JP5211282B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は有機電界発光素子に関する。特に、発光効率が高く耐久性に優れた有機電界発光素子に関する。
有機電界発光素子(以後、有機EL素子と略記する。)は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機機能層と、これらの層を挟んだ対向電極とから構成されている。有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層において再結合し、生成した励起子からの発光及び前記励起子の少なくとも一方からエネルギー移動して生成した他の分子の励起子からの発光を利用した、発光を得るための素子である。
これまで有機EL素子は、機能を分離した積層構造を用いることにより、輝度及び素子効率が大きく改善され発展してきた。例えば、正孔輸送層と発光兼電子輸送層を積層した二層積層型素子や正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを積層した三層積層型素子や、正孔輸送層と発光層と正孔阻止層と電子輸送層とを積層した四層積層型素子がよく用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、有機EL素子の実用化には未だ多くの課題が残されている。第1に高い発光効率を達成すること、第2に高い駆動耐久性を達成することである。特に、連続駆動時の品質低下は最大の課題である。
例えば、発光層と正孔輸送層との間に0.1nm〜5nmの界面層をバリア層として設け、正孔の移動を遅くすることによって正孔と電子の移動バランスを調整して外部量子効率を高める試みが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この手段では、キャリア総体の移動は低下するので輝度が低下し、駆動電圧が増加し、また、キャリアの素子内滞留時間が長くなるために駆動耐久性が低下する問題が懸念される。
また、マルチフォトンと呼ばれる発光層と機能層を含む一つの発光ユニットを多層に積層した構成が知られている。例えば、複数の有機電界発光素子(以後、有機EL素子とも記述する。)の発光ユニットを絶縁層で隔離し、各発光ユニットにそれぞれ対向する電極を配した構成が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この構成では、発光ユニット間の絶縁層および電極が発光の取り出しを妨げるため、実質的に各発光ユニットから発光が十分に利用することができない。また、各発光ユニットが本来抱えている外部量子効率の低さを改良する手段にはならない。無機発光素子(以後、無機EL素子とも記述する。)において、同様に発光ユニットを積層し、各発光ユニットを絶縁層で隔離した構成も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この構成においても、発光ユニットが単に複数積層されているだけであって、各発光ユニットが本来抱えている外部量子効率の低さを改良する手段にはならない。
また、電子輸送材料としてシロール化合物やシラン化合物が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。特許文献4にはこれらの有機化合物を電子輸送層に含有することが開示されている。特許文献5にはこれらの有機化合物を発光層もしくは電子輸送層に含有することが開示されている。これらのシロール化合物やシラン化合物は電子輸送性に優れ、駆動電圧を低下させ発光効率を向上させる効果を有するが、一方で、Ip(イオン化ポテンシャル)が高く、正孔をブロックするため陽極側界面に正孔がたまりしやすいこと、また正孔に対する耐性が弱いことなどから発光層から電子輸送層に漏れ出してくる正孔によって劣化されやすく、駆動耐久性が劣る問題があった。
また、有機EL素子を積層構造とした場合、各層間の障壁のためにキャリア注入性が低下し、駆動電圧の上昇かつ耐久性の低下の問題があった。このような各層間の障壁を低減する手段として各層が含有する正孔注入材料、電子注入材料、あるいは正孔輸送材料、電子輸送材料の各層における濃度に傾斜を設けることが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。この構成においては、発光層における発光材料はバイポーラー性混合層から形成される発光層内の限定された領域に配置されている。この構成においても発光材料の配置された限定された領域のみで発光する。
また、発光層内における発光材料および電荷輸送材料の濃度を共に陽極側で低く、陰極側で高くし、陰極側の領域に集中して発光を起こさせることが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。この手段はポリマー分散型発光素子に特有の課題に有効であるが、発光領域が陰極側の一部の領域のみであって、発光層全体が有効に発光に利用されず、総括的な発光効率の向上とは言えない。
高い外部量子効率と高い駆動耐久性とを両立させることは、実用的に有用な有機EL素子を設計する上で極めて重要な課題であり、常に改良を求められている課題であった。
サイエンス(Science),267巻,3号,1995年,1332頁 特開2003−123984号公報 特開平6−310275号公報 特開平8−162273号公報 特開2006−32638号公報 特開2006−140219号公報 特開2002−313583号公報 特開2001−189193号公報
本発明は、発光効率が高く耐久性に優れた有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決する事を見出された。
<1> 一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層と陰極の間に下記一般式(A)で表される有機化合物を含有する層を有し、前記一般式(A)で表される有機化合物を含有する層が前記発光層に接し、かつ前記発光層が少なくとも一種の電子輸送材料と、少なくとも一種の正孔輸送材料とを含有し、前記電子輸送材料と前記正孔輸送材料の少なくとも一方が発光材料であって、前記発光層において前記正孔輸送材料の濃度が、前記陽極から前記陰極に向かって減少していることを特徴とする有機電界発光素子:
(一般式(A)中、R31〜R36は、水素原子又は置換基を表す。)。
<2> 前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記正孔輸送材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における正孔輸送材料の濃度に対して0%以上50%以下であることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 記一般式(A)で表される有機化合物が下記一般式(B)で表される有機化合物であることを特徴とする<1>または2>に記載の有機電界発光素子:
(一般式(B)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)。
> 前記一般式(B)で表される有機化合物が下記一般式(C)で表される有機化合物であることを特徴とする<>に記載の有機電界発光素子:
(一般式(C)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
> 前記正孔輸送材料が正孔輸送性発光材料であることを特徴とする<1>〜<>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
>前記正孔輸送材料が正孔輸送性ホスト材料であることを特徴とする<1>〜<>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
> 前記電子輸送材料が電子輸送性発光材料であることを特徴とする<1>〜<>及び<>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
>前記電子輸送材料が電子輸送性ホスト材料であることを特徴とする<1>〜<>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
> 前記発光材料が3座以上の配位子を有する金属錯体であることを特徴とする<>〜<8>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
10> 前記発光材料が下記一般式(I)で表される発光材料であることを特徴とする<>に記載の有機電界発光素子:
(一般式(I)中、M11は金属イオンを表し、L11〜L15はそれぞれM11に配位する配位子を表す。L11とL14との間に原子群がさらに存在して環状配位子を形成してもよい。L15はL11及びL14の両方と結合して環状配位子を形成してもよい。Y11、Y12、Y13はそれぞれ連結基、単結合、または二重結合を表す。また、Y11、Y12、又はY13が連結基である場合、L11とY12、Y12とL12、L12とY11、Y11とL13、L13とY13、Y13とL14の間の結合は、それぞれ独立に、単結合又は二重結合を表す。n11は0〜4を表す。M11とL11〜L15との結合は、それぞれ配位結合、イオン結合、共有結合のいずれでもよい。)。
11> 前記3座以上の配位子を有する金属錯体が白金錯体であることを特徴とする<>または<10>に記載の有機電界発光素子。
本発明により、発光効率が高く耐久性に優れた有機EL素子が提供される。
特に、燐光発光材料を用いて高い発光効率で優れた駆動耐久性を有する有機EL素子が提供される。
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層と陰極との間に、後述の一般式(A)で表される有機化合物を含有する層を有し、前記一般式(A)で表される有機化合物を含有する層が前記発光層に接し、前記発光層が少なくとも一種の電子輸送材料と少なくとも一種の正孔輸送材料を含有し、前記電子輸送材料と前記正孔輸送材料の少なくとも一方が発光材料であり、前記発光層における前記正孔輸送材料の濃度が陽極側から前記陰極側に向かって減少していることを特徴とする。本発明においては、「陽極側から前記陰極側に向かって濃度が減少している」ことが意味するところは、総体的に、陽極側から陰極側に向かって減少していることが本発明の主旨であって、連続的に変化しても、階段状に変化しても良い。あるいは、一部で増加または減少している領域があっても総体的に減少していれば本願の意図する範囲内である。本願においては、連続的に濃度が変化するパターンが好ましい。
好ましくは、前記発光層における発光層が含有する前記正孔輸送材料の濃度が陽極側から前記陰極側に向かって漸減し、前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記正孔輸送材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における前記正孔輸送材料の濃度に対して0%以上50%以下である。より好ましくは0%以上25%以下である。
なお、本願明細書において、「発光層の陰極側界面付近の領域」とは、発光層の陰極側界面から発光層全体の厚みの10%の厚みの領域を指すものと定義され、「発光層の陽極側界面付近の領域」とは、発光層の陽極側界面から発光層全体の厚みの10%の厚みの領域を指すものと定義される。また、その領域における濃度とは、その領域における平均濃度を指すものとして定義される。さらに、「発光層の陰極側(陽極側)界面付近の領域」における各材料の濃度は、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)、エッチングX線光電子分光分析(XPS/ESCA)などの方法によって測定することができる。
記一般式(A)で表される有機化合物を含有する層が前記発光層に接している。
好ましくは、前記発光層が燐光発光材料を含有する。
本発明における発光層は、上記のように発光層内における正孔輸送性材料の濃度が傾斜していて、陽極側より陰極側に向かって漸減する構成を有する。本発明における前記一般式(A)で表される有機化合物含有層は発光層の陰極側に隣接して配されている。前記一般式(A)で表される有機化合物含有層と近接する、前記発光層の陰極側界面付近の領域は正孔輸送性材料濃度が最も低い領域である。本発明に於ける傾斜構造を有する発光層においては、電子および正孔の発光層内における移動バランスが好ましく調整され、発光層全域に渉って電子および正孔効率が再結合できるため、発光効率が向上し駆動電圧が低下する。さらに、陽極より注入された正孔が発光層内で効率よく再結合するので、正孔が発光層から陰極側に漏れ出すことがなくなる。従って前記一般式(A)で表される有機化合物を含有する層に対する正孔による劣化がなくなり、駆動電圧の低下、駆動耐久性の向上、発光効率の向上のすべてにおいて飛躍的に向上することができる。
1.有機EL素子構造
本発明の有機EL素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
本発明における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層、および電子輸送層と陰極との間に電子注入層を有しても良い。
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な態様は、陽極側から順に、少なくとも、(1)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、一般式(A)で表される有機化合物含有層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(2)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、一般式(A)で表される有機化合物含有層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様である。
また、上記正孔輸送性中間層は、発光層への正孔注入を促進する機能及び電子をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、およびスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
次に、本発明の有機EL素子を構成する要素について詳細に説明する。
2.発光層
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層または正孔輸送性中間層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、電子輸送層または電子輸送性中間層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明に於ける発光層は、少なくとも一種の電子輸送材料と少なくとも一種の正孔輸送材料とを含み、前記電子輸送材料と前記正孔輸送材料の少なくとも一方が発光材料であり、前記発光層における前記正孔輸送材料の濃度が陽極側から前記陰極側に向かって濃度が減少していることを特徴とする。
電子輸送材料としては電子輸送性発光材料もしくは電子輸送性ホスト材料が用いられる。正孔輸送材料としては正孔輸送性発光材料もしくは正孔輸送性ホスト材料が用いられる。
発光層の陽極側界面付近の領域のおける前記正孔輸送材料の濃度は、前発光層組成の10質量%以上100質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上100質量%以下で、特に好ましくは30質量%以上100質量%以下である。
発光層の陰極側界面付近の領域における前記正孔輸送材料の濃度は、前発光層組成の0質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは0質量%以上25質量%以下である。
前記正孔輸送材料の濃度が前記陰極側界面付近の領域における発光層組成の濃度の50質量%を超えると前記発光層から前記陰極側へ抜け出る正孔量が多くなり、発光効率、耐久性が低下する点で好ましくない。また、前記正孔輸送材料の濃度が前記陽極側界面付近の領域における発光層組成の濃度の10質量%を下回ると前記発光層へ注入される正孔量が減り、発光効率が低下する点で好ましくない。
(電子輸送性発光材料)
本発明に係る発光層中の発光材料は、電子輸送性であれば、蛍光発光材料でも、燐光発光材料であっても良い。
(a)燐光発光材料
燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
遷移金属原子としては、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
これらの中でも、発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特開2002−225352、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特願2005−75341等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。
(b)蛍光発光材料
蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
また、電子輸送性の発光材料は、好ましくは、その電子親和力(Ea)が2.5eV以上3.5eV以下であり、イオン化ポテンシャル(Ip)が5.7eV以上7.0eV以下の電子輸送性の発光材料である。
具体的には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテシウム錯体が挙げられ、より好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、又は白金錯体であり、最も好ましくは白金錯体である。
白金錯体を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されものではない。
本発明に用いられる電子輸送性燐光発光材料として特に好ましくは、3座以上の配位子を有する金属錯体である。
(多座金属錯体)
本発明における3座以上の配位子を有する金属錯体について説明する。
1)金属イオン
該金属錯体において金属イオンに配位する原子は特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、炭素原子、硫黄原子又はリン原子が好ましく、酸素原子、窒素原子又は炭素原子がより好ましく、窒素原子又は炭素原子が更に好ましい。
金属錯体中の金属イオンは、特に限定されないが、発光効率向上、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、遷移金属イオン、希土類金属イオンであることが好ましく、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、オスミウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、銅イオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、鉛イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または希土類金属イオン(例えば、ユーロピウムイオン、カドリニウムイオン、またはテルビウムイオンなど)が挙げられ、好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、パラジウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、ユーロピウムイオン、カドリニウムイオン、またはテルビウムイオンであり、より好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ユーロピウムイオン、カドリニウムイオン、またはテルビウムイオンであり、さらに好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、パラジウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、またはガリウムイオンであり、最も好ましくは白金イオンである。
2)配位数
本発明における3座以上の配位子を有する金属錯体としては、発光効率向上、耐久性向上の観点から、3座以上6座以下の配位子を有する金属錯体が好ましく、イリジウムイオンに代表される6配位型錯体を形成しやすい金属イオンの場合には、3座、4座、または6座の配位子を有する金属錯体がより更好ましく、白金イオンに代表される4配位型錯体を形成しやすい金属イオンの場合には、3座または4座の配位子を有する金属錯体がより好ましく、4座の配位子を有する金属錯体が更に好ましい。
3)配位子
本発明における金属錯体の配位子は発光効率向上、耐久性向上の観点から、鎖状、又は、環状であることが好ましく、中心金属(例えば、後述する一般式(I)で表される化合物の場合であればM11を表す。)に窒素で配位する含窒素へテロ環(例えば、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、またはトリアゾール環など)を少なくとも一つ有することが好ましい。該含窒素ヘテロ環としては、含窒素6員ヘテロ環、含窒素5員ヘテロ環であることがより好ましい。これらのヘテロ環は他の環と縮合環を形成してもよい。
金属錯体の配位子が鎖状であるとは、金属錯体の配位子が環状構造をとらないことを意味する(例えば、ターピリジル配位子など。)。また、金属錯体の配位子が環状であるとは、金属錯体中の複数の配位子が互いに結合して、閉じた構造形成することを意味する(例えば、フタロシアニン配位子、クラウンエーテル配位子など。)。
4)好ましい金属錯体の構造
本発明における金属錯体としては、以下に詳述する一般式(I)で表される有機化合物であることが好ましい。
<一般式(I)で表される金属錯体>
先ず、一般式(I)で表される有機化合物について説明する。
一般式(I)中、M11は金属イオンを表し、L11〜L15はそれぞれM11に配位する配位子を表す。L11とL14との間に原子群がさらに存在して環状配位子を形成してもよい。L15はL11及びL14の両方と結合して環状配位子を形成してもよい。
11、Y12、およびY13はそれぞれ連結基、単結合、または二重結合を表す。また、Y11、Y12、又はY13が連結基である場合、L11とY12、Y12とL12、L12とY11、Y11とL13、L13とY13、Y13とL14の間の結合は、それぞれ独立に、単結合又は二重結合を表す。n11は0〜4を表す。M11とL11〜L15との結合は、それぞれ配位結合、イオン結合、共有結合のいずれでもよい。
一般式(I)で表される有機化合物について詳細に説明する。
一般式(I)中、M11は金属イオンを表す。金属イオンとしては特に限定されないが、2価または3価の金属イオンが好ましい。2価または3価の金属イオンとしては、白金イオン、イリジウムイオン、レニウムイオン、パラジウムイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、銅イオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンが好ましく、白金イオン、イリジウムイオン、またはユーロピウムイオンがより好ましく、白金イオン、イリジウムイオンがさらに好ましく、白金イオンが特に好ましい。
一般式(I)中、L11、L12、L13、及びL14は、それぞれ独立に、M11に配位する配位子を表す。L11、L12、L13、及びL14に含まれ、かつ、M11に配位する原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又はリン原子が好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子がより好ましく、窒素原子、酸素原子、又は炭素原子が更に好ましい。
11とL11、L12、L13、及びL14でそれぞれ形成される結合は、それぞれ独立に、共有結合であってもイオン結合であっても配位結合であってもよい。本発明における配位子とは、説明の便宜上、配位結合のみならず他のイオン結合、共有結合により形成された場合においても用いるものとする。
11、Y12、L12、Y11、L13、Y13、及びL14から成る配位子は、アニオン性配位子(少なくとも一つのアニオンが金属と結合する配位子)であることが好ましい。アニオン性配位子中のアニオンの数は、1〜3が好ましく、1、2がより好ましく、2がさらに好ましい。
11に炭素原子で配位するL11、L12、L13、及びL14としては、特に限定されないが、それぞれ独立にイミノ配位子、芳香族炭素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、またはフェナントラセン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばチオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など)およびこれらの互変異性体)が挙げられる。
11に窒素原子で配位するL11、L12、L13、及びL14としては特に限定されないが、それぞれ独立に、含窒素へテロ環配位子(例えば、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、及び、これらの互変異性体(なお、本発明では通常の異性体以外に次のような例も互変異性体と定義する。例えば、後述する化合物(24)の5員ヘテロ環配位子、化合物(64)の末端5員ヘテロ環配位子、化合物(145)の5員ヘテロ環配位子もピロール互変異性体と定義する。)など、アミノ配位子(アルキルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばメチルアミノなどが挙げられる。)、アリールアミノ配位子(例えばフェニルアミノなどが挙げられる。)、アシルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ配位子(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、イミノ配位子など)が挙げられる。これらの配位子はさらに置換されていてもよい。
11に酸素原子で配位するL11、L12、L13、及びL14としては特に限定されないが、それぞれ独立に、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシルオキシ配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、シリルオキシ配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、カルボニル配位子(例えばケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子など)、エーテル配位子(例えばジアルキルエーテル配位子、ジアリールエーテル配位子、フリル配位子など)などが挙げられる。
11に硫黄原子で配位するL11、L12、L13、及びL14としては特に限定されないが、それぞれ独立に、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、チオカルボニル配位子(例えばチオケトン配位子、チオエステル配位子など)、又はチオエーテル配位子(例えばジアルキルチオエーテル配位子、ジアリールチオエーテル配位子、チオフリル配位子など)などが挙げられる。これらの置換配位子は更に置換されてもよい。
11にリン原子で配位するL11、L12、L13、及びL14としては特に限定されないが、それぞれ独立に、ジアルキルホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、およびホスフィニン基等が挙げられる。これらの基は更に置換されてもよい。
11及びL14は、それぞれ独立に、芳香族炭素環配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、エーテル配位子、アルキルチオ配位子、アリールチオ配位子、アルキルアミノ配位子、アリールアミノ配位子、アシルアミノ配位子、含窒素へテロ環配位子(例えばピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、又は、それらを含む縮配位子体(例えば、キノリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、又は、これらの互変異性体など)が好ましく、芳香族炭素環配位子、アリールオキシ配位子、アリールチオ配位子、アリールアミノ配位子、並びにピリジン配位子、ピラジン配位子、イミダゾール配位子、又は、それらを含む縮配位子体(例えば、キノリン配位子、キノキサリン配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、又は、これらの互変異性体がより好ましく、芳香族炭素環配位子、アリールオキシ配位子、アリールチオ配位子、又はアリールアミノ配位子がさらに好ましく、芳香族炭素環配位子、又はアリールオキシ配位子が特に好ましい。
12及びL13は、それぞれ独立に、M11と配位結合を形成する配位子が好ましく、M11と配位結合を形成する配位子としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロール環、トリアゾール環、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、またはインドレニン環など)及び、これらの互変異性体が好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン環、ベンズピロールなど)、及び、これらの互変異性体がより好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、及び、それらを含む縮環体(例えば、キノリン環など)がさらに好ましく、ピリジン環、及び、ピリジン環を含む縮環体(例えば、キノリン環など)が特に好ましい。
一般式(I)中、L15はM11に配位する配位子を表す。L15は1〜4座の配位子が好ましく、1〜4座のアニオン性配位子がより好ましい。1〜4座のアニオン性配位子としては特に限定されないが、ハロゲン配位子、1,3−ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトン配位子など)、ピリジン配位子を含有するモノアニオン性2座配位子(例えば、ピコリン酸配位子、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ピリジン配位子など)、L11、Y12、L12、Y11、L13、Y13、L14で形成される4座配位子が好ましく、1,3−ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトン配位子など)、ピリジン配位子を含有するモノアニオン性2座配位子(例えばピコリン酸配位子、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ピリジン配位子など)、L11、Y12、L12、Y11、L13、Y13、L14で形成される4座配位子がより好ましく、1,3−ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトン配位子など)、ピリジン配位子を含有するモノアニオン性2座配位子(例えば、ピコリン酸配位子、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ピリジン配位子など)がさらに好ましく、1,3−ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトン配位子など)が特に好ましい。配位座の数、及び配位子の数が、金属の配位数を上回ることはない。但し、L15はL11及びL14の両方と結合して環状配位子を形成することはない。
一般式(I)中、Y11、Y12、及びY13は、それぞれ独立に、連結基、単結合、または二重結合を表す。連結基としては、特に限定されないが、例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子から選択される原子を含んで構成される連結基が好ましい。このような連結基の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
また、Y11、Y12、又はY13が連結基である場合、L11とY12、Y12とL12、L12とY11、Y11とL13、L13とY13、Y13とL14の間の結合は、それぞれ独立に、単結合又は二重結合を表す。
11、Y12、及びY13は、それぞれ独立に、単結合、二重結合、カルボニル連結基、アルキレン連結基、またはアルケニレン基が好ましい。Y11は、単結合、アルキレン基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。Y12及びY13は、単結合、アルケニレン基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。
12、L11、L12、及びM11で形成される環、Y11、L12、L13、及びM11で形成される環、Y13、L13、L14、及びM11で形成される環は、それぞれ環員数4〜10が好ましく、環員数5〜7がより好ましく、環員数5又は6がさらに好ましい。
一般式(I)中、n11は0〜4を表す。M11が配位数4の金属の場合、n11は0であり、M11が配位数6の金属の場合、n11は1、2が好ましく、1がより好ましい。M11が配位数6でn11が1の場合L15は2座配位子を表し、M11が配位数6でn11が2の場合L15は単座配位子を表す。M11が配位数8の金属の場合、n11は1〜4が好ましく、1、2がより好ましく、1がより好ましい。M11が配位数8でn11が1の場合L15は4座配位子を表し、M11が配位数8でn11が2の場合L15は2座配位子を表す。n11が複数のときは、複数のL15は同じであっても異なっていてもよい。
本発明に用いられる金属錯体の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるわけではない。
(正孔輸送性発光材料)
本発明において用いられる正孔輸送性発光材料としては、正孔輸送性蛍光発光材料、正孔輸送性燐光発光材料を用いることができるが、好ましくは正孔輸送性燐光発光材料である。
本発明に於ける正孔輸送性発光材料について説明する。
本発明の発光層に用いられる正孔輸送性発光材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャル(Ip)が5.1eV以上6.4eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.2eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力(Ea)が1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性発光材料としては、具体的には、例えば、ピロール系化合物、インドール系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアリールアルカン系化合物、アリールアミン系化合物、スチリル系化合物、スチリルアミン系化合物、チオフェン系化合物、芳香族多環縮合系化合物などのほか、金属錯体などが挙げられる。
前記金属錯体中の金属イオンは、特に限定されないが、発光効率向上、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、遷移金属イオン、希土類金属イオンであることが好ましく、より好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオン、オスミウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、鉛イオン、希土類金属イオン(例えば、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンなど)が好ましく、更に好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、金イオン、レニウムイオン、タングステンイオン、ユーロピウムイオン、カドリニウムイオン、テルビウムイオンであり、特に好ましくは、イリジウムイオン、白金イオン、レニウムイオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオンであり、最も好ましくは、イリジウムイオンである。イリジウムイオンを有する金属錯体の中でも特に好ましくは、炭素−Ir結合、窒素−Ir結合(この場合の結合は、配位結合、イオン結合、共有結合のいずれであってもよい)を有する金属錯体である。
このような正孔輸送性発光材料の例としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(電子輸送性ホスト材料)
本発明に用いられる電子輸送性ホスト材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンである。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホスト材料の例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
このような電子輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
電子輸送層ホスト材料としては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22がより好ましく、E−3、E−4、E−8、E−9、E−21、またはE−22が更に好ましい。
本発明における発光層において、発光性ドーパントとして燐光発光性ドーパントを用いたとき、該燐光発光性ドーパントの最低三重項励起エネルギーT1(D)と前記複数のホスト化合物の最低励起三重項エネルギーのうち最小のもの前記T1(H)minとが、T1(H)min>T1(D)の関係を満たすことが色純度、外部量子効率、駆動耐久性の点で好ましい。
(正孔輸送性ホスト材料)
本発明の発光層に用いられる正孔輸送性ホスト材料としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.4eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.2eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性ホスト材料としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマチオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格および/または芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
このような正孔輸送性ホスト材料としての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<発光材料とホスト材料の混合比>
−正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性発光材料の混合比
本発明に於ける正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性発光材料の混合比率は、十分な発光強度を得つつ会合発光や濃度消光、正孔が発光層から漏れ出ることを抑制する観点から、発光層の総計として、質量比で95:5〜50:50が好ましく、90:10〜70:30がより好ましい。
−電子輸送性ホスト材料および正孔輸送性発光材料の混合比−
本発明に於ける電子輸送性ホスト材料および正孔輸送性発光材料の混合比率は、十分な発光強度を得つつ会合発光や濃度消光、正孔が発光層から漏れ出ることを抑制する観点から、発光層の総計として、質量比で5:95〜50:50が好ましく、10:90〜30:70がより好ましい。
<膜厚>
発光層の膜厚としては、輝度ムラ、駆動電圧、輝度の観点から、0.03μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.06μm以上0.4μm以下であることが好ましい。発光層の膜厚が薄いと、高輝度で低い電圧での駆動が可能となるが、素子抵抗が小さくなることで、電圧低下による輝度変化の影響を受けやすくなり、輝度ムラの増加を招く結果となる。発光層の膜厚が厚いと、駆動電圧が高くなり、発光効率の低下を招き、用途を限定する原因となってしまう。
<層構成>
発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。また、発光層が積層構造である場合については、積層構造を構成する各層の膜厚は特に限定されないが、各発光層の合計膜厚が前述の範囲になるようにすることが好ましい。
3.一般式(A)で表される有機化合物を含有する層
本発明における一般式(A)で表される有機化合物含有層は、本発明の正孔輸送性材料が濃度傾斜して含有される発光層と、隣接して配される。これにより、駆動電圧の低下、発光効率の向上、高い駆動耐久性、を実現することが出来る。
本発明に於ける一般式(A)で表される有機化合物含有層は、発光層と直接接している。
(一般式(A)で表される有機化合物)
本発明にぉける一般式(A)で表される有機化合物について詳細に説明する。
一般式(A)中、R31〜R36は、水素原子又は置換基を表す。R31及びR32は、互いに結合して環を形成してもよい。一般式(A)中、R31〜R36で表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、特に好ましくはアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。
一般式(A)中、R31〜R36のうち少なくとも1つは、アリール基又はヘテロアリール基が好ましい。R31〜R36で表される置換基としては、例えば、下記に記載される置換基群よりそれぞれ独立に選ばれる置換基が挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、及び3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、及びアントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、及びジトリルアミノなどが挙げられる。)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、及び2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、及び2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、及びキノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、
特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、及びフェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、及び2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えば、イミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、及びアゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
31〜R36として、好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シロキシ基、又はビニル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ビフェニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、シロキシ基、又はビニル基であり、さらに好ましくはフェニル基、ベンズイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、シロキシ基、又はビニル基である。
但し、R31〜R36のうち少なくとも1つは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
一般式(A)で表される有機化合物として、好ましくは下記一般式(B)で表される有機化合物である。
一般式(B)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R11〜R14に、置換基が導入可能な場合には、さらに置換基を有していてもよい。R11及びR12は、互いに結合して環を形成してもよい。一般式(B)中、R11〜R14で表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、特に好ましくはアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。
及びXは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。X及びXに、置換基を導入可能な場合には、さらに置換基を有していてもよい。
前記R11〜R14で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
前記R11〜R14で表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R11〜R14で表されるアルキル基として好ましくは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
前記R11〜R14で表されるアリール基としては、単環又は2環以上の環が縮環した縮合環のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基である。R〜Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、ビフェニル基、及びターフェニル基等が挙げられ、これらのうち好ましくはフェニル基、トリフェニレニル基、ビフェニル基、又はターフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、ビフェニル基、又はターフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
前記R11〜R14で表されるヘテロアリール基は、単環又は2環以上の環が縮合した縮合環のヘテロアリール基であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは2〜12さらに好ましくは2〜10のヘテロアリール基である。R〜Rで表されるヘテロアリール基の具体例としては、例えば、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、プテリジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリミジニル基、キナゾリル基、ピリダジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、及びカルバゾリル基等が挙げられ、好ましくはピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、又はカルバゾリル基であり、より好ましくはピリジル基、トリアジニル基、イミダゾピリジニル基、又はカルバゾリル基であり、さらに好ましくはピリジル基である。
前記R11〜R14で表されるアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前述の一般式(A)のR31〜R36で表される置換基として説明した置換基から選ぶことが可能である。
前記R11〜R14で表されるアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が有してもよい置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10)、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、又はピリジル基がさらに好ましく、ピリジル基が最も好ましい。
前記X及びXで表されるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基等が挙げられる。
前記X及びXで表されるアリール基は、単環又は2環以上の環が縮環した縮合環のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜30のアリール基である。X及びXで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、ビフェニル基、及びターフェニル基等が挙げられる。
前記X及びXで表されるヘテロアリール基は、単環又は2環以上の環が縮合した縮合環のヘテロアリール基であり、炭素数1〜20のヘテロアリール基であることが好ましい。X及びXで表されるヘテロアリール基の具体例としては、例えば、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、プテリジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリミジニル基、キナゾリル基、ピリダジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、及びカルバゾリル基等が挙げられる。
前記X及びXで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、更に置換基を有していてもよく、置換基としては上述した置換基群Aから選ぶことが可能である。
本発明における一般式(B)で表される化合物としては、下記一般式(C)で表される有機化合物であることが好ましい。
一般式(C)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。R〜Rに置換基を導入可能な場合には、さらに置換基を有していてもよい。R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。一般式(C)中、R〜Rで表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基、特に好ましくはアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。
前記R〜Rで表されるハロゲン原子としては、前記一般式(B)においてR11〜R14で表されるハロゲン原子と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記R〜Rで表されるアルキル基としては、前記一般式(I)においてR〜Rで表されるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記R〜Rで表されるアリール基としては、前記一般式(I)においてR〜Rで表されるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記R〜Rで表されるヘテロアリール基としては、前記一般式(I)においてR〜Rで表されるヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記R〜Rで表されるアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基としては上述した置換基群Aから選ぶことが可能である。
一般式(B)又は一般式(C)で表される化合物は、R又はRを介してビス型構造を有していてもよい。
以下に、一般式(A)、一般式(B)、及び一般式(C)で表される有機化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(A)、(B)、(C)で表される有機化合物含有層に含有される一般式(A)、(B)、(C)で表される有機化合物以外の材料としては、電子輸送性材料、例えば後に説明する電子注入層や電子輸送層で説明する材料、先に説明した発光層の電子輸送性材料などがある。
本発明における一般式(A)、(B)、(C)で表される有機化合物を含有する層に用いる一般式(A)、(B)、(C)で表される化合物の電子移動度は、発光層への十分な電子注入の観点から、1×10−5cm/Vs以上であることが好ましいが、1×10−4cm/Vs以上であればさらに好ましい。
該電子移動度は、TOF(Time of Flight)法から求めることができる。
本発明における一般式(A)、(B)、(C)で表される有機化合物含有層に含有される一般式(A)、(B)、(C)で表される化合物は、50質量%〜100質量%含有されることが好ましく、70質量%〜100質量%含有されることがより好ましく、80質量%〜100質量%含有されることが特に好ましい。
本発明の一般式(A)、(B)、(C)で表される有機化合物含有層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、およびスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
4.正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子有機化合物であっても高分子有機化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、インドール誘導体、アザインドール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、および三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはフラーレンC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜200nmであるのが好ましく、5nm〜100nmであるのがより好ましく、10nm〜60nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜300nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
5.電子注入層、電子輸送層
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることが出来る。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.0.1nm〜50nmであるのがより好ましく、0.5nm〜20nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
7.基板
本発明で使用する基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
8.電極
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
9.保護層
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
10.封止
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
11.駆動
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
12.共振構造
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明または半透明電極、発光層、および金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明または半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
12.用途
本発明の有機EL素子の用途は特に限定されないが、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明等広い分野に適用できる。
以下に、本発明の有機EL素子の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
1.有機EL素子の作製
(本発明の有機EL素子1の作製)
0.5mm厚み、2.5cm角の酸化インジウム錫(ITOと略記)を蒸着したガラス基板(ジオマテック(株)製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極上に真空蒸着法にて以下の層を蒸着した。本発明の実施例における蒸着速度は特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
正孔注入層:4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATAと略記する)および2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQと略記する)を2−TNATAに対してF4−TCNQが1.0質量%となるように共蒸着した。厚み160nmであった。
正孔輸送層:N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(α−NPDと略記する)、厚み10nm。
発光層:正孔輸送性ホスト材料N,N’−ジカルバゾリル−1,3−ベンゼン(mCPと略する)と電子輸送性発光材料Pt−1とを共蒸着し、これらの共蒸着比を蒸着進行と共に変化させた。蒸着初期の正孔輸送層に近接した領域ではmCPの混合比率が100質量%、蒸着終了段階の電子輸送層と近接する領域では混合比率が25質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの領域の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の膜厚は60nmであった。
続いて、発光層の上に、下記の電子輸送層、および電子注入層を設けた。
電子輸送層:本発明の一般式(A)の有機化合物ETA−1を厚み40nmに蒸着した。
電子注入層:LiF、厚み1nm。
さらに、シャドウマスクによりパターニングして陰極として厚み100nmのAlを設けた。
各層はいずれも抵抗加熱真空蒸着により設けた。
作製した積層体を、窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止した。
(本発明の有機EL素子2の作製)
有機EL素子1において、電子輸送層の有機化合物ETA−1をETA−2に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子2を作製した。
(本発明の有機EL素子3の作製)
有機EL素子1において、電子輸送層の有機化合物ETA−1をETA−3に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子3を作製した。
(本発明の有機EL素子4の作製)
有機EL素子1において、発光層を下記に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子4を作製した。
発光層:正孔輸送性ホスト材料mCPと電子輸送性発光材料Pt−1を共蒸着し、これらの共蒸着比を蒸着初期の陽極側界面ではmCPの混合比率が100質量%、蒸着終了段階の電子輸送層と近接する領域では混合比率が10質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の膜厚は60nmであった。
(本発明の有機EL素子5の作製)
有機EL素子1において、発光層を下記に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子5を作製した。
発光層:正孔輸送性ホスト材料mCPと電子輸送性発光材料Pt−1を共蒸着し、これらの共蒸着比を蒸着初期の陽極側界面ではmCPの混合比率が100質量%、蒸着終了段階の電子輸送層と近接する領域では混合比率が50質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の膜厚は60nmであった。
(本発明の有機EL素子6の作製)
有機EL素子1において、発光層を下記に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子6を作製した。
発光層:正孔輸送性ホスト材料mCPと電子輸送性発光材料Pt−1を共蒸着し、これらの共蒸着比を蒸着初期の陽極側界面ではmCPの混合比率が100質量%、蒸着終了段階の電子輸送層と近接する領域では混合比率が75質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの界面の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の膜厚は60nmであった。
(本発明の有機EL素子7の作製)
有機EL素子1において、発光層を下記に変更し、その他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子7を作製した。
発光層:電子輸送性ホスト材料のAluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略称する)と正孔輸送性発光材料のIr(piq)を共蒸着した。これらの共蒸着比を蒸着進行と共に変化させた。蒸着初期の正孔輸送層に近接した領域ではIr(piq)の混合比率が100質量%、蒸着終了段階の電子輸送層と近接する領域ではIr(piq)の混合比率が8質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。これらの領域の間では連続的に各成分の混合比率を変化させた。発光層の膜厚は60nmであった。
(比較の有機EL素子Aの作製)
有機EL素子1において、発光層を下記に変更した。その他は有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子Aを作製した。
発光層:mCPと発光材料Pt−1を共蒸着した。mCPに対して発光材料Pt−1の混合比率が発光層全域で均一に15質量%となるように各成分の蒸着速度を調整した。発光層の膜厚は60nmであった。
(比較の有機EL素子Bの作製)
本発明の有機EL素子1において、電子輸送層を下記に変更し、さらに発光層と電子輸送層との間に下記正孔ブロック層を設けた。その他は本発明の有機EL素子1と同様にして比較の有機EL素子Bを作製した。
正孔ブロック層:バソキュプロイン(BCPと略称する)を厚み10nmに蒸着した。電子輸送層:トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alqと略記する)、厚み40nm。
(比較の有機EL素子Cの作製)
有機EL素子7において、電子輸送層を下記に変更し、さらに発光層と電子輸送層との間に下記正孔ブロック層を設けた。その他は有機EL素子7と同様にして比較の有機EL素子Cを作製した。
正孔ブロック層:バソキュプロイン(BCPと略称する)を厚み10nmに蒸着した。
電子輸送層:トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alqと略記する)、厚み60nm。
実施例に用いた有機化合物の構造を下記に示す。
2.性能評価結果
得られた比較有機EL素子および本発明の有機EL素子を同一条件で下記の手段によって外部量子効率および駆動耐久性を測定した。
《駆動電圧》
輝度360cd/mに達する直流電圧を駆動電圧とした。
《外部量子効率の測定方法》
作製した発光素子をKEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し発光させた。本発明の素子1〜6と比較の素子A,Bは青色発光を示した。本発明の素子7と比較の素子Cは、赤色発光を示した。
電圧を調整して、輝度360cd/mになるように発光させ、その発光スペクトルと光量をトプコン社製輝度計SR−3を用いて測定し、発光スペクトル、光量と測定時の電流から外部量子効率を計算した。
《駆動耐久性率の測定方法》
各素子を輝度360cd/mになるように直流電圧を印加し、連続駆動して輝度が180cd/mになるまでの輝度半減時間を測定した。この輝度半減時間をもってして駆動耐久性の指標とした。
得られた結果を表1に示した。
本発明の素子1〜6と比較の素子A,Bは共に発光材料として電子輸送性発光材料Pt−1を用いているが、本発明の素子はいずれも駆動電圧が低く、駆動耐久性が顕著に改良された。比較の素子Bに比べて比較の素子Aは駆動電圧が低下したが、駆動耐久性が劣化した。それに対して本発明の素子1〜6は比較の素子Aよりさらに低い駆動電圧で、極めて高い駆動耐久性を示した。
一方、正孔輸送性発光材料Ir(piq)を用いた本発明の素子7と比較の素子Cを比較すると、本発明の素子は駆動電圧が大きく下がり、駆動耐久性も改良された。
以上の結果から本発明により、駆動電圧が大幅に低下し、かつ発光効率、耐久性も大幅に向上した極めて優れた発光素子を得ることができることがわかった。

Claims (2)

  1. 一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層と陰極の間に下記ETA−1を含有する層を有し、前記ETA−1を含有する層が前記発光層に接し、かつ前記発光層が少なくとも一種の電子輸送材料と、少なくとも一種の正孔輸送材料とを含有し、前記電子輸送材料と前記正孔輸送材料の少なくとも一方が発光材料であって、前記発光層において前記正孔輸送材料の濃度が、前記陽極から前記陰極に向かって減少し、前記電子輸送材料がBAlqであって、前記正孔輸送材料がIr(piq) であることを特徴とする有機電界発光素子:
  2. 前記発光層の前記陰極側界面付近の領域における前記正孔輸送材料の濃度が、前記発光層の前記陽極側界面付近の領域における正孔輸送材料の濃度に対して0%以上50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
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