JP5798907B2 - ポリビニルアルコール系重合体及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法 - Google Patents
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Description
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるポリビニルアルコール系重合体であって、
平均重合度が300以上4,000以下、
ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、
残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下である。
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
上記ポリビニルアルコール系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有する方法である。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62) (1)
また、「ケン化度」とは、JIS−K6726に準じて測定した値である。「水溶液」とは、溶媒として水を用いた溶液をいい、流動性を失ったゲル状のものも含む概念である。
η’=(OH,OAc)/〔2(OH)(OAc)〕 (2)
(式(2)中、(OH,OAc)は、上記の測定から求められる2単位連続構造(OH,OAc)の割合を表わし、(OH)はケン化度を表わし、(OAc)は残存酢酸基の割合を表わし、それぞれモル分率で示される。)残存酢酸基のブロックキャラクター(η’)は、0から2までの値を取ることができる。残存酢酸基のブロックキャラクター(η’)が0の場合、完全にブロック的であり、2に近づく程交互性があり、η=1の場合は完全に残存酢酸基とOH基とがランダムに存在することを示す〔例えば「ポバール」、(株)高分子刊行会、1981年4月1日改定新版発行、第246頁〜第249頁参照〕。
本発明のポリビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」ともいう。)は、平均重合度が300以上4,000以下、ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下である。
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法は、上記のPVAの水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程とを少なくとも有する。なお、混合工程に先駆けて、当該PVAの水溶液を調製する水溶液調製工程、及びセルロース系バイオマス原料を切断して、セルロース系バイオマスを適当なサイズの粒子とするセルロース系バイオマス原料切断工程、同じく混合工程に先駆けて、当該PVA水溶液をゲル状にするゲル化工程を有することが好ましい。以下、加水分解性セルロースの製造工程に沿って順に説明する。
本工程においては、以降の工程における処理を効率的にするために、セルロース系バイオマス原料を切断し、適当なサイズの粒子とする。ここで用いられるセルロース系バイオマス原料としては特に限定されず植物由来のバイオマスを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの廃棄物(EFB等)、ヤシの実の殻などを挙げることができる。このようなセルロース系バイオマス原料を、可能な限り土等の不要分を取り除いた後、剪断、叩解等の各種切断手段により、粒子状に小さくする。この切断工程においては、例えば、特表2004−526008号公報に記載の分断器や、パルプチップを製造する際に用いられる装置等を好適に採用することができる。
本工程においては、上記のPVAを水に溶解して水溶液とする。このPVA水溶液の濃度としては、特に限定されないが、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。PVA水溶液の濃度を上記範囲とすることで、水溶液に適当な粘性を付与することができる。従って、水溶液の濃度を上記範囲とすることで、混練の際に、水溶液を介してセルロース系バイオマスへ物理的な力が効果的に伝わり、その結果、この水溶液によってセルロースポリマー鎖が引き剥がされ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効果的に行うことができる。PVA水溶液の濃度が3質量%未満の場合は、水溶液が適当な粘性を有さず物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、当該PVA水溶液の濃度が30質量%を超えると、水溶液の粘性が高すぎて混練しにくくなるため、分断工程における作業性が低下するおそれがある。
上述したセルロース系バイオマス原料切断工程によって得られたセルロース系バイオマスの粒子と、上記のPVA水溶液とを混合するに先駆けて、当該PVA水溶液をゲル化すると好ましい。このようなゲル状のPVA水溶液を用いることで、後の分断工程において混合物が混練の初期段階から高い粘性を有するため、混練の物理的作用がセルロース系バイオマスに効果的に伝わり、このセルロース系バイオマスを分子レベルで効率的に分断することができる。さらには、ゲル状のPVA水溶液を用いることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
上記工程にて得られたPVAの水溶液、好ましくは上記ゲル化工程においてゲル状にされたPVAの水溶液、及び上記工程にて好ましいサイズに切断されるなどしたセルロース系バイオマスを混合して、これらを含む混合物を得る。
上述の混合工程にて得られた混合物に剪断力を付加することによって、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で分断する。つまり、準結晶構造を有するセルロースが部分的に水和され、また、PVAが進入し、このセルロース分子間の水素結合が弱まり、加えて、剪断力の付加による物理的な力により、分子間の結合が弱まった状態でセルロースポリマー鎖同士が互いに引き離されることで、細胞壁の微視的な構造が分断されることとなる。
なお、このようにして得られた加水分解性セルロースは、混合物中にセルラーゼ等の加水分解酵素を添加することで容易にグルコースに分解され、水溶液中に溶け出す。またセルロース系バイオマス中に含まれるヘミセルロース由来のキシロース等も、併せて水溶液中に溶け出す。この際、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンが不溶な粒子として存在するが、このリグニンは、例えば、ろ過や遠心分離によって分離することができる。このようにして得られた可溶性のグルコース等の糖類は、醗酵によってエタノールとし、燃料資源などとして好適に使用することができる。
75.0kgの酢酸ビニルと25.0kgのメタノールとを、撹拌器、窒素挿入口及び開始剤挿入口を備える250リットル反応容器に投入し、60℃に加熱した。反応容器内は、30分の窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロミトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液を得た。
重合条件及びケン化条件を変えたこと以外は、PVA1と同様にしてPVA2〜9を得た。これらの平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターは、上述のPVA1の値と共に以下の表1に示す。
蒸留水を70℃まで加熱し、撹拌しながらPVA1を添加することで10質量%のPVA水溶液を調製した。このPVA水溶液は水より僅かに粘性を有するものであった。この水溶液100gを室温まで冷却した後、ホウ酸(H3BO3)の飽和水溶液2mLを加えて混合した。得られた水溶液のpHは5.0であった。更にこの水溶液に四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液0.5mLを加えて混合することで、水溶液を粘性のあるゲル状体とした。このゲル状体のpHは6.5であった。次に、セルロース系バイオマス粒子としてEFB(直径20〜70μmの粒子)50gをこのゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜた。この混合物は、混練当初は比較的低粘性を有していたが、混練を続けるうちに、EFB(セルロース系バイオマス粒子)が水を吸収し、粘度が向上した。この混合物はローラで容易に伸ばし、練ることができた。一定時間混練を行う毎に、混合物の一部を取り出し、顕微鏡によって粒子サイズを確認した。この分断工程を進めるにつれて、粒子のサイズが減少すること、及び細胞構造が分断されることが観察できた。
PVAをPVA1から表1の他のPVAに替えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜6を行い、加水分解性セルロース水溶液を得て、最終的にグルコース溶液を得た。
(糖化効率)
得られたグルコース溶液に蒸留水を加えて400mLとした後、このグルコース溶液のサンプル溶液を2mL(全溶液の0.5%)採取し、100℃にて5分間殺菌した。サンプル溶液を冷却した後、遠心分離器を用いて3,000rpmで30分間遠心分離し、ろ過して、固形物を取り除いた後、ろ液を液体クロマトグラフィーに供して単糖類(グルコースなど)を検量した。用いたEFB(50g)に占めるセルロース及びヘミセルロースの質量比を50%と定めて、以下の計算式(3)にて糖化効率(%)を求めた。測定結果を表1に示す。
糖化効率=〔サンプル溶液中の単糖類質量(g)/{50(g)×0.005×0.5}〕×100(%) (3)
実施例1〜4及び比較例1〜7において、EFBをゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜてから1時間後に混合物の一部を取り出した。顕微鏡を用いて、取り出した混合物におけるEFBの凝集を目視にて観察し、まったく凝集が見られなかった場合を「非常に良好」と判定し、そして該粒子がほとんど凝集していない場合を「良好」と判定し、該粒子が若干凝集している場合を「やや凝集」と判定し、該粒子が凝集している場合を「凝集」と判定した。
Claims (2)
- セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
平均重合度が300以上4,000以下、
ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、
残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下であるポリビニルアルコール系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有する製造方法。 - 上記水溶液がゲル状である請求項1に記載の加水分解性セルロースの製造方法。
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