JP7416043B2 - 溶鉄の精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶鉄の精錬方法に関する。より詳しくは、溶鉄の精錬における熱付与技術に関し、特に溶鉄の脱燐に際し熱付与によって副原料の滓化を促進する溶鉄の精錬方法に関する。
近年、製鉄業における冷鉄源(スクラップ)の使用拡大の需要が高まっている。循環型社会の構築のために、鉄源リサイクルは必要不可避であるうえ、昨今のCOガス排出量削減の需要からも冷鉄源(スクラップ)の使用量を増大させることは不可欠である。冷鉄源(スクラップ)は、酸化鉄(Fe)である鉄鉱石と異なり、溶製プロセスに還元工程を要さないためCOガス排出量の低減が可能であり、高炉-転炉法においても冷鉄源(スクラップ)の使用量は増加の一途をたどっている。
高炉-転炉法は、原料である鉄鉱石(Fe)を還元剤であるコークス(C源)とともに高炉へ装入し、C濃度が4.5~5.0質量%程度の溶銑を溶製し、溶製した溶銑を転炉に装入して不純物成分である炭素(C)、ケイ素(Si)、リン(P)を酸化除去する鋼を製造するプロセスである。高炉での溶銑製造時には鉄鉱石の還元などのために溶銑1tあたり、500kg程度の炭素源を必要とする。一方、鉄スクラップなどの冷鉄源を転炉での原料として鋼を製造する場合には、鉄鉱石の還元に必要とされる炭素源が不要となる。その際、冷鉄源を溶解するために必要なエネルギーを考慮しても、1tの溶銑を1tの冷鉄源に置き換えることで、約1.5tのCOガス発生量の低減につながる。上記のことから、温室効果ガスの排出量の削減と生産活動の維持の両立のためには冷鉄源(スクラップ)の使用量を増やしていくことが必要不可欠である。すなわち、溶鉄を用いた転炉製鋼方法において、冷鉄源の配合比率を増加させることがCOガス発生量低減につながる。ここで、溶鉄とは、溶銑および溶融した冷鉄源をいう。
一方、冷鉄源(スクラップ)の使用量を増加させるためには、冷鉄源(スクラップ)の溶解に必要な熱量を供給する必要がある。すなわち、冷鉄源(スクラップ)不使用時に比べ、冷鉄源(スクラップ)使用時は、冷鉄源(スクラップ)顕熱相当の熱が溶銑から奪われるため、その分の熱補償が必要となる。通常は溶銑中に不純物元素として含有されている炭素や珪素の酸化反応熱で冷鉄源の溶解熱補償を行うが、冷鉄源の配合率が増加した場合には、溶銑中に含有されている炭素や珪素分だけでは熱量不足となる。既知の熱補償技術としては、炭材またはフェロシリコンやシリコンカーバイド等熱源となる昇熱材の投入が知られている。しかしながら、炭材は、そのうちに含まれる硫黄等不純物成分がピックアップされ、溶鉄の成分に悪影響を及ぼすため使用し得る量に限りがある。また、フェロシリコンやシリコンカーバイドなどのシリコンを含む昇熱材は、スラグの塩基度を担保するため、石灰を同時に投入する必要があり、石灰の使用量が増える。すなわち、フェロシリコンやシリコンカーバイドなどのシリコンを含む昇熱材を使用することは、スラグ発生量の増加を伴うのでスラグ処理コストがかさむ等のデメリットが生じる。以上から、硫黄等不純物成分のピックアップが少なく、かつ低コストである熱補償技術が必要とされている。
上記熱補償技術について、特許文献1では精錬剤をキャリアガスによって搬送しバーナーによる燃焼バーナー火炎中を通過させて加熱し精錬用酸素ガスとともに溶鉄浴面に吹き付けて添加する技術が提供されている。本技術によれば、バーナー火炎の熱を粉体に伝熱し、予熱粉体を直接溶湯に侵入させることで熱の利用効率が向上することが可能であると提案されている。特に、可燃性物質を含む精錬剤を使用することで、可燃性物質の燃焼熱が溶鉄の加熱に寄与する。
また、特許文献2では上記バーナー技術に関して、精錬用のランスとは別系統のバーナー機能を有するランスを使用し、ランス中心から熱源兼伝熱媒体として微粉炭を自由落下させ火炎中で予熱し熱補償を行う技術が提案されている。
ところで、近年の高級鋼需要増加に伴い、鋼材にとって有害成分と考えられているリン(P)を、製銑・製鋼工程において低減させる脱りん処理が一般的に行われている。その脱りん処理としては、溶銑中あるいは溶鋼中のリンを、酸素ガスや酸化鉄などの酸素源によって酸化させてPとし、その後、このPを、CaOを主成分とするスラグ中に移行させることによって除去する方法がある。通常、CaO源の供給は、固体の生石灰等を炉内に添加して行なうが、溶鉄の脱りん反応を促進するためには添加されたCaO源が速やかに液相スラグを生成する(滓化する)ことが肝要となる。
このような観点から、特許文献3には、蛍石等のハロゲン化物を使わずにスラグの溶融性を向上させて溶銑の脱りんを行なう脱りん処理方法が提案されている。この溶銑の脱りん方法は、脱りん吹錬終了後のスラグ塩基度(CaO質量濃度とSiO2質量濃度の比)を1.8以上2.6以下となるように、カルシウムフェライトを含む精錬剤を少なくとも一部に使用する。
特許文献4には、酸化性ガスを鉄浴型精錬炉内に供給する上吹きランスと、上吹きランスとは別に設けられ粉粒状の副原料を鉄浴型精錬炉内に装入する粉体装入ランスとを設置し、粉体装入ランスの先端に、粉粒状の副原料を噴射する粉粒体噴射ノズルと、燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、燃焼用の酸素ガスを噴射する酸素ガス噴射ノズルとを有するバーナノズルを設け、該バーナノズルから発生する火炎の中を通過するように前記粉粒状の副原料を前記鉄浴型精錬炉内に装入して脱燐を行う技術が開示されている。ここで、粉粒体の副原料は、酸化鉄、媒溶材、炭素含有物質の内いずれか1種類、または2種類以上の粉粒体であるとされている。
特開2013-47373号公報 特開2007-92158号公報 特開2010-01536号公報 特開2013-47371号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。特許文献1には、着熱効率の向上に有効に寄与するための精錬剤に含まれる可燃性物質の発熱量の上限について何ら言及されていない。すなわち、特許文献1には、精錬剤として可燃性物質を含有するものを使用した場合には、可燃性物質が火炎により燃焼し、可燃性物質の燃焼熱が溶鉄の加熱に寄与することだけが記載されているに過ぎない。加えて、特許文献1に記載された溶鉄の精錬方法は、溶鉄への着熱効率を向上させるという観点から、精錬剤に含まれる可燃性物質と燃料の流量の適切な関係については言及していない。
また、特許文献2に示すような伝熱媒体を自由落下させるタイプの自由型ランスにおいて、そのランス高さを大きくすると、転炉内では送酸ランスから浴面へ吹き込まれるガスの反射や、溶銑から発生するCOガス、または撹拌のために転炉炉底から吹き込む底吹きガスなどの種々の高温ガスが炉口から転炉外へ抜け出る流れが発生する。このため、伝熱媒体が飛散し、溶銑への侵入歩留まりが悪化するという課題がある。
また、特許文献3に示すようなカルシウムフェライトを含む精錬剤を使用するには、事前にカルシウムフェライトの合成・破砕・分級などの工程が発生し、溶鉄を精錬するためのコストが増大するという課題がある。
さらに、特許文献4では、脱燐を行うために鉄浴型精錬炉内に装入される粉粒状の副原料の一種類として炭素含有物質が挙げられている。しかしながら、特許文献4には、炭素含有物質を用いた場合において、鉄浴型精錬炉の具体的な操業条件について記載されていない。特に、炭素含有物質はバーナノズルから発生する火炎の中を通過する際、燃焼すると考えられるが、特許文献4には、この影響については何ら触れられていない。すなわち、特許文献4に記載された脱燐による溶鉄の精錬方法において、添加する種々の粉粒体が溶鉄への着熱効率に与える影響、ひいては溶銑配合率の低減効果に及ぼす影響が精緻に検討されていない。ましてや、後述する本願の課題である脱りん反応を促進するために必要となる溶鉄の精錬方法に関する適切な処理条件については何ら提案されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高い冷鉄源比率の条件でも冷鉄源の熱補償を行うことができ、特に、溶鉄浴面のCaO源と添加した精錬剤が効率的に液相スラグを生成し、溶鉄の脱りん反応を促進する溶鉄の精錬方法を提案することを目的としている。
上記課題を有利に解決する本発明にかかる溶鉄の精錬方法は、溶銑を装入した転炉型容器内に粉状精錬剤を添加するとともに上吹きランスより酸化性ガスを供給して溶鉄を精錬する方法であって、前記上吹きランスの先端部または該ランスとは別に設置した他のランスの先端部に、燃料、支燃性ガスおよび前記粉状精錬剤を噴出させる噴射孔を有するバーナーを設け、前記粉状精錬剤は、CaO源と、酸化鉄および可燃性物質のいずれか一方または両方とを含み、前記バーナーにより形成されるバーナー火炎の中を通過して添加されることを特徴とするものである。
なお、本発明にかかる溶鉄の精錬方法は、
(1)前記噴射孔を有するバーナーが前記他のランスの先端部に設けられており、前記他のランスは、少なくとも1本以上設けられた昇降可能なバーナーランスであること、
(2)前記燃料の流量、および前記支燃性ガスの流量のいずれか一方または両方を、前記可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めること、
(3)前記支燃性ガスの流量を、前記可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めること、
(4)前記燃料の流量を前記可燃性物質の酸化または燃焼による前記粉状精錬剤の質量の変化を考慮して算出すること、
(5)前記燃料の流量と前記粉状精錬剤の供給速度が下記数式1の一般式を満たすこと、
ただし、式中、C:定数(kg/MJ)、
total:前記粉状精錬剤の供給速度 (kg/min)、
combustible:前記粉状精錬剤に含まれる可燃性物質の供給速度(kg/min)、
η:可燃性物質に含まれる炭素の質量分率(-)、
η:可燃性物質に含まれる炭素以外の可燃成分iの質量分率(-)、
ΔWoxygen,i:可燃成分iが完全燃焼する際に反応する酸素質量(kg/mol)、
:可燃成分iの物質量(kg/mol)、
fuel:燃料の供給流量(Nm/min)、
fuel:燃料の燃焼により生成する熱量(MJ/Nm)、
combustible:可燃性物質の燃焼により生成する熱量(MJ/kg)である、
(6)前記定数Cを、使用する前記燃料の種類により決定すること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
Figure 0007416043000001
本発明によれば、高い冷鉄源比率の条件でも冷鉄源の熱補償を行うことができ、特に、粉状精錬剤に鉄分が含有されている場合、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し、溶鉄の脱りん反応を促進することができる。
本発明の実施形態に用いる転炉の概要を示す縦断面模式図である。 本発明の一実施形態にかかるバーナーの概略図であって、(a)はランス先端の縦断面図を示し、(b)は噴出孔の下方から眺めた下面図を示す。 指標Aと着熱効率との関係を示したグラフである(粉状精錬剤:生石灰粉、燃料ガス:LPG、LNG)。 指標Aと着熱効率との関係を示したグラフである(粉状精錬剤:生石灰粉/酸化鉄、燃料ガス:LPG、LNG)。 指標Aと着熱効率との関係を示したグラフである(粉状精錬剤:生石灰粉/BDCダスト、燃料ガス:LPG)。 指標Aと着熱効率との関係を示したグラフである(粉状精錬剤:生石灰粉/OGダスト、燃料ガス:LPG)。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の溶鉄の精錬方法に用いる上底吹き機能を有する転炉型容器1の概略縦断面図である。図2は、粉体供給機能を有するバーナーの構造を示すランス先端の概略図であって、図2(a)は縦断面図を表し、図2(b)は、A-A視断面図である。
たとえば、上底吹き機能を有する上吹きランス2と上吹きランスとは別系統のバーナーランス5を有する転炉型容器1に、まず、図示しないスクラップシュートより、炉内前置き用の冷鉄源としての鉄スクラップを転炉型容器1内に装入する。その後、図示しない装入鍋を用いて転炉型容器1内に溶銑を装入する。
溶銑装入後、酸化性ガスを上吹きするように構成された上吹きランス2から酸素ガス(酸化性ガス)を溶鉄3に向けて上吹きする。炉底に設置された底吹き羽口4から、撹拌ガスとしてN等の不活性ガスを供給し、溶鉄3を攪拌する。そして、昇熱剤や造滓材等の副原料を添加し、転炉型容器1内の溶鉄3を脱燐処理する。この際、生石灰粉など粉状精錬剤15を、酸化性ガスを上吹きする上吹きランス2に設けられた粉体供給管11または上吹きランス2とは別に設置したバーナーランス5に設けられた粉体供給管11からキャリアガスを用いて供給する。
図2に上吹きランス2とは別にバーナーランス5を設ける場合について、バーナーランス5の先端部を概略図で示す。中心に噴射孔を有する粉体供給管11を配置し、その周囲に噴射孔を有する燃料供給管12および支燃性ガス供給管13を順に配置する。その外側は冷却水通路14を有する外殻を備える。粉体供給管11の外周部に設けられた噴射孔から、燃料ガス16と支燃性ガス17を供給してバーナー火炎を形成する。そして、粉状精錬剤15は該バーナー火炎中で加熱される。粉状精錬剤15は、バーナーランス5により形成されるバーナー火炎の中を通過し溶鉄に添加される。そうすることで、粉状精錬剤15がバーナー火炎の熱を溶鉄に伝達するための伝熱媒体となるため、溶鉄中への着熱効率を向上させることが可能となる。その結果、炭素源や珪素源のような昇熱剤の使用量を低減でき、脱燐処理時間の延長を抑止することが可能となる。
粉状精錬剤15は、CaO源と、酸化鉄および可燃性物質のいずれか一方または両方と、を含む。すなわち、粉状精錬剤15は、(i)CaO源と、酸化鉄とを含んでいてもよいし、(ii)CaO源と、可燃性物質とを含んでいてもよいし、(iii)CaO源と、酸化鉄および可燃性物質とを含んでいてもよい。ここで、CaO源とは、酸化カルシウム(CaO)を含む材料、又は、加熱等の処理により酸化カルシウム(CaO)を生成する材料を意味する。具体的にCaO源としては、生石灰粉や石灰石粉等を例示することができる。酸化鉄および可燃性物質のいずれか一方または両方を含む物質としては、鉄鋼製造プロセスの一部である転炉脱炭工程で発生するダストであり、鉄や炭素をその成分として含有するOGダスト、BDCダスト等を例示することができる。ここで、上吹きランス2から供給される酸化性ガスとして、純酸素のほか、酸素とCOや不活性ガスとの混合ガスが適用できる。また、供給する燃料としては、LNGやLPGなどの燃料ガス、重油などの液体燃料、コークス粉などの固体燃料が適用できるが、CO排出量削減の観点からは、炭素源の少ない燃料が好ましい。支燃性ガスとしては、空気や酸素富化空気、酸化性ガスが適用できる。
精錬剤に酸化鉄が含まれる場合には、この酸化鉄が加熱された状態で酸素源として機能するため、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し、溶鉄の脱りん反応を促進することができる。さらに、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、精錬剤に可燃性物質が含まれる場合、この可燃性物質の燃焼熱が溶鉄の加熱に寄与するため、溶鉄の熱補償を行うことが出来る。可燃性物質中の可燃成分としては、未酸化の金属や金属の低級酸化物、または炭材が例示される。未酸化の金属や金属の低級酸化物としては、鉄、シリコン、マンガン、アルミニウム等の金属やFeOやMnOなどの低級酸化物を例示することができる。特に、可燃性物質中の可燃成分である未酸化の金属に金属鉄が含有されている場合、上記酸化鉄と同様に、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し、溶鉄の脱りん反応を促進することが出来る。
以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、可燃性物質を含む粉状精錬剤がバーナー火炎によって加熱され、伝熱媒体となってバーナー火炎の熱を転炉内の溶鉄に伝熱させることが可能である。その結果、溶鉄への着熱効率が向上して、昇熱剤として投入する炭素源や珪素源の量が少なくて済み、脱燐処理時間の大幅な延長や、スラグ発生量の増大を抑制することが可能となる。さらに、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、粉状精錬剤に可燃性物質が含まれる場合、この可燃性物質の燃焼熱が溶鉄の加熱に寄与するため、溶鉄の熱補償を行うことが出来る。
[第2実施形態]
第2実施形態の溶鉄の精錬方法は、上記実施形態において、上記噴射孔を有するバーナーが上記他のランスの先端部に設けられており、上記他のランスは、少なくとも1本以上設けられた昇降可能なバーナーランスであることを特徴とする。すなわち、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、上吹きランスと上吹きランスとは別系統のランスとして、少なくとも1本以上のバーナーランスを用いる。バーナーランスは、転炉型容器内に少なくとも1本以上設けられていることが必要であり、溶鉄への熱補償の観点から複数設けられていてもよい。複数のバーナーランスを採用した場合、その形態は同一であっても、異なるものであってもよい。
バーナーランスは、溶銑を装入した転炉型容器内において昇降可能である。このため、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、熱補償に適するランス高さに応じて、溶鉄浴面からバーナーランスの先端部までの距離であるバーナーランス高さを自由自在に変更し、調整することができる。なお、バーナーランスの昇降は、熱補償に適するランス高さを設定する設定部と、転炉型容器の外部に設けられ、バーナーランスを設定されたバーナーランス高さに位置するための駆動部とを設けることにより行うことができる。ここで、バーナーランス高さは、炉体の寸法等に合わせ適宜定めればよいが、転炉型容器に添加される粉状精錬剤の種類、キャリアガス流量及びバーナーランスにより形成されるバーナー火炎の長さを考慮して粉状精錬剤が加熱されるだけの火炎内滞留時間を確保するように定めるとよい。
このように、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、上記噴射孔を有するバーナーが上記他のランスの先端部に設けられ、上記他のランスを少なくとも1本以上設けられた昇降可能なバーナーランスとすることにより、送酸用ランスである上吹きランスとバーナーランスとをそれぞれ独立に昇降できるので、溶鉄の精錬に適する溶鉄浴面からノズル先端までの距離(ランス高さ)と、熱補償に適するバーナーランス高さとを両立することができる。以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、溶鉄の熱補償を行い溶鉄への着熱効率を向上させることができる。さらに、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し滓化を促進させて、溶鉄の脱りん反応効率を向上させることができる。
[第3実施形態]
さらに、本発明の第3実施形態の溶鉄の精錬方法は、上記実施形態において、燃料の流量、および支燃性ガスの流量のいずれか一方または両方を可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めることができる。すなわち、発明者らは、燃料の流量、および燃料の流量に対応した支燃性のガス流量に加え、粉状精錬剤に含まれる可燃性物質を酸化または燃焼させるのに必要となる燃料の流量、および支燃性ガスの流量を供給することで、可燃性物質が酸化または燃焼する際のエネルギーを有効に活用できることを見出した。
また、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、上記実施形態において、支燃性ガスの流量を、燃料を燃焼させるために必要な支燃性ガスの流量と粉状精錬剤に含まれる可燃性物質を酸化又は燃焼させるのに必要な流量とを考慮して定めてもよい。すなわち、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、燃料を燃焼させるために必要な支燃性ガスの流量に、粉状精錬剤に含まれる可燃性物質を酸化又は燃焼させるために必要な支燃性ガスの流量を追加して算出されるガス流量を支燃性ガスの流量として定めている点に技術的特徴を有する。
粉状精錬剤に含まれる可燃性物質は、酸化または燃焼することにより熱エネルギーを発生する。転炉型容器内において、可燃性物質から発生した熱エネルギーをバーナー火炎の形成、溶鉄の熱補償、溶鉄への着熱効率の向上に有効に活用することができる。すなわち、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、可燃性物質から発生した熱エネルギーを有効に活用することにより、燃料の流量を低減するとともに、必要な支燃性ガスの流量を過不足なく供給することができる。つまり、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、粉状精錬剤に含まれる可燃性物質から発生する熱エネルギーを考慮して、溶鉄の精錬に必要な燃料の流量および支燃性ガスの流量を決定することができる。可燃性物質から発生する熱エネルギーは、可燃性物質の添加量と、単位質量当たりの可燃性物質の燃焼熱とに基づいて算出することができる。
このように、本実施形態の溶鉄の精錬方法は、燃料の流量および支燃性ガスの流量のいずれか一方または両方を可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めることにより、可燃性物質から発生した熱エネルギーを有効に活用することができ、溶鉄の熱余裕が更に向上し、溶鉄の熱補償を効率的に行うことが出来る。
以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、可燃性物質が酸化または燃焼する際のエネルギーを有効に活用し、溶鉄の熱補償を行い溶鉄への着熱効率を向上させることができる。さらに、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し滓化を促進させて、溶鉄の脱りん反応効率を向上させることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態の溶鉄の精錬方法は、上記実施形態において、燃料の流量を可燃性物質の酸化または燃焼による粉状精錬剤の質量の変化を考慮して定めることを特徴とする。すなわち、発明者らは、転炉型容器を用い、粉状精錬剤に酸化鉄や可燃性物質を各種混合し、燃料種や燃料の流量を種々変更して粉状精錬剤のバーナー加熱実験を実施した結果、下記数式2に示す粉体燃料比としての指標Aが着熱効率を向上させる重要な因子であることを見出した。
Figure 0007416043000002
式中、
total:前記粉状精錬剤の供給速度(kg/min)、
combustible:前記粉状精錬剤に含まれる可燃性物質の供給速度(kg/min)、
η:可燃性物質に含まれる炭素の質量分率(-)、
η:可燃性物質に含まれる炭素以外の可燃成分iの質量分率(-)、
ΔWoxygen,i:可燃成分iが完全燃焼する際に反応する酸素質量(kg/mol)、
:可燃成分iの物質量(kg/mol)、
fuel:燃料の供給流量(Nm/min)、
fuel:燃料の燃焼により生成する熱量(MJ/Nm)、
combustible:可燃性物質の燃焼により生成する熱量(MJ/kg)である。
数式2の右辺の値(以降、指標Aと定義する)は、可燃性物質の酸化または燃焼に伴う重量変化を考慮した供給される粉状精錬剤の質量(式(1)の左辺の分子に相当)と、燃料および粉状精錬剤に含まれる可燃性物質の発熱量の合計(式(1)の左辺の分母に相当)との比を表す。なお、可燃性物質中、バーナーの火炎温度範囲で気体となる酸化物を形成する元素の成分分率はηに含めて扱い、その温度範囲で液体または固体となる酸化物を形成する元素の成分分率をηとして扱う。
指標Aが大きい場合、燃料および粉状精錬剤に含まれる可燃性物質の合計発熱量に対して伝熱媒体となる粉状精錬剤の質量が多いことを表わす。指標Aの値をある程度より大きくすれば、粉体を介して浴に効率よくバーナー火炎の熱が伝わる結果、着熱効率が向上するとともに、粉状精錬剤の滓化が促進され、脱りん反応効率の向上をもたらす。
ただし、燃料の種類が変わると発熱量および燃焼後に生じるガスの物質量が変化するため、形成されるバーナー火炎の温度が変化する。このため、着熱効率および脱りん反応効率に対する指標Aの関係は燃料の種類により異なる。
バーナーから供給される粉状精錬剤に酸化鉄が含まれる場合、酸化鉄は生石灰よりも放射率が高い。このため、バーナー火炎からの輻射熱による着熱量が増加し、溶鉄への着熱効率が向上する。また、バーナー火炎内で粉状精錬剤に含まれる石灰分と酸化鉄分とが高温となることで、融点の低いカルシウムフェライトを生成し、溶鉄浴面に供給された時点で滓化が進行するため、脱りん反応効率が向上する。
バーナーから供給される粉状精錬剤に可燃性物質が含まれる場合、該可燃性物質が燃焼することによる発熱量と質量変化が指標Aに影響する。可燃性物質の割合が増加すると、燃料との合計発熱量が増加する。また、可燃性物質の燃焼に伴い質量変化が生じると、伝熱媒体として寄与する質量が変化し、着熱効率および脱りん反応効率が変化する。ここで、可燃性物質の燃焼に必要な酸素量を考慮しなければ、燃料または可燃性物質の一部が不完全燃焼となり、着熱に寄与しない部分が生じる。このため、粉状精錬剤に可燃性物質が含まれる場合には、該可燃性物質を燃焼するのに必要な酸素量を考慮することが望ましい。
このように、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、可燃性物質の酸化または燃焼が充分に進行するので、これにより溶鉄の熱余裕が更に向上し、溶鉄の熱補償を効率的に行うことが出来る。特に、可燃性物質に鉄分が含有されている場合、溶鉄の脱りん反応の促進効果増大が可能となる。
以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、指標Aを定義し、燃料の流量を可燃性物質の酸化または燃焼による粉状精錬剤の質量の変化を考慮して算出することにより、溶鉄の熱補償を行い溶鉄への着熱効率を向上させることができる。さらに、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し滓化を促進させて、溶鉄の脱りん反応効率を向上させることができる。
[第5実施形態]
第5実施形態の溶鉄の精錬方法は、上記実施形態において、燃料の流量と粉状精錬剤の供給速度が下記数式3の一般式を満たすことを特徴とする。すなわち、発明者らは、燃料流量と粉状精錬剤の供給量から求めた粉体燃料比である指標Aを下記一般式に従い、所定範囲に制御することにより、燃料および可燃性物質の発熱量に対する伝熱媒体である粉状精錬剤の量を適正とすることができ、溶鉄への着熱効率を向上させることを見出した。
Figure 0007416043000003
ここで、上記一般式において、
:定数(kg/MJ)
である。
発明者らは、転炉での試験において燃料流量や粉状精錬剤の供給量、可燃性物質の混合割合、ランス高さを種々変更して粉状精錬剤のバーナー加熱試験を実施した。その結果、以下のことを明らかにした。粉状精錬剤のバーナー加熱試験に用いた溶鉄温度および溶鉄の化学組成を表1に示す。また、可燃性物質としてBDCダストおよびOGダストを使用し、それぞれの組成を表2に示す。BDCダストおよびOGダスト中の可燃成分は、金属鉄(表2中の「M.Fe」)および炭素分(表2中の「炭素(C)」)である。M.Fe以外の鉄分(T.Fe-M.Fe)は、酸化鉄である。
Figure 0007416043000004
Figure 0007416043000005
300t転炉型容器に溶銑と冷鉄源とを装入し、供給する粉状精錬剤として、生石灰粉を500kg/minで供給した。燃料ガスとしてLPGまたはLNGを供給し、その流量を変更することにより、上記指標Aを変更した際の着熱効率への影響を図3に示す。なお、着熱効率(%)は、燃料ガスの燃焼による入熱量(MJ)に対する溶鉄温度の変化から計算した着熱量(MJ)の百分率(%)で表す。
図3に示されるように、指標Aが増加すると着熱効率は向上した。燃料ガスとして、LPGを使用した場合は、指標Aが0.3kg/MJ以上で着熱効率が80%となり、ほぼ一定となった。一方、燃料ガスとして、LNGを使用した場合は、指標Aが0.4kg/MJ以上で着熱効率が80%となり、ほぼ一定となった。このように指標Aと着熱効率との関係を考慮すると、使用する燃料に応じて、上記数式3の一般式を満たすことが好ましい。
次に、生石灰粉と酸化鉄とを4:1で混合した副原料を粉状精錬剤として500kg/minで供給した。燃料ガスとしてLPGを供給し、その流量を変更することにより、指標Aを変更した際の着熱効率への影響を図4に示す。
図4に示されるように、指標Aが増加すると着熱効率は向上した。燃料ガスとして、LPGを使用した場合は、指標Aが0.3kg/MJ以上で着熱効率が80%以上となり、ほぼ一定となった。また、粉状精錬剤が酸化鉄を含んでいる場合の方が酸化鉄を含んでいない場合に比較して、溶鉄への着熱効率が若干高位であることが判明した。
さらに、生石灰粉とBDCダストとを4:1、又は3:2で混合した副原料を粉状精錬剤として500kg/minで供給した。燃料ガスとしてLPGを供給し、その流量を変更することにより、指標Aを変更した際の着熱効率への影響を図5に示す。ここで、供給するBDCダスト中のM .Fe及び炭素(C)成分が完全燃焼するのに必要な酸素量は、上記表1より算出し、燃料燃焼用の酸素ガスに追加する実験を比較で行った。
図5に示されるように、生石灰粉に対するBDCダストの混合割合に依らず指標Aが増加すると着熱効率は向上し、0.3kg/MJ以上で着熱効率が80%で一定となった。また、BDCダストの燃焼に必要な酸素量を考慮した場合の方が必要な酸素量を考慮しない場合に比較して着熱効率が高位であることが判明した。
また、生石灰粉とOGダストとを4:1、又は3:2で混合した副原料を粉状精錬剤として500kg/minで供給した。燃料ガスとしてLPGを供給し、その流量を変更することにより、指標Aを変更した際の着熱効率への影響を図6に示す。ここで、供給するOGダスト中のM .Fe及び炭素(C)成分が完全燃焼するのに必要な酸素量は、上記と同様に表1より求め、燃料燃焼用の酸素ガスに追加する実験を比較で行った。
図6に示されるように、生石灰粉に対するOGダストの混合割合に依らず指標Aが増加すると着熱効率は向上し、0.3kg/MJ以上で着熱効率が80%以上で一定となった。また、OGダストの燃焼に必要な酸素量を考慮した場合の方が必要な酸素量を考慮しない場合に比較して着熱効率が高位であることが判明した。
以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、燃料流量と粉状精錬剤の供給量から算出される指標Aを数式3に記載の範囲とすることで、燃料および可燃性物質の発熱量に対する伝熱媒体である粉状精錬剤の量をより適正なものとすることができ、溶鉄への着熱効率を向上させることができる。
[第6実施形態]
第6実施形態の溶鉄の精錬方法は、前記定数Cを、使用する前記燃料の種類により決定することを特徴とする。使用する燃料の種類が変わると、その発熱量および燃焼後に生じるガスの物質量が変化する。このため、バーナーにより形成されるバーナー火炎の温度が変化するため、指標Aの値は上述したように燃料の種類によって異なる(図3)。
以上、本実施形態の溶鉄の精錬方法によれば、燃料種に応じて前記数式3の定数Cを決定することにより、さらに高い着熱効率を得ることができる燃料流量と粉状精錬剤の供給量を求めることが出来る。
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステム、または装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
本発明者らは本発明の効果を確認するため、発明例として(試験No.1~10)、プロパンガスでバーナー火炎を形成したランスから生石灰と酸化鉄の混合粉を供給する製鋼工程における脱りん処理および脱炭処理を行った。試験No.1および6は上吹きランスの先端部にバーナーを有するランス、試験No.2~5、No.7~10は上吹きランスと別に設置した、先端部にバーナーを有する他のランスにて火炎を形成して処理を行った。各処理における溶鉄の温度および化学組成は上記表1に示した通りである。
比較例の一つとして(試験No.11、14)、本発明における火炎を形成可能なランスではなく、酸化性ガスを供給する上吹きランスから生石灰と酸化鉄の混合粉を供給した処理を行った。別の比較例として(試験No.12,13,15,16)、本発明におけるランスを用いてバーナー火炎を形成するが、バーナー火炎内に粉状精錬剤を通過させない処理を行った。すなわち、試験No.11~16のいずれも粉状精錬剤はバーナー火炎内を通過していない。発明例、比較例とも、生石灰の供給量は、脱りん処理では炉内の計算スラグ塩基度(質量%CaOと質量%SiOの比)が2.5となる様に、脱炭処理では炉内の計算スラグ塩基度が3.5となる様に調整した。実施例1の各試験において、実施した条件、かかる条件下で算出した指標Aの値、得られた着熱効率、ΔP濃度を表3に示す。ここで、着熱効率(%)は、燃料ガスの燃焼による入熱量(MJ)に対する溶鉄温度の変化から計算した着熱量(MJ)の百分率(%)で表す。また、ΔP濃度は処理前後の溶鉄中りん濃度の差分(質量%)である。
Figure 0007416043000006
表3から明らかな様に、脱りん処理における発明例(試験No.1~5)において、比較例(試験No.11~13)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、脱炭処理における発明例(試験No.6~10)においても、比較例(試験No.14~16)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。すなわち、脱りん処理、脱炭処理のいずれにおいても、上吹きランスあるいは他ランスのいずれかにバーナーを有し、バーナー火炎内に酸化鉄を含有する粉状精錬剤を通過させることで、バーナー火炎のエネルギーを粉状精錬剤に伝熱させ、着熱効率向上および滓化促進による精錬能向上が可能となる。
また、上吹きランス又は他のランスのいずれかにバーナーを設け、ランスの高さを調整することにより高い着熱効率と高いΔP濃度を得ることができる。
(実施例2)
実施例1と同様に、発明例として(試験No.17~44)プロパンガスでバーナー火炎を形成したランスから生石灰と酸化鉄の混合粉を供給する製鋼工程における脱りん処理および脱炭処理を行った。各処理における溶鉄の温度および化学組成は、上記表1に示す通りである。
比較例(試験No.45~46)として、本発明におけるバーナー火炎を形成可能なランスではなく、酸化性ガスを供給する上吹きランスから生石灰と酸化鉄の混合粉を供給した処理を行った。すなわち、試験No.45~46のいずれも粉状精錬剤はバーナー火炎内を通過していない。発明例、比較例とも、生石灰の供給量は、脱りん処理では炉内の計算スラグ塩基度(質量%CaOと質量%SiOの比)が2.5となる様に、脱炭処理では炉内の計算スラグ塩基度が3.5となる様に調整した。実施した条件と得られた着熱効率、ΔP濃度を表4及び表5に示す。
Figure 0007416043000007
Figure 0007416043000008
表4及び表5より明らかな様に、脱りん処理における発明例(試験No.17~30)において、比較例(試験No.45)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.17~23と試験No.24~30を比較すると、酸化鉄の割合が大きい試験No.24~30において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。脱炭処理においても同様に、発明例(試験No.31~44)において、比較例(試験No.46)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.31~37と試験No.38~44を比較すると、酸化鉄の割合が大きい試験No.38~44において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。
(実施例3)
実施例1と同様に、発明例として(試験No.47~102)、プロパンガスでバーナー火炎を形成したランスから生石灰とBDCダストの混合粉を供給する製鋼工程における脱りん処理および脱炭処理を行った。各処理における溶鉄の温度および化学組成は上記表1に示す通りである。また、BDCダスト中の成分濃度は上記表2に示した通りである。
比較例として(試験No.103~104)、本発明における火炎を形成可能なランスではなく、酸化性ガスを供給する上吹きランスから生石灰とBDCダストの混合粉を供給した処理を行った。すなわち、試験No.103~104のいずれも粉状精錬剤はバーナー火炎内を通過していない。発明例、比較例とも、生石灰の供給量は、脱りん処理では炉内の計算スラグ塩基度(質量%CaOと質量%SiOの比)が2.5となる様に、脱炭処理では炉内の計算スラグ塩基度が3.5となる様に調整した。また、混合したBDCダスト中の可燃物質を完全燃焼させるのに必要な酸素を、バーナー燃焼用酸素に追加する処理も行った。実施した条件と得られた着熱効率、ΔP濃度を表6~9に示す。
Figure 0007416043000009
Figure 0007416043000010
Figure 0007416043000011
Figure 0007416043000012
表6~9より明らかな様に、脱りん処理における発明例(試験No.47~74)において、比較例(試験No.103)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.47~60と試験No.61~74を比較すると、BDCダストの割合が大きい試験No.61~74において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。また、試験No.47~53と試験No.54~60および試験No.61~67と試験No.68~74をそれぞれ比較すると、可燃性物質の酸化または燃焼に必要な支燃性ガス流量を追加した試験No.54~60および試験No.68~74において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。脱炭処理においても同様に、発明例(試験No.75~102)において、比較例(試験No.104)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.75~88と試験No.89~102を比較すると、BDCダストの割合が大きい試験No.89~102において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。また、試験No.75~81と試験No.82~88および試験No.89~95と試験No.96~102をそれぞれ比較すると、可燃性物質の酸化または燃焼に必要な支燃性ガス流量を追加した試験No.82~88および試験No.96~102において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。
(実施例4)
実施例1と同様に、発明例として(試験No.105~160)、プロパンガスでバーナー火炎を形成したランスから生石灰とOGダストの混合粉を供給する製鋼工程における脱りん処理および脱炭処理を行った。各処理における溶鉄の温度および化学組成は上記表1に示す通りである。比較例として(試験No.161~162)、本発明におけるバーナー火炎を形成可能なランスではなく、酸化性ガスを供給する上吹きランスから生石灰とOGダストの混合粉を供給した処理を行った。すなわち、試験No.161~162のいずれも粉状精錬剤はバーナー火炎内を通過していない。発明例、比較例とも、生石灰の供給量は、脱りん処理では炉内の計算スラグ塩基度(質量%CaOと質量%SiOの比)が2.5となる様に、脱炭処理では炉内の計算スラグ塩基度が3.5となる様に調整した。また、混合したOGダスト中の可燃物質を完全燃焼させるのに必要な酸素を、バーナー燃焼用酸素に追加する処理も行った。実施した条件と得られた着熱効率、ΔP濃度を表10~13に示す。
Figure 0007416043000013
Figure 0007416043000014
Figure 0007416043000015
Figure 0007416043000016
表10~13より明らかな様に、脱りん処理における発明例(試験No.105~132)、において、比較例(試験No.161)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.105~118と、試験No.119~132とを比較すると、OGダストの割合が大きい試験No.119~132において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。また、試験No.105~111と試験No.112~118および試験No.119~125と試験No.126~132をそれぞれ比較すると、可燃性物質の酸化または燃焼に必要な支燃性ガス流量を追加した試験No.112~118および試験No.126~132において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。脱炭処理においても同様に、発明例(試験No.133~160)において、比較例(試験No.162)よりも高い着熱効率と高いΔP濃度が得られた。また、試験No.133~146と試験No.147~160を比較すると、OGダストの割合が大きい試験No.147~160において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。また、試験No.133~139と試験No.140~146および試験No.147~153と試験No.154~160をそれぞれ比較すると、可燃性物質の酸化または燃焼に必要な支燃性ガス流量を追加した試験No.140~146および試験No.154~160において着熱効率、ΔP濃度とも高位であった。
本発明の溶鉄の精錬方法は、高い冷鉄源比率の条件でも冷鉄源の熱補償を行うことができ、特に、可燃性物質に鉄分が含有されている場合、溶鉄浴面のCaO源と効率的に液相スラグを生成し、溶鉄の脱りん反応を促進することができるので、産業上有用である。
1 転炉型容器
2 上吹きランス(酸化性ガス用)
3 溶鉄
4 底吹き羽口
5 バーナーランス(バーナー)
10 バーナーランス先端部(バーナー先端部)
11 粉体供給管(粉状精錬剤供給用)
12 燃料供給管
13 支燃性ガス供給管
14 冷却水通路
15 粉状精錬剤(粉体)
16 燃料
17 支燃性ガス
18 冷却水

Claims (6)

  1. 溶銑を装入した転炉型容器内に粉状精錬剤を添加するとともに上吹きランスより酸化性ガスを供給して溶鉄を精錬する方法であって、
    前記上吹きランスとは別に設置した他のランスの先端部に、燃料、支燃性ガスおよび前記粉状精錬剤を噴出させる噴射孔を有するバーナーを設け、
    前記噴射孔を有するバーナーが前記他のランスの先端部に設けられており、前記他のランスは、少なくとも1本以上設けられた昇降可能なバーナーランスであり、
    前記溶鉄の浴面から前記バーナーランスの先端部までの距離であるバーナーランス高さを前記粉状精錬剤の種類、キャリアガス流量及び前記バーナーランスにより形成されるバーナー火炎の長さを考慮して定め、
    前記粉状精錬剤は、CaO源と、酸化鉄および可燃性物質のいずれか一方または両方とを含み、前記バーナーにより形成される前記バーナー火炎の中を通過して添加される溶鉄の精錬方法。
  2. 前記燃料の流量、および前記支燃性ガスの流量のいずれか一方または両方を、前記可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めることを特徴とする、請求項1に記載の溶鉄の精錬方法。
  3. 前記支燃性ガスの流量を、前記可燃性物質の酸化または燃焼を考慮して定めることを特徴とする、請求項1または2に記載の溶鉄の精錬方法。
  4. 前記燃料の流量を、前記可燃性物質の酸化または燃焼による前記粉状精錬剤の質量の変化を考慮して定めることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
  5. 前記燃料の流量と前記粉状精錬剤の供給速度が下記数式1の一般式を満たすことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の溶鉄の精錬方法。
    Figure 0007416043000017
    ここで、上記一般式において、
    :定数(kg/MJ)
    total:粉状精錬剤の供給速度(kg/min)
    combustible:粉状精錬剤に含まれる可燃性物質の供給速度(kg/min)
    η:可燃性物質に含まれる炭素の質量分率(-)
    η:可燃性物質に含まれる炭素以外の可燃成分iの質量分率(-)
    ΔWoxygen,i:可燃成分iが完全燃焼する際に反応する酸素質量(kg/mol)
    :可燃成分iの物質量(kg/mol)
    fuel:燃料の供給流量(Nm/min)
    fuel:燃料の燃焼により生成する熱量(MJ/Nm
    combustible:可燃性物質の燃焼により生成する熱量(MJ/kg)である。
  6. 前記定数Cを、使用する前記燃料の種類により決定することを特徴とする、請求項に記載の溶鉄の精錬方法。
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