JP5812203B2 - クラッチ装置および操舵装置 - Google Patents
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Description
本発明は、クラッチ装置に関し、特に車両操舵装置に用いられるクラッチ装置に関する。
近年、いわゆるステアバイワイヤシステムと称される自動車の操舵に関するシステムが実用化へ向けて種々開発されている。従来の車両は、ステアリングホイールと操舵輪がラックアンドピニオンのような機構を通じて機械的に結合されているものが一般的である。しかし、ステアバイワイヤシステムにおいては、これらの機械的接続はなく、運転者からの入力、例えばトルクや操舵角度をセンサで検出し、また他の車両センサからの情報とあわせて、車両の走行状態に適した舵角を求め、その舵角指令値を操舵用アクチュエータに送り、実際に車輪の転舵を行うものである。
ステアバイワイヤシステムを採用する場合、システムが失陥した場合に操舵性能を確保するために、ステアバイワイヤシステムとは別途にステアリングホイールと操舵輪とを機械的に結合する結合機構または、それに類する機構、いわゆるフェールセーフのための機構を準備しておくことが一般的である。このような機構として、例えば、遊星ギヤクラッチを備えた操舵装置が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の操舵装置は、ロック部が開放された状態であっても、ステアリングホイールとタイヤとが遊星ギヤクラッチを介して接続されており、路面からの入力がステアリングホイールに伝達される。そのため、操舵の際のフィーリングには改善の余地がある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操舵装置における操舵フィーリングを向上できる新たなクラッチ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のクラッチ装置は、2つの回転軸の間の回転力の伝達および遮断の切替えを行うクラッチ装置であって、内周または外周に複数の溝部が互いに間隔をもって周方向に形成されている第1の回転軸と、前記第1の回転軸と同軸に、かつ、少なくとも一部が重なるように配置されている第2の回転軸と、前記第2の回転軸の径方向に移動できるように該第2の回転軸に設けられ、互いに間隔をもって該第2の回転軸の周方向に配列されている複数の係合部と、前記係合部を前記溝部に向かう方向へ進退させる進退機構と、を備える。前記複数の係合部は、前記進退機構によって前記複数の溝部に向かって移動した場合、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との回転位相差にかかわらず、前記複数の溝部のうちいずれか一つの第1溝部に入る第1係合部と、前記第1係合部が、前記第1溝部に入った状態で右回りまたは左回りのいずれか一方の回転方向へ移動し、該第1溝部の2つの側面のうち一方の回転方向側の側面に係合した際に、前記第1溝部と異なる第2溝部に入る第2係合部と、を有する。前記第2係合部は、前記第2溝部に入った際に、該第2溝部の2つの側面のうち他方の回転方向側の側面に係合するように構成されている。
この態様によると、進退機構により係合部を溝部から退避させることで第1の回転軸と第2の回転軸との回転力の伝達がない分離状態にできる。一方、進退機構により第1の回転軸と第2の回転軸とが接続されている状態では、第1の回転軸が一方の回転方向に回転した場合は、第1係合部が第1溝部の2つの側面のうち他方の回転方向側の側面に係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力を第2の回転軸に伝達できる。また、第1の回転軸が他方の回転方向に回転した場合は、第2係合部が第2溝部の2つの側面のうち一方の回転方向側の側面に係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力を第2の回転軸に伝達できる。
前記進退機構は、電気によって駆動するアクチュエータと、前記係合部を前記溝部に向かって付勢する付勢部材と、を有してもよい。前記アクチュエータに通電した際の動作により前記付勢部材の付勢力より大きな力で前記係合部を前記溝部から退避させるとともに、前記アクチュエータへの通電が解除された場合には前記付勢部材の付勢力により前記第1係合部が前記第1溝部に入るように構成されていてもよい。これにより、アクチュエータへの通電が解除された非常時には、第1係合部が第1溝部に入ることで第1の回転軸と第2の回転軸との接続が即座に行われる。
前記アクチュエータは、回転型ソレノイドであり、前記進退機構は、前記回転型ソレノイドの回転運動を変換して前記係合部を進退させる変換機構を更に備えてもよい。これにより、クラッチ装置の軸方向の長さを抑えることができる。
前記複数の溝部の数をn、前記溝部のピッチをP、前記複数の係合部の数をN、前記複数の溝部に入る係合部の数をNx、前記係合部の幅をW、前記溝部の幅をB1、前記溝部と隣接する溝部との距離をB2、前記溝部に前記係合部を係合させる際のズレ角度をδ、とすると、前記係合部および前記溝部は、P=360/n B1≒W+(δ×(Nx−1)) δ=P/N を満たすように設けられていてもよい。これにより、例えば、接続時のズレ角度を考慮した設計が可能となる。
本発明の他の態様は、操舵装置である。この装置は、車両を操舵するために回転される操作部材と、前記操作部材の操作量に応じた情報を検出する検出手段と、車輪を転舵する転舵機構と、前記転舵機構を駆動する動力源と、前記操作部材と前記転舵機構との間に配置され、前記操作部材と前記転舵機構との間の回転力の伝達および遮断の切替えを行うクラッチ装置と、前記クラッチ装置により回転力が遮断された状態で前記動力源を駆動し、前記操作量に応じた情報に基づいて転舵量を制御する制御手段と、を備えている。前記操作部材は、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか一方と連結されており、前記転舵機構は、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか他方と連結されており、前記クラッチ装置は、前記操作部材と前記転舵機構との間の回転力が伝達可能な状態で、前記操作部材の操作に応じて車輪の舵角が変化するように前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とが機械的に連結されている。
この態様によると、例えば、クラッチ装置により回転力が遮断された状態で動力源を駆動し、操作部材の操作量に応じた情報に基づいて転舵量を制御している場合には、転舵機構から操作部材へトルク変動などが伝達されないため、操舵フィーリングを向上できる。
この発明により、操舵装置における操舵フィーリングを向上できる新たなクラッチ装置を実現することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。以下の実施の形態で説明するクラッチ装置は、車両の操舵装置に適用することができる。特に、いわゆるステアバイワイヤ型車両操舵装置、すなわち、操舵部に設けられたステアリングホイール等の操作部材に加えられる操舵力によらず、電気的な制御下、転舵部において備える動力源の動力によって、操作部材の操作に応じた車輪の転舵が行われる車両操舵装置に好適である。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両操舵装置の概略構成を示す模式図である。車両操舵装置10は、ハンドル12と、操舵角度センサ14と、トルクセンサ16と、操舵反力モータ18と、インターミディエイトシャフト20と、転舵角度センサ22と、転舵モータ24と、タイヤ26と、ECU28と、クラッチ装置29とを備える。
図1は、第1の実施の形態に係る車両操舵装置の概略構成を示す模式図である。車両操舵装置10は、ハンドル12と、操舵角度センサ14と、トルクセンサ16と、操舵反力モータ18と、インターミディエイトシャフト20と、転舵角度センサ22と、転舵モータ24と、タイヤ26と、ECU28と、クラッチ装置29とを備える。
操舵アクチュエータ30は、操舵角度センサ14と、トルクセンサ16と、操舵反力モータ18とで構成されている。また、転舵アクチュエータ32は、転舵角度センサ22と転舵モータ24とで構成されている。ECU28は、操舵アクチュエータ30および転舵アクチュエータ32が有する各種センサの情報に基づいて、操舵反力モータ18や転舵モータ24を制御する。
ハンドル12は、車室内の運転席側に配置され、運転者が操舵量を入力するために回転させる操舵部材として機能する。
操舵角度センサ14は、運転者が入力した操舵量としてのハンドル12の回転角を検出し、この検出値をECU28に対して出力する。操舵角度センサ14は、ハンドル12の操作量に応じた情報を検出する検出手段として機能する。
トルクセンサ16は、ハンドル12の操舵量に応じたトルクを検出する。操舵反力モータ18は、ECU28の制御に基づいて、操舵角度センサ14が検出したハンドル12の回転角に応じた操舵反力を運転者に感じさせるための反力をハンドル12に作用させる。
ECU28は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、運転者が入力した操舵量としてのハンドル12の回転角を検出し、この操舵量に基づいた転舵量を演算して、この転舵量に基づいて、転舵モータ24を制御してタイヤ26を転舵する制御を行う制御手段として機能する。
転舵モータ24は、ECU28の制御に基づいて、タイヤ26にタイロッドを介して連結される車幅方向に延びるラックバーを車幅方向に動作させる転舵手段を構成する。
転舵角度センサ22は、転舵手段を構成するラックアンドピニオン機構34のピニオンの回転角を検出して、この検出値をECU28に対して出力する。
インターミディエイトシャフト20は、ステアバイワイヤシステムが機能しない場合のバックアップ機構の一部として、操舵アクチュエータ30から転舵アクチュエータ32へ操舵力(回転力)を伝達する役割を果たす。メカバックアップ機構は、インターミディエイトシャフト20、クラッチ装置29、ラックアンドピニオン機構34等から構成される。
クラッチ装置29は、2つの回転軸の間の回転力の伝達および遮断の切替えを行う。クラッチ装置29の構造の詳細については後述するが、車両操舵装置10は、システムが正常な場合、クラッチ装置29により操舵アクチュエータ30と転舵アクチュエータ32との接続が分離されており、ステアバイワイヤシステムとして機能する。一方、車両操舵装置10は、システムが異常な場合、クラッチ装置29により操舵アクチュエータ30と転舵アクチュエータ32とが機械的に連結されることで、ハンドル12の操作によりタイヤ26を直接転舵できるようになる。
次に、クラッチ装置29の構造について詳述する。図2は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29の軸に平行な断面図である。図3は、図2に示すクラッチ装置29のA−A断面図である。なお、図2は、図3に示すB−B断面に相当する。
クラッチ装置29は、第1の回転軸である環状のハンドル側ハウジング36と、第2の回転軸である環状のタイヤ側ハウジング38と、タイヤ側ハウジング38の径方向に移動できるようにタイヤ側ハウジング38に設けられている係合部としての複数のロックバー40と、を備える。ハンドル側ハウジング36は、内周面に複数のロック溝42が互いに間隔をもって周方向の形成されている。タイヤ側ハウジング38は、ハンドル側ハウジング36と同軸となるように設けられており、クラッチ装置29の側方から見て少なくとも一部がハンドル側ハウジング36と重なるように配置されている。
ハンドル側ハウジング36は、操舵アクチュエータ30と連結されており、ハンドル12の回転に連動して回転する。また、タイヤ側ハウジング38は、転舵アクチュエータ32と連結されており、タイヤの転舵に連動して回転する。クラッチ装置29は、ロックバー40をロック溝42に向かう方向へ進退させる進退機構44を更に備える。進退機構44の詳細については後述する。
本実施の形態に係るクラッチ装置29においては、5つのロックバー40が放射状にほぼ等間隔に配置されている。各ロックバー40は、環状のタイヤ側ハウジング38の周面に形成された開口部38aに摺動可能に支持されている。
タイヤ側ハウジング38の図2に示す右側の開口部近傍には、バネ受け部材46が固定されている。バネ受け部材46は、小径部46aの外周面に、各ロックバー40に対応するように複数の凸部46bが放射状にほぼ等間隔で配置されている。凸部46bは、付勢部材であるバネ50がずれないようにその一端を支持する。また、バネ50の他端は、ロックバー40のバネ受け部材46と対向する部分に形成されている凹部40aにより支持されている。そして、バネ50は、図2や図3に示す状態では圧縮されている。
進退機構44は、電気によって駆動するアクチュエータとしてのプル型ソレノイド52と、ロックバー40をロック溝42に向かって付勢するバネ50と、ロックバー40に作用することでロックバー40の進退を制御するピン54と、ピン54が固定されているアダプタ56と、を有している。
プル型ソレノイド52は、通電時(クラッチ装置OFF)には軸52aが引き込まれ、非通電時(クラッチ装置ON)には内部にある戻りバネの作用で軸52aが突出するように構成されている。図2は、プル型ソレノイド52の通電時の状態を示している。
ピン54は、ロックバー40の中央部に設けられた貫通孔40bに浸入した状態でロックバー40と係合している。また、ピン54は、図2に示すクラッチ装置OFFの状態でロックバー40の貫通孔40bと当接する第1係合部54aと、後述するクラッチ装置ONの状態でロックバー40の貫通孔40bと当接する第2係合部54bと、第1係合部54aと第2係合部54bとを滑らかにつなぐ斜面54cと、を有する。ピン54は、第2係合部54bから第1係合部54aに向かってクラッチ装置29の回転軸Axに近づくように屈曲している。なお、第2係合部54bは、必ずしも貫通孔40bの内周壁と当接しなくてもよい。
アダプタ56は、プル型ソレノイド52の軸に固定されており、プル型ソレノイド52への通電状態に応じて軸方向へ位置が変化する。その際、ピン54も軸方向へ位置が変化する。
次に、クラッチ装置の動作を説明する。図2や図3に示すように、クラッチ装置29がOFFの状態、すなわちプル型ソレノイド52に通電されている状態では、ロックバー40とロック溝42とが一切係合しない。そのため、操舵アクチュエータ30と転舵アクチュエータ32とは切り離された状態であり、互いの間で回転力は伝達されない。
より詳細には、プル型ソレノイド52に通電されると、プル型ソレノイド52の軸とともにアダプタ56が引き込まる。その際、ピン54の第1係合部54aが貫通孔40bの内周壁に当接し、クラッチ装置29がOFFの状態となる位置にロックバー40が規制される。
図4は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29(クラッチON状態)の軸に平行な断面図である。図5は、図4に示すクラッチ装置29のC−C断面図である。なお、図4は、図5に示すD−D断面に相当する。
クラッチ装置29は、システムの故障などで通電が解除され非通電な状態となると、プル型ソレノイド52の戻りバネの働きで、それまで引き込まれていたアダプタ56が図4の右方向へ移動する。その結果、ロックバー40の貫通孔40bの内部でのピン54の位置が変化し、ピン54の第2係合部54bが貫通孔40bの内部に位置することになる。その結果、ピン54により位置が規制されていたロックバー40は、ハンドル側ハウジング36のロック溝42に向かって移動できるようになる。
このように、各ロックバー40は、バネ50の付勢力によってハンドル側ハウジング36のロック溝42に向かってタイヤ側ハウジング38の径方向に移動する力が働くが、図5に示すように、クラッチ装置29では、すべてのロックバー40がそのままロック溝42に入るようには構成されていない。
つまり、各ロックバー40(以下、適宜ロックバー401〜405と称する場合がある。)と各ロック溝42との位置関係、つまりハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との位置関係によっては、ロック溝42に入り込むロックバーの組合せは種々変わりうる。図5に示すクラッチ装置29では、ロック溝42に入り込むロックバー401〜403と、ロック溝42に入り込まずにロック溝42同士の間の突起部43と当接しているロックバー404,405とが存在することになる。
図5に示す状態は、クラッチ装置29が完全にクラッチONとなった場合であるが、プル型ソレノイド52への通電が解除されたと同時に、常にこの状態に至る訳ではない。以下では、通常のハンドル12の操作によってクラッチ装置29が完全にクラッチONとなるまでの動作について更に詳述する。
図13は、図5に示す状態からハンドル側ハウジング36が矢印R2方向へわずかに回転した位置にあるクラッチ装置の断面図である。例えば、図5に示す状態からハンドル側ハウジング36が矢印R2方向へわずかに回転した位置にある場合(タイヤ側ハウジング38は図5に示す状態のまま)、ロックバー401,402は、ロック溝42に入り込むものの、ロックバー403,404,405は、ハンドル側ハウジング36の内周壁にある突起部43に当接した状態である。また、この場合には、ロック溝42に入り込んだロックバー401,402は、いずれもロック溝42の側面42a,42bに当接していない。そのため、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との間には、回転方向において遊びが存在している。
そして、この状態からハンドル側ハウジング36を矢印R1方向へ回転すると、ロックバー401がロック溝42の一方の側面42aに当接し係合した際に、ロックバー403がロック溝42に入り、ロック溝42の他方の側面42bと係合する。その結果、図5に示すように、ロック溝421に入り込んで一方の側面42aと係合するロックバー401とロック溝423に入り込んで他方の側面42bと係合するロックバー403とにより、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との間の回転方向の遊びがほぼなくなり(ロック状態)、ハンドル側ハウジング36の回転力をタイヤ側ハウジング38へ確実に伝達することができる。
このように、本実施の形態に係るクラッチ装置29において、複数のロックバー40は、プル型ソレノイド52を含む進退機構44によって複数のロック溝42に向かって移動した場合、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との回転位相差にかかわらず、複数のロック溝42のうちいずれか一つの第1溝部であるロック溝421に入るロックバー401と、ロックバー401が、ロック溝421に入った状態で左回りの回転方向(図13に示す矢印R2方向)へ移動し、ロック溝421の2つの側面42a,42bのうち一方の回転方向(矢印R2方向)側の側面42aに係合した際に、ロック溝421と異なる第2溝部としてのロック溝423に入るロックバー403と、を有する。ロックバー403は、ロック溝423に入った際に、ロック溝423の2つの側面42a,42bのうち他方の回転方向(矢印R1方向)側の側面42bに係合するように構成されている。
これにより、クラッチ装置29は、進退機構44により各ロックバー40をロック溝42から退避させることで、車両操舵装置10をハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との回転力の伝達がない分離状態にできる。一方、クラッチ装置29は、進退機構44によりハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38とが接続されている状態(ロック状態)では、ハンドル側ハウジング36が一方の回転方向(例えば矢印R1方向)に回転した場合は、ロックバー401がロック溝421の2つの側面のうち他方の回転方向(矢印R2方向)側の側面42aに係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力をタイヤ側ハウジング38に伝達できる。また、ハンドル側ハウジング36が他方の回転方向(例えば矢印R2方向)に回転した場合は、ロックバー403がロック溝423の2つの側面のうち一方の回転方向(矢印R1方向)側の側面42bに係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力をタイヤ側ハウジング38に伝達できる。
また、クラッチ装置29は、プル型ソレノイド52に通電した際の動作によりバネ50の付勢力より大きな力でロックバー40をロック溝42から退避させるとともに、プル型ソレノイド52への通電が解除された場合にはバネ50の付勢力によりロックバー402やロックバー403がロック溝42に入るように構成されている。これにより、プル型ソレノイド52への通電が行われなくなった非常時には、ロックバー402やロックバー403がロック溝42に入ることでハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との接続が即座に行われる。
次に、ロックバー40とロック溝42との好適な関係について説明する。図6は、ロックバー40とロック溝42の形状を説明するための図である。図7は、図6に示すロックバーとロック溝との関係を直線状に示した模式図である。
図6、図7に示すように、複数のロック溝42の数をn[個]、ロック溝42のピッチをP、複数のロックバー40の数をN[個]、複数のロック溝42に入るロックバー40の数をNx[個]、ロックバー40の幅をW[deg]、ロック溝42の幅をB1[deg]、ロック溝42と隣接するロック溝42との距離(突起部43の幅)をB2[deg]、ロック溝42にロックバー40を係合させる際のズレ角度(接続時ズレ角度)をδ[deg]とすると、本実施の形態に係るクラッチ装置29における各パラメータは表1に示すように設定されている。
また、各パラメータは
P=360/n・・・式(1)
B1≒W+(δ×(Nx−1))・・・式(2)
δ=P/N・・・式(3)
の各式を満たすように設定されている。なお、各式の数値は、設計の自由度や部品の公差などによって多少の誤差は許容される。
P=360/n・・・式(1)
B1≒W+(δ×(Nx−1))・・・式(2)
δ=P/N・・・式(3)
の各式を満たすように設定されている。なお、各式の数値は、設計の自由度や部品の公差などによって多少の誤差は許容される。
これにより、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との相対的な位相がどんな場合でも、少なくとも一つのロックバー40は常にロック溝42に入りうる位置になる。また、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との接続(ロック)時のズレ角度δを考慮した設計が可能となる。ここで、接続時のズレ角度δとは、ハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38との相対的な位相がどんな場合であっても、一方を他方に対して接続時ズレ角度δだけ回転させれば、クラッチ装置29においてクラッチON状態(ロック状態)が実現される角度を示すパラメータである。つまり、接続時のズレ角度δを小さく設定すれば、システム異常時においてもわずかなハンドル操作で操舵アクチュエータ30と転舵アクチュエータ32とが機械的に連結されることとなり、車両操舵装置10のフェールセーフの応答性の向上が図られる。
前述のように、車両操舵装置10は、車両を操舵するために回転されるハンドル12と、ハンドル12の操作量に応じた情報を検出する操舵角度センサ14と、タイヤ26を転舵するラックアンドピニオン機構34と、ラックアンドピニオン機構34を駆動する転舵モータ24と、ハンドル12とラックアンドピニオン機構34との間に配置され、ハンドル12とラックアンドピニオン機構34との間の回転力の伝達および遮断の切替えを行うクラッチ装置29と、クラッチ装置29により回転力が遮断された状態で転舵モータ24を駆動し、操作量に応じた情報に基づいて転舵量を制御するECU28と、を備えている。ハンドル12は、ハンドル側ハウジング36と連結されており、ラックアンドピニオン機構34は、タイヤ側ハウジング38と連結されており、クラッチ装置29は、ハンドル12とラックアンドピニオン機構34との間の回転力が伝達可能な状態で、ハンドル12の操作に応じて車輪の舵角が変化するようにハンドル側ハウジング36とタイヤ側ハウジング38とが機械的に連結されている。
これにより、クラッチ装置29により回転力が遮断された状態で転舵モータ24を駆動し、ハンドル12の操作量に応じた情報に基づいて転舵量を制御している場合には、ラックアンドピニオン機構34からハンドル12へトルク変動などが伝達されないため、操舵フィーリングを向上できる。
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係るクラッチ装置の断面図である。図8に示すクラッチ装置58は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29と比較して、ロックバーやロック溝の大きさが異なる点が大きな特徴である。クラッチ装置58自体の構造や動作は第1の実施の形態に係るクラッチ装置29とほぼ同じであるため、説明を適宜省略する。
図8は、第2の実施の形態に係るクラッチ装置の断面図である。図8に示すクラッチ装置58は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29と比較して、ロックバーやロック溝の大きさが異なる点が大きな特徴である。クラッチ装置58自体の構造や動作は第1の実施の形態に係るクラッチ装置29とほぼ同じであるため、説明を適宜省略する。
クラッチ装置58におけるロックバー60やロック溝62に関する各種パラメータは、表1に示すとおりである。クラッチ装置29と比較して、クラッチ装置58は、ロックバー40の幅が広く、ロック溝62の幅が狭くなっている。そして、プル型ソレノイド52への通電が解除された場合に、5つのロックバー60のうち、いずれかのロック溝62に確実に入るロックバーの数は1個である(第1の実施の形態に係るクラッチ装置29では2個)。
そして、この状態からハンドル側ハウジング64を接続時ズレ角度δまで回転させる間に、もう一つのロックバー60がロック溝62に入り込む。これにより、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29と同様の作用効果を奏する。
(第3の実施の形態)
図9は、第3の実施の形態に係るクラッチ装置の断面図である。図9に示すクラッチ装置66は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29や第2の実施の形態に係るクラッチ装置58と比較して、ロックバーやロック溝の数が異なる点が大きな特徴である。クラッチ装置66自体の構造や動作は第1の実施の形態に係るクラッチ装置29とほぼ同じであるため、説明を適宜省略する。
図9は、第3の実施の形態に係るクラッチ装置の断面図である。図9に示すクラッチ装置66は、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29や第2の実施の形態に係るクラッチ装置58と比較して、ロックバーやロック溝の数が異なる点が大きな特徴である。クラッチ装置66自体の構造や動作は第1の実施の形態に係るクラッチ装置29とほぼ同じであるため、説明を適宜省略する。
クラッチ装置66におけるロックバー68やロック溝70に関する各種パラメータは、表1に示すとおりである。クラッチ装置29やクラッチ装置58と比較して、クラッチ装置66は、ロックバー68の数が少なく、ロック溝70の数が多くなっている。そして、プル型ソレノイド52への通電が解除された場合に、4つのロックバー68のうち、いずれかのロック溝70に確実に入るロックバーの数は1個である(第1の実施の形態に係るクラッチ装置29では2個)。
そして、この状態からハンドル側ハウジング72を接続時ズレ角度δまで回転させる間に、もう一つのロックバー68がロック溝70に入り込む。これにより、第1の実施の形態に係るクラッチ装置29と同様の作用効果を奏する。
(第4の実施の形態)
図10は、第4の実施の形態に係るクラッチ装置74の軸に平行な断面図である。図11は、図10に示すクラッチ装置74のE−E断面図である。なお、図10は、図11に示すF−F断面に相当する。
図10は、第4の実施の形態に係るクラッチ装置74の軸に平行な断面図である。図11は、図10に示すクラッチ装置74のE−E断面図である。なお、図10は、図11に示すF−F断面に相当する。
本実施の形態に係るクラッチ装置74は、アクチュエータとして回転型ソレノイドを備えている点、また、進退機構が、回転型ソレノイドの回転運動を変換してロックバーを進退させる変換機構を備えている点、が第1の実施の形態に係るクラッチ装置29と大きく異なる。
クラッチ装置74は、第1の回転軸である環状のハンドル側ハウジング76と、第2の回転軸である環状のタイヤ側ハウジング78と、タイヤ側ハウジング78の径方向に移動できるようにタイヤ側ハウジング78に設けられている係合部としての複数のロックバー80と、を備える。ハンドル側ハウジング76は、内周面に複数のロック溝82が互いに間隔をもって周方向の形成されている。タイヤ側ハウジング78は、ハンドル側ハウジング76と同軸となるように設けられており、クラッチ装置74の側方から見て少なくとも一部がハンドル側ハウジング76と重なるように配置されている。
ハンドル側ハウジング76は、操舵アクチュエータ30(図1参照)と連結されており、ハンドル12の回転に連動して回転する。また、タイヤ側ハウジング78は、転舵アクチュエータ32(図1参照)と連結されており、タイヤの転舵に連動して回転する。クラッチ装置74は、ロックバー80をロック溝82に向かう方向へ進退させる進退機構84を更に備える。進退機構84の詳細については後述する。
本実施の形態に係るクラッチ装置74においては、6つのロックバーが放射状に配置されている。各ロックバー80は、環状のタイヤ側ハウジング78の周面に形成された開口部78aに摺動可能に支持されている。
タイヤ側ハウジング78の図10に示す右側の開口部近傍には、バネ受け部材86が固定されている。バネ受け部材86は、小径部86aの外周面に、各ロックバー80に対応するように複数の凸部86bが放射状に配置されている。凸部86bは、付勢部材であるバネがずれないようにその一端を支持する。また、バネ90の他端は、ロックバー80のバネ受け部材86と対向する部分に形成されている凹部80aにより支持されている。そして、バネ90は、図10や図11に示す状態では圧縮されている。
進退機構84は、電気によって駆動するアクチュエータとしての回転型ソレノイド92と、ロックバー80をロック溝82に向かって付勢するバネ90と、ロックバー80に作用することでロックバー80の進退を制御するピン94と、ピン94が固定されている回転盤96と、を有している。
回転型ソレノイド92は、通電時(クラッチ装置OFF)には軸92aが図11に示す矢印R3方向に回転し、非通電時(クラッチ装置ON)には内部にある戻りバネの作用で図11に示す矢印R4方向に軸92aが回転するように構成されている。図10は、回転型ソレノイド92の通電時の状態を示している。
ピン94は、ロックバー80の中央部から側面に向かって設けられた切り欠き溝80bに浸入した状態でロックバー80と係合している。また、ピン94は、図10に示すクラッチ装置OFFの状態でロックバー80の切り欠き溝80bと当接し、後述するクラッチ装置ONの状態でロックバー80の切り欠き溝80bから退避する。
回転盤96は、回転型ソレノイド92の軸92aに固定されており、回転型ソレノイド92への通電状態に応じて時計回りまたは反時計回りに回転する。その際、ピン94も時計回りまたは反時計回りに回転し、位置が変化する。
次に、クラッチ装置の動作を説明する。図10や図11に示すように、クラッチ装置74がOFFの状態、すなわち回転型ソレノイド92に通電されている状態では、ロックバー80とロック溝82とが一切係合しない。そのため、操舵アクチュエータ30(図1参照)と転舵アクチュエータ32(図1参照)とは切り離された状態であり、互いの間で回転力は伝達されない。
より詳細には、回転型ソレノイド92に通電されると、回転型ソレノイド92の軸92aとともに回転盤96が図11に示す矢印R3方向に回転する。その際、ピン94が切り欠き溝80bの側壁80b1に当接しながら切り欠き溝80bの奥側に浸入することで、ロックバー80が徐々にタイヤ側ハウジング78の内側に引き込まれ、最終的にクラッチ装置74がOFFの状態となる位置にロックバー80が規制される。
図12は、第4の実施の形態に係るクラッチ装置74(クラッチON状態)の軸に垂直な断面図である。
クラッチ装置74は、システムの故障などで通電が行われない状態となると、回転型ソレノイド92の戻りバネの働きで、それまでロックバー80を規制していた回転盤96が図12に示す矢印R4方向へ回転する。その結果、ロックバー80の切り欠き溝80bの内部でのピン94の位置が変化し、ピン94が切り欠き溝80bの内部から退避することになる。その結果、ピン94により位置が規制されていたロックバー80は、ハンドル側ハウジング76のロック溝82に向かって移動できるようになる。
このように、各ロックバー80は、バネ90の付勢力によってハンドル側ハウジング76のロック溝82に向かってタイヤ側ハウジング78の径方向に移動する力が働くが、図12に示すように、クラッチ装置74では、すべてのロックバー80がそのままロック溝82に入るようには構成されていない。
つまり、各ロックバー80(以下、適宜ロックバー801〜806と称する場合がある。)と各ロック溝82との位置関係、つまりハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との位置関係によっては、ロック溝82に入り込むロックバーの組合せは種々変わりうる。図12に示すクラッチ装置74では、ロック溝82に入り込むロックバー801〜803と、ロック溝82に入り込まずにロック溝82同士の間の突起部83と当接しているロックバー804〜806とが存在することになる。
図12に示す状態は、クラッチ装置74が完全にクラッチONとなった場合であるが、回転型ソレノイド92への通電が解除されたと同時に、常にこの状態に至る訳ではない。以下では、通常のハンドル12の操作によってクラッチ装置74が完全にクラッチONとなるまでの動作について更に詳述する。
例えば、図12に示す状態からハンドル側ハウジング76が矢印R4方向へわずかに回転した位置にある場合(タイヤ側ハウジング78は図12に示す状態のまま)、ロックバー802,803は、ロック溝42に入り込むものの、ロックバー801,804〜806は、ハンドル側ハウジング76の内周壁にある突起部83に当接した状態である。また、この場合には、ロック溝82に入り込んだロックバー802,803は、いずれもロック溝82の側面82a,82bに当接していない。そのため、ハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との間には、回転方向において遊びが存在している。
そして、この状態からハンドル側ハウジング76を矢印R3方向へ回転すると、ロックバー803がロック溝82の一方の側面82aに当接し係合した際に、ロックバー801がロック溝82に入り、ロック溝82の他方の側面82bと係合する。その結果、図12に示すように、ロック溝821に入り込んで他方の側面82bと係合するロックバー801とロック溝823に入り込んで一方の側面82aと係合するロックバー803とにより、ハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との間の回転方向の遊びがほぼなくなり(ロック状態)、ハンドル側ハウジング76の回転力をタイヤ側ハウジング78へ確実に伝達することができる。
このように、本実施の形態に係るクラッチ装置74において、複数のロックバー80は、回転型ソレノイド92を含む進退機構84によって複数のロック溝82に向かって移動した場合、ハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との回転位相差にかかわらず、複数のロック溝82のうちいずれか一つの第1溝部としてのロック溝823に入るロックバー803と、ロックバー803が、ロック溝823に入った状態で左回りの回転方向(図12に示す矢印R4方向)へ移動し、ロック溝823の2つの側面82a,82bのうち一方の回転方向(矢印R4方向)側の側面82aに係合した際に、ロック溝823と異なる第2溝部としてのロック溝821に入るロックバー801と、を有する。ロックバー801は、ロック溝821に入った際に、ロック溝821の2つの側面82a,82bのうち他方の回転方向(矢印R3方向)側の側面82bに係合するように構成されている。
これにより、クラッチ装置74は、進退機構84により各ロックバー80をロック溝82から退避させることで、車両操舵装置10をハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との回転力の伝達がない分離状態にできる。一方、クラッチ装置74は、進退機構84によりハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78とが接続されている状態(ロック状態)では、ハンドル側ハウジング76が一方の回転方向(例えば矢印R3方向)に回転した場合は、ロックバー803がロック溝823の2つの側面のうち他方の回転方向(矢印R4方向)側の側面82aに係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力をタイヤ側ハウジング78に伝達できる。また、ハンドル側ハウジング76が他方の回転方向(例えば矢印R4方向)に回転した場合は、ロックバー801がロック溝821の2つの側面のうち一方の回転方向(矢印R3方向)側の側面82bに係合しているため、遊びがほとんどない状態で回転力をタイヤ側ハウジング78に伝達できる。
また、クラッチ装置74は、回転型ソレノイド92に通電した際の動作によりバネ90の付勢力より大きな力でロックバー80をロック溝82から退避させるとともに、回転型ソレノイド92に通電されていない場合にはバネ90の付勢力によりロックバー802やロックバー803がロック溝82に入るように構成されている。これにより、回転型ソレノイド92への通電が行われなくなった非常時には、ロックバー802やロックバー803がロック溝82に入ることでハンドル側ハウジング76とタイヤ側ハウジング78との接続が即座に行われる。
また、クラッチ装置74は、回転型ソレノイド92の回転運動を変換してロックバー80を進退させているため、クラッチ装置の軸方向の長さを抑えることができる。
上述の各実施の形態に例示したように、各クラッチ装置は、アクチュエータへの通電が解除された段階で少なくとも一つのロックバーがロック溝に入り込む。そして、クラッチ装置は、接続時ズレ角度δ以下の回転操作により少なくとも一つのロックバーがロック溝と確実に係合するとともに、そのタイミングでもう一つのロックバーが他のロック溝に入り込むように構成されている。そして、2つのロックバーで異なる2つのロック溝の側面を挟むことで遊びがほとんどないロック状態が実現される。
また、各クラッチ装置は、摩擦式クラッチのように高いトルクで分離状態となることはない。また、各クラッチ装置は、複数のロックバーの移動を一つのアクチュエータの動きに連動させて達成できるため、各ロックバーの同期が容易である。また、各クラッチ装置は、クラッチ解除時(クラッチOFF)は、アクチュエータですべてのロックバーの位置を拘束することで、ロックバーの安定固定ができる。一方、クラッチ接続時(クラッチON)は、アクチュエータによるロックバーの位置規制を解除することで、ロックバーがバネにより個々に動かされるため、ロック溝に入るロックバーとロック溝に入らないロックバーとの個別の動きが可能となる。
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
上述の各実施の形態では、ハンドル側ハウジングの内周にロック溝が設けられ、タイヤ側ハウジングにロックバーが設けられているクラッチ装置について説明したが、ハンドル側ハウジングにロックバーが設けられ、タイヤ側ハウジングの外周にロック溝が設けられているクラッチ装置であってもよい。
10 車両操舵装置、 24 転舵モータ、 28 ECU、 29 クラッチ装置、 30 操舵アクチュエータ、 32 転舵アクチュエータ、 36 ハンドル側ハウジング、 38 タイヤ側ハウジング、 38a 開口部、 40 ロックバー、 40a 凹部、 40b 貫通孔、 42 ロック溝、 42a,42b 側面、 44 進退機構、 50 バネ、 52 プル型ソレノイド、 52a 軸、 54 ピン、 54a 第1係合部、 54b 第2係合部、 54c 斜面、 74 クラッチ装置、 76 ハンドル側ハウジング、 78 タイヤ側ハウジング、 78a 開口部、 80 ロックバー、 80a 凹部、 80b 切り欠き溝、 82 ロック溝、 82a,82b 側面、 83 突起部、 84 進退機構、 90 バネ、 92 回転型ソレノイド、 92a 軸、 94 ピン、 96 回転盤。
本発明は、クラッチ装置に関し、特に車両操舵装置に用いられる。
Claims (5)
- 2つの回転軸の間の回転力の伝達および遮断の切替えを行うクラッチ装置であって、
内周または外周に複数の溝部が互いに間隔をもって周方向に形成されている第1の回転軸と、
前記第1の回転軸と同軸に、かつ、少なくとも一部が重なるように配置されている第2の回転軸と、
前記第2の回転軸の径方向に移動できるように該第2の回転軸に設けられ、互いに間隔をもって該第2の回転軸の周方向に配列されている複数の係合部と、
前記係合部を前記溝部に向かう方向へ進退させる進退機構と、を備え、
前記複数の係合部は、
前記進退機構によって前記複数の溝部に向かって移動した場合、前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との回転位相差にかかわらず、前記複数の溝部のうちいずれか一つの第1溝部に入る第1係合部と、
前記第1係合部が、前記第1溝部に入った状態で右回りまたは左回りのいずれか一方の回転方向へ移動し、該第1溝部の2つの側面のうち一方の回転方向側の側面に係合した際に、前記第1溝部と異なる第2溝部に入る第2係合部と、を有し、
前記第2係合部は、前記第2溝部に入った際に、該第2溝部の2つの側面のうち他方の回転方向側の側面に係合するように構成されている、
ことを特徴とするクラッチ装置。 - 前記進退機構は、
電気によって駆動するアクチュエータと、
前記係合部を前記溝部に向かって付勢する付勢部材と、を有し、
前記アクチュエータに通電した際の動作により前記付勢部材の付勢力より大きな力で前記係合部を前記溝部から退避させるとともに、前記アクチュエータへの通電が解除された場合には前記付勢部材の付勢力により前記第1係合部が前記第1溝部に入るように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置。 - 前記アクチュエータは、回転型ソレノイドであり、
前記進退機構は、
前記回転型ソレノイドの回転運動を変換して前記係合部を進退させる変換機構を更に備える請求項2に記載のクラッチ装置。 - 前記複数の溝部の数をn、前記溝部のピッチをP、前記複数の係合部の数をN、前記複数の溝部に入る係合部の数をNx、前記係合部の幅をW、前記溝部の幅をB1、前記溝部と隣接する溝部との距離をB2、前記溝部に前記係合部を係合させる際のズレ角度をδ、とすると、
前記係合部および前記溝部は、
P=360/n
B1≒W+(δ×(Nx−1))
δ=P/N
を満たすように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクラッチ装置。 - 車両を操舵するために回転される操作部材と、
前記操作部材の操作量に応じた情報を検出する検出手段と、
車輪を転舵する転舵機構と、
前記転舵機構を駆動する動力源と、
前記操作部材と前記転舵機構との間に配置され、前記操作部材と前記転舵機構との間の回転力の伝達および遮断の切替えを行う請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクラッチ装置と、
前記クラッチ装置により回転力が遮断された状態で前記動力源を駆動し、前記操作量に応じた情報に基づいて転舵量を制御する制御手段と、を備え、
前記操作部材は、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか一方と連結されており、
前記転舵機構は、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸のいずれか他方と連結されており、
前記クラッチ装置は、前記操作部材と前記転舵機構との間の回転力が伝達可能な状態で、前記操作部材の操作に応じて車輪の舵角が変化するように前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とが機械的に連結されている、
ことを特徴とする操舵装置。
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