以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の縦断面図である。本実施の形態の鍵盤装置は、鍵盤シャーシ4と、鍵1と、押鍵動作に適当な慣性を与えてアコースティックピアノのような押鍵感触を得るためのハンマ2とから主に構成される。ハンマ2は各鍵1に対応して設けられる。鍵1及びハンマ2は、鍵1の並び方向に並列的に配設される。なお、黒鍵についても鍵1と同様に構成され、鍵盤シャーシ4に回動自在に支持されて成る。図1は、非押鍵状態(鍵1が押鍵行程の開始位置にある状態)を示す。なお、以下、本装置の演奏者側(同図左方)を前方と称する。
鍵1、ハンマ2は、それぞれの回動支点部、すなわち鍵回動軸P1、ハンマ回動軸P2を中心として上下方向に回動可能に構成されている。鍵1は対応するハンマ2を駆動可能に構成され、ハンマ2はスイッチ部3を駆動可能に構成されている。
鍵1には、その後端部の一側面に凸球面状の鍵支点部1aが突設されている。その中心が上記鍵回動軸P1である。一方、鍵盤シャーシ4の略水平なシャーシ水平部4aの後方には鍵支持部5が設けられている。鍵支持部5の鍵支点部1aに対向する部分には、各鍵支点部1aに対応して凹部(図示せず)が設けられている。鍵支点部1aが鍵支持部5の凹部と係合して、鍵1が鍵支点部1a(鍵回動軸P1)を中心として上下方向に回動自在にされている。
鍵1の前部には下方に垂下したハンマ駆動片1bが設けられている。ハンマ駆動片1bの下端部にはウレタンゴム製等の緩衝材13が取り付けられている。緩衝材13は、ハンマ2の上側延設部2c及び下側延設部2b間に挟入され、鍵1の押離鍵動作をハンマ2に伝達すると共に、ハンマ2の復帰動作を鍵1に伝達する。なお、押鍵及び押鍵復帰の行程において、緩衝材13はその上端部がハンマ2の上側延設部2cと常に当接して動作の伝達を確実にしている。
鍵盤シャーシ4は、シャーシ水平部4aと鍵盤シャーシ4の前部4bとがリブ12により連結されて補強されている。シャーシ前部4bには鍵並び方向(鍵1の横方向)の回動を規制するためのキーガイド6が各鍵1毎に突設されている。鍵1の最前部の下方において、シャーシ前部4bには、過変形防止ストッパ14が設けられている。通常の押鍵よりはるかに強い力が鍵1にかかったとき、過変形防止ストッパ14に鍵1の最前部下部が当接して、鍵1の過変形が防止される。
ハンマ2は、各鍵1に対応して設けられ、鍵盤シャーシ4に設けられた支持部材9のハンマ支持部9a(ハンマ回動軸P2)を中心としてその自由端部2dが上下方向に回動自在にハンマ支点部2aにて支持されている。また、ハンマ支点部2a近傍から鍵1の後部に亘って、前側が2又形状となっているフォーク形状のバネ7が懸架されている。このバネ7は、鍵1を鍵支持部5に押しつけると共に、ハンマ2を支持部材9のハンマ支持部9aに押しつけ、鍵1及びハンマ2が鍵盤シャーシ4から容易に脱落しないようにしている。
ハンマ2は、重量部である質量部材2fの重さによって下側延設部2bにて鍵1を上方に常に付勢している。なお、鍵1の復帰力はバネ7から付与されるのではなく、ハンマ2自身の復帰力によるものである。ハンマ2は、下部にスイッチ部3を駆動するためのスイッチ駆動部2eを有する。
鍵盤シャーシ4の後部4dの下面には、図2(a)で詳細を後述する上側ストッパ体STが設けられる。シャーシ保持部4cには、下側ストッパ11が設けられている。上側ストッパ体STは、押鍵操作に連動して往方向に回動するハンマ2の質量部材2fと当接して鍵1及びハンマ2の回動終了位置(鍵1では前端部の下限位置、ハンマ2では自由端部2dの上限位置)を規制する。下側ストッパ11は非押鍵時にハンマ2の質量部材2fと当接して鍵1の前端部の上限位置を規制する。
シャーシ前部4bにはスイッチ基板8が取り付けられ、スイッチ基板8上にはスイッチ部3が設けられている。スイッチ部3は、ハンマ2のスイッチ駆動部2eに対向して各ハンマ2毎に設けられている。スイッチ部3は、接点時間差タイプの2メイク式タッチレスポンススイッチであり、ハンマ2の動作検出を介して鍵1の押鍵動作を検出する。
図2(a)は、本実施の形態における1つの上側ストッパ体STの構成を示す右側面図である。上側ストッパ体STは、前後方向に並設された前側ストッパ部10と後側ストッパ部20とを有し、さらに、ベース部25、カバー布24及び圧力センサ26を含んで構成される。上側ストッパ体STは、例えば、全鍵域を複数に分割した所定鍵域毎に構成され、各鍵域に対応する長さを有する。なお、上側ストッパ10は全鍵共通に構成してもよいし、各鍵毎に構成してもよい。
圧力センサ26を押鍵後の楽音処理のためのいわゆるアフタセンサとして利用する場合において、伴奏鍵域(低音域)とメロディ鍵域(高音域)とに分けて鍵域分割される場合は、メロディ部にのみ圧力センサ26を配設するようにしてもよい。この場合、センシングしやすいストッパとするために、上側ストッパ体STを2種類設け、伴奏鍵域とメロディ鍵域とで、上側ストッパ体STの構成を異ならせてもよい。なお、このようにする場合は、伴奏鍵域においては、圧力センサ26を設けないようにしてもよい。
鍵盤シャーシ4の後部4dの下面には、ベース部25によって、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20とがまとめられて固着されている。すなわち、ベース部25の下面に、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20とが固着されてユニット化された上側ストッパ体STが、後部4dの下面に固着されている。このようにしてハンマ2の長手方向(前後方向)に沿って、前側に前側ストッパ部10、後側に後側ストッパ部20が配置される。後側ストッパ部20は3層構造となっており、上側から順に、第1層21、第2層22、第3層23からなる。
ベース部25は、一様な厚みを有する布状部材等で構成される。前側ストッパ部10は1層構造で、硬質フェルト等で構成される。後側ストッパ部20の第1層21、第2層22、第3層23は、例えば、それぞれ、硬質フェルト、中硬質フェルト、軟質フェルトで構成される。硬さの設定は、硬い順に前側ストッパ部10>第1層21>第2層22>第3層23となっている。縦弾性係数(弾性率)でいえば、前側ストッパ部10が最も縦弾性係数が高く、第3層23が最も低い。これは、例えば、各フェルトの不織度合いを異ならせることで実現される。なお、材質自体は例示であり、硬さの設定を上記のようにすればよく、例えば、第2層22、第3層23等にはウレタンゴム等を採用してもよい。
第1層21、第2層22、第3層23を併せた後側ストッパ部20の上下方向の厚みは、前側ストッパ部10よりも差H1だけ厚く、段差状になっている。具体的には、第2層22の下面と第3層23の下面との間に前側ストッパ部10の下面が位置する。前側ストッパ部10と後側ストッパ部20の下半部から後側ストッパ部20の後部にかけては、一様な厚みを有する1枚のカバー布24で隙間無く覆うように構成され、端部24a、24bが鍵盤シャーシ4の後部4dの下面に接着等で固着される。なお、端部24a、24bは、ベース部25に巻き込んで固着し、カバー布24も含めてユニット化した上側ストッパ体STとして構成し、これを、後部4dの下面に固着するようにしてもよい。カバー布24のうち前側ストッパ部10に対応する部分の方が後側ストッパ部20に対応する部分よりも差H1だけ低い。ハンマ2の自由端部2dの上端は、長手方向に沿って真っ直ぐであって、回動終了状態では、前側ストッパ部10の下面及び後側ストッパ部20の下面と平行になるようになっている。
ところで、実際にハンマ2の自由端部2dが当接するのは、カバー布24の下面であるが、前側ストッパ部10、後側ストッパ部20に対応するカバー布24の部分に自由端部2dが当接することで、前側ストッパ部10、後側ストッパ部20が間接的に当接状態となる。そこで、以降、特記しない限り、「自由端部2dが前側ストッパ部10、後側ストッパ部20に対して当接状態となる」という表現は、「自由端部2dがカバー布24を介して前側ストッパ部10、後側ストッパ部20に当接する」ことを意味するものとする。
第1層21と第2層22、第2層22と第3層23は、いずれも軟質接着剤等で接着固定されている。また、第1層21、第2層22、第3層23の前面と前側ストッパ部10の後面とも、同様に接着固定されている。さらに、ベース部25と前側ストッパ部10及び後側ストッパ部20の第1層21との間、カバー布24と前側ストッパ部10及び後側ストッパ部20との間も、同様に軟質接着剤等で接着固定される。
第3層23は、弾性限度に相当する圧縮応力が加えられたときには、図2(a)に示す歪み量L1だけ縮む。従って、歪み量L1より小さい弾性変形をしたときは、負荷が除去されれば原形状(当接状態になっていないときの形状)に復元可能である。ちなみに、限界下面位置Q1は、第3層23のみが歪み量L1だけ縮んだと仮定した場合の第3層23の下面位置である。ハンマ2の自由端部2dが当接したときは、実際には、第1層21、第2層22も縮むので、第3層23の弾性限度に相当する圧縮応力が加わった場合の第3層23の下面位置は、限界下面位置Q1よりさらに上方の位置となる。
また、圧力センサ26は、ハンマ2の操作の検出を介して鍵1の操作を検出するものであり、各ハンマ2毎に、前側ストッパ部10の上部とベース部25の下面との間に配設される。また、鍵盤シャーシ4の後部4dの上面には検出回路27が設けられ、省スペースが図られている。圧力センサ26は、スイッチ部3に代えて設けてもよいが、スイッチ部3と共に設け、いずれかまたは双方の検出結果を採用するようにしてもよい。
圧力センサ26は、厚み0.5〜1mm程度の2層または3層のフィルムからなり、微細な粒状材が層間に介在している。そして、上記粒状材が、前側ストッパ部10を介して圧力を受け、フィルム間の接触面積が大きくなることによって、その圧力が検出されるものである。なお、圧力センサ26の構成は、これに限られない。なお、圧力センサ26と並設するように、後側ストッパ部20の上部に、ハンマ2の操作を検出するスイッチを設けてもよい。
圧力センサ26は、後側ストッパ部20の第1層21の上部に設けるようにしてもよいが、より硬くて力の伝達効率がよい前側ストッパ部10の上部に設けたことで、検出感度が高くなり、検出精度を向上させることができる。また、従来は、押鍵ストッパに圧力センサを設けようとしても、押鍵ストッパが柔らかくて耐久性がなかったため、製品化が困難であった。しかし、本実施の形態では、前側ストッパ部10に、硬い材料を採用できることから、弾性変形量が少なくて済み、しかも、圧力センサ26は、前側ストッパ部10によって常に保護されることになるから、圧力センサ26の耐久性を高めることができる。
上側ストッパ体STの製造、取り付けは、各鍵域毎に行う。まず、第1層21、第2層22、第3層23を接着固定して後側ストッパ部20を製造し、後側ストッパ部20と前側ストッパ部10とを接着固定する。そして、これら接着固定したものを、ベース部25の下面に接着固定して、1かたまりのものとする。そして、該1かたまりのうちベース部25の上面を、鍵盤シャーシ4の後部4dの下面に両面テープ等で接着固定する。最後に、前側ストッパ部10及び後側ストッパ部20の下方から露出表面を覆うようにカバー布24を接着によって隙間無く被せ、カバー布24の後端を後部4dに固着すると共に、カバー布24の前端を鍵支持部5の下面に固着する。
かかる構成において、鍵1を押鍵すると、鍵1のハンマ駆動片1bによってハンマ2が駆動されて往方向(自由端部2dが上昇する方向)に回動する。そして、回動の往行程において、ハンマ2の自由端部2dが、先に、後側ストッパ部20と当接状態となり、ハンマ2の運動エネルギが減少した後に、前側ストッパ部10と当接状態となる。そして、前側ストッパ部10が歪んでハンマ2の運動エネルギがすべて吸収された時点で、ハンマ2が回動終了状態となる。従って、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20との協働によりハンマ2の回動終了位置が規制される。
ここで、通常想定される最大の押鍵強さで押鍵された場合における、前側ストッパ部10の弾性変形による前側ストッパ部10の下面位置をQ2とする(図2(a)参照)。この下面位置Q2は、前側ストッパ部10に弾性限度に相当する圧縮応力が加わった場合の下面位置よりもはるかに低く設定することができる。また、この下面位置Q2は、後側ストッパ部20の上記した限界下面位置Q1よりも低くなるように設定される。従って、通常の演奏においては、前側ストッパ部10、後側ストッパ部20のいずれも、常に、弾性限度を超える応力を受けることなく弾性変形し、原形状に復元可能な範囲で歪むことになる。
ここで、ハンマ2の後側ストッパ部20に対する当接当初は速度も速く、通常、衝撃が大きいが、後側ストッパ部20の特に第3層23が柔らかいため、緩衝機能が十分に果たされる。その一方、前側ストッパ部10は硬くて、しかも、ハンマ2が事前に後側ストッパ部20と当接する段階的当接により、ハンマ2が前側ストッパ部10に当接状態となる前にハンマ2の運動エネルギが減少している。そのため、当接による前側ストッパ部10の沈み込み、すなわち弾性変形が小さくて済み、前側ストッパ部10は十分な余力を残して歪むことになる。これにより、多数回の繰り返し当接を受けても、前側ストッパ部10には、いわゆる「へたり」である恒久的変形が生じにくくなる。
ちなみに、仮に、上側ストッパ体STを、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20との並設ではなく前側ストッパ部10に相当する単一構成とした場合、該単一構成のストッパ部を3層等の複層で構成することが考えられる。しかし、そのようにしても、ハンマ2に近い側の層が弾性変形可能な限界近くまで圧縮されてつぶれることになるので、耐久性の向上は期待できない。本実施の形態では、硬さの異なる2つのストッパ部の並設によって、原形状に復元不能となるまで圧縮されることなく、且つ、各々の弾性変形量が抑えられ、耐久性が高くなっている。
前側ストッパ部10と後側ストッパ部20との段差である差H1は、対応する音域が高いほど小さく設定されている。例えば、上記分割した所定鍵域毎、あるいは各鍵毎に異なっている。または、ハンマ2の重さに応じて異ならせてもよい。すなわち、ハンマ2を例えば3種類設け、ハンマ2の重さが、低音域側から「重い」、「中」、「軽い」の3段階に設定されているとした場合は、差H1は、低音域側から「0mm」、「1mm」、「2mm」という設定にする。これにより、押鍵感触のキースケーリングが実現される。
ところで、原形状における後側ストッパ部20の下面位置と、前側ストッパ部10の上記下面位置Q2との距離は、過変形防止ストッパ14(図1参照)と通常押鍵における押鍵終了位置にある鍵1の最前部下部との距離にハンマ2のてこ比を乗算した値に、等しくなるように構成されている。これにより、子供が鍵盤上に載る等、通常想定される最大の押鍵強さを超える力が加わった場合には、鍵1の最前部下部が過変形防止ストッパ14に当接して、鍵1の過変形が防止される。このように、後側ストッパ部20、前側ストッパ部10、過変形防止ストッパ14という3つの構成要素が、3段階の安全機構として機能するようになっている。
本実施の形態によれば、ハンマ2が、後側ストッパ部20、前側ストッパ部10に段階的に当接状態となるように構成し、前側ストッパ部10よりも後側ストッパ部20の第3層23の方が縦弾性係数を低く設定した。しかも、ハンマ2の回動往行程において、後側ストッパ部20が、ハンマ2との当接状態解除後に原形状に復元可能な変形状態にあるときに、前側ストッパ部10にハンマ2が当接状態となるようにした。これらにより、押鍵終了時の良好な緩衝機能を維持すると共に、多数回使用による押鍵終了位置の変化を抑制して、上側ストッパ体STの耐久性を向上させることができる。
特に、先に当接状態となる後側ストッパ部20を、前側ストッパ部10よりも、ハンマ回動軸P2よりも遠い側に配置したので、ハンマ2の速度の高い部分が最初に当接状態となる。これにより、ハンマ2が前側ストッパ部10に当接状態となる前の段階で、ハンマ2の運動エネルギを効率よく減少させることができるので、前側ストッパ部10の弾性変形が小さくて済み、恒久的変形抑制に効果的である。また、全体としてのメカノイズも小さくて済む。
また、圧力センサ26を、硬い前側ストッパ部10の上部に設けたので、高い耐久性及び検出精度を維持すると共に、省スペースを図り、且つ、押鍵操作を検出することができる。
なお、本実施の形態では、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20の2個を並設したが、ハンマ2と当接状態になり得るストッパ部を、段差を設けて3個以上並設してもよい。その場合、最初に当接状態にならないストッパ部のうち元も硬いものに比し、最初に当接状態になるストッパ部の硬さを柔らかく設定すればよい。
なお、後側ストッパ部20は、3層構造としたが、これに限るものではなく、2層または4層以上でもよい。あるいは、前側ストッパ部10よりも柔らかい単層で構成してもよい。
なお、後側ストッパ部20だけでなく、前側ストッパ部10も2層以上の複層構造としてもよい。その場合は、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20との硬さの設定は、各ストッパ部の層のうち最も柔らかい層同士の比較となり、後側ストッパ部20のうち最も柔らかい層の方よりも前側ストッパ部10のうち最も柔らかい層の方を硬く構成すればよい。
(第2の実施の形態)
図2(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る鍵盤装置における1つの上側ストッパ体の構成を示す右側面図である。
本実施の形態では、上側ストッパ体の構成が第1の実施の形態と異なるのみで、その他の構成は同様である。本実施の形態における上側ストッパ体ST2は、図2(b)に示すように、後側ストッパ部20が3層構造であるが、第3層23の下面が前側ストッパ部10の下面と面一になっている点が第1の実施の形態と異なる。さらに、上側ストッパ体ST2においては、第3層23の下面及び前側ストッパ部10の下面に、一体に形成された側面視楔型の共通層28が設けられている。
共通層28は、第3層23と同一材料で構成され、縦弾性係数も同じである。なお、共通層28の材料には、縦弾性係数が第3層23より低いものを採用してもよい。共通層28の上下方向の厚みは、後方にいくほど厚くなっている。
上側ストッパ体ST2を製造、取り付けするには、まず、第1の実施の形態と同様に、後側ストッパ部20と前側ストッパ部10とを接着固定しベース部25の下面に接着固定する。その後、第3層23の下面及び前側ストッパ部10の下面に、共通層28を接着固定して、1かたまりのものとする。ベース部25と共通層28とにより、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20とがサンドイッチ構造となって上下において強固に連結され、一体的になる。
そして、上記一体的となった1かたまりのうちベース部25の上面を、鍵盤シャーシ4の後部4dの下面に両面テープ等で接着固定する。最後に、共通層28の下方から、上記1かたまりとなったものの露出表面を覆うようにカバー布24を接着によって隙間無く被せ、カバー布24の後端を後部4dに固着すると共に、カバー布24の前端を鍵支持部5の下面に固着する。
かかる構成において、共通層28は、後方ほど厚いので、ハンマ2が往方向に回動すると、ハンマ2は、共通層28の下面の後端側から当接していく。しかも共通層28は、第3層23と同じ柔らかさであるので、作用としては、第1の実施の形態と同様のものとなる。すなわち、共通層28のうち前側ストッパ部10に対応する部分は薄く、前側ストッパ部10は共通層28より十分な硬さを有しているため、共通層28のうち前側ストッパ部10に対応する部分は、前側ストッパ部10とハンマ2との当接状態にあまり影響を与えず、作用としてはほとんど無視できる。従って、第1の実施の形態ほど明確な当接の先後は生じないが、実質的に、後側ストッパ部20の方が前側ストッパ部10よりも先に当接状態となる。
本実施の形態における押鍵感触のキースケーリングは、共通層28の厚み設定によって実現される。例えば、上記分割した所定鍵域毎、あるいは各鍵毎に共通層28の厚みを異ならせる。または、ハンマ2の重さに応じて異ならせてもよい。共通層28の厚みは、対応する音域が高いほど薄くする。この場合、第3層23の下面及び前側ストッパ部10の下面の位置は全鍵共通とし、また、共通層28の下面の傾斜角度も全鍵共通とする。従って、共通層28の前端部の厚みをH2とすると、厚みH2の増減量と連動して共通層28の後端部の厚みも増減する。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。それだけでなく、ベース部25と共通層28とによって、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20の各層とが一体的に構成されるので、多数回の衝撃を受けても、それぞれがバラバラになることを抑制でき、耐久性を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る鍵盤装置における1つの上側ストッパ体及び対応するハンマの右側面図である。
本実施の形態では、上側ストッパ体及びハンマの構成が第1の実施の形態と異なるのみで、その他の構成は同様である。本実施の形態では、第1の実施の形態に対して、上側ストッパ体ST、ハンマ2に代えて上側ストッパ体ST3、ハンマ32が設けられる。
上側ストッパ体ST3は、図3に示すように、第2の実施の形態における上側ストッパ体ST2(図2(b)参照)から共通層28を除いたものに相当し、第3層23の下面及び前側ストッパ部10の下面には、カバー布24が直接貼着されている。従って、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20の下面は面一で、段差がない。その他の部分の構成は、上側ストッパ体ST2と同様である。
一方、ハンマ32は、第1、第2の実施の形態におけるハンマ2に対して樹脂でなる後側当接部29が突出して設けられた点のみが異なり、その他はハンマ2と同様である。ハンマ32の自由端部32dの上側の棒状部には、上下方向に貫通した貫通穴31が形成されている。後側当接部29はアウトサート成形によって自由端部32dに設けられ、貫通穴31の下側にも、樹脂が盛り上がった盛り上がり部29aを設けることで、抜け止めされている。
後側当接部29の上端は自由端部32dの上端と平行で、自由端部32dの上端よりも上方にH3だけ突出している。この突出量H3は、上記した差H1(図2(a)参照)と同程度とされる。後側当接部29は、例えば、ウレタンゴム等で構成され、硬さ(縦弾性係数)は、第3層23から第2層22までの範囲程度とされる。後側当接部29の前後方向の位置は、上側ストッパ体ST3との当接時に後側ストッパ部20とちょうど当接するように設定される。また、自由端部32dのうち後側当接部29より前側の部分は、前側ストッパ部10とちょうど当接する前側当接部30として機能する。
かかる構成において、鍵1の押鍵操作によりハンマ32が往方向に回動すると、後側当接部29が突出しているので、後側当接部29が先に、後側ストッパ部20と当接状態となり、ハンマ32の運動エネルギが減少した後に、前側当接部30が前側ストッパ部10と当接状態となる。そして、前側ストッパ部10が歪んでハンマ32の運動エネルギがすべて吸収された時点で、ハンマ32が回動終了状態となる。すなわち、当接による作用は、第1の実施の形態と実質的に同じものとなる。
ただし、軟性の弾性部が上下に(第3層23と後側当接部29とに)分離配置されているので、衝突理論によるエネルギ拡散の分布が第1の実施の形態とは異なり、弾性部が一方のみに集中しているタイプ(第1、第2の実施の形態)に比し、耐久性向上の点では有利である。
本実施の形態によれば、少なくとも第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、ハンマ2、32が前側ストッパ部10、後側ストッパ部20に当接状態となる先後及び当接タイミングのずれの程度は、第1の実施の形態では、両ストッパ部に段差を設けることで実現され、第3の実施の形態では、ハンマに段差を設けることで実現された。しかし、いずれか一方のみを採択するのではなく、双方を適用して、適当な当接タイミング差を生じさせるようにしてもよい。
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る鍵盤装置の断面図である。同図では、右方が前方となっている。
図4に示すように、鍵盤シャーシ101の底部には底板部105が設けられている。この鍵盤シャーシ101の前端部には、鍵102の前端部に対応する前カバー部106が底部側から鍵盤シャーシ101の上方に突出して形成されている。この前カバー部106の後部における中段部107上には、鍵102の横振れを防ぐための鍵ガイド108が上方に突出して設けられている。
また、鍵盤シャーシ101の中間部における前部側には、立上り部110が前カバー部106と中段部107とのほぼ中間の高さに形成されており、この立上り部110の上端部から鍵盤シャーシ101の後端部に亘って載置部111がほぼ水平方向に沿って形成されている。この載置部111の中間部における上面には、スイッチ基板112が取り付けられており、このスイッチ基板112上には、ゴムスイッチ104が設けられている。また、この載置部111の後端部(図4では左端部)における上面には、鍵支持部113が形成されており、この鍵支持部113には、鍵102の後端部を回動可能に支持するための鍵支持軸114が鍵並び方向に突出して設けられている。
鍵102は、図4に示すように、その後端部(同図では左端部)の両側面に鍵取付孔部115が形成され、この鍵取付孔部115が鍵盤シャーシ101の鍵支持部113の鍵支持軸114に回動可能に取り付けられ、これにより鍵支持軸114を中心に上下方向に回動するように構成されている。この鍵102の中間部における後部側には、スイッチ押圧部116が鍵盤シャーシ101上に設けられたスイッチ基板112のゴムスイッチ104に対応して形成されており、このスイッチ押圧部116の前部側には、ハンマ103の先端部(図4では右端部)に形成されたハンマ当接部126を連結保持するハンマ連結部117が鍵盤シャーシ101の立上り部110に沿って下方に延出されて形成されている。
一方、ハンマ103は、図4に示すように、金属製のハンマ本体120と合成樹脂製のハンマホルダ121とを有し、このハンマホルダ121がハンマ本体120のほぼ中間部に取り付けられ、この状態でハンマホルダ121が鍵盤シャーシ101の載置部111における前側下面に設けられたハンマ支持部122に回動自在に保持されるように構成されている。ハンマ本体120の後端部(図4では左端部)には、重量部である錘部123が設けられている。また、鍵盤シャーシ101の前部(中段部107よりも後方)上面には、押鍵指示器150が配設される。押鍵指示器150には、保持部を介してLED151が設けられる。
図5は、ハンマ103の先端部を斜め下方から見た斜視図である。図5に示すように、錘部123の先端部には、樹脂部141が被膜される。錘部123自体は、先端まで同幅であるが、錘部123の最先端においては、特に、樹脂部141の鍵並び方向の厚みが厚くなっており、それによって、幅広の後側当接部142が形成されている。また、後側当接部142は、図4に示すように、上方にも突出している。後側当接部142は、第3の実施の形態における後側当接部29(図3参照)に相当するものであり、同じような材料で構成され、上方への突出態様も同じである。後側当接部142と錘部123の後側当接部142より前側部分である前側当接部141aとが上側ストッパ体ST3に当接するときの作用は、後側当接部142が幅広であることを除けば第3の実施の形態と同様である。
ハンマ本体120は、錘部123の重量によって図4において反時計回りに付勢され、非押鍵状態においては、鍵盤シャーシ101の底板部105上に配置されたフェルトなどの下限ストッパ124に後側当接部142が当接することにより、ハンマ本体120の下限位置が規制されるように構成されている(図4における実線)。また、鍵盤シャーシ101の載置部111における後端下面には、第3の実施の形態におけるものと同様の上側ストッパ体ST3が配設される。ハンマ本体120は、錘部123の重量に抗して時計回りに(往方向に)回動して上側ストッパ体ST3に当接することで、ハンマ本体120の上限位置が規制されるように構成されている(図4における2点鎖線)。
また、図4に示すように、ハンマ本体120は、その前端部が鍵盤シャーシ101の立上り部110に設けられた開口部110aを通して立上り部110の前方に突出し、この突出した先端部にハンマ当接部126が設けられ、このハンマ当接部126が鍵102のハンマ連結部117に保持され、これによりハンマ本体120が鍵102の押鍵動作に連動するように構成されている。このハンマ当接部126は、合成樹脂によってほぼ球状に形成され、その表面にグリスを溜めるためのディンプル状の凹部26aが多数設けられた構成になっている。
このハンマ当接部126を保持する鍵102のハンマ連結部117は、図4に示すように、その下部に筒部127が前後方向にほぼ水平に形成されている。この筒部127は、その断面形状がハンマ当接部126の断面形状と同じ円形の円筒状に形成される。これにより、ハンマ当接部126が筒部127の内面にリング状の線接触状態で摺動するように構成されている。
また、ハンマホルダ121は、図4に示すように、ハンマ支持部122の支持軸128が挿入された状態で、支持軸128に回動自在に保持される軸受部130と、この軸受部130が一体に形成されてハンマ本体120に着脱可能に装着する装着部131と、ハンマ本体120の長手方向に沿う面に係脱可能に係止されて装着部131をハンマ本体120に対し位置規制する位置規制部132と、ハンマ本体120に弾接してハンマ本体120の長手方向に弾性変形する弾性部134とで構成されている。
非押鍵状態においては、ハンマ103の後端部である後側当接部142が下限ストッパ124に当接してハンマ103が下限位置に規制され、且つ、ハンマ本体120のハンマ当接部126が鍵102のハンマ連結部117の筒部127内に移動自在に挿入されて保持された状態で、ハンマ当接部126が上限に位置する。これにより、ハンマ当接部126によって鍵102が押し上げられ、鍵102が上限位置に規制されている。
鍵102を押鍵すると、鍵102が後端部の鍵支持軸114を中心に図4において時計回りに回動し、ハンマ連結部117の筒部127に挿入されたハンマ本体120のハンマ当接部126を押し下げる。
これに伴って、ハンマ当接部126がハンマ連結部117の筒部127内を摺動しながら、ハンマ本体120が、支持軸128を中心に時計回りに回動する。このときに、鍵102にハンマ本体120の錘部123の重量に応じたアクション荷重が付与されるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。なお、離鍵時には、ハンマ本体120の錘部123の重量によってハンマ103が反時計回りに回動して初期位置に戻る。
また、図4、図5に示すように、鍵盤シャーシ101の後部内側には、ガイドリブ146が、隣接するハンマ103間の位置に対応して鍵盤シャーシ101と一体に形成されている。ガイドリブ146は、鍵盤シャーシ101の上端から下端にかけて形成されている。一方、ハンマ103の後側当接部142が、隣接するガイドリブ146間に回動の全行程において介在するように配置されている。
ここで、図5に示すように、鍵並び方向における、錘部123の幅をD0、後側当接部142の幅をD1、隣接するガイドリブ146間の間隔をD2、ガイドリブ146の幅をD4とする。幅D1は、幅D0より十分(両側に+1mmで合計2mm以上)大きく、また、幅D1は、幅D4の2倍よりも大きく設定されている。さらに、幅D1は間隔D2にほぼ等しく、間隔D2の方が幅D1より僅かに(0.2〜2.0mm)大きく設定されている。また、後側当接部142の両側面142aには、グリス溜まりのためのディンプル状の凹部142aaが形成されている。凹部142aaには、粘性の低いグリスが付与される。
従って、ハンマ103が回動するとき、後側当接部142の側面142aが、隣接するガイドリブ146間を滑らかに摺動するようになっている。しかも、後側当接部142が幅広であるため、幅D0の錘部123に単に被膜した部分を当接部として用いるのに比し、後側ストッパ部20との当接面積を大きくすることができる。
後側当接部142を含む樹脂部141は、ハンマ当接部126と一緒に、アウトサート成形によってハンマ本体120に取り付けられる。両者は、同一材料で、同一成形工程において成形することが可能である。ところで、図4に示すように、錘部123には、鍵並び方向に貫通した凹部143、144、145が形成されている。これらは、ハンマ本体120の打ち抜き時に形成される。凹部143、144、145は、当接により衝撃を受ける方向に対して対向する面を有しており、強い衝撃に対しても、樹脂部141が外れないように強固に保持するために設けられる。
ハンマ103が上側ストッパ体ST3に当接するときの作用は第3の実施の形態と同様である。さらに、後側当接部142が幅広であることで、上側ストッパ体ST3との当接当初の衝撃を一層効果的に和らげることができ、前側ストッパ部10の弾性変形量を少なくすることに寄与する。
ところで、後側当接部142を含む樹脂部141は、各種の機能を併せ持っている。まず、ハンマ本体120が金属の打ち抜きで構成される場合、打ち抜き方向抜け側にバリが生じるが、樹脂部141の被膜効果により、バリが隠され、上側ストッパ体ST3の保護になる。また、後側当接部142自体が上方に突出していて、それ自身柔らかいため、第3の実施の形態と同様のハンマ側の構成による緩衝機能が果たされる。また、後側当接部142がハンマ本体120より幅広であるため、上側ストッパ体ST3の後側ストッパ部20との当接面積拡大により緩衝機能を高めることができる。しかも、後側当接部142を幅広にして、その両側面142aが隣接するガイドリブ146間に摺動によりガイドされるようにしたので、幅広形状としたことで、後側当接部142をハンマ部材の質量集中部のコア(中核)とすることができると共に、ハンマ103の回動時の横振れを抑制する被ガイド機能をも同時に果たすこととなっている。
質量集中の点につきさらに言及すると、ハンマ103を金属(鉄)やセラミック等の重量材で構成し、その自由端部の最先部を幅広形状にすることで、質量集中位置を自由端部の最先部に近づけることができる。これにより、アコースティックピアノの強押鍵初期時のような重量タッチ感を得るに際し、より軽量の鍵盤装置の実現を可能としている。
さらに、鍵盤装置の運搬時等において、鍵盤部が下となる姿勢にしたとき、従来であれば、ハンマ本体120の自由端が横方向に振れて変形するおそれがあった。しかし、本実施の形態では、ガイドリブ146によるガイド機能によって、そのようなおそれが少なくなる。
本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。さらに、後側当接部142を幅広としたので、押鍵終了時の良好な緩衝機能を維持することと、多数回使用による押鍵終了位置の変化を抑制することの効果を一層拡大させることができる。
(第5の実施の形態)
図6(a)は、本発明の第5の実施の形態に係る鍵盤装置の後部の断面図である。本実施の形態では、第4の実施の形態におけるガイドリブ146に代えて、ガイドリブ147を前後方向の所定位置に集中的に設けた点が異なり、このガイドリブ147を設けたことよって、質量集中部をさらに先端方向に持ってくることが可能となっている。その他の構成は同様である。
ガイドリブ147は、隣接するハンマ103間の位置に対応して鍵盤シャーシ101と一体に形成されている。ガイドリブ147は、前後方向における、樹脂部141の前端付近において、鍵盤シャーシ101の上端から下端にかけて形成されている。
図6(b)は、1つのガイドリブ147を斜め下方からみた斜視図、図6(c)は、ガイドリブ147及びハンマ103の自由端部の底面図である。
ガイドリブ147は、左右両方向に延びた腕部147aを有して底面視十字状に形成されている。これら両腕部147aの下端には、先細テーパとなるように面取りされた面取り部147bが形成され、鍵盤シャーシ101の底板部105には、面取り部147bに対向して隆起した三角柱状突起部105aが形成されている(図6(a)、(b)参照)。面取り部147bが三角柱状突起部105aに当接している。すなわち、鍵盤シャーシ101と底板部105とをネジ152、153(図4参照)の螺合によって接近する方向に組み付けると、テーパ面である面取り部147bとそれに対応するテーパ面である三角柱状突起部105aとが自動的に調芯されて、鍵盤シャーシ101、底板部105が適切に組み付けられる。
ハンマ103の錘部123のうち、樹脂部141が被膜されている部分であって、後側当接部142より前方部分(支持軸128寄り)が、隣接するガイドリブ147の腕部147a間に、回動の全行程において介在するように配置されている。樹脂部141と腕部147aとの摺動関係は、第4の実施の形態における後側当接部142とガイドリブ146との摺動関係と同様である。
本実施の形態によれば、第4の実施の形態に対して、後側当接部142に代わって樹脂部141が被ガイド機能を果たす点を除き、第4の実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、腕部147aの左右側面である垂直面147aa(図6(b)、(c)参照)のみを、ハンマ103のガイド面とすることができるので、腕部147aよりも先端側(図6(b)に示す矢印F1側)の鍵並び方向のスペースを有効利用できる。この部分に、ハンマ103の質量を集中させることができる。図6(a)〜(c)の例では、先端の一部を幅広化し、後側当接部142としたが、これに限られず、腕部147aよりも先端側(矢印F1側)全部を質量集中部形成のための幅広部にすることも可能である。
このようにした場合は、ハンマ103の幅広部である後側当接部142は、隣接する幅広部いっぱいの寸法がとれるので、先端部への質量集中の度合いを一層高めることが可能となる。先端部への質量集中の度合いを高めるためには、先端部を幅広にして上側ストッパ体ST3との当接面積も大きくした方がよく、しかも極力簡単に製造できるのが望ましい。そのために、例えば、図6(d)、(e)に示すような構成を採用してもよい。
図6(d)、(e)は、変形例にかかるハンマ103の錘部123の平面図を模式的に示した図である。同図(d)/(e)に示すように、錘部123の先端部を、プレス破断等によって、鍵並び方向/前後方向をそれぞれ振幅方向とする波形に形成し、該波形部分に後側当接部142をアウトサート成形によって設ける。このようにすれば、先端部に質量集中したハンマ103を容易に製造することができる。
なお、第4、第5の実施の形態において、後側当接部142自身の弾性によって、上側ストッパ体ST3の後側ストッパ部20とハンマ103との緩衝機能を図る効果に限って言えば、前側ストッパ部10を廃止してもよい。
なお、上記各実施の形態において、ハンマ2等と上側ストッパ体ST等との当接当初の衝撃を和らげるという観点に限って言えば、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20の最も柔らかい層とを同一硬さにするという構成も採用可能である。これによっても、前側ストッパ部10の恒久的変形の抑制という効果は得られる。
なお、効果は多少劣るが、上記各実施の形態において、上側ストッパ体ST等において、前側ストッパ部10と後側ストッパ部20との配置を前後逆にしてもよい。その場合、第3〜第5の実施の形態においては、ハンマ32、103の後側当接部29、後側当接部142(図3、図4参照)の位置もそれに応じて前方に移すことになる。
なお、上記各実施の形態において、上側ストッパ体ST等のように2つ以上のストッパ部を並設する構成は、下側ストッパ11、124(図1、図4参照)にも応用してもよい。
なお、上記各実施の形態において、カバー布24は必須ではなく、ハンマ2、32、103が上側ストッパ体ST等に直接当接する構成であってもよい。
なお、上記各実施の形態において、なお、ハンマ2、32、103は後方が自由端部として回動するようになっているが、これに限るものでなく、前方に自由端部を設けた形でも本発明を適用可能である。
なお、回動部材として、鍵1、102によって回動するハンマ2、32、103を例示したが、これに限るものでなく、鍵1、102等であってもよい。すなわち、押鍵操作によって回動する回動体であって、上側ストッパ体ST等に相当するものに当接して回動終了位置が規制されるものであれば、本発明を適用可能である。従って、例えば、他の部材を介して鍵1によりハンマ2が回動する場合のハンマ2にも適用される。また、回動体の回動往方向は、自由端部が上昇する構成に限られず、下降する構成であってもよく、その場合は、上側ストッパ体STは、シャーシの下側に設けられることになる。