従来より、上記押出成形セメント板等の乾式外壁材を含むパネルは、建物の躯体の軽量化、施工の効率化等の要請から建物に多く用いられている。
このような材質の矩形のパネルを建物の梁や柱等の躯体に取り付けるときは、パネルの四隅に取り付けられた4つの各取付金具(Zクリップ)を、建物の躯体に取り付けられた下地材(例えばL型アングル)に係合させることによって行われる。
ここで、建物の躯体に取り付けられたパネルの重量は、例えば当該パネルの下方に取り付けられている別のパネルや基礎等によって支持される。そして、パネルの四隅に取り付けられた取付金具が、建物の下地材に係合することによって、パネルが建物の外側に外れないように取り付けることができる。そして、パネルが建物の内側に外れないように、下地材によって止めることができる。
そして、互いに対向するパネルの裏面と、下地材の表面との間には硬質パッキングが装着される。この硬質パッキングは、パネルの下地材に対する出入り調整のためのものである。
また、例えば取付金具を1本のボルトでパネルに取り付けている場合は、パネルを縦張りするときは、地震等の何らかの原因で、取付金具がボルトを中心して回転して下地材から外れることを防止するために、パネルの上部に取り付けられている取付金具を下地材に溶接することが行われている。このように溶接するのは、パネルの上部に取り付けられている取付金具は、その下部にボルトが挿通しており、ボルトが緩むと、取付金具がボルトを中心にして回転して下地材から外れる可能性があるからである。そして、パネルを横張りするときは、パネルに取り付けられている全ての取付金具を下地材に溶接することが行われている。
そして、地震等によって取付金具が回転しないようにするために、取付金具を、2本のボルトを使用してパネルに取り付けることも行われている。
また、図13に示す壁パネルの取付装置1がある(例えば、特許文献1参照。)。この取付装置1は、取付金具2がボルト5を中心にして回転することを防止できる構成となっている。
この図13に示す取付装置1は、取付金具2とパネル3との間に当て板4を装着した状態で、取付金具2と当て板4とが互いに重なり合う部分にボルト5を挿通して、このボルト5の先端部をパネル3の中空部3aに配置されているナット部材(図示せず)に螺合させている。
この取付装置1によると、図13に示すように、当て板4の基端部の左右の各縁部には、一対の突起4aが設けられ、この一対の突起4aによって、取付金具2を当て板4に位置決めして装着できるようにすることができる。
そして、当て板4の中央部の左右の各縁部には、突出片4bが形成され、当て板4の先端部の板面には、断面が円弧状の膨出部4cが形成されている。この突出片4bの高さは、膨出部4cの高さよりも少し大きい寸法に設定してあり、ボルト5を締め付けたときに、取付金具2の傾斜段部2aに突出片4bが当接することで、取付金具2と当て板4とが、互いに接近する方向の移動を規制するようになっている。
これによって、膨出部4cと下地材6との接触圧を適切な大きさにすることができ、地震時等にパネル3がその板面方向に移動することを許容することができる。その結果、パネル3やこの取付装置1の耐震性の向上を図ることができるようになっている。
しかし、硬質パッキングを使用する必要がある取付金具では、施工の際に、この硬質パッキングを下地材に接着剤等によって接着する必要があり、このような接着作業に手間とコストが嵩む。
そして、地震等の際に、取付金具がボルトを中心して回転することを防止するために、取付金具を下地材に溶接する必要があるものでは、このような溶接作業に手間とコストが嵩む。
そして、取付金具が回転しないようにするために、取付金具を、2本のボルトを使用してパネルに取り付けるものでは、取付金具やボルト自体のコストが嵩む。また、このような取付金具では、取付金具を2本のボルトでパネルに仮留めすると、パネルを下地材の取付位置に配置したときに、下地材を取付金具とパネルとの間に装着することができず、パネルを下地材に取り付けることができない。
そのため、まず、取付金具を1本のボルトでパネルに仮留めしておき、パネルを下地材に取り付けるときに、取付金具を回転させて、パネルを下地材の所定位置に配置する。しかる後に、残りのボルトを、パネルの中空部に配置されているナット部材に螺合させると共に、取付金具を図1に示す位置に回転させる。
そして、この2本のボルトを締め付けることによってパネルを下地材に強固に取り付けることができる。しかし、このような取付け方法は、手間と作業のコストが嵩む。
また、図13に示す従来の取付装置1では、互いに重ね合わせた取付金具2と当て板4とを、ボルト5でパネル3に仮留めして、パネル3を下地材6の取付位置に配置するときに、取付金具2が邪魔にならないように、下地材6から外れる位置に、ボルト5を中心にして回転させておく必要がある。更に、取付装置1をボルト5で締め付けて固定するときは、取付金具2を図13に示すように下地材6に係合する位置に、ボルト5を中心にして回転させる必要がある。
しかし、取付金具2を、ボルト5を中心にして左右(上下)の各方向に回転させるときに、当て板4に形成された2つの突起4a及び2つの突出片4bが邪魔となり、パネル3を下地材6に取り付けるための手間とコストが嵩む。
そして、このように取付金具2を、ボルト5を中心にして左右の各方向に回転させるときに手間が掛るのは、図13に示すように、取付金具2と当て板4とを、共通のボルト5でパネル3に締結するようになっているからであり、この共通のボルト5を緩めた状態で取付金具2を回転させようとすると、当て板4の位置が定まらないので、この当て板4を一方の手で持って位置決めしながら、他方の手で取付金具2を回転させる必要があるからである。
また、取付金具2を回転させるときに、取付金具2の傾斜段部2aの当て板4側の表面(取付金具2の回転の半径方向外側の表面)が2つの突出片4bに当接するので、これを避けるためには、傾斜段部2aの当て板4側の表面が、突出片4bの上端部よりも更に上方の位置となるまで、ボルト5をナット部材から緩める必要がある。しかし、このようにするためには、ボルト5を相当に長くする必要があり、ボルト5をナット部材に螺合させるための手間と作業のコストが嵩む。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、パネルを下地材に取り付けるときは、取付金具を、ボルトを中心にして回転させ易くして施工の手間とコストを軽減し、しかも、パネルを下地材に取り付けた状態では、取付金具が回転して下地材から外れないようにすることができる建築用パネル取付補助具及び建築用パネルの取付構造を提供することを目的としている。
本発明に係る建築用パネル取付補助具は、パネルにボルトで取り付けられた取付金具と前記パネルとの間に建物の下地材を挟み込んで、前記パネルを前記下地材に取り付ける際に、前記パネルと前記下地材との間に装着される建築用パネル取付補助具であって、板状部と、前記板状部に設けられ、前記建築用パネル取付補助具を前記下地材に留め付けるための留付部と、前記板状部に設けられ、前記パネルと前記下地材との間に装着されてこれら両者の間隔を保持するためのスペーサ部とを備え、前記留付部は、前記取付金具が前記ボルトを中心して回転することを阻止するように、前記下地材の表面に位置する係止部を有することを特徴とするものである。
この発明に係る建築用パネル取付補助具によると、この補助具の留付部によって当該補助具を建物の下地材に留め付けることができる。そして、スペーサ部をパネルと下地材との間に装着することによって、パネルと下地材との間隔を保持することができる。これによって、パネルの下地材に対する出入り調整をすることができるし、パネルを下地材に対してがたつきが生じないように所定の位置関係であって、所定の強度で取り付けることができる。そして、パネルを下地材に取り付けた状態で、留付部の係止部は、取付金具が地震等の何らかの原因で、ボルトを中心して回転しようとしてもこれを阻止することができる。
この発明に係る建築用パネル取付補助具において、前記留付部は、前記板状部に互いに間隔を隔てて一対設けられ、この一対の前記留付部どうしの間隔は、この一対の前記留付部どうしの間に前記取付金具を配置可能な寸法に形成されているものとしてよい。
このようにすると、パネルを下地材に取り付けた状態で、一対の各留付部に形成されたそれぞれの係止部は、取付金具が地震等の何らかの原因で、ボルトを中心して左右いずれの方向にも回転することを阻止することができる。そして、留付部を一対として設けてあるので、この一対の留付部が下地材を押圧する2箇所で、この補助具を下地材に留め付けることができ、補助具が外力を受けて回転して下地材に対して位置ずれすることを抑制することができる。
この発明に係る建築用パネル取付補助具において、前記取付金具は、前記ボルトが挿通する取付部と、この取付部と結合し前記下地材の前記縁部を覆うように形成され、前記下地材を押圧する係合部とを有し、前記留付部は、前記下地材の縁部を覆うように形成された前記係止部と、この係止部と結合し前記下地材を押圧する挟持部とを有するものとしてよい。
このようにすると、留付部の挟持部と、スペーサ部との間に下地材を挟み込んで挟持することができ、これによって、当該補助具を下地材に留め付けることができる。そして、パネルにボルトで取り付けられた取付金具の係合部と、パネルとの間に下地材及びスペーサ部を挟み込んだ状態で、パネルを下地材に取り付けることができる。また、当該補助具が、その係止部が下地材の縁部に当接する方向、及び係止部が下地材の縁部から離れる方向のいずれの方向にも移動することを防止でき、これによって、当該補助具が下地材から外れることを防止することができる。
このように、当該補助具が、その係止部が下地材の縁部に当接する方向に移動することを防止できるのは、留付部の係止部が、下地材の縁部を覆うように形成されているので、係止部が下地材の縁部に当接するからである。そして、当該補助具が、その係止部が下地材の縁部から離れる方向に移動することを防止できるのは、取付金具の係合部が、下地材の縁部を覆う状態で下地材を押圧するので、当該補助具の板状部が取付金具に当接するからである。
この発明に係る建築用パネル取付補助具において、前記スペーサ部は、1又は2以上の弾性的性質を有する突起部で形成され、前記留付部は、前記板状部に互いに間隔を隔てて一対設けられ、この一対の前記留付部どうしの間に前記スペーサ部の全部又は一部が配置されているものとしてよい。
このようにすると、2以上の弾性的性質を有する突起部を形成することによって、スペーサ部の復元力(反力)を適切な大きさに設定することができ、パネルを下地材に対して、適切な復元力でがたつきがないようにしっかりと取り付けることができる。そして、取付金具の係合部とパネルとの間に下地材及びスペーサ部を挟み込んだ状態でパネルを下地材に取り付けると、スペーサ部の復元力がパネル及び下地材に掛るので、取付金具及びパネルに対する当該補助具の位置ずれを防止することができる。そして、この一対の留付部の間にスペーサ部の全部又は一部が配置されているので、スペーサ部の復元力が、この一対のそれぞれの留付部に掛り、この建築用パネル取付補助具を下地材に対して安定して確実に留め付けることができる。
この発明に係る建築用パネル取付補助具において、前記板状部、前記スペーサ部、及び前記留付部は、一体物として形成されているものとしてよい。
このようにすると、この建築用パネル取付補助具の製造、管理、及び施工の各コストの低減、及び耐久性の向上を図ることができる。
本発明に係る建築用パネルの取付構造は、本発明に係る建築用パネル取付補助具が建物の前記下地材に留め付けられ、前記パネルに前記ボルトで取り付けられた前記取付金具と前記パネルとの間に、前記下地材及び前記スペーサを挟み込んで、前記パネルを前記下地材に取り付けて成ることを特徴とするものである。
本発明に係る建築用パネルの取付構造によると、本発明に係る建築用パネル取付補助具を備えているので、上記と同様に作用する。
この発明に係る建築用パネル取付補助具、及び建築用パネルの取付構造によると、パネルを下地材に取り付けた状態で、取付金具が地震等の何らかの原因でボルトを中心して回転することを、留付部の係止部によって阻止することができる構成としたので、取付金具が下地材から外れることを確実に防止することができ、よって、パネルを下地材に対して、安定した状態で長期間所定の位置関係でしっかりと取り付けておくことができる。
そして、この補助具は、取付金具とは、別個に下地材に取り付ける構成としたので、パネルを下地材に取り付けるときは、取付金具をボルトを中心にして回転させ易く施工の手間とコストを軽減することができる。しかも、当該補助具の留付部には、係止部を設けた構成としたので、パネルを下地材に取り付けた状態では、取付金具が回転して下地材から外れないようにすることができる。
また、スペーサ部をパネルと下地材との間に装着することによって、パネルと下地材との間隔を保持する構成としたので、ボルトの締め過ぎに起因して、パネルにクラックを発生させることを防止できる。
以下、本発明に係る建築用パネル取付補助具(以下、単に「補助具」と言うこともある。)、及びこの補助具を使用する建築用パネルの取付構造(以下、単に「取付構造」と言うこともある。)の第1実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。この補助具11及び取付構造12は、図1に示すように、例えば外壁等に使用される押出成形セメント板や軽量気泡コンクリート板等のパネル13を、建物の下地材14に取り付けるためのものである。
更に詳しくは、この補助具11は、パネル13にボルト15で取り付けられた取付金具16とパネル13との間に建物の下地材14を挟み込んで、パネル13を下地材14に取り付ける際に、パネル13と下地材14との間に装着されるものであり、図2に示すように、板状部17、留付部18、及びスペーサ部19を備えている。
この実施形態では、補助具11及び取付構造12を、例えば図7及び図1に示すように、パネル13を横張り(パネル13をその中空部13aが水平方向となるように配置して下地材14に取り付ける工法)する工法の例を挙げて説明する。この下地材14は、図1に示すように、下地取付部20に溶接され、この下地取付部20は、梁21に溶接されている。また、左右に配置されたパネル13の端部どうしの隙間は、パッキング22が装着され、このパッキング22は、バックアップ材23で保持されている。
ただし、この補助具11及び取付構造12を、パネル13を横張りする工法に適用する以外にもパネル13を縦張り(パネル13をその中空部13aが鉛直方向となるように配置して下地材14に取り付ける工法)する工法にも適用することができる。
また、この補助具11は、図5及び図6に示すように、例えば金属製の板状部材を屈曲して形成された一体物であり、この補助具11が備えている板状部17は、図5(B)に示すように、略矩形の板状体で形成されている。
留付部18は、図3及び図4に示すように、この補助具11を下地材14に留め付けるためのものであり、板状部17に互いに間隔を隔てて一対設けられ、この一対の留付部18とスペーサ部19との間に下地材14の平板部14aを挟み込むことによって、この補助具11を下地材14に装着することができる。そして、補助具11の下地材14に対する取り付け強度は、一対の留付部18の弾性力(挟持力)に基づいて設定されている。
そして、一対の留付部18どうしの間隔は、図7に示すように、この一対の留付部18どうしの間に取付金具16の係合部16aを配置できるような寸法に形成されている。また、この一対の留付部18は、図4に示すように、板状部17の左右の各端部の下縁部に設けられている。
そして、留付部18は、図4に示すように、細長い板状体を屈曲して形成したものであり、下地材14の縁部14bを覆うように形成された係止部18aと、この係止部18aと結合し下地材14をスペーサ部19とによって挟持する挟持部18bとを有している。この挟持部18bは、下地材14をスペーサ部19側に押圧している。
また、係止部18aは、図2に示す取付金具16が、ボルト15を中心して下方(紙面に対して垂直下方向)に向かって回転することを阻止するように、下地材14の表面側に配置され、この下地材14の表面から突出するように屈曲形成されている。
更に、図5(B)に示すように、補助具11を正面から見て、一対の留付部18どうしの間に、2つの突起部19aで構成されたスペーサ部19の全部が配置されている。
ただし、この一対の留付部18どうしの間に、スペーサ部19の全部を配置したが、これに代えて、スペーサ部19の一部が配置されるようにしてもよい。例えば、一方の留付部18と対向する位置にスペーサ部19を構成する突起部19aを配置してもよいし、一方の留付部18と対向する位置よりも外側の位置に突起部19aを配置してもよい。
スペーサ部19は、図2に示すように、パネル13と下地材14の平板部14aとの間に装着されて、これら両者の間隔を保持するためのものである。このスペーサ部19は、2つの弾性的性質を有する突起部19aを備えており、これら2つの各突起部19aは、断面が台形状となるように板状部17の一部を屈曲して形成したものである。
取付金具16は、図2に示すように、矩形のパネル13の四隅にボルト15で取り付けられて、この取付金具16の係合部16aとパネル13との間に、建物の下地材14及びスペーサ部19を挟み込んで、パネル13を下地材14に取り付けることができるものである。
この取付金具16は、図2及び図7に示すように、略矩形の板状体を屈曲して形成したものであり、取付部16bと、係合部16aとを有している。この取付部16bと係合部16aとは、傾斜段部16cを介して互いに結合している。この係合部16a及び傾斜段部16cは、パネル13を下地材14に取り付けた状態で、下地材14の縁部14bを覆うように配置される。
取付部16bは、板状に形成され、ボルト15が挿通する挿通孔24が形成されている。そして、係合部16aは、板状に形成され、下地材14の一方の平板部14aの板面を押圧するものである。
また、この取付金具16は、図2に示すように、係合部16aを下地材14に係合させた状態で、ボルト15を取付部16bの挿通孔24及びパネル13に形成された取付孔25に挿通し、ボルト15の先端部をナット部材26に螺合させてボルト15を締め付けたとき、補助具11のスペーサ部19を、下地材14の平板部14aとパネル13との間に挟み込んで圧縮することができる。そして、このように、この建築用パネルの取付構造12が構成されている。このナット部材26は、パネル13の中空部13a内に配置されている。
図2に示すH1は、スペーサ部19が圧縮される前の高さであり、H2は、スペーサ部19が圧縮された後の高さである。Dは、スペーサ部19が圧縮された寸法である。
次に、上記のように構成された建築用パネル取付補助具11、及びこの補助具11を使用する建築用パネルの取付構造12の作用を、図1〜図9を参照して説明する。この補助具11及び取付金具16を使用して、パネル13を建物の下地材14に取り付けるときは、まず、例えば図4に示すように、複数の補助具11を下地材14の平板部14aの所定の箇所に装着する。そして、図2に示す複数の取付金具16を、ボルト15でパネル13の四隅に仮留めしておく。この仮留めは、ボルト15を、取付金具16の挿通孔24及びパネル13の取付孔25に挿通し、このボルト15の先端部にナット部材26を螺合させてこのボルト15をナット部材26に係合させる。
また、図1に示すパネル13を下地材14の取付位置に配置するときに、取付金具16の係合部16aが邪魔にならないように、係合部16aが下地材14から外れる位置に取付金具16を回転させておく。
次に、図1に示すように、パネル13を下地材14の取付位置に配置して、取付金具16の係合部16aが下地材14の平板部14aに係合する位置にこの取付金具16を回転させる。しかる後に、ボルト15をナット部材26に対して締め付ける。これによって、パネル13を下地材14に取り付けることができる。
この建築用パネル取付補助具11によると、図2に示すように、この補助具11のスペーサ部19をパネル13と下地材14との間に装着する構成となっているので、このスペーサ部19によって、パネル13と下地材14との間隔を保持することができる。これによって、パネル13を下地材14に対してがたつきが生じないように所定の位置関係であって、所定の強度で取り付けることができるし、パネル13の下地材14に対する出入り調整をすることができる。
このパネル13の下地材14に対する出入り調整は、ボルト15を締め付ける強さを調整することによって行うことができる。つまり、ボルト15の規定の締め付け強度の範囲内において、ボルト15を緩く締め付けると、パネル13の外面を下地材14に対して屋外側に位置決めして取り付けることができる。そして、ボルト15の規定の締め付け強度の範囲内において、ボルト15を強く締め付けると、パネル13の外面を下地材14に対して屋内側に位置決めして取り付けることができる。そして、このように、ボルト15の締付け強さをボルト15の規定の締め付け強度の範囲内で変えても、スペーサ部19の弾性力(復元力)によって、パネル13を下地材14に対して規定の強度の範囲内で取り付けることができる。
そして、図7及び図8に示すように、パネル13を下地材14に取り付けた状態で、留付部18の係止部18aは、取付金具16が地震等の何らかの原因で、ボルト15を中心して回転しようとしてもこれを阻止することができる。これによって、取付金具16の係合部16aが下地材14から外れることを確実に防止することができ、よって、パネル13を下地材14に対して、安定した状態で長期間所定の位置関係でしっかりと取り付けておくことができる。
そして、この補助具11は、取付金具16とは、別個に下地材14に取り付ける構成としたので、パネル13を下地材14に取り付けるときに、補助具11を手で持たずに、取付金具16を、ボルト15を中心にして回転させることができ、施工の手間とコストを低減することができる。
また、スペーサ部19をパネル13と下地材14との間に装着することによって、パネル13と下地材14との間隔を保持する構成としたので、ボルト15の締め過ぎに起因して、パネル13にクラックを発生させることを防止できる。
更に、図7及び図8に示すように、留付部18は、板状部17に互いに間隔を隔てて一対設けられ、この一対の留付部18どうしの間隔は、この一対の留付部18どうしの間に取付金具16の係合部16aを配置可能な寸法に形成されている。このように構成したことによって、パネル13を下地材14に取り付けた状態で、一対の各留付部18に形成されたそれぞれの係止部18aは、取付金具16が地震等の何らかの原因で、ボルト15を中心として左右(上下)いずれの方向にも回転することを阻止することができる。そして、留付部18を一対設けてあるので、この一対の留付部18が下地材14を押圧する2箇所で、この補助具11を下地材14に留め付けることができ、補助具11が外力を受けて下地材14の平板部14a上で回転して、下地材14に対して位置ずれすることを抑制することができる。
そして、図2に示すように、取付金具16は、その取付部16bにボルト15が挿通しており、この取付部16bと結合する係合部16aは、下地材14の縁部14bを覆うように形成され、下地材14の平板部14aを押圧するように形成されている。また、留付部18は、その係止部18aが下地材14の縁部14bを覆うように形成され、この係止部18aと結合する挟持部18bは、下地材14の平板部14aを押圧するように形成されている。
このように構成すると、留付部18のばね力によって、挟持部18bと、スペーサ部19との間に下地材14を挟み込んで挟持することができ、これによって、当該補助具11を下地材14に留め付けることができる。そして、パネル13にボルト15で取り付けられた取付金具16の係合部16aと、パネル13との間に下地材14及びスペーサ部19を挟み込んだ状態で、パネル13を下地材14に取り付けることができる。
また、当該補助具11が、その係止部18aが下地材14の縁部14bに当接する方向(図2の右方向)、及び係止部18aが下地材14の縁部14bから離れる方向(図2の左方向)のいずれの方向にも移動することを防止でき、これによって、当該補助具11が下地材14から外れることを防止することができる。
このように、当該補助具11が、その係止部18aが下地材14の縁部14bに当接する方向(図2の右方向)に移動することを防止できるのは、留付部18の係止部18aが、下地材14の縁部14bを覆うように形成されているので、係止部18aが下地材14の縁部14bに当接するからである。そして、当該補助具11が、係止部18aが下地材14の縁部14bから離れる方向(図2の左方向)に移動することを防止できるのは、取付金具16の係合部16aが、下地材14の縁部14bを覆う状態で下地材14を押圧するので、当該補助具11の板状部17が取付金具16に当接するからである。
また、図4に示すように、スペーサ部19は、2つの弾性的性質を有する突起部19aで形成され、留付部18は、板状部17に互いに間隔を隔てて一対設けられ、この一対の留付部18どうしの間にスペーサ部19の全部(2つの突起部19a)が配置されている。
このように、スペーサ部19として2つの弾性的性質を有する突起部19aを形成することによって、スペーサ部19の復元力(反力)を適切な大きさに設定することができ、パネル13を下地材14に対して、適切な復元力でがたつきがないようにしっかりと取り付けることができる。そして、取付金具16の係合部16aとパネル13との間に下地材14及びスペーサ部19を挟み込んだ状態でパネル13を下地材14に取り付けると、スペーサ部19の復元力がパネル13及び下地材14に掛るので、取付金具16及びパネル13に対する当該補助具11の位置ずれを防止することができる。そして、この一対の留付部18の間にスペーサ部19の全部が配置されているので、スペーサ部19の復元力が、この一対のそれぞれの留付部18に略均等に掛り、この建築用パネル取付補助具11を下地材14に対して安定して確実に留め付けることができる。
更に、図3に示すように、板状部17、スペーサ部19、及び一対の留付部18は、一体物として形成されているので、この建築用パネル取付補助具11の製造、管理、及び施工の各コストの低減、及び耐久性の向上を図ることができる。
次に、本発明に係る補助具、及びこの補助具を使用する取付構造の第2実施形態を、図10〜図12を参照して説明する。図3に示す第1実施形態の補助具11と、図10に示す第2実施形態の補助具29とが相違するところは、図3に示す第1実施形態では、スペーサ部19としての突起部19aを2つ形成したのに対して、図10に示す第2実施形態では、突起部19aを3つ形成したところである。
そして、図7に示す第1実施形態の取付構造12と、図12に示す第2実施形態の取付構造30とが相違するところは、図7に示す第1実施形態では、取付金具16を1本のボルト15でパネル13に取り付けたのに対して、図12に示す第2実施形態では、取付金具16を2本のボルト15でパネル13に取り付けているところである。
これ以外は、第1実施形態と同等の構成であり同様に作用するので、同等の部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
図11に示すように、スペーサ部19としての突起部19aの数を増加させることによって、補助具の下地材14に対する取付け強度を大きくする構成としたので、複数の各突起部19aが下地材14に対して片当たりすることなく、スペーサ部19全体を下地材14の平板部14aに大きな強度で圧接させることができる。更に、一対の留付部18の間にスペーサ部19の全部(3つの突起部19a)が配置されている構成としたので、スペーサ部19(3つの突起部19a)の復元力が、この一対のそれぞれの留付部18に略均等に掛る。
これによって、この補助具を下地材14に対して安定して確実に留め付けることができ、補助具が下地材14の平板部14aに対して回転して位置ずれすることを確実に防止することができる。
そして、図12に示すように、取付金具16を2本のボルト15でパネル13に取り付けているので、取付金具16がいずれか一方のボルト15を中心にして回転することを、更に確実に防止することができる。
ただし、上記各実施形態では、図3及び図10に示すように、補助具11、29のスペーサ部19は、2つ又は3つの弾性的性質を有する突起部19aを備える構成としたが、これに代えて、1又は4つ以上の弾性的性質を有する突起部19aを備える構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、補助具11、29及び取付構造12、30を、図1等に示すように、中空部13aを有する押出成形セメント板に適用したが、これ以外にも、取付金具16を使用して下地材14に取り付けることができる他のパネルに適用することができる。
そして、上記各実施形態では、図3等に示すように、複数の突起部19aで構成されたスペーサ部19を、板状部17の留付部18側に設けたが、これに代えて、スペーサ部19の突起部19aを板状部17の留付部18と反対側になる位置に設けてもよい。このようにする場合は、板状部17と留付部18の挟持部18bとの間に下地材14の平板部14aを挟み込んで挟持できるようにする。