以下に、本願発明を具体化した実施形態を普通型コンバイン(以下、単にコンバインと称する)に適用した図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
まず、図1乃至図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。図1乃至図3に示す如く、実施形態のコンバインは、走行部としての鉄製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトウモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
走行機体1の前部には、オペレータが搭乗する運転部としての運転台5を搭載する。運転台5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6を配置する。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン7を配置する。グレンタンク6の後部右側には、穀粒排出オーガ8を旋回可能に設ける。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8先端の籾投げ口8aから例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取装置3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9を搭載する。脱穀装置9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。
刈取装置3は、脱穀装置9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダ12とを備えている。穀物ヘッダ12内に掻込みオーガ13を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダ12の前部にバリカン状の刈刃15を配置する。穀物ヘッダ12前部の左右両側には分草体16を突設する。フィーダハウス11内には、供給コンベヤ17を設けている。供給コンベヤ17の送り終端と扱口9aとの間に穀稈受継用のビータ18を設けている。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、刈取装置3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
上記の構成において、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって穀物ヘッダ12の左右幅の中央部付近に集められる。穀物ヘッダ12の刈取り穀稈の全量は、供給コンベヤ17にて搬送され、ビータ18にて脱穀装置9の扱口9aに投入される。なお、穀物ヘッダ12を水平制御支点軸19a回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ19を備え、穀物ヘッダ12の左右方向の傾斜を水平制御用油圧シリンダ19にて調節して、穀物ヘッダ12、及び刈刃15、及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持する。
図1乃至図3に示す如く、脱穀装置9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方に、穀粒を漏下させる受網24(コンケーブ)を張設する。扱胴21前部の外周面には、螺旋状(スクリュー羽根状)の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
上記の構成において、扱口9aから投入された刈取り穀稈は、扱胴21の回転にて走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間で混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀装置9後部の排塵口から圃場に排出される。
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内における脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。
一方、脱穀装置9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン、チャフシーブ、グレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備えている。また、穀粒選別機構10は、選別風を供給する唐箕ファン29を備えている。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と唐箕ファン29の風選別とによって、穀粒(精粒等)の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物及び藁屑等に選別される。
揺動選別盤26の下方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口34から圃場に排出される。
さらに、図1乃至図3に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、走行機体1の進路を変更したり移動速度を変更したりするための操縦レバーとしての左右の変速レバー43,44と、前後方向に傾倒させて刈取装置3を昇降させたり左右方向に傾倒させて掻込みリール14を昇降させるための刈取姿勢レバー45と、エンジン7の回転を制御するアクセルレバー46と、穀粒排出オーガ8を作動させる穀粒排出レバー47とが配置されている。図示は省略するが、刈取装置3や脱穀装置9の動力伝達を入り切り操作する作業クラッチレバー等も配置されている。また、運転台5の上方側に支柱48を介して日除け用の屋根体49が取付けられている。
図1及び図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置する。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設ける。駆動スプロケット51によって履帯2の後側を支持させ、テンションローラ52によって履帯2の前側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
また、グレンタンク6の底部に配置させる底送りコンベヤ60と、グレンタンク6の後部に配置させる縦送りコンベヤ61とを備える。左右の底送りコンベヤ60は、グレンタンク6の底部で前後方向に延長されていて、垂直に設けた縦送りコンベヤ61の下端側に向けてグレンタンク6底部の穀粒を搬送する。縦送りコンベヤ61は、グレンタンク6の後部で上下方向に延長されていて、グレンタンク6右側にある穀粒排出オーガ8の送り始端側に向けて縦送りコンベヤ61上端側から穀粒を搬送する。グレンタンク6内の穀粒は、穀粒排出オーガ8先端(送り終端側)の籾投げ口8aに搬送される。
穀粒排出オーガ8は、縦送りコンベヤ61の上端側に上下回動可能に支持され、穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を昇降可能に構成する。また、縦送りコンベヤ61のコンベヤ軸芯回り(水平方向)に、穀粒排出オーガ8の籾投げ口8a側を移動可能に構成する。すなわち、走行機体1の前部下側に籾投げ口8a側を移動させ、運転台5及びグレンタンク6の右側部にオーガレスト8bを介して穀粒排出オーガ8を収納する。一方、穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を上昇させ、走行機体1の側方又は後方に籾投げ口8a側を移動させ、走行機体1の側方又は後方に穀粒排出オーガ8を突出させ、トラックの荷台やコンテナ等に籾投げ口8aを対向させることによって、トラックの荷台やコンテナ等にグレンタンク6内の穀粒が搬出される。
次に、図4を参照しながら、脱穀装置9の構造を説明する。図4に示す如く、脱穀装置9は、穀稈脱穀用の扱胴21と、扱胴21の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤26と、唐箕ファン29とを備えている。扱胴21の前部側はフィーダハウス11に連通する扱口9aに臨ませると共に、扱胴21の後部側は脱穀装置9後部の排塵口34に臨ませている。すなわち、扱胴21の後部側は、穀粒を漏下させる受網24の後端よりも更に後方に突出している。扱胴21の後部下側(受網24のない開口部分)が排塵口34になっている。なお、扱胴21の回転軸芯線は走行機体1の進行方向(前後方向)に沿って延びている。脱穀装置9における左右側壁体前部の内面側には、左右中央側に向けて斜め下向きに傾斜した傾斜板119が設けられている。当該傾斜板119によって扱胴21にて脱穀された脱粒物が揺動選別盤26の左右中央側に寄せられることになる。刈取装置3からフィーダハウス11及びビータ18を介して脱穀装置の扱口9aに全量投入された刈取り穀稈が、扱胴21にて脱穀される。
受網24の下方に位置する揺動選別盤26は、揺動リンク35を介して前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復揺動可能に構成されている。揺動選別盤26には、受網24の前部下方に位置するグレンパン36、穀粒漏下量を調節する可動チャフシーブ37及び固定チャフシーブ38、可動チャフシーブ37と一番コンベヤ機構30との間に配置されたグレンシーブ39、及び、固定チャフシーブ38の後端側に連設されたストローラック40を有している。扱胴21にて脱穀され受網24から零れ落ちた脱粒物は、往復揺動する揺動選別盤26のグレンパン36上に落下して比重選別されながら、後方のチャフシーブ37,38に送られる。チャフシーブ37,38上の脱粒物は、当該チャフシーブ37,38自体にて比重選別されると共に、唐箕ファン29から後方に流れる選別風を受け、穀粒と藁屑とに分離される。
可動チャフシーブ37及びグレンシーブ39から落下した穀粒(一番物)は、その中の粉塵を唐箕ファン29の選別風にて除去しながら一番コンベヤ機構30に集められる。一番コンベヤ機構30から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ32を介してグレンタンク6に搬入・収集される。可動チャフシーブ37及びグレンシーブ39を通過できなかった二番物や、固定チャフシーブ38から落下した二番物は、一番コンベヤ機構30後方の二番コンベヤ機構31に集められる。二番コンベヤ機構31に集められた二番物は、二番還元コンベヤ33を介して揺動選別盤26の上面側に戻して再選別される。チャフシーブ37,38上の比較的重い藁屑は、ストローラック40上を経て排塵口34から機外へ排出される。
次に、図5乃至図7を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図5に示す如く、一対の斜板可変型の左右走行油圧ポンプ65を有する走行変速用の油圧ポンプケース66を備える。走行機体1の右側後部上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1上面に油圧ポンプケース66を配置する。また、左右のトラックフレーム50の後端部に左右の減速ギヤケース63をそれぞれ設ける。左右の減速ギヤケース63に走行油圧モータ69をそれぞれ配置する。油圧ポンプケース66から後方に突出させた走行駆動入力軸64と、エンジン7から後方に突出させた出力軸67とを、エンジン出力ベルト231を介して連結する。脱穀装置9後部側方の走行機体1上面側にエンジン7と油圧ポンプケース66を設け、エンジン7と脱穀装置9の間に油圧ポンプケース66を配置している。
なお、昇降用油圧シリンダ4等を駆動するチャージポンプ68も、走行油圧ポンプ65と同軸64上に設けている。また、昇降用油圧シリンダ4または水平制御用油圧シリンダ19などを作動させる作業用油圧ポンプ70をエンジン7に配置し、走行油圧ポンプ65と同様に、チャージポンプ68及び作業用油圧ポンプ70をエンジン7にて駆動するように構成している。
上記の構成により、左右走行油圧ポンプ65に出力軸67を介してエンジン7の駆動出力が伝達される。左右走行油圧ポンプ65によって左右走行油圧モータ69を各別にそれぞれ駆動し、左右走行油圧モータ69によって左右履帯2を正逆転させて前後進移動させる。また、左右走行油圧モータ69の回転速度を制御し、左右走行油圧モータ69によって駆動する左右履帯2の回転速度を異ならせて、走行機体1の移動方向(走行進路)を変更し、圃場の枕地での方向転換などを実行するように構成している。
即ち、左右の走行油圧ポンプ65に、閉ループ油圧回路を介して左右一対の走行油圧モータ69が油圧接続される。左右走行油圧モータ69によって、駆動スプロケット51を介して、左右履帯2が前進方向又は後進方向に駆動される。オペレータが左右の変速レバー43,44を操縦操作して、左右の走行油圧ポンプ65の斜板角(変速制御)をそれぞれ調節することによって、左右の走行油圧モータ69の回転数又は回転方向がそれぞれ変更され、左右の履帯2が互いに独立的に駆動されて、走行機体1が前進移動又は後進移動するように構成している。
図5〜図7に示す如く、脱穀入力軸72を軸支した扱胴駆動ケース71を備える。走行駆動入力軸64に脱穀駆動ベルト232を介して脱穀入力軸72を連結する。テンションローラを兼用した脱穀クラッチ233と脱穀駆動ベルト232を介して、走行駆動入力軸64から脱穀入力軸72にエンジン7の動力を伝達させる。なお、オペレータのレバー操作によって脱穀クラッチ233が入り切り制御される。また、扱胴軸20の一端側(後端側)に扱胴駆動ベルト234を介して脱穀入力軸72が連結されている。脱穀クラッチ233の入り切り操作によって、脱穀入力軸72を介して扱胴21が駆動制御されて、ビータ18から投入された穀稈が扱胴21によって連続的に脱穀されるように構成している。
更に、脱穀装置9の前面壁体に刈取り選別入力ケース73を設ける。刈取り選別入力ケース73に刈取り選別入力軸74を軸支する。扱胴軸20の他端側(前端側)にベベルギヤ75を介して刈取り選別入力軸74の一端側(右側端部)を連結する。ビータ18が軸支されたビータ軸82の左側端部にビータ駆動ベルト238を介して刈取り選別入力軸74の他端側(左側端部)を連結する。唐箕ファン29を軸支した唐箕軸76の左側端部に選別入力ベルト235を介してビータ軸82の左側端部を連結する。一番コンベヤ機構30の一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31の二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト237を介して唐箕軸76を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト236を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。
なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒が揺動選別盤26の上面側に戻される。選別入力ベルト235、揺動選別ベルト236及びコンベヤ駆動ベルト237の組合せは、穀粒選別機構10への動力伝達用の選別駆動ベルトに相当するものである。
一方、ビータ軸82の左側端部には、刈取り駆動ベルト241及び刈取クラッチ242を介して、供給コンベヤ17の送り終端側が軸支された刈取入力軸89の左側端部を連結している。穀物ヘッダ12に設けたヘッダ駆動軸91に、ヘッダ駆動チェン90を介して刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支した掻込み軸93に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダ駆動軸91を連結する。掻込みリール14を軸支したリール軸94に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介してヘッダ駆動軸91を連結する。また、ヘッダ駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ242の入り切り操作によって、供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
図1、図5及び図6に示す如く、刈取装置3と、扱胴21を有する脱穀装置9と、運転座席42を有する走行機体1を備え、刈取装置3から脱穀装置9にフィーダハウス11及びビータ18を介して穀稈を供給する普通型コンバインにおいて、走行機体1の後部にエンジン7を搭載し、扱胴21が軸支された扱胴軸20の後端側にエンジン7の動力を伝達する一方、扱胴軸20の前端側から刈取装置3とビータ18にエンジン7の動力を伝達し、扱胴軸20を介してビータ18を駆動し、ビータ18を介して刈取装置3を駆動するように構成したものであるから、走行機体1の後部にエンジン7を配置することによって、刈り幅が幅広の大型の刈取装置3を安定良く支持でき、走行機体1の前後バランスを向上できる。即ち、湿田などでの収穫作業性または悪路での機動性を向上できる。また、扱胴軸20を利用してビータ18及び刈取装置3にエンジン7の動力を伝達するから、刈取装置3とエンジン7を離間させて設けても、エンジン7からビータ18又は刈取装置3への伝動経路を簡単に構成できる。即ち、刈取装置3または脱穀装置9などの駆動構造のメンテナンス作業性などを向上できる。
更に、図5に示す如く、走行駆動入力軸64の後端部に、穀粒排出ベルト244及び穀粒排出クラッチ245を介して、底送りコンベヤ60の底送りコンベヤ軸103の後端側を連結させる。底送りコンベヤ軸103の後端部に縦送り駆動チェン104を介して下部仲介軸105の一端側を連結させる。縦送りコンベヤ61の縦送りコンベヤ軸106の下端側に、ベベルギヤ機構107を介して仲介軸105の他端側を連結させる。縦送りコンベヤ軸106の上端側に、ベベルギヤ機構108を介して上部仲介軸109の一端側を連結させる。上部仲介軸109の他端側に穀粒排出駆動チェン110を介して穀粒排出軸111の一端側を連結させる。穀粒排出軸111の他端側にベベルギヤ機構113を介して穀粒排出オーガ8の排出オーガ軸112の送り始端側を連結させる。穀粒排出クラッチ245の入り切り操作によって、底送りコンベヤ60と縦送りコンベヤ61と穀粒排出オーガ8が駆動制御されて、グレンタンク6内の穀粒がトラック荷台やコンテナなどに排出される。
また、図2に示す如く、グレンタンク6の底部に、前後の穀粒排出口221,222を設けている。また、穀粒排出口221,222下方の走行機体1上面側に籾受け台223を出し入れ可能に配置している。籾受け台223を水平な作業姿勢に支持した状態で、運転座席42のオペレータとは別の作業者が籾受け台223に搭乗し、図示しない籾受け棒に籾袋を装着して、その籾袋にグレンタンク6内の穀粒を排出する。穀粒が充填された籾袋は、籾受け台223から圃場に転落させて回収する。
上記の構成により、穀粒排出口221,222からグレンタンク6内の穀粒を排出することによって、刈取り脱穀作業を中断することなく、グレンタンク6内の穀粒を排出できる。即ち、穀粒排出オーガ8からグレンタンク6内の穀粒を排出する作業に比べ、刈取り脱穀作業を中断する必要が殆どないから、収穫作業において、刈取り脱穀作業を中断する時間を短縮でき、収穫作業能率を向上できる。
次に、図8乃至図11を参照しながら、コンバインの油圧構造と走行駆動構造とについて説明する。図8に示す如く、油圧アクチュエータとして、前記刈取昇降用油圧シリンダ4と、前記水平制御用油圧シリンダ19と、掻込みリール14を昇降可能に支持する左右のリール昇降用油圧シリンダ251と、穀粒排出オーガ8を昇降可能に支持するオーガ昇降用油圧シリンダ252とを備える。水平制御用スイッチ254操作によって作動制御する水平制御用電磁油圧バルブ253を介して、水平制御用油圧シリンダ19に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。オペレータが水平制御用スイッチ254を操作して、水平制御用油圧シリンダ19を作動させることによって、走行機体1の左右傾斜を水平または任意傾斜に維持する。なお、詳細は図示しないが、刈取姿勢レバー45の上端部に水平制御用スイッチを設ける。
また、刈取昇降用手動油圧バルブ255を介して、刈取昇降用油圧シリンダ4に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。刈取姿勢レバー45を前後方向に傾倒させる操作によって、刈取昇降用油圧シリンダ4を作動させ、オペレータが刈取装置3を任意高さ(例えば刈取り作業高さまたは非作業高さ等)に昇降動させるように構成している。一方、リール昇降用手動油圧バルブ256を介して、リール昇降用油圧シリンダ251に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。刈取姿勢レバー45を左右方向に傾倒させる操作によって、リール昇降用油圧シリンダ251を作動させ、オペレータは掻込みリール14を任意高さに昇降動させて圃場の未刈り穀稈を刈取ることになる。
他方、オーガ昇降用手動油圧バルブ257を介して、オーガ昇降用油圧シリンダ252に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。穀粒排出レバー47を前後方向に傾倒させる操作によって、オーガ昇降用油圧シリンダ252を作動させ、オペレータが穀粒排出オーガ8の籾投げ口8aを任意高さに昇降動させる。なお、電動モータ(図示省略)によって穀粒排出オーガ8を水平方向に回動させて、籾投げ口8aを横方向に移動させる。即ち、トラック荷台またはコンテナの上方に籾投げ口8aを位置させ、トラック荷台やコンテナ内にグレンタンク6内の穀粒を排出する。
更に、図8に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65に左右の閉油圧回路261を介して左右の走行油圧モータ69をそれぞれ油圧接続している。左右の走行油圧ポンプ65の出力調節用斜板65aに、サーボバルブ機構262を介して左右の変速レバー43,44をそれぞれ連結させ、左右の変速レバー43,44の前後方向の傾斜角度に比例させて出力調節用斜板65aの支持角度が変更されるように構成している。即ち、左右の走行油圧ポンプ65によって左右の走行油圧モータ69がそれぞれ駆動され、減速ギヤケース63の減速ギヤ機構263を介して左右の走行油圧モータ69の駆動力が左右の履帯2にそれぞれ伝達され、左右の履帯2が前進方向または後進方向に駆動される。
上記の構成において、左右の変速レバー43,44を機体前方に傾倒させることによって、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で、走行機体1は前進方向に直進移動できる。左右の変速レバー43,44を機体後方に傾倒させることによって、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で後進(後退)方向に直進移動できる。一方、左右の変速レバー43,44の機体前方への傾斜角度を異ならせた場合、左右の変速レバー43,44の機体後方への傾斜角度を異ならせた場合、又は左右の変速レバー43,44のいずれか一方を機体前方に傾倒させながら他方を機体後方に傾倒させた場合は、走行機体1の進路を左右方向に修正できる。
換言すると、左右の変速レバー43,44の操作量又は操作方向を相違させた場合、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で、左右の変速レバー43,44の傾斜角度の差に比例した旋回半径で、走行機体1を左右方向に旋回移動できる。なお、チャージポンプ68の高圧油吐出側に、オイルクーラ264及びラインフィルタ265を介して左右の閉油圧回路261が接続され、左右の閉油圧回路261にオイルタンク266内の作動油を補給するように構成している。エンジン7の燃料タンク267の左側方の走行機体1上面にオイルタンク266が搭載され、燃料タンク267の上方側にシートフレーム268を介して運転座席42が配置されている。
更に、図9乃至図11に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65が内蔵された油圧ポンプケース66は、走行機体1後部の右側上面に搭載されたエンジン7と、走行機体1の左側上面に搭載された脱穀装置9の右側壁体との間で、前部支持体271と後部支持体272とを介して、走行機体1の上面側に固設する。走行機体1の上面に前部支持体271のU字状中間部をボルト273にて締結する。前部支持体271のU字状両端部に油圧ポンプケース66の左右側面をボルト274にて締結する。即ち、チャージポンプ68が配置された油圧ポンプケース66前部が走行機体1に前部支持体271にて支持されている。
図10及び図11に示す如く、走行機体1上面側の取付け台275に後部支持体272の底面側をボルト276にて締結する。後部支持体272の前面側に油圧ポンプケース66の後面側をボルト277にて締結させる。後部支持体272の後面から後方に向けて支持アーム体272aを延設し、支持アーム体272aの後端部に後部軸受体278の下端側をボルト279にて締結する。
また、油圧ポンプケース66の後面から後方に向けて走行駆動入力軸64の後端側を突出させ、後部支持体272と後部軸受体278に走行駆動入力軸64を貫通させる。前記後部支持体272と後部軸受体278間の走行駆動入力軸64上に、エンジン出力ベルト231が巻回されるエンジン出力伝達プーリ280と、脱穀駆動ベルト232が巻回される脱穀出力伝達プーリ281とを軸支する。後部軸受体278から後方に突出した走行駆動入力軸64の後端部に、穀粒排出ベルト244が巻回される穀粒排出駆動プーリ282を軸支する。即ち、カウンタ軸としての走行駆動入力軸64上に、カウンタプーリとしてのエンジン出力伝達プーリ280と脱穀出力伝達プーリ281と穀粒排出駆動プーリ282とを軸支する。
更に、エンジン7の出力軸67上にエンジン出力プーリ283を軸支し、エンジン出力伝達プーリ280とエンジン出力プーリ283との間にエンジン出力ベルト231を巻き掛ける。脱穀入力軸72の一端側に大径側の脱穀入力プーリ284を軸支し、脱穀出力伝達プーリ281と大径側の脱穀入力プーリ284との間に、脱穀駆動ベルト232を巻き掛ける。脱穀入力軸72の他端側に小径側の脱穀入力プーリ285を軸支し、扱胴軸20上の扱胴入力プーリ286と小径側の脱穀入力プーリ285との間に、扱胴駆動ベルト234を巻き掛ける。また、底送りコンベヤ軸103の後端側に穀粒排出プーリ287を軸支し、穀粒排出駆動プーリ282と穀粒排出プーリ287との間に、穀粒排出ベルト244を巻き掛ける。すなわち、エンジン7の出力軸67上にエンジン出力プーリ283と、カウンタ軸64上のカウンタプーリ280〜282と、脱穀装置9の脱穀入力プーリ284とが、走行機体1の後部側に動力伝達可能にまとめて配置されている。
上記の構成において、エンジン7から出力された駆動力は、カウンタ軸としての走行駆動入力軸64にて分岐されて伝達される。即ち、走行駆動入力軸64から左右の走行油圧ポンプ65にエンジン7の出力が伝達される。また、走行駆動入力軸64上の脱穀出力伝達プーリ281から、脱穀駆動ベルト232及び扱胴駆動ベルト234を介して、脱穀装置9の扱胴軸20にエンジン7の出力が伝達される。一方、走行駆動入力軸64上の穀粒排出駆動プーリ282から、穀粒排出ベルト244を介して、穀粒排出オーガ8にエンジン7の出力が伝達される。
図1、図5、図7及び図9に示す如く、走行機体1の後部にエンジン7を搭載し、走行機体1上に脱穀装置9及びグレンタンク6を設け、脱穀装置9の前方に刈取装置3を配置するコンバインにおいて、エンジン7の出力軸67と平行で同一高さ位置にカウンタ軸としての走行駆動入力軸64を設け、出力軸67上のエンジン出力プーリ283と、カウンタ軸64上のカウンタプーリ280〜282と、脱穀装置9の脱穀入力プーリ284を、走行機体1の後面に面一に配置した(まとめて配置した)ものであるから、エンジン7から脱穀装置9に動力を伝達する脱穀駆動ベルト232等を、エンジン7の後面側または脱穀装置9の後面側にコンパクトに組付けできる。すなわち、エンジン7から脱穀装置9やグレンタンク6に動力伝達するためのベルト駆動構造をコンパクトにして簡略化することが可能になる。また、エンジン7の出力ベルト231が巻き掛けられるエンジン出力伝達プーリ280(カウンタプーリ)を、エンジン7の振動が低減する位置に配置できる。
更に、走行機体1の後部を開放することによって、エンジン7の出力ベルト231又は脱穀装置9の脱穀駆動ベルト232等の交換又はメンテナンス作業を、走行機体1の後方側から簡単に実行できる。即ち、エンジン7の動力伝達構造を簡略化できるものでありながら、取扱い作業性を向上できる。しかも、グレンタンク6の後面側を利用して、穀粒排出オーガ8の縦送りコンベヤ61や、エンジン7のプレクリーナ及びマフラーといった付属部品を簡単に組付けできるという利点もある。
図5、図7及び図9に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65と左右の走行油圧モータ69を備え、左右の走行油圧ポンプ65によって左右の走行油圧モータ69を作動して、左右の履帯2を駆動する構造であって、走行駆動入力軸64上に左右の走行油圧ポンプ65を配置したものであるから、エンジン7に隣接させてエンジンルーム内に走行油圧ポンプ65をコンパクトに設置できる。また、エンジン7の冷却風によって走行油圧ポンプ65を簡単に空冷できる。左右の走行油圧ポンプ65と左右の走行油圧モータ69との油圧配管構造などを簡略化できるものでありながら、履帯2の駆動効率を向上できる。
図5、図7及び図9に示す如く、グレンタンク6後部下方の走行機体1にエンジン7を搭載し、走行機体1の後面に、グレンタンク6の穀粒排出プーリ287を、前記各プーリ280,281,282と面一に配置したものであるから、走行機体1の後部を開放することによって、グレンタンク6の穀粒排出ベルト244の交換又はメンテナンス作業を、走行機体1の後側方から簡単に実行できる。グレンタンク6への動力伝達構造を簡略化できるものでありながら、取扱い作業性を向上できる。
次に、図1、図6及び図12〜図14を参照しながら、脱穀装置9における左側壁体のカバー構造について説明する。図6等に示すように、脱穀装置9前部の刈取り選別入力ケース73から左右外側方に突出した刈取り選別入力軸74の下方に、穀稈受継用のビータ18及びビータ軸82が配置されている。ビータ軸82には、ビータ駆動ベルト238を介して刈取り選別入力軸74から動力伝達される。ビータ軸82に伝達された動力は、刈取装置3と穀粒選別機構10とに向けて、脱穀装置9の左側壁体側で前後に振り分けて分配される。すなわち、ビータ軸82から、刈取り駆動ベルト241及び刈取クラッチ242を介して、供給コンベヤ17の送り終端側を軸支する刈取入力軸89に動力伝達されると共に、選別入力ベルト235を介して唐箕軸76に動力伝達される。この場合、刈取入力軸89及び唐箕軸76は、ビータ軸82よりも更に下方に位置している。
図1及び図6に示すように、脱穀装置9における左側壁体の外面側は、上下及び前後に並ぶ計4枚のカバー体121〜124にて覆われている。これらカバー体121〜124は基本的に、コンバインの左側にある可動部(プーリ及びベルト等)を保護するためのものである。下部前カバー体123は刈取入力軸89や唐箕軸76の可動部を覆い隠し、下部後カバー体124は穀粒選別機構10における唐箕軸76より後方の可動部を覆い隠している。上部前カバー体121は刈取り選別入力軸74及びビータ軸82の可動部を覆い隠し、横側板としての上部後カバー体122は扱胴21の左側部を覆い隠している。下部の前後カバー体123,124及び上部前カバー体121は、脱穀装置9における左側壁体の外面側に着脱可能に装着されている。
上部後カバー体122は、その前部側にある縦軸125を回動支点として、横方向に開閉回動可能に設けられている。すなわち、上部後カバー体122の強度メンバーである上下一対の横フレーム126は、前端側が上部後カバー体122の前端面よりも突出している。脱穀装置9における左側壁体の前部外面側に設けられた上下2箇所の支持ステー部127に、各横フレーム126の突出端部が縦軸125にて回動可能に枢着されている。図12に示すように、脱穀装置9における左側壁体の上部側には、扱胴21を臨ませる矩形開口部128が形成されている。上部後カバー体122を閉じれば、脱穀装置9の矩形開口部128が塞がれ、上部後カバー体122を開ければ、矩形開口部128に臨ませた扱胴21や右受網部24b(詳細は後述する)が露出することになる。
図6及び図12に示すように、刈取り選別入力軸74及びビータ軸82の可動部、刈取入力軸89の可動部、並びに、穀粒選別機構10の可動部は、上部後カバー体122の周囲に位置していて、上部後カバー体122を迂回するように設けられている。従って、前記各可動部と上部後カバー体122とが共に脱穀装置9の左側壁体側にあるものの、上部後カバー体122の縦軸125回りの開閉回動が前記各可動部に干渉することはない。
一方、実施形態の受網24は格子状に形成されたコンケーブタイプのものであり、左右方向に分割可能な一対の受網部24a,24bの組合せにて構成されている。脱穀装置9の右側壁体寄りにある右受網部24bは、脱穀装置9の前面壁体や右側壁体等に固定されている。上部後カバー体122寄りにある左受網部24aは、上部後カバー体122と一体回動するように、上部後カバー体122の内面側に固定されている。上部後カバー体122を閉じた状態では、両受網部24a,24bにおける左右中央側の下端面が突き合わさって重なることになり、一対の受網部24a,24bによって、扱胴21の下半部が囲われる。
図12及び図14に示すように、脱穀装置9における後面壁体の外面側には、前後長手の係止ピン体129が設けられている。一方、上部後カバー体122の後部側には、後面壁体側の係止ピン体129に係脱可能に引っ掛かり係合するフックレバー130が回動操作可能に設けられている。フックレバー130は、係止ピン体129に引っ掛かり係合する方向に、引張バネ131にて常時付勢されている。上部後カバー体122を閉じる際に、フックレバー130が後面壁体側の係止ピン体129に引っ掛かり係合することによって、上部後カバー体122が閉じ状態に保持される。なお、上部後カバー体122の後部側には、フックレバー130の把手軸部が貫通する操作穴132が空いている。
上部後カバー体122を開ける際は、上部前カバー体121を予め取り外しておいてから、フックレバー130を係合解除方向に回動操作して、上部後カバー体122を左側方に開き回動させればよい。そうすれば、上部後カバー体122が左受網部24aと共に縦軸回りに回動し、脱穀装置9内の扱胴21や右受網部24bが露出する。上部後カバー体122を閉じる際は、上部後カバー体122の自由端側を脱穀装置に向けて押しやり、右方向に閉じ回動させるだけで済む。
以上の構成によると、刈刃15を有する刈取装置3と、扱胴21及び受網24を有する脱穀装置9とを備え、前記刈取装置3から前記脱穀装置9にフィーダハウス11及びビータ18を介して刈取穀稈を供給する普通型コンバインであって、前記脱穀装置9の左右一側方にグレンタンク6が配置され、前記脱穀装置9の左右他側部には縦軸125回りに開閉回動可能な横側板122が設けられ、前記横側板122の開き回動によって、前記脱穀装置9内の前記扱胴21及び前記受網24を露出させるから、前記横側板122の取付け高さをほとんど変更することなく、前記横側板122を開閉できることになる。このため、作業者の身長等に依らず、前記横側板122の開閉操作がし易く、前記従来技術のような開閉操作の不便さがない。また、前記横側板122は縦軸125回りに開閉回動する、すなわち水平回動する構造であるから、前記従来技術のようなガスシリンダ等のアクチュエータがなくても、前記横側板122を開き状態に維持することが可能になる。このため、アクチュエータの配置スペースを確保する必要がないし、部品点数も削減でき、製造コストの抑制に貢献する。
また、前記受網24は左右方向に分割可能な一対の受網部24a,24bの組合せにて構成され、前記横側板122寄りの前記左受網部24aは、前記横側板122と一体回動するように、前記横側板122の内面側に取り付けられているから、前記横側板122を開ければ、前記横側板122と共に前記左受網部24aも、前記縦軸125回りに開き回動することになる。このため、前記脱穀装置9における前記扱胴21及び前記受網24周辺の側方空間を大きく開放でき、清掃作業やメンテナンス作業がし易いのである。
特に実施形態では、前記脱穀装置9のうち前記横側板122より下方に穀粒選別機構10を備え、前記フィーダハウス11と前記脱穀装置9との間には、前記ビータ18が、前記扱胴21を軸支する前後長手の扱胴軸20の前端側より下方に配置され、走行機体1の後部に搭載されたエンジン7の動力が、前記扱胴軸20を介して前記ビータ18に伝達され、前記ビータ18に伝達された動力が、前記刈取装置3と前記穀粒選別機構10とに向けて、前記脱穀装置9の他側方で前後に振り分けて分配されるから、前記刈取装置3及び前記穀粒選別機構10への動力伝達系と、前記横側板122とは両方とも、前記脱穀装置9の他側方にあるものの、前記刈取装置3及び前記穀粒選別機構10への動力伝達系が前記横側板122を迂回して配置されることになる。このため、前記扱胴21や前記受網24のメンテナンス作業と、前記刈取装置3及び前記穀粒選別機構10への動力伝達系に対するメンテナンス作業との両方を、グレンタンク6設置側と反対側から簡単に実行でき、メンテナンス作業性が向上する。また、前記横側板122の開閉に際して、前記刈取装置3及び前記穀粒選別機構10への動力伝達系(例えば各種ベルト等)を取り外す必要がないから、前記横側板122の開閉操作性も良好なものになるのである。
次に、図15及び図16を参照しながら、扱胴21の詳細構造について説明する。図15及び図16に示すように、実施形態の扱胴21は、円盤状に形成された前後複数枚の支持体140と、これらの周方向に適宜間隔で並べて設けられた複数本の骨フレーム145とによって、略かご状に形成されたものである。支持体140は、前支持体141、後支持体142及び2つの中間支持体143によって構成されている。扱胴軸20は各支持体140(141〜143)の中央部を串刺し状に貫通していて、各支持体140(141〜143)が扱胴軸20に一体回転するように固定されている。前支持板141の前面側には、円錐台形状の扱口板144が設けられている。扱口板144の外周側に取込み羽根25が突設されている。
各骨フレーム145は扱胴軸20と平行状に延びていて、各支持体140を介して扱胴軸20に一体回転するように連結されている。骨フレーム145は断面多角形の棒材である。実施形態の骨フレーム145は矩形パイプ材にて構成されている(図16参照)。脱穀処理に際して、扱胴21におけるかご状の内部空間には、刈取り穀稈が入り込めることになる。このため、大量の刈取り穀稈が脱穀装置9内に搬送されたとしても、前記内部空間に刈取り穀稈を一時的に収容しながら脱穀処理して、脱穀負荷の急増を防止できるのである。各骨フレーム145には、半径方向外向きに突出する棒状扱歯146が扱胴軸20に沿った長手方向に多数並べて設けられている。実施形態では、丸棒状(断面円形)の棒状扱歯146が採用されている。
図16に示すように、扱胴軸20の軸線方向から見て、各骨フレーム145の長手一側面145a(半径方向外向きの側面)は扱胴21の回転接線方向に沿わせている。当該長手一側面145aに棒状扱歯146が立設されている。脱穀処理に際しては、骨フレーム145における半径方向外向きの2つのコーナ部と、扱胴21の回転方向に対峙する側面とで、刈取り穀稈の脱粒作用を促せることになる。各棒状扱歯146並びに各骨フレーム145の相互作用によって、刈取り穀稈から穀粒を効率よく分断したり叩き落としたりできる。
中間支持体143において扱胴軸20の貫通部分の周囲には、複数の貫通穴147が扱胴軸20を取り囲むように形成されている。これら各貫通穴147は、中間支持体143の軽量化のために形成されたものであるが、扱胴21におけるかご状の内部空間に入り込んだ刈取り穀稈の抜け道としても機能する。このため、前記内部空間に入り込んだ刈取り穀稈の滞留時間を短縮でき、脱穀処理された刈取り穀稈(排稈)の排出効率向上に寄与できる。すなわち、穀粒選別機構10での藁屑処理量の低減を図れ、脱穀負荷の低減と、脱穀及び選別性能の向上とを達成できるのである。
以上の構成によると、刈刃15を有する刈取装置3と、扱胴21を有する脱穀装置9とを備え、前記刈取装置3から前記脱穀装置9にフィーダハウス11を介して刈取り穀稈を供給する普通型コンバインであって、前記扱胴21は、扱胴軸20と平行状に延び且つ前記扱胴21の周方向に並ぶ断面多角形の複数本の骨フレーム145と、前記骨フレーム145に外向き突設される多数個の棒状扱歯146とを有し、前記扱胴軸20に支持板140を介して前記各骨フレーム145が支持されているから、前記各棒状扱歯146だけでなく、断面多角形の前記各骨フレーム145でも、刈取り穀稈の脱粒作用を促せる。前記各骨フレーム145が断面多角形であるから、刈取り穀稈から穀粒を分断したり叩き落としたりするのに効果的である。前記従来技術に比べて、前記各骨フレーム145が脱穀処理のための補助的な部材としてより一層機能することになる。従って、構造簡略化による低コスト化と脱穀効率向上との両方を同時に達成できる。
また、実施形態では、前記各骨フレーム145は矩形パイプ材にて構成され、前記各骨フレーム145の長手一側面145aを前記扱胴21の回転接線方向に沿わせているから、脱穀処理に際して、前記骨フレーム145における半径方向外向きの2つのコーナ部や、前記扱胴21の回転方向に対峙する側面によって、刈取り穀稈の脱粒作用を促せることになる。前記各棒状扱歯146並びに前記各骨フレーム145の相互作用によって、刈取り穀稈から穀粒を効率よく分断したり叩き落としたりできる。しかも、前記長手一側面145aが前記扱胴21の回転接線方向に沿うから、前記棒状扱歯146を前記扱胴21の回転方向に対して直交するように立設するのが簡単に行えるという利点もある。
更に、実施形態では、前記支持体143において前記扱胴軸20の貫通部分の周囲には、複数の貫通穴147が前記扱胴軸20を取り囲むように形成されているから、前記貫通穴147が、前記支持体143の軽量化だけでなく、前記扱胴21におけるかご状の内部空間に入り込んだ刈取り穀稈の抜け道としても機能する。このため、前記内部空間に入り込んだ刈取り穀稈の滞留時間を短縮でき、脱穀処理された刈取り穀稈(排稈)の排出効率向上に寄与できる。
次に、図17〜図20を参照しながら、グレンタンク6の支持構造を説明する。左右一対の履帯2にて支持された走行機体1は、複数本のフレームを平面視略格子状に連結してなる機体フレーム150を備えている。機体フレーム150の前部一側には、箱枠を組み合わせてなるステップフレーム151が設けられている。実施形態では、機体フレーム150のうち右寄りにある一対の桁フレーム152が前向きに延びていて、これら桁フレーム152の前向き突出部に、ステップフレーム151が立設されている。ステップフレーム151上に運転台5が配置されている。
走行機体1における脱穀装置9の後部一側方、すなわち、機体フレーム150の後部右側(ステップフレーム151の後方)には、箱枠状のエンジンルーム枠153が立設されている。エンジンルーム枠153の内部にエンジン7が防振支持されている。実施形態では、エンジンルーム枠153を構成する後部左縦フレームの下端側が、機体フレーム150後部の取付け台275に締結された後部支持体272の上面側に固定されている。後部支持体272もエンジンルーム枠153の構成要素として機能している。後部支持体272の位置からも明らかなように、走行機体1(機体フレーム150)における脱穀装置9とエンジン7の間に、油圧ポンプケース66が位置している。
ステップフレーム151及びエンジンルーム枠153は、脱穀装置9の右側壁体を左右横振れ不能に支持している。この場合、ステップフレーム151の左コーナ部が、連結プレート154を介して脱穀装置9の右側壁体に連結されている。エンジンルーム枠153の前部右コーナ部が、突っ支いアーム155を介して脱穀装置9の右側壁体に連結されている。そして、エンジンルーム枠153のうち右上梁フレームの中途部が、連結ブロック156を介して脱穀装置9の右側壁体に連結されている。
一方、グレンタンク6は、その下端側が左右の傾斜板6a,6bによって下窄まり状に形成されている。グレンタンク6内における下窄まりの底部に、前後長手の底送りコンベヤ60が配置されている。底送りコンベヤの後端側は、グレンタンク6の後面から後ろ向きに突出して、グレンタンク6の後面下部に設けられた受継ぎケース157に収容されている。底送りコンベヤ軸103は受継ぎケース157の後面側を貫通している。底送りコンベヤ軸103の後突出端側に穀粒排出プーリ287が設けられている。受継ぎケース154は、グレンタンク6の後面側に設けられた縦送りコンベヤ61の下端側に連通接続されている。なお、グレンタンク6内のうち底送りコンベヤ60の上方には、断面山型で前後長手の庇体158が設けられている。庇体158の存在によって、グレンタンク6内の穀粒自体が底送りコンベヤ60を圧密して穀粒搬送の障害になるのを防止している。
図17、図18及び図20に示すように、機体フレーム150の前部一側にあるステップフレーム151と、機体フレーム150の後部一側にあるエンジンルーム枠153とによって、グレンタンク6が下方から支持されている。この場合、ステップフレーム151の後部上横フレーム、並びに、エンジンルーム枠153における前部上横フレーム及び後部上横フレームの中央部に、グレンタンク6の下端部が載置固定される取付けブラケット161〜163が設けられている。これら取付けブラケット161〜163は、グレンタンク6における前後長手の下端部に対応するように一列状に並んでいる。ステップフレーム151側の取付けブラケット161には、グレンタンク6の下端前部がボルト締結されている。エンジンルーム枠153の前部取付けブラケット162には、グレンタンク6の下端中途部がボルト締結されている。エンジンルーム枠153の後部取付けブラケット163には、グレンタンク6の後面側に設けられた受継ぎケース157がボルト締結されている。
図20に示すように、グレンタンク6の一部である左傾斜板6a側は、脱穀装置9に上方から被さるようにオーバーラップしている。グレンタンク6の左右側面部は、それぞれ対応するトラックフレーム50の上方に位置している。グレンタンク6の左右幅は、機体フレーム150の左右幅内に収まっている。従って、グレンタンク6と脱穀装置9との両方が、機体フレーム150の左右幅内に収まっている。
走行機体1(機体フレーム150)のうちステップフレーム151とエンジンルーム枠153との間には作業可能なスペースが空いている。これを利用して、グレンタンク6における機外側の右傾斜板6bに、前後の穀粒排出口221,222が設けられている(図2及び図20参照)。そして、走行機体1(機体フレーム150)のうちステップフレーム151とエンジンルーム枠153との間に、出し入れ可能な籾受け台223が配置されている。グレンタンク6の下面側(穀粒排出口221,222)と、機体フレームとの間は、籾袋を装着して穀粒を充填させる作業が十分可能な程度の上下間隔が空いている。
さて、図2及び図20に示すように、脱穀装置9における右側壁体の外面側には、一番コンベヤ機構30に集められた一番物をグレンタンク6に搬送する縦長の揚穀コンベヤ32が立設支持されている。揚穀コンベヤ32は、グレンタンク6の左傾斜板6aを下から上向きに貫通している。揚穀コンベヤ32の長手中途部が、グレンタンク6の左傾斜板6aに、固定プレート164を介して連結されている。揚穀コンベヤ32の貫通部分は固定プレート164によって塞がれている。従って、揚穀コンベヤ32は、ステップフレーム151やエンジンルーム枠153と同様に、グレンタンク6を下方から支持する強度メンバーとしても機能している。
なお、実施形態では、揚穀コンベヤ32の上端側に、補助揚穀コンベヤ165が動力伝達可能で且つ着脱可能に装着されている。補助揚穀コンベヤ165を装着した状態では、補助揚穀コンベヤ165の上端側がグレンタンク6の上面開口から上方に突き出ることになる。補助揚穀コンベヤ165の存在によって収穫作業時の揚穀高さが確保され、グレンタンク6内に穀粒が分散して放出されることになる。普通型コンバイン輸送時の全高は、補助揚穀コンベヤ165を取り外しておくことで低くできる。
以上の構成によると、動力源としてのエンジン7を搭載した走行機体1と、刈刃15を有する刈取装置3と、扱胴21を有する脱穀装置9と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク6とを備えている普通型コンバインであって、前記走行機体1における前記脱穀装置9の後部一側方に、前記エンジン7を取り囲むエンジンルーム枠153が設けられ、前記走行機体1の前部にある運転部5を支持するステップフレーム151と前記エンジンルーム枠153とによって、前記グレンタンク6が下方から支持され、前記グレンタンク6の一部を前記脱穀装置9の上方にオーバーラップさせているから、普通型コンバインの全高を低く抑えながら前記グレンタンク6の容量を十分確保した上で、前記走行機体1(機体フレーム150)の左右幅内に、前記脱穀装置9と前記グレンタンク6とを左右バランスよく配置できる。このため、普通型コンバイン全体の重心バランスを向上させ(低重心化を図れ)、走行安定性の改善を図れるという効果を奏する。また、前記走行機体1の左右重量バランスが安定化するので、前記走行機体1の左右幅方向の振れを抑制できる利点もある。
特に実施形態では、前記脱穀装置9の他側方に、前記脱穀装置9から前記グレンタンク6に一番物を搬送する揚穀コンベヤ32が設けられ、前記グレンタンク6に前記揚穀コンベヤ32を下から上向きに貫通させて前記グレンタンク6と前記揚穀コンベヤ32とが連結されているから、前記揚穀コンベヤ32が前記グレンタンク6を下方から支持する強度メンバーとして機能することになる。従って、前記ステップフレーム151、前記エンジンルーム枠153及び前記揚穀コンベヤ32によって、前記グレンタンク6を安定支持できる。しかも、前記揚穀コンベヤ32が前記グレンタンク6を貫通しているから、前記揚穀コンベヤ32の存在によって、左右幅方向の前記グレンタンク6の左右幅方向の振れ、ひいては前記走行機体1の左右幅方向の振れをより一層低減できる。
次に、図19、図21〜図23を参照しながら、エンジン7の冷却風路構造について説明する。前述の通り、機体フレーム150の後部右側に立設されたエンジンルーム枠153の内部側に、エンジン7が防振支持されている。エンジン7の出力軸67は、エンジン7の前後両側面からそれぞれ突出している。出力軸67の後方突出部にエンジン出力プーリ283が軸支されている。出力軸67の前方突出部に冷却ファン170が設けられている。冷却ファン170の前方には、ファンシュラウド171を介してエンジン水冷用のラジエータ172が配置されている。エンジン7において脱穀装置9と反対側の他側方(機外側である右側方)から、ラジエータ172及び冷却ファン170の前方にかけての領域は、カバーダクト体173によって覆われている。カバーダクト体173は、エンジン7の冷却風路として機能するものである。カバーダクト体173(冷却風路)及びラジエータ172を介して、冷却ファン170にて外部の空気を取り込むことによって、前述のラジエータ172、エンジン7及びこれの側方に位置する油圧ポンプケース66が空冷されることになる。
カバーダクト体173は、エンジン7の右側方に位置する中空筺体状の側部ダクト174と、ラジエータ172及び冷却ファン171の前方に位置する中空筺体状の前部ダクト175とによって、平面視略L字状に構成されている。カバーダクト体173(側部ダクト174及び前部ダクト175)は、エンジン7を取り囲むエンジンルーム枠153に連結支持されている。図22に示すように、側部ダクト174の高さ位置は、前部ダクト175の高さ位置よりも高くなるように設定されている。側部ダクト174における機外側の右側面に、複数の外気取入れ口176(実施形態では4つ)が形成されている。各外気取入れ口176には防塵用フィルタ177が設けられている。前部ダクト175の後面側が開口している。当該開口にラジエータ172を臨ませている。
側部ダクト174の左側前部と、前部ダクト175の右側部とが連通している。前述の通り、側部ダクト174の高さ位置と前部ダクト175の高さ位置とを異ならせているため、側部ダクト174の前部下側には、外気取入れ口176から取り込まれて側部ダクト175内の下部側を流れる冷却風を前部ダクト175の底面側へ案内するように、前方斜め下向きに傾斜した傾斜案内部178が形成されている。また、前部ダクト175の上部右側には、側部ダクト175内の上部側を流れる冷却風を前部ダクト175へ案内するように、左方斜め下向きに傾斜した傾斜案内部179が設けられている。前部ダクト175上の傾斜案内部179は、グレンタンク6の右傾斜板6bに沿って延びている。これら両傾斜案内部178,179の存在によって、側部ダクト174の高さ位置と前部ダクト175の高さ位置とを異ならせているにも拘らず、側部ダクト174と前部ダクト175との連通口180を上下方向に大きく取れ、外気取入れ口176から取り込まれた冷却風を側部ダクト174から前部ダクト175にスムーズに送り込める。
側部ダクト174内のうち傾斜案内部178の上方には、側部ダクト174右側面の前部側にある2つの外気取入れ口176からの冷却風の取り込みを規制するパンチ穴付きの遮蔽板181が配置されている。当該箇所に遮蔽板181を配置すると、前側2つの外気取入れ口176からの冷却風の吸引圧力が抑制されることになり、4箇所全ての外気取入れ口176からできるだけ多くの冷却風を取り込んで、風速を抑制しつつも十分な冷却風量を確保することが可能になる。
図22から分かるように、側部ダクト174の下方は、エンジン7の右側方下部が露出する開口182になっている。当該開口182は着脱可能な側部カバー183にて覆われている。従って、側部カバー183を取り外せば、エンジン7の右側方下部を露出させることができ、エンジン7等の清掃や整備といったメンテナンス作業を手軽に行える。
なお、前部ダクト175上の傾斜案内部179と、グレンタンク6の右傾斜板6bとの形状関係からも分かるように、エンジン7の上方側はグレンタンク6によって覆われている。エンジン7及び油圧ポンプケース66の左側方が脱穀装置9にて覆われた状態であることは言うまでもない。
図19及び図21に示すように、エンジン7及び油圧ポンプケース66の後方側は、縦長板状の3つの背面カバー185〜187にて覆われている。中央背面カバー185は、エンジンルーム枠153後部側の中央支持バー188に設けられたヒンジ189を介して水平開閉回動可能に構成されている。中央背面カバー185を開き回動させると、エンジン出力プーリ283や穀粒排出プーリ287、各種カウンタプーリ280〜282等が露出することになる。左背面カバー186は、エンジンルーム枠153後部側の左支持バー190に設けられたヒンジ191を介して水平開閉回動可能に構成されている。左背面カバー186を開き回動させると、脱穀入力プーリ284,285や各種カウンタプーリ280〜282等の側方が現れることになる。右背面カバー187は、エンジンルーム枠153後部側の右支持バー192に固定されている。
中央及び左背面カバー185,186にはそれぞれ、複数のフィルタ付き外気排出口193,194が設けられている。ラジエータ172、エンジン7及び油圧ポンプケース66に吹き付けられた後の暖気は、機体フレーム150の下方や、中央及び左背面カバー186の外気排出口193,194から排出されることになる。
以上の構成によると、動力源としてのエンジン7を搭載した走行機体1と、刈刃15を有する刈取装置3と、扱胴21を有する脱穀装置9とを備えている普通型コンバインであって、前記走行機体1における前記脱穀装置9の後部一側方に前記エンジン7が配置され、前記エンジン7の前方に、前記エンジン水冷用のラジエータ172と、前記エンジン7及び前記ラジエータ172空冷用の冷却ファン170とが配置されている一方、前記エンジン7において前記脱穀装置9と反対側の他側方から、前記ラジエータ172及び前記冷却ファン170の前方にかけての領域を覆うカバーダクト体173によって、前記エンジン7の冷却風路が形成されているから、前記エンジン7の出力軸67と平行になる前記カバーダクト体173の他側部に、開口面積の広い外気取入れ口176を形成することが可能になる。このため、冷却風路に取り込まれる冷却風量を十分確保しながら、その吸引圧力を抑制でき、冷却風の取り込みに伴う藁屑等の塵埃の付着を低減できる。また、前記冷却ファン170の羽根の向きを切り換えて塵埃を除去するといった複雑な構造が不要になり、コストダウンにも貢献できる。
また、前記カバーダクト体173が、前記エンジン7の他側方に位置する側部ダクト174と、前記ラジエータ172及び前記冷却ファン170の前方に位置する前部ダクト175とによって構成され、前記側部ダクト174の高さ位置が前記前部ダクト175の高さ位置よりも高く設定され、前記側部ダクト174における機外側の側面に外気取入れ口176が形成されているから、前記側部ダクト174の高さ位置が圃場から離れる分だけ、藁屑等の塵埃の付着防止に高い効果を発揮する。しかも、前記側部ダクト174の下方は、前記エンジン7における他側方の下部が露出する開口182に形成され、前記開口182が着脱可能な側部カバー183にて覆われているから、高さ位置の相違によって形成された前記開口182を有効利用して、前記側部カバー183の取り外しにて前記エンジン7の他側方下部を露出させ、前記エンジン7等の清掃や整備といったメンテナンス作業を手軽に行えるという利点もある。
特に実施形態では、前記走行機体1における前記脱穀装置9と前記エンジン7の間には、油圧ポンプケース66が配置されているから、前記エンジン7への冷却風によって油圧ポンプケース66も併せて冷却できる。前記油圧ポンプケース66専用の冷却構造が不要であるから、油圧系統の安定駆動を維持しつつコストダウンに貢献できる。