以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るペーパーホルダーを示す斜視図である。なおこの図1及び以下に示す図においては、適宜、XYZ直交座標系を設けて示す。またこのXYZ直交座標系では、ペーパーホルダー1を正面より見て、ペーパーホルダー1に向かって右側方向をXプラス、上側方向をYプラス、使用者に向かって来る方向をZプラスとする。また、適宜、X軸方向を左右、Y軸方向を上下、Z軸方向を前後とも呼称する。
このペーパーホルダー1は、トイレットペーパーのペーパーホルダーである。このペーパーホルダー1は、前面の排出口24より先端を三角形形状に折り曲げたペーパーPを突出させて、ペーパーPを引き出し可能に保持する。またこのペーパーPが引き出されて、その引き出しが停止すると、改めてペーパーPの先端を三角形形状に折り曲げて排出口24に引き出し可能に保持する。これによりこのペーパーホルダー1は、排出口24から突出するペーパーPを引き出して引き千切る等の乱暴な操作によりペーパーPを使用する場合でも、排出口24から吐出するペーパーPの先端を常に三角形形状に折り曲げて保持する。
ペーパーホルダー1は、全体が丸みを帯びた縦長の長方体形状に形成され、図2に示すように、その上部に設けられた上部カバー22を開いて、ペーパーロールをセットできるように構成される。なおここで図2は、ペーパーホルダー1の上部カバー22を開放すると共にペーパー受けトレイ23を引き出した状態における斜視図である。ペーパーホルダー1の下部には、ペーパー受けトレイ23が設けられ、このペーパー受けトレイ23に、後述するペーパー切断部500によりペーパーを切断して発生するペーパーによる埃を収納するように構成される。またこのペーパー受けトレイ23は、取り外し可能に構成され、これによりペーパーホルダー1は、ペーパー受けトレイ23を取り外して、回収したペーパーによる埃を便器に投機するだけの簡易な操作により、埃を処理できるように構成される。またペーパーホルダー1は、正面に表示部700が設けられ、この表示部700の点灯又は点滅により、ペーパー残量の減少を警告する。
ペーパーホルダー1は、内部機構10(図3参照)をカバー20で覆って作製される。ここでカバー20は、両側部と前面の一部である前面部21Aとを覆うカバー本体21と、上部を覆う上部カバー22と、下面を形成するペーパー受けトレイ23と、により構成されている。図1をA−A線により切り取って図3により断面図を示すように、また図2に示すように、上部カバー22は、背面側の上縁部に設定された枢支軸部22Aを支点として回動可能にカバー本体21に保持され、これにより内部機構10の上部を上側に開放可能となっている。ペーパーホルダー1へのペーパーロール2の装着は、このように上部カバー22を回動させて内部機構10の上部を開放することで行われる。
さらに上部カバー22は、開口縁の内側に圧接リブ25が突設されている(図2)。圧接リブ25は、上部カバー22の閉止状態時においてX軸及びZ軸を含む平面と略平行な姿勢となり、後述するペーパー搬送機構400における上部搬送ローラ410の外周に当接するようになっている。これにより上部カバー22は、圧接リブ25により、上部カバー22の閉止状態時において、上部搬送ローラ410との間に挟まれるペーパーを、上部搬送ローラ410に当接させる。なおペーパーホルダー1は、この上部カバー22の閉止状態への遷移を検出するカバーセンサ111(図5参照)が内部機構10に設けられており、このセンサの出力によりペーパーロール2のセットを検出して後述する一連の処理を実行する。
ペーパー受けトレイ23は、周囲に所定高さの縁が立設されており、図2及び図3により示すように、前方に(図3中矢印C方向に)所定量引き出して取り外し可能となっている。排出口24は、カバー本体21における前面部21Aの下縁と、ペーパー受けトレイ23の前側の縁との間に、上下方向に所定幅で形成されている。
図4は、正面より見て内部機構10を詳細に示す平面図である。また図5は、この内部機構10に係る構成を示すブロック図である。なお図4は、ペーパー折曲部600において折曲操作板611が飛び出した状態を示す図である。
内部機構10は、ペーパーロール保持部200、ペーパーロール検出部300、ペーパー搬送機構400、ペーパー切断部500、ペーパー折曲部600、を備えている。またさらに内部機構10は、表示部700に係る構成(701)、各部の動作を制御する制御部100を備えている。
内部機構10は、2枚の側板11L、11Rと、この2枚の側板11L、11Rを所定間隔で平行に結合して一体化する板材とによりシャーシ11が構成され、このシャーシ11によりペーパーロール保持部200、ペーパーロール検出部300等の構成が設けられる。なお側板11L及び11Rの間隔は、当該ペーパーホルダー1が保持するペーパーロール2の幅より所定量広く設定されている。
ここでペーパーロール保持部200は、図4及び図6に示すように、シャーシ11の上部の前後方向略中央に設けられている。ペーパーロール保持部200は、側板11L及び11Rの内面にそれぞれ対向するように配置された一対の保持部材210を備えている。保持部材210は、先端角が大きい円錐状の保持コーン211を、板バネ212で回転自在に支持して形成されている。保持部材210は、板バネ212を介して側板11L及び11Rに装着され、板バネ212の弾性変形によってX軸方向に所定量移動可能となっている。
そして、ペーパーロール保持部200は、図6において矢印により示すように、ペーパーロール2を左右の保持コーン211の間に押し込むことで、板バネ212の弾性変形によって保持コーン211の先端部がそれぞれペーパーロール2における円筒状の芯材2Aに嵌入し、これによってペーパーロール2をX軸と平行な軸回りに回転自在として保持する。
ペーパーロール検出部300は、図3に示すように、シャーシ11の上部の後方側端部(ペーパーロール保持部200の後側)に設けられたアーム310と、アーム310の先端に装着されたローラ320と、アーム310の揺動を検出するペーパーロールセンサ301(図5参照)と、ローラ320の回転を検出する繰出センサ302と、を備えている。
アーム310は、所定長さに形成されてその基端部でY軸と平行な支持軸311によって揺動可能に支持されると共に、支持軸311に外挿されたバネ312によって先端(ローラ320)が前方側に向かう方向(図3中矢印D方向)に付勢されている。アーム310の揺動は、先端のローラ320がペーパーロール保持部200に保持されたペーパーロール2の外周面に当接することで規制されるようになっている。従ってペーパーロール2の半径方向に係るアーム310の先端の位置は、ペーパーロール2の有無、及びペーパーロール2の残量(外径)によって変化する。すなわちアーム310は、ペーパーロール2が新しい場合には図3中実線で示すように直立に近く、ペーパーロール2が使用されて外径が小さくなると図3中2点鎖線で示すように前方側に回動する。アーム310は、ペーパーロール2の残量が1/3程度まではペーパーロール2の外径変化に追従して回動し、それ以上の回動は端部がシャーシ11に設けられたストッパ313に当接して規制されるようになっている。
ローラ320は、アーム310の先端部に、アーム310の支持軸311と平行な軸(すなわちX軸と平行な軸)で回転自在に装着されている。ペーパーロールセンサ301は(図5)アーム310の位置を検出するように設けられており、アーム310がストッパ313によって規制されるまで傾斜すると、その検出信号を制御情報として後述する制御部100に出力する。繰出センサ302(図5)は、ローラ320の回転を検出するように設けられており、ローラ320の回転に伴う検出信号を制御情報として後述する制御部100に出力する。
ペーパー搬送機構400は、図3に示すように、上部搬送ローラ410と、上部ローラ動力源420と、上部搬送ローラ410にペーパーPを圧接させる圧接部材430と、ペーパーの移動経路を規定する搬送ガイド440と、下部搬送ローラ450と、下部ローラ動力源460と、下部搬送ローラ450にペーパーPを圧接させるペーパー押さえ470と、により構成されている。
上部搬送ローラ410は、心材の周囲に、所定の弾性と摩擦係数を有するゴム等の素材による外周層を備えて所定径に形成され、シャーシ11の前面側上部にX軸と平行に配設されている。上部搬送ローラ410は、側板11Lの外面に固定された上部ローラ動力源420の出力軸と接続されており、この上部ローラ動力源420によって時計回りまたは反時計回りの両方向に所定の周速で回転駆動されるようになっている。上部ローラ動力源420は、モータ421と減速機422とによって構成され、後述する制御部100によって駆動制御される。つまり、上部搬送ローラ410は、制御部100によって回転駆動制御されるようになっているものである。
ここで図7は、ペーパー搬送機構400の圧接部材430およびペーパー切断部500の拡大図であり、図7(a)は待機状態を示し、図7(b)は作用状態を示すものである。圧接部材430は、図7に示すように、前板431と底板432と左右両端の側板433とを備えて断面形状L字状に形成され、上部搬送ローラ410の後方側に側板433の上部でX軸と平行な支持軸434によって枢支されている。圧接部材430は、支持軸434に外挿された巻きバネ435によって上部搬送ローラ410から離間する方向(図3中矢印E方向)に揺動付勢されると共に、自由状態では前板431が略鉛直X軸及びY軸を含む平面と略平行となって上部搬送ローラ410の後方側外周面との間に所定の間隔を有するように設定されている。
また、圧接部材430は、その底板432の幅方向中央が、後述するペーパー切断部500におけるブレード駆動機構540のクランク円盤541に植設された偏芯ピン543と、連接棒436を介して連結されている。そして、圧接部材430は、ブレード駆動機構540によって連接棒436を介して前述した自由状態から巻きバネ435の付勢力に抗して図3中時計回りに揺動操作され、前板431が上部搬送ローラ410の外周面に圧接する。つまり、圧接部材430は、ペーパー切断部500と連動して上部搬送ローラ410に圧接するようになっている。これによりペーパー搬送機構400は、通常は圧接部材430によりペーパーPを上部搬送ローラ410に押圧しないようにして、使用者が排出口24より突出するペーパーPを自由に引き出し可能とする。ペーパーPの引き出しの停止が検出されると、圧接部材430によりペーパーPを上部搬送ローラ410に押圧してペーパーPを搬送する。またペーパーロール2がセットされた場合には、上部搬送ローラ410による搬送経路に引き込まれるペーパーPを圧接部材430により上部搬送ローラ410に押圧してペーパーPを搬送する。
搬送ガイド440は、図3に示すように、上部搬送ローラ410の下側に配設された前側ガイド441と、その下方側に所定間隔離れて対向配置された後側ガイド442と、により構成されている。前側ガイド441は、所定幅で所定厚さの板状の部材であって、下側を後方に所定角度で傾斜させた姿勢で側板11L及び11Rの間に架設されている。この前側ガイド441の下縁は、所定幅で前面側に鋭角に屈曲されて曲面となっている。後側ガイド442は、後述するペーパー切断部500を支持する支持板501の前側の端縁を、下側が前方になるように所定角度で屈曲して形成されている。これにより、搬送ガイド440は、対向配設された前側ガイド441と後側ガイド442とで、ペーパーの移動経路を規定する下すぼまりのペーパー通路を形成している。
下部搬送ローラ450は、上部搬送ローラ410と同様に、心材の周囲に弾性と高い摩擦係数を有するゴム等の素材による外周層を備えて所定径に形成され、シャーシ11の前面側下部にX軸と平行に配設されている。下部搬送ローラ450は、側板11Lの外面に固定された下部ローラ動力源460の出力軸と接続されており、この下部ローラ動力源460によって時計回りまたは反時計回り所定の周速で回転駆動されるようになっている。下部ローラ動力源460は、モータ461と減速機462とによって構成され、後述する制御部100によって駆動制御される。つまり、下部搬送ローラ450は、制御部100によって回転駆動制御されるようになっているものである。
ペーパー押さえ470は、図9に示すように、概略形状矩形の平板状であって、シャーシ11の側板11L、11Rの間隔と対応する長さを有し、下部搬送ローラ450の上側やや後方に設定されたX軸と平行な支点軸471によって揺動可能に枢支されている。ペーパー押さえ470は、支点軸471に外挿された巻きバネ472によって図9中反時計回り(図3中矢印F方向)に揺動付勢され、先端部が下部搬送ローラ450の外周に所定の力で圧接している。なおここで図9は、ペーパー搬送機構400のペーパー押さえ470及びペーパー折曲部600の拡大図であり、図9(a)は待機状態を示し、図9(b)は作用状態を示すものである。
上記のようなペーパー搬送機構400は、上部搬送ローラ410と圧接部材430の前板431との間から、搬送ガイド440における前側ガイド441と後側ガイド442の間を通って、下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間に至る、ペーパー搬送経路401を構成している。ペーパー搬送経路401内にあるペーパーPは、上部搬送ローラ410及び下部搬送ローラ450の回転によって、X軸及びY軸を含む面と略平行な姿勢で搬送駆動される。
ペーパー切断部500は、図3、図7及び図8に示すように、ペーパー搬送経路401の前側に配設された上下2本の支持バー511、512と、左右の側板11L、11Rの間に架設された支持板513の上面に構成されたブレード出入機構520と、により構成されている。
支持バー511、512は、それぞれ所定径の丸棒の外周に樹脂コートが施されて形成され、左右の側板11L、11Rの間にX軸と平行に架設されている。支持バー511、512の前後方向(Z軸方向)における位置は、ペーパー搬送機構400における上部搬送ローラ410の位置と略一致している。また、上下の支持バー511、512の上下方向(Y軸方向)における位置は後述するブレード出入機構520における押圧板531の上下の緩衝材532と対応しており、両者の間隔は、外周面の間に所定の隙間を有するように設定されている。
支持板513は、所定厚さの板状であって、Y軸及びZ軸を含む面と平行な姿勢で左右の側板11L、11Rの間に架設されている。ブレード出入機構520は、ガイドキー521と、移動ベース522と、ブレード523と、押圧機構530と、ブレード駆動機構540と、ブレード駆動動力源550と、により構成されている。ガイドキー521は、直方体状の部材であって、長手方向をZ軸と平行として支持板513の上面に固定されている。移動ベース522は、矩形の平面形状で肉厚の板状部材であって、その下面でガイドキー521に摺動移動可能に嵌合しており、ガイドキー521に案内されてZ軸方向に移動可能となっている。
ブレード523は、薄い(たとえば0.3mm)ステンレス鋼板等により形成されている。図8に示すように、ブレード523の前方側の縁は、幅方向中央が最も突出して側縁に近くなる程徐々に後退する三角形状を呈している。ブレード523の前方側の縁には、多数の三角形の鋸状の歯が形成されている。ブレード523は、移動ベース522の上面に、前方縁を移動ベース522の前面より所定量突出させてネジで締着固定されている。
押圧機構530は、押圧板531と、押圧板531の前面に装着された緩衝材532と、押圧板531の後面に固定された左右一対のスライドガイド軸533と、を備え、スライドガイド軸533を介して移動ベース522に支持されている。押圧板531は、矩形で所定厚さの板状の部材であって左右の側板11L、11R間距離と対応する長さを有し、その幅方向中央には所定幅のスリット531S(図7参照)が長手方向に沿って形成されている。押圧板531は、長手方向をX軸と平行とし、且つ板面をX軸及びY軸を含む面と平行とした姿勢で、後述するスライドガイド軸533によって支持されている。
緩衝材532は、ウレタンスポンジ等の弾性を有する素材によって所定厚さに形成された板状の部材であって、押圧板531の前面のスリット531Sを挟む上下にそれぞれ設けられている。 スライドガイド軸533は、所定径で所定長さの軸状の部材であって、移動ベース522に対してZ軸方向に摺動移動可能に嵌合し、移動ベース522から前方に突出した先端で押圧板531を支持している。
移動ベース522から前方に突出したスライドガイド軸533には、コイルスプリング534が外挿されている。このコイルスプリング534は、押圧板531の後面と移動ベース522の前面との間に弾性変形して介在し、その弾性復帰力で押圧板531を移動ベース522に対して前方側に押圧付勢している。
上記構成の押圧機構530は、押圧板531が移動ベース522にスライドガイド軸533の摺動移動可能な範囲でZ軸方向に相対移動可能として支持され、コイルスプリング534によってその移動範囲の前方端に付勢されている。押圧板531におけるスリット531Sの上下方向位置は、移動ベース522の上面に装着されたブレード523と対応している。
ブレード駆動機構540は、ブレード駆動動力源550によって回転駆動されるクランク円盤541と、このクランク円盤541と移動ベース522とを連結するコネクティングロッド542と、によって構成されている。ブレード駆動動力源550は、モータ551と減速機552とによって構成され、支持板513の下面に装着されている。ブレード駆動動力源550の出力軸は、Y軸と平行に支持板513を貫通して上側に突出し、クランク円盤541を支持している。
クランク円盤541は、所定径で所定厚さの円盤状の部材であって、ブレード駆動動力源550の出力軸によってY軸及びZ軸を含む平面と平行な平面内で回転可能に支持され、ブレード駆動動力源550によって回転駆動されるようになっている。コネクティングロッド542は、一端がクランク円盤541の偏芯位置に植設された偏芯ピン543に枢支されると共に、他端が移動ベース522の後端部の左右方向中央に枢支ピン544で枢着されている。
上記構成のブレード駆動機構540は、ブレード駆動動力源550によってクランク円盤541が回転し、これによってコネクティングロッド542を介して移動ベース522を前後に移動させる。移動ベース522の移動量は、クランク円盤541の回転中心に対する偏芯ピン543の偏芯量の2倍である。ブレード駆動動力源550は、後述する制御部100によって駆動制御される。つまり、ブレード駆動機構540は、制御部100によって駆動制御されるようになっているものである。この制御部100によるブレード駆動機構540の駆動制御は、クランク円盤541の回転位置を検出するクランクセンサ112(図5に示す。図3及び図7、図8には示さず)からの情報に基づいて行われる。
そして、上記のように構成されたペーパー切断部500は、ブレード出入機構520におけるブレード駆動動力源550によってクランク円盤541を1回転駆動し、これによって、移動ベース522(すなわちブレード523)を後退した待機位置から前方側の作用位置に前後に1ストローク移動駆動して、ペーパー搬送経路401内に位置するペーパーPを切断する。
ブレード出入機構520における移動ベース522が後退した位置(待機状態)では、図7(a)に示すように、押圧機構530における緩衝材532の前面がペーパー搬送経路401より後退して位置し、移動ベース522に固定されたブレード523の前端は緩衝材532の前面と略一致する。この待機状態では、押圧機構530はペーパー搬送経路401内におけるペーパーの移動を妨げないことから、ペーパーホルダー1では排出口24からペーパーPを自由に引き出すことができるように設定される。
上記のような待機状態から、ブレード駆動機構540のクランク円盤541の回転によって移動ベース522が前進駆動されると、図7(b)及び図8に示すように、押圧機構530における緩衝材532の前面が支持バー511、512の外周面に当接し、その後、移動ベース522がコイルスプリング534の付勢力に抗してさらに前進し、その支持するブレード523の前端が2本の支持バー511、512の間から前側に所定量突出して作用状態となる。この作用状態では、押圧機構530における緩衝材532の前面と支持バー511、512との間にペーパーPを移動不能に狭持し、そこにブレード523の前端が突出してペーパーを切断する。
ここで、前述したペーパー搬送機構400における圧接部材430は、このブレード駆動機構540のクランク円盤541と連接棒436を介して連結されており、ブレード出入機構520と連動して揺動操作され、これによって圧接部材430と上部搬送ローラ410の間のペーパーを上部搬送ローラ410に圧接させる。これにより上部搬送ローラ410によりペーパーPは、一定量だけ搬送され、ペーパー折曲部600により三角形形状に先端が折り曲げられて排出口24より突出するように保持される。
ペーパー折曲部600は、図3と図9及び図10に示すように、シャーシ11の下部の側板11L及び11Rの間に架設された駆動シャフト601と、駆動シャフト601に装着された折曲部材610と、駆動シャフト601を駆動する折曲動力源620と、ペーパーの左右縁の折り曲げタイミングを異ならせて整然とした折り畳みを可能とする折曲ガイド機構630と、により構成されている。なおここで図10は、図10(a)はペーパー折曲部600の説明に供する図であり、図10(b)はペーパーPの折り畳まれた先端部を示す図である。
駆動シャフト601は、X軸と平行に配設されており、折曲動力源620の出力軸と接続され、折曲動力源620によって時計回りまたは反時計回りに所定の周速で回転駆動されるようになっている。
折曲部材610は、折曲操作板611と、折曲操作板611の内面に立設されたアーム612と、を備え、アーム612の先端で駆動シャフト601に支持されている。折曲操作板611は、所定半径で所定角度範囲(本実施形態では90°に満たない程度)の円弧状に、所定の板厚で形成されている。折曲操作板611の前縁は、幅方向中央が最も突出して側縁に近くなるに従って徐々に後退する所定頂角の山形(三角形状)に形成されている。折曲操作板611の幅は、ペーパーの幅と略等しい。アーム612は、折曲操作板611の内面側に、その円弧曲面の半径方向に沿って設けられ、折曲操作板611の円弧曲面中心と対応する位置にボス612Bを備えている。
上記構成の折曲部材610は、アーム612のボス612Bで駆動シャフト601に固定されている。これにより、折曲部材610は、駆動シャフト601の回転によって、アーム612が後方側略水平で折曲操作板611の先端が駆動シャフト601の直上より後側に位置する図9(a)に示す待機状態と、この待機状態から反時計回り(図3中矢印Hで示す方向)に回動した図9(b)に示す折曲操作板611の先端がカバー20の排出口24より所定量突出する作用状態と、の間で回動可能となっている。
ここで、ペーパー折曲部600は、下部搬送ローラ450に対して、下記のような位置関係で配設されている。すなわち、折曲部材610の回動中心(駆動シャフト601)から下部搬送ローラ450の外周までの距離が、折曲操作板611の内周面円弧半径より僅かに小さく、且つ、折曲操作板611の回動移動軌跡は下部搬送ローラ450の外周面にその前方斜め上方で最も近接するように設定されている。これにより、待機状態から作用状態に移動する折曲操作板611は、下部搬送ローラ450の外周面をかすめ、下部搬送ローラ450に圧接されたペーパー押さえ470を巻きバネ472の付勢力に抗して揺動させて、下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間を通ってカバー20の排出口24から外部に突出するようになっている。
折曲動力源620は、モータ621と減速機622とによって構成され、側板11Lの外面に固定されている。折曲動力源620の出力軸は、側板11Lを貫通して駆動シャフト601に結合している。折曲動力源620は、後述する制御部100によって駆動制御される。つまり、折曲部材610は、制御部100によって駆動制御されるようになっているものである。この制御部100による折曲部材610の駆動制御は、駆動シャフト601または折曲部材610の回動位置を検出する折曲センサ113(図5参照)からの情報に基づいて行われる。
折曲ガイド機構630は、下部搬送ローラ450の後側で、ペーパー搬送経路401の搬送ガイド440から下部搬送ローラ450側に向かわずそのまま垂下したペーパーの前面側となる位置に設定されている。折曲ガイド機構630は、図10に示すように、支持枠631に左右一対のファン632、633を備えて構成されている。左右のファン632、633は、ペーパー搬送経路401の搬送ガイド440から垂下したペーパーの左右の縁端PL、PRと対応する位置に、それぞれペーパーに向けて送風するように配設されている。左右のファン632、633の送風のタイミングは、後述する制御部100によって駆動制御される。
上記のように構成されたペーパー折曲部600は、図9(b)に示すように、折曲部材610の折曲操作板611を折曲動力源620の駆動によって待機位置から作用位置に回動させると共に直ちに待機位置に戻すことにより、搬送ガイド440から下部搬送ローラ450に向かわずに垂下しているペーパーを、折曲部材610(折曲操作板611)が三角形に折り畳んで下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間に挟み込ませ、その先端をカバー20の排出口24より所定量突出させる。なおこの所定量は、前面部21Aの表側面から最も突出した先端部Pt(図10参照)までが1cm以上、4cm以下となる量であり、これによりこの実施形態では、使い勝手の劣化を有効に回避して不必要にペーパーを突出させないようにする。
この折曲操作板611がペーパーを三角形に折り畳む際において、折曲ガイド機構630は、そのファン632、633がペーパーの左右の縁端を、タイミングをずらして後方に煽る。これにより、左右の縁端の折り込みのタイミングに差異を生じさせ、両者の干渉を防いで折曲操作板611の山形の先端形状に沿う三角形に折り畳ませる。たとえば、図10(a)に示すように、右側のファン633の送風強度が左側のファン632より早いタイミングで送風する場合、ペーパーの右側の縁端PRが、左側の縁端PLより早く折り畳まれることとなる。これにより、左右の縁端PL、PRが干渉することなく、図10(b)に示すように整然と折り畳まれた先端部Ptを形成できる。
表示部700は、シャーシ11における側板11Lの前面側に屈曲形成された保持部11Bに設けられたLEDランプ701によって構成されている。LEDランプ121は、制御部100によって、たとえばペーパー残量が僅少になると点灯又は点滅するように制御される。
制御部100は、マイクロプロセッサ等を備え、シャーシ11の側板11Lの外面に固定された基板上に構成されている。制御部100は、上部カバー22を検知するカバーセンサ111、ペーパーロール検出部300におけるペーパーロールセンサ301と繰出センサ302、ペーパー切断部500におけるクランクセンサ112、ペーパー折曲部600における折曲センサ113、等からの検出情報に基づいて、ペーパー搬送機構400、ペーパー切断部500、ペーパー折曲部600及び表示部700を統括的に制御し、ペーパーロール保持部200に保持されたペーパーロール2からペーパーPをペーパー搬送機構400によって引き出してペーパー搬送経路401を搬送し、先端を三角形に折り畳んでカバー20の排出口24から所定量突出させたセット状態とする。なおこの実施形態では、この制御部100を上述した各部に係るモータ及び減速機構と共に側板11Lの外側に配置することにより、ペーパー切断部500によりペーパーを切断して発生するペーパーによる埃のこれら制御部100、モータ、減速機構への付着、侵入を低減し、この埃の付着、侵入による信頼性の劣化を有効に回避する。
つぎに、制御部100によるペーパーホルダー1の動作制御を、図11及び図12に示すフローチャートに沿って図13乃至図21を参照しつつ説明する。なお、図中及び以下の説明中において、ステップを「S」とも略記する。また、構成要素の符号については、前述した図1〜図10を参照のこと。
まず、図11にフローチャートを示す制御部100によるペーパーロール2の装着時における制御を説明する。新しいペーパーロール2の装着は、図13に示すように、上部カバー22を揺動開放して、ペーパーロール保持部200にペーパーロール2を保持させ、ペーパーPの先端部Peを上部搬送ローラ410の前側に垂らした状態として、上部カバー22を閉止する。これにより、図14に示すように上部カバー22の圧接リブ25が、ペーパーPの先端部Peを上部搬送ローラ410に移動駆動可能に圧接させる。
新しいペーパーロール2の装着時には、制御部100は、カバーセンサ111から上部カバー22の閉止検出情報の入力を判断する。制御部100は、ステップ101においてカバーセンサ111から上部カバー22の閉止検出情報の入力を判断する(Yes)と、ペーパーPをペーパー搬送経路401に引き込むように、上部搬送ローラ410を所定時間回転駆動する。すなわち、図14に示すように、上部搬送ローラ410を図中時計回り(これを順行回転と称する)に回転駆動する。これにより、ペーパーPの先端部Peは、上部搬送ローラ410の前側から後側のペーパー搬送経路401に引き込まれ、図15に示すように、上部搬送ローラ410と圧接部材430との間に挟まれて上部搬送ローラ410の回転によってペーパー搬送経路401を垂下駆動される。
制御部100は、上部搬送ローラ410を回転開始から所定時間後に停止させ、図18に示すように、ペーパーPの先端Pnが下部搬送ローラ450と対応する位置より所定量下側となったタイミングで、図19に示すようにペーパー折曲部600を駆動する(S103)。ステップ103におけるペーパー折曲部600を駆動するタイミングは、上部搬送ローラ410の回転開始からの経過時間で規定される。
ペーパー折曲部600の駆動は、折曲部材610の折曲操作板611を待機位置から作用位置に回動させ、直ちに作用位置から待機位置に戻す。これにより、図20に示すように、ペーパーPの中央が突出する三角形状の折り畳まれた先端部Ptが、下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間に挟まれてカバー20の排出口24より所定量突出したセット状態となる。以上によって、ペーパーロール2の装着時における制御は終了する。
従って作業者が、ペーパーPを著しく多量に引き出した状態でペーパーロール2をセットした場合、排出口24より突出するペーパーPは、先端が不恰好に折り畳まれることになる。またペーパーロール2にあっては、先端が解けないように糊により固定されている場合もあり、このようなペーパーロール2は、最外層より数層は、この糊が付着していることになる。この場合、ペーパーホルダー1にセットして排出口24より突出するペーパーPにあっては、このような糊の付着した箇所まで含まれることなる。これによりこのようにしてセットした後において、ペーパーホルダー1は、セットした作業者による排出口24からのペーパーPの引き出しにより、図12の使用時の処理が実行される。従ってこの図12に示す使用時における処理は、ユーザによりペーパーPの使用による操作だけでなく、セット時における作業者による操作によっても実行される。
つぎに、図12により示す制御部100による通常の使用時における制御を説明する。 図20に示すように、セット状態では、ペーパーPの三角形状に折り畳まれた先端部Ptが下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間に挟まれてカバー20の排出口24より所定量突出している。
制御部100による通常使用時の制御では、まず、ペーパーロール検出部300におけるペーパーロールセンサ301からの検出信号の入力の有無を判断する(S201)。ペーパーロールセンサ301は、前述したようにペーパーロール検出部300におけるアーム310がストッパ313によって規制されるまで揺動すると、その検出信号を制御部100に出力する。このため、ペーパーロールセンサ301から検出信号が入力している場合には、ペーパーロール保持部200にペーパーロール2が装着されていないか、または、ペーパーロール2の残量が1/3程度以下である。このため、制御部100は、ステップ201においてペーパーロールセンサ301からの検出信号が入力されていると判断する(Yes)と、表示部700におけるLEDランプ121を点灯させて、ペーパー残量僅少を表示する(S202)。
そして、制御部100は、ペーパーロールセンサ301からの検出信号の継続停止を判断する(S203)。ここで、ペーパーPを使用する際において使用者は、カバー20の排出口24より突出するペーパーPの先端部Ptをつまんで所望量を引き出し、任意の位置で切断する。また場合によっては、所望量を引き出して引き出しを停止させる。このペーパーPの引き出しによってペーパーロール2が回転すると、その外周面に圧接されているペーパーロール検出部300におけるローラ320が従動回転し、このローラ320の回転を検出しているペーパーロールセンサ301はその検出信号を制御部100に出力する。つまり、ペーパーロールセンサ301からの検出信号が入力されてその検出信号の継続が途絶えると、ペーパーPの引き出しが行われてそれが終了したと判断できる。この状態では、図21に示すように、ペーパーPの先端は、カバー20の排出口24から外部に突出している(突出部分Pu)。
制御部100は、ステップ203においてペーパーロールセンサ301からの検出信号の継続が停止したと判断する(Yes)と、ペーパー切断部500におけるブレード出入機構520を駆動して、ペーパーPを切断する(S204)。これにより使用者が排出口24からペーパーPを引き出して引きちぎったような場合、この引きちぎった部位からペーパー切断部500で切断した部位までのペーパーPが排出口24から落下することになる。また単純に、所望量を引き出して引き出しを停止させた場合、ペーパー切断部500で切断して引き出したペーパーPを取り出すことが可能になる。
ついで、制御部100は、上部搬送ローラ410を所定時間回転駆動し(S205)、図18に示すようにペーパーの先端が下部搬送ローラ450と対応する位置より所定量下側となったタイミングで、図19に示すようにペーパー折曲部600を駆動する(S207)。
これにより、図20に示すように、ペーパーPの三角形状に折り畳まれた先端部Ptが下部搬送ローラ450とペーパー押さえ470の間に挟まれてカバー20の排出口24より所定量突出したセット状態となる。つまり、使用する都度、セット状態とすることができる。。
以上説明したように、本実施形態に係るペーパーホルダー1は、板材の突出により可動する三角形形状の両辺に係るペーパーの下部を、空気流により押圧して折り曲げることにより、非接触により先端を折り曲げることができ、これにより部材の磨耗等による性能の劣化を有効に回避して、長期の使用においても先端をきれいに、かつ確実に折り曲げることができる。
〔第2実施形態〕
この実施形態では、排出口24の上下、カバー20に緩やかな凹部を設け(図1参照)、これにより排出口24より突出するペーパーPの先端を掴み易くする。これによりこの実施形態では、介護施設等でも使用する場合の使い勝手を向上する。
またさらにペーパー切断部500によりペーパーを切断する際に、音声再生機構により切断音を再生して出力し、これにより視覚障害者であっても、ペーパーの切断を知覚できるようにする。またさらに排出口24の上部に、ライン状の表示部を設け、ペーパー切断部500によりペーパーを切断する際に、この表示部全体を発光させ、又はこの表示部で発光箇所を走査させ、これにより聴覚障害者にあっても、ペーパーの切断を知覚できるようにする。
この実施形態では、排出口に凹部を設け、さらにペーパーの切断を音声により、さらには表示により通知することにより、一段と使い勝手を向上することができる。
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
すなわち上述の実施形態では、2つのファンによる送風のタイミングの設定によりペーパーの先端を折り曲げる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばファン以外の圧縮空気等による送風のタイミングの設定によりペーパーの先端を折り曲げる場合等、折り曲げの方法にあっては種々の手法を適用することができる。
また上述の実施形態では、円弧の軌跡を描くように折曲操作板611を可動させてペーパーの先端を折り曲げる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ペーパーホルダーの奥側より折曲操作板611を直動させて折り曲げるようにしてもよい。このようにすれば、ペーパーホルダー全体の厚みを薄くすることができる。
また上述の実施形態においては、シャーシ等の部材を金属により作製する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、樹脂等の部材により作成しても良く、この場合は全体を軽量化することができる。またブレード523についても、セラミックスにより作製してもよい。
また上述の実施形態では、各駆動部にそれぞれモータ、減速機構を項ける場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばクラッチによる駆動対象の切り替えにより、1つのモータにより複数の駆動対象を駆動するようにしてもよい。また減速機構を省略して低速で回転するモータにより直接駆動するようにしてもよい。
また上述の実施形態では、ローラ320の位置検出によりペーパーロールの残量を検出する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光学センサにより残量を検出する場合等、残量検出手法にあっては、種々の手法を広く適用することができる。
また上述の実施形態では、ペーパー受けトレイにペーパーの切断時に発生した塵を収納する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、さらに切断した先端側の端切れを収納するようにしてもよい。