JP5831219B2 - 溶鉄の昇熱方法 - Google Patents
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Description
ここに、昇熱工程を短縮させることができれば、溶融還元工程を延長させることができるので、クロム源であるクロム鉱石の原単位が増加し、製造コストの削減に大きく寄与することになる。また、転炉型製錬炉に保持された溶鉄を、迅速かつ効率的に昇熱することは、製錬の効率化のみならず製造コストの削減にも大きく寄与する。
さらに、過度の二次燃焼の促進は、溶鉄への着熱効率が低いことから、溶鉄ではなく耐火物に吸収される熱量が増大し、耐火物の溶損が助長されるという問題もある。
また、上掲特許文献2に記載された方法では、前記バーナーの燃焼熱を高効率で着熱させるために、伝熱媒体である粉粒体が必須となるものの、溶融還元吹錬での昇熱工程全般に亘って供給するには、石灰等の造滓材のみでは吹錬に本来必要な量よりも過剰に投入することとなってしまい、スラグボリュームの増加と造滓材の顕熱増加による昇熱負荷の増加という別の問題が発生してしまう。
なお、クロム鉱石の溶融還元プロセスにおいては、前述したように、昇熱吹錬時間は40分〜1時間程度を要する。すなわち、昇熱吹錬中に30〜50tといった大量の粉粒体供給が必要である。
そのため、上記の問題を回避しようとすると、全昇熱時間中でのバーナーへの粉体吹込み時間の比率は半分以下になってしまい、バーナーによる着熱効率増加メリットが少なくなる。
すなわち、プロパンのような炭化水素系燃料の燃焼により発生したC02やH20は、バーナー火炎に供給した炭材と、以下(1)式および(2)式のように反応する。
C02+C=2CO ・・・ (吸熱量:17.1MJ/mol) ・・・(1)
H20+C=CO+H2・・・ (吸熱量:13.4MJ/mol) ・・・(2)
バーナー燃焼用プロパンを0.5Nm3/minの供給速度とし、バーナー燃焼用酸素を2.5Nm3/minの供給速度として、粒度:100μm〜1mmに篩分けを行った炭材を、供給速度:25kg/minでバーナー火炎中に供給した場合には、バーナー火炎中の炭材温度は約1500℃となり、排ガス中のCOガスおよびH2ガス濃度が高位となった。
一方、炭材の供給速度を50kg/minとした場合には、バーナー火炎中の炭材温度はおよそ800℃となり、排ガス中のガスは大部分がC02およびH20となった。
以上の結果から、炭材の供給速度を増加させていくことで、バーナー燃焼場の温度を低下させることが可能となり、炭材の反応を抑制することが可能になることが分かった。
この発明は上記の知見に立脚するものである。
1.転炉型製錬炉内に保持された溶鉄に、上吹きまたは上底吹き吹錬を行うに当たり、酸化性ガスを上吹きする上吹きランスの先端部または上吹きランスとは別に設置したランスの先端部に、燃料および助燃ガスを噴出させる噴射孔を有するバーナーを設け、該バーナーにより形成される火炎の中を通過するように、下記に示す粉粒体を吹込むものとし、その際、
上記粉粒体の吹込み速度を調整して、バーナー火炎中での上記粉粒体中の炭材の温度を800℃以下とすることを特徴とする溶鉄の昇熱方法。
記
ここに、粉粒体は、(ア)粉粒状の炭材、もしくは(イ)粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質からなるものとする。
3.前記比(B/A)が0.00101((J/min)/(J/K/min))以上の範囲であることを特徴とする前記2に記載の溶鉄の昇熱方法。
前述したように、転炉型製錬炉内に保持された溶鉄の吹錬において、二次燃焼は、炉内の空間で生じるので、溶鉄内や溶鉄湯面近傍で生じる一次燃焼と比べて、溶鉄への着熱効率が低いことが知られている。
それ故、二次燃焼率の増加により総発熱量が増加し過ぎると、総発熱量に対する溶鉄への着熱効率は低下して耐火物の受熱量が増大し、耐火物の溶損が助長される。
さらに、炭材をバーナー火炎中で加熱する場合には、前掲(1)式および(2)式の反応を抑制する必要がある。
また、炭材以外の物質を伝熱媒体として併用する場合にも、そのような物質を粉粒状として使用する。これも上記と同様に、バーナー配管内にて安定して圧送を行うことを前提としているので、配管詰まりなどを防止するためである。
また、前掲(1)式および(2)式の反応を抑制するため、炭材の吹込み速度を調整して、バーナー火炎中での上記炭材の温度を800℃以下とすることが必須である。
なお、炭材以外の粉粒状物質を併用する場合においては、この炭材以外の粉粒状物質の温度については特に規定するものではない。火炎中の粉粒状物質への火炎からの伝熱は主に輻射伝熱と対流伝熱によるものと考えられるが、輻射伝熱は粉粒状物質の輻射率に依存するので、物質が異なれば、輻射率も当然異なることとなり、同じ条件下で火炎中に吹き込んでも、炭材と同一温度になるとは限らない。本発明では、炭材中のCが前掲(1)式および(2)式の反応によって火炎温度を低下するのを抑制するために、バーナー火炎中での上記炭材の温度を800℃以下とするので、この反応に関与しない炭材以外の粉粒状物質の温度まで規定する必要はない。
なお、燃料ガス種として、特に限定はないが、プロパンやメタン等の、上吹き吹錬等に、一般に用いられる燃料ガスを用いることができる。また、上記吹込む粉体の比熱(J/kg・K)と吹込速度(kg/min)との積:Bは、粉粒体として炭材と炭材以外の粉粒状物質を併用して吹き込む場合には、炭材だけでなく、炭材以外の粉粒状物質も含めて計算するものとする。
その際、炭材と炭材以外の粉粒状物質の比率は特に規定されず、吹錬時の添加量を考慮して任意の比率に設定することができる。
スクラップ:50tと十分に予備処理をされた溶銑:80tとを、転炉に装入し、クロム鉱石の溶融還元吹錬を実施した。
上吹きランスからは送酸速度:450〜550Nm3/minで、底吹き羽口から120Nm3/minで酸素を供給した。吹錬開始後、各水準とも昇熱用の炭材および造滓のための石灰を投入したが、これらは、以下に示す方法で投入した。
バーナー燃料の発熱量と、粉粒体の質量の比が一定、すなわちプロパン流量と粉粒体吹込み速度の比が一定であればバーナー火炎中の炭材温度は同じになるとした。また、伝熱計算により、上記推測温度と計算による粉粒体温度の誤差が5%以内であることが確認できた。
各条件における粉粒体熱容量とガス熱量の比(粉粒体熱容量/ガス熱量)(MJ/(K・min))/(MJ/min)の値と、炉内への着熱効率指数等の試験結果を、表1にそれぞれ示す。
比較例2、すなわち必要な炭材分および石灰分について塊状の炭材および石灰を炉上投入し、粉粒体なしで炉内メタルをバーナー加熱した場合、着熱効率は比較例1の場合とほぼ同じであった。バーナー使用により炉内二次燃焼率は増加しているが、粉粒体を供給しない場合、着熱効率は低位である。
比較例3、すなわち粉状の炭材を、供給速度:1000kg/minでバーナー加熱添加し、塊状の石灰を炉上から供給した場合も、比較例1および比較例2と比較して着熱効率はほぼ同等であった。ここで、特筆すべきは、炉内二次燃焼率が比較例1と比較して低位、すなわちC02発生量が少なく、CO発生量が多いという点である。これは、パイロット試験結果から推測されるバーナー火炎中の炭材温度が1500℃であったため、前掲(1)式での反応が発生し、バーナーの見かけ発熱量が低下し、炉内への着熱効率が低下したからと考えられる。
炭材温度が低位となったことで、前掲(1)式の反応が抑制され、プロパンが完全燃焼し、かつ、伝熱媒体である炭材への着熱により、炉内への着熱効率が向上したものと考えられる。なお、比較例1〜3と比較して、昇熱期における炭材投入量は過多であるが、過剰分の炭材量に相当する量だけ、昇熱期に引き続き実施される溶融還元期において炭材吹込み速度を減じている。
比較例4、すなわち炭材吹込み速度が低位の場合、バーナー火炎中の粉粒体温度が高位であり、かつ炉内二次燃焼率が低位となったため、先に述べた理由により、着熱効率は比較例1とほぼ同等となった。
参考のため、バーナー火炎中で反応をしない粉体(石灰等)を用いた場合の炉内への着熱挙動を比較した例を示す。
スクラップ:50tと十分に予備処理をされた溶銑:80tとを、転炉に装入し、クロム鉱石の溶融還元吹錬を実施した。
上吹きランスからは送酸速度:450Nm3/minで、底吹き羽口から120Nm3/minで酸素を供給した。上吹きランスとは別に、粉粒体供給ランスからプロパン20Nm3/minおよび酸素100Nm3/minを供給し、バーナー火炎を形成した。吹錬開始後、各水準とも昇熱用の炭材および造滓のための石灰を投入したが、これらは、以下に示す方法で投入した。
前記実施例1および2は、バーナー燃料としてプロパンを用いた場合であるが、単位流量あたりの発熱量が異なるガスとして、メタンを用いた場合の実施例を示す。
スクラップ:50tと十分に予備処理をされた溶銑:80tとを、転炉に装入し、クロム鉱石の溶融還元吹錬を実施した。
上吹きランスからは送酸速度:450Nm3/minで、底吹き羽口から120Nm3/minで酸素を供給した。吹錬開始後、各水準とも昇熱用の炭材および造滓のための石灰を投入したが、これらは、以下に示す方法で投入した。
一方、(粉粒体熱容量/ガス熱量)が0.0009(MJ/K/min)/(MJ/min)以上の条件(発明例5〜7)では、炉内二次燃焼率が高位、すなわちバーナー火炎中での炭材の反応が抑制されて、炉内への着熱効率が増加し、昇熱時間の短縮効果が認められた。
Claims (6)
- 転炉型製錬炉内に保持された溶鉄に、上吹きまたは上底吹き吹錬を行うに当たり、酸化性ガスを上吹きする上吹きランスの先端部または上吹きランスとは別に設置したランスの先端部に、燃料および助燃ガスを噴出させる噴射孔を有するバーナーを設け、該バーナーにより形成される火炎の中を通過するように、下記に示す粉粒体を吹込むものとし、その際、
上記粉粒体の吹込み速度を調整して、バーナー火炎中での上記粉粒体中の炭材の温度を800℃以下とすることを特徴とする溶鉄の昇熱方法。
記
ここに、粉粒体は、(ア)粉粒状の炭材、もしくは(イ)粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質からなるものとする。 - 前記燃料の単位時間当たりの発熱量:A(MJ/min)と、前記粉粒体の比熱(MJ/kg・K)と吹込速度(kg/min)との積:B(MJ/min・K)との比(B/A)が0.0009((J/min)/(J/K/min))以上の範囲を満足することを特徴とする請求項1に記載の溶鉄の昇熱方法。
- 前記比(B/A)が0.00101((J/min)/(J/K/min))以上の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の溶鉄の昇熱方法。
- 前記粉粒体が粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質からなる場合において、予め粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質を混合して混合物とし、該混合物をバーナー火炎中に吹込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶鉄の昇熱方法。
- 前記粉粒体が粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質からなる場合において、粉粒状の炭材と炭材以外の粉粒状物質を別々の供給系統から供給して、バーナー火炎中に、同時に吹込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶鉄の昇熱方法。
- 前記炭材以外の粉粒状物質として、石灰または珪石を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶鉄の昇熱方法。
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