以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の分解斜視図である。図3及び図4は、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1が有するオートフォーカス用アクチュエータ2の分解斜視図である。図1及び図3においては、レンズ駆動装置1又はオートフォーカス用アクチュエータ2を上方側から示し、図2及び図4においては、レンズ駆動装置1又はオートフォーカス用アクチュエータ2を下方側から示している。
図1及び図2に示すように、このレンズ駆動装置1は、カメラのピントを合わせるオートフォーカス機能用のオートフォーカス用アクチュエータ2と、オートフォーカス用アクチュエータ2を手ぶれに応じて微小移動させることによって撮影光軸を一定に保つ手ぶれ補正機能用の手ぶれ補正用アクチュエータと、を含んで構成される。手ぶれ補正用アクチュエータには、レンズ駆動装置1の磁気回路が含まれる。
第1保持体としてのオートフォーカス用アクチュエータ2は、図3及び図4に示すように、底面部を構成するベース部材3と、図示しないレンズ体を保持するレンズホルダ4と、このレンズホルダ4を光軸方向に移動させる移動機構を構成する磁石5a〜5d、コイル6及びヨーク7と、レンズホルダ4をベース部材3及びヨーク7に弾性的に固定する一対の板ばね(下側板ばね8及び上側板ばね9)と、上側板ばね9をヨーク7に固定するカバー部材10と、を含んで構成される。
ベース部材3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、矩形状に設けられている。ベース部材3の中央近傍には、図示しないイメージセンサに対応する位置に円形状の開口部31が形成されている。また、ベース部材3の四隅部近傍には、下側板ばね8を固定するための複数のボス32が設けられている。これらのボス32は、後述する下側板ばね8の貫通孔81aに挿通された状態で熱かしめ等により変形されることで、下側板ばね8を固定する。なお、図3においては、これらのボス32が変形された状態について示している。
ベース部材3の各辺の中央近傍には、レンズホルダ4の位置決め用に用いられる基準面33が設けられている。これらの基準面33は、平坦状に設けられており、後述するレンズホルダ4の突出片46が当接することによってその位置決めに利用される。
ベース部材3には、ヨーク7の固定に利用される金属板材11が、その一部を露出した状態でインサート成形されている。この金属板材11は、ベース部材3の四隅部に対応する位置において、その側面から突出する固定部111を有している。これらの固定部111に対してヨーク7の下端部をレーザ溶接等によって固着することにより、ベース部材3にヨーク7が固定される。
また、ベース部材3には、下側板ばね8の導電接続に利用される一対の金属板材12が、その一部を露出した状態でインサート成形されている。これらの金属板材12の露出部に、ベース部材3に固定された下側板ばね8の一部が半田付け等によって接続されることにより、下側板ばね8が導電接続される。
レンズホルダ4は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、概して円筒形状に設けられている。なお、図示しないレンズ体は、例えば、レンズホルダ4の内周に設けられたねじ溝にねじ込まれてレンズホルダ4に取り付けられる。
レンズホルダ4の外周面には、レンズホルダ4の径方向外側に突出し、コイル6を保持するための4つの保持片41が設けられている。さらに、これらの保持片41の上端には、上側板ばね9の位置決めを行う位置決め片42が設けられている。これらの位置決め片42は、レンズホルダ4の外周上端部から上方側に突出して設けられ、後述する上側板ばね9の切り欠き部92aと係合可能に構成されている。
また、レンズホルダ4の下端部には、外周面よりも径方向外側に延出するように鍔状部43が設けられている。鍔状部43は、レンズホルダ4に対してフランジ状に設けられている。また、鍔状部43は、その上面が光軸方向と直交する平面を構成する一方、その下面に平坦面44が設けられている。平坦面44には、複数のボス45、複数の突出片46及び2つの突出片47が設けられている。ボス45は、下側板ばね8の固定に利用される。突出片46は、ベース部材3の基準面33と当接し、レンズホルダ4の位置決めに利用される。突出片47には、後述するコイル6の両端部6a、6bが絡げられる。
磁石5a〜5dは、それぞれ直交する一対の側面部51、52と、円弧形状を有する内周面部53とを有しており、ヨーク7の四隅部分に固定される。この場合、磁石5a〜5dは、側面部51、52をヨーク7の四隅の内壁面に対向させると共に、内周面部53を後述するヨーク7の垂下壁面73に一定距離を挟んで対向させた状態で固定される。
コイル6は、レンズホルダ4の外周面に設けられた保持片41に直接巻回される。保持片41に巻回されることにより、コイル6は、これらの保持片41に対応する部分が直線状に配置された、概して円環形状に束ねられた状態となる。コイル6の両端部6a、6bは、それぞれレンズホルダ4の鍔状部43の下面側に引き出され、それぞれ突出片47に絡げられる。なお、図3及び図4においては、これらの両端部6a、6bが、それぞれ突出片47に絡げられた状態について示している。
ヨーク7は、例えば、金属材料を機械加工して構成され、図3に示す下方側に開口した箱状に設けられている。また、ヨーク7は、概して矩形状に設けられ、その中央に円形状の開口部71が設けられている。ヨーク7の四隅における下端部には、僅かに側方側に突出する複数の固定片72が設けられている。これらの固定片72は、ベース部材3の四隅部分から突出する金属板材11の固定部111に重なる寸法に設けられている。
開口部71の周縁部におけるヨーク7の四隅部分に対応する位置には、垂下壁面73が垂下して設けられている。これらの垂下壁面73は、レンズホルダ4を配置した状態において、レンズホルダ4の外周面とコイル6の内周面との間に配置される。さらに、ヨーク7の上面における四隅部分の近傍には、後述するカバー部材10の固定ピン102が挿入される複数の貫通孔74が設けられている。
下側板ばね8は、例えば、リン青銅等の導電性材料を成形して構成される。下側板ばね8は、一対の板ばねから構成され、それぞれベース部材3に固定される外側固定部81と、レンズホルダ4の下面に固定される内側固定部82と、外側固定部81と内側固定部82とを連結する腕部83と、を有している。
外側固定部81の所定位置には、複数の貫通孔81aが設けられている。これらの貫通孔81aに、ベース部材3のボス32を挿通してかしめることにより、下側板ばね8はベース部材3に固定される。また、内側固定部82の所定位置には複数の貫通孔82aが設けられている。これらの貫通孔82aに、レンズホルダ4の下面に設けられたボス45を挿通してかしめることにより、下側板ばね8はレンズホルダ4に固定される。腕部83は、ベース部材3の四隅部分に対応する外側固定部81の位置から複数回折り返して、外側固定部81と内側固定部82とを連結する。
上側板ばね9は、下側板ばね8と同様に、例えば、リン青銅等の導電性材料を成形して構成される。上側板ばね9は、ヨーク7の上面に固定される環形状を有する外側固定部91と、レンズホルダ4の上面に固定される円環形状を有する内側固定部92と、これらの外側固定部91と内側固定部92とを連結する腕部93と、を有している。
外側固定部91の所定位置には、複数の貫通孔91aが設けられている。これらの貫通孔91aに、後述するカバー部材10の固定ピン102が挿通された状態で、上側板ばね9はヨーク7に固定される。また、内側固定部92の所定位置には、複数の切り欠き部92aが設けられている。これらの切り欠き部92aに、レンズホルダ4の位置決め片42を収容した状態で、上側板ばね9はレンズホルダ4に固定される。腕部93は、ヨーク7の四隅部分に対応する外側固定部91の位置から複数回折り返して、外側固定部91と内側固定部92とを連結する。
カバー部材10は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成されている。カバー部材10は、概して矩形状に設けられ、その中央に円形状の開口部101が設けられている。カバー部材10は、ヨーク7の上面の外形と略同一の形状を有しており、開口部101がヨーク7の開口部71に対応するように構成されている。
カバー部材10の下面であって、その四隅部分に対応する位置には、複数の固定ピン102が設けられている。これらの固定ピン102は、上側板ばね9の貫通孔91a及びヨーク7の貫通孔74に挿通された状態で熱かしめ等により変形されることで、上側板ばね9をヨーク7の上面に固定する。なお、図3及び図4においては、これらの固定ピン102が変形された状態について示している。
続いて、手ぶれ補正用アクチュエータを構成する各部品について説明する。図1及び図2に示すように、手ぶれ補正用アクチュエータは、サスペンションワイヤ13a〜13dと、一対のワイヤホルダーを構成するワイヤホルダー14、15と、環状コイル16a〜16dと、磁場発生部材17a〜17dと、磁気検出素子18a、18bと、これらを収容する第2保持体としての外側ケース19と、を含んで構成される。
サスペンションワイヤ13a〜13dは、弾性部材で構成されている。また、サスペンションワイヤ13a〜13dは、細長い略円柱状に形成されると共に、直線上に形成されている。サスペンションワイヤ13a〜13dの下端部は、ワイヤホルダー14に固定され、上端部は、ワイヤホルダー15に固定されている。
ワイヤホルダー14は、例えば、金属板材にブランク加工及び折り曲げ加工を施して形成されている。ワイヤホルダー14は、外側ケース19の下端部に取り付けられるように構成されている。ワイヤホルダー14の四隅部分に対応する位置には、複数の貫通孔141が設けられている。これらの貫通孔141にサスペンションワイヤ13a〜13dの下端部が挿入されることで、サスペンションワイヤ13a〜13dはワイヤホルダー14に固定される。
ワイヤホルダー15は、ワイヤホルダー14と同様に、例えば、金属板材にブランク加工及び折り曲げ加工を施して形成されている。ワイヤホルダー15は、オートフォーカス用アクチュエータ2におけるカバー部材10の上面部に取り付けられるように構成されている。ワイヤホルダー15の四隅部分は外側方向に延出しており、この延出部分には、複数の貫通孔151が設けられている。これらの貫通孔151にサスペンションワイヤ13a〜13dの上端部が挿入されることで、サスペンションワイヤ13a〜13dはワイヤホルダー15に固定される。
環状コイル16a〜16dは、それぞれ環形状に束ねられた一対の環状コイルで構成される。環状コイル16a〜16dは、それぞれ図1及び図2に示す上下方向に延在した形状を有する。環状コイル16a〜16dは、後述する外側ケース19における側面部191a〜191dの内壁に接着剤等により固定される。
磁場発生部材17a〜17dは、一対のヨーク(第1ヨーク171及び第2ヨーク173)で磁石板172を挟んで構成され、光軸方向と直交する方向に偏平な形状を有する。第1ヨーク171及び第2ヨーク173は、例えば、金属材料を機械加工して構成され、矩形板状に設けられている。磁石板172は、矩形状を有しており、板厚方向に着磁されている。すなわち、磁石板172は、第1ヨーク171に対向する面と、第2ヨーク173に対向する面とで極性が異なるように構成されている。磁石板172は、第1ヨーク171及び第2ヨーク173より表面の面積が小さく設けられている。磁場発生部材17a〜17dは、オートフォーカス用アクチュエータ2におけるヨーク7の光軸方向に沿って延在する側面部の外壁面に固定される。
磁気検出素子18a、18bは、例えば、ホール素子で構成され、それぞれ磁場発生部材17c、17dの下方側に配置されている。磁気検出素子18a、18bは、例えば、レンズ駆動装置1が実装される基板上に固定される。
外側ケース19は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、図1に示す下方側及び上方側に開口した箱状に設けられている。外側ケース19は、上面視にて概して矩形状に設けられており、側面部191a〜191dを有している。これらの側面部191a〜191dにおける各辺の中央位置には、側方側に膨出した膨出部192a〜192dが設けられている。これらの膨出部192a〜192dの内側部分には、ヨーク7の外壁面に固定された磁場発生部材17a〜17dの一部がそれぞれ収容される。
外側ケース19の側面部191a〜191dの内側における四隅部分には、その部分のみ壁面の厚さが略2倍となった肉厚部193が設けられている。また、外側ケース19における側面部191a〜191dの上縁部における肉厚部193の側方には、僅かに内側に突出する突出片194が設けられている。これらの肉厚部193及び突出片194は、環状コイル16a〜16dの位置決めに利用される。
続いて、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1を組み立てた状態について説明する。図5は、レンズ駆動装置1を組み立てた状態の斜視図である。図6は、図5に示すレンズ駆動装置1からワイヤホルダー15を取り除いた場合の上面図である。図7は、図5に示すレンズ駆動装置1から外側ケース19を取り除いた場合の斜視図である。
図5に示すように、このような構成を有するレンズ駆動装置1を組み立てると、外側ケース19の内部にオートフォーカス用アクチュエータ2が配置される。オートフォーカス用アクチュエータ2において、カバー部材10の開口部101の内部には、レンズホルダ4が配置されている。図示しないレンズ体は、このレンズホルダ4に、図3に示す上方側からねじ込むことで組みつけられ、このレンズホルダ4と一体的に移動可能に構成される。
また、カバー部材10の上面部には、ワイヤホルダー15が取り付けられている。ワイヤホルダー15の貫通孔151には、それぞれサスペンションワイヤ13a〜13dが挿入されている。外側ケース19の下端部には、ワイヤホルダー14が取り付けられている。
図6に示すように、オートフォーカス用アクチュエータ2は、外側ケース19の中心位置に配置される。オートフォーカス用アクチュエータ2の各側面の中央には、磁場発生部材17a〜17dが固定されている。具体的には、磁場発生部材17a〜17dにおける第1ヨーク171が、それぞれヨーク7の側面部の外壁面に固定されている。このように、オートフォーカス用アクチュエータ2と磁場発生部材17a〜17dとは密接するため、レンズ駆動装置1全体を小型化することが可能となる。
一方、これらの磁場発生部材17a〜17dの外側の一部は、外側ケース19の膨出部192a〜192dにそれぞれ収容されている。オートフォーカス用アクチュエータ2及び磁場発生部材17a〜17dと、外側ケース19の外壁面との間には、隙間が生じている。
環状コイル16a〜16dは、外側ケース19における側面部191a〜191dの内壁に固定される。具体的には、環状コイル16a〜16dは、肉厚部193に側面部が当接し、突出片194に頂点部が当接した状態で、外側ケース19に固定される。このように固定された状態において、環状コイル16a〜16dは、それぞれ磁場発生部材17a〜17dを挟むように配置される。この場合、環状コイル16a〜16dの巻回部の一部は、磁場発生部材17a〜17dにおける第1ヨーク171と第2ヨーク173との間隙に位置している。
図7に示すように、サスペンションワイヤ13a〜13dは、その下端部がワイヤホルダー14の貫通孔141に挿入され、その上端部がワイヤホルダー15の貫通孔151に挿入されることで、固定される。これにより、オートフォーカス用アクチュエータ2は、一対のワイヤホルダーに揺動自在に支持された構成となり、オートフォーカス用アクチュエータ2を光軸方向と直交する方向に自在に揺動できる。
オートフォーカス用アクチュエータ2において、ヨーク7は、固定片72がベース部材3の四隅部分から突出する金属板材11の固定部111上に重なるように配置される。これらの固定片72と固定部111とを、レーザ溶接等により接合することでベース部材3にヨーク7が固定される。
カバー部材10における開口部101の内部には、レンズホルダ4が配置されている。レンズホルダ4は、下側板ばね8によりベース部材3に固定される一方、上側板ばね9によりヨーク7に固定され、これらの下側板ばね8及び上側板ばね9の付勢力によって、初期状態に保持されている。
次に、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータ用の磁気回路について、図8を参照して説明する。図8は、環状コイル16a、磁場発生部材17aおよびヨーク7の一部の上面図である。レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータ用の磁気回路は、環状コイル16a〜16dと、磁場発生部材17a〜17dと、ヨーク7と、を含んで構成される。
図8に示すように、レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータ用の磁気回路は、オートフォーカス用アクチュエータ2側から、ヨーク(ヨーク7及び第1ヨーク171)−マグネット(磁石板172)−ヨーク(第2ヨーク173)を配置し、さらに、ヨーク間に環状コイル16aを配置して構成されている。
磁場発生部材17aにおける磁石板172は、例えば、図8に示すように、上側半分(レンズ駆動装置1の外側部分)がN極、下側半分(レンズ駆動装置1の内側部分)がS極に構成されている。この場合には、N極から出た磁力線は第2ヨーク173及び第1ヨーク171を介してS極に戻る構成となる。すなわち、磁石板172まわりの磁場は、矢印Bで示すように発生している。
磁場発生部材17aにおける第1ヨーク171は、ヨーク7の側面部の外壁面に固定されている。第1ヨーク171は、第1ヨーク171側に設けられた突起171a(突出部)を介してヨーク7に固定される。これにより、ヨーク7に固定された第1ヨーク171とヨーク7の側面部の外壁面との間には、隙間(ギャップG)が形成される。
ここで、第1ヨーク171とヨーク7とが面接触する場合、第1ヨーク171とヨーク7とが連続するため、手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路の漏れ磁束がヨーク7に入力され、オートフォーカス用アクチュエータ2の磁気回路に影響を及ぼすおそれがある。これにより、例えば、手ぶれ補正用アクチュエータの推力が減少し、また、オートフォーカス用アクチュエータ2の感度などの特性に悪影響を与えるおそれがある。
一方、レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータ用の磁気回路においては、手ぶれ補正用アクチュエータを構成する第1ヨーク171と、オートフォーカス用アクチュエータ2を構成するヨーク7との間に、ギャップGが設けられているため、手ぶれ補正用アクチュエータ側の磁束がクローズされて、オートフォーカス用アクチュエータ2側への漏れが小さくなる。これにより、オートフォーカス用アクチュエータ2の特性への影響を抑制することが可能となる。
ただし、第1ヨーク171及び第2ヨーク173の端部近傍は磁束の密度が高いため、突起171aを第1ヨーク171の端部近傍に配置すると、突起171aを介してヨーク7への漏れ磁束が増加するおそれがある。このため、突起171aは、磁束の密度が高い第1ヨーク171の端部を避けて内側へ配置することが好ましい。磁束の密度が高い第1ヨーク171の端部を避けて突出部171aを配置することにより、オートフォーカス用アクチュエータ2側への磁気回路の漏れ磁束をより小さくして、磁気回路の漏れ磁束によるオートフォーカス用アクチュエータ2の移動機構への悪影響を抑制できる。
レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータ用の磁気回路は、第1ヨーク171と、磁石板172と、第2ヨーク173との厚み分で構成されている。この構成によれば、磁石板172の厚みが、環状コイル16aの厚みと、この環状コイル16aの可動範囲分のギャップとを含んだ厚みに等しくなる。
レンズ駆動装置における手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路の他の構成として、一対のマグネットでコイルを挟む構成が考えられる。この構成では、一対のマグネットの間に、コイル可動範囲分のギャップを設けてコイルを配置する。すなわち、一対のマグネット間は、コイルの厚みと、このコイルの可動範囲分のギャップを含んだ厚み分だけ離れている。
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路は、上記一対のマグネットでコイルを挟む構成の磁気回路と比較して、磁気回路を含めた装置全体の外形寸法を小さくすることができる。これは、レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路のように一対のヨーク(第1ヨーク171及び第2ヨーク173)でマグネット(磁石板172)及びコイル(環状コイル16a〜16d)を挟む構成と、一対のマグネットでコイルを挟む構成とで、コイルの厚みと、このコイルの可動範囲分のギャップを含んだ厚みを同一とした場合、同じ特性を出すためには、一対のヨークを構成するヨーク(第1ヨーク171及び第2ヨーク173)の厚みよりも、一対のマグネットを構成するマグネットの厚みの方が大きくなることに起因する。
また、レンズ駆動装置1における手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路は、上記一対のマグネットでコイルを挟む構成の磁気回路と比較して、1つの磁場発生部材(17a〜17d)につき、1つのマグネット(磁石板172)で構成することができるため、マグネットの枚数を削減することが可能となる。これにより、コストを削減することが可能となる。
次に、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1の動作について説明する。まず、オートフォーカス用アクチュエータ2の動作について説明する。オートフォーカス用アクチュエータ2は、レンズ体の光軸方向の移動、すなわち、図5〜図7に示すZ軸方向の移動を制御する。
オートフォーカス用アクチュエータ2において、四隅部分に配置された磁石5a〜5dの周辺には、例えば、磁石5a〜5dの内周面部53からコイル6を介してヨーク7の垂下壁面73に達し、ヨーク7の上面部及び外壁部を介して磁石5a〜5dの外周面に戻る磁界が発生している。レンズホルダ4の外周面に保持されたコイル6に通電すると、コイル6に流れる電流が、磁石5a〜5dが発生する磁界と作用することにより、コイル6を図6に示す上下方向に移動させる推力が発生する。これにより、レンズホルダ4は、下側板ばね8及び上側板ばね9の付勢力に抗して上下方向に移動する。
オートフォーカス用アクチュエータ2においては、例えば、レンズ駆動装置1本体を搭載する携帯電話やデジタルカメラの制御部からの駆動指示に応じてコイル6に通電する電流量を制御することによってこの推力を制御し、コイル6を上下移動してその位置決めを行う。これにより、コイル6が保持されるレンズホルダ4の位置決めを行うと共に、レンズホルダ4に組み付けられたレンズ体の位置決めを行うことが可能となる。なお、コイル6への通電を停止すると、レンズホルダ4は、下側板ばね8及び上側板ばね9の付勢力に応じて初期位置に復帰する。
続いて、レンズ駆動装置1による手ぶれ補正用アクチュエータの動作について説明する。手ぶれ補正用アクチュエータの動作は、オートフォーカス用アクチュエータ2の光軸方向と直交する面内の移動、すなわち、図5〜図8に示すX軸方向及びY軸方向の移動を制御する。
図8に示す手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路を構成する環状コイル16a及び磁場発生部材17aと、オートフォーカス用アクチュエータ2を挟んでこれらに対向配置される環状コイル16c及び磁場発生部材17cとは(図6参照)、図6に示すY軸方向の移動を制御する。環状コイル16aの磁石板172側の一部に対して、図8に示すZ軸負方向(紙面手前から奥方向)に電流を流すと、環状コイル16aには、矢印Fの方向(Y軸正方向)の力(ローレンツ力)が発生する。
この場合、環状コイル16aは外側ケース19に固定されているため、オートフォーカス用アクチュエータ2にはY軸負方向の力がかかり、外側ケース19に固定されたワイヤホルダー14に固定されているサスペンションワイヤ13a〜13dがY軸方向に揺動し、光軸方向に対して斜めの状態となる。この結果、サスペンションワイヤ13a〜13dに揺動自在に支持されているオートフォーカス用アクチュエータ2は、Y軸負方向に移動する。
一方、環状コイル16aの磁石板172側の一部に対して、図8に示すZ軸正方向(紙面奥から手前方向)に電流を流すと、環状コイル16aには、Y軸負方向の力(ローレンツ力)が発生する。
この場合、環状コイル16aは外側ケース19に固定されているため、オートフォーカス用アクチュエータ2にはY軸正方向の力がかかり、外側ケース19に固定されたワイヤホルダー14に固定されているサスペンションワイヤ13a〜13dがY軸方向に揺動し、光軸方向に対して斜めの状態となる。この結果、サスペンションワイヤ13a〜13dに揺動自在に支持されているオートフォーカス用アクチュエータ2は、Y軸正方向に移動する。
同様に、手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路を構成する環状コイル16b及び磁場発生部材17bと、オートフォーカス用アクチュエータ2を挟んでこれらに対向配置される環状コイル16d及び磁場発生部材17dとは(図6参照)、図6に示すX軸方向の移動を制御する。すなわち、環状コイル16b、16dに流す電流の向きを切り替えることにより、オートフォーカス用アクチュエータ2をX軸方向に移動可能に構成されている。
環状コイル16a〜16d及び磁場発生部材17a〜17dから構成される磁気回路は、オートフォーカス用アクチュエータ2の全ての側面にそれぞれ固定されているため、オートフォーカス用アクチュエータ2を光軸方向に直交する面内に移動するための磁場を、オートフォーカス用アクチュエータ2の周囲に発生させることができる。これにより、手ぶれ補正を適切に行うことが可能となる。
このように、手ぶれ補正用アクチュエータの磁気回路及びサスペンションワイヤ13a〜13dによってX軸方向及びY軸方向の移動を制御することにより、オートフォーカス用アクチュエータ2は外側ケース19に対し光軸方向に直交する面内で移動して手ぶれ補正を行うことができる。手ぶれ補正は、例えば、レンズ駆動装置1を搭載する携帯電話やデジタルカメラの制御部からの駆動指示に応じて、磁気回路を構成する環状コイル16a〜16dに通電する電流量及び方向を制御することによって環状コイル16a〜16dにかかる力を制御して行う。これにより、オートフォーカス用アクチュエータ2の光軸方向に直交する面内での位置決めを行うことが可能となる。
図1及び図2に示すように、磁場発生部材17cの下方側に配置される磁気検出素子18aには、磁場発生部材17cの下端からもれる磁力線が入力される。これにより、磁気検出素子18aは、オートフォーカス用アクチュエータ2のY軸方向の移動量に比例した出力を得ることができる。同様に、磁場発生部材17dの下方側に配置される磁気検出素子18bは、オートフォーカス用アクチュエータ2のX軸方向の移動量に比例した出力を得ることができる。したがって、2つの磁気検出素子18a、18bによって、オートフォーカス用アクチュエータ2のX軸方向及びY軸方向の移動量を検出することが可能となる。
このように、本実施の形態に係るレンズ駆動装置1の磁気回路によれば、オートフォーカス用アクチュエータ2を光軸方向に直交する面内に移動するための磁気回路を構成する磁場発生部材17a〜17dを、オートフォーカス用アクチュエータ2の光軸方向に沿った側面に配置していることから、オートフォーカス用アクチュエータ2と外側ケース19との間隔を縮めて、レンズ駆動装置1における光軸方向と直交する方向の面積を小さくすることができる。また、環状コイル16a〜16dの巻回部の一部を、磁場発生部材17a〜17dの一対のヨーク(第1ヨーク171及び第2ヨーク173)の間隙に位置するため、レンズ駆動装置1における光軸方向と直交する方向の面積を小さくすることができる。これにより、磁気回路を含めた装置全体を小型化することが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
例えば、上記実施の形態においては、レンズ駆動装置1においてサスペンションワイヤ13a〜13dによってオートフォーカス用アクチュエータ2を外側ケース19に揺動可能に支持する場合について説明しているが、オートフォーカス用アクチュエータ2を支持する構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、複数の棒状態(サスペンションシャフト)によって支持する構成としてもよいし、複数の球体(ボールベアリング)によって支持する構成としてもよいし、板ばねによって支持する構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、磁場発生部材17a〜17dを構成する第1ヨーク171に突出部171aが設けられており、この突出部171aを介して第1ヨーク171がヨーク7に固定されることで第1ヨーク171とヨーク7との間に隙間(ギャップG)が形成される構成について説明しているが、隙間(ギャップG)が形成される構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、突出部は、ヨーク7側に設けられていてもよい。さらに、突起171aは、第1ヨーク171とヨーク7とを接着固定するための非磁性の接着剤で構成されていてもよい。