以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物全体を示す概略図であり、図2は屋根全体を示す平面図である。
図1に示すように、建物10は、基礎11上に配設された建物本体12と、建物本体12の上方に配設された屋根13とを備える。建物本体12は、複数の建物ユニット15が連結されてなる二階建ての建物である。建物本体12上には、複数のブラケット16及び複数の束17が設けられており、これら各ブラケット16及び各束17により屋根13が支持される構成となっている。
屋根13は、切妻式の屋根となっており、棟18を挟んだ両側に一対の傾斜屋根部19を有している。各傾斜屋根部19はそれぞれ棟18から軒先28に向かって下方に傾斜しており、そのうち一方の傾斜屋根部19上にはソーラパネル31が設置されている。このソーラパネル31は、建物10の施工後に、後付けで設置されたものである。
図2に示すように、屋根13は、複数の屋根パネル20により構成されている。屋根パネル20は、全体として長方形状をなしており、各傾斜屋根部19においてそれぞれ棟18の延びる方向(換言すると、屋根13の傾斜方向と直交する水平方向)に沿って横並びに複数ずつ(図2では3つずつ)設けられている。なお、図2では便宜上、建物本体12を構成する各建物ユニット15を二点鎖線で示し、ソーラパネル31の図示を省略している。
ブラケット16は、建物本体12上において軒先28側の端部に沿って複数設けられている。このうち一部のブラケット16aは、隣接する屋根パネル20の境界部に配置され、それら各屋根パネル20を共に支持している。なお図2では、ブラケット16の設置位置を丸印で示している。
束17は、建物本体12上において平面視における軒先28と棟18との中間位置に設けられ、棟18の延びる方向に沿って複数配設されている。このうち、一部の束17aは、隣接する屋根パネル20の境界部に配置され、それら各屋根パネル20を共に支持している。なお図2では、束17の設置位置を四角印で示している。
次に、屋根パネル20について図3を用いて説明する。図3は屋根パネル20の平面図である。
図3に示すように、屋根パネル20は、屋根下地材としての野地板21と、野地板21の裏面側に固定されたパネルフレーム22とを備える。野地板21は、矩形板状に形成されており、例えばパーティクルボードからなる。パネルフレーム22は、一対の垂木フレーム材23と、棟フレーム材24と、鼻先木25と、複数の母屋フレーム材26とを備え、これらが互いに連結されることにより構成されている。
垂木フレーム材23と棟フレーム材24とはそれぞれ断面コ字状の軽量鉄骨材よりなり、鼻先木25と母屋フレーム材26とはそれぞれ木質系の角材よりなる。なお詳しくは、棟フレーム材24は上下の各フランジ部が屋根13の傾斜に合わせて若干曲げられている(図4参照)。
一対の垂木フレーム材23と、棟フレーム材24と、鼻先木25とはそれぞれ野地板21の周縁に沿って配設されており、その配設状態で互いにビス等を用いて連結されている。これにより、パネルフレーム22の外枠が形成されている。外枠において、一対の垂木フレーム材23同士が対向配置され、棟フレーム材24と鼻先木25とが対向配置されている。また、各垂木フレーム材23と棟フレーム材24とはそれぞれ溝開口を内側に向けて配置されている。
一対の垂木フレーム材23の間には複数の母屋フレーム材26が所定の間隔で架け渡されている。各母屋フレーム材26はそれぞれ、その両端部において各垂木フレーム材23にビス等で固定されている。
次に、屋根パネル20の設置構成について図4に基づいて説明する。図4は、屋根13及びその周辺の構成を示す断面図であり、図2のA−A線断面図に相当する。なお、図4では、便宜上、屋根パネル20の母屋フレーム材26の図示を省略している。
図4に示すように、屋根パネル20は、棟フレーム材24が棟18に沿って延びかつ鼻先木25が軒先28に沿って延びる向きで、ブラケット16と束17とにより下方から支持された状態で設置されている。ブラケット16は、互いにボルトで連結されたアングル36と支持部40とを有する。アングル36は、L字状をなしており、建物ユニット15(詳しくは二階部分の建物ユニット15)の天井大梁29上にボルトにより固定されている。支持部40は、その上面が屋根13の傾斜に沿った傾斜面からなる支持面部32となっており、その支持面部32上に屋根パネル20の垂木フレーム材23(詳しくはその下フランジ部)が載置されている。そして、かかる載置状態で垂木フレーム材23と支持部40とが溶接により固定されている。
束17は、建物本体12上において建物ユニット15(詳しくは二階部分の建物ユニット15)同士が隣接するユニット隣接部に立設されている。隣り合う建物ユニット15の隣接する各天井大梁29上にはそれら両者に跨がるようにして束脚部38が設けられている。束脚部38は、略コ字状をなす鋼板からなり、その溝開口を上方に向けた状態で各天井大梁29の上面にそれぞれボルト等で固定されている(図6も参照)。そして、この束脚部38上に束17が固定されている。
束17は、角形鋼管又はC形鋼管よりなり、その下端部が束脚部38の溝内に配設された状態で当該束脚部38に溶接により固定されている。束17の上端部には、支持プレート39が溶接により固定されている。支持プレート39は、屋根13の傾斜に沿った平板状の鋼板からなる。なお、支持プレート39に、その傾斜方向の端部から下方に延び束17の側面に当接される当接板部を設け、その当接板部を束17の側面に固定してもよい。
支持プレート39の上面には屋根パネル20の垂木フレーム材23が載置されており、その載置状態で垂木フレーム材23が支持プレート39に対してボルト等で固定されている。また、棟18(換言すると軒先28)の延びる方向に隣り合う屋根パネル20の境界部に配置される束17a(支持プレート39)上には、それら両屋根パネル20の隣接する各垂木フレーム材23がそれぞれ載置された状態で固定されている。以上のように、各屋根パネル20が束17上に支持された状態で設置されている。
このような屋根パネル20の設置構成において、棟18の延びる方向において隣り合う各屋根パネル20は、互いの隣接する垂木フレーム材23のウェブ部23a同士を接合させた状態で設けられており、それらウェブ部23a同士がボルト34等の締結手段を用いて互いに連結されている。垂木フレーム材23のウェブ部23aには、ボルト34を挿通可能な挿通孔部33が垂木フレーム材23の長手方向(換言すると屋根13の傾斜方向)に沿って所定間隔で複数設けられている。具体的には、挿通孔部33は2つ一組で設けられており、それがフレーム長手方向に沿って所定の間隔で複数組(図4では3組)設けられている。これら複数組のうち、垂木フレーム材23の端部側に配置された組の2つの挿通孔部33については一方の挿通孔部33にのみボルト34が挿通されてナット35と締結されている。また、中間部に配置された組の2つの挿通孔部33についてはそれぞれにボルト34が挿通され、各ボルト34がナット35(図5参照)と締結されている。これにより、隣接する垂木フレーム材23同士ひいては横並びで隣り合う屋根パネル20同士が互いに連結されている。なお、ボルト34が挿通されていない挿通孔部33は、例えばしの孔として用いられる。
一方、棟18を挟んで隣り合う各屋根パネル20は、互いの隣接する棟フレーム材24のウェブ部24a同士を接合させた状態で設けられており、それらウェブ部24a同士がボルト34等の締結手段を用いて互いに連結されている。棟フレーム材24にも、垂木フレーム材23と同様に、そのウェブ部24aに長手方向に沿って複数の挿通孔部37が形成されている。そして、隣接する各棟フレーム材24の挿通孔部37にはそれぞれボルト34が挿通されておりナット35と締結されている。これにより、隣接する棟フレーム材24同士ひいては棟18を挟んで隣り合う屋根パネル20同士が互いに連結されている。
ところで、本実施形態の建物10には、屋根13の補強を行うべく屋根補強構造が構築されている。この屋根補強構造は、屋根13上へのソーラパネル31の設置に伴い、事後的に構築されたものである。すなわち、ソーラパネル31の設置により屋根部の重量が増大すると、地震や強風の際に屋根13に生じる横向き(水平方向)の力が大きくなることが想定され、その対策として本実施形態ではソーラパネル31の設置に伴い事後的に屋根補強構造を構築している。以下、かかる屋根補強構造について説明する。
屋根13の下面側において、屋根パネル20と束17との間には、水平方向に対して斜めの方向に延びるようにブレース41が設けられている。ブレース41は、屋根パネル20と束17との間において当該屋根パネル20とは反対の向きに傾斜して設けられ、かかる傾斜方向において屋根パネル20と束17とを互いに連結している。具体的には、ブレース41は、屋根パネル20との連結部側から、束17との連結部側に対して、当該屋根パネル20の棟18側と軒先28側とのうち棟18側に向かって延び、かつ下方に傾斜する向きで設けられている。
ブレース41は、平面視において、棟18の延びる方向に隣り合う屋根パネル20同士の境界部に沿って延びるように配設されている。ブレース41は、かかるパネル境界部において互いにX字状をなして交差するように2つ一組で設けられており、そのブレース41の組が各パネル境界部ごとに配設されている。但し、ブレース41は、必ずしもパネル境界部ごとに設ける必要はなく、例えばソーラパネル31の設置部位周辺のパネル境界部のみに設けてもよい。
ブレース41は、金属製の棒材からなり、直線状に延びるように形成されている。なおここで、ブレース41が補強部材に相当する。ブレース41は、その両端部にそれぞれ取付用の取付プレート41aを有しており、その中間部に張力調整機構としてのターンバックル41bを有している。このターンバックル41bを用いることで、ブレース41の張力調整をすることが可能となっており、またブレース41の長さに関する微調整も可能となっている。
ブレース41は、その一端部が屋根パネル20の垂木フレーム材23に屋根側連結具42を介して連結されており、他端部が束17に対して束側連結具43を介して連結されている。以下、かかるブレース41の垂木フレーム材23及び束17に対する連結構成について説明する。
まず、ブレース41の一端部と垂木フレーム材23との連結構成について図4に加え図5を用いて説明する。なお、図5は、屋根側連結具42の垂木フレーム材23に対する取付構成を示す分解斜視図である。
図4及び図5に示すように、屋根側連結具42は、矩形平板状の金属板よりなる固定プレート45と、固定プレート45の片面に設けられたブレース受け部46とを備える。固定プレート45には、厚み方向に貫通する一対の挿通孔部48(連結具孔部に相当)が形成されている。固定プレート45は、その一部が、隣り合う屋根パネル20の隣接する各垂木フレーム材23の間に下方から挿入されており、具体的には垂木フレーム材23の長手方向中間部において各垂木フレーム材23の間に挿入されている。そして、かかる挿入状態において各垂木フレーム材23の挿通孔部33と固定プレート45の挿通孔部48とが位置合わせされており、その位置合わせされた状態でこれら各挿通孔部33,48にはボルト34が挿通されてナット35と締結されている。これにより、固定プレート45は各垂木フレーム材23の間に挟み込まれた状態で固定され、ひいては屋根側連結具42が各垂木フレーム材23にそれぞれ固定されている。なおここで、固定プレート45において隣接する垂木フレーム材23の間に挿入された部分が被挿入部に相当する。
ブレース受け部46は、断面コ字状をなす板金部材からなる。ブレース受け部46は、固定プレート45において上記各垂木フレーム材23間から下方にはみ出した部位に設けられ、当該はみ出した部位においてその溝開口を固定プレート45の板面側に向けて同プレート45に溶接固定されている。ブレース受け部46において固定プレート45と隙間を隔てて対向する対向面部46aは、ブレース41の取付プレート41aを取り付けるための取付面部となっている。対向面部46aには、取付プレート41aを取り付けるためのボルト47が挿通される挿通孔部49が形成されている。
ブレース受け部46の対向面部46aには、ブレース41の取付プレート41aが取り付けられている。取付プレート41aに設けられた取付孔部(図示略)とブレース受け部46の挿通孔部49とにはそれぞれボルト47が挿通されておりナット(図示略)と締結されている。これにより、取付プレート41aがブレース受け部46に取り付けられ、ひいてはブレース41の一端部が屋根側連結具42を介して連結されている。
次に、ブレース41の他端部と束17との連結構成について図4に加え図6を用いながら説明する。図6は、ブレース41の束17に対する連結構成を示す斜視図である。図6において(a)では各部材を一体化した状態を示しており、(b)では各部材を分解した状態で示している。
図4及び図6に示すように、束17の下端側には束側連結具43が固定されている。束側連結具43は、束17を挟み込んで設けられる一対の挟み込み部材51,52を備える。これら各挟み込み部材51,52のうち第1挟み込み部材51は、鋼板が折り曲げ形成されてなる。第1挟み込み部材51は、束17の側面に沿ってコ字状に折り曲げ形成されたコ字状部51aと、コ字状部51aの両端からそれぞれ反対側に向けて延び互いに同一平面上に配置された一対のフランジ部51bとを有する。コ字状部51aの内側の溝部は束17の下端側が収容される収容溝部57となっており、収容溝部57の溝深さは束17の側面の横幅よりも若干小さい寸法に設定されている。また、各フランジ部51bにはそれぞれ厚み方向に貫通する挿通孔部54が形成されている。
一方、第2挟み込み部材52は、矩形平板状の金属製プレートからなる。第2挟み込み部材52には厚み方向に貫通する一対の挿通孔部55が形成されており、それら各挿通孔部55はそれぞれ第1挟み込み部材51の挿通孔部54と対応する位置に配置されている。
第1挟み込み部材51と第2挟み込み部材52とは束17の下端側において束17を両側から挟み込むようにして設けられている。第1挟み込み部材51は、コ字状部51aの収容溝部57に束17の下端側を収容させており、その収容状態で第2挟み込み部材52が第1挟み込み部材51の各フランジ部51bに当接しかつその挿通孔部55をフランジ部51bの挿通孔部54と位置合わせした状態で設けられている。そして、かかる設置状態において、各挟み込み部材51,52の挿通孔部54,55にはそれぞれボルト61が挿通されナット62と締結されている。これにより、第1挟み込み部材51と第2挟み込み部材52とが束17を挟み込んだ状態で互いに連結され、その結果、これら各挟み込み部材51,52つまりは束側連結具43が束17に対して固定されている。
束側連結具43の第2挟み込み部材52には、ブレース41の取付プレート41aが取り付けられている。取付プレート41aは、第2挟み込み部材52の外側面、すなわち同部材52における第1挟み込み部材51とは反対側の面(取付プレート41aを取り付けるための取付面部に相当)において、その取付孔部59を第2挟み込み部材52の各挿通孔部55のうちの一方と位置合わせした状態で設けられており、その状態で取付孔部59と各挿通孔部55とにはそれぞれボルト61が挿通されてナット62と締結されている。これにより、取付プレート41a、第1挟み込み部材51及び第2挟み込み部材52の三者が互いに連結され、その結果取付プレート41aが束側連結具43に対して取り付けられている。よって、ブレース41の他端部が束側連結具43を介して束17に連結されている。
ここで、上記のように垂木フレーム材23及び束17に両端部が連結されて設置されるブレース41の設置構成に関して補足説明をする。図4に示すように、互いに交差して配置された一組のブレース41A,41Bはそれぞれ棟18の延びる方向(換言するとブレース41と直交する方向)において束17aを挟んだ両側に配置されている。各ブレース41A,41Bをそれぞれ垂木フレーム材23に連結している各々の屋根側連結具42(以下、各屋根側連結具42の符号に、各ブレース41A,41Bと対応させてA,Bを付す。)は、棟18の延びる方向において互いに反対向きとなるように取り付けられている。すなわち、屋根側連結具42Aは、ブレース受け部46を固定プレート45(換言するとパネル境界部)に対して棟18の延びる方向における一方側(図4における紙面手前側。以下、当該一方側を手前側という。)に位置させた状態で設けられ、屋根側連結具42Bは、ブレース受け部46を固定プレート45に対して同方向における他方側(図4における紙面奥側。以下、当該他方側を奥側という。)に位置させた状態で設けられている。これにより、各屋根側連結具42A,42Bのブレース受け部46はそれぞれ棟18の延びる方向においてパネル境界部を挟んで反対側に位置している。より詳しくは、屋根側連結具42Aのブレース受け部46が同方向において束17aよりも手前側に位置し、屋根側連結具42Bのブレース受け部46が束17aよりも奥側に位置している。
一方、各ブレース41A,41Bをそれぞれ束17に連結している各々の束側連結具43(以下、各束側連結具43の符号に、各ブレース41A,41Bと対応させてA,Bを付す。)も、屋根側連結具42A,42Bと同様に、棟18の延びる方向において互いに反対向きとなるように取り付けられている。すなわち、各束側連結具43A,43Bでは、第1挟み込み部材51と第2挟み込み部材52とが互いに逆向きで配置されており、その結果各束側連結具43A,43Bの第2挟み込み部材52はそれぞれ棟18の延びる方向においてパネル境界部を挟んで反対側に位置している。より詳しくは、束側連結具43Aの第2挟み込み部材52が棟18の延びる方向において束17aよりも手前側に位置しており、束側連結具43Bの第2挟み込み部材52が束17aよりも奥側に位置している。
上述のように配置された各連結具42A,43Aにブレース41Aが取り付けられることでブレース41Aは束17aよりも手前側に配置され、各連結具42B,43Bにブレース41Bが取り付けられることでブレース41Bは束17aよりも奥側に配置されている。このようにして、パネル境界部に沿って配置される一組のブレース41同士が互いに干渉し合うのが回避されているとともに、束17aとの干渉についても回避されている。
次に、既設された建物10に対して上述の屋根補強構造を構築する際の作業手順を説明する。図7は、屋根補強構造を構築する際の作業手順を説明するための説明図である。
既設された建物10では、図7(a)に示すように、隣り合う屋根パネル20の隣接する垂木フレーム材23同士が、屋根側連結具42が取り付けられるフレーム長手方向の中間部において、1組のボルト34及びナット35により連結されている。そこで、まず、図7(b)に示すように、これらボルト34及びナット35を垂木フレーム材23から取り外す作業を行う。
次に、図7(c)に示すように、隣接する垂木フレーム材23の間に屋根側連結具42の固定プレート45を挿入する。この際、固定プレート45の各挿通孔部48がそれぞれ垂木フレーム材23の各挿通孔部33と同位置となるように、固定プレート45の挿入を行う。
次に、図7(d)に示すように、固定プレート45の挿通孔部33と各垂木フレーム材23の挿通孔部48とにそれぞれボルト34を挿通しナット35と締結することで、固定プレート45を各垂木フレーム材23に対して固定する。これにより、屋根側連結具42が各垂木フレーム材23に取り付けられる。
次に、図7(e)に示すように、束17の下端側に束側連結具43を取り付ける。この作業では、第1挟み込み部材51と第2挟み込み部材52とをそれら両者51,52の間に束17を挟み込むようにして配置し、その配置状態でボルト61及びナット62を用いて各挟み込み部材51,52同士を連結する。詳しくは、挟み込み部材51,52において設けられた2箇所の挿通孔部54,55のうち一方のみを利用してボルト61及びナット62によりそれら両者51,52を連結する。これにより、各挟み込み部材51,52すなわち束側連結具43が束17に対して仮固定される。
次に、図7(f)に示すように、ブレース41の取付プレート41aを束側連結具43に取り付ける。この作業では、取付プレート41aの取付孔部59と、各挟み込み部材51,52においてボルト61が挿通されていない側の挿通孔部54,55とにそれぞれボルト61を挿通しナット62と締結する。これにより、束側連結具43が束17に対して固定されるとともに、ブレース41の一端部が束側連結具43に対して取り付けられる。すなわち、ブレース41の他端部が束側連結具43を介して束17に連結される。
次に、図7(g)に示すように、ブレース41の他方の取付プレート41aを屋根側連結具42のブレース受け部46にボルト47及びナットを用いて取り付ける。これにより、ブレース41の一端部が屋根側連結具42を介して屋根パネル20の垂木フレーム材23に連結され、ブレース41の設置が完了する。
このようにして、各ブレース41を順次設置していき、設置したブレース41についてはそれぞれターンバックル41bを用いて張力調整を行う。これをもって、一連の屋根補強作業が終了する。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
屋根パネル20の垂木フレーム材23と束17との間に水平方向に対して傾斜する方向に延びる向きでブレース41を設け、そのブレース41を介して垂木フレーム材23と束17とを連結した。この場合、地震時や強風時等に屋根13に生じる水平力に対して抵抗力を付与することができる。具体的には、ブレース41を、垂木フレーム材23に連結されている一端部から、束17に連結されている他端部に対して、当該垂木フレーム材23の棟18側と軒先28側とのうち棟18側に延びるようにかつ下方に傾斜する向きで設けたため、屋根13に生じる水平力に対して好適に抵抗力を発揮させることができる。
また、ブレース41の一端部を屋根側連結具42を介して垂木フレーム材23に連結するとともに、ブレース41の他端部を束側連結具43を介して束17に連結したため、ブレース41の設置に際しては、まず各連結具42,43をそれぞれ垂木フレーム材23と束17とに取り付け、その後各連結具42,43にブレース41の両端部をそれぞれ取り付けることで、ブレース41を設置することができる。この場合、ブレース41の両端部を垂木フレーム材23と束17とに直接取り付けてブレース41の設置を行う場合と比べ、ブレース41の位置決めを容易に行えるといった取付作業上の利点が得られるため、屋根13の補強作業を好適に行うことができる。したがって、既設された建物10に対して屋根13の補強を行う上で好ましい構成といえる。
ブラケット16と束17とにより屋根13(屋根パネル20)を支持する構成では、屋根13に水平力が生じた場合に、その水平力が概ねブラケット16を介して建物本体12側に伝達される。すなわち、束17は鉛直方向に延びているため、屋根13に生じる水平力を束17を介して建物本体12側に伝達することは困難である。この点、ブレース41を介して垂木フレーム材23と束17とを連結する上記の構成を用いれば、屋根13に生じる水平力をブラケット16に加えブレース41を介して建物本体12に伝達することができるため、かかる構成の屋根13においても屋根13に生じる水平力に対して抵抗力を発揮することができる。
ブレース41を束17に対してその下端側に連結したため、屋根13に生じた水平力を束脚部38付近すなわち束17における建物本体12との連結部付近に伝達させることができる。これにより、屋根13に生じた水平力を建物本体12側に好適に伝達させることができる。
隣り合う各屋根パネル20の隣接する垂木フレーム材23同士が連結する連結部分に屋根側連結具42を固定したため、それら各屋根パネル20をそれぞれブレース41により補強することができる。これにより、地震や強風等により屋根13に横揺れが生じた場合に、隣り合う屋根パネル20間でずれが生じるといった問題が発生するのを防止できる。
垂木フレーム材23に挿通孔部33を設け、隣り合う各屋根パネル20の垂木フレーム材23同士を、各々の挿通孔部33にボルト34を挿通しナット35と締結することにより連結した。そして、そのボルト34を、屋根側連結具42の挿通孔部49にも挿通させることで、屋根側連結具42を垂木フレーム材23に固定した。この場合、垂木フレーム材23に直接釘等を打ち付けて屋根側連結具42を取り付ける場合とは異なり、垂木フレーム材23に損傷を与えることなく屋根側連結具42を垂木フレーム材23に取り付けることができる。そのため、屋根13を事後的に補強する上で好ましい構成である。
また、隣り合う屋根パネル20の隣接する垂木フレーム材23の間に屋根側連結具42の固定プレート45を挿入するとともに、同プレート45において該挿入した被挿入部分に挿通孔部48を形成した。この場合、固定プレート45の被挿入部分を各垂木フレーム材23の間に挟み込ませた状態でそれぞれ各垂木フレーム材23にボルト34及びナット35を用いて固定することができるため、屋根13の補強効果を良好に発揮させることができる。
垂木フレーム材23において長手方向に沿って複数形成された各挿通孔部33にそれぞれボルト34を挿通しナット35と締結することにより、隣り合う屋根パネル20の隣接する垂木フレーム材23同士を互いに連結する構成において、それら複数のボルト34のうちいずれかを屋根側連結具42(固定プレート45)の挿通孔部49に挿通することにより、同連結具42を垂木フレーム材23に固定した。かかる構成によれば、複数の挿通孔部33がそれぞれ異なる高さ位置に配置されているため、屋根側連結具42の取付高さに関して自由度を高めることができ、ひいてはブレース41の設置向き(傾斜角度)に関して自由度を高めることができる。これにより、屋根13の補強度合いに応じてブレース41の設置向きを変えるといった対応をとることが可能となる。
詳しくは、隣接する垂木フレーム材23同士を、フレーム長手方向における中間部(略中央部)で連結しているボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42を垂木フレーム材23に取り付けた。ここで例えば、フレーム長手方向における軒先28側の端部で垂木フレーム材23同士を連結しているボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42の取り付けを行う場合、屋根13下において軒先28側は狭小となっているためその作業性の面で懸念がある。また、フレーム長手方向における棟18側端部のボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42の取り付けを行う場合には、2つの傾斜屋根部19の間での作業となるため、軒先28側の場合と同様に作業性の面で難がある。その点、フレーム長手方向中間部のボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42の取付を行う上述の構成では、比較的開放された空間での作業となるため、補強作業を好適に行うことができる。
ブレース41にターンバックル41bを設けたため、屋根側連結具42又は束側連結具43が所定の取付位置から若干ずれた位置に取り付けられたとしても、ターンバックル41bによりブレース41長さを微調整することでブレース41の両端部をそれぞれ各連結具42,43に取り付けることができる。そのため、既設された建物10に対して事後的に補強を行うにあたって実用上好ましい構成である。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、屋根側連結具42を、その一部(固定プレート45の一部)を隣接する垂木フレーム材23の間に挿入した状態でそれら各垂木フレーム材23に取り付けたが、これを変更してもよい。例えば、隣接する各垂木フレーム材23のうちいずれか一方の垂木フレーム材23(ウェブ部23a)の内側面(換言するとウェブ部23aにおける他方の垂木フレーム材23とは反対側の面)に屋根側連結具42を重ね合わせた状態で取り付けてもよい。具体的には、その重ね合わせ状態で垂木フレーム材23の挿通孔部33と屋根側連結具42(詳しくは固定プレート45)の挿通孔部48とにそれぞれボルト34を挿通しナット35と締結することで、屋根側連結具42を垂木フレーム材23に取り付ける。この場合にも、垂木フレーム材23に直接釘等を打ち付けることなく屋根側連結具42を取り付けることができるため、上記実施形態と同様、事後的に屋根13を補強するにあたって都合がよい。なお、このような取付構成とする場合には、屋根側連結具42を垂木フレーム材23のコ字状溝内に収まる大きさで形成する必要がある。
また、屋根側連結具42を、隣接する各垂木フレーム材23の下面同士に跨がるように設置し、それら各フレーム材23の下面に対してそれぞれビス等で取り付けてもよい。この場合、垂木フレーム材23の下面には挿通孔部が予め形成されていないため、屋根側連結具42を介して当該下面にビス等を打ち付けることにより屋根側連結具42の取り付けを行う必要がある。
(2)上記実施形態では、隣り合う屋根パネル20の隣接する垂木フレーム材23同士を連結する複数のボルト34及びナット35のうち、フレーム長手方向の中間部に配置されたボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42を垂木フレーム材23に取り付けたが、フレーム長手方向の端部側に配置されたボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42の取り付けを行ってもよい。例えば、図8に示すように、軒先28側の端部に配置されたボルト34及びナット35を用いて屋根側連結具42の取り付けを行うことが考えられる。そうすれば、ブレース41を略水平方向に延びる向きで設置することができるため、水平力に対する抵抗力をより高めることができる。
(3)上記実施形態では、屋根側連結具42を垂木フレーム材23に取り付けたが、棟フレーム材24に取り付けてもよい。この場合、図9に示すように、棟18を挟んで隣り合う屋根パネル20において隣接する棟フレーム材24の間に、屋根側連結具42の固定プレート45を挿入し、その挿入状態で同プレート45の挿通孔部48にボルト34を挿通しナット35と締結することで屋根側連結具42の取り付けを行うことが考えられる。すなわち、上記実施形態と同様の取付構成で、屋根側連結具42を棟フレーム材24に取り付けることが考えられる。この場合、ブレース41は、平面視において棟18に沿って延びる向きで設置されるため、屋根13に生じる棟18に沿う方向の水平力に対し抵抗力を発揮することができる。
なお、上記実施形態の構成では、棟18の直下において当該棟18に沿って建物ユニット15の天井大梁29が設けられていないことから、棟18の直下に束17が設置されていない(図2参照)。そのため、上記実施形態において図9の構成を適用する場合には、建物ユニット15において対向する一対の天井大梁29の間に束受け梁を架け渡し、その束受け梁上に束17を設置することとなる。その場合、例えば図10に示すように、束受け梁65上にL字状の束脚部66をその側面部を束受け梁65の側面に当接させた状態で載置し、その載置した束脚部66上に束17を立設することが考えられる。そして、その束17に対して束側連結具43を取り付けることとなる。
(4)屋根側連結具42は、必ずしも野地板21の周縁に沿って配設されるフレーム材23,24に取り付ける必要はなく、例えば母屋フレーム材26に取り付けてもよい。この場合、屋根側連結具42の挿通孔部48に釘等を挿通しその釘等を母屋フレーム材26に直接打ち付けることで屋根側連結具42を取り付けることが考えられる。
(5)束側連結具43の構成は必ずしも上記実施形態の構成に限定されない。例えば、束側連結具を1つの部材より構成し、それを束17に対してビスや釘を用いて直接取り付けてもよい。なお、かかる構成とする場合には、建物施工の際に予め束17にビスを締結可能な取付孔部を形成しておくことが望ましい。
また、上記実施形態の束側連結具43において、さらに各挟み込み部材51,52における束17を挟んだ両側に配置される部位にそれぞれビスを挿通させるための挿通孔部を設け、その挿通孔部にビスを挿通して束17に打ち付けてもよい。そうすれば、束側連結具43の束17に対する固定度を高めることができる。なお、束側連結具43は、必ずしも束17の下端側に取り付ける必要はなく、例えば束17の高さ方向中央付近に取り付けてもよい。
(6)上記実施形態では、1つの束側連結具43に対して1つのブレース41を取り付けたが、図8に示すように、1つの束側連結具43に対して2つのブレース41を取り付けてもよい。この場合、各挟み込み部材51,52を連結している二組のボルト61及びナット62をそれぞれ用いて各ブレース41を束側連結具43に取り付けることとなる。
(7)上記実施形態では、ブレース41に張力調整機構としてのターンバックル41bを設けたが、必ずしもブレース41に張力調整機構を設ける必要はない。また、補強部材として、ブレース41以外に、角形鋼や溝形鋼等の形鋼や、木質系の角材等を用いてもよい。
(8)本発明の屋根補強構造を建物施工時に構築してもよい。例えば、施工時において屋根の一部をスポット的に補強したい場合等に、本発明の屋根補強構造を用いれば、施工途中の屋根に対して好適に補強を行うことができる。
(9)上記実施形態では、野地板21とパネルフレーム22(垂木フレーム材23等を含む)とを有する屋根パネル20を予め製造し、そのパネル20を束17上に複数並設して構成される屋根に本発明を適用したが、他の構成からなる屋根に本発明を適用してもよい。例えば、建物本体上に立設した複数の束上に母屋や棟木などの横架材を組み付けるとともに、棟木から軒桁にかけて下方傾斜するように垂木を架け渡して小屋組を構築し、その小屋組上に野地板を設置して構成される屋根に適用してもよい。その場合、垂木や棟木、母屋(いずれも支持部材に相当)に対して屋根側連結具を取り付けることとなる。
(10)上記実施形態では、切妻式の屋根に対して本発明を適用したが、切妻屋根や片流れ屋根などその他の形状の屋根に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物に適用してもよい。要するに、束により屋根が支持されている建物であれば、本発明を適用することができる。