JP5817464B2 - 電気泳動素子および表示装置 - Google Patents
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Description
1.実施の形態
1−1.全体構成
1−2.多孔質層の形成方法
2.適用例
3.実施例
図1および図2は、それぞれ本技術の一実施の形態の電気泳動素子の平面構成および断面構成を表したものである。この電気泳動素子は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせるものであり、例えば、表示装置などの多様な電子機器に適用される。この電気泳動素子は、絶縁性液体1中に極性を有する複数の電気泳動粒子10と、多孔質層20とを含んでいる。本実施の形態では、多孔質層20は繊維状構造体21と、非泳動粒子22とを含み、非泳動粒子22は繊維状構造体21中に所定の範囲内で分散している。
[絶縁性液体]
絶縁性液体1は、例えば、有機溶媒のいずれか1種類または2種類以上であり、具体的にはパラフィンまたはイソパラフィンなどである。この絶縁性液体1の粘度および屈折率はできるだけ低いことが好ましい。電気泳動粒子10の移動性(応答速度)が向上すると共に、それに応じて電気泳動粒子10を移動させるために必要なエネルギー(消費電力)が低くなるからである。また、絶縁性液体1の屈折率と多孔質層20の屈折率との差が大きくなるため、その多孔質層20の反射率が高くなるからである。
電気泳動粒子10は、絶縁性液体1中に分散された荷電粒子であり、電界に応じて多孔質層20を経由して移動可能になっている。この電気泳動粒子10は、例えば、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料(樹脂)などの粒子(粉末)のいずれか1種類または2種類以上である。また、電気泳動粒子10は、上記した粒子を含む樹脂固形分の粉砕粒子またはカプセル粒子などでもよい。なお、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料に該当する材料は、有機顔料、無機顔料または染料に該当する材料から除かれることとする。
多孔質層20は、繊維状構造体21により形成された3次元立体構造物であり、この3次元立体構造により形成された複数の細孔23を有している。繊維状構造体21には、複数の非泳動粒子22が含まれており、即ち、複数の非泳動粒子22は、繊維状構造体21により保持されている。3次元立体構造物である多孔質層20では、1つの繊維状構造体21がランダムに絡み合っていてもよいし、複数の繊維状構造体21が集合してランダムに重なっていてもよいし、双方が混在していてもよい。繊維状構造体21が複数の場合、各繊維状構造体21は、1または2以上の非泳動粒子22を保持している。なお、図2では、複数の繊維状構造体21により多孔質層20が形成されている場合を示している。
多孔質層20の形成手順の一例は、以下の通りである。図5は、多孔質層20の形成手順の流れを表したものである。まず、繊維状構造体21に分散させる非泳動粒子22の添加量の最適範囲を決定する(ステップS101)。具体的には、繊維状構造体21の材料である高分子材料をN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶剤に溶解させた高分子溶液を調製する(ステップS101−1)。続いて、高分子溶液を複数に分け、非泳動粒子22として、例えば酸化チタンを、分散溶液の濃度が5重量%ごとになるように加えたのちに十分攪拌して非泳動粒子22を分散させる(ステップS101−2)。次いで、それぞれ調製した分散溶液を静電紡糸法により紡糸を行い、繊維状構造体21を形成する。続いて、各濃度における繊維状構造体22の光反射率を測定し、非泳動粒子22の添加量の最適範囲を決定する(ステップS101−3)。なお、必要であれば非泳動粒子22の濃度を更に細かく検討してもよい。また、適宜省略してもよい。この後、ステップ101−1,ステップ101−2と同様に、繊維状構造体21を溶解した高分子溶液の調製(ステップS102)および上記ステップS101−3で決定した最適範囲内の非泳動粒子を加え分散溶液を調製する(ステップS103)。次いで、非泳動粒子22が分散された高分子溶液を用いて静電紡糸法により紡糸を行い、繊維状構造体21を形成する(ステップS104)。これにより、電気泳動粒子10の移動路(細孔23)を確保しつつ光散乱効率が向上した多孔質層20が得られる。
電気泳動素子では、上記したように、電気泳動粒子10および多孔質層20(非泳動粒子22を含む繊維状構造体21)がそれぞれ明表示または暗表示するため、コントラストが生じる。この場合には、電気泳動粒子10が明表示すると共に多孔質層20が暗表示してもよいし、その逆でもよい。このような役割の違いは、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20の光学的反射特性との関係により決定される。すなわち、明表示する方の反射率は、暗表示する方の反射率よりも高くなる。
電気泳動素子では、電気泳動粒子10の光学的反射特性と多孔質層20(非泳動粒子22)の光学的反射特性とが異なっている。この場合において、電気泳動素子に電界が印加されると、その電界が印加された範囲内において電気泳動粒子10が多孔質層20(細孔23)を経由して移動する。これにより、電気泳動粒子10が移動した側から電気泳動素子を見ると、電気泳動粒子10が移動した範囲では、その電気泳動粒子10により暗表示(または明表示)されると共に、電気泳動粒子10が移動していない範囲では、多孔質層20により明表示(または暗表示)される。これにより、コントラストが生じる。
よって、本実施の形態では、予め繊維状構造体21に添加する非泳動粒子22の添加量の最適範囲を測定し、その最適範囲に沿って多孔質層を構成する繊維状構造体に、非泳動粒子を所定の範囲内で分散する。これにより、電気泳動粒子の移動路を確保しつつ非泳動粒子による光散乱効率が向上する。よって、応答速度が向上すると共に、コントラストを向上させることが可能となる。更に、表示特性が向上した高品位の表示装置を提供することが可能となる。
次に、上記した電気泳動素子の適用例について説明する。電気泳動素子は、さまざまな電子機器に適用可能であり、その電子機器の種類は特に限定されないが、例えば、表示装置に適用される。
図6は、表示装置の断面構成を表しており、図7は、図6に示した表示装置の動作を説明するためのものである。なお、以下で説明する表示装置の構成は、あくまで一例であるため、その構成は、適宜変更可能である。
駆動基板30は、例えば、支持基体31の一面に、複数の薄膜トランジスタ(TFT)32と、保護層33と、平坦化絶縁層34と、複数の画素電極35とがこの順に形成されたものである。TFT32および画素電極35は、画素配置に応じてマトリクス状またはセグメント状に配置されている。
対向基板40は、例えば、支持基体41の一面に対向電極42が全面形成されたものである。ただし、対向電極42は、画素電極32と同様に、マトリクス状またはセグメント状に配置されていてもよい。
電気泳動素子50は、上記した電気泳動素子と同様の構成を有している。具体的には、電気泳動素子50は、絶縁性液体51中に、複数の電気泳動粒子52と、複数の細孔54を有する多孔質層53とを含んでいる。絶縁性液体51は、駆動基板30と対向基板40との間の空間に充填されており、多孔質層53は、例えば、スペーサ60により支持されている。絶縁性液体51が充填されている空間は、多孔質層53を境界として、画素電極35に近い側の待避領域R1と、対向電極42に近い側の移動領域R2とに区分けされている。絶縁性液体51、電気泳動粒子52および多孔質層53の構成は、それぞれ絶縁性液体1、電気泳動粒子10および多孔質層20の構成と同様である。なお、図6および図7では、図示内容を簡略化するために、細孔54の一部だけを示している。
スペーサ60は、例えば、高分子材料などの絶縁性材料により形成されている。
この表示装置では、図6に示したように、初期状態において、複数の電気泳動粒子52が待避領域R1に位置している。この場合には、全ての画素において電気泳動粒子52が多孔質層53により遮蔽されているため、対向基板40側から電気泳動素子50を見ると、コントラストが生じていない(画像が表示されていない)状態にある。
この表示装置によれば、電気泳動素子50が上記した電気泳動素子と同様の構成を有しているため、高コントラスト、高速応答および低消費電力が実現される。よって、低消費電力で高品位な画像を表示できる。
<3.実施例>
以下の手順により、黒色(暗表示用)の電気泳動粒子および白色(明表示用)の多孔質層(粒子含有繊維状構造体)を用いて、表示装置を作製した。
まず、水酸化ナトリウム43gとケイ酸ナトリウム0.37gとを水43gに溶解させて溶液Aを得た。続いて、溶液Aを攪拌しながら複合酸化物微粒子(大日精化工業株式会社製ダイピロキサイドカラーTM9550)5gを加えて攪拌(15分間)したのち、超音波攪拌(30℃〜35℃,15分間)した。次に、溶液Aを加熱(90℃)したのち、0.22mol/cm3の硫酸15cm3(=ml)と、ケイ酸ナトリウム6.5mgおよび水酸化ナトリウム1.3mgが溶解された水溶液7.5cm3とを2時間かけて滴下した。続いて、溶液Aを冷却(室温)したのち、1mol/cm3の硫酸1.8cm3を加えたのち、遠心分離(3700rpm,30分間)およびデカンテーションを行った。次に、エタノールに再分散してから共に遠心分離(3500rpm,30分間)すると共にデカンテーションを行う作業を2回繰り返したのち、各ボトルにエタノール5cm3と水0.5cm3との混合液を加えて超音波攪拌(1時間)して、シラン被覆複合酸化物粒子の分散溶液を得た。
次に、絶縁性液体として、メトキシスルホニルオキシメタン(Lubrizol社製Solsperse17000)を0.75%、ソルビタントリオレート(Span85)を5.0%、第1成分であるイソパラフィン(エクソンモービル社製IsoparG )を94%含む有機溶媒を準備した。この場合には、必要に応じて、絶縁性液体9.7gに泳動粒子0.2gを加えて、ガラスビーズ(0.8mmφ)を加えたビーズミルで攪拌(1時間)した。続いて、混合液をガラスファイバーフィルターにかけビーズを取り除いて、泳動粒子が分散された絶縁性液体を得た。
次に、繊維状構造体の形成材料としてポリアクリロニトリル(Aldrich 社製:分子量=150000)12gをDMF88gに溶解させて溶液Dを準備した。続いて、非泳動粒子である、例えば酸化チタン(堺化学工業株式会社製TITONE R-42)45g(実験例1−1)を溶液D55gに加えたのち、ビーズミルで混合して紡糸溶液を準備した。なお、このときの酸化チタンの濃度をd重量%とする。続いて、紡糸溶液をシリンジに入れ、所定のパターン形状の画素電極(ITO)が形成されたガラス基板の上で、電界紡糸装置(株式会社メック製NANON)を用いて8往復分の紡糸を行った。紡糸条件は、電界強度=28kV、吐出速度=0.5cm3/分、紡糸距離=15cm、スキャンレート=20mm/秒とした。続いて、真空オーブン(75℃)中でガラス基板を12時間乾燥して、非泳動粒子を含む繊維状構造体を形成した。なお、実験例1−2〜1−7ではd=40,35,30,25,20,15の紡糸溶液をそれぞれ作製し、同様に繊維状構造体を形成した。実験例2では、泳動粒子として、酸化チタンの代わりにメラミン・ホルムアルデヒド球状粒子を用い、d=50,30,25,10となるように紡糸溶液を作製し、繊維状構造体を形成した。」
画素電極が形成されたガラス基板から、その画素電極が形成されていない領域に付着した不要な繊維状構造体を除去したのち、対向電極(ITO)が全面形成されたガラス基板の上にスペーサとしてPETフィルム(30μm厚)を置いた。その上に、画素電極および繊維状構造体が形成されたガラス基板を重ねた。なお、多孔質層と重ならない位置にはビーズ(外径=30μm)を含む光硬化性樹脂(積水化学工業株式会社製感光性樹脂フォトレックA-400)を描画した。最後に、2枚のガラス基板の間の隙間に、電気泳動粒子が分散された絶縁性液体を注入したのち、ローラで全体を押圧して多孔質層を画素電極および対向電極に隣接させた後、再度全体を押圧して多孔質層を圧縮した。
(1)絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを備え、前記非泳動粒子は前記繊維状構造体内に所定の範囲内で分散している電気泳動素子。
(2)前記非泳動粒子は、前記繊維状構造体の繊維径の標準偏差が0.1以上0.3以下になるように配置されている、前記(1)に記載の電気泳動素子。
(3)前記繊維状構造体中における前記非泳動粒子の非存在割合は10%以上50%以下である、前記(1)または(2)に記載の電気泳動素子。
(4)前記繊維状構造体の繊維径は50nm以上2000nm以下である、前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(5)前記繊維状構造体は、高分子材料または無機材料により形成されている、前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(6)前記繊維状構造体の平均繊維径は0.1μm以上10μm以下である、前記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(7)前記繊維状構造体は静電紡糸法により形成されている、前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(8)前記非泳動粒子は前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する、前記(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(9)前記非泳動粒子は、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料により形成されている、前記(1)乃至(8)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(10)前記非泳動粒子は酸化チタンを含む、前記(1)乃至(9)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(11)前記非泳動粒子の反射率は前記電気泳動素子の反射率よりも高い、前記(1)乃至(10)のいずれか1つに記載の電気泳動素子。
(12)繊維状構造体に混合する非泳動粒子の添加量の最適範囲を決定するステップと、前記繊維状構造体に最適範囲内の量の非泳動粒子を添加し、分散させるステップとを含む電気泳動素子の製造方法。
(13)前記最適範囲は、前記繊維状構造体中の前記非泳動粒子の含有率に対する光反射率の分布状況を測定することで決定される、前記(12)に記載の電気泳動素子の製造方法。
(14)少なくとも一方が光透過性であると共にそれぞれに電極が設けられた一対の基体の間に電気泳動素子を備え、前記電気泳動素子は、絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを備え、前記非泳動粒子は前記繊維状構造体内に所定の範囲内で分散している表示装置。
Claims (9)
- 絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを備え、
前記非泳動粒子は、前記繊維状構造体の繊維径の標準偏差が0.1μm以上0.3μm以下になるように配置されている
電気泳動素子。 - 前記繊維状構造体の繊維径は50nm以上2000nm以下である、請求項1に記載の電気泳動素子。
- 前記繊維状構造体は、高分子材料または無機材料により形成されている、請求項1に記載の電気泳動素子。
- 前記繊維状構造体の平均繊維径は0.1μm以上10μm以下である、請求項1記載の電気泳動素子。
- 前記非泳動粒子は前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する、請求項1に記載の電気泳動素子。
- 前記非泳動粒子は、有機顔料、無機顔料、染料、炭素材料、金属材料、金属酸化物、ガラスまたは高分子材料により形成されている、請求項1記載の電気泳動素子。
- 前記非泳動粒子は酸化チタンを含む、請求項1に記載の電気泳動素子。
- 前記非泳動粒子の反射率は前記電気泳動素子の反射率よりも高い、請求項1記載の電気泳動素子。
- 少なくとも一方が光透過性であると共にそれぞれに電極が設けられた一対の基体の間に電気泳動素子を備え、
前記電気泳動素子は、
絶縁性液体中に、複数の電気泳動粒子と、前記電気泳動粒子とは異なる光学的反射特性を有する複数の非泳動粒子が含まれた繊維状構造体により形成された多孔質層とを備え、
前記非泳動粒子は、前記繊維状構造体の繊維径の標準偏差が0.1μm以上0.3μm以下になるように配置されている
表示装置。
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