JP5831606B2 - 塗料用熱硬化性組成物 - Google Patents
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Description
しかし、近年の地球環境に対する関心の高まりから、大量の溶剤が揮発する溶剤型塗料は敬遠され、塗料の一層のハソリッド化、さらには粉体塗料への変更が求められている。
一般的にビニル系共重合体を含有する塗料組成物によるハイソリッド塗料や、粉体塗料を使用した場合、外観特性、物理特性、化学特性及び貯蔵安定性を満足するものではなかった。特に平滑性とブロッキング性を同時に十分満足することはできなかった。平滑性を向上させるためには、溶融粘度を低下させることが最も効果的である。しかし、溶融粘度を低下させるためには、ガラス転移温度を低下させなければならず、この方法では、平滑性とブロッキング性の両性能を満足することは不可能であった。
これらの問題を解決する方法として、例えば特許文献1及び2には、ビニル系重合体の分子量分布、すなわちゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう。)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を小さくし、重合体の溶融粘度を下げ、平滑性とブロッキング性を両立させた塗料用熱硬化性組成物が開示されている。
本発明は、上記問題点を鑑みなされたものであって、得られる塗膜の平滑性及び耐ブロッキング性の両性能に優れ、製造が容易である塗料用熱硬化性組成物を提供することを目的とする。
1.カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を平均で1.0〜1.9個有し、他に官能基を有さないビニル系重合体(A)、並びに硬化剤(B)を含有する塗料用熱硬化性組成物であって、
前記ビニル系重合体(A)が一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤に由来する残基を末端に有し、
前記ビニル系重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体であって、その構成単量体として(メタ)アクリル酸エステル単量体を40質量%以上含み、
前記ビニル系重合体(A)の数平均分子量が、1000〜20000であり、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.0未満であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸−tert−ブチルから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記カルボキシル基が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び4−カルボキシルスチレンから選ばれる不飽和カルボン酸化合物に由来するものであり、
前記ヒドロキシル基が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレートから選ばれるヒドロキシル基含有不飽和化合物に由来するものであり、
前記硬化剤(B)が多価グリシジル化合物又は多価イソシアネート化合物であり、
前記カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基に対する硬化剤(B)の官能基のモル比が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする塗料用熱硬化性組成物。
2.前記ビニル系重合体(A)が、前記官能基を分子末端に有することを特徴とする前記1.に記載の塗料用熱硬化性組成物。
3.前記ビニル重合体(A)のガラス転移温度が10〜100℃である前記1.又は2.に記載の塗料用熱硬化性組成物。
本発明の塗料用熱硬化性組成物は、カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を平均で1.0〜1.9個有するビニル系重合体(A)、並びに硬化剤(B)を含有する塗料用熱硬化性組成物であって、前記ビニル系重合体(A)が一般式(1)で示される化合物を重合開始剤として、リビングラジカル重合により製造されたものであることを特徴とする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を含む意味に用い、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を含む意味に用いる。
[1]一般式(1)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、上記官能基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物をラジカル重合反応させて得られた、上記官能基を有するビニル系重合体(a1)。
[2]一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、一般式(3)で示されるヒドロキシル基を有するビニル単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する。次に、その重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物をラジカル重合反応させて得られた、ヒドロキシル基を有するビニル系重合体(a2)。
一般式(3)で示されるヒドロキシル基含有不飽和化合物の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[3]一般式(4)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(5)で示されるカルボキシル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物をラジカル重合反応させて得られた、カルボキシル基を有するビニル系重合体(a3)。
一般式(5)で示される不飽和カルボン酸化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられる。
[4]一般式(4)で示される化合物をリビングラジカル重合開始剤として、一般式(3)で示されるヒドロキシル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物をラジカル重合反応させ、末端にカルボキシル基を有するビニル系重合体を製造する。次に、当該ビニル系重合体と、一般式(6)で示されるグリシジル化合物とを反応させて得られた、ヒドロキシル基を有するビニル系重合体(a4)。
一般式(6)で示されるグリシジル化合物の例としては、グリシジルエチルエーテル、グリシジルブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシドール、各種グリシジルアルコール等が挙げられる。
[5]特開2005−126442号に記載の方法で、一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤とポリ不飽和化合物を反応させ、ポリアルコキシアミン重合前駆体を製造する。次に、当該重合前駆体を用いて、グリシジル基又はヒドロキシル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物をラジカル重合反応させて得られた、グリシジル基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するビニル系重合体(a5)。
[6]上記態様を複数組み合わせたビニル系重合体。
上記官能基を末端付近に有するビニル系重合体(a1)は、例えば、重合工程において、一定量の、上記官能基を有さないビニル系単量体の重合反応が終了した後、即ち、重合反応の後期の時期に、上記官能基を有するビニル系単量体をその反応系に配合することにより製造できる。
ヒドロキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、上記ビニル系単量体全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
成長末端付近に共重合させるヒドロキシル基を有するビニル系単量体は、重合前駆体の原料に用いたビニル系単量体と同じものを使用することができる。当該ビニル系単量体は、重合前駆体1モルに対し、0.1〜10モルが好ましい。より好ましくは0.4〜5モルであり、さらに好ましくは0.6〜3モルである。特に好ましくは0.8〜1.5モルである。0.1モル未満では、硬化物が弱く、優れた力学的特性を示さない。一方、10モルを超えると、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ破断伸びも低く、脆くなるため好ましくない。
カルボキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、上記ビニル系単量体全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
カルボキシル基を有するビニル系単量体は、一般式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤1モルに対し、0.1〜10モルが好ましい。より好ましくは0.4〜5モルであり、さらに好ましくは0.6〜3モルである。特に好ましくは0.8〜1.5モルである。0.1モル未満では、硬化物が弱く、優れた力学的特性を示さない。一方、10モルを超えると、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ破断伸びも低く、脆くなるため好ましくない。
ヒドロキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、上記ビニル系単量体全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
ヒドロキシル基を有するビニル系単量体は、一般式(4)で示されるリビングラジカル重合開始剤1モルに対し、0.1〜10モルが好ましい。より好ましくは0.4〜5モルであり、さらに好ましくは0.6〜3モルである。特に好ましくは0.8〜1.5モルである。0.1モル未満の場合は、硬化物が弱く、優れた力学的特性を示さない。一方、10モルを超える場合は、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ破断伸びも低く、脆くなるため好ましくない。
ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、上記ビニル系単量体全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するビニル系単量体以外のビニル系単量体は、後述するビニル系単量体を使用することができる。ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するビニル系単量体は、重合前駆体1モルに対し、0.1〜10モルが好ましい。より好ましくは0.4〜5モルであり、さらに好ましくは0.6〜3モルである。特に好ましくは0.8〜1.5モルである。0.1モル未満では、硬化物が弱く、優れた塗膜特性を示さない。一方、10モルを超えると、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、脆くなるため好ましくない。
この脱溶工程としては、特に限定されないが、一般的に行われている脱溶方法(脱溶プロセス)を用いることがでる。例えば、流下式蒸発機、薄膜蒸発機及び押出機式乾燥機等を使用する方法が挙げられる。
平均数(個数f)=上記ビニル系重合体中の上記官能基の濃度[mol/kg]/(1000/数平均分子量)
平均数(個数f)が、1.0より小さいと、塗料用熱硬化性組成物から得られる硬化物(膜)の架橋密度が小さくなるため、その硬化物の破断強度が弱くなる場合がある。一方、10.0より大きいと、架橋密度が高くなり、脆くて伸びない塗膜等の硬化物となる場合がある。
硬化剤は、ビニル系重合体(A)が有する上記官能基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物を用いることができる。この硬化剤としては、例えば、1分子中に2個以上のカルボキシル基、エポキシ基又はイソシアネート基を有する多価カルボン酸化合物、多価グリシジル化合物、多価イソシアネート化合物等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの硬化剤を使用することにより、硬化性組成物は均一に硬化することができる。また、これらの硬化剤を使用して硬化物を作成する際には、それぞれ適当な硬化触媒を使用することができる。
粉体塗料とした場合、その塗装方法は、特に限定されないが、静電吹付法、流動浸漬法等の周知の塗装方法によることができる。これらの塗装方法によって、被塗物を塗装し、通常これを150〜210℃の焼付炉で焼付を行い、粉体塗装による塗膜を得ることができる。
上記有機溶剤としては、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、芳香族及び脂肪族炭化水素化合物、アルコール化合物、グリコールエーテル化合物、グリコールエーテルエステル化合物、並びにこれらの混合物等が挙げられる。
また、上記加熱硬化の条件としては、120〜160℃の温度で約20分〜40分間行うことが好ましい。
また、合成例、実施例及び比較例における「Mn」は、数平均分子量を意味し、「Mw」は、重量平均分子量を意味し、Mw/Mnは分散度を意味する。この「Mn」及び「Mw」は、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算で算出された値である。
<GPC測定条件>
装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン 0.35ml/min
検出器:RI
官能基数(個数f)=ビニル系重合体(A)中の上記官能基の濃度[mol/kg]/(1000/数平均分子量)
そして、ビニル系重合体(A)中の上記官能基の濃度は、下記の測定による、各官能基のファンクショナリティーより算出した。
「グリシジル基のファンクショナリティー」
ASTM(D1652−73 Standard Test Method for EPOXY COTENT OF EPOXY RESINS)に基づいて測定した。
「カルボキシル基のファンクショナリティー」
JIS K 0070の中和滴定法により測定した。
「ヒドロキシル基のファンクショナリティー」
JIS K 0070の中和滴定法により測定した。
合成例1(重合体Aの調製)
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器に酢酸ブチル400質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(8)]48.4質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(以下「4HBAGE」ともいう。)25質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると4HBAGEの反応率は98%であった。冷却後、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ、減圧乾燥した。そこに、メタクリル酸メチル(以下「MMA」ともいう。)197質量部、スチレン(以下「St」ともいう。)38質量部、アクリル酸ブチル(以下「BA」ともいう。)47質量部、酢酸ブチル128質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々91%、85%、87%であった。そこへメタクリル酸グリシジル(以下「GMA」ともいう。)17質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びGMAの重合率は、各々95%、93%、96%、99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3700、Mn2960、Mw/Mn1.25、ガラス転移温度64℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのグリシジル基数fは2.0であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器に酢酸ブチル400質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(8)]48.4質量部、4HBAGE25質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると、4HBAGEの反応率は98%であった。冷却後、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ、減圧乾燥した。そこに、MMA197質量部、St38質量部、BA47質量部、酢酸ブチル128質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々91%、85%、87%であった。そこへGMA50質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びGMAの重合率は、各々95%、93%、96%、97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3920、Mn3010、Mw/Mn1.30、ガラス転移温度63℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのグリシジル基数fは3.8であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器に酢酸ブチル400質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(9)]44.5質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(以下「4−HBA」ともいう。)17質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると4−HBAの反応率は98%であった。冷却後、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ、減圧乾燥した。そこに、MMA199質量部、St49質量部、BA45質量部、酢酸ブチル130質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々90%、84%、85%であった。そこへ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下「HEMA」ともいう。)15質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA、HEMAの重合率は96%、93%、97%、99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3800、Mn2910、Mw/Mn1.31、ガラス転移温度65℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数fは1.9であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にリビングラジカル重合開始剤[式(9)]44.5質量部、MMA206質量部、St48質量部、BA59質量部、酢酸ブチル130質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々89%、85%、87%であった。そこへメタクリル酸(以下「MAA」ともいう。)10質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びMAAの重合率は、各々97%、93%、98%、99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3790、Mn2830、Mw/Mn1.34、ガラス転移温度65℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのカルボキシル基数fは1.9であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にMMA184質量部、St43質量部、BA52質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(9)]39.0質量部、グリシジルブチルエーテル16.5質量部、テトラブチルアンモニウムブロマイド(以下「TBAB」ともいう。)7.0質量部、酢酸ブチル130質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々92%、89%、88%であった。そこへHEMA27質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びHEMAの重合率は、各々96%、93%、95%、97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3850、Mn2900、Mw/Mn1.33、ガラス転移温度65℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数fは2.7であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にエタノール350質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(8)]116.6質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(以下「HDDA」ともいう。)33.4質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHDDAの反応率は99%であった。冷却後、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ、減圧乾燥し、重合前駆体を得た。得られた重合前駆体107.5質量部を、オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器に仕込み、更に、MMA169質量部、St33質量部、BA41質量部、酢酸ブチル128質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々92%、84%、90%であった。そこへGMA45質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びGMAの重合率は、各々96%、94%、96%、96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw3600、Mn2700、Mw/Mn1.33、ガラス転移温度66℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのグリシジル基数fは2.7であった。
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器に酢酸ブチル400質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(9)]20.5質量部、4−HBA9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると4−HBAの反応率は98%であった。冷却後、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ、減圧乾燥した。そこに、MMA215質量部、St45質量部、BA55質量部、酢酸ブチル130質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を105℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が105℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMMA、St及びBAの重合率は、各々89%、82%、84%であった。そこへHEMA14質量部添加し、105℃のまま4時間反応させた。この時点でのMMA、St、BA及びHEMAの重合率は、各々98%、93%、96%、97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約200質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw8260、Mn6120、Mw/Mn1.35、ガラス転移温度67℃であった。重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数fは2.8であった。
1リットルのセパラブルフラスコにトルエン200質量部を加え、加熱攪拌し、トルエンが還流を始めたら、MMA160質量部、BA50質量部、GMA115質量部、アゾビスイソブチロニトリル(以下「V−60」ともいう。)13質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間還流を続けた後、「V−60」10質量部を加えて1時間還流し、その後還流を停止した。このときのMMA、BA及びGMAの重合率は、各々91%、90%、97%あった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約250質量部の重合体Hを得た。得られた重合体Hの性状はMw5290、Mn2300、Mw/Mn2.30、ガラス転移温度は60℃、グリシジル基数fは5.7であった。
1リットルのセパラブルフラスコにトルエン200質量部を加え、加熱攪拌し、トルエンが還流を始めたら、MMA160質量部、BA50質量部、GMA115質量部、「V−60」9質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間還流を続けた後、V−60 10質量部を加えて1時間還流し、その後還流を停止した。このときのMMA、BA及びGMAの重合率は、各々92%、93%、95%あった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約250質量部の重合体Iを得た。得られた重合体Iの性状はMw9860、Mn3400、Mw/Mn2.90、ガラス転移温度は68℃、グリシジル基数fは5.6であった。
1リットルのセパラブルフラスコにトルエン200質量部を加え、加熱攪拌し、トルエンが還流を始めたら、MMA160質量部、BA50質量部、HEMA105質量部、「V−60」13質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間還流を続けた後、V−60 10質量部を加えて1時間還流し、その後還流を停止した。このときのMMA、BA及びHEMAの重合率は、各々92%、89%、97%あった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約250質量部の重合体Jを得た。得られた重合体Jの性状はMw5400、Mn2250、Mw/Mn2.40、ガラス転移温度は59℃、ヒドロキシル基数fは5.7であった。
1リットルのセパラブルフラスコにトルエン200質量部を加え、加熱攪拌し、トルエンが還流を始めたら、MMA160質量部、BA50質量部、HEMA105質量部、「V−60」9質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間還流を続けた後、V−60 10質量部を加えて1時間還流し、その後還流を停止した。このときのMMA、BA及びHEMAの重合率は、各々91%、92%、95%あった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約250質量部の重合体Kを得た。得られた重合体Kの性状はMw10010、Mn3500、Mw/Mn2.86、ガラス転移温度は69℃、ヒドロキシル基数fは5.7であった。
実施例1、比較例1及び2、並びに、参考例1〜3(粉体塗料組成物の調製)
実施例1、比較例1及び2、並びに、参考例1〜3の粉体塗料用組成物について、下記の方法により調製した。下記表3に記載の原料及び配合割合に従い、ビニル系重合体及び硬化剤を配合して、三井三池製作所社製「FM10B型ヘンシェルミキサー」を用いて、3分間乾式混合した。次いで、BUSS社製エクストルーダー「PR46」を用いて、110℃で溶融混練した。その後冷却し、各粉体塗料用組成物を得た。
各粉体塗料用組成物の性能試験を行うため、0.8T×70×150mmのリン酸亜鉛処理板を被塗物として、粉体塗料用組成物を厚さ50〜70μmに塗装した後、180℃で15分間焼付けし、塗膜を形成させた。上記により得られた塗膜について、以下の(1)〜(4)に示した性能試験を行った。その性能試験の結果を表5に示す。
実施例2及び比較例3〜6(ハイソリッド塗料用組成物)
実施例2及び比較例3〜6のハイソリッド塗料用組成物について、下記の方法により調製した。下記表4に記載の配合に従い、ビニル系重合体及び硬化剤を配合した。この時、エアスプレーができるように、酢酸エチルを用いて粘度を調整し各ハイソリッド塗料を作製した。粘度は、25℃で20秒(Zahncup#2)に調整した。
また、硬化剤としては、旭化成ケミカルズ社製商品名「デュラネートTSS−100」(以下「TSS−100」と略す。)を用いた。
各ハイソリッド塗料の性能試験を行うため、0.8T×70×150mmのリン酸亜鉛処理板を被塗物として、ハイソリッド塗料用組成物を厚さ50〜70μmに噴霧塗装し、これを140℃で30分間加熱し、塗膜を形成させた。
上記により得られた塗膜について、以下の(1)〜(4)に示した性能試験を行った。その性能試験の結果を表5に示す。
底面積が約20cm2の円筒容器に、上記により得られた塗膜を、高さが6cmとなるように入れ、30℃で1日間静置した。その後、上記円筒容器から塗膜を取り出して、その塗膜について下記の性能試験をおこなった。
(1)耐ブロッキング性
上記の通り、30℃で1日間静置した後の上記円筒容器から取り出した塗膜について、その塗膜のブロッキング状態を目視および指触で観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:固まりが全く認められなかった。
○:米粒状の固まりが認められた。
×:容器の形のまま固まっていた。
(2)目視外観(塗膜の平滑性及び鮮映性)
上記の通り、30℃で7日間静値した後の上記円筒容器から取り出した塗膜について、その塗膜の外観をツヤ及び平滑性について、目視観察して、下記基準に従って評価した。
◎:特に優れていた。
○:良好であった。
×:劣っていた。
(3)ロングウエーブ(塗膜の平滑性)
上記の通り、30℃で7日間静値した後の上記円筒容器から取り出した塗膜について、
ウエーブスキャンプラス(BYK社製)にてロングウエーブを測定した。このロングウエーブは、塗膜の平滑性を表す指標であり、数値が小さいほど塗膜の表面は平滑となる。
(4)60度 表面光沢
村上式光沢計を使用して60度の角度で測定した。数字が大きい程、光沢が高いことを示す。
Claims (3)
- カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を平均で1.0〜1.9個有し、他に官能基を有さないビニル系重合体(A)、並びに硬化剤(B)を含有する塗料用熱硬化性組成物であって、
前記ビニル系重合体(A)が一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤に由来する残基を末端に有し、
前記ビニル系重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体であって、その構成単量体として(メタ)アクリル酸エステル単量体を40質量%以上含み、
前記ビニル系重合体(A)の数平均分子量が、1000〜20000であり、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.0未満であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸−tert−ブチルから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記カルボキシル基が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び4−カルボキシルスチレンから選ばれる不飽和カルボン酸化合物に由来するものであり、
前記ヒドロキシル基が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレートから選ばれるヒドロキシル基含有不飽和化合物に由来するものであり、
前記硬化剤(B)が多価グリシジル化合物又は多価イソシアネート化合物であり、
前記カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基に対する硬化剤(B)の官能基のモル比が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする塗料用熱硬化性組成物。
{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R3は−(CH2)m−、mは0〜2の整数であり、R4は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のヒドロキシル基含有アルキルエーテル基、R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基である。} - 前記ビニル系重合体(A)が、前記官能基を分子末端に有することを特徴とする請求項1に記載の塗料用熱硬化性組成物。
- 前記ビニル重合体(A)のガラス転移温度が10〜100℃である請求項1又は2に記載の塗料用熱硬化性組成物。
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