JP5812991B2 - ポリビニルアルコール系重合体及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系重合体及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるポリビニルアルコール系重合体、及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法に関する。
バイオマスとは、生物由来の再生可能な資源をいい、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義することができる。このバイオマスの中でも、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの空房(EFB)など、未利用の植物系バイオマスの有効活用が求められている。
このような植物系バイオマスの成分の中でも、澱粉等の多くの多糖類は、酵素等により容易に単糖類に分解され、エネルギー源や食料等として利用されている。そこで、植物系バイオマスの有効活用のためには、植物細胞中の存在比率が高いセルロースをメタンや単糖類(グルコース)に分解し、エネルギー源や食料等として利用することが重要とされている。ただし、セルロースは細胞壁の大部分を形成していることからもわかるように、強固な構造を有し分解されにくいため、有効活用されていないのが実情である。
具体的にはセルロースは、細胞壁中で以下のような多重構造を有している。細胞壁を形成するセルロースは、大部分がミクロフィブリルと言われる直線状に密着した準結晶構造を有している。この準結晶構造を有するセルロース(ミクロフィブリル)同士は、ヘミセルロースやリグニン等の非セルロース成分を介して互いに結合している。これらのセルロース成分(ミクロフィブリル)及び非セルロース成分は、一般的にフィブリルと言われる更に大きな構造体として配列されている。このフィブリルは、通常、シート状に積層されて、細胞壁を構成している。上述の準結晶構造を有するセルロース(ミクロフィブリル)において、セルロースのポリマー鎖は、水素結合によって強く結びついている。この水素結合により、植物は強固な細胞壁を備えることとなる。
このような構造を有するセルロースをメタンに分解する手段としては、嫌気性微生物の分解消化による方法などがある。しかしながら、微生物を利用したセルロースの分解は、反応制御が複雑である等の理由から、実用性が十分ではない。
一方、触媒や酵素を用いて、セルロースを単糖類に加水分解することも、化学的には可能である。セルロースの化学的分解により得られた単糖類は、例えば醗酵によってエタノールに変換され、既存の内燃機関やタービンにエネルギー源として用いることができる。しかしながら、植物由来のセルロース系バイオマスを化学的に直接加水分解することは、上述のような細胞壁におけるセルロースの分子構造上、効率的ではない。これはセルロースの強固な構造が、水及び酵素等の準結晶構造内部への進入を妨げ、セルロース分解酵素の作用を大きく遅らせることに起因すると考えられる。すなわち酵素は、水素結合によって強く結びついた準結晶構造の内部に容易には進入できないため、グリコシド結合を直接には分解することができない。従って、酵素はセルロースの準結晶構造の表面から徐々に分解していくことしかできないため、セルロース系バイオマスを直接、酵素によって加水分解することは効率が高くない。
そこで、セルロース系バイオマスを酵素等による加水分解前に予め細かく分断して、加水分解しやすいセルロースを製造する方法が提案されている。この方法は、基本的には、準結晶構造を有するセルロースを徐々に水和させ、この水和によって隣接するセルロースのポリマー鎖間の水素結合を弱めるという化学的な作用と、セルロース系バイオマスに叩解、混練等により機械的に力を付与してセルロースポリマー鎖を分断するという物理的な作用とを利用するものである。この方法の具体的内容として、例えば(1)容器内でセルロース系バイオマス粒子を攪拌して粒子の浮遊体を生成し、その後、攪拌を継続しながら粒子の浮遊体の温度を上昇させると共に水を徐々に供給して水和させることによって微細な粉末を製造する技術(特表2004−526008号公報)、(2)セルロース系バイオマス粒子を粘性のある水溶性ポリマー水溶液と混ぜて撹拌し、撹拌によって生じる機械的な力を効率的にセルロースポリマー鎖に伝え、セルロースポリマー鎖を互いに引き離すように分断する技術(国際公開第2009/124072号パンフレット)等が提案されている。
しかしながら、(1)の技術では、セルロース系バイオマスの微粒子を浮遊体として存在させるための装置が複雑なものとなる。また、この技術の使用の際に多大なエネルギーを消費するため、生産性が高いとは言えない。一方、(2)の技術では、水溶液に粘性を付与するための水溶性高分子の使用により、セルロース系バイオマスの一定程度の加水分解性の向上が認められる。しかしながら、実用化に向けての加水分解性の向上のためには、更なる改良が必要とされている。
特表2004−526008号公報 国際公開第2009/124072号パンフレット
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造の際に、セルロース系バイオマスを含む溶液に好適な粘性を付与すること等により、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を容易に行うことができ、その結果、加水分解性セルロースを効率的に製造することができるポリビニルアルコール系重合体、及びこのポリビニルアルコール系重合体を用いた加水分解性セルロースの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明のポリビニルアルコール系重合体は、
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるポリビニルアルコール系重合体であって、
平均重合度が200以上5,000以下、
ケン化度が70モル%以上99.9モル%以下、
分子量分布が2.2以上であることを特徴とする。
当該ポリビニルアルコール系重合体によれば、平均重合度、ケン化度及び分子量分布を上記範囲とすることで、このポリビニルアルコール系重合体水溶液とセルロース系バイオマスとを好適な粘性で効率よくかつ均一に混ぜ合わせることができる。従って、当該ポリビニルアルコール系重合体を用いると、適度な粘性を有するこの水溶液とセルロース系バイオマスとを混ぜ合わせること等により、セルロース系バイオマスへ適当な剪断力を付加することができる。当該ポリビニルアルコール系重合体を用いたこのような作業においては、粘性のある水溶液によってセルロースポリマー鎖同士が容易に引き離され、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。さらには、このように引き裂かれたポリマー鎖間にポリビニルアルコール系重合体が進入することで、ポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができる。すなわち当該ポリビニルアルコール系重合体によれば、セルロース系バイオマスにおけるセルロースポリマー鎖を効果的に分子レベルで分断し、酵素等によって容易に加水分解(糖化)されるセルロースを得ることができる。
当該ポリビニルアルコール系重合体は、平均重合度を600以上4,000以下、ケン化度を80モル%以上98.5モル%以下、分子量分布を2.25以上とするとよい。当該ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度、ケン化度及び分子量分布を上記範囲に更に限定することで上述の作用効果はより向上し、更に容易に加水分解されるセルロースを得ることができる。
当該ポリビニルアルコール系重合体は、カルボキシル基を有する構造単位を含み、このカルボキシル基を有する構造単位の含有率が0.2モル%以上4モル%以下であることが好ましい。この場合、当該ポリビニルアルコール系重合体は、カルボキシル基を有する構造単位を所定割合含むため、水及びセルロースとの分子間相互作用をさらに高めることができる。従って、カルボキシル基変性された当該ポリビニルアルコール系重合体は、水溶液とした際にこの溶液の粘性をさらに高めることができると共に、この水溶液を粉末又は粒子状のセルロース系バイオマスと混ぜ合わせた際のセルロース系バイオマスの溶液中の均一分散性(混和性)を高めることができる。
当該ポリビニルアルコール系重合体は、カチオン基を有する構造単位を含み、このカチオン基を有する構造単位の含有率が0.1モル%以上3モル%以下であることも好ましい。この場合、当該ポリビニルアルコール系重合体は、カチオン基を有する構造単位を所定割合含むため、負に帯電しているセルロースとの強い相互作用を有する。このため、カチオン変性された当該ポリビニルアルコール系重合体の水溶液とセルロース系バイオマス粒子とを混ぜ合わせた際、増粘性及び粒子の均一分散性が高まり、セルロース系バイオマス粒子へより高い剪断力を付加することができる。
当該ポリビニルアルコール系重合体は、α−オレフィンに由来する構造単位を含み、このα−オレフィンに由来する構造単位の含有率が1モル%以上8モル%以下であることも好ましい。この場合、当該ポリビニルアルコール系重合体は、所定割合でα−オレフィンに由来する構造単位を含んでいるため、分子鎖が高い柔軟性を有する。その結果、当該ポリビニルアルコール系重合体は、セルロースポリマー鎖間に容易に進入することができ、かつ、進入した際にセルロースポリマー鎖間の水素結合を効率的に低下させることができる。また、α−オレフィン変性された当該ポリビニルアルコール系重合体は、水溶液とした際の優れた粘性を維持しつつ、比較的極性の強いセルロースとの親和性を適度に抑えることができる。その結果、当該ポリビニルアルコール系重合体によれば、最終生成物の単糖類等との分離が容易になり、再利用して複数回使用することができる。また、当該ポリビニルアルコール系重合体は、α−オレフィン変性されていることで重合体の安定性が高まるため、保存安定性が高まると共に、複数回及び長期の使用にも十分耐えることができ、コスト削減にも繋がる。
本発明の加水分解性セルロースの製造方法は、
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
上記ポリビニルアルコール系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有することを特徴とする。
当該加水分解性セルロースの製造方法によれば、ポリビニルアルコール系重合体水溶液とセルロース系バイオマスとを混合することで、適当な粘性を有する混合物とすることができる。また、当該製造方法によれば、この混合物に剪断力を付加することで、粘り気のある水溶液によってセルロースポリマー鎖同士が容易に引き離され、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。すなわち、当該加水分解性セルロースの製造方法によれば、セルロース系バイオマスにおけるセルロースポリマー鎖を効果的に分子レベルで分断し、酵素等によって容易に加水分解(糖化)されるセルロースを得ることができる。
当該製造方法において、上記水溶液がゲル状であるとよい。このようにゲル状であるポリビニルアルコール系重合体水溶液を用いることで、分断工程における当初段階から混合物を好適な粘性とすることができ、また、その粘性を一定程度維持することができるため効率のよい加水分解性セルロースの製造を行うことができる。さらにはゲル状であることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
ここで、「加水分解性セルロース」とは、セルロース系バイオマス等を原料とし、これを物理的に分断等して得られるセルロースであり、上記原料よりも加水分解性が高まったものをいう。「平均重合度」とは、JIS−K6726に準じて測定した粘度平均重合度(DP)の値である。すなわち、ポリビニルアルコール系重合体のケン化度が99.5モル%未満の場合はケン化度99.5モル%以上に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から下記式(1)により求めた値である。
DP=([η]×1000/8.29)(1/0.62) ・・・ (1)
また、「ケン化度」とは、JIS−K6726に準じて測定した値である。「分子量分布」とは、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)により算出される値である。なお、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、単分散ポリメチルメタクリレートを標品とし、トリフルオロ酢酸ナトリウムを20ミリモル/リットル含有するヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用いて40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、得られた値である。「水溶液」とは、溶媒として水を用いた溶液をいい、流動性を失ったゲル状のものも含む概念である。
以上説明したように、本発明のポリビニルアルコール系重合体によれば、セルロース系バイオマスを原料として加水分解性セルロースを製造する際に、セルロース系バイオマスを含む溶液に好適な粘性を付与すること等により、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を容易に行うことができ、その結果、加水分解性セルロースを効率的に製造することができる。また、本発明の加水分解性セルロースの製造方法によれば、セルロース系バイオマスを原料として、効率よく加水分解性セルロースを製造することができる。
従って、本発明によれば、植物系のバイオマス原料を、効率よく食物やエネルギー資源として活用することができ、バイオマス活用の実現性を高めることができる。
以下、本発明のポリビニルアルコール系重合体、及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法の実施の形態を順に詳説する。
〔ポリビニルアルコール系重合体〕
本発明のポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう。)系重合体とは、ポリビニルアルコール及びビニルアルコール共重合体をいう。このPVA系重合体としては、各種のものを使用することができるが、通常は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体又はビニルエステル系単量体と他の単量体とを各種方法(塊状重合、メタノール等を溶媒とする溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)で重合してポリビニルエステル系重合体とした後、これを公知の方法(アルカリケン化、酸ケン化等)によりケン化することによって得られるPVA系重合体が用いられる。なお、上記ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル以外に、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等を用いることもできるが、重合制御性、入手容易性等から酢酸ビニルが好ましい。
上記他の単量体としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化アリル等のアリル化合物、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物及びそのエステルや酸無水物、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート等のジアセトン基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、酢酸イソプロペニル、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
PVA系重合体は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物存在下で酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合してポリビニルエステル系重合体とした後、これをケン化するなどして得られる末端変性物であってもよい。
本発明のPVA系重合体は、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるものである。具体的には、後に詳述するように、PVA系重合体の水溶液と、セルロース系バイオマスとを混合して混合物とし、この混合物を練り混ぜることなどにより剪断力を付加し、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で細かく分断するために用いることができる。この際、当該PVA系重合体の水溶液を用いることで上記混合物の粘性を好適な状態に保つことができる。その結果、当該PVA系重合体によれば、混合物の混練等の際、粘り気のある水溶液によってセルロースポリマー鎖を容易に引き剥がし、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。さらには、このように引き裂かれたポリマー鎖間にポリビニルアルコール系重合体が進入することで、この構造の再結晶化を防ぐことができる。なお、このように分子レベルで分断されたセルロースは、加水分解酵素等によって容易に分解される。
当該PVA系重合体の平均重合度は、200以上5,000以下であり、600以上4,000以下が好ましく、1,000以上3,700以下がより好ましく、1,800以上3,500以下がさらに好ましく、2,000以上3,000以下が特に好ましい。当該PVA系重合体の平均重合度を上記範囲とすることで、このPVA系重合体を水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よく、かつ均一に混ぜ合わせることができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効率的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。また、このように平均重合度の高いPVA系重合体を用いることで、少ない量のホウ酸等でゲル化させることができる。
当該PVA系重合体の平均重合度が200未満の場合は、分子量が小さすぎるため、ある程度濃度を調整しても十分な粘性を水溶液に付与することができず、混練の際にセルロースポリマー鎖同士を物理的に引き離す力が弱くなる。逆に、この平均重合度が5,000を超えると粘性が高すぎて分断工程における作業性やハンドリング性が低下すると共に、分子量が大きすぎることでセルロースポリマー鎖間に進入し難くなり、水素結合を弱める作用が低下するおそれがある。
当該PVA系重合体のケン化度の下限としては、70モル%であり、75モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、85モル%が特に好ましい。一方、このケン化度の上限としては、99.9モル%であり、99.5モル%が好ましく、99.0モル%がより好ましく、98.5モル%がさらに好ましく、96.0モル%が特に好ましく、93.0モル%が最も好ましい。当該PVA系重合体のケン化度を上記範囲とすることで、このPVA系重合体を水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よくかつ均一に混ぜ合わせることができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効率的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。
当該PVA系重合体のケン化度が70モル%未満の場合は水溶性が低下すると共に、十分な粘性が得られず、混練等の際のセルロース分断能が低下することとなる。逆に、このケン化度が99.9モル%を超えても、セルロースポリマー鎖の分子レベルの分断能は頭打ちとなると共にハンドリング性が低下する。また、当該PVA系重合体が一定量のケン化されていないビニルエステル系単量体単位を有する場合、セルロース系バイオマスとの親和性がより好適となり、セルロースポリマー鎖の分断能が高められると考えられる。
当該PVA系重合体の分子量分布の下限は2.2であり、2.25が好ましい。一方、この分子量分布の上限は、特に限定されないが、5が好ましく、4がより好ましく、3.5がさらに好ましく、3が特に好ましい。当該PVA系重合体の分子量分布を上記範囲とすることで、このPVA系重合体を水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よく、かつ均一に混ぜ合わせることができると共に、様々なサイズを有するセルロースの準結晶構造の隙間に効果的に進入することができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効果的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。
当該PVA系重合体の分子量分布が上記下限未満の場合は、分子量のバラツキが小さく様々なサイズの準結晶構造の隙間に対応して進入することができず、水素結合を弱める機能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、PVA系重合体の分子量分布が上記上限を超える場合も、分子量のバラツキが大きすぎるため、準結晶構造の隙間に対応せず、進入できないPVA系重合体の割合が高まり、セルロースポリマー鎖間の水素結合を弱める機能が十分に発揮されないおそれがある。
また、当該PVA系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、平均重合度(DP)との関係において、下記式(α)及び(β)を満たすことが加水分解性セルロースの製造により好適である。
200≦DP<1,000のとき、
Mw/Mn≧3.4−1.2×10−3×DP ・・・ (α)
1,000≦DP≦5,000のとき、
Mw/Mn≧2.2 ・・・ (β)
分子量分布と平均重合度との関係において上記式(α)及び(β)を満たすPVA系重合体が好ましいことは、実験的に確かめられたものであり、この理由は定かではないが、例えば、以下の理由が考えられる。平均重合度が1,000未満の場合は、分子量が小さいことから十分な粘性を得られにくく、セルロースポリマー鎖を効率的に分断し難くなる場合がある。しかし、平均重合度が1,000未満であっても分子量分布が広い場合は、この分子群中に存在する分子量の大きい分子が粘性を高め、また、このような分子が準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に浸入した際の分断能も好適に発揮すると考えられる。一方、平均重合度が1,000以上の場合は、分子量分布が2.2を超えれば、十分な粘性を得ることができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効率的に分断することができる。
このような分子量分布を有するPVA系重合体は、例えば、以下のような方法で調製することができる。すなわち、(1)異なる重合度を有するPVA系重合体を混合する方法、(2)異なる重合度を有するポリビニルエステル系重合体の混合物をケン化する方法、(3)アルデヒド、ハロゲン化アルキル、メルカプタン等の重合調整剤を用いてビニルエステル系単量体を重合し、得られたポリビニルエステル系重合体をケン化する方法、(4)重合度を調整しながら多段階でビニルエステル系単量体を重合し、得られたポリビニルエステル系重合体をケン化する方法、(5)重合速度を調整してビニルエステル系単量体を重合し、得られたポリビニルエステル系重合体をケン化する方法等である。
当該PVA系重合体は、平均重合度、ケン化度及び分子量分布の三要素を上記の範囲で特定することで、効率的にセルロース系バイオマスの分子レベルの分断を行うことができる。つまり、平均重合度とケン化度とを特定することで、物理的作用を発揮させるための好適な粘性を水溶液に付与しつつ、分子量分布を特定することで、化学的な作用を発揮させるための準結晶構造中へのPVA系重合体の進入の確率を高め、バランスよくセルロースポリマー鎖の水素結合を弱めることができる。つまり、当該PVA系重合体の上記三要素を特定することで、セルロース系バイオマスの分子的な分断において、物理的な作用及び化学的な作用をバランスよく発揮させることができるため、酵素等で容易に加水分解されるセルロースを効率よく得ることができる。
本発明のPVA系重合体として使用することのできる各種PVA共重合体(変性PVA)の中でも、
(1)カルボキシル基を有する構造単位を含み、このカルボキシル基を有する構造単位の含有率が0.2モル%以上4モル%以下であるPVA系重合体(カルボキシル基変性PVA)、
(2)カチオン基を有する構造単位を含み、このカチオン基を有する構造単位の含有率が0.1モル%以上3モル%以下であるPVA系重合体(カチオン変性PVA)、及び
(3)α−オレフィンに由来する構造単位を含み、このα−オレフィンに由来する構造単位の含有率が1モル%以上8モル%以下であるPVA系重合体(α−オレフィン変性PVA)
が好ましい。以下に、それぞれの好ましい変性PVAについて詳説する。
(1)カルボキシル基変性PVA
カルボキシル基変性PVAとしては、例えば、上記の他の単量体の少なくとも一部として、エチレン性不飽和カルボン酸類を用いることによって得られるものが挙げられる。当該エチレン性不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、アコニット酸等の不飽和トリカルボン酸等を挙げることができるが、ビニルエステル系単量体との共重合性及び得られるカルボキシル基変性PVAの水溶液の粘性制御性、セルロース系バイオマスとの混和性の点から、不飽和ジカルボン酸が好ましい。なお、エチレン性不飽和カルボン酸類としては、これらの酸の酸無水物やエステルを用いてもよい。
当該カルボキシル基変性PVAは、カルボキシル基を有する構造単位が主鎖にグラフトされたグラフト共重合体であってもよいし、主鎖中にブロック状に共重合されたブロック共重合体であってもよい。
当該カルボキシル基変性PVAにおける、カルボキシル基を有する構造単位の含有率(カルボキシル基変性量)は、0.2モル%以上4モル%以下が好ましく、0.3モル%以上3.5モル%以下がより好ましく、0.5モル%以上3モル%以下がさらに好ましい。カルボキシル基を有する構造単位の含有率を上記範囲とすることで、カルボキシル基変性PVA水溶液をセルロース系バイオマスの均一分散性及び分断能の点からより好ましい状態にすることができる。この含有率が上記範囲の下限未満の場合は、上述のカルボキシル基変性効果が十分に発揮されない場合がある。一方、この含有率が上記範囲の上限を超える場合は、カルボキシル基変性PVAの生産性が低下することに加え、極性が向上しすぎ、例えば粉末状のセルロース系バイオマスの水溶液中での均一分散性が低下したり、セルロース系バイオマスが凝集するため、加水分解性セルロースの製造効率が低下する場合がある。
(2)カチオン変性PVA
カチオン基を有する構造単位におけるカチオン基としてはアンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などが挙げられる。また、アミノ基や、イミノ基のように、水中においてその一部がアンモニウム基やイミニウム基に変換しうる官能基もカチオン基に含まれる。これらのカチオン基の中でも、工業的に入手しやすい観点からアンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基(アンモニウム基)、2級アンモニウム基(アルキルアンモニウム基等)、3級アンモニウム基(ジアルキルアンモニウム基等)、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)のいずれも用いることができるが、4級アンモニウム基が好ましい。また、カチオン基の対アニオンとしては特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが挙げられる。
カチオン変性PVAとしては、例えば、上記の他の単量体の少なくとも一部として、カチオン基を有する単量体を用いることによって得られるものが挙げられる。当該カチオン基を有する単量体としては、例えば、3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンの4級アンモニウム塩、N−(4−アリルオキシ−3−ヒドロキシブチル)ジエチルアミンの4級アンモニウム塩、さらにはアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
なお、カチオン基を有する構造単位は、主鎖、側鎖、末端のいずれに含まれていてもよく、当該カチオン変性PVAは、カチオン基を有する構造単位が主鎖にグラフトされたグラフト共重合体であってもよいし、主鎖中にブロック状に共重合されたブロック共重合体であってもよい。
当該カチオン変性PVAにおけるカチオン基を有する構造単位の含有率(カチオン変性量)は、0.1モル%以上3モル%以下が好ましく、0.2モル%以上2.5モル%以下がより好ましい。カチオン基を有する構造単位の含有率を上記範囲とすることで、カチオン変性PVAとセルロース系バイオマスとの相互作用を効果的に発揮させることができ、セルロース系バイオマスの分断能を十分に発揮することができる。
カチオン基を有する構造単位の含有率が上記範囲未満の場合は、カチオン変性の効果があらわれず、分断能が十分に向上しないおそれがある。一方、この含有率が上記範囲を超える場合は、PVA系重合体のカチオン性が高まりすぎ、セルロース系バイオマス粒子が凝集するなど、セルロース系バイオマスのPVA系重合体溶液中での均一分散性が低下し、その結果、加水分解性セルロースの製造効率が低下するおそれがある。
(3)α−オレフィン変性PVA
α−オレフィン変性PVAとしては、例えば、上記の他の単量体の少なくとも一部として、α−オレフィンを用いることによって得られるものが挙げられる。当該α−オレフィンとしては、1,2−不飽和結合を有するアルケンであれば特に限定されないが、過度の親和性低下防止の観点から、炭素数4以下のα−オレフィンが好ましい。このようなα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンが挙げられるが、得られるα−オレフィン変性PVAの水への溶解性及びセルロース系バイオマス粒子との混和性の点でエチレンが好ましい。
なお、当該α−オレフィン変性PVAは、α−オレフィンに由来する構造単位が主鎖にグラフトされたグラフト共重合体であってもよいし、主鎖中にブロック状に共重合されたブロック共重合体であってもよい。
当該α−オレフィン変性PVAにおけるα−オレフィンに由来する構造単位の含有率としては、1モル%以上8モル%以下が好ましく、2モル%以上6モル%以下がより好ましい。α−オレフィン由来の構造単位の含有率を上記範囲とすることで、当該α−オレフィン変性PVAとセルロース系バイオマスとの親和性を最適に調整することができ、セルロース系バイオマスの分断能を十分に発揮すると共に、単糖類等との容易分離性、保存安定性の向上等により、リサイクル使用性を向上させることができる。
α−オレフィンに由来する構造単位の含有率が上記範囲の下限未満の場合は、セルロース系バイオマスの分断能の向上や、リサイクル使用性(複数回及び長期使用性)の向上などの上述のα−オレフィン変性した効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、この含有率が上記範囲の上限を超えると、当該α−オレフィン変性PVAの水への溶解性が低下したり、セルロース系バイオマスとの親和性が低下し過ぎるため、セルロース系バイオマスと均一に混ざらなくなる等によって加水分解性セルロースの製造効率が低下するおそれがある。
なお、上述した各変性のための構造単位の含有率は、重合の際に仕込まれる全モノマー量(モル)に対する各単量体の量(モル)の比で調整することができる。また、得られた重合体中の各構造単位の含有率は、例えば、NMRを用いた測定によって求めることができる。
〔加水分解性セルロースの製造方法〕
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法は、PVA系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程とを少なくとも有する。なお、混合工程に先駆けて、セルロース系バイオマス原料を切断して、セルロース系バイオマスを適当なサイズの粒子とするセルロース系バイオマス原料切断工程、同じく混合工程に先駆けて、PVA系重合体の水溶液を調製する水溶液調製工程、及びPVA系重合体水溶液をゲル状にするゲル化工程を有することが好ましい。以下加水分解性セルロースの製造工程に沿って順に説明する。
(1)セルロース系バイオマス原料切断工程
本工程においては、以降の工程における処理を効率的にするために、セルロース系バイオマス原料を切断し、適当なサイズの粒子とする。ここで用いられるセルロース系バイオマス原料としては特に制限されず、植物由来のバイオマスを好ましく用いることができ、具体的には、例えば、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの廃棄物(EFB等)、ヤシの実の殻などを挙げることができる。このようなセルロース系バイオマス原料を、可能な限り土等の不要分を取り除いた後、剪断、叩解等の各種切断手段により、粒子状に小さくする。この切断工程においては、例えば、特表2004−526008号公報に記載の分断器や、パルプチップを製造する際に用いられる装置等を好適に採用することができる。
この切断工程を経たセルロース系バイオマス粒子のサイズとしては、平均粒径2mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましく、20μm以上70μm以下がさらに特に好ましい。セルロース系バイオマス粒子の平均粒径を2mm以下とすることで、以降の混合工程や、特に分断工程を効率よく行うことができ、短時間で加水分解性の優れたセルロースを得ることができる。
(2)水溶液調製工程
本工程においては、当該PVA系重合体を水に溶解して水溶液とする。このPVA系重合体水溶液の濃度としては、特に限定されないが、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。PVA系重合体水溶液の濃度を上記範囲とすることで、水溶液に適当な粘性を付与することができる。従って、水溶液の濃度を上記範囲とすることで、混練の際に、水溶液を介してセルロース系バイオマスへ物理的な力が効果的に伝わり、その結果、水溶液によってセルロースポリマー鎖が引き剥がされ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効果的に行うことができる。PVA系重合体水溶液の濃度が3質量%未満の場合は、水溶液が適当な粘性を有さず物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、PVA系重合体水溶液の濃度が30質量%を超えると、水溶液の粘性が高すぎて混練しにくくなるため、分断工程における作業性が低下するおそれがある。
なお、PVA系重合体として上記したカルボキシル基変性PVA、カチオン変性PVA、α−オレフィン変性PVA等を使用する場合などにおいては、これらの変性PVAと共にこれら以外の他のPVAを併用してもよい。この場合、使用される全てのPVA系重合体の全体としての濃度が上記濃度範囲となっていることが好ましい。また、PVA系重合体水溶液には、PVA系重合体以外の他の化合物等が溶解又は分散されていてもよい。
(3)ゲル化工程
上述したセルロース系バイオマス原料切断工程によって得られたセルロース系バイオマスの粒子と、当該PVA系重合体の水溶液とを混合するに先駆けて、このPVA系重合体水溶液をゲル化すると好ましい。このようなゲル状のPVA系重合体水溶液を用いることで、後の分断工程において混合物が混練の初期段階から高い粘性を有するため、混練の物理的作用がセルロース系バイオマスに効果的に伝わり、このセルロース系バイオマスを分子レベルで効率的に分断することができる。さらには、ゲル状のPVA系重合体水溶液を用いることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
このPVA系重合体水溶液のゲル化の方法としては、例えば、ホウ酸塩、チタニウム酢酸塩、その他の金属塩等様々な化学物質を添加し、PVA系重合体を架橋させる方法などを挙げることができる。これらの中でも、再利用を比較的容易にすることができるなどの点から、ホウ酸塩を用いることが好ましい。
ホウ酸塩を添加してPVA系重合体水溶液をゲル化させる場合には、例えば、5質量%のPVA系重合体水溶液100質量部に対して、四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液を1〜10質量部加えて混ぜ合わせることで行うことができる。このようにしてゲル状にされたPVA系重合体水溶液は、当該製造において好適な粘性を有し、また、セルロース系バイオマスと混ぜ合わされて混練され続けても粘度が上昇(硬化)しにくいため容易かつ効率的に混練を行うことができる。なお、このゲル状のPVA系重合体水溶液は、酸性であることが好ましく、具体的にはpHが4以上6以下であることが好ましい。
(4)混合工程
上記工程にて得られたPVA系重合体の水溶液、好ましくは上記ゲル化工程においてゲル状にされたPVA系重合体の水溶液、及び上記工程にて好ましいサイズに切断されるなどしたセルロース系バイオマスを混合して、これらを含む混合物を得る。
セルロース系バイオマスの混合量としては、特に限定されないが、混合物全体に対するセルロース系バイオマスの混合量が5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。セルロース系バイオマスの混合量が5質量%未満の場合は、混合物の粘性が低く物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがあると共に、セルロース系バイオマスの処理量が低いため、作業効率が低下する。逆にセルロース系バイオマスの混合量が50質量%を超えると、バイオマスによる吸水性が強く、混合物の粘性が高すぎて、混練しにくくなるため、作業性が低下する。この混合物の粘度としては、例えば5.0×10mPa・s以上1.0×10mPa・s以下が好ましい。
(5)分断工程
上述の混合工程にて得られた混合物に剪断力を付加することによって、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で分断する。つまり、準結晶構造を有するセルロースが部分的に水和され、また、PVA系重合体が進入し、このセルロース分子間の水素結合が弱まり、加えて、剪断力の付加による物理的な力により、分子間の結合が弱まった状態でセルロースポリマー同士が互いに引き離されることで、細胞壁の微視的な構造が分断されることとなる。
ここで、上述の平均重合度、ケン化度及び分子量分布を有する本発明のPVA系重合体の水溶液を用いることで、混合物に適度な粘性を付与できるため、セルロース分子間の水素結合の低下という化学的な作用と、剪断力の付加という機械的な操作によってセルロース分子同士を物理的に引き離す作用とを共に効果的に発揮することができる。また、PVA系重合体として上記したカルボキシル基変性PVA、カチオン変性PVA、α−オレフィン変性PVA等の変性PVAを用いれば、物理的に引き離されたセルロースポリマー鎖の隙間に変性PVAがより効果的に進入、付着することができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことで、より効率的に加水分解性セルロースを製造することができる。
更には、ゲル状とされたPVA系重合体水溶液を用いることで、剪断力の付加の最初の段階から常に好ましい粘性を有した混合物とすることができ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効率的に行うことができる。
この分断工程における混合物に剪断力を付加する方法としては特に限定されず、例えば混合物を練り混ぜる方法などが挙げられる。また、この分断工程に用いられる装置としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂の成形の際に一般的に使用される二軸押出成形機等が好適に用いられる。この分断工程に要する時間としては、混合物の量等に応じて適宜設定されるが、例えば30分以上10時間以内程度である。なお、この分断工程の際、粘度が減少した場合は、適宜、四ホウ酸ナトリウム水溶液の添加などによって、粘性を調整するとよい。
この加水分解性セルロースの製造方法によれば、上述の各工程を経ることで、セルロース系バイオマスは、準結晶構造が分断された容易に加水分解されるセルロースとなる。
(6)後工程
なお、このようにして得られた加水分解性セルロースは、混合物中に例えば、公知の加水分解酵素を用いることで容易に糖化され、生じたグルコースが水溶液中に溶け出す。上記加水分解酵素としては、例えば、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルカナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、アミラーゼ、メイセラーゼ、アクレモニウムセルラーゼ(Acremonium cellulolyticus菌から得られるセルラーゼ)等を挙げることができる。また、糖化の際、セルロース系バイオマス中に含まれるヘミセルロース由来のキシロース等も、併せて水溶液中に溶け出す。この際、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンが不溶な粒子として存在することがあるが、このリグニンは、例えば、ろ過や遠心分離によって分離することができる。このようにして得られた可溶性のグルコース等の糖類は、醗酵によってエタノールとし、燃料資源などとして好適に使用することができる。
なお、PVA系重合体として上記したα−オレフィン変性PVAを使用した場合には、当該変性PVAが上述のように安定性に優れ、かつ得られたグルコース等の単糖類との親和性が抑えられているため、分離が比較的容易であり、従って、最終的に単糖類を得た後に、このα−オレフィン変性PVAを分離し、再度、加水分解性セルロースの製造に用いること、すなわちリサイクルして使用することが容易であり、経済的に優れている。
以下、実施例に基づいて本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
[合成例1](PVA1)
70.0kgの酢酸ビニルと30.0kgのメタノールとを、撹拌器、窒素挿入口及び開始剤挿入口を備える250リットル反応容器に投入し、60℃に加熱した。反応容器内は、30分の窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液を得た。
メタノールを上述のPVAc溶液に加え、PVAc溶液の濃度が30質量%となるように調整した。アルカリモル比(PVAcポリマーのビニルエステル単位のモル量に対するNaOHのモル量の比)が0.11となるように、PVAc溶液333g(PVAc100g)に、アルカリ溶液(10質量%NaOHメタノール溶液)51.1gを加え、PVAcのケン化を行った。60℃に温度を保ち、1時間ケン化反応を進めた後、生成物(ケン化反応中、ゲル化したものを適宜反応容器から取り出してグラインダーで粉砕したものを含む)をろ過し、白色の固体を得た。この白色固体をメタノール1,000gに混ぜ、室温で3時間放置することで洗浄を行った。この洗浄を3回行い、白色固体を遠心分離した後、乾燥機にて70℃二日間乾燥して、PVA1を得た。このPVA1の平均重合度は1,700、ケン化度は98.8モル%、分子量分布(Mw/Mn)は2.24であった。
[合成例2](PVA2)
アルカリモル比(PVAcポリマーのビニルエステル単位のモル量に対するNaOHのモル量の比)が0.07となるようにアルカリ溶液を32.5g加えたこと以外は、合成例1と同様にしてPVA2を得た。このPVA2の平均重合度は1,740、ケン化度は86.2モル%、分子量分布(Mw/Mn)は2.30であった。
[合成例3〜7](PVA3〜7)
重合条件及びケン化条件を変えた以外は、PVA1と同様にしてPVA3〜7を得た。これらの平均重合度、ケン化度及び分子量分布は、上述のPVA1及びPVA2の値と共に以下の表1に示す。
[調製例1](PVA8)
50質量部のPVA−217(株式会社クラレ製)と50質量部のPVA−205(株式会社クラレ製)とを混合してPVA8を得た。このPVA8の平均重合度は1,090、ケン化度は88.2モル%、分子量分布(Mw/Mn)は2.85であった。
[比較合成例1〜3](PVA9〜11)
重合条件及びケン化条件を変えた以外はPVA1と同様にしてPVA9〜11を得た。これらの平均重合度、ケン化度及び分子量分布は以下の表1に示す。
また、株式会社クラレ製のPVA系重合体であるPVA−217及びPVA−205についての平均重合度、ケン化度及び分子量分布を併せて以下の表1に示す。
Figure 0005812991
[合成例8](PVA12)
70.0kgの酢酸ビニル(813モル)と、1.12kgのイタコン酸(8.61モル)と、30.0kgのメタノールとを、撹拌器、窒素挿入口及び開始剤挿入口を備える250リットル反応容器に投入し、60℃に加熱した。反応容器内は、30分の窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、変性酢酸ビニル重合体のメタノール溶液を得た。
メタノールを上述の変性酢酸ビニル重合体溶液に加え、変性酢酸ビニル重合体溶液の濃度が30質量%となるように調整した。変性酢酸ビニル重合体溶液333g(変性酢酸ビニル重合体100g)に、アルカリ溶液(10質量%NaOHメタノール溶液)51.1gを加えて、変性酢酸ビニル重合体のケン化を行った。60℃に温度を保ち、1時間ケン化反応を進めた後、生成物(ケン化反応中、ゲル化したものを適宜反応溶液から取り出してグラインダーで粉砕したものを含む)をろ過し、白色の固体を得た。この白色固体をメタノール1,000gに混ぜ、室温で3時間放置することで洗浄を行った。この洗浄を3回行い、白色固体を遠心分離した後、乾燥機にて70℃二日間乾燥して、PVA12を得た。このPVA12の平均重合度は1,700、ケン化度は88.2モル%、カルボキシル基を有する構造単位の含有率(変性量)は1.05モル%であった。なお、カルボキシル基を有する構造単位の含有率は、PVAをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて測定して算出した値である。
[合成例9〜12](PVA13〜16)
イタコン酸仕込量を含む重合条件及びケン化条件を変えた以外は、PVA12と同様にしてPVA13〜16を得た。なお、PVA16については、イタコン酸の代わりにマレイン酸を用いた。これらの平均重合度、ケン化度及び変性量(カルボキシル基を有する構造単位の含有率)は、上述のPVA12の値と共に以下の表2に示す。なお、PVA12〜16の分子量分布(Mw/Mn)は2.3〜2.9の範囲内であった。
Figure 0005812991
[合成例13](PVA17)
70.0kgの酢酸ビニル(813モル)と、0.8kgの3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(3.64モル)と、30.0kgのメタノールとを、撹拌器、窒素挿入口及び開始剤挿入口を備える250リットル反応容器に投入し、60℃に加熱した。反応容器内は、30分の窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、変性酢酸ビニル重合体のメタノール溶液を得た。
メタノールを上述の変性酢酸ビニル重合体溶液に加え、変性酢酸ビニル重合体溶液の濃度が30質量%となるように調整した。変性酢酸ビニル重合体溶液333g(変性酢酸ビニル重合体100g)に、アルカリ溶液(10質量%NaOHメタノール溶液)51.1gを加えて、変性酢酸ビニル重合体のケン化を行った。60℃に温度を保ち、1時間ケン化反応を進めた後、生成物(ケン化反応中、ゲル化したものを適宜反応容器から取り出してグラインダーで粉砕したものを含む)をろ過し、白色の固体を得た。この白色固体をメタノール1,000gに混ぜ、室温で3時間放置することで洗浄を行った。この洗浄を3回行い、白色固体を遠心分離した後、乾燥機にて70℃二日間乾燥して、PVA17を得た。このPVA17の平均重合度は1,800、ケン化度は89.0モル%、カチオン基を有する構造単位の含有率(変性量)は0.45モル%であった。なお、カチオン基を有する構造単位の含有率は、PVAをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて測定して算出した値である。
[合成例14〜17](PVA18〜21)
3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの仕込量を含む重合条件及びケン化条件を変えた以外は、PVA17と同様にしてPVA18〜21を得た。なお、PVA21については、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの代わりにN,N−ジメチルアクリルアミドを用いた。これらの平均重合度、ケン化度及び変性量(カチオン基を有する構造単位の含有率)は、上述のPVA17の値と共に以下の表3に示す。なお、PVA17〜21の分子量分布(Mw/Mn)は2.3〜2.9の範囲内であった。
Figure 0005812991
[合成例18](PVA22)
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に酢酸ビニル70.0kg及びメタノール30.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が1.2kg/cmとなるようにエチレンを導入仕込みした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、変性酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。
メタノールを上述の変性酢酸ビニル重合体溶液に加え、変性酢酸ビニル重合体溶液の濃度が30質量%となるように調整した。変性酢酸ビニル重合体溶液333g(変性酢酸ビニル重合体100g)に、アルカリ溶液(10質量%NaOHメタノール溶液)51.1gを加えて変性酢酸ビニル重合体のケン化を行った。60℃に温度を保ち、1時間ケン化反応を進めた後、生成物(ケン化反応中、ゲル化したものを適宜反応溶液から取り出してグラインダーで粉砕したものを含む)をろ過し、白色の固体を得た。この白色固体をメタノール1,000gに混ぜ、室温で3時間放置することで洗浄を行った。この洗浄を3回行い、白色固体を遠心分離した後、乾燥機にて70℃二日間乾燥して、PVA22を得た。このPVA22の平均重合度は1,500、ケン化度は97.9モル%、α−オレフィンに由来する構造単位の含有率(変性量)は4.35モル%であった。なお、α−オレフィンに由来する構造単位の含有率は、PVAをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて測定して算出した値である。
[合成例19〜22](PVA23〜26)
エチレンの導入仕込み圧力を含む重合条件及びケン化条件を変えた以外は、PVA22と同様にしてPVA23〜26を得た。なお、PVA26については、エチレンの代わりにプロピレンを用いた。これらの平均重合度、ケン化度及び変性量(α−オレフィンに由来する構造単位の含有率)は、上述のPVA22の値と共に以下の表4に示す。なお、PVA22〜26の分子量分布(Mw/Mn)は2.3〜2.9の範囲内であった。
Figure 0005812991
[実施例1]
蒸留水を70℃まで加熱し、撹拌しながらPVA1を添加することで10質量%のPVA水溶液を調製した。このPVA水溶液は水より僅かに粘性を有するものであった。この水溶液100gを室温まで冷却した後、ホウ酸(HBO)の飽和水溶液2mLを加えて混合した。得られた水溶液のpHは5.0であった。更にこの水溶液に四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液0.5mLを加えて混合することで、水溶液を粘性のあるゲル状体とした。このゲル状体のpHは6.5であった。次に、セルロース系バイオマス粒子としてEFB(直径20〜70μmの粒子)50gをこのゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜた。この混合物は、混練当初は比較的低粘性を有していたが、混練を続けるうちに、EFB(セルロース系バイオマス粒子)が水を吸収し、若干粘度が向上した。この混合物はローラで容易に伸ばし、練ることができた。一定時間混練を行う毎に、混合物の一部を取り出し、顕微鏡によって粒子サイズを確認した。この分断工程を進めるにつれて、粒子のサイズが減少すること、及び細胞構造が分断されることが観察できた。
混練によるセルロースの分断が十分にされたことを顕微鏡により確認し、加水分解性セルロースの水溶液を得た。この後、混合物に蒸留水を添加し、粘性を低下させた。加水分解酵素の至適pHに調整するため、この混合物に更に水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを6.0に調整した。この混合物は、溶けたチョコレート程度の粘性を有した。この混合物に、加水分解酵素として、メイセラーゼ(明治製菓株式会社製)及びアクレモニウムセルラーゼ(Acremonium cellulolyticus菌から得られるセルラーゼ:明治製菓株式会社製)をEFB100質量部に対してそれぞれ0.5質量部ずつ添加し、50℃の温度で反応容器内で撹拌した。酵素を加えて数十分で、この混合物の粘性は目立って減少した。この撹拌を6時間行い、グルコース溶液を得た。
[実施例2〜23、比較例1〜5]
PVAをPVA1から表1〜4に記載の他のPVAに代えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜23及び比較例1〜5を行い、加水分解性セルロース水溶液を得て、最終的にグルコース溶液を得た。
[評価]
(糖化効率)
得られたグルコース溶液に蒸留水を加えて400mLとした後、このグルコース溶液のサンプル溶液を2mL(全溶液の0.5%)採取し、100℃にて5分間殺菌した。サンプル溶液を冷却した後、遠心分離器を用いて3,000rpmで30分間遠心分離し、ろ過して、固形物を取り除いた後、ろ液を液体クロマトグラフィーに供して単糖類(グルコースなど)を検量した。用いたEFB(50g)に占めるセルロース及びヘミセルロースの質量比を50%と定め、以下の計算式(2)にて糖化効率(%)を求めた。測定結果を表1〜4に示す。
糖化効率=〔サンプル溶液中の単糖類質量(g)/{50(g)×0.005×0.5}〕×100(%) ・・・ (2)
(混和性)
実施例9〜23において、EFBをゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜてから1時間後に混合物の一部を取り出した。顕微鏡を用いて、取り出した混合物におけるEFBの凝集を目視て観察し、該粒子が凝集していない場合を「良好」と判定した。
表1〜4に示されるように、実施例1〜23は、用いたPVAの平均重合度、ケン化度及び分子量分布が適当なものであるため、いずれも糖化効率が80%を超え、セルロースが容易に加水分解される状態に分断されていることがわかった。一方、比較例1〜5は、用いたPVAが平均重合度、ケン化度及び分子量分布のいずれかが好ましい範囲外であったためセルロースが容易に加水分解される状態にまで十分に分断されていないことがわかった。
以上説明したように、本発明のポリビニルアルコール系重合体は、セルロース系バイオマスを原料として加水分解性セルロースを製造する際に好適に用いることができる。従って、本発明によれば、植物系のバイオマス原料を、効率よく食物やエネルギー資源として活用することができ、バイオマスの活用の実現性を高めることができる。

Claims (9)

  1. セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられポリビニルアルコール系重合体からなる粘性付与剤であって、
    上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度が200以上5,000以下、
    上記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度が70モル%以上99.9モル%以下、
    上記ポリビニルアルコール系重合体の分子量分布が2.2以上であることを特徴とする粘性付与剤
  2. 上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度が1,800以上であり、上記ポリビニルアルコール系重合体の末端が非変性である請求項1に記載の粘性付与剤
  3. 上記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度が80モル%以上98.5モル%以下である請求項1又は請求項2に記載の粘性付与剤
  4. 上記ポリビニルアルコール系重合体の分子量分布が2.25以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粘性付与剤
  5. 上記ポリビニルアルコール系重合体がカルボキシル基を有する構造単位を含み、
    上記ポリビニルアルコール系重合体におけるカルボキシル基を有する構造単位の含有率が0.2モル%以上4モル%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粘性付与剤
  6. 上記ポリビニルアルコール系重合体がカチオン基を有する構造単位を含み、
    上記ポリビニルアルコール系重合体におけるカチオン基を有する構造単位の含有率が0.1モル%以上3モル%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粘性付与剤
  7. 上記ポリビニルアルコール系重合体がα−オレフィンに由来する構造単位を含み、
    上記ポリビニルアルコール系重合体におけるα−オレフィンに由来する構造単位の含有率が1モル%以上8モル%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粘性付与剤
  8. セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
    請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の粘性付与剤の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
    上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
    を有することを特徴とする加水分解性セルロースの製造方法。
  9. 上記水溶液がゲル状である請求項8に記載の加水分解性セルロースの製造方法。
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