以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本発明では複数ドラムを有する電子写真方式カラー複写機に適用する実施例を説明するが、これに限らず、各種方式の電子写真複写機、あるいはプリンタ、モノカラー方式、電子写真以外の画像形成装置にも適用できることは言うまでもない。
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に係る画像加熱装置を定着装置500として搭載した電子写真カラー複写機の一例の概略構成図である。
フルカラーの画像形成動作について説明する。リーダ部Xの原稿台ガラス302上に画像面下向きでセットされたカラー原稿Oの画像面が移動型の読取光学系ユニット300により色分解光電読取される。ユニット300はガラス302の下面に沿って、図面上、左方側のホームポジションから矢印のように右方に往動する。所定の距離について往動したら復動してはじめのホームポジションに戻る。
ユニット300の往動過程で原稿Oの下向き画像面が光源303によって照射され、光学系304を介してCCDセンサ305に結像されて色分解光電読取される。これにより原稿画像がライン毎の電気信号データ列に変換される。
センサ305により得られた画像信号は、リーダ画像処理部306を介してプリンタ部Yのプリンタ制御部(制御回路部:制御器)309に送られ、プリントにあわせた画像処理がなされる。また、制御部309は画像信号としてプリントサーバ等の外部ホスト装置400からの外部入力も受けられる。画像信号は制御部309によりPWMされたレーザービームに変換される。310はポリゴンスキャナであり、前記ビームを走査して、4つの画像形成部Pa〜Pdの電子写真感光ドラム200a〜200dに照射される。ドラム200a〜200dは矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、イエロー色(Y色)、マゼンタ色(M色)、シアン色(C色)、ブラック色(Bk色)のトナー画像(未定着画像)をドラム200a、200b、200c、200dに形成する電子写真画像形成部である。各画像形成部Pa〜Pdは略同一なので、以下にY色の画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部Pb、Pc、Pdの説明は省略する。
Y色の画像形成部Paにおいて、回転駆動されるドラム200aの表面は1次帯電器201aで所定の電位に帯電され、スキャナ310からのビームによって露光されて静電潜像が形成される。その潜像が現像器202aによりY色のトナー画像(現像剤画像)として現像される。そのトナー画像が一次転写ローラ203aにより中間転写ベルト204に一次転写される。
ベルト204は矢印の時計方向にドラム200aの速度と同じ速度で循環移動している。ローラ203aにはトナーと逆極性の一次転写バイアスが印加されベルト204の背面から放電を行う。これにより、ドラム200a側からベルト204側に順次に画像が転写される。ベルト204への画像転写後のドラム200aはクリーナー207aでその表面を清掃される。
また、ベルト204上のトナー画像は引き続くベルト204の移動により次の画像形成部Pb、Pc、Pdに順次に搬送されて、M色、C色、Bk色の順にトナー画像が重畳転写される。そして、画像形成部Pdを通過することで、最終的にY色+M色+C色+Bk色の4色重ね合わせの画像がベルト204上に合成形成される。そのベルト204上の画像が二次転写内ローラ205と外ローラ206で構成される二次転写部(ニップ部)T2においてベルト204側から記録材P側に一括して二次転写される。記録材Pに対する画像転写後のドラム200aはクリーナー209でその表面を清掃される。
記録材Pは給紙カセット207から一枚宛分離給送されてシートパス208により所定の制御タイミングで二次転写部T2のベルト204と外ローラ206とのニップ部に導入されて挟持搬送される。ベルト204上のトナー画像はローラ205と206の間に印加されるトナーと逆極性の二次転写電界により記録材Pに静電転写される。
二次転写部T2を出た記録材Pはベルト204の面から分離されて定着装置500に導入される。この定着装置500により、記録材上の未定着のトナー画像(トナー像)が加熱・加圧されて固着画像として定着される。そして、記録材Pは定着装置500を出て画像形成物として排出部311に排出される。
(2)定着装置500
以下の説明において、定着装置500またはこれを構成している部材の長手方向とは、回転体の軸線方向(スラスト方向)、または記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向又はその方向に並行な方向である。また、短手方向とは記録材搬送方向に並行な方向である。
定着装置に関し、正面とは装置を記録材入口側からみた面、背面とはその反対側の面(記録材出口側)、左右とは装置を正面から見て左または右である。上下とは重力方向において上または下である。上流側と下流側とは記録材搬送方向に関して上流側と下流側である。記録材サイズ(紙サイズ)あるいは記録材の通紙幅とは記録材面において記録材搬送方向に直交する方向の記録材寸法(幅サイズ)である。
図2は定着装置500の要部の正面模式図、図3は同装置500の要部の縦断正面模式図、図4は図2の(4)−(4)線に沿う拡大右側面図である。
この定着装置500は、加熱部材の外側に磁場発生手段を設けた外部加熱型の電磁誘導加熱方式の画像加熱装置である。装置500は、像加熱部材(加熱回転体:エンドレスベルト)41を含む加熱アセンブリ40、加圧部材(加圧回転体:駆動回転体)としての弾性を有する加圧ローラ50を有する。また、磁場発生手段としてのコイルユニット(誘導加熱装置:加熱器)60、磁束遮蔽板(磁束遮蔽部材:磁束抑制部材)10L・10R、均熱ローラ(吸熱回転体)70、を有する。また、加圧ローラ50に対する加熱アセンブリ40の加圧・加圧解除機構80、磁束遮蔽板10L・10Rのシフト機構(移動機構)20、均熱ローラ70のシフト機構(接離機構)90、を有する。
上記のアセンブリ40、ローラ50、ユニット60、部材10L・10R、ローラ70、各種機構80・20・90は装置500の装置シャーシ30の左右の側板30L・30Rに対して配設されている。
(2−1)加熱アセンブリ40
アセンブリ40は、後述するコイルユニット60から発生される磁界(磁場)が存在する領域を通過したときに電磁誘導発熱する磁性部材(金属層、導電部材)で構成される回転可能な像加熱部材としての円筒状の定着ベルト(エンドレスベルト)41を有する。また、ベルト41の内部に挿入された金属製のステー42を有する。ステー42の下面には長手に沿って圧力付与部材としての加圧パッド43が取り付けられている。
パッド43は、ベルト41と加圧ローラ50との間に所定の押圧力を作用させて定着部(定着ニップ部)Nを形成する部材であり、耐熱性樹脂製である。ステー42はニップ部Nに圧力を加えるために剛性が必要であるため、本実施例では鉄製である。また、ステー42の上面側にはユニット60から発生する磁界の作用で金属性であるステー42が誘導加熱して温度上昇するのを防止するための磁気遮蔽部材としての磁気遮蔽コア(内側磁性体コア)44がステー42の長手にわたって配設されている。
ステー42の左右の両端部にはそれぞれ延長腕部42aが設けられていて、その腕部42aがそれぞれベルト41の左右の両端部から外方に突出している。その左右の腕部42aに対してそれぞれ左右対称形状のフランジ部材45L・45Rが嵌着されている。ベルト41は上記のステー42・パッド43・コア44の複合体に対してルーズに外嵌されている。また、そのベルト41の長手方向(左右方向)への移動が左右のフランジ部材45L・45Rのフランジ部45aの内向き面により規制される。
ベルト41は、後述するように、基層41aが電磁誘導発熱する金属で構成されている。
そのため、回転状態のベルト41の幅方向への寄りを規制するための手段としては、ベルト41の端部を単純に受け止めるだけのフランジ部45aを有するフランジ部材45L・45Rを設ければ十分である。これにより、定着装置500の構成を簡略化できるという利点がある。
パッド43の長手中央部にはベルト41の温度を検知する温度検知手段(温度検出素子)としてのサーミスタ等の温度センサTHが弾性支持部材46を介して配設されている。センサTHはベルト41の内面に対して部材46により弾性的に当接している。これにより、回転されるベルト41のセンサ当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしてもセンサTHがこれに追従してベルト41の内面との良好な接触状態が維持される。
上記のアセンブリ40は左右の側板30L・30R間に左右のフランジ部材45L・45Rの受圧部45bをそれぞれ側板30L・30Rに配設されている縦ガイドスリット部31に係合させて配設されている。したがって、アセンブリ40は左右の側板30L・30R間においてスリット部31に沿って上下方向に移動可能な自由度を有する。
図6はベルト41の層構成を示す模型図である。本実施例では、ベルト41は内径が30mmで電気鋳造法によって製造したニッケル基層(磁性部材、金属層)41aを有している。この基層41aの厚みは40μmである。基層41aの外周には弾性層41bとして耐熱性シリコーンゴム層が設けられている。層41bの厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。
本実施例では、ベルト41の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、層41bの厚みは300μmとされている。層41bのシリコーンゴムは、JIS−A20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。更に層41bの外周には、表面離型層41cとしてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられている。
また、基層41aの内面側には、ベルト内面とセンサTH1との摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層(滑性層)41dを10〜50μm設けても良い。本実施例では、この層41dとしてポリイミドを20μm設けた。
ベルト41は全体的に低熱容量で可撓性(弾性)を有し、自由状態においては円筒形状を保持している。ベルト41の金属層41aにはニッケルのほかに鉄合金や銅、銀などの金属を適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。金属層41aの厚みは、ユニット60の後述する励磁コイル(磁場発生コイル)62に流す高周波電流の周波数と金属層41aの透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
(2−2)加圧ローラ50
加圧部材としての加圧ローラ50はアセンブリ40の下側において、軸線方向をアセンブリ40の長手方向にほぼ並行にして、左右の側板30L・30R間に軸受51を介して回転可能に配設されている。
本実施例において、ローラ50は、長手方向中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金50aに弾性層50bとしてシリコーンゴム層を設けた、外径が30mmの弾性ローラである。表面は離型層50cとしてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられる。ローラ50の長手方向中央部における硬度は、ASK−C70℃である。芯金50aにテーパー形状をつけているのは、加圧した時にパッド43が撓んでもベルト41とローラ50との圧接で形成される定着ニップ部N内の圧力が長手方向にわたって均一になるようにするためである。
芯金50aの右側の端部にはドライブギア52が固定して配設されている。このギア52に対して制御部309で制御される定着モータ53の駆動力が伝達手段(不図示)を介して伝達されて、ローラ50が図4において矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。
(2−3)加圧・加圧解除機構80
左右の側板30L・30Rには軸受82・82を介してカム軸81が回転可能に配設されている。その軸81の左右の端部にはそれぞれ側板30L・30Rの外側において左右対称で同形状の偏心カム83が同じ位相で固定して配設されている。また、側板30L・30Rの外側にはそれぞれ上記のカム83と係合する加圧レバー84が配設されている。
また、各レバー84の下面とそれぞれの側のフランジ部材45L・45Rの受圧部45bの上面との間には加圧バネ(弾性部材)85が配設されている。また、軸81の右側の端部には制御部309で制御されるカム軸駆動手段86が伝達手段(不図示)を介して接続されている。カム軸駆動手段86は例えばステッピングモータ、ソレノイドなどを用いることができる。
左右のカム83の大隆起部が下向きの回転角姿勢となるように軸81が駆動手段86により回転されることにより、アセンブリ40がローラ50に対して加圧(荷重)された状態になり、その加圧状態が保持される。即ち、左右のカム83により左右のレバー84がそれぞれ押し下されて左右のバネ85がレバー84と部材45L・45Rの受圧部45bの上面との間に圧縮される。そのバネ85の圧縮反力により左右の部材45L・45Rと共にステー42が押し下げられて、パッド43がベルト41を挟んで弾性層50bの弾性に抗してローラ50に圧接する。
これにより、ベルト41とローラ50との間に記録材搬送方向aに関して所定幅のニップ部Nが形成される。パッド43はニップ部Nの圧プロフィルの形成を補助する。本実施例におけるニップ部Nの幅は、ニップ圧が600Nにおいては、長手方向両端部で約9mm、中央部では約8.5mmである。これは記録材Pの両端部での搬送速度が中央部と比べて速くなるので紙しわ(記録材しわ)が発生しにくくなるという利点がある。
また、左右のカム83の小隆起部が下向きの回転角姿勢となるように軸81が回転されることにより、アセンブリ40がローラ50に対して加圧解除(抜重)された状態になる。即ち、左右のバネ85の圧縮が解除される。これにより、パッド43のローラ50に対する加圧が解除される。
上記の部材81〜86がローラ50に対するアセンブリ40の加圧・加圧解除機構80を構成している。制御部309は、装置500の少なくとも定着動作時には機構80を加圧状態に制御してその状態を保持する。装置500の待機状態時には機構80を加圧解除状態に制御してその状態を保持する。こうすることでローラ50の弾性層50bやベルト41が塑性変形してしまうのを防止することが出来る。
(2−4)コイルユニット60
ユニット60はベルト41を誘導加熱する加熱源(誘導加熱手段)であり、アセンブリ40の上面側、即ちアセンブリ40のローラ50側とはほぼ180°反対側において、左右の側板30L・30Rに対して位置が固定されて配設されている。ユニット60はベルト41に沿って長いハウジング61に対して励磁コイル(磁束を生ずるコイル)62、磁性体コア(磁性コア)63等を組み付けたものである。
ハウジング61は左右方向を長手とする横長箱型の耐熱樹脂成型品(電気絶縁性樹脂のモールド部材)である。ハウジング61の底板61a側がベルト41に対する対向面である。底板61aは横断面においてベルト41の外周面の略半周範囲に沿うようにハウジング61の内側に湾曲している。ハウジング61は、底板61a側とは反対側が開口部として開放されている。ハウジング61は、底板61a側をベルト41の上面に対して所定のギャップ(隙間)αを存して対面させて、左右端部を左右の側板30L・30Rに対してブラケット66で固定して配設される。
コイル62は、電線として例えばリッツ線を用い、これを、図7に示すように、横長・船底状にしてベルト41の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。そして、ハウジング内側に湾曲している底板61aの内面に当てがわれてハウジング内部に収められている。コイル62には、制御部309で制御される電源装置(励磁回路)64から20〜50kHzの高周波電流が印加される。
コア63は、コイル62によって発生した磁界がベルト41の金属層(導電層)以外に実質漏れないようにコイル62を覆わせた外側磁性体コアである。そして、コア63はベルト41の長手方向に沿って配設されており、かつ、記録材搬送方向aに直交する方向に複数に分割されて並んで配置されており、コイル62の巻き中心部と周囲を囲むように構成されている。
即ち、記録材搬送方向aに直交する方向を長手方向とした場合に、コア63は、ベルト41の長手方向に沿って配設されている。かつ、コア63は、種々の記録材サイズ、例えばハガキ、A5、B4、A4、A3、A3ノビサイズの小サイズ記録材を通紙した場合の非通紙部昇温の回避に対応できるように、図7のように長手方向で複数に分割されている。そして、個々にベルト41との距離を変化させる方向に単独で移動可能な分割可動コア63aを有している。
そして、制御部309で制御されて、個々のコア63aをベルト41に対して所定に近接している第1の距離位置D(図4)と、位置Dよりもベルト41から離れた第2の距離位置E(図5)とに移動させるコア移動手段(コア移動機構:退避機構)65を有する。コア移動手段65の具体的な構成は図の煩雑を避けるために省略したけれども、例えば特許文献1に記載のコア移動手段を適用することが出来る。本実施例においては、第1の距離位置Dがコア63aのホームポジションである。
本実施例において、コア63aの記録材搬送方向aに交差する方向の幅寸法(隣接コアとの隙間寸法も含む)は10mmとしている。ここで、本実施例の装置500においては、装置500に通紙可能な最小幅サイズの記録材の幅に対応する最小幅領域Wminに対応するコア63aについては移動させる必要のないコアとして第1の距離位置Dに位置させてハウジング61に固定されている。上記の幅領域Wmin以外の領域Woutのコア63aについて個々にコア移動手段65により第1の距離位置Dと第2の距離位置Eとに移動制御する構成としている。
コア63aはコイル62より発生した交流磁束を効率よくベルト41に導く役割をする。すなわち、磁気回路(磁路)の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。コア63aの材質として、フェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いると良い。
装置に通紙可能(使用可能)な最大幅サイズの記録材よりも小さい幅サイズ(幅狭)の記録材が通紙されたときの非通紙部に対応する領域におけるコア63aについては第1の距離位置Dから第2の距離位置Eに移動制御される。即ち、記録材の幅方向長さに応じて複数のコア63aのうち少なくとも1つのコア63aをコイル62から離れる方向へ退避させる。これにより、ベルト1の非通紙部に対応する部分に対する磁束密度が弱められて非通紙部昇温が抑制される。
(2−5)磁束遮蔽板10L・10R及びそのシフト機構20
磁束遮蔽板10L・10Rは、アセンブリ60のコイル62とベルト41との間の磁界が存在する領域において、コイル62からベルト41に作用する磁束を低減させるための部材である。即ち、記録材の搬送方向と直交する幅方向において、通紙可能な最大サイズの幅よりも小さい幅の記録材を通紙する際にベルト1の非通紙部領域に作用する磁束(ベルト41が記録材と接触し得る領域よりもベルトの幅方向外側の領域の一部に向かう磁束)を減らす調整位置に移動させて磁束を調整するための磁束調整手段である。
この板10L・10Rは磁束遮蔽部材移動手段としてのシフト機構20により位置移動制御される。即ち、板10L・10Rは上記の磁界が存在する領域に位置しない退避位置(ホームポジション)と、装置500に通紙可能な最大幅の大サイズ記録材よりも幅が小さい小サイズ記録材を通紙した際の非通紙部の温度を低下させるための有効位置とに移動される。
板10L・10Rとしては、アルミニウム、銅、銀、金、真鍮などの非磁性金属やその合金でも良いし、高透磁率部材であるフェライトやパーマロイなどの材料でもよい。板10L・10Rの配設位置としては、コイル62とコア63aの間、コイル62とベルト41の間、もしくはベルト41とコア44の間などが考えられる。
本実施例の装置500においては、板10L・10Rはアセンブリ40とベルト41との間に形成されている隙間αにおいてベルト41の左右両端部側に一対配設されている。図8はその左右一対の磁束遮蔽板10L・10Rと途中部分省略のシフト機構20の外観斜視図である。
本実施例において左右一対の板10L・10Rは共に帯板状の銅板をベルト41の外周面の略半周範囲に沿うように略半円弧状に曲げ加工した部材である。この板10L・10Rの基部(キャリッジ)11にはそれぞれネジ穴12と被ガイド凹部13を具備させてある。また、装置シャーシ30の左右の側板30L・30R間には軸受22・22を介してスクリュー軸21が回転可能に配設されている。この軸21は左半部側のネジ部21Lと右半部側のネジ部21Rを互いに逆ネジにしてある。また、この軸21に並行に配列してさせて左右の側板30L・30R間にガイド軸23を配設してある。
そして、左側の板10Lは、基部11のネジ穴12を軸21の左半部側のネジ部21Lに螺合させて、また凹部13を軸23に係合させて、アセンブリ40とベルト41との間の隙間αにおいてベルト41の左側に配設されている。右側の板10Rは、基部11のネジ穴12を軸21の右半部側のネジ部21Rに螺合させて、また凹部13をガイド軸23に係合させて、アセンブリ40とベルト41との間の隙間αにおいてベルト41の右側に配設されている。
軸21の右側の端部には制御部309で制御されるスクリュー軸駆動手段24が伝達手段(不図示)を介して接続されている。駆動手段24は例えばステッピングモータである。左右の板10L・10Rは、それぞれ、ベルト41の左端部側の所定の位置と右端部側所定の位置とを退避位置であるホームポジションとしている。
左右の板10L・10Rがホームポジションに位置している状態において、軸21が駆動手段24により正回転駆動されると、左右の板10L・10Rはそれぞれベルト41の中央部に向って同じ移動量をもって移動して両者の間隔が中央基準で狭められる。軸21の正回転量が制御されることで、板10L・10Rが、装置500に通紙可能な最大幅の大サイズ記録材よりも幅が小さい小サイズ記録材を通紙した際の非通紙部の温度を低下させるための有効位置に移動される。この左右の板10L・10Rの移動は隙間α内においてベルト41にもハウジング61の底板61aにも非接触でなされる。
また、左右の板10L・10Rの間隔が狭められている状態において、軸21が駆動手段25により逆回転駆動されると、左右の板10L・10Rはそれぞれベルト41の左右両端部側のホームポジションに向って同じ移動量をもって移動する。即ち、左右の板10L・10Rの間隔の間隔が中央基準で広げられる。この左右の板10L・10Rの移動は隙間α内においてベルト41にもハウジング61の底板61aにも非接触でなされる。
上記の部材21〜24が板10L・10Rを退避位置と有効位置とに移動させる磁束遮蔽部材移動手段としてのシフト機構20を構成している。そして、このシフト機構20は上記のように記録材の幅方向長さに応じてベルト41の幅方向に実質沿って板10L・10Rを移動させる。板10L・10Rの挿入の効果としては、コア63aの移動より磁束を弱めベルト41の発熱量を低下する効果が大きく、また、コア63aの移動機構65と連動して移動することで、コア63aの分割幅よりも細かく長手発熱分布を制御できることにある。板10L・10Rの厚みとしては表皮深さ以上である0.5mmのものを用いる。
板10L・10Rは上記のように長手方向においてベルト41の両端部に配置される。それぞれの端部に配置される板10L・10Rの長手幅(記録材搬送方向と交差する方向の幅)は、磁束遮蔽効果を発揮する十分な幅を持つことが望ましい。また、最大サイズの記録材に対応する最大発熱幅を低減しない幅であることが望ましい。そして、装置500の長手幅も拡大することなく配置出来る幅であることが望ましい。具体的には、本実施例においては20mmとした。
(2−6)均熱ローラ70及びそのシフト機構90
本実施例の定着装置500には、ローラ50に対して着脱(接離)可能な均熱部材としての均熱ローラ70が備えられている。このローラ70は、小サイズ記録材が通紙された場合のベルト41の通紙領域以外の異常昇温をローラ50で吸熱し、その吸熱したローラ50の熱を分散し、ベルト41の異常昇温を抑制するために、備えられている。
ローラ70は、熱伝導率が100〜250℃で100W/m・K以上であり、且つ熱容量が100〜250℃で3.0kJ/m3・K以下の材料からなることが好ましい。前記材料はアルミニウム及び銅などであることが好ましい。ローラ70の軸70aの軸径は8[mm]であり、ローラ本体(金属芯金)70bの直径はφ20[mm]であり、前記材料で内部が埋まっている中実構成である。また、表層のトナー離型樹脂層70cとして12μmのPFAコート層を設けたものである。
本実施例において、ローラ70は左右の側板30L・30Rの間でローラ50の下方に配設されている。シフト機構90は均熱ローラ70を加圧ローラ50に対して当接離間するための当接離間手段である。
本実施例においては、ローラ70はシフト機構90によりローラ50に対して持ち上げ移動される。これにより、ローラ70がローラ50に所定に当接した状態の第1の位置F(図4の実線示位置)に移動された状態に保持される。また、ユニット70はシフト機構90により所定に持ち下げ移動される。これにより、ローラ70がローラ50から離間した状態の第2の位置G(図4の2点鎖線示位置)に移動されて保持される。
即ち、ローラ70はローラ50の下側において、軸線方向をローラ50の長手方向にほぼ並行にして、左右の側板30L・30R間に軸受71を介して回転可能に配設されている。左右の軸受71はそれぞれ左右の側板30L・30Rに配設されている縦ガイドスリット部(不図示)に係合させて配設されている。したがって、ローラ70は左右の側板30L・30R間において上記の縦ガイドスリット部に沿って上下方向に移動可能な自由度を有する。
また、左右の側板30L・30Rには軸受92・92を介してカム軸91が回転可能に配設されている。軸91の左右の端部にはそれぞれ側板30L・30Rの外側において左右対称で同形状の偏心カム93が同じ位相で固定して配設されている。側板30L・30Rの外側にはそれぞれ上記のカム93と係合する加圧レバー94が配設されている。
また、各レバー94の上面とそれぞれの側の軸受92・92の下面との間には加圧バネ(弾性部材)95が配設されている。また、軸91の右側の端部には制御部309で制御されるカム軸駆動手段96が伝達手段(不図示)を介して接続されている。駆動手段96は例えばステッピングモータ、ソレノイドなどを用いることができる。
左右のカム93の大隆起部が上向きの回転角姿勢となるように軸91が駆動手段96により回転されることにより、ローラ70がローラ50に対して弾性的接触して加圧(荷重)された状態になり、その加圧状態が保持される。即ち、左右のカム93により左右のレバー94がそれぞれ押し上げられて左右のバネ95がレバー94と軸受92・92の下面との間に圧縮される。そのバネ95の圧縮反力により左右の軸受92・92と共にローラ70が押し上げられてローラ50に対して弾性的に圧接する。
また、左右のカム93の小隆起部が上向きの回転角姿勢となるように軸91が回転されることにより、ローラ70がローラ50に対して加圧解除(抜重)された状態になる。即ち、左右のバネ95の圧縮が解除される。これにより、ローラ70が自重で下がり移動してローラ50から離間した状態に保持される。
ローラ70とローラ50との加圧はバネ95の圧縮反力でローラ70に押し上げ力を作用させている。これにより、ローラ70とローラ50とが圧縮してローラ70とローラ50との間に所定幅の接触ニップ部が形成される。上記の部材91〜96がローラ70をローラ50に対して接離する当接離間手段としてのシフト機構90を構成している。
(2−7)定着動作
画像形成装置のスタンバイ状態においては、定着装置500は、定着モータ53がOFFにされていてローラ50の回転は停止している。機構80は加圧解除状態にされていてニップ部Nの加圧は解除されている。ユニット60のコイル62に対する給電はOFFにされている。板10L・10Rは退避位置であるホームポジションに位置している。ローラ70は下降移動していてローラ50から離間した状態の第2の位置Gに保持されている。
制御部309は、プリントジョブ開始信号(画像形成ジョブ開始信号)の入力に基づいて所定の制御タイミングにて機構80を加圧状態にする。これによりニップ部Nが加圧状態になる。またモータ53をONする。これにより、ローラ50が図4において矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。
このローラ50の回転により、ニップ部Nにおけるローラ50の表面とベルト41の表面との摩擦力でベルト41に回転力が作用する。ベルト41はその内面がパッド43の下面に密着して摺動しながらステー42・パッド43・コア44の外周りを矢印の時計方向にローラ50の回転速度と同じ速度で従動回転する。ベルト41の回転に伴うスラスト方向への移動は左右のフランジ部材45L・45Rのフランジ部45aにより規制される。
ベルト41は、少なくとも画像形成実行時には、制御部309で制御されるモータ53によってローラ50が回転駆動されることで上記のように従動回転する。この回転は、二次転写部T2側から搬送されてくる、未定着トナー画像tを担持した記録材Pの搬送速度とほぼ同一の周速度でなされる。本実施例の場合、ベルト41の表面回転速度が300mm/secで回転し、フルカラーの画像を1分間にA4サイズで80枚、A4Rサイズで58枚定着することが可能である。
制御部309は電源装置64からコイル62に対して、例えば20kHz〜500kHzの交番電流(高周波電流)を供給する。コイル62は交番電流の供給により交番磁束(磁場)を発生する。その交番磁束がコア63により回転しているベルト41の上面側においてベルト41の金属層1aに導かれる。そうすると、金属層1aに渦電流が発生して、その渦電流によるジュール熱により金属層1aが自己発熱(電磁誘導発熱)してベルト41が昇温していく。
即ち、回転するベルト41はユニット60から発生される磁界が存在する領域を通過したときに金属層1aが電磁誘導発熱して全周的に加熱されて昇温する。本実施例において、ベルト41とユニット60のコイル62は厚さ0.5mmのハウジング底板(モールド)61aにより電気絶縁の状態を保つ。そして、ベルト41とコイル62との間隔は1.5mm(底板61aの表面とベルト表面の距離(隙間α)は1.0mm)で一定であり、ベルト41は均一に加熱される。
このベルト41の温度が温度センサTHにより検知される。センサTHはベルト41の通紙域になる部分の温度を検知し、その検知温度情報が制御部309にフィードバックされる。制御部(温度制御手段)309はこのセンサTHから入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(定着温度:所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源装置64からコイル62に対する供給電力を制御している。
すなわち、ベルト41の検出温度が所定温度に昇温した場合、コイル62への通電が遮断される。本実施例では、ベルト41の目標温度である180℃で一定になるように、センサTHの検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させてコイル62に入力する電力を制御して温度調節を行っている。
上記のようにローラ50が駆動され、ベルト41が所定の定着温度に立ち上がって温調された状態において、ニップ部Nに未定着トナー画像tを有する記録材Pがそのトナー画像担持面側をベルト41側に向けてガイド部材33で案内されて導入される。記録材Pはニップ部Nにおいてベルト41の外周面に密着し、ベルト41と一緒にニップ部Nを挟持搬送されていく。
これにより、主にベルト41の熱が付与され、またニップ部Nの加圧力を受けて未定着トナー画像tが記録材Pの表面に熱圧定着(画像加熱処理)される。ニップ部Nを通った記録材Pはベルト41の外周面からベルト41の表面がニップ部Nの出口部分の変形によって自己分離(曲率分離)して定着装置外へ搬送される。
ユニット60が、高温になるベルト41の内部ではなく外部に配置されているので、コイル62の温度が高温になりにくく、電気抵抗も上昇せず高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減する事が可能となる。また、コイル62を外部に配置したことでベルト41の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、ひいては省エネルギー性にも優れていると言える。
本実施例の定着装置500のウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成であるため、例えばコイル62に1200W入力すると約15秒で目標温度である180℃に到達できる。スタンバイ中の加熱動作が不要であるため、電力消費量を非常に低く抑える事が可能である。
(2−8)非通紙部昇温の抑制
図2において、Wmaxは装置500に通紙可能な最大幅の大サイズ記録材の幅サイズ(通紙域)である。本実施例においては、大サイズ記録材は13インチ×19インチ紙で、縦送りである。従って、Wmaxは13インチ(330mm)である。
ここで、本実施例においては、ベルト41の幅(長手寸法)は390mm、加圧ローラ50の幅は370mm、均熱ローラ70の幅は350mmとしている。ベルト41を加熱するコイルユニット60の有効加熱幅は最大通紙幅Wmax(330mm)をカバーするように設定されている。
ベルト41の幅(390mm)は最大通紙幅Wmax(330mm)よりも大きいから、ベルト41の最大通紙幅領域Wmaxの左右外側にそれぞれ幅30mmずつの延長幅部がある。このベルト41の左右の延長幅部をそれぞれ前述した左右の磁束遮蔽板10L・10R(幅20mm)の退避位置としてのホームポジションとしている。
領域AはWmaxよりも幅が小さい小サイズ記録材(装置500に通紙可能な最小幅サイズの記録材の幅に対応する幅領域Wmin(図7)の幅以上)の通紙域である。本実施例の装置においては記録材Pの通紙は中央基準搬送にてなされるものとする。Qはその中央基準線(仮想線)である。領域Bは小サイズ記録材を通紙したときに生じるベルト41とローラ50における非通紙域である。大サイズ記録材の通紙域Wmaxと、通紙した小サイズ記録材の通紙域Aの差領域((Wmax−A)/2)であり、通紙域Aの両側に生じる。
小サイズ記録材を連続的に通紙すると、ベルト41の非通紙域Bは記録材Pの加熱に熱エネルギーが消費されないにも拘わらず、通紙域Aに対応する部分と同様に単位長さ当りの所定の発熱量をもって発熱するので蓄熱を生じる。そのため非通紙域Bに対応するベルト41部分が通紙域Aに対応する部分よりも温度が上がるいわゆる非通紙部昇温現象を生じる。そして、このベルト41の非通紙部昇温によりベルト41に当接する加圧ローラ50も非通紙部対応部分が通紙部対応部分よりも昇温する。
ここで、加熱部材41を高速昇温させるために、加熱部材41の肉厚を薄くして熱容量を小さくすると、加熱部材41の軸直角断面の断面積がきわめて小さくなるために、軸方向への熱伝導が良好でない。この傾向は薄肉なほど顕著であり、熱伝導率の低い樹脂等の材質ではさらに低くなる。これは、熱伝導率をλ、2点間の温度差をθ1−θ2、長さをLとしたとき、単位時間に伝わる熱量Qは、Q=λ・f(θ1ーθ2)/L、で表されるというフーリエの法則からも明らかである。
このことは、加熱部材41の長手方向長さいっぱいの記録材、すなわち最大通紙幅の記録材(大サイズ記録材)を通紙して定着させる場合には問題ない。しかし、それよりも幅の小さい小サイズの記録材を連続で通紙させる場合には、加熱部材41の非通紙域における温度が温調温度よりも上昇し、通紙域における温度と非通紙域における温度との温度差が極めて大きくなってしまう(非通紙部昇温)。
したがって、このような加熱部材41の非通紙部昇温のために、樹脂材料からなる周辺部材の耐熱寿命が低下したり、熱的損傷を被ったりするおそれがある。さらには、小サイズの記録材を連続で通紙させた直後にそれよりも大きき幅サイズの記録材を通紙したときに、部分的な温度ムラによる紙シワや、定着ムラが生じるおそれがある。
このような通紙域と非通紙域との温度差は、搬送される記録材の熱容量が大きく、スループット(単位時間あたりのプリント枚数)を高くするほど広がることになる。このため、薄肉で低熱容量の加熱部材により加熱装置を構成する場合に、スループットの高い複写機などへの適用を困難にしていた。
本実施例においては、小サイズ記録材を通紙する場合における非通紙部昇温を下記a)、b)、c)の3つの制御により適切に抑制するようにしている。
a)分割可動コア63aの移動制御による非通紙部昇温の抑制
前述のように、ユニット60のコア63は、ベルト41の長手方向に沿って配設されている。そして、各種幅サイズの小サイズ記録材の非通紙部昇温の回避に対応できるように長手方向で複数に分割されて個々にベルト41との距離を変化させる方向に単独で移動可能な分割可動コア63aを有している。そして、制御部309で制御されて、個々のコア63aを移動させるコア移動機構65を有する。
制御部309は、装置に通紙される記録材Pが、小サイズ記録材である場合には、複数の分割可動コア63aのうち、通紙される小サイズ記録材の通紙域Aに対応するコア63aについては第1の距離位置Dに位置させる。それ以外のコア63aについては第2の距離位置Eに位置させるようにコア移動機構65を制御する。
本実施例においては、個々のコア63aは機構65により、図4のように、コイル41に対して間隔0.5mmで接近している第1の距離位置Dと、図5のように、コイル41に対して間隔10mmと離れている第2の距離位置Eとに移動可能である。コア63aが第1の距離位置Dにあるときはそのコアが対応しているベルト41部分の発熱効率は非常に高い。これに対して、コア63aが第2の距離位置Eにあるときはそのコアが対応しているベルト41部分の発熱効率は低下する。
制御部309は、プリントジョブ(記録材通紙ジョブ)が開始すると、通紙される記録材のサイズ入力値を読み取る。通紙される記録材が大サイズ記録材である場合には、コア63aの全てを第1の距離位置Dに位置させるように機構65を制御する。小サイズ記録材である場合には、コア63aのうち、通紙される小サイズ記録材の通紙域Aに対応するコア63aについては第1の距離位置Dに位置させ、それ以外のコア63aについては第2の距離位置Eに位置させるように機構65を制御する。
これにより、ベルト41の非通紙域Bに対応する部分の発熱効率が通紙部Aに対応する部分よりも低下することにより、ベルト41およびローラ50の非通紙部昇温が抑制される。
b)磁束遮蔽板10L・10Rの移動制御による非通紙部昇温の抑制
制御部309は、プリントジョブが開始すると、通紙される記録材のサイズ入力値を読み取る。通紙される記録材が大サイズ記録材である場合には、板10L・10Rを退避位置であるホームポジションに保持させたままとする。小サイズ記録材である場合には、駆動手段25により軸22を正回転駆動させて、板10L・10Rをそれぞれベルト41の中央部に向う方向に移動させる。そして、板10L・10Rを両者の間隔が小サイズ記録材の幅にほぼ対応する間隔になる位置まで移動させて軸22の駆動を停止させる。
この板10L・10Rをコア63aの移動機構64と連動して移動することで、コア63aの分割幅よりも細かくベルト41の長手発熱分布を制御してベルト41およびローラ50の非通紙部昇温が抑制される。
c)均熱ローラ70の脱着制御による非通紙部昇温の抑制
制御部100は、プリントジョブが開始すると、通紙される記録材のサイズ入力値を読み取る。そして、大サイズ記録材であるときは、ローラ70がローラ50から離間した第2の位置Gに保持されるように機構90を制御する。そして、小サイズ記録材であるときは、後述する所定の条件下においてローラ70をローラ50に当接させた第1の位置Fに移動するように機構90を制御する。ローラ50に当接したローラ72はローラ50の回転に従動して回転する。そして、ローラ50の長手方向の温度の均一化を促し、ベルト41およびローラ50の非通紙部昇温が抑制される。
本実施例で使用しているトナーの溶融粘度を図9に示す。トナーの溶融粘度はフローテスターで測定した。フローテスターによるトナーの溶融粘度の測定は、フローテスターCFT−500D(株式会社島津製作所製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い、下記の条件で測定を行った。
・サンプル:トナーを1.0g秤量し、これを直径1cmの加圧成型器により荷重20kNで1分間加圧することで成型してサンプルとする。
・ダイ穴径:1.0mm、ダイ長さ:1.0mm、シリンダ圧力:9.807×105(Pa)、測定モード:昇温法・昇温速度:4.0℃/min
上記の方法により、50℃乃至200℃におけるトナーの粘度(Pa・s)を測定した。ここで、温度15℃、湿度15%の環境下において、小サイズ記録材として、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材Pを連続通紙(横送り)した時の通紙枚数に対するベルト41の表面温度の推移を図10に示す。この場合、均熱ローラ70は加圧ローラ50に対して最初から終わりまで常に接触したままとしている。ベルト41の表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト幅の中央部の温度を測定した。
ローラ70がローラ50に常に着した状態であるため、ローラ50の熱がローラ70に奪われ、そしてベルト表面温度も低下する。その結果、記録材からトナーが剥がれてしまうベルト表面温度である175℃を低下して、記録材からトナーが剥がれてしまった。
上記の通紙をした時の、定着装置構成は、コイル62に投入する電力は1200wに設定している。通紙する記録材は小サイズ記録材であるA4サイズであるので、図11に示すように、ユニット60のコア63aは両端部側においてそれぞれ4つずつ第2の距離位置Eに移動させた。磁束遮蔽板10L・10Rの位置は、定着ベルト端部から46mmの位置(記録材端部から外側に16mmの位置)に設定してある。ローラ70はローラ50に対して、常に着したままである。
さらに図11に通紙枚数に対するベルト長手方向の温度分布を示す。ベルト長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。図11に示したように通紙枚数に因らず、非通紙部のベルト表面温度は、ベルトが破壊する温度である、耐久破壊温度を超えることは無かった。
そこで、実施例においては、小サイズ記録材の通紙ジョブにおける非通紙部昇温対策の一つである均熱ローラ70の加圧ローラ50に対する当接制御は、ベルト温度が通紙枚数に対して一番温度が低くなる最下点温度を過ぎてから実行させるようにしている。
本実施例の定着装置500の初期状態(プリントジョブを受け付ける前の状態)におけるユニット60における分割コア63a位置、および磁気遮蔽板10L・10Rの初期位置はA4サイズに対応する位置にされている。具体的には、図11のようにコア63aは端部から4個上げ、磁気遮蔽板10L・10Rの位置は定着ベルト端部から35mmの位置である。ローラ70の初期位置はローラ50に対して脱してある。ローラ50の初期位置はベルト41に対して脱してある。
本実施例の制御を図12に示すブロック図を使って説明する。操作部301またはPC(外部ホスト装置)400から、ユーザが出力する記録材種の情報(用紙サイズおよび用紙種類)が記録材情報処理部1002に送られる。記録材情報処理部1002の情報が、プリンタ制御部309のCPU1000に転送される。
CPU1000は、メモリ1001を参照し、記録材情報処理部1002の情報によって、ユニット60のコア63aの移動制御量、磁気遮蔽板10L・10Rの制御量を判断する。そして、そのコア移動制御量、磁気遮蔽部材制御量を、コア移動制御部1004、磁気遮蔽板制御部1005に転送する。
コア移動制御部1004、磁気遮蔽板制御部1005は、それぞれ駆動手段65、24を制御してコア63aと磁気遮蔽板10L・10Rを所定の位置に移動させる。そしてジョブスタート時のベルト内面温度、及び、印字枚数カウンタ1003の情報が、CPU1000に転送される。CPU1000ではその情報より、メモリ1001を参照し、ローラ70のローラ50に対する着タイミングを判断する。CPU1000はローラ70のローラ50に対する着タイミングであると判断したら、均熱部材制御部1006に指令を出し駆動手段96を駆動させることによりローラ70をローラ50に接触させる。
上記においてカウンタ1003は装置500に対する記録材通紙ジョブにおける記録材通紙枚数をカウントするカウント手段(画像形成回数をカウントするカウント手段)である。
図13に本実施例の制御フローチャートを示した。まず操作部301の操作パネルまたは、PC(外部ホスト装置)400から通紙する記録材Pの種類(サイズ)を設定し、コピーまたは、プリントしたいジョブを画像形成装置に送りジョブ(JOB)をスタートさせる(S11)。各部材(コイル62のコア63a、磁気遮蔽板10L・10R、均熱ローラ70、加圧ローラ50)のホームポジション(HP)検知を行う(S12)。ジョブスタート時(画像加熱処理の実行命令を受けた際)のベルト内面の温度を検知し、閾値(所定の設定温度:本実施例では80℃)未満(所定温度未満)の場合は、以下の制御となる。
その後紙サイズに応じて、コイル62のコア63a、磁気遮蔽板10L・10Rを移動させる(S13、S14)。ローラ50をベルト41に着し、加圧し、ニップ部Nを形成する(S15)。ローラ50を回転駆動させ、ベルト41を回転させる(S16)。コイル62に電流を流し、ベルト41を発熱させ、ベルト41を温調する(S17)。各画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdにおいて、各色の画像を形成し、記録材に転写し、定着し、画像を出力する(S18)。
その後画像形成ジョブが終了であれば、コイル62に流れている電流を遮断し、ベルト41の温調を停止する(S19,20)。ローラ70をローラ50から脱する(S21)。ローラ50をベルト41から脱する(S22)。ユニット60のコア63a、磁気遮蔽板10L・10Rを初期位置(ホームポジション位置)に移動させ、ジョブを終了させる(S23)。
画像形成ジョブが終了でなければ、画像形成枚数が12枚目かをCPU1000が判断する(S24)。画像形成枚数が12枚目以下であれば、引き続き画像形成動作を繰り返す。画像形成枚数が12枚目以上であれば、ローラ70をローラ50に着し、非通紙部昇温を抑制する制御を行う(S25)。その後画像形成動作をジョブが終了するまで行う。
本実施例では、ベルト温度が通紙枚数に対して一番温度が低くなる最下点温度を過ぎてから実行する構成として、画像形成枚数をカウントする構成を用いた。しかし、本発明はこの構成に限定するものではなく、ベルトの温度を検知し、ベルトの温度がジョブの実行開始から最下点を通過したかどうかを判断し、その後にローラ70をロ-ラ50に当接する構成としてもいい。
また、ジョブスタート時のベルト内面温度がある閾値(本実施例では80℃)以上(所定温度以上)の場合は、ローラ50が駆動される前段階で、ローラ70をローラ50に着する。その後の制御は、内面温度がある閾値(80℃)以下の場合と同じである。
本実施例の制御をタイミングチャートを使って図14に示す。図14はA5サイズの記録材を出力するときのタイミングチャートである。図14において、スタートは画像形成ジョブを画像形成装置が受け付けた状態で、ベルト内面温度が閾値(本実施例では80℃)未満の場合である。
通紙サイズがA5であるので、まず、コイルユニット60のコア移動モータ(機構65)が作動して、コア63aを両端部から6個上げる制御を行う。コア63aを動かしている間に、磁気遮蔽板移動モータ(機構20)を作動させて、磁気遮蔽板10L・10Rをベルト端部から80mmの位置に移動させる。その後加圧ローラ脱着モータ(機構80)を駆動させ、ローラ50をベルト41に着し、ニップ部Nを形成する。
次にローラ50を駆動モータ53により駆動させ、ローラ50・ベルト41を回転駆動させる。コイル62に電圧を印加し、ベルト41を温調させる。画像成形を開始し、記録材上に画像を出力する。通紙枚数が所定枚(所定枚数)に達したら、ローラ70の脱着モータ(機構90)を駆動させ、ローラ70をローラ50に着し、ベルト41の非通紙部異常昇温を抑制する。
画像形成が終了したら、温調を停止し、均熱ローラ脱着モータ(機構90)を駆動させ、ローラ70をローラ50から脱する。その後加圧ローラ駆動モータ53を停止し、ローラ50の駆動を停止する。加圧ローラ着脱モータ(機構80)を駆動させ、ローラ50をベルト41から脱する。その後ユニット60のコア移動モータ(機構65)、磁気遮蔽板モータ(機構20)を駆動させ、コア63a及び磁気遮蔽板10L・10Rをホームポジションに移動させ、ジョブを終了させる。
本実施例の定着装置において、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材を連続通紙した時の通紙枚数に対するベルト表面温度の推移を図15に示す。ベルト表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト中央部の温度を測定した。図15より本実施例では、記録材からトナーが剥がれてしまう温度である175℃よりベルト表面温度が低下せず、記録材からトナーが剥がれてしまうことは無かった。
次に本実施例の定着装置500において、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材を80ppmで500枚通紙したときの、通紙枚数に対する、長手方向の温度分布を図16に示す。
長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。図16より、連続通紙枚数が500枚後においても、非通紙部の昇温温度は、耐久破壊温度である230℃以下となり、非通紙部の昇温を抑えることができた。なお、耐久破壊温度よりも定着ベルト温度が高くなってしまうと、ベルトが劣化し、耐久通紙可能枚数が大幅に低減してしまう。
上記の実施例をまとめると次のとおりである。記録材通紙ジョブが装置に通紙可能な最大幅の大サイズ記録材よりも幅が小さい小サイズ記録材である場合には、制御部309はユニット60のコア移動手段65を次のように制御する。即ち、複数の分割可動コア63aのうち、通紙される小サイズ記録材の通紙域に対応するコアについては第1の距離位置Dに位置させ、それ以外のコアについては第2の距離位置Eに位置させる。また、磁束遮蔽部材移動手段20については磁束遮蔽板10L・10Rを退避位置から有効位置に位置させるように制御する。
そして、制御部309は記録材通紙ジョブの受付時におけるセンサTHで検知されるベルト41の温度に応じて均熱部材移動手段90を次のように制御する制御モードを実行可能である。即ち、記録材通紙ジョブの受付時におけるセンサTHで検知されるベルト41の温度が所定の閾値温度の温度以上の時は1枚目の記録材がニップ部Nに突入する前に均熱ローラ70を第2の位置Gから第1の位置Fに移動する制御をする(第2のモード)。所定の閾値よりも低い時はカウント手段1003でカウントされる連続通紙枚数が所定の枚数値(設定値)に達した後にローラ70が第2の位置Gから第1の位置Fに移動する制御する(第1のモード)。
以上説明したように、本実施例の定着装置500を用いると、記録材Pの幅サイズが多種類であっても、非通紙部昇温を充分に回避でき、記録材からトナーが剥がれることの無い定着装置を提供することができる。
また、ジョブ中に均熱ローラ70を着する場合において、記録材Pが転写部T2と定着部Nに跨っている間に着動作をすると、その振動で、転写部T2での画像ずれといった画像不良が生じる可能性がある。そのため、記録材の先端到達を検知する定着入り口センサS(図4)のONタイミングを検知することで、上記条件に当てはまらないタイミングで着する制御を加えると、なお良い。
即ち、画像形成ジョブ中に離間している均熱ローラを当接させる動作を行う場合に、記録材の通紙を停止するとダウンタイムが大きくなる。それを避けるために、通紙中に当接動作を行うと以下の問題が生ずる。記録材が定着ニップ部と転写ニップ部に跨る位置にある場合に、均熱ローラを対象物に当接すると、対象物の回転負荷が増すことで、記録材の搬送性が低下する。そのため、転写ニップ部にある記録材の搬送性が低下するため、画像不良部が生ずる虞がある。
そこで、記録材の搬送方向と直交する幅方向の記録材の幅が通紙可能な最大サイズの幅よりも小さい記録材であって、記録材に画像を転写する転写部と前記ニップ部の長さよりも搬送方向における記録材の長さが長い記録材の場合には次のような制御にする。即ち、このような記録材を連続して通紙して画像を形成する画像形成ジョブの実行中に、記録材の後端が転写部を通過してから次の記録材がニップ部に到達する間に加圧ローラから離間している均熱ローラを加圧ローラに当接する動作を行うようにするものである。
即ち、ニップ部Nよりも記録材搬送方向上流側の記録材搬送路においてニップ部Nに最も近い記録材挟持搬送部(本実施例においては二次転写ニップ部T2)とニップ部Nとの間にセンサ(記録材検知手段)Sを配設する。そして、制御部309はローラ70の均熱部材移動手段90による第2の位置Gから第1の位置Fへの移動を次のように制御する。即ち、センサSの記録材先端検知信号をトリガーにし、通紙中の記録材Pのサイズ(記録材搬送方向aに関する寸法)と搬送速度に基づいて記録材Pが前記記録材挟持搬送部T2とニップ部Nとの両方にニップしていない時に行わせる。
この条件に加え、更に、以下の条件を満たすとより好ましい。ジョブ中にローラ70をローラ50に着する場合においては次のような事象が生じる可能性がある。即ち、ローラ50の表面の熱がローラ70との接触ニップ部から奪われ、温度が下がったローラ50の表面が、ニップ部Nで記録材Pをニップした場合、記録材1枚の中で、ローラ50の表面温度差が生じる。その為、画像コートムラになる可能性がある。特に朝1などの、ローラ70の温度やローラ50の温度が低い場合に発生しやすい。
このため、図17に記載のように、ローラ70をローラ50に当接するタイミングの条件は、上記の条件に加え、以下の条件1と条件2の両方を同時に満たすようにすることで、ローラ70の表面1周分の影響を取り除くことができる。ローラ70はローラ50と着した状態で1周することで、ローラ50表面からの伝熱により温められ、ローラ50との温度差が小さくなるため、コートムラなどの画像不良は発生しない。
条件1:先行する記録材Pの後端がニップ部Nの上流側R1θ(mm)よりも下流側に位置する
条件2:後続の記録材Pの先端がニップ部Nの上流側R1θ+2πr2(mm)よりも上流側に位置する
R1:加圧回転体50の半径(mm) R2:均熱手段(回転体)70の半径(mm)
θ:線bと線cとのなす角度(rad)
線bは加熱回転体41と加圧回転体50との接触点d(ニップ部Nの記録材搬送方向aにおける中央部)と加圧回転体50の中心eを結ぶ線である。線cは加圧回転体50と均熱手段70との接触点f(接触ニップ部の加圧回転体方向における中央部)と加圧回転体50の中心eを結ぶ線である。
[実施例2]
実施例1では均熱ローラ70を加圧ローラ50に着するタイミングは、通紙枚数がある一定枚過ぎたら着する実施例で説明した。本実施例では定着ベルト温度を検知しており、定着ベルトが最下点温度を過ぎたことを検知してから、均熱ローラ70を加圧ローラ50に着する構成である。
磁束調整手段を動作させて、小サイズ記録材に連続して画像を形成するジョブを実行する際に、画像形成開始前の温度検知手段THによる検知温度が設定温度よりも低い場合の均熱ローラ70の加圧ローラ50への当接タイミングは次ぎのようにする。即ち、画像形成開始前の温度検知手段THによる検知温度が設定温度よりも高い場合の均熱ローラ70の加圧ローラ50への当接タイミングより遅くする。
画像形成開始前の温度検知手段THによる検知温度が設定温度よりも低い場合には、画像形成開始前に磁束調整手段の調整位置への移動と均熱ローラ70の加圧ローラ50への当接動作を行う。
画像形成開始前の温度検知手段THによる検知温度が設定温度よりも高い場合には、画像形成開始前に磁束調整手段の調整位置への移動を行い、画像形成開始後の予め設定したタイミングで均熱ローラ70の加圧ローラ50への当接動作を行う。
本実施例の定着装置構成は実施例1と同様であり、温度センサ;サーミスタ(温度検出素子)THをベルト41の幅方向中央内面部の位置に当接させて配設してある。このセンサTH1はベルト41の温度を検知し、通紙通中のベルト41の最下点温度を計測することができる。最下点温度は、環境、紙種などにより変り、事前の検討で、環境、紙種と最下点温度の関係は把握しており、その情報は制御部309のメモリに格納されている。トナーは実施例1と同様である。
本実施例の制御を図18に示すブロック図を用いて説明する。操作部301またはPC(外部ホスト装置)400から、ユーザが出力する記録材種の情報(用紙サイズおよび用紙種類)が記録材情報処理部1002に送られる。そして、記録材情報処理部1002の情報が、プリンタ制御部309のCPU1000に転送される。
CPU1000では、メモリ1001を参照し、記録材情報処理部1002の情報によって、ユニット60のコア63aの移動制御量、磁気遮蔽板10L・10Rの制御量を判断する。そして、そのコア移動制御量、磁気遮蔽部材制御量を、コア移動制御部1004、磁気遮蔽板制御部1005に転送する。
コア移動制御部1004、磁気遮蔽板制御部1005は、それぞれ駆動手段65、24を制御してコア63aと磁気遮蔽板10L・10Rを所定の位置に移動させる。そして、サーミスタ1007(TH)の情報が、CPU1000に転送される。CPU1000ではその情報より、ベルト41の温度がジョブ中に1度最下点温度を過ぎたか判断する。ベルト41の温度がジョブ中に1度最下点温度を過ぎていたら、CPU1000は均熱部材制御部1006に指令を出し駆動手段96を駆動させることによりローラ70をローラ50に接触させる。
図19に本実施例の制御フローチャートを示した。まず操作部301の操作パネルまたはPC(外部ホスト装置)400から通紙する記録材Pの種類(サイズ)を設定し、コピーまたはプリントしたいジョブを画像形成装置に送りジョブをスタートさせる(S11)。各部材(ユニット60のコア63a、磁気遮蔽板10L・10R、均熱ローラ70、加圧ローラ50)のホームポジション検知を行う(S12)。
その後紙サイズに応じて、コア63a、磁気遮蔽板10L・10Rを移動させる(S13、S14)。ローラ50をベルト41に着し、加圧し、ニップ部Nを形成する(S15)。ローラ50を回転駆動させ、ベルト41を回転させる(S16)。コイル62に電流を流し、ベルト41を発熱させ、ベルト41を温調する(S17)。各画像形成ステーションSa、Sb、Sc、Sdにおいて、各色の画像を形成し、記録材に転写し、定着し、画像を出力する(S18)。
その後、画像形成をしていき、1ジョブ内でベルト41の温度が最下点温度を過ぎたかをCPU1000が判断する(S19)。1ジョブ内でベルト41の温度が1度も最下点温度を過ぎていなければ、引き続き画像形成動作を繰り返す。1ジョブ内でベルト41の温度が1度最下点温度を過ぎて、ベルト41の温度が回復していれば、ローラ70をローラ50に着し、非通紙部昇温を抑制する制御を行う(S20)。
画像形成ジョブが終了かCPU1000が判断し、終了でなければ、画像形成動作を引き続き繰り返す(S21、22)。画像形成ジョブが終了であれば、コイル62に流れている電流を遮断し、ベルト41の温調を停止する(S21,23)。ローラ70をローラ50から脱する(S24)。ローラ50をベルト41から脱する(S25)。コア63a、磁気遮蔽板10L・10Rを初期位置(ホームポジション位置)に移動させ、ジョブを終了させる(S26)。
本実施例の定着装置において、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材を連続通紙した時の通紙枚数に対するベルト表面温度の推移を図20に示す。ベルト表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト中央部の温度を測定した。図20より本実施例では、記録材からトナーが剥がれてしまう温度である175℃よりベルト表面温度が低下せず、記録材からトナーが剥がれてしまうことは無かった。
次に本実施例の定着装置500において、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材を80ppmで500枚通紙したときの、通紙枚数に対する、長手方向の温度分布を図21に示す。長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。
図21より、連続通紙枚数が500枚後においても、非通紙部の昇温温度は、耐久破壊温度である230℃以下となり、非通紙部の昇温を抑えることができた。なお、耐久破壊温度よりもベルト41の温度が高くなってしまうと、ベルト41が劣化し、耐久通紙可能枚数が大幅に低減してしまう。
本実施例では、ベルト41の温度が最下点温度を過ぎてからローラ70をローラ50に着する構成で説明したが、この構成に限られるものではない。他の形態としてベルト41の非通紙部の温度を検知しておき、その温度情報に基づいてローラ70をローラ50に着する構成でも良い。
また本実施例では、ベルト41の内面に当接したサーミスタTHの検知温度に基づいて制御した。その他の構成形態として、非接触サーミスタをベルト41の外側に、長手方向移動可能に配置し、ジョブ中常に長手方向に移動し、ベルト41の外周面長手方向の温度を常に検知し、その最も高い温度の情報に基づいてローラ70をローラ50に着する構成でも良い。
即ち、センサTHはベルト41の長手方向に沿ってベルト41に非接触で往復移動可能であり、記録材通紙ジョブの実行中は往復移動されてベルト41の長手方向の温度を検知し続ける。そして、制御手部309は、センサTHから入力する検知温度が所定の閾値を超えたらローラ50が第2の位置Gから第1の位置Fに移動するように均熱部材移動手段90を制御する構成である。
図22はその構成例の概略図である。47はベルト41の外側に並行配設したスクリュー軸である。軸47は装置シャーシ30の左右の側板30L・30R間には軸受(不図示)を介して回転可能に配設されている。軸47にはベルト41に対する非接触型のサーミスタTHを保持させたキャリッジ48を螺合して支持させてある。そして、軸47が制御部309で制御される駆動手段49で正逆回転駆動されることで、キャリッジ48が軸47に沿って往復移動する。これにより、サーミスタTHによってベルト外周面長手方向の温度が非接触で検知され、その検知情報が制御部309に入力する。
なお、キャリッジ48は往復移動中において安定に姿勢が保持されるようにガイド部材(不図示)により姿勢の保持がなされる。
以上説明したように、本実施例の定着装置を用いると、記録材のサイズが多種類であっても、非通紙部昇温を充分に回避でき、記録材からトナーが剥がれることの無い定着装置を提供することができる。
[その他の装置構成]
1)加熱部材41はローラ体であってもよい。また複数の張架部材間に懸回張設して循環移動される可撓性を有するエンドレスベルト体にすることもできる。
2)加熱部材41の内側に磁場発生手段60を配設した構成にすることもできる。また、磁場発生手段60のコイル62とコア63の何れか一方を加熱部材41の外側に、他方を内側に配設した構成にすることもできる。
3)加圧部材50をエンドレスベルト体にした構成にすることもできる。
5)本発明に係る画像加熱装置は、実施形態の定着装置500としての使用に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)としても有効に使用することができる。