JP5828431B2 - 増幅器及び増幅方法 - Google Patents

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Description

本発明は、無線送信機のアンテナに供給する送信波の電力を増幅する増幅器及び増幅方法に関する。
無線通信の黎明期より、増幅素子のバイアスを深くすることで増幅素子に電流が流れる時間を短くする高効率化手法(いわゆるC級動作)が用いられている。
また、他の高効率化手法として、上述したC級動作のように増幅素子のバイアスを深くすることなく、増幅素子の動作波形のピークを平坦化することにより、増幅の効率を向上させることが知られていた。ここで、例えば、増幅素子がFET(Field Effect Transistor)の場合、動作波形としてドレイン端子における電圧波形におけるピークを平坦化する。F級増幅器は、上述した増幅素子の動作波形のピークを平坦化し、増幅の効率を向上させる設計思想による高効率増幅回路のひとつである。
ここで、増幅回路の動作波形におけるピークを平坦化することは、動作波形の中に高調波成分が含まれていることと等価となる。このため、高調波に対するインピーダンスを適切に制御することによって、動作波形のピークの平坦化の制御を行うことができる。
すなわち、上述したF級増幅は、増幅器における高調波に対するインピーダンスの制御により、増幅素子(FFT)の動作を高効率化する手法である。
F級増幅回路における増幅素子を、ゲート電圧によって制御される理想的な電流源とした場合、F級動作は、図12に示すように、理想的にはドレイン電圧が矩形波、ドレイン電流が半波正弦波となる。この図12は、理想的なF級動作におけるドレイン電圧(実線)及びドレイン電流(破線)を示す図である。また、この図12において、縦軸が電圧値(V)あるいは電流値(I)を示し、横軸が時間を示している。この図12に示されるように、F級動作においては、ドレイン電圧が矩形波となり、またドレイン電流が半波正弦波となる。すなわち、増幅素子において、電流と電圧とが共存する時間が零となっているため、増幅素子自身が消費する電力(ドレイン損失)は零となる。したがって、理想的なF級増幅により、F級増幅器のドレイン効率は100%となる。
次に、図13は、F級増幅器の構成を示す図である。この図13において、増幅回路100は、増幅素子101、インダクタ102及び負荷回路103を備えている。負荷回路103は、高調波フィルタ104及び負荷(例えば、アンテナ)105を有している。この図13の構成においては、増幅素子101としてFETを用いている。理想的な増幅素子101のF級動作において、増幅素子101から負荷の方向を見込んだ入力インピーダンス(負荷インピーダンス)Zinを、以下の(1)式に示すように、増幅素子101のゲートに供給される基本波に対して整合させ、偶数次高調波に対して短絡、そして奇数次高調波に対して開放とする必要がある。
しかし、高周波に対応した増幅回路100においては、実際の増幅素子101の動作周波数、オン抵抗、ドレイン端子に接続される受動部品(高調波フィルタ104及び負荷105など)における損失、製造精度等のF級動作に対して好ましくない要素を有する。このため、増幅素子101のドレイン損失をなくしドレイン効率を100%とする理想的なF級動作を実現することがは非常に難しい。特に、高調波周波数における増幅素子の特性から、ドレイン電流を完全な半波正弦波とし、かつドレイン電圧を完全な矩形波とする増幅素子のF級動作の実現は困難である。この理由としては、増幅素子101における電子及び正孔の移動度や増幅素子を封止するパッケージの寄生成分によって、増幅素子101が動作周波数に対して限界の周波数を有することになり、高周波でのスイッチングに動作に追従できなくなるためである。
図14は、増幅素子のドレイン電圧及びドレイン電流に含まれる高調波次数と、それぞれの高調波による動作におけるF級増幅器のドレイン効率との対応を示すテーブルの図である。この図14においては、nがドレイン電圧に含まれる奇数次高調波の最高次数を表し、mがドレイン電流に含まれる偶数次高調波の最高次数を示している。この図14において、n=1、m=1におけるドレイン効率は、ドレイン電流とドレイン電圧との双方が正弦波、すなわちA級動作におけるドレイン効率を示している。
また、n=∞及びn=∞のドレイン効率は、ドレイン電圧が矩形波であり、ドレイン電流が半波正弦波である理想的なF級増幅の動作におけるドレイン効率を示している(例えば、非特許文献1参照)。
例えば、n=1、m=2のドレイン効率は、ドレイン電圧の動作波形が基本波のみであり、ドレイン電流に2倍波までが含まれるF級動作におけるドレイン効率である。図14において、n=1、m=2のドレイン効率は、70.7%である。
図15は、F級増幅器の負荷インピーダンスの状態に起因して、基本波の2倍波の位相が最適状態からずれた一例を示す波系図である。この図15においては、基本波の2倍波が、最適状態の位相に対して21°ずれた場合における増幅素子のドレイン電流の波形を示している。この図15において、縦軸がドレイン電流の電流値を示し、横軸が時間を示している。図15における実線は、基本波の2倍波の位相が最適値からφ=21°ずれた場合のドレイン電流の動作波形を示している。この2倍波の動作波形の位相が、最適値からφ=21°ずれた場合、増幅素子のドレイン効率が58.2%に劣化してしまう。
一方、図15における点線は、基本波の2倍波の位相が最適値の状態の動作波形を示している。基本波の2倍の位相が最適値の場合、増幅素子のドレイン効率は図14に示される70.7%のドレイン効率となる。非特許文献2に示されているように、負荷回路の高調波インピーダンスにおける位相角の偏差は、F級増幅器におけるドレイン効率に大きな影響を及ぼす。このように,負荷回路の高調波インピーダンスを厳密に実現することはF級増幅器が高効率に動作するための必須条件である.
すでに述べたように、F級動作においては、偶数次高調波に対して短絡となり、奇数次高調波に対しては開放となる負荷インピーダンスを実現することが必要となる。このF級動作のための負荷インピーダンスを実現するための方法として、低い周波数帯においては集中定数を使用した回路構成が提案されてきた(例えば、非特許文献3参照)。
また、マイクロ波帯の電力増幅器を製作する場合、分布定数回路を使用した回路構成が主流であり、高い次数の高調波に対応するインピーダンスまで制御した負荷回路が提案されている(例えば、非特許文献4参照)。一方、この非特許文献3の負荷回路は、高調波の位相を正確に調整する機構を有していないため、高調波の動作波形の位相変化に対応することができない。
また、通常の電力増幅用半導体増幅素子(例えば、FET等)は、外的な環境から素子自体を保護するためにパッケージ化されている。このため、増幅素子本体のドレイン端子から、パッケージ外部に設けられた外部端子までの配線区間には、位相を変化させる電気長及び寄生成分が存在している。また、この電気長あるいは寄生成分は、増幅素子及びパッケージ間の関係により、素子毎に個体差が存在している。そのため、高調波インピーダンスの位相角に、図15に示すようなずれが生じ、ドレイン効率が劣化してしまう問題がある。
このため、高調波インピーダンスの位相角を最適化し、高い効率を有する増幅動作の実現には、増幅器回路の個体ごとに、高調波インピーダンスの位相角を調整することが必要となる。また,増幅素子毎に個体差が存在しない場合においても、他のインピーダンス条件に影響を与えることなく、高調波インピーダンスの位相角のみを調整する機構が備えられていれば、増幅回路の回路設計を簡易にできる利点がある。
高調波インピーダンスの位相角の調整を正確に実現するため、高調波整合反射形増幅器(HMRA;High efficiency harmonic matching and reflection amplifier)が考案されUHF(Ultra−High Frequency)帯で用いられている(例えば、特許文献5参照)。
図16は、HMRAの回路の基本的な概念を示す図である。増幅素子101は、入力される基本波を増幅し、基本波成分と高調波成分とを出力する。
そして、出力整合部201は、増幅素子101から負荷の方向を見込んだ負荷インピーダンスを基本波に対して整合する回路である。高調波反射フィルタ202は、増幅素子101から出力される基本波成分をそのまま透過させ、2倍波成分を適切な位相により増幅素子に反射させる。このように、高調波反射フィルタ202は、基本波成分に対する負荷インピーダンスに対して影響を与えずに、高調波インピーダンスの位相角成分のみを調整し、反射させる機能を有しており、F級増幅器の動作に必要な高精度の負荷インピーダンス条件を実現することができる。
HMRAの回路において、高調波反射フィルタ202には、例えば、特性インピーダンスを有する複数の線路を接続し、2倍波を全反射する点(線路の接続点)が設けられている。しかしながら、高調波反射フィルタ202は、設けられた全反射する上記点における反射係数が実際には全反射とすることができず、反射の際に反射損失が存在する。
この反射損失の存在を解決するため、HMRAを2個用意し、高調波フィルタをそれぞれのHMRAに接続し、2つのHMRA間で高調波がプッシュプル動作を行う高調波リアクション型増幅器(HRA;Harmonic Reaction Amplifier)が考案された(例えば、非特許文献5参照)。
図17は、HRAの回路の基本構成を示す図である。分配器301は、入力される入力無線周波数信号を同一の位相で、かつ同一電力に分配し、分配した一方を増幅素子101_1に対し、他方を増幅素子101_2に対して出力する。増幅素子101_1は、増幅した入力無線周波数信号を高調波反射フィルタ202_1及び基本波抑圧フィルタ303_1に対して出力する。また、増幅素子101_2は、増幅した入力無線周波数信号を高調波反射フィルタ202_2及び基本波抑圧フィルタ303_2に対して出力する。高調波反射フィルタ202_1及び高調波反射フィルタ202_2の各々は、それぞれ入力無線周波数信号の基本波成分を合成器302に対して出力する。合成器302は、高調波反射フィルタ202_1及び高調波反射フィルタ202_2の各々から供給される基本波成分を合成し、アンテナ203を介して空間に放射する。
基本波抑圧フィルタ303_1は、増幅素子101_1から供給される入力無線周波数信号の2倍波成分を移相器304に対して出力する。同様に、基本波抑圧フィルタ303_2は、増幅素子101_2から供給される入力無線周波数信号の2倍波成分を移相器304に対して出力する。
移相器304は、増幅素子101_1から供給される入力無線周波数信号の2倍成分の位相を調整し、増幅素子101_2に対して出力し、増幅素子101_2から供給される入力無線周波数信号の2倍波成分の位相を調整し、増幅素子101_1に対して出力する。
すなわち、移相器304における位相量の調整により、増幅素子の各々で発生した入力無線周波数信号の2倍波成分は、それぞれ2倍波経路(基本波抑圧フィルタ303_1、基本波抑圧フィルタ303_2及び移相器304からなる経路)を通過し、一方の増幅素子の出力端子(例えば、増幅素子がFETであればドレイン端子)から他方の増幅素子の出力端子に到達する。このHRAの回路において、移相器304の移相量を適切な値に設定することにより、高精度でF級増幅器の動作波形を実現することが可能である。
F.H.Raab,"Maximum efficiency and output of Class-F power amplifiers, "IEEE Trans. on Microwave Theory and Techniques,Vol.49,No.6,pp.1162-1166,June 2001.
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本城和彦、 小林由紀子、"高fmaxマイクロ波トランジスタを用いた高調波処理型超高効率F級増幅回路,"電子情報通信学会論文誌 C,Vol. J85−C No.11、pp.953−960,2002/11/01.
千葉耕司,冠昇,"900MHz帯GaAsFET高効率電力増幅器,"信学技報,MW83−24,Jun.1983.
しかしながら、図16に示すように、HRAの回路は、高調波抑圧フィルタ202_1及び基本波抑圧フィルタ303_1からなる分波器304_1と、高調波抑圧フィルタ202_2及び基本波抑圧フィルタ303_2からなる分波器304_2とを有している。分波器304_1及び分波器304_2の各々は、マイクロ波帯のHRAの回路を構成する場合、それぞれ分布定数回路、例えば1/4波長の伝送線路が6本使用した分布定数回路で構成されている。このため、この分波器の存在が、マイクロ波帯のHRA回路を構成する際、実装面積を抑制して小型高集積化を実現するための制約となる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、伝送線路を用いた分布定数回路を用いることなく、高調波リアクション型増幅器の実装面積を抑制して小型集積化が可能な増幅器及び増幅方法を提供することを目的とする。
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の増幅器は、アンテナ放射導体と該アンテナ放射導体の中心に対して対称な位置に設けられた第1給電点及び第2給電点の2個の給電点を備えるアンテナと、予め定められた周波数の基本波を含む信号を、同一振幅の第1信号及び第2信号に分配する電力分配器と、前記第1信号を増幅し、第1増幅信号として前記第1給電点に対して出力する第1増幅器と、前記第2信号を増幅し、第2増幅信号として前記第2給電点に対して出力する第2増幅器と、前記第1増幅器の出力端子と前記第1給電点との間に介挿された第1移相器と、前記第2増幅器の出力端子と前記第2給電点との間に介挿された、前記第1移相器と同一の電気長を有する第2移相器と、前記第1信号が出力される前記電力分配器の第1出力端子と前記第1給電点との間の信号経路中のいずれかの位置に介挿された、電気長が基本波の波長λの1/2である第3移相器とを備え、前記第1移相器及び前記第2移相器、前記第1増幅信号又は前記第2増幅信号における2倍波成分の電圧定在波の節が前記第1増幅器の出力端子及び前記第2増幅器出力端子の各々で生成されるように、それぞれ移相量が設定されたことを特徴とする。
本発明の増幅器は、前記第3移相器が、前記第1出力端子と前記第1増幅器の入力端子との間の信号経路中に設けられていることを特徴とする。
本発明の増幅器は、前記第3移相器が、前記第1増幅器の出力端子と前記第1給電点との間の信号経路中に設けられていることを特徴とする。
本発明の増幅方法は、アンテナ放射導体と該アンテナ放射導体の中心に対して対称な位置に設けられた第1給電点及び第2給電点の2個の給電点を備えるアンテナに対し、前記第1給電点及び前記第2給電点の各々に供給する信号を増幅する増幅方法であって、予め定められた周波数の基本波を含む信号を、同一振幅の第1信号及び第2信号に分配する電力分配過程と、第1増幅器により前記第1信号を増幅し、第1増幅信号として出力する第1増幅過程と、第2増幅器により前記第2信号を増幅し、第2増幅信号として出力する第2増幅過程と、第1移相器により前記第1増幅信号の位相を移相して、前記第1給電点に供給する第1移相過程と、第2移相器により前記第2増幅信号の位相を前記第1移相過程による移相と同一の移相量だけ移相して、前記第2給電点に供給する第2移相過程と、前記第1増幅過程を行う前の前記第1信号、前記第1移相過程を行う前前記第1増幅信号、及び前記第1移相過程を行った後の前記第1増幅信号のいずれかの位相を基本波の波長λの1/2だけ移相する第3移相過程とを有し、前記第1移相器及び前記第2移相器は、前記第1増幅信号又は前記第2増幅信号における2倍波成分の電圧定在波の節が前記第1増幅器の出力端子及び前記第2増幅器出力端子の各々で生成されるように、それぞれ移相量が設定されたことを特徴とする。
この発明によれば、第1増幅器の出力端子と第2増幅器の出力端子との間で2倍波の電圧定在波が発生するように、この第1増幅器の出力端子と第2増幅器の出力端子とが2倍波の節となるように、第1移相器及び第2移相器の電気長を設定しているため、第1増幅素子及び第2増幅素子の各々において、一方から出力される増幅信号を他方の出力端子に注入することにより、高効率のF級動作を実現するため、F級増幅器の動作に必要な負荷インピーダンス条件を正確に実現することができる。
上述したように、この発明によれば、アンテナの給電点に対する2倍波の移相を調整することにより、アンテナ自体が高調波インピーダンス条件を満たすフィルタとして動作するため、従来のように、基本波の波長λの1/4の電気長を有する線路のような長大な部品からなる高調波反射フィルタを設ける必要がなく、無線送信機の小型高集積化を容易に実現することができる。
この発明の第1の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。 ンテナ15の構成例を示す図である。 電磁界解析によって求めた、アンテナ15における電流密度分布を示す図である。 本実施形態の変形例である、垂直偏波及び水平偏波の双方に対応する正方形マイクロストリップアンテナを用いた場合の無線送信機の構成例を示す図である。 この発明の第2の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。 この発明の第3の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。 図6におけるアンテナ45の構成例を示す平面図である。 電磁界解析によって求めた、アンテナ45における電流密度分布を示す図である。 この発明の第4の実施形態によるアンテナ55の構成例を示す平面図である。 電磁界解析によって求めた、アンテナ55における電流密度分布を示す図である。 アンテナ55に入力される信号の周波数に対するSパラメータ特性解析結果を示す図である。 理想的なF級動作におけるドレイン電圧(実線)及びドレイン電流(破線)を示す図である。 F級増幅器の構成を示す図である。 増幅素子のドレイン電圧及びドレイン電流に含まれる高調波次数と、それぞれの高調波による動作におけるF級増幅器のドレイン効率との対応を示すテーブルの図である。 F級増幅器の負荷インピーダンスの状態に起因して、基本波の2倍波の位相が最適状態からずれた一例を示す波系図である。 HMRAの回路の基本的な概念を示す図である。 HRAの回路の基本構成を示す図である。
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。この図1において、無線送信機1は、分配器11と、移相器12と、増幅素子13_1と、増幅素子13_2と、移相器14_1と、移相器14_2と、アンテナ15とを備えている。なお、増幅素子13_1及び増幅素子13_2の各々の出力端子の先に設けられる、各々の増幅素子から出力される増幅信号における基本波成分及び2倍波成分それぞれの周波数に対して整合を取る整合回路に関する記載は省略している。また、入力される基本波の周波数は、2.225GHzとして説明する。また、分配器11、移相器12、増幅素子13_1、増幅素子13_2、移相器14_1及び移相器14_2の各々の構成が増幅器10を構成している。
分配器11は、電力分配器であり、増幅器10の入力端子から入力される信号である入力無線周波数信号(基本波)を同一位相、同一振幅にて第1信号と第2信号との各々に分配し、それぞれ第1出力端子、第2出力端子から出力する。
移相器12は、入力端子が分配器11の第1出力端子に接続され、出力端子が増幅素子13_1の入力端子に接続されている。また、移相器12は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)が、入力無線周波数信号の波長λの1/2であり、第1信号の位相を第2信号に対して180°移相する。これにより、第1信号の位相は、第2信号の位相に対して逆位相となる。
増幅素子13_1は、入力端子が移相器12の出力端子に接続され、出力端子が移相器14_1の入力端子に接続されている。また、増幅素子13_1は、入力端子から供給される位相がλ/2移相された基本波である第1信号を増幅し、増幅した信号を第1増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子13_1は、基本波である入力無線周波数信号と、増幅過程で発生した高調波である2倍波とで出力整合を取り、この2倍波を十分に発生させ、基本波とともに出力する。
増幅素子13_2は、入力端子が分配器11の第2出力端子に接続され、出力端子が移相器14_2の入力端子に接続されている。また、増幅素子13_2は、入力端子から供給される基本波である第2信号を増幅し、増幅した信号を第2増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子13_2は、増幅素子13_1と同様に、基本波である入力無線周波数信号と、増幅過程で発生した高調波である2倍波とで出力整合を取り、この2倍波を十分に発生させ、基本波とともに出力する。
移相器14_1は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)がXであり、入力端子から供給される第1増幅信号の位相を、移相回転量Xだけ移相する。
移相器14_2は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)が移相器14_1と同様にXであり、入力端子から供給される第2増幅信号の位相を、移相回転量Xだけ移相する。
上述したように、移相器14_1と移相器14_2との各々において、それぞれ移相回転量Xの設定を適切に微調整を行うことにより、増幅素子13_1の出力端子から増幅素子13_2の出力端子に注入される2倍波と、逆に、増幅素子13_2の出力端子から増幅素子13_1の出力端子に注入される2倍波との位相を、高精度に最適化することができる。
すなわち、本実施形態においては、移相器14_1及び移相器14_2による2倍波の位相の最適化として、増幅素子13_1の出力端子と増幅素子13_2の出力端子との各々が2倍波の電圧定在波の節となるように微調整が行われている。ここで、増幅素子13_1及び増幅素子13_2の各々がFETである場合、出力端子はドレインである。また増幅素子13_1及び増幅素子13_2の各々がバイポーラトランジスタである場合、出力端子はコレクタである。
これにより、2倍波が増幅素子13_1及び増幅素子13_2の各々に反射される位相を適切に調整することができ、増幅素子13_1及び増幅素子13_2各々において高効率のF級動作を実現することができる。
図2は、アンテナ15の構成例を示す図である、図2(a)は、アンテナ15の構成を示す平面図である。この図2(a)において、アンテナ放射導体15_1は平面導体で誘電体基板15_0上面に形成されており、2つの給電点15_4及び給電点15_5を有する、例えば一辺がL(=38.3mm)の正方形状の方形マイクロストリップアンテナである。アンテナ放射導体15_1と、給電線路15_2と、給電線路15_3との各々は、誘電体基板15_0上に形成された平面導体をパターンニングして形成されている。給電経路15_2は給電ポートP1に対応し、給電経路15_3は給電ポートP2に対応している。誘電体基板15_0の厚さは0.8mmであり、アンテナ素子15_1は一辺がL=38.3mmの正方形であり、給電線路15_2及び給電線路15_3の各々は線幅が1.84mmである。誘電体基板15_0は、比誘電率が3.26であり、誘電正接が0.0037である。
給電線路15_2は、長さが65.76mm(3λ/4)であり、一端が移相器14_1の出力端子に接続され、他端がアンテナの給電点15_4に接続されている。また、給電線路15_3は、長さが21.92mm(λ/4)であり、一端が移相器14_2の出力端子に接続され、他端がアンテナの給電点15_5に接続されている。したがって、給電線路15_2は、給電線路15_3に対して、線路長がλ/2分長く形成されている。これにより、同一位相の信号が給電線路15_2と給電線路15_3とに供給された場合、この線路長がλ/2分長い領域の存在により、給電15_4に供給される信号と、給電点15_5に供給される信号とは移相が180°異なる。給電経路15_2は一端が給電点15_4と接続され、他端が給電ポートP1となっている。給電経路15_3は一端が給電点15_5と接続され、他端が給電ポートP2となっている。
ここで、図2(a)においては、給電経路15_2において図1における移相器12の構成を含んで示している。したがって、給電ポートP1と給電ポートP2との各々に対し、同一位相の第1増幅信号及び第2増幅信号がそれぞれ供給されると、この移相器12により第1増幅信号の位相が変化する。
すなわち、第1増幅信号の基本波成分と第2増幅信号の基本波成分とは、それぞれ給電ポートP1と給電ポートP2とに同一位相で供給された場合、アンテナ15の給電点15_4及び給電点15_5に対して供給される際、第1増幅信号の位相が移相されるので、各々の位相が180°異なる。このため、給電点15_4における第1増幅信号の基本波成分と、給電点15_5における第2増幅信号の基本波成分との位相差は180°、すなわち逆相給電となって同相合成される。一方、第1増幅信号の2倍波成分と第2増幅信号の2倍波成分とは、それぞれ給電ポートP1と給電ポートP2とに同一位相で供給された場合、アンテナ15の給電点15_4及び給電点15_5に対して供給される際、第1増幅信号の位相が基本波に対して180°移相されるため、各々の位相が同位相のままとなる。したがって、アンテナ15の給電点15_4及び給電点15_5に対して供給される際、第1増幅信号及び第2増幅信号の各々の2倍波成分が同位相であるため、給電点15_4における第1増幅信号の2倍波成分と給電点15_5における第2増幅信号の2倍波成分とは同相給電となって逆相合成される。
また、給電点15_4及び給電点15_5の各々は、アンテナの中心Pに対して対称な位置に設けられている。給電点15_4及び給電点15_5の各々は、幅b(=3.84mm)及び辺からの深さa(=6.1mm)に形成された溝の底部分に、それぞれ設けられている。また、給電点15_4及び給電点15_5の各々は、スルーホールなどを用いたピン給電型、あるいは図2に示すように、マイクロストリップ線路形である。
アンテナ15においては、上述した構成により、給電点15_4に給電された第1増幅信号と、給電点15_5に給電された第2増幅信号とが周波数が同一である場合、同一偏波面かつ逆位相で合成される。
図2(b)は、アンテナ15におけるマイクロスロット経路及びマイクロストリップアンテナの設計パラメータを示すテーブルである。Lは方形方形マイクロストリップアンテナであるアンテナ放射導体15_1の各辺の長さを示している。L11は給電経路15_2の長さを示し、L12は給電経路15_3の長さを示している。aは給電点15_4及び給電点15_5の形成されている溝の深さを示し、bは溝の幅を示している
図2(c)は、アンテナ15におけるマイクロスロット経路及び誘電体基板の設計パラメータを示すテーブルである。この図2(c)においては、誘電体基板15_0の比誘電率、誘電正接、基板厚さを示している。また、図2(c)においては、給電経路15_2及び給電経路15_3の給電線路幅を示している。
図3は、電磁界解析によって求めた、アンテナ15における電流密度分布を示す図である。図3において、色が濃くなっている領域ほど電圧定在波が発生していることを示している。図3(a)において、アンテナ放射導体15_1に対して基本波(2.225GHz)が逆相給電され、かつアンテナ放射導体15_1において同一位相で合成される。このため、図3(a)から、第1増幅信の基本波成分号及び第2増幅信号の基本波成分が同位相で合成され、アンテナ放射導体15_1上に電圧定在波が生じ、高周波エネルギーが電波として効率的に空間に放射される状態であることが判る。
一方、図3(b)において、アンテナ放射導体15_1に対して2倍波(4.45GHz)が同相給電され、かつアンテナ放射導体15_1において逆位相で合成される。このため、図3(b)から、第1増幅信号の2倍波成分及第2増幅信号の2倍波成分が逆位相で合成され、高周波エネルギーはアンテナ放射導体15_1から反射されて、アンテナ放射導体15_1上に電圧定在波が生じず、電波が空間に放射されない状態であることが判る。
次に、本実施形態による無線送信機1の動作を図1を用いて説明する。
分配器11は、図示されない外部機器から供給される入力無線周波数信号を、第1信号と第2信号とに、同一位相及び同一振幅で分配して出力する。
そして、移相器12は、入力端子から供給される第1信号を、180°位相回転させて出力端子を介して増幅素子13_1に対して出力する。
第1信号が入力端子に供給されると、増幅素子13_1は、位相が180°位相回転した第1信号の増幅を行い、基本波成分及び2倍波成分を含む第1増幅信号を移相器14_1に対して出力する。
第2信号が入力端子に供給されると、増幅素子13_2は、位相回転していない第2信号の増幅を行い、基本波成分及び2倍波成分を含む第2増幅信号を移相器14_2に対して出力する。
移相器14_1は、第1増幅信号の位相を位相回転量Xだけ移相させ、アンテナ放射導体15_1の給電点15_4に対して供給する。ここで、第1増幅信号におけ基本波成分及び2倍波成分の双方の位相が移相される。
同様に、移相器14_2は、第2増幅信号の位相を位相回転量Xだけ移相させ、アンテナ放射導体15_1の給電点15_5に対して供給する。ここで、第2増幅信号におけ基本波成分及び2倍波成分の双方の位相が移相される。
ここで、移相器12により、第1増幅信号が第2増幅信号に対して180°位相回転されており、かつ移相器14_1と移相器14_2との位相回転量が同一のXであるため、移相器14_1から出力される第1増幅信号は移相器14_2から出力される第2増幅信号に対して180°位相回転している状態は変化していない。このため、2倍波がアンテナ放射導体15_1において反射されるようにする高調波インピーダンスの調整が、基本波に対する負荷インピーダンスに影響を与えることなく行うことができる。
アンテナ放射導体15_1においては、給電点15_4に給電される第1増幅信号における基本波成分と、給電点15_5に供給される第2増幅信号における基本波成分とが逆位相で供給される(180°移相がずれて供給される)ため、同一位相での合成が行われ、供給される高周波エネルギーが高効率で電波として空間に放射される。
一方、アンテナ放射導体15_1においては、給電点15_4に給電される第1増幅信号における2倍波成分と、給電点15_5に供給される第2増幅信号における2倍波成分とが同一位相で供給される(360°移相がずれて供給される)ため、逆位相での合成が行われ、供給される高周波エネルギーが増幅素子13_1及び増幅素子13_2に対して全反射される。
以上のように、基本波はアンテナ放射導体15_1において同一移相で合成され、一方、2倍波はアンテナ放射導体15_1において逆移相で合成される。
すなわち、本実施形態によれば、アンテナ放射導体15_1において、基本波成分の高周波エネルギーが放射される状態を維持しながら、2倍波の反射状態を調整することが可能となる。
また、本実施形態においては、基本波がアンテナ放射導体15_1から効率よく、電波として空間に放射され、一方、2倍波がそれぞれの増幅素子のドレインで「節」となるような電圧定在波を発生させる。このとき、2倍波の高周波エネルギーは、増幅素子の出力端子に対し、放射導体15_1から反射されている。これにより、従来のように、給電線路における線路端の開放や短絡による反射に依存しない2倍波の負荷条件を実現することができる。
したがって、本実施形態における増幅器は、高効率のF級動作を実現し、かつ、従来の高調波リアクション型増幅器(HRA)と異なり、2倍波を除去するための高調波反射フィルタを要しないアンテナ一体型増幅器であり、無線送信機の小型集積化を可能とすることができる。
図4は、本実施形態の変形例である、垂直偏波及び水平偏波の双方に対応する正方形マイクロストリップアンテナ(偏波用2点給電型アンテナ)を用いた場合の無線送信機の構成例を示す図である。
無線送信機1Aは、増幅器10と、増幅器20と、アンテナ15Aとを備えている。増幅器10は、すでに述べたように、分配器11と、移相器12と、増幅素子13_1と、増幅素子13_2と、移相器14_1と、移相器14_2とを備えている。また、増幅器20は、分配器21と、移相器22と、増幅素子23_1と、増幅素子23_2と、移相器24_1と、移相器24_2とを備えている。ここで、分配器21、移相器22、増幅素子23_1、増幅素子23_2、移相器24_1及び移相器24_2の各々は、それぞれ、分配器11、移相器12、増幅素子13_1、増幅素子13_2、移相器14_1、移相器14_2と同様の構成である。
アンテナ15には、増幅器10からの第1増幅信号が供給される給電点15_4と、増幅器10からの第2増幅信号が供給される給電点15_5と、増幅器20からの第1増幅信号が供給される給電点15_6と、増幅器20からの第2増幅信号が供給される給電点15_7との4個の給電点が設けられている。
給電点15_4及び給電点15_5には、アンテナ15Aが垂直偏波の電波を空間に放射するための高周波エネルギーが、第1増幅信号及び第2増幅信号の各々における基本波成分として供給される。
一方、給電点15_6及び給電点15_7には、アンテナ15Aが水平偏波の電波を空間に放射するための高周波エネルギーが、第1増幅信号及び第2増幅信号の各々における基本波成分として供給される。
これにより、本実施形態の変形例によれば、正方形マイクロストリップアンテナの場合、2つの直線偏波を共用した偏波共用アンテナ素子として使用することができるため、水平偏波用の増幅器20と垂直偏波用の増幅器20を接続した無線送信機を構成しても良い。
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図5は、この発明の第2の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。この図5において、無線送信機1Bは、分配器31と、移相器32と、増幅素子33_1と、増幅素子33_2と、移相器34_1と、移相器34_2と、アンテナ15(第1の実施形態と同様)とを備えている。なお、増幅素子33_1及び増幅素子33_2の各々の出力端子の先に設けられる、各々の増幅素子から出力される増幅信号における基本波成分及び2倍波成分それぞれの周波数に対して整合を取る整合回路に関する記載は省略している。また、入力される基本波の周波数は、2.225GHzとして説明する。また、分配器31、移相器32、増幅素子33_1、増幅素子33_2、移相器34_1及び移相器34_2の各々の構成が増幅器30を構成している。分配器31、移相器32、増幅素子33_1、増幅素子33_2、移相器34_1及び移相器34_2との各々は、それぞれ第1の実施形態における分配器11、移相器12、増幅素子13_1、増幅素子13_2、移相器14_1、移相器14_2と同様の構成である。
分配器31は、電力分配器であり、入力端子から入力される信号である入力無線周波数信号(基本波)を同一位相、同一振幅にて第1信号と第2信号との各々に分配し、それぞれ第1出力端子、第2出力端子から出力する。
増幅素子33_1は、入力端子が分配器31の第1出力端子に接続され、出力端子が移相器32の入力端子に接続されている。また、増幅素子33_1は、入力端子から供給される基本波である第1信号を増幅し、増幅した信号を第1増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子33_1は、基本波である入力無線周波数信号と、基本波の2倍波とで出力整合を取り、2倍波が十分に発生し、基本波とともに出力する。
増幅素子33_2は、入力端子が分配器11の第2出力端子に接続され、出力端子が移相器34_2の入力端子に接続されている。また、増幅素子33_2は、入力端子から供給される基本波である第2信号を増幅し、増幅した信号を第2増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子33_2は、増幅素子33_1と同様に、基本波である入力無線周波数信号と、基本波の2倍波とで出力整合を取り、2倍波が十分に発生し、基本波とともに出力される。
移相器32は、入力端子が増幅素子33_1の出力端子に接続され、出力端子が移相器34_1の入力端子に接続されている。また、移相器32は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)が、入力無線周波数信号の波長λの1/2であり、第1増幅信号の移相を第2増幅信号に対して180°移相する。これにより、第1増幅信号の位相は、第2増幅信号の位相に対して逆位相となる。
移相器34_1は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)がXであり、入力端子から供給される第2増幅信号に対して180°移相された第1増幅信号の移相を、移相回転量Xだけ移相する。
移相器34_2は、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)が移相器34_1と同様にXであり、入力端子から供給される第2増幅信号の移相を、移相回転量Xだけ移相する。
上述したように、移相器34_1と移相器34_2との各々において、それぞれ移相回転量Xの設定を適切に微調整を行うことにより、第1の実施形態と同様に、増幅素子33_1の出力端子から増幅素子33_2の出力端子に注入される2倍波と、逆に、増幅素子33_2の出力端子から増幅素子33_1の出力端子に注入される2倍波との位相を、高精度に最適化することができる。
したがって、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基本波がアンテナ放射導体15_1において同一移相で合成され、一方、2倍波がアンテナ放射導体15_1において逆移相で合成される。
すなわち、本実施形態によっても、アンテナ放射導体15_1において、基本波成分の高周波エネルギーが放射される状態を維持しながら、2倍波の反射状態を調整することが可能となる。
また、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、基本波がアンテナ放射導体15_1から効率よく、電波として空間に放射され、一方、2倍波がそれぞれの増幅素子のドレインで「節」となるような電圧定在波を発生させる。このとき、2倍波の高周波エネルギーは、増幅素子の出力端子に対し、放射導体15_1から反射されている。これにより、従来のように、給電線路における線路端の開放や短絡による反射に依存しない2倍波の負荷条件を実現することができる。
したがって、本実施形態における増幅器は、第1の実施形態と同様に、高効率のF級動作を実現し、かつ、従来の高調波リアクション型増幅器(HRA)と異なり、2倍波を除去するための高調波反射フィルタを要しないアンテナ一体型増幅器であり、無線送信機の小型集積化を可能とすることができる。
第1の実施形態と第2の実施形態とにおいて記載されたように、移相器12(あるいは移相器32)は、分配器11(あるいは分配器32)の第1出力端子と、給電点15_4との間のいずれの位置に配置しても良い。
<第3の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図6は、この発明の第3の実施形態による無線送信機の構成例を示す図である。この図6において、無線送信機1Cは、分配器41と、増幅素子43_1と、増幅素子43_2と、移相器44_1と、移相器44_2と、2ポート給電型のアンテナであるアンテナ45とを備えている。なお、増幅素子43_1及び増幅素子43_2の各々の出力端子の先に設けられる、各々の増幅素子から出力される増幅信号における基本波成分及び2倍波成分それぞれの周波数に対して整合を取る整合回路に関する記載は省略している。また、入力される基本波の周波数は、2.225GHzとして説明する。また、分配器41、増幅素子43_1、増幅素子43_2、移相器44_1及び移相器44_2の各々のが増幅器40を構成している。分配器41、増幅素子43_1、増幅素子43_2、移相器44_1及び移相器44_2との各々は、それぞれ第1の実施形態における分配器11、増幅素子13_1、増幅素子13_2、移相器14_1、移相器14_2と同様の構成である。
分配器41は、電力分配器であり、入力端子から入力される信号である入力無線周波数信号(基本波)を同一位相、同一振幅にて第1信号と第2信号との各々に分配し、それぞれ第1出力端子、第2出力端子から出力する。
増幅素子43_1は、入力端子が分配器41の第1出力端子に接続され、出力端子が移相器42の入力端子に接続されている。また、増幅素子43_1は、入力端子から供給される基本波である第1信号を増幅し、増幅した信号を第1増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子43_1は、基本波である入力無線周波数信号と、基本波の2倍波とで出力整合を取り、2倍波が十分に発生し、基本波とともに出力する。
増幅素子43_2は、入力端子が分配器41の第2出力端子に接続され、出力端子が移相器44_2の入力端子に接続されている。また、増幅素子43_2は、入力端子から供給される基本波である第2信号を増幅し、増幅した信号を第2増幅信号として出力端子から出力する。ここで、増幅素子43_2は、増幅素子43_1と同様に、基本波である入力無線周波数信号と、基本波の2倍波とで出力整合を取り、2倍波が十分に発生し、基本波とともに出力する。
移相器34_1は、入力端子が増幅素子43_1の出力端子に接続され、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)がXであり、入力端子から供給される第1増幅信号の移相を、移相回転量Xだけ移相する。
移相器34_2は、入力端子が増幅素子43_2の出力端子に接続され、入力無線周波数信号の周波数における移相回転量(電気長)が移相器34_1と同様にXであり、第1増幅信号と同一位相の入力端子から供給される第2増幅信号の移相を、移相回転量Xだけ移相する。
上述したように、移相器44_1と移相器44_2との各々において、それぞれ移相回転量Xの設定を適切に微調整を行うことにより、増幅素子43_1の出力端子から増幅素子43_2の出力端子に注入される2倍波と、逆に、増幅素子43_2の出力端子から増幅素子43_1の出力端子に注入される2倍波との位相を、高精度に最適化することができる。
すなわち、本実施形態においては、移相器44_1及び移相器44_2による2倍波成分の位相の最適化により、アンテナ45の給電点が第1増幅信号及び第2増幅信号における2倍波成分の電圧定在波の節となるように適切に微調整が行われている。
これにより、本実施形態においては、第1増幅信号及び第2増幅信号における基本波成分の電力を空間に放射し、一方、2倍波が給電経路及び給電点を低損失で通過する特性を有するようになり、増幅素子43_1及び増幅素子43_2の各々に高周波エネルギーが注入され、増幅素子43_1及び増幅素子43_2各々において高効率のF級動作を実現することができる。
図7は、図6におけるアンテナ45の構成例を示す平面図である。この図7に示すアンテナ45は、スロット結合円形マイクロストリップアンテナであり、2つの給電ポート(後述するP1、P2)を有しており、入力無線周波数信号の2倍波を、2つの給電ポート間を低損失で透過させる。一方、アンテナ45は、2つの給電ポートから供給される入力無線周波数信号の基本波の電力を空間に電波として放射させる特性を有している。
図7(a)に示されるように、アンテナ45は、誘電体基板45_1と、誘電体基板45_2との間に接地導体板45_3が介挿された3層構造で形成されている。ここで、誘電体基板45_1において、接地導体板45_3の面と対向する面と逆の面を、この誘電体基板45_1の表面とする。また、誘電体基板45_2において、接地導体板45_3の面と対向する面と逆の面を、誘電体基板45_2の裏面として説明する。
図7(b)は、誘電体基板45_1の表面に形成されたアンテナ放射導体45_2を示している。このアンテナ放射導体45_20は半径a(=21.85)である。
図7(c)は、誘電体基板45_2の裏面に形成されたマイクロストリップ配線(線路幅が1.84mm)である給電経路45_7と給電経路45_8とを示している。隣接して直行する辺S1及び辺S2の各々から、それぞれ給電経路45_7、給電経路45_8が形成されている。すなわち、給電経路45_7は辺S2に対して平行に、辺S1の給電ポートP1から配線され、給電経路45_8は辺S1に対して平行に、辺S2の給電ポートP2から配線されている。給電経路45_7及び給電経路45_8の直交した点(交差点)が給電点45_5である。また、給電経路45_7は辺S1に接する一端からから給電点45_5までの長さがL(=65.78mm)であり、給電経路45_8も同様に辺S2に接する一端から給電点45_5までの長さがL(=65.78mm)である。給電経路45_7及び給電経路45_8の双方共に、給電点から他端までの長さがL(=21.92mm)である。図7(a)は、図7(c)に示す線分A−Aにおける線視断面図である。
図7(a)に示すように、接地導体板45_3には結合用スロット45_9が設けられている。この給電用スロット45_9は、図7(b)に示すように、幅がf(=2mm)であり、長さがg(=10mm)の短冊形状であり、アンテナ放射導体45_20と平面視で重なる位置に形成されている。また、給電点45_5は、平面視において、アンテナ放射導体45_20及び給電用スロット45_9の双方と重なる位置に形成されている。これにより、給電点45_5から結合用スロット45_9を介してアンテナ放射導体45_20に対して電力が給電される。ここで、d(=8.74mm)は、アンテナ放射導体45_20の中心と給電点45_5との距離を示している。誘電体基板45_1及び誘電体基板45_20の各々は、第1の実施形態における誘電体基板15−1と同様である。
図8は、電磁界解析によって求めた、アンテナ45における電流密度分布を示す図である。図8において、色が濃くなっている領域ほど電圧定在波が発生していることを示している。図8(a)において、アンテナ放射導体45_20に対して基本波(2.225GHz)が給電スロット45_9を介して同相給電され、かつアンテナ放射導体45_20において同位相で合成される。このため、図8(a)から、第1増幅信号の基本波成分及び第2増幅信号の基本波成分が同位相で合成され、アンテナ放射導体45_1上に電圧定在波が生じ、高周波エネルギーが電波として効率的に空間に放射される状態であることが判る。電流密度分布の解析結果としては、図8(a)の場合、アンテナ45における基本波成分の電力反射率が3%であり、電力透過率が16%であり、効率的に高周波エネルギーが電波として放射されていることが判る。
一方、図8(b)において、アンテナ放射導体45_20に対して2倍波(4.45GHz)が給電点45_4において電圧定在波の節ができるため、アンテナ放射導体45_1に対して給電されることなく、給電線路45_7及び給電経路45_8間を透過する。このため、図8(b)から、第1増幅信号の2倍波成分及び第2増幅信号の2倍波成分がアンテナ放射導体45_20上に高周波エネルギーが給電されることなく、高周波エネルギーが電波として空間に放射されない状態であることが判る。電流密度分布の解析結果としては、図8(b)の場合、アンテナ45における2倍波成分の電力反射率が1%であり、電力透過率が91%であり、高周波エネルギーが電波として放射されていないことが判る。
上述したように、基本波成分及び2倍波成分の各々において、電力反射率ともに少ない。一方、透過率は基本波成分に対して2倍波の方が大きい値となっている。この電力反射率及び透過率の数値から、基本波成分の高周波エネルギーがアンテナ放射導体45_20から電波として空間に放射され、2倍波成分の高周波エネルギーがアンテナ放射導体45_20に供給されることなく、給電線路45_7及び給電経路45_8間を透過するのみであることが示されている。すなわち、増幅素子43_1及び増幅素子43_2から出力される2倍波成分が適切な位相で、それぞれ互いに他方の増幅素子に戻っているため、各々の増幅素子はF級動作となっている。
次に、本実施形態による無線送信機1の動作を図6及び図7を用いて説明する。
分配器41は、図示されない外部機器から供給される入力無線周波数信号を、第1信号と第2信号とに、同一位相及び同一振幅で分配して出力する。
第1信号が入力端子に供給されると、増幅素子43_1は、第1信号の増幅を行い、基本波成分及び2倍波成分を含む第1増幅信号を移相器44_1に対して出力する。
第2信号が入力端子に供給されると、増幅素子43_2は、第2信号の増幅を行い、基本波成分及び2倍波成分を含む第2増幅信号を移相器44_2に対して出力する。
移相器44_1は、第1増幅信号の位相を位相回転量Xだけ移相させ、アンテナ放射導体45_2に対して結合スロット45_9を介して給電する給電点45_5に対して供給する。ここで、第1増幅信号におけ基本波成分及び2倍波成分の双方の位相が移相される。
同様に、移相器44_2は、第2増幅信号の位相を位相回転量Xだけ移相させ、アンテナ放射導体45_2に対して結合スロット45_9を介して給電する給電点45_5に対して供給する。ここで、第2増幅信号におけ基本波成分及び2倍波成分の双方の位相が移相される。
ここで、移相器44_1と移相器44_2との位相回転量が同一のXであるため、移相器44_1から出力される第1増幅信号の基本波成分と、移相器44_2から出力される第2増幅信号基本波成分とが同一位相である。また、移相器44_1から出力される第1増幅信号の2倍波成分と、移相器45_20から出力される第2増幅信号の2倍波成分も同一位相であるが、給電点45_5において電圧定在波の節が形成されるように位相回転量X°が設定されているため、アンテナ放射導体45_20に給電されず、給電経路45_7及び給電経路45_8を透過させる高調波インピーダンスの調整が、基本波に対する負荷インピーダンスに影響を与えることなく行うことができる。
上述したように、アンテナ放射導体45_20においては、給電点45_5に給電される第1増幅信号における基本波成分と、第2増幅信号における基本波成分とが同相給電されるため、同一位相での合成が行われ、供給される高周波エネルギーが高効率で電波として空間に放射される。
一方、アンテナ放射導体45_20においては、給電点45_5に給電される第1増幅信号における2倍波成分と、第2増幅信号における2倍波成分とが同相給電されているが、給電点45_5において電圧定在波の節が形成されるため、高周波エネルギーが供給されず、給電経路45_7及び給電経路45_8を透過する。
以上のように、基本波はアンテナ放射導体45_20において同一位相で合成され、一方、2倍波はアンテナ放射導体45_2に供給されずに、給電経路45_7及び給電経路45_8を透過し、増幅素子43_1及び増幅素子43_2の各々の出力側に対して注入される。したがって、移相器43_1及び移相器43_2における位相回転量Xを適切に設定することにより、高調波リアクション型増幅器と同様に、2倍波成分に対して給電点45_5が節となる位相を与えることにより、増幅素子へ反射されることになり、F級動作を実現することができる。
すなわち、本実施形態によれば、アンテナ放射導体45_2において、基本波成分の高周波エネルギーが放射される状態を維持しながら、2倍波成分の高周波エネルギーが供給されない状態を調整することが可能となる。
また、本実施形態においては、基本波の高周波エネルギーがアンテナ放射導体45_20から効率よく、電波として空間に放射され、一方、2倍波がアンテナ放射導体45_20の給電点45_5において「節」となるような電圧定在波を発生させている。これにより、従来のように、給電線路における線路端の開放や短絡による反射に依存しない2倍波の負荷条件を実現することができる。
したがって、本実施形態における増幅器は、高調波リアクション型増幅器(HRA)と同様の動作を行い、かつ、従来のように2倍波を除去するための高調波反射フィルタを要しないアンテナ一体型増幅器であり、無線送信機の小型集積化を可能とすることができる。
<第4の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図9は、この発明の第4の実施形態によるアンテナ55の構成例を示す平面図である。本実施形態によるアンテナ55は、2入力型コプレーナ線路給電方式正方形マイクロストリップアンテナである。このアンテナ55に給電する増幅器としては、第3の実施形態における増幅器40が用いられ、無線通信機が構成される。この図9に示すアンテナ55は、2入力型コプレーナ線路給電方式正方形マイクロストリップアンテナであり、第3の実施形態におけるアンテナ45と同様に、2つの給電ポート(P1、P2)を有しており、入力無線周波数信号の2倍波を、2つの給電ポート間を低損失で透過させる。一方、アンテナ55は、入力無線周波数信号の基本波により、2つの給電ポートから供給される電力により空間に電波を放射させる特性を有している。
図9に示されるように、アンテナ55は、誘電体基板55_1と、誘電体基板55_2とが貼着された2層構造で形成されている。誘電体基板55_1及び誘電体基板55_2の各々は、比誘電率が3.26であり、基板の厚さが0.8mmである。ここで、誘電体基板55_1における誘電体基板55_2と対向する面と逆の面を誘電体基板55_1の表面とし、誘電体基板55_2における誘電体基板55_1と対向する面と逆の面を、誘電体基板55_2の裏面として説明する。
図9(a)は、誘電体基板55_1の表面に形成されたコプレーナ線路55_3の構成を示している。このコプレーナ線路55_3は、長さが2×L2(=2×48.7mm)であり、幅L3(=1.84mm)である。コプレーナ経路_55_3は、一端が自身と同一幅のマイクロストリップ線路55_4に接続され、他端が自身と同一幅のマイクロクトリップ線路55_5に接続されている。また、このコプレーナ線路55_3は、平面導体層55_6及び平面導体層55_7の間に、それぞれと間隙挟まれて形成されている。この平面導体層55_6及び平面導体層55_7の各々は、接地された接地導体である。
平面導体層55_7は、コプレーナ線路55_3と対向する辺において、このコプレーナ線路55_3の中心に対応した部分に溝55_8が形成されている。
コプレーナ線路55_3には、溝55_8内に対し、幅がコプレーナ線路55_3と同一の長さL1の突起状の給電経路55_9が設けられている。この給電経路55_9は、一端が上述したようにコプレーナ線路55_3と接続され、他端が後述するアンテナ放射導体(アンテナ放射導体55_20)に電力を供給する給電点55_10である。
図9(b)は、誘電体基板55_2の表面に形成されたアンテナ放射導体55_20の構成を示している。アンテナ放射導体55_20は、一辺がa(=38.33)の正方形の形状をした平面導体層であり、誘電体基板55_1の給電点55_8と平面視で重なる位置に形成されている。ここで、d(13.4mm)は、平面視において給電経路55_9とアンテナ放射導体55_20の辺とが交差した位置から給電点55_9の位置までの距離、すなわち給電オフセット量を示している。また、誘電体基板55_2には、平面視において、誘電基板55_1に形成されているコプレーナ線路55_3と直行する平面導体層55_21及び平面導体層55_22が形成されている。平面導体層55_21及び平面導体層55_22の各々は、コプレーナ線路55_3と直行する誘電体基板55_2の辺部分に形成されている。
また、平面導体層55_21は、ビア(via)5512により、誘電体基板55_1における平面導体層55_6と接続され、ビア55_14により誘電体基板55_1における平面導体層55_7と接続されている。平面導体層55_22は、ビア55_11により誘電体基板55_1における平面導体層55_6と接続され、ビア55_13により誘電体基板55_1における平面導体層55_7と接続されている。上述した構成により、平面導体層55_21及び平面導体層55_22の各々は、平面導体層55_6及び平面導体層55_7の各々と同様に、接地された接地導体である。ここで、ビアは、誘電体基板55_1及び誘電体基板55_2の各々を貫通する穴が形成され、この穴に導体を充填することにより、誘電体基板55_1の表面に形成された導体層と誘電体基板55_2の裏面に形成された導体層とを電気的に接続するコンタクトである。
図9(c)は、誘電体基板55_1及び誘電体基板55_2と、それぞれに形成される導体パターンの設計パラメータを示すテーブルである。ここで、比誘電比率及び基板圧は、誘電体基板55_1及び誘電体基板55_2の設計パラメータを示している。マイクロストリップ線路幅は、コプレーナ配線55_3、給電経路55_9、マイクロストリップ線路55_4及びマイクロストリップ線路55_5の線路幅を示している。コプレーナ線路スリット幅は、コプレーナ線路53_3と平面導体層55_6及び平面導体層55_7の各々の対向する辺と間隙の距離、また給電線路55_10とこの給電線路55_10に対向する溝55_8の辺との間隙の距離を示している。aは、正方形状のアンテナ放射導体55_20の各辺の長さを示している。給電オフセット量dは、給電点55_10と、給電経路55_9と交差するアンテナ放射導体55_20の辺との距離を示している。L1は給電経路の長さを示している。L2はコプレーナ線路55_3の半分の長さ、すなわちコプレーナ線路55_3の中心からマイクロストリップ線路55_4(あるいはマイクロストリップ線路55_5)との接続点までの距離を示している。
上述したように、アンテナ55は、誘電体基板55_1及び誘電体基板55_2による2層構造の背面給電方式の正方形マイクロストリップアンテナであり、マイクロストリップ線路55_4及びマイクロストリップ配線55_5の2つの給電経路を有し、アンテナ放射導体55_20に対する一つの給電点55_10を有している。また、マイクロストリップ線路(Microstrip Line;MSL)のインピーダンスは50Ω(オーム)であり、給電点55_10の給電点インピーダンスも50Ωである。また、給電経路55_9の長さL2は2倍波の1/2波長である。
図10は、電磁界解析によって求めた、アンテナ55における電流密度分布を示す図である。図10において、図8と同様に、色が濃くなっている領域ほど電圧定在波が発生していることを示している。図10(a)において、アンテナ放射導体55_20に対して基本波(2.225GHz)が給電点55_10を介して同相給電され、かつアンテナ放射導体55_20において同位相で合成される。このため、図10(a)から、第1増幅信号の基本波成分及び第2増幅信号の基本波成分が同位相で合成され、アンテナ放射導体55_20上に電圧定在波が生じ、高周波エネルギーが電波として効率的に空間に放射される状態であることが判る。電流密度分布の解析結果としては、図10(a)の場合、アンテナ55における基本波成分の電力反射率が7%であり、電力透過率が5%であり、効率的に高周波エネルギーが電波として放射されていることが判る。
一方、図10(b)において、アンテナ放射導体55_20に対して2倍波(4.45GHz)が給電点55_10において電圧定在波の節ができるため、アンテナ放射導体55_20に対して給電されることなく、コプレーナ線路55_3、マイクロストリップ線路55_4及びマイクロストリップ線路55_5間を透過する。このため、図10(b)から、第1増幅信号の2倍波成分及び第2増幅信号の2倍波成分がアンテナ放射導体55_20上に高周波エネルギーが給電されることなく、高周波エネルギーが電波として空間に放射されない状態であることが判る。電流密度分布の解析結果としては、図10(b)の場合、アンテナ45における2倍波成分の電力反射率が16%であり、電力透過率が84%であり、高周波エネルギーが電波として放射されていないことが判る。
また、図11は、アンテナ55に入力される信号の周波数に対するSパラメータ特性解析結果を示す図である。
図11(a)は、アンテナ55に入力される信号の周波数に対応するSパラメータの特性曲線を示すグラフである。この図11(a)において、縦軸がSパラメータ(S11、S21)値を示し、横軸が周波数を示している。また、実線がSパラメータのS11の解析結果を示しており、破線がSパラメータのS21の解析結果を示している。ここで、SパラメータであるS11は反射率を示すパラメータであり、S12は透過率を示すパラメータである。
図11(b)は、基本波の周波数4.28GHzと2倍波の周波数2.14との各々における、図11(a)で示されるSパラメータのS11及びS21の値を示すテーブルである。このテーブルが示すように、S11が2.14GHzの2倍波の場合に−11.4で、4.28GHzの基本波の場合に−8.02であり、一方、S21が2.14GHzの2倍波の場合に−12.9で、4.28GHzの基本波の場合に−0.75である。これらのSパラメータの値から、すでに述べたアンテナ55が、反射率が基本波に対して7%、2倍波に対して16%であり、透過率が基本波に対して5%、2倍波に対して84%の特性を有していることが判る。
上述したように、基本波成分及び2倍波成分の各々において、電力反射率ともに少ない。一方、透過率は基本波成分に対して2倍波の方が大きい値となっている。この電力反射率及び透過率の数値から、基本波成分の高周波エネルギーがアンテナ放射導体55_20から電波として空間に放射され、2倍波成分の高周波エネルギーがアンテナ放射導体55_20に供給されることなく、コプレーナ線路55_3、マイクロストリップ線路55_4及びマイクロストリップ線路55_5間を透過するのみであることが示されている。
以上のように、基本波はアンテナ放射導体55_20において同一位相で合成され、一方、2倍波はアンテナ放射導体55_20に供給されずに、コプレーナ線路55_3、マイクロストリップ線路55_4及びマイクロストリップ線路55_5を透過し、増幅素子43_1及び増幅素子43_2の各々の出力側に対して注入される。したがって、第3の実施形態と同様に、移相器43_1及び移相器43_2における位相回転量X°を適切に設定することにより、高調波リアクション型増幅器と同様に、2倍波成分に対して給電点45_5が節となる位相を与えることにより、増幅素子へ反射されることになり、F級動作を実現することができる。
すなわち、本実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、アンテナ放射導体55_20において、基本波成分の高周波エネルギーが放射される状態を維持しながら、2倍波の高周波エネルギーが供給されない状態を調整することが可能となる。
また、本実施形態においては、基本波の高周波エネルギーがアンテナ放射導体55_20から効率よく、電波として空間に放射され、一方、2倍波がアンテナ放射導体55_20の給電点55_10において「節」となるような電圧定在波を発生させている。これにより、従来のように、給電線路における線路端の開放や短絡による反射に依存しない2倍波の負荷条件を実現することができる。
したがって、本実施形態における増幅器は、高調波リアクション型増幅器(HRA)と同様の動作を行い、かつ、従来のように2倍波を除去するための高調波反射フィルタを要しないアンテナ一体型増幅器であり、無線送信機の小型集積化を可能とすることができる。
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
1,1B…無線送信機
10,20,30…増幅器
11,21…分配器
12,14_1,14_2,44_1,44_2,22,24_1,24_2,32,34_1,34_2…移相器
13_1,13_2,23_1,23_2,43_1,43_2、33_1,33_2…増幅素子
15,15A,45,55…アンテナ
15_0,45_1、45_2,55_1,55_2…誘電体基板
15_1,45_20,55_20…アンテナ放射導体
15_4、15_5,15_6,15_7,55_10…給電点
55_3…コプレーナ線路
55_4,55_5…マイクロストリップ線路
55_6,55_7,55_21,55_22…平面導体層
45_7,45_8,55_9…給電経路
55_11,55_12,55_13,55_14…ビア

Claims (4)

  1. アンテナ放射導体と該アンテナ放射導体の中心に対して対称な位置に設けられた第1給電点及び第2給電点の2個の給電点を備えるアンテナと、
    予め定められた周波数の基本波を含む信号を、同一振幅の第1信号及び第2信号に分配する電力分配器と、
    前記第1信号を増幅し、第1増幅信号として前記第1給電点に対して出力する第1増幅器と、
    前記第2信号を増幅し、第2増幅信号として前記第2給電点に対して出力する第2増幅器と、
    前記第1増幅器の出力端子と前記第1給電点との間に介挿された第1移相器と、
    前記第2増幅器の出力端子と前記第2給電点との間に介挿された、前記第1移相器と同一の電気長を有する第2移相器と、
    前記第1信号が出力される前記電力分配器の第1出力端子と前記第1給電点との間の信号経路中のいずれかの位置に介挿された、電気長が基本波の波長λの1/2である第3移相器と
    を備え、
    前記第1移相器及び前記第2移相器、前記第1増幅信号又は前記第2増幅信号における2倍波成分の電圧定在波の節が前記第1増幅器の出力端子及び前記第2増幅器出力端子の各々で生成されるように、それぞれ移相量が設定された
    ことを特徴とする増幅器。
  2. 前記第3移相器が、
    前記第1出力端子と前記第1増幅器の入力端子との間の信号経路中に設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
  3. 前記第3移相器が、
    前記第1増幅器の出力端子と前記第1給電点との間の信号経路中に設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
  4. アンテナ放射導体と該アンテナ放射導体の中心に対して対称な位置に設けられた第1給電点及び第2給電点の2個の給電点を備えるアンテナに対し、前記第1給電点及び前記第2給電点の各々に供給する信号を増幅する増幅方法であって
    予め定められた周波数の基本波を含む信号を、同一振幅の第1信号及び第2信号に分配する電力分配過程と、
    第1増幅器により前記第1信号を増幅し、第1増幅信号として出力する第1増幅過程と、
    第2増幅器により前記第2信号を増幅し、第2増幅信号として出力する第2増幅過程と、
    第1移相器により前記第1増幅信号の位相を移相して、前記第1給電点に供給する第1移相過程と、
    第2移相器により前記第2増幅信号の位相を前記第1移相過程による移相と同一の移相量だけ移相して、前記第2給電点に供給する第2移相過程と、
    前記第1増幅過程を行う前の前記第1信号、前記第1移相過程を行う前前記第1増幅信号、及び前記第1移相過程を行った後の前記第1増幅信号のいずれかの位相を基本波の波長λの1/2だけ移相する第3移相過程と
    を有し、
    前記第1移相器及び前記第2移相器は、前記第1増幅信号又は前記第2増幅信号における2倍波成分の電圧定在波の節が前記第1増幅器の出力端子及び前記第2増幅器出力端子の各々で生成されるように、それぞれ移相量が設定された
    ことを特徴とする増幅方法。
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