光層であることが、駆動耐久性の点で好ましい。
バッファー層に含有されるホスト材料としては、後述する正孔輸送性ホストまたは電子輸送性ホストを好適に用いることができる。
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層または正孔輸送性バッファー層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、電子輸送層または電子輸送性バッファー層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における少なくとも1層の発光層は加熱により変性され、異なる発光を示すことを特徴とする。好ましくは該発光層のホスト材料のガラス転移温度が変性のための加熱温度よりも低い温度領域にある。加熱変性によって該発光層の平面内に加熱されなかった第1の発光色の画素領域と加熱された第1の発光色とは異なる発光色の第2の発光色の画素領域が形成される。即ち、同一の発光層であって、平面内に加熱パターンによって少なくとも2色のカラー画素が形成される。本発明における発光層の発光材料は、ホスト材料とドーパントを有し、変性されるのがそのいずれでも良いが、好ましくはホスト材料である。
本発明における発光層は、さらに、第2の発光層を有しても良い。第2の発光層は、好ましくは含有されるホスト材料のガラス転移点が変性のために加熱温度より高い温度領域にあり、加熱工程を経ても発光特性が変化を受けない層であることが好ましい。
本発明における発光層に含有する発光性ドーパントとホスト材料としては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光性ドーパントとホスト材料との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光性ドーパントとホスト材料との組み合せでもよいが、中でも、発光効率の観点から、燐光発光性ドーパントとホスト材料との組み合せであることが好ましい。
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することができる。
<発光性ドーパント>
本発明における発光性ドーパントとしては、燐光性発光材料、蛍光性発光材料等いずれもドーパントとして用いることができる。
本発明における発光性ドーパントは、更に前記ホスト材料との間で、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが駆動耐久性の観点で好ましい。
<燐光発光性ドーパント>
前記燐光性の発光性ドーパントとしては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特願2001−248165、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特願2005−75340、特願2005−75341等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい(2)の関係を満たす発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が好ましい。
《蛍光発光性ドーパント》
前記蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0004855286
Figure 0004855286
Figure 0004855286
上記の中でも、本発明で用いる発光性ドーパントとしては、発光効率、耐久性の観点からD−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−9、D−10、D−11、D−12、D−13、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、またはD−24が好ましく、D−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−12、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、またはD−24がより好ましく、D−21、D−22、D−23、またはD−24が更に好ましい。
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜30質量%含有されるが、耐久性、発光効率の観点から1質量%〜15質量%含有されることが好ましく、2質量%〜12質量%含有されることがより好ましい。
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、発光効率の観点で、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
(ホスト材料)
本発明に用いられるホスト材料としては、従来知られているホスト材料を用いることができる。本発明における第1の発光層のホスト材料は、好ましくは変性のために加熱温度より低い温度領域にガラス転移温度を有する。本発明における第2の発光層のホスト材料は、好ましくは変性のために加熱温度より高い温度領域にガラス転移温度を有する。
本発明において各発光層用いられるホスト材料は、複数の異なる材料を混合して用いても良い。好ましくは、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト材料(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
<正孔輸送性ホスト>
本発明の有機層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.3eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.1eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上5.8eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマチオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
中でも、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、またはチオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にカルバゾール骨格、及び芳香族第三級アミン骨格の少なくとも一方を複数個有するものが好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0004855286
Figure 0004855286
Figure 0004855286
<電子輸送性ホスト>
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.2eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.1eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物(A)は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、またはパラジウムイオンである。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、及びターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、及び2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、及び4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0004855286
Figure 0004855286
Figure 0004855286
電子輸送層ホストとしては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22がより好ましく、E−3、E−4、E−21、またはE−22が更に好ましい。
本発明の第1発光層のホスト材料と第2発光層のホスト材料に好ましく用いられる化合物とそのガラス転移温度を下記に挙げる。
本発明におけるガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量分析)法による測定温度である。
・ガラス転移温度の低いホスト材料
Figure 0004855286
・ガラス転移温度の高いホスト材料
Figure 0004855286
上記のホスト材料の中から、発光色、加熱処理温度に合わせて第1発光層のホスト材料と第2発光層のホスト材料を組み合わせることが出来る。
本発明における発光層において、発光性ドーパントとして燐光発光性ドーパントを用いたとき、該燐光発光性ドーパントの最低三重項励起エネルギーT1(D)と前記複数のホスト材料の最低励起三重項エネルギーのうち最小のもの前記T1(H)minとが、T1(H)min>T1(D)の関係を満たすことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
また、本発明の複数のホスト材料の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して、それぞれ15質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
また、発光層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から10-6cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が好ましく、10-5cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-4cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が特に好ましい。
該発光層のキャリア移動度は、後述の前記キャリア輸送層のキャリア移動度より小さいことが発光効率、駆動耐久性の観点から好ましい。
該キャリア移動度は、Time of Flight法により測定し、得られた値をキャリア移動度とした。
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極と発光層との間に配され、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明の有機EL素子の正孔注入層および/または正孔輸送層は低電圧化、駆動耐久性の観点から、電子受容性ドーパントを好ましく含有することができる。
正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用でき、具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化物、五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物を好適に用いることができる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
具体的にはヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、フラーレンC60、およびフラーレンC70などが挙げられる。この他にも、特開平6−212153、同11−111463、同11−251067、特開2000−196140、同2000−286054、同2000−315580、2001−102175、同2001−160493、同2002−252085、同2002−56985、同2003−157981、同2003−217862、同2003−229278、同2004−342614、同2005−72012、同2005−166637、同2005−209643号公報等に記載の化合物を好適に用いることができる。
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。該使用量が、正孔輸送材料に対して0.01質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、50質量%を超えると正孔輸送能力が損なわれるため好ましくない。
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、またはカーボン等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記発光層に隣接したキャリア輸送層が正孔輸送層であるとき、該正孔輸送層のIp(HTL)は前記発光層中に含有されるドーパントのIp(D)より小さいことが駆動耐久性の点で好ましい。
正孔輸送層におけるIp(HTL)は、後述するIpの測定方法により測定することができる。
また、正孔輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から10-5cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が好ましく、10-4cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-3cm・V-1・s-1以上10-1cm・V-1・s-1以下が特に好ましい。
該キャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度の測定方法と同様の方法により測定した値を採用する。
また、該正孔輸送層のキャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性、発光効率の観点から好ましい。
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明においては、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層は、特に限定されるものではないが、具体的には、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、ピラザボール誘導体等を含有することができる。
また、正孔ブロック層の厚さは、駆動電圧を下げるため、一般的に50nm以下であることが好ましく、1nm〜50nmであることが好ましく、5nm〜40nmであることが更に好ましい。
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
(基板)
本発明においては基板を用いることができる。用いられる基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、またはNi等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、またはTiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、またはCaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、または転写法を適用できる。
(有機電界発光素子の製造方法)
本発明の有機電界発光素子を構成する種々の有機化合物層は、公知の蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、スプレー法等いずれによっても形成することができる。
本発明の有機電界発光素子は、これらの有機化合物層を形成した後に、加熱手段により制御されたパターンで部分的に加熱され、素子平面内に加熱された部分と加熱されない部分がパターン化される。
<パターン>
本発明の製造方法により形成されるパターンは好ましくはマルチカラーデイスプレーを形成する画素の集合体であって、一つの画素は好ましくは30μm〜500μm程度の円相当直径を有する。従って、30μm〜500μm程度のピッチで加熱部分と非加熱部分が並列した2次元配列を構成するように加熱される。
高精細の画素を形成するためには、30μm〜100μm程度のピッチで加熱し、より好ましくは30μm〜50μm程度のピッチで加熱される。
<加熱温度>
本発明の製造方法における加熱温度は、少なくとも1層の発光層のホスト材料のガラス転移温度より高い温度であって、該ホスト材料を軟化もしくは溶融状態にして、変性し得る温度である。発光層が複数より構成され、各発光層が異なる発光波長を有しているマルチカラー素子を製造する場合、加熱温度はある発光層のホスト材料のガラス転移温度より高く、他の発光層のホスト材料のガラス転移温度より低い温度を選択するのが好ましい。
発光層のホスト材料のガラス転移温度が低いほどより低い温度で変性可能であるが、非加熱部分も自然保存中に徐々に変性が進行する恐れがある。またホスト材料のガラス転移温度が高すぎると変性のために高温にする必要があり、他の有機層の機能に悪影響を及ぼすので好ましくない。従って、ホスト材料のガラス転移温度の選択および加熱温度の選択は重要である。
本発明においては変性されるホスト材料のガラス転移温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、本発明の製造方法における加熱温度は、この範囲内の温度が選択される。より好ましくは、変性されるホスト材料のガラス転移温度は、60℃以上90℃以下である。
本発明においては変性されない発光材料のガラス転移温度は、上記上限温度より高く、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上高いことが望ましい。
<加熱手段>
本発明における加熱手段として、種々の手段を用いることが出来る。
例えば、サーマルヘッド法、レーザー加熱法、高周波加熱法等の手段を好ましく用いることが出来る。より好ましくはサーマルヘッド法およびレーザー加熱法である。
・サーマルヘッドによる加熱
サーマルヘッドは、プリンタ用途等に使用される公知のものを用いることが出来る。有機EL素子の構成が<基板/陽極/有機層/陰極>の場合、サーマルヘッドによる加熱は基板側から行っても良いし、陰極側から行っても良い。通常のサーマルヘッドプリンタと同様にサーマルヘッドを走査することによって任意のパターンニングができる。ただし、パターンのピッチが高精細な場合は、熱の拡散を考慮して陰極側から加熱することが望ましい。
・レーザー光照射による加熱
レーザー光は任意の波長のものが使用できるが、有機EL素子側でレーザー光のエネルギーを熱に変換する必要がある。近赤外の半導体レーザー(波長780nm〜830nm)を用いる場合、光熱変換層として近赤外光吸収層を陰極上に付設する。この層に用いる近赤外吸収材としては、任意のものが使用可能であるが、顔料としてはカーボンブラックやフタロシアニン系(例えば、チタニルフタロシアニン<TiOPc>が近赤外域に吸収があり好適)、染料としてもフタロシアニン系やナフタロシアニン系などが使える。フタロシアニン系顔料は真空蒸着が可能であり、有機EL素子を成膜した上に続けて形成でき、製造の簡便性で有利である。
(封止)
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
(本発明の有機電界発光素子の用途)
本発明の有機電界発光素子は、マルチカラー表示素子、マルチカラーディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、または光通信等に好適に利用できる。
以下に、本発明の有機電界発光素子およびその製造方法の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
1.有機EL素子の作製
<本発明の有機EL素子1の作製>
0.5mm厚み、2.5cm角のITOガラス基板(ジオマテック(株)製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極上に真空蒸着法にて以下の層を蒸着した。本発明の実施例における蒸着速度は特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
(正孔注入層)
2−TNATAを100nmの厚みに蒸着した。
(第1の発光層)
NPD(ガラス転移点:96℃)とルブレンをルブレンがNPDに対して1.0質量%となるように共蒸着を行った。第1の発光層の膜厚は20nmとした。
(第2の発光層)
MCP(ガラス転移点:62℃)と青色発光材料を青色発光材料がMCPに対して
10質量%となるように共蒸着を行った。第2の発光層の膜厚は40nmとした。
(電子輸送層)
BAlqを10nm蒸着した。
(電子注入層)
Alqを20nm蒸着した。
この上にパタ−ニングしたマスク(発光領域が10mm×10mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを0.1nm/秒の蒸着速度にて1nm蒸着しした。更に金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
(加熱)
サーマルヘッドにより発光領域の片側半分の領域(5mm×10mm)を80℃の温度で加熱し、第2の発光層を変性させた。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止し、有機EL素子1を作製した。
前記の発光素子に用いられる化合物の構造を下記に示す。
Figure 0004855286
<発光テスト>
マルチカラー発光性のテストは、ITO(陽極)とアルミニウム(陰極)間に10Vの直流電圧を印加して行った。
その結果、加熱しなかった部分が青色に発光し、加熱部分が黄色に発光した。
実施例2
1.本発明の有機EL素子2の作製
有機EL素子1において、電子輸送層を除き、正孔注入層と第1の発光層との間に下記の正孔輸送層を配し、発光層を下記に変更した。それ以外は実施例1の有機EL素子1と同様に行った。
正孔輸送層:NPDを10nmの厚みに蒸着した。
第1の発光層:MCP(ガラス転移点:62℃)と青色発光材料を青色発光材料がMCPに対して10質量%となるように共蒸着を行った。第1の発光層の膜厚は40nmとした。
第2の発光層:BAlq(ガラス転移点:94℃)とルブレンをルブレンがBAlqに対して1.0質量%となるように共蒸着を行った。第2の発光層の膜厚は20nmとした。
2.マルチカラー発光テスト
実施例1と同様にテストした結果、加熱しなかった部分が青色、加熱部分が黄色に発光した。
実施例3
1.本発明の有機EL素子3の作製
有機EL素子1において、第1の発光層と第2の発光層との間に下記の混色防止層と配した。それ以外は実施例1の有機EL素子1と同様に行った。
混色防止層:NPD(ガラス転移点:96℃)を10nmとなるように蒸着した。
2.マルチカラー発光テスト
実施例1と同様にテストした結果、加熱しなかった部分が青色、加熱部分が黄色に発光した。実施例1に比べてより鮮やかな発光色を示した。
実施例4
1.本発明の有機EL素子3の作製
有機EL素子2において、第1の発光層と第2の発光層との間に下記の混色防止層と配した。それ以外は実施例2の有機EL素子2と同様に行った。
混色防止層:BAlq(ガラス転移点:94℃)を10nmとなるように蒸着した。
2.マルチカラー発光テスト
実施例2と同様にテストした結果、加熱しなかった部分が青色、加熱部分が黄色に発光した。実施例2に比べてより鮮やかな発光色を示した。

Claims (4)

  1. 発光平面内に少なくとも2つの異なる発光色の発光領域を有する有機電界発光素子の製造方法であって、基板上に第1の電極、少なくとも、ホスト材料A及びドーパントAを含む発光層Aと前記ホスト材料Aよりもガラス転移温度が高いホスト材料B及びドーパントBを含む発光層Bとを積層した構造を含む有機層、および第2の電極を積層した積層体を形成後、前記ホスト材料Aのガラス転移温度より高く、前記ホスト材料Bのガラス転移温度より低い温度で部分的に前記発光層Aを加熱変性することにより前記加熱した部分では前記発光層Bの発光領域を形成し、前記加熱しなかった部分では前記発光層Aの発光領域を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
  2. 前記発光層Aおよび前記発光層Bとの間にドーパントを実質的に含有しない有機層を形成することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  3. サーマルヘッドにより加熱することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  4. レーザー照射により加熱することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子の製造方法。
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