JP5812519B2 - ガス分解素子、電気化学反応素子およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
また、燃料電池については多くの研究開発が行われて、産業用および家庭用、および携帯電子機器用の電源に用いる実用化が進んでいる。
燃料電池方式によるガス分解装置では、とくに装置の小型化、メンテナンスフリーを指向する場合、固体電解質の利用が必要であるが、ガス処理能力を実用レベルにまで向上させることが難しい状況にある。その理由の1つは、燃料電池の心臓部ともいうべき、膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)は、大部分が、空気極での酸素分子の分解で得られる酸素イオンを、固体電解質を経て燃料極にまで移動させ、その燃料極での酸化反応によって除害気体を分解させる方式をとっていることにある。酸素イオンが固体電解質を通って燃料極にいたる時間が反応効率を律速しており、望ましい効率レベルに到達しにくくしている。現状、実用レベルの反応効率を得るために、900℃程度に昇温して、上記の酸素イオンの移動速度を高めることが行われている。このため、装置の各部材を耐熱性にしなければならず、高価な装置とならざるを得ない。
一方、燃料電池では、ガス分解装置と異なり除害対象のガスをppmオーダーにまで分解する必要はなく、高濃度の水素含有気体を循環させて所定レベルの反応効率を保つことができる。この点では反応効率を高くすることはでき、温度なども幾分は低くすることができる。しかし、反応効率をより高くしなければならない状況は同じである。圧力損失等の問題も上記の反応効率の向上のために解決しなければならない問題である。
さらにプロトン導電性の固体電解質を用いると、燃料極において燃料気体はプロトンを引き抜かれた後の気体が排出される。従来のように酸素イオン等が結合して水蒸気が発生することはない。燃料気体は、燃料極でプロトンを引き抜かれた後ではモル数を減少させた分解後の気体となる。この結果、気密性を要する燃料気体の流路において圧力損失の増大は起きず、むしろ圧力損失は低下する。従来、実用化の成否を左右した圧力損失の増大を防ぐことができる。
これによって、固体電解質に限らず積層体全体を連続して、組成および厚みを高精度に制御しながら形成することができる。製造能率を高めることができる。
これによって、多孔質基体上に容易に積層体を配置して取り扱いが容易な多孔質基体を得ることができる。
これによって、多孔質基体上に簡単に燃料極または空気極の層を形成することができる。多孔質基体に積層体を形成した後、除去可能な材料を除去する。また、前記表層が揮発性の材料(自然になくなる材料)で形成されたのであれば、放置してもよい。
PLD法は、堆積物(層)のターゲットからの組成ずれを小さくすることができる。このため、上記のMEAなどのセラミックス、金属等を含む材料の堆積をするのに適している。堆積物の組成と、ターゲットの組成とを比べながら、組成ずれの傾向を補償しながらターゲットの組成を決めることができる。
これによって、簡単に大容量化した電気化学反応素子を得ることができる。
これによって、高効率のガス分解素子を容易に製造することができる。
上記の3族原子がドープされたバリウムジルコネートは、電子は通さないがプロトン(H+)を透過することができる。プロトンは、酸素イオン(O2−)に比べて格段に移動速度が大きい。このため、プロトンによる固体電解質の移動が、対象とする電気化学反応を律速することがなくなるか、または律速する場合には反応速度の絶対値は高いものであり、実用レベル以上となる。
また、イオンによる固体電解質の移動時間を短縮するために行っていた高温保持についても、その温度を数百℃低下させることができる。このため、各部材の耐熱性のグレードを下げることができ、経済性を向上させることができ、さらに高温保持のための電力費用も低減できる。
さらに、燃料極では、ガスは、酸素イオンと結合しながら分解するのではなくプロトンを抜かれるだけなので、反応後に体積を減じる。このため、燃料極側のガス通路で大きな問題となる圧力損失の増大を解消することができる。圧力損失の抑制は、この種の装置にとって、大きな利点となる。
酸素イオンが固体電解質を通る場合、燃料極側で水(水蒸気)を生成し、その気体の体積が反応後に増大することも上記のように問題である。しかし、その他に、水蒸気は、装置の出口側で温度が低い箇所で、ガスの素通り防止用のめっき多孔体等に結露して孔を塞ぐことで、大きな圧力損失の増大をまねく。プロトンが固体電解質を通ることで、水蒸気は空気極側で生じることになる。空気極において気密性は不要であり、通常、開放されているので、上記の圧力損失の問題は生じない。
なお、固体電解質は、ガス除害に用いて、アンモニアなどの異臭を放つガスを対象にする場合は、気体漏れがあってはならず、緻密であることが要求される。
プロトン導電性の固体電解質であっても、薄い方が、反応効率上、望ましい。本発明では、少なくとも固体電解質は気相法で形成することを前提にするので、厚みを薄く高精度に制御することができる。しかし、厚み10nm未満ではポーラスになるおそれがあり、たとえばアンモニア等の除害目的には不適当である。また厚みが1000nmを超えると、プロトン導電性の固体電解質の特徴を生かすことができず、たとえば、温度を望ましい範囲にまで低くできない。
ニッケルは金属であり、電子伝導性があることは周知であるが、プロトン導電性もある。ニッケルを含むことで、燃料極は、上記バリウムジルコネートと同様に、プロトンの移動を円滑化することができる。空気極においても、電子導電性およびプロトン導電性を兼備するニッケルを含むことができる。
気相法によって形成された積層体は、強度的に脆弱で扱いにくい。基体上に積層体を配置することで、取り扱い容易性を格段に高めることができる。この場合、燃料極は多孔質であり、気体が燃料極に絶えず供給されていなければ反応は効率よく円滑に進まない。燃料極が接している基体を多孔質にすることで、気体の燃料極への不断の供給は確保される。
電気化学反応を円滑に進行させるには、空気中の酸素が絶えず空気極に供給されなければならない。このため、空気極が接している基体を多孔質にすることで、空気または酸素の空気極への供給は確保される。
これによって、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを、組成も、厚みも、高精度で形成することができる。この結果、高効率の電気化学反応素子を容易に作製することができる。
これによって、酸化物等を含む複雑な組成を有する層を、能率よく、容易に、精度よく形成することができる。
気孔率を高い範囲までとれる金属体を基体にすることで、各電極への気体の供給が阻害されない。また、金属めっき多孔体は、変形自由のシート状なので、金属めっき多孔体を所望の形状にして、その上に積層体を形成することで、電気化学反応素子を任意の形状に製造することができる。
これによって、一方面から他方面への微量の漏れも許されないアンモニア等の分解において、緻密な固体電解質と枠体とで、それほど高い加工精度や気密性保持のための特殊材料を用いることなく、比較的容易に、漏れを防止することができる。
これによって、気相法では小さいサイズの積層体しか製造できない短所を補うことができる。積層体支持体は積層体または多孔質基体を、これらの表裏面を暴露状態で支持できれば、どのような形状、形態、サイズであってもよい。
これによって、多孔質の材料を多用しながら、一方面から他方面への漏れを容易に防止することができる。
これによって、多孔質の材料を多用しながら、空気極5と燃料極2の間で隔離性または気密性を維持できる
これによって、小型化および高集積化が可能で、高能率の、ガス分解素子を得ることができる。
図1は、本発明の実施の形態1における電気化学反応素子におけるMEA7を示す図である。このMEA7では、イオン導電性の電解質1をはさんで、燃料極(アノード)2と、空気極(カソード)5とが、配置されている。アノード2の外側にはアノード集電体を兼ねた多孔質基体9が位置している。多孔質基体9上に、MEA7が積層されているといえる。固体電解質1は、燃料気体と空気との相互混入を防ぐため、多孔質ではなく緻密な固体からなり、3族原子のイットリウム(Y)等を含むバリウムジルコネート(BaZrO3)1kから形成される。燃料極2は、ニッケル(Ni)粒子と、やはり3族原子をドープされたバリウムジルコネート2kとを含む多孔質体である。また、空気極5は、ペロブスカイト型酸化物粒子、たとえばLSM粒子51からなる多孔質体である。
多孔質基体9は気孔率が高い多孔質の金属であり、たとえば三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つめっき多孔体を用いることができる。その典型材として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット(商標登録)を用いることができる。
多孔質基体9:0.1mm以上数mm以下
燃料極2:30nm以上10μm以下
固体電解質1:10nm以上1000nm(1μm)以下
空気極5:30nm以上10μm以下
上記のうち、固体電解質1は、プロトン(H+)が燃料極2から空気極5へと移動する通過部であり、ここの通過時間が短いほうが反応効率を高める上で好ましい。このため、固体電解質1の厚みが1μmより大きいと、プロトンの移動に時間がかかり、反応能率の阻害要因となる。また固体電解質1の厚みが10nm未満では、孔を完全に塞ぐことができず、貫通孔が生じて、燃料気体と空気との相互混入のおそれを生じる。
燃料極2および空気極5では、それぞれに導入された気体が電極の内部に進入して流動しながら、十分な量、電気化学反応をしなければならないので、ある程度の厚みが必要である。
(アノード反応):2NH3→N2+6H++6e−
このアンモニア分解において、燃料極2中のNi粒子21は、このアンモニア分解を促進する触媒作用を有する。分解反応の結果、生じた窒素(N2)ガスは、そのまま流れて排気される。上記のアノード反応における気体の体積は、2モル分のアンモニア気体が、1モル分の窒素ガスになる。この結果、燃料ガスの流路では、分解によって体積減少が生じ、圧力損失は増大しない。これは、気密性を要する燃料ガスを流す場合、非常に大きな利点となる。
アノード反応で生じたプロトンH+は、燃料極2中のBaZrO3粒子2kおよびNi粒子21を通って、固体電解質1中のBaZrO3粒子1kを経て、空気極5に到達する。なお、BaZrO3粒子について、ドープされた原子の限定はとくに断らない限り省略する。また、アノード反応で生じた電子は、燃料極2内のNi粒子21を通って外部回路を経て、空気極5に到達する。
BaZrO3粒子1k,2kは、プロトンを通し、また、Ni粒子21は、プロトンおよび電子を通す。
(カソード反応):(3/2)O2+6H++6e−→3H2O
外部回路からの電子および固体電解質1からのプロトンは、共に、空気極5を形成するペロブスカイト型酸化物、たとえばLSM粒子51内を通ることができる。このため、酸素分子と、電子と、プロトンとが会合する箇所で、効率よく水分子(H2O)を生成することができる。上記の会合箇所または反応箇所は、LSM粒子51の滑らかな箇所よりは、突部などの特異な箇所のほうが反応の頻度は高いと考えられる。
カソード反応では、3/2モル分の酸素気体が、3モル分の水分子となり、反応の結果、2倍に体積膨張する。しかし、空気極5に導入される空気または酸素分子は、アンモニアのように気密性を要しない。一部または全部、開放されていてもよい。導入といっても、単に、空気に接していればよい。このため、空気極5の側では圧力損失は、成否に影響する大きな問題にはならない。
酸素イオンO2−は、2p軌道一杯に電子が配置されるが、プロトンは電子を持たない原子核のみの裸のイオンである。このため、プロトン導電性の固体電解質を用いた場合、プロトンの固体電解質中の移動は、その電気化学反応を律速しないか、または律速する場合は、反応速度を大きく向上させることになる。いずれにしても、プロトン導電性の固体電解質を用いることで電気化学反応の反応能率は大きく向上する。
さらに、本実施の形態では、気相法またはPLD法によって、少なくとも上記の固体電解質1を形成する。このため、緻密性を保ちながら非常に薄い膜を精度良く形成することができる。たとえば、1オーダ小さい厚みの緻密な膜を精度よく形成することができる。
プロトン導電性という因子を考慮しないで、固体電解質の厚みという因子だけで、従来のMEAよりも反応速度を1オーダ高めることができる。
また、この反応能率の向上を、加熱温度の低下という形にすることもできる。たとえば酸素イオン導電性の反応能率を所定レベル以上にするために、900℃程度に保持していた。プロトン導電性の固体電解質を用いることで、たとえば数百℃、温度を下げることができる。この結果、従来、高価な耐熱性の材料を使用していた箇所を、より耐熱性が低い安価な材料で置き換えることができる。加熱のための電力代などのランニングコストも低減することができる。
さらに、上記のように、燃料気体の流路における圧力損失の問題を解消することができる。
(酸素イオン導電性の場合のアノード反応):2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−
(酸素イオン導電性の場合のカソード反応):O2+4e−→2O2−
しかも、燃料極2で発生する水蒸気は、温度が低下する箇所に置かれた、素通り防止のための多孔質体において孔を塞ぐように結露する。このため圧力損失に対してさらに深刻な問題を生じていた。
しかし、上記のように、プロトン導電性の固体電解質を用いることで、燃料極2の側では水蒸気は発生せず、かつ、体積収縮が生じる。このため、圧力損失の問題は完璧に回避される。すなわち、プロトン導電性の固体電解質1を用いる利点は次のとおりである。
(e1)電気化学反応の反応能率を向上することができる。プロトン導電性の固体電解質1を気相法またはPLD法で形成することで、高精度で厚みの小さい緻密な層を形成できるので、反応効率の向上をさらに高めることができる。
(e2)燃料極側での圧力損失の増大を防止することができる。それは、燃料極では、体積収縮の反応が起きること、および水蒸気が発生しない、ことによる。
アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。Ni粒子21は良導体である。電子e−は、Ni粒子21を、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、Ni粒子21を通って外部回路に巡回される。なお、Ni粒子21は、部分的に酸化していてもよい。Ni粒子21が一部酸化されたNi酸化物は、NH3等の分解を促進してガス分解の触媒として機能する。しかしアノード反応は還元反応なので、Ni酸化物は還元されてNiに戻りやすい。
プロトン導電性の固体電解質1を用いた場合、Niがプロトン導電性および電子導電性であることから、燃料極2にNi粒子を含ませることで、燃料極の高性能化をはかることができる。すなわち、小型化しながら、電流密度または反応密度の高い、燃料極2を得ることができる。
多孔質基体9には、上述のように、セルメットを用いるのがよい。多孔質基体9は、回転する基板ホルダ35に固定されており、同様に回転していて、堆積物は均等に分布される。
(s1)燃料極2を構成する、Ni粒子21およびY含有BaZrO32kを分散して、粘度調整した溶媒を作製する。この溶媒を薄く、セルメット9の表層に塗布する。次いで、乾燥する。このあと、焼結してもよいし、しなくてもよい。厚みは、上述の範囲内で、数μm以下にするのがよい。
(s2)燃料極2の層の上に、PLD法によって、Y含有BaZrO31kからなる緻密な固体電解質1の層を形成する。この固体電解質1の層は、厚み10nm以上1000nm(1μm)以下、望ましくは0.1μm以下にするのがよい。
(s3)空気極5は、PLD法によって連続して形成してもよいし、ペロブスカイト型酸化物の粒子51を分散し、粘度調整した溶媒を塗布してもよい。厚みは、燃料極2の厚みと同等にするのがよい。ペロブスカイト型酸化物としては、とくに限定しないが、たとえばLSM、LSCF、LSGM、LSGMC、BSCFなどを用いるのがよい。
焼結は、すべての層を形成したあと、まとめて共焼結してもよい。溶媒を塗布して層を形成する場合には、いずれかの焼結は必要であるが、PLD法のみでMEAのすべての層を成膜した場合には、焼結工程は不要である。Y含有BaZrO3を含む層1k,2kを、溶媒塗布→焼結の工程で形成する場合、焼結温度は1600℃〜1700℃という非常な高温が必要である。しかし、PLD法によって、Y含有BaZrO3を含む層1k,2k形成する場合、基板温度は800℃程度でよい。この点は、PLD法または気相法によってY含有BaZrO3を含む層1k,2kを形成する場合の大きな利点である。すなわち、PLD法または気相法を用いた場合、基板温度800℃程度で成膜したY含有BaZrO3を含む層1k,2kは、焼結工程を経ることなく、そのままで正常に機能する。したがって、少なくとも、Y含有BaZrO3を含む層である、固体電解質1および燃料極2は、PLD法または気相法で成膜するのがよい。1600℃〜1700℃という高温炉は、簡単に入手できる装置ではなく、維持管理も容易ではない。3族原子含有BaZrO3を、上述のPLD法または気相法で形成することで、装置に関する困難性を解消することができる。
多孔質基体9および上記の樹脂の温度が比較的低ければ、ターゲット33の組成に近い層2,1,5が形成される。RHEED(Reflection High Electron Energy Diffraction)によって表面を観察しながら成長できる。
図6は、本発明の実施の形態2における電気化学反応素子におけるMEA7を示す図である。このMEA7では、多孔質基体9に、直接、空気極5が接して、多孔質基体9/空気極5/固体電解質1/燃料極2、の順序に積層されている点が、実施の形態1と相違する。その他の点では、実施の形態1と同じである。すなわち、固体電解質1は、3族原子のイットリウム(Y)等をドープされたバリウムジルコネート(BaZrO3)1kから形成される。また、燃料極2は、やはり3族原子をドープされたバリウムジルコネート2kと、ニッケル(Ni)粒子とを含む多孔質体である。また、空気極5は、ペロブスカイト型酸化物の粒子からなる多孔質体である。多孔質基体9についても、セルメット(商標登録)を用いることができる。
空気極5では、セルメット9と接していても、基本的に気密性は不要であり、開放されているので、圧力損失増大の問題は生じない。
(t1)空気極5を構成する、ペロブスカイト型酸化物の粒子51を分散して、粘度調整した溶媒を作製する。この溶媒を薄く、セルメット9の表層に塗布する。次いで、乾燥する。このあと、焼結しておくのがよい。厚みは、上述の範囲内で、数μm以下にするのがよい。
(t2)空気極5の層の上に、PLD法によって、Y含有BaZrO31kからなる緻密な固体電解質1の層を形成する。この固体電解質1の層は、厚み10nm以上1000nm(1μm)以下、望ましくは0.1μm以下にするのがよい。
(t3)燃料極2は、Y含有BaZrO32kを含むので、PLD法によって連続して形成するのがよい。
上記の方法によれば、(t1)において空気極5の形成に焼結を行い、その後は焼結することなくMEA7を形成することができる。(t1)における空気極5のための焼結は、Y含有BaZrO3を含まないので、比較的低い温度、たとえば1300℃程度またはそれより低温で焼結することができる。
図7は、本発明の実施の形態3における電気化学反応素子10Mを示す図である。この電気化学反応素子10Mでは、電気化学反応素子10が複数配列されている。図7Aは支持部材41に接触する側を空気極5として、電気化学反応素子10の外側に燃料ガスを通す構成とした図である。この場合、電気化学反応素子10は、実施の形態2における図6に示すものを用いることになる。
また、図7Bは、反対に、支持部材41に接する側を燃料極2として、外側に空気を通す構成とした図である。この場合、実施の形態1における図1に示す電気化学反応素子10を用いることになる。
上記の図7Aおよび図7Bに示すように、複数の素子10を配置した集合体10Mでは、確実に処理能力が増大する。この結果、気相法によって小サイズのものしか成長できない場合であっても、それを補って大きな処理能力を有する電気化学素子10Mを得ることができる。気相法によって形成できる層のサイズは、たとえば2cm×3cmであるが、これを数十個〜数百個、配列することで、大きな容量の電気化学反応素子10Mを得ることができる。なお、図7A,図7Bについては、支持部材41は、平面的な構成とみてもよいし、筒体を形成しているとみてもよい。後者の場合、筒の縦断面の一方の断面図に位置する電気化学反応素子10の配列とみることができる。
上記の隔離性または気密性の問題は、気相法により薄膜の形成およびその薄膜のいくつかが多孔質であることに起因している。本形態の場合、燃料極2および空気極5が多孔質である。
図8は、本発明の実施の形態4における電気化学反応素子10Mを示す図である。実施の形態3における電気化学反応素子10Mにおける隔離性または気密性を向上させた点に特徴がある。図8Aは、電気化学反応素子10における積層構造を示し、図8Bは、電気化学反応素子10の配列構造を示す。
図8Aに示すように、本実施の形態のMEA7の端部には、枠体13(離隔部材)が配置されている。枠体13は、多孔質基部9の端において、当該多孔質基部9の端とその端からはみ出るように位置している。多孔質基体9に接して位置する電極(空気極5または燃料極2)の高さが、枠体13の高さより低いことが重要である。緻密な固体電解質1は、枠体13と電極(5又は2)との段差を埋めて、さらに枠体13を覆うように配置される。この固体電解質1を被覆して、多孔質の電極(2又は5)が配置される。
上記の構造によれば、たとえばアンモニアと空気との離隔は、支持部材41と枠体13との水平界面13b、および枠体13と緻密な固体電解質1との水平界面13a、によって保持される。支持部材41、枠体13、および固体電解質1は、いずれも緻密な固体である。このため、気密性を容易に確保することができる。
実施の形態4は、支持部材41を備える。支持部材41は、上下面を貫通するように開口部を備えた形状であり、図8Aの断面図においては、多孔質基体9が記載されている部分が支持部材41の開口部に相当する。支持部材41の上面、下面は必ずしも平らである必要はないが、好ましくは略平らに形成されている。
実施の形態4はさらに、支持部材41の開口部に挿入される多孔質基体9を備え、この多孔質基体9は、支持部材41の上面とともに略平らな一面を形成する。好ましくは、支持部材41の開口部の内側面が、多孔質基体9の側面に接している。
燃料極2または空気極5は、前記枠体13の開口部内であって前記多孔質基体9上に形成される。燃料極2または空気極5の厚みは、前記枠体13の高さより小さい。固体電解質1は、前記枠体13と、前記燃料極2または空気極5との段差を埋めるように、前記燃料極2または空気極5上及び枠体13上に形成される。さらに、固体電解質1上に空気極5または燃料極2が形成される。
同様に、支持部材41は、空気極5と燃料極2の間で隔離性または気密性を維持できる材質であれば特に限定されないが、好ましくは、インコネル、SUS、より好ましくはSUS430である。
支持部材41は、上下面を暴露状態で支持できれば、どのような形状、形態、サイズであってもよい。
支持部材41内にセルメット9を配置し(支持部材41の内壁にセルメット固定用に突出部を設けても良い)、その上に電極(5又は2)よりひと回り大きい開口部を持つシート状マイカ13を配置する。最後にシート状マイカ13を押し潰しながら、MEAを配置することでリークを抑制した構造を製造する。
表1は、本発明の電気化学反応素子等を適用できる他のガス分解反応を例示する表である。ガス分解反応R1は、上記の実施の形態1等で説明したアンモニア/酸素の分解反応である。その他、ガス分解反応R2〜R20のどの反応に対しても本発明の電気化学反応素子は用いることができる。すなわち、アンモニア/水、アンモニア/NOx、水素/酸素/、アンモニア/炭酸ガス、VOC(揮発性有機化合物:volatile organic compounds)/酸素、VOC/NOx、水/NOx、などに用いることができる。
Claims (32)
- 多孔質の燃料極、固体電解質および多孔質の空気極からなる積層体を備える電気化学反応素子を製造する方法であって、
前記燃料極または空気極の上に、気相法によって、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含む固体電解質を形成する工程を備え、
多孔質基体上に前記積層体を形成する前に、除去可能な材料によって該多孔質基体の表面に面一な表層を形成し、次いで、前記積層体を形成することを特徴とする、電気化学反応素子の製造方法。 - 前記燃料極、固体電解質および空気極からなる積層体を、気相法によって形成することを特徴とする、請求項1に記載の電気化学反応素子の製造方法。
- 前記多孔質基体に前記燃料極または前記空気極を接するようにして、該多孔質基体上に前記積層体を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学反応素子の製造方法。
- 前記気相法をパルスレーザー堆積法(PLD:Pulsed Laser Deposition)とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学反応素子の製造方法。
- 積層体支持部材を準備して、前記積層体、または該積層体が位置する前記多孔質基体を、複数個、並列および/または直列に、前記積層体支持部材に表裏面を暴露した状態で配置することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学反応素子の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で製造した電気化学反応素子を用いることを特徴とする、ガス分解素子の製造方法。
- 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
前記燃料極が、前記バリウムジルコネートを含むことを特徴とする、電気化学反応素子。 - 前記固体電解質の厚みが10nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項7に記載の電気化学反応素子。
- 前記空気極が、ペロブスカイト型酸化物の一種以上を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の電気化学反応素子。
- 前記燃料極および空気極の少なくとも一方が、ニッケル(Ni)を含むことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記燃料極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記空気極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 前記多孔質基体からはみ出すように該多孔質基体の四周に沿って、断面矩形の枠体が位置し、前記燃料極または空気極は、該枠体内の高さ未満に位置し、前記固体電解質はその枠体内を充填してその枠体の上面を覆うように位置し、前記空気極または燃料極は該固体電解質上に位置することを特徴とする、請求項11または12に記載の電気化学反応素子。
- 積層体支持部材を備え、前記積層体、または該積層体と多孔質基体を含む組立部材が、複数個、並列および/または直列に、前記積層体支持部材に表裏面を暴露した状態で配置されたことを特徴とする、請求項7〜13のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 前記積層体支持部材は開口部を有し、該開口部に前記多孔質基材が嵌め入れられて前記枠体が開口部上面の縁に当接することで配置されることを特徴とする、請求項14に記載の電気化学反応素子。
- 上下面を貫通するように開口部を有する支持部材と、前記支持部材の前記上面とともに略平らな一面を形成するように、該開口部に挿入されている多孔質基体と、前記略平らな一面上であって、少なくとも前記支持部材と多孔質基体の境界線を覆うように配置される枠体と、前記枠体の内側であって前記多孔質基体上に形成され、前記枠体の高さより薄い厚みを有する燃料極または空気極と、前記枠体と、前記燃料極または空気極との段差を埋めるように、前記燃料極または空気極上及び前記枠体上に形成される固体電解質と、前記固体電解質上に形成される空気極または燃料極を含むことを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- ガスを分解するために請求項7〜16のいずれか1項に記載された電気化学反応素子を用いたことを特徴とする、ガス分解素子。
- 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
前記空気極が、ペロブスカイト型酸化物の一種以上を含むことを特徴とする、電気化学反応素子。 - 前記固体電解質の厚みが10nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項18に記載の電気化学反応素子。
- 前記燃料極および空気極の少なくとも一方が、ニッケル(Ni)を含むことを特徴とする、請求項18または19に記載の電気化学反応素子。
- 多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記燃料極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記空気極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 前記多孔質基体からはみ出すように該多孔質基体の四周に沿って、断面矩形の枠体が位置し、前記燃料極または空気極は、該枠体内の高さ未満に位置し、前記固体電解質はその枠体内を充填してその枠体の上面を覆うように位置し、前記空気極または燃料極は該固体電解質上に位置することを特徴とする、請求項21または22に記載の電気化学反応素子。
- 積層体支持部材を備え、前記積層体、または該積層体と多孔質基体を含む組立部材が、複数個、並列および/または直列に、前記積層体支持部材に表裏面を暴露した状態で配置されたことを特徴とする、請求項18〜23のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- 前記積層体支持部材は開口部を有し、該開口部に前記多孔質基材が嵌め入れられて前記枠体が開口部上面の縁に当接することで配置されることを特徴とする、請求項24に記載の電気化学反応素子。
- 上下面を貫通するように開口部を有する支持部材と、前記支持部材の前記上面とともに略平らな一面を形成するように、該開口部に挿入されている多孔質基体と、前記略平らな一面上であって、少なくとも前記支持部材と多孔質基体の境界線を覆うように配置される枠体と、前記枠体の内側であって前記多孔質基体上に形成され、前記枠体の高さより薄い厚みを有する燃料極または空気極と、前記枠体と、前記燃料極または空気極との段差を埋めるように、前記燃料極または空気極上及び前記枠体上に形成される固体電解質と、前記固体電解質上に形成される空気極または燃料極を含むことを特徴とする、請求項21〜25のいずれか1項に記載の電気化学反応素子。
- ガスを分解するために請求項18〜26のいずれか1項に記載された電気化学反応素子を用いたことを特徴とする、ガス分解素子。
- 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記燃料極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていて、
前記多孔質基体からはみ出すように該多孔質基体の四周に沿って、断面矩形の枠体が位置し、前記燃料極または空気極は、該枠体内の高さ未満に位置し、前記固体電解質はその枠体内を充填してその枠体の上面を覆うように位置し、前記空気極または燃料極は該固体電解質上に位置することを特徴とする、電気化学反応素子。 - 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記空気極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていて、
前記多孔質基体からはみ出すように該多孔質基体の四周に沿って、断面矩形の枠体が位置し、前記燃料極または空気極は、該枠体内の高さ未満に位置し、前記固体電解質はその枠体内を充填してその枠体の上面を覆うように位置し、前記空気極または燃料極は該固体電解質上に位置することを特徴とする、電気化学反応素子。 - 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記燃料極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていて、
上下面を貫通するように開口部を有する支持部材と、前記支持部材の前記上面とともに略平らな一面を形成するように、該開口部に挿入されている多孔質基体と、前記略平らな一面上であって、少なくとも前記支持部材と多孔質基体の境界線を覆うように配置される枠体と、前記枠体の内側であって前記多孔質基体上に形成され、前記枠体の高さより薄い厚みを有する燃料極または空気極と、前記枠体と、前記燃料極または空気極との段差を埋めるように、前記燃料極または空気極上及び前記枠体上に形成される固体電解質と、前記固体電解質上に形成される空気極または燃料極を含むことを特徴とする、電気化学反応素子。 - 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
多孔質基体をさらに含み、該多孔質基体と前記空気極が接するように、該多孔質基体上に前記積層体が形成されていて、
上下面を貫通するように開口部を有する支持部材と、前記支持部材の前記上面とともに略平らな一面を形成するように、該開口部に挿入されている多孔質基体と、前記略平らな一面上であって、少なくとも前記支持部材と多孔質基体の境界線を覆うように配置される枠体と、前記枠体の内側であって前記多孔質基体上に形成され、前記枠体の高さより薄い厚みを有する燃料極または空気極と、前記枠体と、前記燃料極または空気極との段差を埋めるように、前記燃料極または空気極上及び前記枠体上に形成される固体電解質と、前記固体電解質上に形成される空気極または燃料極を含むことを特徴とする、電気化学反応素子。 - 電気化学反応に用いられる素子であって、
多孔質の燃料極、固体電解質、および多孔質の空気極が、前記固体電解質を挟むように形成された積層体を含み、
前記固体電解質が、3族原子がドープされたバリウムジルコネートを含み、
積層体支持部材を備え、前記積層体、または該積層体と多孔質基体を含む組立部材が、複数個、並列および/または直列に、前記積層体支持部材に表裏面を暴露した状態で配置されていて、
上下面を貫通するように開口部を有する支持部材と、前記支持部材の前記上面とともに略平らな一面を形成するように、該開口部に挿入されている多孔質基体と、前記略平らな一面上であって、少なくとも前記支持部材と多孔質基体の境界線を覆うように配置される枠体と、前記枠体の内側であって前記多孔質基体上に形成され、前記枠体の高さより薄い厚みを有する燃料極または空気極と、前記枠体と、前記燃料極または空気極との段差を埋めるように、前記燃料極または空気極上及び前記枠体上に形成される固体電解質と、前記固体電解質上に形成される空気極または燃料極を含むことを特徴とする、電気化学反応素子。
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