JP5816680B2 - 粘性付与剤及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法 - Google Patents
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Description
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられる粘性付与剤であって、
炭素数29以下のアルキル基を有し、炭素数が8以上である単量体単位を含むポリビニルアルコール系重合体を含有することを特徴とする。
上記単量体単位の含有率が0.1モル%以上10モル%以下であることも好ましい。
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
当該粘性付与剤及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有することを特徴とする方法である。
本発明の粘性付与剤は、炭素数29以下のアルキル基を有する単量体単位を含むポリビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」ともいう。)を含有する。また、上記単量体単位が有する炭素の数は、8以上である。すなわち、上記PVAは、ビニルアルコール単位と、上記単量体単位とを含む重合体である。なお、上記PVAは、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の単量体単位を有していてもよい。
ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン等のα−オレフィン;
ヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
オクチルアクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
上記一般式(II)等で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミド;
上記一般式(IV)等で表されるオキシブチレンユニットやオキシプロピレンユニット等を有する不飽和単量体;
等に由来する単量体単位を挙げることができる。
なお、一般式(II)で表される単量体の場合、炭素数29以下のアルキル基とはR1であり、一般式(IV)で表される単量体の場合、炭素数29以下のアルキル基とはR3である。本発明では一般式(II)で表される単量体が有する長鎖アルキル基や、一般式(IV)で表される単量体が有するオキシブチレンユニット又はオキシプロピレンユニットのように、主鎖のビニルアルコール単位よりも疎水性の高い側鎖を有することにより、セルロースの加水分解温度において、適切な粘度を付与することができる。
平均重合度=([η]×103/8.29)(1/0.62)
上記PVA(A)は、上記単量体単位として、上記一般式(I)で表される単量体単位(a)を有する。上記PVA(A)は、所定サイズのアルキル基及びアミド基を有する上記単量体単位(a)を含むため、水及びセルロースとの分子間相互作用を効果的に高めることができる。従って、上記PVA(A)は、当該粘性付与剤の増粘作用や、セルロースポリマー鎖間への侵入作用をより効果的に発揮させることができる。
上記単量体単位(a)の含有率(モル%)
=[(ピークβの面積/3)/{ピークαの面積+(ピークβの面積/3)}]×100
上記PVA(A)を製造する方法は特に制限されないが、上記一般式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られたアルキル変性ビニルエステル系重合体をけん化する方法が好ましい。ここで、上記の共重合はアルコール系溶媒中又は無溶媒で行うことが好適である。
エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;
酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;
トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;
ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類等
が挙げられ、これらの中でもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。
上記PVA(B)は、上記単量体単位として、上記一般式(III)で表されるポリオキシアルキレン基(POA基)を有する単量体単位(b)を含有する。上記PVA(B)は、上記単量体単位(b)を含むため、水溶液とした際の粘性が高く、また、感温ゲル化性を有する。従って、上記PVA(B)の水溶液を粉末又は粒子状のセルロース系バイオマスと混ぜ合わせた際のセルロース系バイオマスの溶液中の均一分散性(混和性)を高めることができる。なお、上記PVA(B)によれば、加水分解性セルロースの製造の際のゲル化剤の使用量を減らすことができる。
上記PVA(B)を製造する方法は特に制限されないが、上記一般式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法が好ましい。ここで、上記の共重合はアルコール系溶媒中又は無溶媒で行うことが好適である。
当該粘性付与剤は、上記PVAのみからなる粉末であってもよいし、このPVAの水溶液等であってもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分が含有されていてもよい。上記他の成分としては、他の水溶性重合体やゲル化剤等を挙げることができる。
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法は、当該粘性付与剤(以下、「PVA水溶液」ともいう。)及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程とを少なくとも有する。なお、混合工程に先駆けて、セルロース系バイオマス原料を切断して、セルロース系バイオマスを適当なサイズの粒子とするセルロース系バイオマス原料切断工程、粘性付与剤(PVA水溶液)を調製する水溶液調製、及び粘性付与剤(PVA水溶液)をゲル状にするゲル化工程を有することが好ましい。以下加水分解性セルロースの製造工程に沿って順に説明する。
本工程においては、以降の工程における処理を効率的にするために、セルロース系バイオマス原料を切断し、適当なサイズの粒子とする。ここで用いられるセルロース系バイオマス原料としては特に限定されず、植物由来のバイオマスを好ましく用いることができ、具体的には、例えば、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの空房(EFB)、ヤシの実の殻などを挙げることができる。このようなセルロース系バイオマス原料を、可能な限り土等の不要分を取り除いた後、剪断、叩解等の各種切断手段により、粒子状に小さくする。この切断工程においては、例えば、特表2004−526008号公報に記載の分断器や、パルプチップを製造する際に用いられる装置等を好適に採用することができる。
本工程においては、上記PVA(粘性付与剤)を水に溶解して水溶液(水溶液状の粘性付与剤)とする。このPVA水溶液の濃度としては、特に限定されないが、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。PVA水溶液の濃度を上記範囲とすることで、水溶液に適当な粘性を付与することができる。従って、水溶液の濃度を上記範囲とすることで、混練の際に、水溶液を介してセルロース系バイオマスへ物理的な力が効果的に伝わり、その結果、この水溶液によってセルロースポリマー鎖が引き剥がされ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効果的に行うことができる。PVA水溶液の濃度が3質量%未満の場合は、水溶液が適当な粘性を有さず物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、PVA水溶液の濃度が30質量%を超えると、水溶液の粘性が高すぎて混練しにくくなるため、分断工程における作業性が低下するおそれがある。
上述したセルロース系バイオマス原料切断工程によって得られたセルロース系バイオマスの粒子と、当該粘性付与剤(PVA水溶液)とを混合するに先駆けて、このPVA水溶液をゲル化すると好ましい。このようなゲル状のPVA水溶液を用いることで、後の分断工程において混合物が混練の初期段階から高い粘性を有するため、混練の物理的作用がセルロース系バイオマスに効果的に伝わり、このセルロース系バイオマスを分子レベルで効率的に分断することができる。さらには、ゲル状のPVA水溶液を用いることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
上記工程にて得られたPVA水溶液、好ましくは上記ゲル化工程においてゲル状にされたPVA水溶液、及び上記切断工程にて好ましいサイズに切断されるなどしたセルロース系バイオマスを混合して、これらを含む混合物を得る。
上述の混合工程にて得られた混合物に剪断力を付加することによって、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で分断する。つまり、準結晶構造を有するセルロースが部分的に水和され、また、上記PVAが進入し、このセルロース分子間の水素結合が弱まり、加えて、剪断力の付加による物理的な力により、分子間の結合が弱まった状態でセルロースポリマー同士が互いに引き離されることで、細胞壁の微視的な構造が分断されることとなる。
なお、このようにして得られた加水分解性セルロースは、混合物中にセルラーゼ等の加水分解酵素を添加することで容易に糖化され、生じたグルコースが水溶液中に溶け出す。上記加水分解酵素としては、例えば、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルカナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、アミラーゼ、メイセラーゼ、アクレモニウムセルラーゼ(Acremonium cellulolyticus菌から得られるセルラーゼ)等を挙げることができる。また、糖化の際、セルロース系バイオマス中に含まれるヘミセルロース由来のキシロース等も、併せて水溶液中に溶け出す。この際、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンが不溶な粒子として存在することがあるが、このリグニンは、例えば、ろ過や遠心分離によって分離することができる。このようにして得られた可溶性のグルコース等の糖類は、醗酵によってエタノールとし、燃料資源などとして好適に使用することができる。
上述したプロトンNMRを用いた方法に準じて求めた。なお、溶媒にはCDCl3を用い、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を使用した。
PVAの平均重合度は、JIS K6726に記載の方法により求めた。
PVAのけん化度は、JIS K6726に記載の方法により求めた。
製造例1−1(PVA1−1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、単量体滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、及びN−オクタデシルメタクリルアミド(アルキル基を有する不飽和単量体)1.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてN−オクタデシルメタクリルアミドをメタノールに溶解して濃度5%とした単量体溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとN−オクタデシルメタクリルアミドとの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えた単量体の総量は4.8gであった。また重合停止時の固形分濃度は29.9質量%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系共重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35質量%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液771.4g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のアルキル変性PVAc濃度25質量%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、アルキル変性PVA(PVA1−1)を得た。PVA1−1の平均重合度は1,700、けん化度は98.5モル%、変性率は0.4モル%であった。
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するアルキル基を有する不飽和単量体の種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるアルキル変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種のアルキル変性PVA(PVA1−2〜1−18)を製造した。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、オクタデシルビニルエーテル57.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0gを添加し重合を開始した。60℃で2時間重合した後冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は30.4質量%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性ビニルエステル系共重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35質量%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液792.9g(溶液中のアルキル変性PVAc200.0g)に、7.0gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のアルキル変性PVAc濃度25質量%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.0075)。アルカリ溶液を添加後約12分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、アルキル変性PVA(PVA1−19)を得た。PVA1−19の平均重合度は1,700、けん化度は88.0モル%、変性率は0.8モル%であった。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル900g、メタノール100gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は31.0質量%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、無変性ポリ酢酸ビニル(無変性PVAc)のメタノール溶液(濃度30質量%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製した無変性PVAcのメタノール溶液971.1g(溶液中の無変性PVAc200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液の無変性PVAc濃度20質量%、無変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、無変性PVA(PVA1−20)を得た。PVA1−20の平均重合度は3,000、けん化度は98.5モル%であった。
蒸留水にPVA1−1を添加し、撹拌しながら90℃まで加熱することで10質量%のPVA水溶液を調製した。このPVA水溶液は水より僅かに粘性を有するものであった。この水溶液100gを室温まで冷却した後、ホウ酸(H3BO3)の飽和水溶液1mLを加えて混合した。得られた水溶液のpHは5.0であった。更にこの水溶液に四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液0.5mLを加えて混合することで、水溶液を粘性のあるゲル状体とした。このゲル状体のpHは6.5であった。次に、セルロース系バイオマス粒子としてEFB(直径20〜70μmの粒子)50gをこのゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜた。
PVAをPVA1−1から表2の他のPVAに替えたこと以外は実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−18及び比較例1−1〜1−2を行い、加水分解性セルロース水溶液を得て、最終的にグルコース溶液を得た。
(混和性)
実施例1−1〜1−18、比較例1−1〜1−2において、EFBをゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜてから1時間後に混合物の一部を取り出した。顕微鏡を用いて、取り出した混合物におけるEFBの凝集を目視て観察し、該粒子が凝集していない場合を「良好」、若干凝集している場合を「やや凝集」、激しく凝集している場合を「凝集」と判定した。評価結果を表2に示す。
得られたグルコース溶液に蒸留水を加えて400mLとした後、このグルコース溶液のサンプル溶液を2mL(全溶液の0.5%)採取し、100℃にて5分間殺菌した。サンプル溶液を冷却した後、遠心分離器を用いて3,000rpmで30分間遠心分離し、ろ過して、固形物を取り除いた後、ろ液を液体クロマトグラフィーに供して単糖類(グルコースなど)を検量した。用いたEFB(50g)に占めるセルロース及びヘミセルロースの質量比を50%と定めて、以下の計算式にて糖化効率(%)を求めた。測定結果を表2に示す。
糖化効率=〔サンプル溶液中の単糖類質量(g)/{50(g)×0.005×0.5}〕×100(%)
製造例2−1(PVA2−1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、単量体滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、POA基を有する不飽和単量体(表4に示す単量体A、ユニット1とユニット2の配置はブロック状であり、ユニット1のブロックがユニット2のブロックに対して上記X側に位置する。)3.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてPOA基を有する不飽和単量体(単量体A)をメタノールに溶解して濃度20質量%とした単量体溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aとの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えた上記単量体溶液の総量は75mlであった。また重合停止時の固形分濃度は24.4質量%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、POA変性ビニルエステル系重合体(POA変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35質量%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液453.4g(溶液中のPOA変性PVAc100.0g)に、55.6gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度質量20%、POA変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、POA変性PVA(PVA2−1)を得た。PVA2−1の平均重合度は1,740、けん化度は98.5モル%、変性量は0.4モル%であった。
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類(表4)や添加量等の重合条件、けん化時におけるPOA変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表3及び表4に示すように変更した以外は、製造例2−1と同様の方法により各種のPOA変性PVA(PVA2−2〜2−24)を製造した。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル700g、メタノール300gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は17.0質量%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、無変性ポリ酢酸ビニル(無変性PVAc)のメタノール溶液(濃度30質量%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製した無変性PVAcのメタノール溶液544.1g(溶液中の無変性PVAc120.0g)に、55.8gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10質量%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液の無変性PVAc濃度20質量%、無変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、無変性PVA(PVA2−25)を得た。PVA2−25の平均重合度は1,760、けん化度は98.8モル%であった。
PVAをPVA1−1から表5の他のPVAに代えたこと以外は実施例1−1と同様にして、実施例2−1〜2−24及び比較例2−1を行い、加水分解性セルロース水溶液を得て、最終的にグルコース溶液を得た。
上記方法にて、混和性の評価と糖化効率の測定とを行った。結果を表5に示す。
Claims (12)
- セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられる粘性付与剤であって、
炭素数が8以上である単量体単位を含むポリビニルアルコール系重合体を含有し、
上記単量体単位が炭素数29以下のアルキル基を有することを特徴とする粘性付与剤。 - 上記単量体単位の炭素数が11以上であり、かつ、この単量体単位の側鎖における炭素数と酸素数との比(炭素数/酸素数)が2.5/1より大きい請求項1に記載の粘性付与剤。
- 上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度が100以上5,000以下、けん化度が60モル%以上99.99モル%以下、上記単量体単位の含有率が0.05モル%以上10モル%以下である請求項1又は請求項2に記載の粘性付与剤。
- 上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度が200以上5,000以下、けん化度が60モル%以上99.99モル%以下、上記単量体単位の含有率が0.05モル%以上5モル%以下である請求項4に記載の粘性付与剤。
- 上記ポリビニルアルコール系重合体の平均重合度が100以上4,000以下、けん化度が70モル%以上99.99モル%以下である請求項7に記載の粘性付与剤。
- 上記ポリビニルアルコール系重合体が、下記一般式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものである請求項7又は請求項8に記載の粘性付与剤。
- 上記一般式(IV)で表される不飽和単量体におけるR5が水素原子、Xが−CO−NR7−又は−CO−NR7−CH2−、かつR7が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である請求項9に記載の粘性付与剤。
- ゲル状である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の粘性付与剤。
- セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の粘性付与剤及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有することを特徴とする加水分解性セルロースの製造方法。
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